説明

微生物担体およびその製造方法

【課題】 輸送性、微生物着床・保持性、耐衝突強度の点で優れており、従来技術に比較して設計の自由度も高い微生物担体を提供する
【解決手段】 繊維糸の織物または編物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間11が形成される微生物担体1は繊維が支持用の繊維10Aと微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維10Bとの少なくとも2種類の繊維とから構成され、前記繊維間で微生物を生息空間11を形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物担体およびその製造方法に関する。より詳しく述べると繊維、特にマイクロファイバから構成された微生物担体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、活性汚泥法の処理、河川や湖沼の浄化など微生物を利用した処理を行う際に、微生物を使用している。
【0003】
これらの微生物処理の代表例として、好気性生物学的排水処理が挙げられる。好気性生物学的排水処理には、これまで活性汚泥法が広く用いられてきたが、近年、浸漬濾床法又は固定床法(以下、単に浸漬濾床法という)と呼ばれる排水処理方法が提案され、実用化されている。好気性浸漬濾床法では、処理槽内に微生物を付着させるための充填材を浸漬濾床として充填し、この処理槽内に排水を導入するとともに、曝気を行う。これにより、充填材上で微生物が増殖し、この微生物が曝気によって排水中に溶け込んだ溶存酸素を利用して、排水中の汚濁物質の除去を行うものである。
【0004】
好気性浸漬濾床法は、活性汚泥法に比べて設備の維持管理が容易であり、かつ活性汚泥法より汚濁物質除去能が高いとされている。また、浸漬濾床法は、処理槽内に浸漬濾床を設けて排水処理を行うものであるため、メタン発酵、脱窒などの嫌気性生物学的排水処理にも有効である。
【0005】
浸漬濾床法は、充填材上で増殖した微生物を利用して排水処理を行うものであり、充填材は汚濁物質の除去に関与する微生物を高濃度に保持するためのものであることから、浸漬濾床法では充填材によって処理性能が決定されるといっても過言ではない。そのため、従来より、浸漬濾床法では様々な充填材が使用されており、例えば、有機系材料からなる充填材としては、ひも状、網状(漁網状等)、不定形粒状、筒状(ラシヒリング等)、ハニカム板状、板状(波板等)などのものがあり、無機系材料からなる充填材としては、砕石、玉砂利、大理石、焼成品、コークス、カキ殻などがある。
【0006】
この場合、無機系材料からなる充填材は、有機系材料からなる充填材に比べて比重が重い、槽壁を損傷しやすい、充填材自体が摩耗しやすい、空隙率が低いため閉塞しやすい、といった欠点を有する。一方、有機系材料からなる充填材は、種々の形状に成型することができ、形状によっては微生物保持能力が高いものがある。特に、図10に示すような筒面が網状に形成された合成樹脂製円筒状ネット50(内径4〜10cm、長さ数m程度)は、微生物保持能力が高く、酸素の溶解速度が速いという点で優れた充填材である。この充填材50は、通常、図11に示すように、水平にかつ一段毎に向きを変えて井桁状に積み重ねて処理槽52内に設置するものである。
【0007】
特許文献1によると、図10に示した充填材50は、下記に示す欠点を有するものであった。
(イ)両端が開口した筒状であるため、外方から径方向に加わる力に対しての強度が弱い。そのため、微生物の付着により充填材全体の重量が大きくなった状態において、点検時等に処理槽から水を抜いて浮力が無くなると、充填材が上に積まれた充填材の重量によってつぶれ、水を再度処理槽に導入しても充填材が元の形状に復元しなくなる。その結果、充填材がつぶれた箇所で目詰まりが生じたり、空気が通らなくなったりする上、処理性能も低下する。
(ロ)長尺であるため、一定方向に沿って規則正しく積まなければ処理槽内にうまく充填することができず、したがって充填に比較的手間がかかり、充填コストが高くなる。
【0008】
そのため特許文献1に記載の発明は、微生物保持能力が高く、酸素溶解速度が速い上、強度が高くて容易につぶれることがなく、しかも処理槽内に簡単に充填することが可能な充填材を提供することを課題とし、二つの発明を提案している。
[第1発明]熱可塑性プラスチックからなり、中空四面体状構造に形成されているとともに、全ての面が網状であることを特徴とする水処理用充填材(図12)。
[第2発明]熱可塑性プラスチックからなり、筒体の周壁部を押しつぶすようにして固着することにより該筒体の軸方向一端側を閉塞し、他端側を開口した構造に形成されているとともに、周面が網状であることを特徴とする水処理用充填材(図13)。
【0009】
【特許文献1】 特開平9−75972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の担体は、あらゆる方向からの外力に対して強度が高くしたため、輸送上の問題あり。特許文献1の担体は、つぶれに対しては強いと記載されているが、微生物が着床した際に担体同士の衝突に対して強度があるとは考えにくく、また微生物保持能力については疑問が残る。
【0011】
さらに、特許文献1の担体は、すべてが網状の構造をしているので水中に投入して浮遊するとは考えにくく、開口部を小さくしないと微生物が着床するとは考えにくい。
【0012】
従って、本発明の課題は、輸送性、微生物着床・保持性、耐衝突強度の点で優れており、従来技術に比較して設計の自由度も高い微生物担体を提供することである。
【0013】
本発明の別の課題は、輸送性、微生物着床・保持性、耐衝突強度の点で優れており、従来技術に比較して設計の自由度も高い微生物担体を効率的に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定の繊維、特にマイクロファイバを微生物担体の基材として使用し、これを所定の形状にすることにより、運搬時は圧縮することにより嵩だか性を低くし、使用時には所定の空隙を持たすことが可能であることを見出して本発明を創作するに至った。
【0015】
したがって、本発明は、次の各項目に関する。
1 繊維糸の織物または編物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間が形成される微生物担体であって、前記微生物担体を構成する繊維が、A支持用の繊維と、B微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維との少なくとも2種類の繊維とから構成され、前記繊維間で微生物を生息空間を形成していることを特徴とする微生物担体。
2 前記微生物担体の外側表面が強化物質により強化されていることを特徴とする項目1に記載の微生物担体。
3 前記A支持用の繊維が高収縮糸からなる繊維であり、前記B微生物着床繊維が普通糸から構成される繊維であることを特徴とする項目1または項目2に記載の微生物担体。
4 前記B微生物着床繊維がマイクロファイバであることを特徴とする項目3に記載の微生物担体。
5 前記マイクロファイバがリサイクルプラスチックから形成されたものであることを特徴とする項目4に記載の微生物担体。
6 形状が安定するように前記微生物担体が支持物質により支持されていることを特徴とする項目1から項目5のいずれか1項に記載の微生物担体。
7 前記高収縮糸を構成する繊維がポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル系樹脂からなることを特徴とする項目3から項目6のいずれか1項に記載の微生物担体。
8 前記微生物担体は、紐状、ネットワーク状、板状または板状に構成されていることを特徴とする項目1から項目7のいずれか1項に記載の微生物担体。
9 前記微生物担体は、微生物を生息させるのに十分な空隙が外側に露出するように複数の板状の微生物担体を組み合わせて構成されていることを特徴とする項目8に記載の微生物担体。
10 前記微生物担体は、水処理槽に浮遊させるのに適したサイズと比重を有する流動床用の微生物担体であることを特徴とする項目1から項目9のいずれか1項に記載の微生物担体。
11 項目3から項目10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の製造方法であって、A 高収縮糸の織物と、B普通糸の織物とが所定の間隔で交差するように一体化させ、前記一体化した織物に熱付与して前記高収縮糸を熱収縮させて微生物が生息するのに十分な空間を形成することを特徴とする微生物担体の製造方法。
12 項目1から項目10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の前駆体であってA高収縮糸の織物と、B普通糸の織物とが所定の間隔で交差するように一体化させて構成された微生物担体前駆体。
13 項目3から項目10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の製造方法であって、A高収縮糸からなる支持用の織物と、B普通糸からなる微生物着床用の織物とを積層して積層物を形成し、前記背規則物の所定位置を接着又は融着して、一体化させ、前記一体化した織物に熱付与して前記高収縮糸を熱収縮させて微生物が生息するのに十分な空間を形成することを特徴とする微生物担体の製造方法。
14 項目3から項目10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の前駆体であって、A 高収縮糸からなる支持用の織物と、B普通糸からなる微生物着床用の織物とを積層して積層物を形成し、前記背規則物の所定位置を接着又は融着して、一体化させて構成された微生物担体の前駆体。
15 項目3から項目10のいずれか1項に記載の編物からなる微生物担体の製造方法であって、A高収縮糸またはB普通糸の繊維束の所定位置にB普通糸または高収縮糸を編み込んで一体化させ、一体化した織物に熱付与して前記高収縮糸を熱収縮させて微生物が生息するのに十分な空間を形成することを特徴とする微生物担体の製造方法。
16 項目3から項目10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の前駆体であってA高収縮糸またはB普通糸の繊維束の所定位置にB普通糸または高収縮糸を編み込んで一体化させて構成された微生物担体前駆体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、 本発明の第1実施形態によると、微生物担体は、繊維の織物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間が形成される微生物担体であって、好気性微生物が繁殖するのに十分なサイズの空隙を有する筒状体又は複数の筒状体の組み合わせから構成され、前記織物は、微生物担体を保持できるのに十分な繊維と表面に微生物を生息させる空間を有する繊維との織物であることを特徴とするものである。したがって、第1実施形態の微生物担体は、安価で軽量な材料から構成されている。また、織物は、微生物担体を保持できるのに十分な繊維と表面に微生物を生息させる空間を有する繊維とから構成されているので、微生物担体を保持できる繊維により形状が安定し、またマイクロファイバ等の表面に微生物を生息させる空間を有する繊維により繊維表面に微生物が生息できることができる。また、微生物担体を保持できる繊維はいわゆるクッションの役割を有しているので、輸送時は圧縮することができる。
【0017】
また、支持用の繊維を高収縮糸から構成すると、熱収縮して微生物の生息空間を構成する前の微生物担体(前駆体)を輸送し、現場で熱処理することにより微生物担体を構成できるのでよりいっそう輸送性が高くなる。
【0018】
なお、本発明において使用する用語「微生物が着床するのに十分な表面」とは、マイクロファイバのごとく表面に微生物が着床し、これを基点に増殖できるような隙間のある表面を言う。また、微生物生息空間」とは、繊維中で繁殖した微生物が嫌気化されることなく生息領域を広げられるサイズの空隙を意味する。一般には、0.5から10cm、好ましくは1cmから7cmである。
【0019】
また、本発明によると、このような好適な微生物担体を容易に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明の微生物担体の一実施形態を示す図面であり、(a)微生物担体を形成する前の前駆体を示し、(b)は熱付与して前駆体から微生物担体を形成した様子を示す図面である。
【図2】 本発明の微生物担体の他の一実施形態を示す図面である。
【図3】 図2の微生物担体の前駆体の一例を示す図面である。
【図4】 (a)、(b)は本発明の微生物担体を構成する微生物着床用の繊維の表面を示す図面である。
【図5】 (a)〜(c)は流動床に適用するのに好適な微生物担体の一例を示す図面である。
【図6】 本発明の微生物担体を流動床に適用した例を示す図面である。
【図7】 本発明の微生物担体を固定床に適用した例を示す図面である。
【図8】 本発明の第2実施形態にかかる微生物担体の一例を示す図面である。
【図9】 本発明の第2実施形態にかかる微生物担体の別の一例を示す図面である。
【図10】 従来の微生物担体の例を示す図面である。
【図11】 従来の微生物担体の例を示す図面である。
【図12】 従来の微生物担体の例を示す図面である。
【図13】 従来の微生物担体の例を示す図面である。
【符号の説明】
【0021】
1 微生物担体
10A 支持用繊維A
10B 微生物着床用繊維
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の発明)
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
まず、図1から図5に基づいて、第1の発明を説明する。
図1は、本発明の微生物担体の一実施形態を示す図面であり、(a)微生物担体を形成する前の前駆体を示し、(b)は熱付与して前駆体から微生物担体を形成した様子を示す図面である。
【0023】
図1および図2に示す通り、本発明の微生物担体は、支持用繊維10Aと微生物着床用繊維10Bの二種類の繊維から構成された織物から微生物生息空間11が露出するように形成されている。
【0024】
支持用繊維10Aとは、微生物担体1の形状を保持するのに十分な強度を有する繊維から形成されるものであり、このような強度を有する繊維であれば特に限定されるものではない。
【0025】
本実施形態では、支持用繊維10Aを高収縮糸から形成された織物を使用している。なお、高収縮糸とは、熱付与により収縮する糸を言い、従来公知の収縮糸から強度、比重、所望とする微生物生息空間のサイズを考慮して適宜選択され、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0026】
また、本実施形態では微生物着床用繊維10Bとして図3に示すように微生物着床部分を構成する繊維表面に多数の微細空間を有しているマイクロファイバが好適に使用できる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態おいて、微生物着床用繊維10Bに使用するマイクロファイバとして、PET等のリサイクル品を原料として製造されたマイクロファイバがリサイクルの観点から特に好ましい。このようなマイクロファイバとして、株式会社菊池エコアースからEE−RMFの商品名で販売されているリサイクルマイクロファイバが特に好ましい。
【0028】
第1の発明において、繊維Aと繊維Bとから構成された編み物を所定の形状の筒状体とする。この際に、筒状体の空隙は、好気性微生物が繁殖するのに十分なサイズであれば、寸法等は特に限定されるものではない。なお、空隙のサイズは、マイクロファイバに着床した微生物が繁殖し、好気度を保持できるようなサイズであれば特に限定されるものではなく、一般には0.5cmから10cmである。サイズが小さければ好気性を保つことが困難であり、逆にサイズが大きければ形状を保持することが困難となる。
【0029】
また、本発明の微生物担体は、図4に示す通り、所定サイズに切断して、流動床用の微生物担体として使用することができる。この際に、図4(a)に示す通り直接適用可能であるが、図4(b)に示す通り、表面をコート材や強化繊維等で強化し、内部表面に繊維Bを露出せさる構成がある。このように表面を強化することにより第1の発明の微生物担体を浮遊させて使用する場合(図5参照)、微生物担体同士が曝気等により衝突しても用意に破壊されることはない。また、この際に第1の発明の微生物担体は、担体全体の比重として1前後、例えば1±0.5であることが好ましい。
【0030】
この際に、図5(c)に示す通り、本発明の微生物担体を構成する繊維として、高収縮糸10Aと普通糸で構成された微生物着床用糸10Bと普通して構成され、十分な強度を有する強化用の保護繊維10Cの織物から構成することができる。このように極太の保護用繊維10Cを適用することにより、表面が保護された本発明の微生物担体を簡単な構成で製造することが可能となる。
【0031】
このような本発明の微生物担体1は、図1(a)に示す通り、高収縮糸からなる支持用繊維10Aとマイクロファイバ(普通糸)からなる着床用繊維10Bとを所定間隔で交差して一体化した前駆体から容易に製造できる。
【0032】
このように構成した前駆体に熱を所定条件で付与すると支持用繊維10Aが収縮し、収縮しない普通糸からなる着床用繊維10Bとの間で図1(b)に示す通り所定の空隙が構成される。本発明においては、このような開口部を微生物生息空間11として使用する。
【0033】
同様にして、図3に示す通り、高収縮糸からなる支持用繊維10Aとマイクロファイバ(普通糸)からなる着床用繊維10Bとを積層し、例えば繊維の長手軸に対して垂直方向に所定間隔で固着する(固着部分X1、X2・・Xn)。このようにして一体化した積層体からなる前駆体に熱を所定条件で付与すると支持用繊維10Aが収縮し、収縮しない普通糸からなる着床用繊維10Bとの間で図2に示す通り所定の空隙が構成される。なお、この際の固着方法は、本発明の目的・効果を奏するものであれば特に限定されるものではなく、接着剤(例えばホットメルト接着剤)による接着、熱付与による融着、縫合など適宜選択できる。
【0034】
この際の、熱付は、使用する高収縮糸の種類、太さなどに依存して例えば熱湯中に数分、例えば2〜3分浸漬するという簡単な方法で実施できる。そのため、本実施形態では、空間密度の高い前駆体を使用場所に輸送し、使用場所で本発明の微生物担体を製造することもできる。そのため、輸送コストが格段に低減することが可能となる。
【0035】
次に、図6、7に基づいて、第1の発明の微生物担体の適用例を示す。図6は、本発明の微生物担体を微生物処理槽に浮遊させた状態を示す図面であり、図7(a)、(b)は、第1の発明の微生物担体を微生物処理槽に従来技術と同様に固定させた状態を示す図面である。
【0036】
図6に示す通り、本発明の微生物担体は、所定の長さの一本の筒状体を多数微生物処理槽に投入して使用することができる。この際に、本発明の微生物担体は曝気により水中に浮遊できるような比重、サイズで構成されるのが好ましく、特に好ましくは微生物担体1同士の衝突による微生物の滑落を防止するために図5(b)に示す通り外表面を強化材料で強化した微生物担体を使用する。このように構成することにより、微生物処理槽中に所定量(例えば処理槽体積の約20%)の本発明の微生物担体を投入した際に衝突による微生物の滑落を最小限に留めて安定した性能で微生物担体の機能を果たすことが可能となる。
【0037】
また、本発明の微生物担体1は、微生物着床用繊維10Bを有しているので、微生物着床用繊維10Bの微生物着床用表面に微生物が着床しやすく、着床した微生物が微生物生息空間である空隙に広がって繁殖する。そのため、従来技術の微生物担体に比較して容易に微生物コロニを形成できるというメリットがある。
【0038】
図7は、本発明の微生物担体1を固定床に適用した場合を例示している。図7(a)に示す通り、本発明の微生物担体1を微生物生息空間が表面に露出するように構成した板状物である。このような板状の微生物担体を、処理槽の全空間あるいは所定間隔で配置することによって、固定床の微生物処理にも適用可能である。
【0039】
図7(b)に示す本発明の微生物担体1の使用例は、ひも状に本発明の微生物担体を構成し、これをフックなどの固定手段で固定床に固定して適用する例である。図7(b)Bに示す通り、従来技術の例と同様に所定の体積、例えば1立米(縦×横×高さ)中に50から100本程度のひも状体の微生物担体を配置し、この棒状体の周囲に第1の発明の微生物担体を貼り付けることも可能である。
【0040】
このように構成された第1の発明の微生物担体は、安価で軽量な材料から構成されている。また、織物は、微生物担体を保持できるのに十分な繊維と表面に微生物を生息させる空間を有する繊維とから構成されているので、微生物担体を保持できる繊維により形状が安定し、またマイクロファイバ等の表面に微生物を生息させる空間を有する繊維により繊維表面に微生物が生息できることができる。また、微生物担体を保持できる繊維はいわゆるクッションの役割を有しているので、輸送時は圧縮することができる。そのため、図8に示す従来の微生物担体と比較してスチール等を使用しないので軽量でありなおかつ多量に輸送できるという特徴を有している。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、図1から図7に示す実施形態は、織物で構成した微生物担体を説明したが、図8に示す通り、繊維束から構成された支持用繊維10Aまたは微生物着床用繊維10Bを編物として適用することも可能である。
【0042】
さらに、図8と同様にして繊維束から構成された支持用繊維10Aまたは微生物着床用繊維10Bをネットワーク状の編物として構成することも可能である。
【0043】
また、以上の実施例は、製造の容易性から高収縮糸からなる支持用繊維10Aを利用したが本発明の作用効果を奏する原料であればこれに限定されるものではない。
【0044】
さらに、以上の実施例は前駆体を構成してこれを現場で熱処理して本発明の微生物担体を形成したが、微生物担体自体クッション性を有しており、圧縮して輸送しても現場で使用する際には所望の微生物担体の形状に復元可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の微生物担体は、維糸の織物または編物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間が形成される微生物担体であって、 前記微生物担体を構成する繊維が、A支持用の繊維と、B微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維との少なくとも2種類の繊維とから構成され、前記繊維間で微生物を生息空間を形成しているので、微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維にまず微生物が着床してから微生物担体の微生物生息空間へと微生物生息域が広がる。 そのため、従来技術に比較して確実に所望の微生物コロニを形成することが可能となる。
【0046】
また、本発明の微生物担体は、前駆体を熱処理するという簡単な操作で形成できるので、単位体積あたり非常に多くの微生物担体を輸送できる。さらに、微生物担体そのものも圧縮して輸送可能であり使用時に復元可能であるので輸送コストやストックコストが大幅に削減可能である。
【0047】
本発明の微生物担体は目的に応じた材料の選定により比重設定が可能であるので、目的に応じて適宜調整可能である。
【0048】
さらに、本発明の微生物担体は、前駆体を形成し、これを熱処理するという簡単な工程で製造できるので、比較的安価な製造コストで製造可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維糸の織物または編物から構成され、前記繊維間に微生物の生息空間が形成される微生物担体であって、
前記微生物担体を構成する繊維が、
A支持用の繊維と、B微生物が着床するのに十分な表面を有する微生物着床繊維との少なくとも2種類の繊維とから構成され、前記繊維間で微生物を生息空間を形成していることを特徴とする微生物担体。
【請求項2】
前記微生物担体の外側表面が強化物質により強化されていることを特徴とする請求項1に記載の微生物担体。
【請求項3】
前記A支持用の繊維が高収縮糸からなる繊維であり、前記B微生物着床繊維が普通糸から構成される繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微生物担体。
【請求項4】
前記B微生物着床繊維がマイクロファイバであることを特徴とする請求項3に記載の微生物担体。
【請求項5】
前記マイクロファイバがリサイクルプラスチックから形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載の微生物担体。
【請求項6】
形状が安定するように前記微生物担体が支持物質により支持されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の微生物担体。
【請求項7】
前記高収縮糸を構成する繊維がポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の微生物担体。
【請求項8】
前記微生物担体は、紐状、ネットワーク状、板状または板状に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の微生物担体。
【請求項9】
前記微生物担体は、微生物を生息させるのに十分な空隙が外側に露出するように複数の板状の微生物担体を組み合わせて構成されていることを特徴とする請求項8に記載の微生物担体。
【請求項10】
前記微生物担体は、水処理槽に浮遊させるのに適したサイズと比重を有する流動床用の微生物担体であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の微生物担体。
【請求項11】
請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の製造方法であって、
A 高収縮糸の織物と、B普通糸の織物とが所定の間隔で交差するように一体化させ、
前記一体化した織物に熱付与して前記高収縮糸を熱収縮させて微生物が生息するのに十分な空間を形成する
ことを特徴とする微生物担体の製造方法。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の前駆体であってA高収縮糸の織物と、B普通糸の織物とが所定の間隔で交差するように一体化させて構成された微生物担体前駆体。
【請求項13】
請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の製造方法であって、
A 高収縮糸からなる支持用の織物と、B普通糸からなる微生物着床用の織物とを積層して積層物を形成し、
前記背規則物の所定位置を接着又は融着して、一体化させ、
前記一体化した織物に熱付与して前記高収縮糸を熱収縮させて微生物が生息するのに十分な空間を形成する
ことを特徴とする微生物担体の製造方法。
【請求項14】
請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の前駆体であって、
A 高収縮糸からなる支持用の織物と、B普通糸からなる微生物着床用の織物とを積層して積層物を形成し、前記背規則物の所定位置を接着又は融着して、一体化させて構成された微生物担体の前駆体。
【請求項15】
請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の編物からなる微生物担体の製造方法であって、
A高収縮糸またはB普通糸の繊維束の所定位置にB普通糸または高収縮糸を編み込んで一体化させ、
一体化した織物に熱付与して前記高収縮糸を熱収縮させて微生物が生息するのに十分な空間を形成する
ことを特徴とする微生物担体の製造方法。
【請求項16】
請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の織物からなる微生物担体の前駆体であってA高収縮糸またはB普通糸の繊維束の所定位置にB普通糸または高収縮糸を編み込んで一体化させて構成された微生物担体前駆体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−115818(P2012−115818A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280971(P2010−280971)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(306016523)株式会社菊池エコアース (11)
【出願人】(506127975)株式会社石原製作所 (4)
【出願人】(510332039)株式会社リオクロス (1)
【Fターム(参考)】