説明

微生物核酸および必要に応じて追加のウイルス核酸を選択的に富化し単離するための方法

本発明は、微生物細胞、遊離の循環核酸、および高等真核生物細胞、および場合によって追加としてウイルスの混合物を液体中に含む試料から、微生物核酸、および追加として任意のウイルス核酸を、選択的に蓄積および/または単離するための方法に関し、また、微生物細胞および高等真核生物細胞、遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、および場合によって追加としてウイルスの混合物を液体中に含む試料から、細胞内微生物核酸、およびさらには細胞外微生物核酸、および追加として任意のウイルス核酸を、選択的に蓄積および/または単離するためのキットにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物細胞、高等真核生物細胞、および遊離の循環核酸、さらには必要に応じてウイルスの混合物を液体中に含む試料から、微生物核酸、必要に応じて追加としてウイルス核酸を、選択的に蓄積および/または単離するための方法に関し、また、微生物細胞および高等真核生物細胞、遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、場合によってさらにはウイルスの混合物を液体中に含む試料から、より具体的には細胞内微生物核酸、さらには細胞外微生物核酸、必要に応じて追加としてウイルス核酸を、選択的に蓄積および/または単離するためのキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学による解析法および診断法は、従来の方法とは対照的に、病原体を極めて迅速に検出し、したがって、迅速に診断することを可能とするので、より具体的には、ヒト医学または獣医学において、感染または疾患に対する遺伝的な素因を検出するのにますます重要となりつつある。病原体の迅速な検出および迅速な診断は、同様に、標的化療法を早期の段階で開始することを可能とし、したがって、より具体的に、生命を脅かす感染症例において、患者の死亡率を決定的に低下させることができる。したがって、例として述べると、敗血症患者の致死率は、現在でもなお20〜50%の範囲にあり、敗血症は、病因の入院患者の最も一般的な死亡原因である。この状況は特に、診断法が比較的時間を要することの結果であり、これは、治療の開始を不可避的に遅延させる。従来は、微生物の増殖が達成され、その後対応するコロニーが検出されうるように、患者から取得される、病原体(複数可)を含有する試料を、適切な条件下で培養する、すなわち、適切な培地で増殖させることにより、この種の感染症の検出を達成する。しかし、この培養法は一般に、数日間(約3〜7日間)を要する。さらに、血液の培養物を調製することによっても検出できない病原体は数多い。これは、より具体的には、ウイルスの診断にあてはまる。
【0003】
したがって、最新の診断法は、病原性核酸(デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA))の特異的な検出に焦点を当てる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、極めて低量の核酸であっても指数関数的に増殖させることを数時間以内に可能とするので、この手法は、例えば、敗血症の診断において、多大な時間の節約を伴う形でヒト血液試料中の微生物DNAを検出することを可能とし、罹患する患者の生存の可能性を決定的に増大させる。
【0004】
病原体の種類に依存するが、検出される核酸の大部分は、細胞内に存在し(「細胞内核酸」)、さもなければ感染試料中に遊離で循環している(「細胞外核酸」)。細胞内核酸の単離を可能とするためには、まず、これらの核酸を細胞から放出させてから、これらを精製し、PCR法を用いて増幅し、かつ/または解析することができる。例えば、敗血症患者に由来する血液試料など、微生物細胞および高等真核生物細胞の混合物を含む試料から、微生物DNAを検出するときのさらなる問題はまた、該細胞を溶解させると、試料中に存在する微生物細胞から、解析される微生物核酸が放出されるだけでなく、高等真核生物から取得される試料におけるその数が一般に微生物細胞の数より何倍も多い高等真核生物細胞から、大量の真核生物核酸もまた放出されるという事実でもある。したがって、この種の混合試料から取得される核酸調製物は、試料中に存在するすべての細胞型の核酸混合物を含む。ヒト敗血症患者に由来する血液試料中のヒトDNAに対する微生物DNAの比の平均は、約1/2×10であり、したがって、微生物DNAを検出するためのその後の増幅法は、非特異的な増幅産物の形成を結果としてもたらすことが極めて多く、これは、その後の診断を複雑にする場合もあり、また、誤診断をもたらす場合もある。
【0005】
先行技術では、このような試料中に存在する細胞に適する細胞破壊(細胞溶解)法によりこの問題を回避する各種の手法が既に施されている。例えば、特許文献1は、微生物細胞だけでなく、高等真核生物細胞もまた含む混合試料から、微生物核酸を選択的に単離することを可能とする方法について記載している。比較的低濃度のカオトロピック剤を含む弱溶解緩衝液を用いると、ヒト血液試料中に天然の形で大量に存在する高等真核生物細胞は破壊される一方、これらもまた被験試料中に存在する微生物細胞は当初のまま依然として完全性を維持する。この方法は、カオトロピック条件下では、微生物細胞が、真核生物細胞と比べてより安定であるという事実を利用している。得られた溶解物は、溶解により放出された真核生物細胞成分、さらには完全な微生物細胞を含み、その後これに適切なヌクレアーゼを添加すると、その真核生物DNAは分解される一方、細胞内微生物DNAは、完全である微生物細胞内で消化から保護される。その後の遠心分離により、(少なくとも部分的に)分解された真核生物DNAを含む溶解物から、微生物細胞をペレットとして取り出すことができる。次のステップでは、このようにして得られた微生物細胞を、さらなる破壊にかけ、微生物細胞内DNAを放出させる。しかし、この方法の欠点は、ウイルス核酸、および遊離の循環核酸、より具体的には、試料の液体成分中、血液試料の場合には、例えば、血漿中に存在する細胞外微生物核酸が、先行するヌクレアーゼによる消化のために不可避的に失われることである。これは、より具体的には、血漿中に存在する核酸、より具体的には、遊離の循環核酸が、重要な予後診断マーカーであることを示しているより最近の知見(A. Rhodesら、Critical Care、2006年、10巻:R60)に関連する欠点である。より具体的に述べると、敗血症では、患者が、血漿中で遊離の循環核酸の含有量の大きな増大を示し、上記含有量を、該患者の疾患の進行および死亡率を予測するための独立した指標として用いることができる(例えば、M. E. Bougnouxら、J. Clin. Microbiol.、1999年、37巻、925〜930頁; L. Metwallyら、J. Med. Microbiol.、2008年、57巻、1269〜1272頁; K. Saukkonenら、Clin. Chem.、2008年、54巻(6号)、1000〜1007頁; Y. K. Tongら、Clin. Chim. Acta、2006年、363巻(1〜2号)、187〜196頁を参照されたい)。
【0006】
WO2009/015484A1はまた、内因性細胞だけでなく、微生物もまた含む体液から、微生物核酸を単離するための方法についても説明している。該文献に記載される方法は、2つのレベルからなる溶解法を含む。第1のステップでは、適切な条件下において、血液細胞を選択的に溶解させる一方、微生物細胞は依然として完全性を維持する。その後、完全な微生物細胞をペレットとして取り出すために、溶解させた試料を遠心分離する。このペレットを洗浄した後で、さらなる溶解により、このペレット中に存在する微生物細胞から、微生物核酸を放出させることができる。微生物細胞および高等真核生物細胞のこの種の混合試料を含む生物学的試料から、微生物細胞を単離するための同様の原理に基づく方法はまた、特許文献2、特許文献3、および特許文献4においても記載されている。しかし、これらの文献に記載されている方法は、細胞外微生物DNAを単離するための手段については1つとして言及していない。
【0007】
全血の混合試料に由来するヒトDNAから、細胞内微生物DNAを分離するさらなる手法が、SIRS−Lab(Jena、Germany)によるVYOOキットの基礎をなしている。混合試料中に存在する異なる細胞を機械的に溶解させた後で、まず、該試料の全DNAを単離する。次のステップでは、微生物病原体の非メチル化DNAに結合する固相結合抗体により、試料中の微生物DNAを蓄積する一方、メチル化ヒトDNAは結合させない。その後のステップでは、結合させた微生物DNAを固相から溶出させ、最後に、得られた溶出物からこれを沈殿させなければならない。この方法を用いると、細胞内微生物核酸および細胞外微生物核酸の両方を蓄積しうるが、抗体により官能化された固相への結合による蓄積は少量であり、また、その後の沈殿においても、相当量の微生物DNAが失われる。さらなる欠点は、この方法でもまた、ウイルス核酸が精製されないことである。加えて、該方法は、極めて時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/092278号
【特許文献2】国際公開第97/07238号
【特許文献3】国際公開第2006/088895号
【特許文献4】国際公開第2008/017097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、微生物細胞および高等真核生物細胞、さらには遊離の循環核酸の混合物を液体中に含む試料から、微生物核酸を選択的に蓄積および/または単離するための方法であって、短時間で同じ試料から、細胞内核酸および細胞外核酸の両方、より具体的には微生物核酸を蓄積および/または単離することを可能とする方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に従う方法により、この目的を達成する。したがって、本発明は、微生物細胞および高等真核生物細胞、さらには遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸の混合物を液体中に含む試料から、微生物核酸を選択的に蓄積および/または単離する方法であって、
1.該遊離の循環核酸、より具体的には該細胞外核酸など、該試料の液体成分中に溶解している物質を含めた、この液体成分を、該試料の固体成分、より具体的には細胞成分から実質的に分離するステップと、
2.該固体試料成分中に存在する該真核生物細胞を、該微生物細胞を同時に溶解させることなく、選択的に溶解させるステップと、
3.ステップ2で得られた溶解物の液体成分中に溶解している物質を含めた、この液体成分から、該微生物細胞を含めた、固体成分を実質的に分離するステップと、
4.ステップ3で得られた固体成分を再懸濁させるステップと、
5.ステップ4で得られた懸濁物中に存在する該微生物細胞を溶解させるステップと、
6.ステップ1で得られた液体成分から、該遊離の循環核酸、より具体的には該細胞外微生物核酸を精製および/もしくは濃縮し、かつ/またはステップ5で得られた溶解物から、該細胞内微生物核酸を精製および/もしくは濃縮するステップと
を含む方法を提供する。
【0011】
試料が、微生物細胞および高等真核生物細胞、ならびに遊離の循環核酸だけでなく、ウイルスも含むとすれば、該ウイルスは、該方法のステップ1で取り出される、試料の主に液体成分中に存在するはずなので、必要に応じてさらに、ステップ6において追加として、さもなければ同時に、ウイルス核酸を蓄積および/または単離することも可能であり、したがってこれらも同様に、該高等真核生物細胞から効果的に除去することができる。
【0012】
本方法のステップ6により、細胞外核酸および細胞内核酸の両方、より具体的には微生物核酸を精製することが特に好ましい。これは、ステップ1による液体成分を、ステップ5による溶解物と混合することと同時に、またはこれと別個に、これと相次いで、もしくはこの後に実施することができる。
【0013】
本発明に従う方法を用いて、微生物細胞だけでなく、高等真核生物細胞および遊離の循環核酸も含む混合試料から、細胞内微生物核酸および細胞外微生物核酸の両方を単離および蓄積することができる。細胞内核酸および/または細胞外核酸を、互いに独立して、または対応する画分を混合した後に併せて、精製および濃縮することが可能である。所望の場合は、該方法がまた、微生物核酸の選択的な蓄積および/または単離に加えて、高等真核生物核酸の選択的な蓄積および/または単離も可能とする。単離される核酸は、RNAおよびDNAの両方であることが可能であり、これらの各々は、一本鎖の場合もあり、二本鎖の場合もある。微生物細胞を検出する場合は、核酸がDNAであることが好ましいのに対し、ウイルスを検出する場合は、ウイルスの種類(DNAウイルスまたはRNAウイルス)に応じて、DNAおよびRNAの両方が対象となる。
【0014】
本発明に従う方法により得られた核酸は、その後、PCR反応および/またはハイブリダイゼーション反応など、高度に特異的な方法および高感度な方法により検出することができる。ヒトgDNAを枯渇させることにより、極めて大量の投入容量を用いることができ、結合させた核酸を、極めて少量の溶出容量中に同時に溶出させることができる。したがって、溶出容量に対する投入容量の比がこのように大きいことの結果として、極めて高い感度が得られる。ヒトgDNAを枯渇させなければ、その後、PCRに対する阻害が生じうるので、この投入/溶出比が可能となることはないであろう。該方法はなお、顆粒球またはマクロファージから、貪食された微生物細胞を放出させ、かつこれらを検出することもまた可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、得られたDNAの総量(すなわち、ヒトDNAと真菌DNAとの総和であり、ヒトDNAが大部分を表わす)であって、単離真菌DNAおよび単離真菌細胞(遊離AspergillusDNA、さらには、C. albicansおよびI. orientalisの細胞)をスパイクしたヒト全血試料から、4つの異なる方法A〜D(実施例1を参照されたい)において取得されたDNA総量を示す図である。試料Aの元になる試料量は、全血500μlとした;試料Bには、1mlの全血を用いた。試料CおよびDでは、出発試料量を、それぞれ、全血5mlおよび10mlとし、ここで、試料Cでは、液体成分(血漿成分)を除去した後に残存する、ヒト核酸を枯渇させた固体試料成分だけを処理および精製する一方、試料Dでは、クロマトグラフィーにより精製する前に、溶解させた微生物細胞を、細胞外微生物核酸を含み、本発明に従う方法のステップ1において取り出された、該試料の液体成分と混合した。試料AおよびBは、ヒトgDNAを枯渇させずに、従来の方法により処理したものであり、したがって、ヒトgDNAの含有量が高量である一方、試料CおよびDにおけるヒトgDNAの含有量は明確に低量であったが、試料CおよびDの試料容量は、試料AおよびBの試料容量の5〜20倍であった。
【図2】図2は、マルチプレックスリアルタイムPCRによる、図1で示した試料A〜Dの微生物DNAの増殖結果を、得られたCT値により示す図である(実施例1を参照されたい)。
【図3】図3は、マルチプレックスリアルタイムPCRによる細菌DNAの増殖結果を示す図であり、該DNAは、単離細菌DNAおよび単離細菌細胞(遊離S. haemolyticusのDNA、さらには、E. coliおよびS. pyogenesの細胞)をスパイクしたヒト全血試料から、3つの異なる方法A、B、およびD(実施例2を参照されたい)において取得された。試料Aの元になる試料量は、全血500μlとした;試料Bには、1mlの全血を用いた。試料Dでは、出発試料量を、全血10mlとし、ここでは、クロマトグラフィーにより精製する前に、溶解させた微生物細胞を、細胞外微生物核酸を含み、本発明に従う方法のステップ1において取り出された、該試料の液体成分と混合した。本発明に従い処理された試料DのCT値はまた、細菌DNAを単離する場合においても明確に低値である。
【図4】図4は、マルチプレックスリアルタイムPCRまたはマルチプレックスリアルタイム逆転写酵素PCRにより、本発明に従う方法を用いて得られたウイルス核酸の増殖結果(黒色バーとして表示する)を、B型肝炎ウイルス(HBV)に基づくデオキシリボ核酸、およびC型肝炎ウイルス(HCV)に基づくリボ核酸について、ウイルス核酸を検出するための市販のキットを用いて取得された核酸(白色バー)と比較して示す図である(実施例3を参照されたい)。
【図5】図5は、実施例4において、マルチプレックスリアルタイムPCRにより処理された試料の微生物DNAの増殖結果を、得られたCT値により示す図である(実施例4を参照されたい)。第1のバーの対は、全A. fumigatus細胞から単離されたDNAについて得られたCT値を示し、第2のバーの対は、C. albicansから単離されたDNA(遊離DNA)のCT値を示し、第3のバーの対は、S. pyrogenesから単離されたDNA(遊離DNA)のCT値を示し、右側のバーの対は、全E. coli細胞から単離されたDNAのCT値を示す。各場合では、左側のバーが、19.5%イソプロパノールの場合における結果を示し、右側のバーが、42%イソプロパノールの場合における結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の目的では、「選択的な蓄積および/または単離」という用語が、微生物細胞、遊離の循環核酸、場合によってウイルス、および高等真核生物細胞を含む混合試料から、再現可能な形で核酸を提供することを可能とする方法であって、上記核酸が、該試料中に存在する該微生物細胞だけに由来するか、または主にこれらに由来し、これらには細胞外微生物核酸が含まれ、さらにはウイルス由来の任意の核酸も含まれるが、同時に、該試料中の高等真核生物細胞に由来する核酸の比率は顕著に低減される方法を意味すると理解される。
【0017】
本発明の目的では、高等真核生物細胞とは、例えば、植物または動物において存在する細胞など、進化のレベルが高等である真核生物細胞を意味すると理解される。この種の多細胞生物は、とりわけ、単一の高等真核生物細胞が、それ自体では、生命に不可欠な生化学機能および代謝機能のすべてを果たすことがなく、特化を介して、1つ以上の機能を果たすように適応している、細胞分化を特色とする。この文脈における高等真核生物細胞という用語は、組織内で組織されている細胞、および個別の細胞、例えば、ヒトを含めた哺乳動物の体液中、またはその排出生成物中、例えば、血液中、リンパ液中、脳脊髄液中、尿中、糞便中、または唾液中で生じる、精子細胞または血液細胞の両方を含む。高等真核生物細胞は、哺乳動物細胞、特に好ましくはヒト細胞であることが好ましい。また、水溶液、例えば、緩衝液中の試料の懸濁物またはスラリーも、本方法の出発物質として利用される。
【0018】
解析される試料は、微生物細胞、遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、場合によってウイルス、および高等真核生物細胞の混合物を流体中に含む。試料は、天然環境、例えば、植物、動物、またはヒトに由来することが好ましい。試料は、哺乳動物、特に好ましくはヒトに由来する、穿刺液、脳脊髄液、リンパ液、滑液、腹水または胸膜液、骨髄、血液、より具体的には全血、精液、尿、糞便、唾液、および気管支肺胞洗浄液、これらの濃縮物もしくは希釈液、またはスワブにより取得された細胞物質の再懸濁物を含む体液であることが好ましい。試料は、血液、または血小板濃縮物もしくは赤血球濃縮物などの血液濃縮物であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の目的では、微生物細胞とは、天然においてそれ自体が単一の細胞としてまたは細胞クラスターとして存在する多様な生物群を指し、したがって、天然において単一の細胞としては存在せず、もっぱら細胞が特化している多細胞生物の構成要素として存在する高等真核生物細胞とは異なる。本発明の目的では、「微生物細胞」という用語は、とりわけ、原核生物細胞、例えば、細菌または古細菌を意味すると理解されるが、また、微細藻類(microscopic algae)、酵母、真菌、または原虫などの下等真核生物の細胞も意味すると理解される。好ましい実施形態では、微生物細胞が、細菌細胞および/または下等真菌細胞である。
【0020】
本明細書における「細菌」という用語は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌、より具体的には、属であるMycobacteriumの種、Enterococcus、Enterobacter、Klebsiella、Proteus、Pseudomonas、Serratioa、Escherichia、Acinetobacter、Streptococcus、Staphylococcus、Salmonella、Legionella、Chlamydia、Shigella、Pseudomonas、Listeria、Yersinia、Corynebacterium、Bordetella、Bacillus、Clostridium、Haemophilus、Helicobacter、およびVibrioの細菌を含む。
【0021】
それらの核酸が本発明に従う方法により蓄積および/または単離されうる真菌細胞とは、より具体的には、属であるAspergillus、Basidiobolus、Cephalosporium、Skopulariopsis、Rhizomucor、Entomophthora、Mucor、Syncephalastrum、Absidia、Altenaria、Rhizopus、Stemphylium、Nigrospora、Chrysosporium、Botrytis、Helmithosporium、Curvularia、Hemispora、Phoma、Paecilomyces、およびThielaviaの真菌、より具体的には、A. fumigatus、 A. tereus、A. niger、A. nidulans、A. homegadus、A. flavus、B. microsporus、B. rhanarum、C. crysogenum、C. corebiobides、C. regatum、およびC. diospyriに由来する細胞である。
【0022】
さらには、属であるCandidaの病原性酵母、例えば、C. tropicalis、C. glabrata、C. krusei、C. parapsilosis、C. albicans、C. guilliermondiiなどの核酸も蓄積および/または単離することができ、同様に、藻類に由来する核酸、例えば、Euglenaの種、Coscinodiscusの種、Trachelomonasの種、Gymnodinium sanguineum、Dinophysis nitra、Ceratium massiliense、Chlorella、Chlorococcum、またはEremosphaeraに由来する核酸、または、例えば、Plasmodium、Trypanosoma、Leishmania、Toxoplasma、およびCryptosporidium、好ましくはPlasmodium malariae、Plasmodium falciparum、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzei、Toxoplasma gondii、Cryptosporidium parvum、Cryptosporidium serpentis、およびCryptosporidium hominisなどの原虫に由来する核酸も蓄積および/または単離することができる。
【0023】
さらにまた、例えば、好ましくは、B型肝炎ウイルス(HBV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、およびサイトメガロウイルス(CMV)のDNA、ならびに/またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびC型肝炎ウイルス(HCV)のRNAなどのウイルス核酸も、必要に応じて、本発明に従う方法により蓄積および/または単離することができる。
【0024】
本発明に従う方法は、特定の試料容量に制約されず、μl範囲の試料容量およびこれとは異なってより多い試料容量、例えば、50mlまたは100mlのいずれも処理することが可能であり、よって、本方法で用いられる、以下で言及される試薬および溶液の量および容量、ならびに同様に個々の手順ステップの持続時間を、適当な場合、当業者に公知の基準に従い、試料量に適切な形で適合させる。試料容量は、1〜20ml、より好ましくは2〜15ml、および特に好ましくは3〜8mlの範囲であることが好ましい。
【0025】
例えば、本発明に従う方法の手順ステップ1および3における固体成分から、試料中に存在する遊離の循環核酸、および追加として任意のウイルスなど、それらの液体成分に溶解している物質を含めた液体成分を、例えば、濾過、遠心分離、またはデカンテーションにより分離することができる。手順ステップ1における固体成分から、該液体成分を、手順ステップ3における方法と同じ方法により分離することもでき、異なる方法により分離することもできる。全血試料を遠心分離することにより該試料から血漿を取得するための、先行技術において公知である方法に従い、本発明に従う方法の手順ステップ1および/または3における固体成分から、該液体成分を分離することが好ましい。試料は、2〜30分間にわたり、より好ましくは5〜20分間にわたり、および特に好ましくは10〜15分間にわたり遠心分離することが好ましい。試料は、2000〜10,000gの範囲の加速度、好ましくは5000gの加速度で遠心分離することが好ましい。試料を遠心分離することにより、本発明に従う方法の手順ステップ1および手順ステップ3の両方における固体成分から、該液体成分を分離する場合、該遠心分離の加速度および持続時間は、2つの手順ステップにおいて同じ場合もあり、異なる場合もある。例えば、全血試料を処理する場合は、5000g±500gで10分間にわたる遠心分離を介する第1の手順ステップにおいて、固体試料成分、より具体的には血液細胞および微生物細胞から、血漿中で遊離して循環する核酸、より具体的には微生物核酸、および存在する場合はウイルスを含めた血漿を除去することができる。遠心分離された試料の上清を除去し、その後、微生物細胞を同時に溶解させることなしに、固体試料成分中、すなわち、ペレット中に存在する真核生物細胞を選択的に溶解させた後で、その液体成分に溶解している物質を含めた、このステップで得られた液体成分(溶解物)、より具体的には、放出された真核生物細胞成分を、例えば、5000±500gで15分間にわたる、さらなる遠心分離ステップによって、微生物細胞を含めた固体成分から分離することができる。
【0026】
遠心分離後、この目的で当業者に公知である任意の方法により、例えば、上清をデカントするかまたはピペッティングで除くことにより、上清を固定成分から除去することができる。
【0027】
本発明に従う方法の手順ステップ2における真核生物細胞の選択的溶解は、
1.チオシアン酸グアニジニウム(GTC)、塩酸グアニジニウム(GuHCl)、イソチオシアン酸グアニジニウム(GIT)、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、尿素、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つのカオトロピック物質と、
2.特に、脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸アルコールのポリオキシアルキレンエーテル、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル、ポロキサマー、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが特に好ましい、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤と、
3.トリス、MES、MOPS、HEPES、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つの緩衝剤物質と
を含む混合物(緩衝液1)において実施することが好ましい。
【0028】
本発明の目的では、「溶解」という用語は、細胞の核酸を囲む膜および/または細胞壁の少なくとも部分的な破壊により、細胞を少なくとも部分的に破壊し、それらを周囲の培地から分離するための方法を意味すると理解される。これらの構造を少なくとも部分的に破壊することにより、タンパク質および核酸などの細胞成分が、周囲の液体に放出される。本発明の目的では、高等真核生物細胞の選択的溶解とは、微生物細胞は溶解させずに、混合試料中の高等真核生物細胞だけを溶解させ、したがって、溶解後には、真核生物細胞の細胞内核酸だけが混合物中に存在する一方、微生物細胞の細胞内核酸は、それらを囲む細胞壁により引き続き保護される方法を指す。この選択的溶解のステップでは、試料中に存在する高等真核生物細胞のうちで溶解させる細胞が、50%を超え、より好ましくは75%を超え、なおより好ましくは90%を超え、および最も好ましくは98%を超えるのに対し、微生物細胞のうちで溶解させる細胞は、好ましくは50%未満であり、より好ましくは20%未満であり、なおより好ましくは10%未満であり、最も好ましくは1%未満であることが好ましい。この種の選択条件は、例えば、用いられる溶解緩衝液の成分、該溶解緩衝液中の該成分の濃度、および試料溶液中の溶解緩衝液の全濃度を介して調整することができ、これは、当業者に公知であり、以下で列挙される例により明確化される。
【0029】
カオトロピック物質とは、水中の規則的な水素結合に干渉する能力を有する化合物を指す。水構造物に対する干渉は、水溶液のエントロピーを増大させ、この溶液中の非極性物質の溶解性を増大させる。結果として、疎水性相互作用が極小化され、タンパク質の変性および細胞壁/形質膜の溶解がもたらされる。カオトロピック物質は、例えば、ホフマイスター順列において見出される。特に有用な物質は、例えば、既に言及したグアニジニウム化合物、さもなければ過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、または尿素である。本発明の目的で好ましい過塩素酸アルカリは、過塩素酸ナトリウムおよび過塩素酸カリウムであり、好ましいヨウ化アルカリは、ヨウ化ナトリウムおよびヨウ化カリウムである。
【0030】
本発明の目的では、界面活性剤とは、少なくとも1つの親水性部分と、少なくとも1つの疎水性部分とを特色とする、有機界面活性物質を意味すると理解される。本発明の目的では、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などのアニオン性界面活性剤、四級テトラアルキルアンモニウム塩、例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリドなどのカチオン性界面活性剤、例えば、3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS)などの両性界面活性剤、および非イオン性界面活性剤、またはこれらの混合物を用いることができる。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、または各種の非イオン性界面活性剤の混合物であることが好ましい。本発明の目的では、非イオン性界面活性剤は、例えば、Arlacel 83、Span 65、Span 80、またはSpan 85の商標名で市販されている、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなど、脂肪酸のソルビタンエステル、対応するラウレート、パルミテート、ステアレート、またはこれらの混合物;例えば、Tween 20またはTween 85の商標名で市販されている、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、セスキオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなど、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、対応するラウレート、パルミテート、ステアレート、またはこれらの混合物;例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、またはこれらの混合物、例えば、Brij 58またはBrij 98の商標名で市販されている、エイコサエチレングリコールヘキサデシルエーテルなど、脂肪酸アルコールのポリオキシエチレンエーテル;例えば、直鎖状または分枝状のCアルキル残基を有するアルキルフェノールポリグリコールエーテル、例えば、Triton X−100, Igepal CA−520またはNonidet P40の商標名で市販されている、例えば、9〜10の酸化エチレン単位を有する、ポリエチレングリコール[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル]エーテルなど、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル;さらには、例えば、Pluronicの商標名で市販されている、酸化エチレンおよび酸化プロピレンのブロックコポリマーである「ポロキサマー」であることが特に好ましい。上記の物質において、分子量が中程度の脂肪酸および脂肪アルコールならびに高分子量の脂肪酸および脂肪アルコール、すなわち、それぞれ、8〜12個および13〜30個の炭素原子を有する脂肪酸および脂肪アルコールを、互いに独立して用いることが好ましい。これらの脂肪酸および脂肪アルコールは、飽和脂肪酸および飽和脂肪アルコールの場合もあり、不飽和脂肪酸および不飽和脂肪アルコールの場合もある。界面活性剤は、溶解緩衝液中の個々の化合物の混和性、および該溶解緩衝液の試料との混和性の両方を増大させる。さらに、界面活性剤はまた、細胞の細胞壁構造物または形質膜構造物の破壊も能動的に達成しうる。
【0031】
本発明の目的では、緩衝剤物質とは、溶液中において、反応または外部からの添加を介して、プロトンが放出されるのか、または消費されるのかに応じて、プロトンを受容または放出することによって、上記緩衝剤物質を含む溶液のpHを一定に保つ、酸およびその共役塩基による系を指す。したがって、本発明の目的では、緩衝剤物質を、溶媒および実質的な緩衝剤物質だけでなく、例えば、塩、界面活性剤、およびカオトロピック剤など、さらなる物質もまた含みうる緩衝剤溶液(また、緩衝液とも称する)と区別すべきである。本発明の目的では、緩衝剤溶液のpHを6〜10の範囲、より好ましくは7〜9の範囲、最も好ましくは8に安定化させる緩衝剤物質が好ましい。本発明の目的ではまた、両性緩衝剤物質、すなわち、同じ分子内に、少なくとも1つの酸性基と、少なくとも1つの塩基性基とを保有し、したがって、酸としても塩基としても反応しうる化合物も好ましい。
【0032】
特に好ましい実施形態では、本発明に従う緩衝液1を添加した後における試料中の緩衝剤成分濃度が、(1)カオトロープ、好ましくは、上に記載した、グアニジニウムを含むカオトロープ0.1〜2M、好ましくは0.2〜1M、より好ましくは0.4〜0.8Mの;(2)界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤0.5〜5%(w/v)、好ましくは1〜4%(w/v)、より好ましくは1.8〜3%(w/v);および(3)最も好ましくはpH8.0において緩衝剤物質2〜50mM、好ましくは4〜30mM、より好ましくは10mMであるように、該緩衝液を、溶解緩衝液1として、溶解させる試料に添加する。溶解液(lysis solution)においてこの種の濃度に到達するために、好ましい実施形態では、以下の濃度を有する緩衝液を用いる:(1)好ましくはグアニジニウムを含むカオトロープ0.2〜4M、好ましくは0.4〜3M、より好ましくは2M;(2)界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤0.5〜10%(w/v)、好ましくは1〜5%(w/v);および(3)pHが好ましくは6.0〜10.0の範囲にあり、より好ましくは7.0〜9.0の範囲にあり、最も好ましくは8.0である緩衝剤物質2〜100mM、好ましくは10〜50mM。
【0033】
本発明に従う方法の手順ステップ3における固体成分からの液体成分の分離であって、遠心分離により達成されることが好ましい分離については、既に上に記載した。液体成分を除去した後に残る容量の液体中に固体成分を分散させる目的で、例えば、この液体中で試料を短時間にわたり振とうすることにより、該液体成分から除去された該固体成分、特に微生物細胞を含む、この分離で得られるペレットを、本発明に従う方法のステップ4において再懸濁させる。あるいはまた、振とう前または振とうの間において、該試料に少量の水、適切な緩衝剤溶液、または他の適切な溶媒を供給することもできる。また、ペレットを、適切な洗浄液、例えば、溶解緩衝液中で洗浄する中間的なステップも導入することができる。
【0034】
本発明に従う方法の手順ステップ5における微生物細胞は、原則として、当業者に公知であり、該微生物細胞の細胞壁および/または形質膜を少なくとも部分的に破壊し、細胞内に存在する細胞成分、より具体的には核酸を、周囲の液体に放出させるのに適する任意の方法を用いて溶解させることができる。先行技術では、例えば、融解および凍結の反復、リソスタフィン、リチカーゼ、またはリゾチームなどの酵素による処理、適切な濃度のカオトロピック物質または界面活性剤などの化学的薬剤の添加など、多様な種類の微生物細胞に対する複数の方法が記載されている。同時に実施することもでき、逐次的に実施することもできる、各種の溶解法を溶解手段の適合性に応じて組み合わせることが、特に極めて有効である。本発明に従う方法の手順ステップ5における微生物細胞の少なくとも部分的な溶解は、機械的に達成することが好ましい。適切な機械的方法は、例えば、フレンチプレス、細胞ミル、または乳鉢による微生物細胞の処理、さらには超音波処理を含む。適切な粒子、より具体的にはビーズ、好ましくはガラスビーズを用いる試料の機械的ホモジナイズにより、本発明に従う方法の手順ステップ5において微生物を溶解させることが特に好ましい。この溶解では、微生物細胞を含む試料とガラスビーズとの機械的混合を、例えば、実験室用のボルテックス装置であるQIAGEN Tissue−Lyser、Fast Prep装置など、この試料を水平方向および/または垂直方向に振とうする装置内で実施することが好ましい。試料の機械的ホモジナイズは、追加として、溶解特性も示しうる緩衝剤溶液の存在下で実施することが好ましい。特に好ましい実施形態では、緩衝剤溶液、より具体的には溶解特性を有する緩衝液の存在下で、サイズが400〜600μmの範囲にあるガラスビーズを用いることにより、本発明に従う方法の手順ステップ5において、微生物細胞を溶解させる。
【0035】
さらに、溶解特性も呈示する、上記の機械的溶解において用いるのに適する緩衝剤溶液(緩衝液2)は、
1.トリス−HCl、MES、MOPS、HEPES、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つの緩衝剤物質と、
2.二価金属イオンの、少なくとも1つの錯化剤、好ましくはEDTAと、
3.脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸アルコールのポリオキシアルキレンエーテル、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル、ポロキサマー、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが特に好ましい、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤と、
4.必要に応じて、Reagent DX(QIAGEN、Hilden、Germany)およびSILFOAM(登録商標)SRE(Wacker Chemie、Munich、Germany)、および類似の適切な発泡抑制剤を含む群から選択されることが好ましい発泡抑制剤と
を含み、pHが6〜10の範囲にあり、好ましくは7〜9の範囲にあり、最も好ましくは8であることが好ましい。
【0036】
本発明の目的では、緩衝剤物質および界面活性剤という用語の意味、さらには好ましい実施形態については、溶解緩衝液1についての上記で既に説明した。緩衝液1について言及した実施形態は、緩衝液2の成分としても同様に好ましく、緩衝液2に用いられる非イオン性界面活性剤は、例えば、Triton X−100の商標名で市販されている、直鎖状または分枝状のCアルキル残基を有するアルキルフェノールポリグリコールエーテルなど、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテルであることが特に好ましい。
【0037】
さらに、緩衝液2は、錯化剤、より具体的には二価金属イオンの錯化剤を含む。金属イオンおよびより具体的には二価金属イオンを錯体化することが可能なすべての物質、例えば、DTPA、EGTA、またはEDTAがこの目的に適し、EDTAが好ましい。
【0038】
必要に応じて、緩衝液2は追加として発泡抑制剤も含んでよいが、それにより、機械的溶解の間に、試料が過剰に発泡し、極端な場合、試料が試料容器から望ましくない形で漏れ出て物質が失われることを防止することができ、さらにまた、とりわけ、体積の増加によるその後の試料処理の複雑化についてもそれを防止することができる。本発明の目的では、例えば、市販の発泡抑制剤であるReagent DX(QIAGEN、Hilden、Germany)およびSILFOAM(登録商標)SRE(Wacker Chemie、Munich、Germany)が好ましい。溶解緩衝液が発泡抑制剤を含む場合、この阻害剤は、該緩衝液の全組成に基づき、0.1〜1%(v/v)の百分率で存在することが好ましい。
【0039】
また溶解特性も有利に呈示する緩衝液2は、(1)緩衝剤物質、(2)錯化剤、(3)界面活性剤、および(4)必要に応じて、Reagent DXなどの発泡抑制剤を含み、pHが7.0〜9.0の範囲にあることが特に好ましい。各々の緩衝液成分は、機械溶解の間では、(1)緩衝剤物質2〜20mM、好ましくは4〜15mM、より好ましくは5〜10mM、(2)錯化剤0.1〜5mM、好ましくは1〜4mM、より好ましくは2〜3mM、(3)界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤0.1〜5%(w/v)、好ましくは1〜3%(w/v)、より好ましくは1.8〜2%(w/v)、および(4)必要に応じて、発泡抑制剤0.1〜1%(v/v)、好ましくは0.3〜0.9%(v/v)、より好ましくは0.5〜0.7%(v/v)の濃度で、好ましくは7.0〜9.0の範囲内、より好ましくは8.0のpHで存在することが好ましい。この種の溶解条件をもたらす適切な緩衝剤溶液は、好ましくは、(1)5〜50mM、好ましくは8〜25mM、より好ましくは10〜20mMの緩衝剤物質、(2)0.5〜10mM、好ましくは1〜8mM、より好ましくは2〜5mMの錯化剤、(3)0.2〜10%(w/v)、好ましくは0.5〜5%(w/v)、より好ましくは1.2〜2%(w/v)の界面活性剤、および(4)必要に応じて、0.1〜3%(v/v)、好ましくは0.2〜2%(v/v)、より好ましくは0.5〜1%(v/v)の、例えば、Reagent DXなどの発泡抑制剤を含み、好ましくはpHが7.0〜9.0の範囲内、より好ましくは、8.0である。
【0040】
上記の溶解法が、微生物細胞の完全な溶解をもたらさず、その微生物細胞の部分的な溶解をもたらすに過ぎないことが実際には生じうるので、好ましい実施形態ではさらに、溶解液を用いて実施することが好ましい下流の溶解法も施される。しかしまた、あらかじめ機械的溶解を実施することなく、適切な溶解液により微生物細胞を直接溶解させることも可能である。
【0041】
特に微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸の精製および濃縮が、プロテアーゼによる消化を包含することは特に有利なので、この消化を、上記の溶解ステップと組み合わせることが好適でありうる。しかしまた、プロテアーゼ消化を別の手順ステップにおいて実施することも可能であり、例えば、機械的溶解と組み合わせて実施することもでき、後続の精製工程および/または濃縮工程において実施することもできる。
【0042】
手順ステップ5に対応する微生物細胞の溶解を最適化するためには、プロテアーゼ、好ましくはプロテイナーゼK、および溶解緩衝液(緩衝液3)を、手順ステップ4からの懸濁物、または上記の先行する機械的溶解から結果として得られる溶解物に添加することにより、少なくとも部分的に溶解を達成することが有利であり、これは、適当な場合、同様に少なくとも部分的に溶解性である緩衝液により支援される。緩衝液3は、
1.チオシアン酸グアニジニウム(GTC)、塩酸グアニジニウム(GuHCl)、イソチオシアン酸グアニジニウム(GIT)、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、尿素、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つのカオトロピック物質と、
2.脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸アルコールのポリオキシアルキレンエーテル、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル、ポロキサマー、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが特に好ましい、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤と、
3.トリス、MES、MOPS、HEPES、およびこれらの混合物が好ましい、少なくとも1つの緩衝剤物質と
を含むことが好ましい。
【0043】
得られた混合物を、好ましくは45°〜70℃で5〜40分間にわたり、より好ましくは50〜65℃で10〜20分間にわたり、特に好ましくは60℃で15分間にわたりインキュベートして、プロテアーゼを活性化させる。この目的では、試料を、試料容量の40〜150%、好ましくは70〜110%、およびより具体的には90%である容量の緩衝液3、ならびに容量が、試料容量の1〜30%、好ましくは5〜20%、および特に好ましくは10%であるプロテアーゼ溶液、好ましくは、例えば、QIAGEN Proteinase K(QIAGEN、Hilden、Germany)として市販されている、>600mAU/ml(AU:アンソン単位)であるプロテイナーゼK溶液と混合することが好ましい。例えば、特に好ましい実施形態では、5mlの試料に、4mlの緩衝液3および0.5mlのプロテアーゼ溶液を添加する。
【0044】
溶解の間では、緩衝剤溶液のうちの上記の物質が、より具体的には、(1)カオトロープが1〜5M、(2)界面活性剤が5〜20%(w/v)、および(3)緩衝剤物質が20〜100mMの濃度で、より具体的にはpH8.0で存在する場合に、特に良好な結果が達成される。
【0045】
この種の溶解条件をもたらす適切な緩衝液は、(1)3〜10M、好ましくは4〜8M、より好ましくは4.5〜6Mのカオトロープ、(2)10〜40%(w/v)、好ましくは15〜30%(w/v)、より好ましくは20〜25%(w/v)の界面活性剤、および(3)40〜200mM、好ましくは50〜150mM、より好ましくは70〜100mMの緩衝剤物質を含み、より具体的にはpHが8.0である。
【0046】
特に好ましい実施形態では、上記の緩衝液3を、手順ステップ1からの液体成分にあらかじめ添加した。
【0047】
本発明に従う方法の好ましい実施形態では、細胞内微生物核酸および遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸の両方、および追加として、特に好ましくは、ウイルス核酸を、蓄積および/または単離する。
【0048】
この目的では、本発明に従う方法の手順ステップ1において取り出され、遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を含む液体成分を、手順ステップ5において得られ、本発明に従う方法の手順ステップ6において精製および/または濃縮される前の細胞内微生物核酸を含む溶解物と混合することができる。この場合、本発明に従う方法の手順ステップ1において取り出され、遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を含む液体成分を、それを取り出した直後に上記の緩衝液3に添加し、その中でこれを保存しうることが好ましい。次いで、その後、上記の通り、任意選択の上流の機械的溶解ステップにおいて得られ、細胞内微生物核酸を含む溶解物を、溶解を最適化する目的でこの混合物に添加することができる。
【0049】
あるいは、本発明に従う方法の手順ステップ1において得られ、遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を含む液体成分、ならびに手順ステップ5において得られ、細胞内微生物核酸を含む溶解物を、互いに独立して精製および/または濃縮することもできる。手順ステップ1で得られた液体成分がまた、ウイルスも含み、ウイルス核酸の単離が所望される場合は、この液体成分を、該ウイルス核酸を放出させるさらなるステップにさらにかけることが好ましい。この目的のための方法は、当業者に公知であり、化学溶解および/またはプロテイナーゼ消化を含むことが典型的である。
【0050】
各々の場合の個別の試料混合物における、手順ステップ4からの懸濁物または上記の先行する機械的溶解の結果として得られる溶解物、および手順ステップ1において得られた液体成分の両方に、プロテアーゼ消化のためのプロテーゼ、好ましくはプロテイナーゼK、より具体的には緩衝液の形態であるプロテイナーゼKを添加することができる。あるいは、機械的溶解による溶解物、および手順ステップ1からの液体成分を、必要に応じて、緩衝液3と組み合わせて混合してから、プロテアーゼを含有する緩衝液を添加することもできる。
【0051】
プロテアーゼを含有する緩衝液を、機械的溶解による溶解物だけに添加することも同様に可能である。次いで、その後、手順ステップ1による液体成分に由来する細胞外核酸を、下流の化学的溶解による溶解物中に存在する細胞内核酸と共に、以下で説明される、さらなるステップ6a〜6dに従い、併せて(混合して)精製および/濃縮することもでき、互いに独立して精製および/濃縮することもできる。
【0052】
本発明に従う方法のステップ6における、微生物核酸およびウイルス核酸の精製および/または濃縮は、以下のステップ:
6a)手順ステップ5からの溶解物に、(1)直鎖状または分枝状のC〜Cアルコール、より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールまたはn−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、またはtert−ブタノール、好ましくはイソプロパノールと、(2)緩衝液3に対応する緩衝液との、好ましくは、緩衝液3の容量20〜70%に対して、直鎖状または分枝状のC〜Cアルコールの容量30〜80%の比による混合物を含むことが好ましい混合物(結合緩衝液)を添加し、結果として得られる混合物をインキュベートするステップと、
6b)該試料を、適切なクロマトグラフィー装置、好ましくは、微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を、吸着、特に好ましくはシリカベースの吸着により選択的に結合させるためのクロマトグラフィー装置にアプライするステップと、
6c)必要に応じて、該結合させた微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を、1回以上にわたり、好ましくは(1)チオシアン酸グアニジニウム(GTC)、塩酸グアニジニウム(GuHCl)、イソチオシアン酸グアニジニウム(GIT)、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つのカオトロピック物質、(2)直鎖状または分枝状のC〜Cアルコール、好ましくはエタノール、ならびに(3)濃度が2〜4Mの範囲にあることが好ましい、少なくとも1つのカオトロピック塩を含む第1の溶液(洗浄緩衝液1)で洗浄し、好ましくは、その後、(1)直鎖状または分枝状のC〜Cアルコール、好ましくはエタノール、(2)濃度が10〜200mMの範囲にある非カオトロピック塩、好ましくは塩化ナトリウム、および(3)1〜25mMの、トリス、MES、MOPS、HEPES、またはこれらの混合物(pH7.5)であることが好ましい緩衝剤物質を含むが、カオトロピック物質を含まない第2の溶液(洗浄緩衝液2)により洗浄するステップと、
6d)必要に応じて、好ましくは水、または(1)少なくとも1つの緩衝剤物質、および(2)金属イオン、より具体的には、二価金属イオンに対する、少なくとも1つの錯化剤を含む溶液(溶出緩衝液)により、該微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を溶出させるステップと
を含むことが好ましい。同様に、他の従来の溶出剤も用いることができる。
【0053】
試料に添加される結合緩衝液の容量は、試料容量の100〜500%の範囲であることが好ましく、試料容量の200〜400%の範囲であることが好ましく、試料容量の320%であることが特に好ましい。その後、結果として得られる混合物を、−5〜5℃で1〜20分間にわたり、特に好ましくは、0℃で2〜10分間にわたり、より具体的には0℃で5分間にわたりインキュベートすることが好ましい。
【0054】
得られた微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を、吸着により、好ましくは、適切な結合緩衝液を添加すると、溶液中に存在する核酸分子には実質的かつ選択的に結合する一方、該溶液中に存在するタンパク質およびさらなる細胞成分、ならびに塩、緩衝剤物質、界面活性剤などの緩衝液成分は溶液中に残存させ、洗浄溶液により、該結合させた核酸からこれらを除去しうる、シリカベースのマトリックスへの吸着により固体マトリックスに選択的に結合させることにより、該微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を、試料成分の残りから除去することが好ましい。本発明の目的では、マトリックスを介する核酸の「選択的結合」(「selective binding」および「selective attachment」)という用語は、核酸分子のマトリックスとの特異的相互作用(複合体化、付着などを介する化学的結合または物理的結合)を意味する一方、マトリックスが、核酸ではないさらなる試料成分、例えば、塩、タンパク質などとは相互作用しないか、またはこれらと相互作用する程度が低いことを意味すると理解される。しかし、マトリックスが、由来の異なる核酸と異なる形で相互作用することは必要でない、すなわち、真核生物核酸と比較した場合に、微生物核酸との相互作用の種類および強度が異なる必要はない。適切なシステムは当業者に公知であり、例えばまた、試料中に存在するDNAだけに選択的に結合する一方、試料中に存在するRNA分子、さらには、試料中に存在するタンパク質およびさらなる試料成分、ならびに緩衝液成分は溶液中に残存させるフォーマットにおいても、複数の構成で市販されている。単離するのがDNAに限り、RNAではない場合は、この種のフォーマットが特に好ましい。本発明の目的では、例えば、洗浄および溶出が、遠心分離または真空の適用により単純かつ迅速に実施されうるスピンカラムの形態であることが好ましい、QIAamp Circulating Nucleic Acid Kit(Qiagen、Hilden、Germany)中に存在するQIAamp DNA MiniカラムまたはQIAamp Miniカラムが特に好ましい。結合させた微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を必要に応じて洗浄するステップに用いられる洗浄緩衝液1および2の容量は、ステップ6bで用いられるクロマトグラフィー装置のサイズおよび寸法、さらには、アプライされる試料の量の関数である。対応する情報は、各々の製造元のプロトコールにおいて見出すことができる。QIAamp DNA Miniカラムの場合、例えば、元の試料容量が10mlであるヒト全血から取得された試料を精製するのに好ましい洗浄溶液1および2の容量は、500〜900μlの範囲にある。
【0055】
結合させた核酸を洗浄した後で、カラムを乾燥させてから、本発明に従う方法のステップ6d)において、カラムから核酸を必要に応じて溶出させうることが好ましい。この目的では、カラムを、例えば、500〜900μlのエタノールですすぎ、その後、最大速度で遠心分離し、次いで、室温または高温(40〜65℃)で乾燥させることができる。
【0056】
本発明に従う方法のステップ6d)において必要に応じて用いられる溶出緩衝液は、トリス−HClおよびEDTA、特に好ましくは2〜20mMのトリス−HClおよび0.1〜1mMのEDTA、より具体的には10mMのトリス−HClおよび0.5mMのEDTAを含むことが好ましい。溶出緩衝液の容量もまた、クロマトグラフィー装置の種類および寸法、ならびに該クロマトグラフィー装置にアプライされる試料の量の関数である。好ましい容量は、例えば、クロマトグラフィー装置の製造元による指示書において見出すことができる。QIAamp DNA Miniカラムおよび出発試料量が約10mlの全血を用いる場合、溶出緩衝液の容量は、20〜200μlであることが好ましい。例えば、溶出緩衝液を添加した後で、カラムを、室温で短時間にわたり(約1〜5分間にわたり)インキュベートしてから、例えば、20,000gで0.5〜3分間にわたる、最大速度の遠心分離により核酸を溶出することが好ましい。
【0057】
しかし一般にはまた、先行する溶出なしに、結合させた核酸をさらに処理および/または解析することも可能である。
【0058】
本発明は、微生物細胞および高等真核生物細胞、ならびに遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、さらには場合によって追加として、ウイルスの混合物を液体中に含む試料から、細胞内微生物核酸、さらには遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、さらには任意のさらなるウイルス核酸を、選択的に蓄積および/または単離するためのキットであって、
1.溶解特性を有することが好ましい、上記で既に詳細に説明されている第1の緩衝液(緩衝液1)と、
2.溶解特性を有することが好ましい、少なくとも1つの第2の緩衝液(緩衝液2)、および/または溶解特性を有することが好ましく、同様に上記で既に詳細に説明されているさらなる緩衝液(緩衝液3)と、
3.直径が400〜600μmの範囲にあることが好ましく、直径が500μmであることが特に好ましいガラスビーズと
を含むキットをさらに提供する。
【0059】
好ましい実施形態では、キットが、微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を精製および/または濃縮するためのクロマトグラフィー装置、好ましくは、DNAおよび/またはRNAを、吸着、特に好ましくはシリカベースの吸着により選択的に結合させるためのクロマトグラフィー装置をさらに含み、また、結合緩衝液、好ましくは、既に規定した結合緩衝液、必要に応じて1つ以上の洗浄緩衝液、好ましくは上記で既に規定した2つの洗浄緩衝液、および必要に応じて溶出緩衝液、好ましくは上記で既に規定した溶出緩衝液もさらに含む。必要に応じて、キットは、マルチプレックスアッセイで蓄積および/または単離された核酸を検出するための構成要素、例えば、マルチプレックスPCRで得られたDNAを検出するための複数のプライマー対、適切なDNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、Mg2+イオンの供給源および/またはPCRに適する緩衝剤溶液をさらに含みうる。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
全血試料からの真菌DNAの選択的な蓄積および単離
全血に、遊離AspergillusDNA(全血1ml当たり、1×10個のゲノム当量)、ならびにC. albicansおよびI. orientalisの細胞(各場合において、全血1ml当たり、1×10個の細胞)をスパイクした。真菌DNAを単離するために、スパイクした血液の一部を、合計4つの異なる方法A〜Dにより処理した。
【0061】
A(ヒト核酸を枯渇させず、機械的前溶解ステップを伴わない比較法):スパイクした全血500μlに、20mMのトリス−HCl、2mMのEDTA、1.2%のTriton X−100、および0.5%のReagent DXを含む250μlの溶解緩衝液2を添加し、これと混合した。得られた混合物に、市販のLysis Buffer AL(QIAGEN、Hilden、Germany)500μl、さらには、50μlのQiagen Proteinase Kを添加し、56℃で10分間にわたりインキュベートした。その後、製造元の指示書に従い、キット中に存在するミニカラムならびに洗浄緩衝液および溶出緩衝液を用いるQIAamp Blood Mini Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を用いて核酸を単離し、該カラムに結合させた核酸を、Buffer AW1およびBuffer AW2の各々750mlにより洗浄し、50μlのBuffer AEで溶出させた。
【0062】
B(ヒト核酸を枯渇させない比較法):スパイクした全血1mlに、500μlの溶解緩衝液2、さらには、直径500μmのガラスビーズ800mgを添加し、ボルテックスすることにより10分間にわたり混合し、機械的破壊を達成した。得られた500μlの混合物に、市販のLysis Buffer AL(QIAGEN、Hilden、Germany)500μl、さらには、50μlのQiagen Proteinase Kを添加し、56℃で10分間にわたりインキュベートした。その後、製造元の指示書に従い、キット中に存在するミニカラムならびに洗浄緩衝液および溶出緩衝液を用いるQIAamp Blood Mini Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を用いて核酸を単離し、該カラムに結合させた核酸を、Buffer AW1およびBuffer AW2の各々750mlにより洗浄し、50μlのBuffer AEで溶出させた。
【0063】
C:スパイクした全血5mlに、1.5MのGTC、6.7%のBrij 58、および33mMのトリス(pH8)を含む1.9mlの溶解緩衝液1を添加し、この混合物を室温で10分間にわたりインキュベートし、その後、5000rpmで10分間にわたり遠心分離した。遠心分離後に得られた上清を廃棄し、約50μlの容量を残した。残るペレットを、約450μlのPBS緩衝液(137mMの塩化ナトリウム、2.7mMの塩化カリウム、ならびにリン酸水素二ナトリウムおよびリン酸二水素カリウムによる12mMの全リン酸塩を含む)に再懸濁させた。得られた混合物(約500μl)を、250μlの溶解緩衝液2、および直径約425〜600μmのガラスビーズ400mgを含有する新たな容器に移した。ボルテックスすることにより10分間にわたり試料を混合し、機械的破壊を達成した。得られた500μlの上清に、市販のLysis Buffer AL(QIAGEN、Hilden、Germany)500μl、さらには、50μlのQiagen Proteinase Kを添加し、56℃で10分間にわたりインキュベートした。その後、製造元の指示書に従い、キット中に存在するミニカラムならびに洗浄緩衝液および溶出緩衝液を用いるQIAamp Blood Mini Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を用いて核酸を単離し、該カラムに結合させた核酸を、Buffer AW1およびBuffer AW2の各々750mlにより洗浄しカラムを乾燥させてから、50μlのBuffer AEで溶出させた。
【0064】
D.(本発明による方法):スパイクした全血10mlを約5000gで10分間にわたり遠心分離し、血漿中に存在する細胞外核酸を含めた血漿を取り出した。遠心分離を実施した後で、上相の血漿(約4.5ml)を取り出し、新たな容器に移した。PBS緩衝液を添加することにより、固体成分の容量を最大10mlとした。3.75mlの溶解緩衝液1を添加した後に、得られた混合物を、室温で10分間にわたりインキュベートした。弱溶解緩衝液は、ヒト細胞だけを溶解させ、微生物細胞には依然として完全性を維持させる。その後、試料を約5000rpmで15分間にわたり遠心分離した。250μlの容量を残して、得られた上清を除去し、これを廃棄した。この上清は、特に、ヒトDNAを含み、あるいはまた、別個の核酸分別精製手順にさらに用いることもできる。残るペレットに、各々250μlのPBS緩衝液および溶解緩衝液2を添加した。サイズが425〜600μmのガラスビーズ400mgを添加し、その混合物を、ボルテックスするか、または50HzでQIAGEN TissueLyser LTを用いることにより、10分間にわたり混合し、機械的破壊を達成した。500μlの上清を、既に取り出した血漿画分に添加し(また、液体試料の材料の損失を最小限にするため、機械的に破壊された試料の混合物およびガラスビーズを、目の粗いフィルターを介して、該血漿画分に直接に濾過することも可能である)、4.5MのGTC、20%のBrij 58、および100mMのトリス(pH8)を含む4mlの溶解緩衝液3、ならびに500μlのQIAGEN Proteinase Kを添加した。得られた混合物を、60℃で20分間にわたりインキュベートし、1.2MのGTC、5.5%のBrij 58、27.6mMのトリス、および72%(v/v)のイソプロパノールを含む9mlの結合緩衝液を添加し、ボルテックスすることにより混合し、氷上で5分間にわたりインキュベートした。その後、真空下において、カラムにアプライされる試料自体の容量より多い試料容量を可能とする補助カラム(attachment)、例えば、20mlのExtender(QIAgen、Hilden、Germany)の助けにより、試料をQIAamp Miniカラムに引き入れ、試料中に存在する核酸を、該カラムに選択的に結合させた。次いで、カラムに結合させた核酸を、市販のBuffer AW1およびBuffer AW2の各々750mlで洗浄し、カラムを乾燥させ、市販の50μlのBuffer AE(QIAgen、Hilden、Germany)でその核酸を溶出させた。UV−可視分光光度法により、溶出物中の全DNA(ヒトDNAおよび真菌DNA)の量を決定した(図1)。真菌DNAを検出するには、各精製試料8μlを採取し、マルチプレックスPCRにかけた。その結果を図2に示す。
【0065】
(実施例2)
全血試料からの細菌DNAの選択的な蓄積および単離
全血に、遊離のS. haemolyticusDNA(全血1ml当たり、1×10個のゲノム当量)、ならびにE. coliおよびS. pyogenesの細胞(各場合において、全血1ml当たり、1×10個の細胞)をスパイクした。細菌DNAを単離するために、スパイクした血液の一部を、合計3つの異なる方法である、実施例1に記載したA、B、およびDにより処理した。細菌DNAを検出するために、各精製試料7.5μlを採取し、マルチプレックスPCRにかけた。その結果を図3に示す。
【0066】
(実施例3)
全血試料からのウイルス核酸の選択的な蓄積および単離
各場合において、血液試料中のウイルス濃度5.0×10IU/ml(1ミリリットル当たりの国際単位)が得られるように、ヒト全血に、市販のHBV基準物質およびHCV基準物質(Acrometrix Benicia、California、USA)をスパイクした。
【0067】
ウイルス核酸を単離するために、試料を2つの異なる方法で処理した。第1の場合には、スパイクした血液の一部を遠心分離することにより得られた500μlの血漿を、製造元の指示書に従い、市販のQIAGEN DSP Virus Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を用いて処理した。他の場合には、8mlのスパイクした全血を、実施例1のDにおいて記載した通り、本発明による方法に従い処理した。リアルタイムPCRおよびリアルタイム逆転写酵素PCRにより、得られたウイルス核酸の検出および定量化を実施した。その結果を、図4に示す。
【0068】
(実施例4)
結合緩衝液において異なるイソプロパノール濃度を用いる微生物核酸の単離
ヒト全血に、Aspergillus fumigatusおよびCandida albicansの遊離DNA、またはS. pyogenesおよびE. coliの生細胞をスパイクした。まず、上記のDで説明した、本発明による方法に従い、ヒト血液細胞に由来するgDNAをこれらの試料から枯渇させ、それらを含有する試料中の微生物細胞を、上記の通りに破壊した。各場合において、4mlの溶解緩衝液3および0.5mlのプロテイナーゼK溶液を、混合した血漿画分(各場合において、合計5ml)に添加した。得られた混合物を、60℃で20分間にわたりインキュベートし、1.2MのGTC、5.5%のBrij 58、27.6mMのトリス、およびイソプロパノールを含む9mlの結合緩衝液を添加し、ボルテックスすることにより混合し、イソプロパノール濃度が、該結合混合物中で約19.5%のイソプロパノール濃度、または約42%のイソプロパノール濃度をもたらす結合緩衝液と共に氷上で5分間にわたりインキュベートした(各場合において、結合緩衝液は当初、5.4mlの溶解緩衝液、1.2MのGTC、5.5%のBrij 58、27.6mMのトリス、および3.6mlのイソプロパノールを含んだ。イソプロパノール濃度を増大させる混合物では、該混合物に、7mlのさらなるイソプロパノールを添加した)。上記の通りに、その試料をさらに処理した。
【0069】
得られた該微生物核酸を検出および定量化するために、各精製試料から7.5μlを採取し、マルチプレックスPCRにかけた。その結果は、表1および図5で見ることができる。シリカカラムを通る試料の流過時間は、19.5%イソプロパノールの場合が10.5分間であり、42%イソプロパノールの場合が6.5分間であった。
【0070】
表1:CT値の平均
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物細胞、高等真核生物細胞、および遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸の混合物を液体中に含む試料から、微生物核酸を選択的に蓄積および/または単離する方法であって、
1.該遊離の循環核酸、より具体的には該細胞外核酸など、該試料の液体成分中に溶解している物質を含めた、この液体成分を、該試料の固体成分、より具体的には細胞成分から実質的に分離するステップと、
2.該固体試料成分中に存在する該真核生物細胞を、該微生物細胞を同時に溶解させることなく、選択的に溶解させるステップと、
3.ステップ2で得られた溶解物の液体成分中に溶解している物質を含めた、この液体成分から、該微生物細胞を含めた、固体成分を実質的に分離するステップと、
4.ステップ3で得られた該固体成分を再懸濁させるステップと、
5.ステップ4で得られた懸濁物中に存在する該微生物細胞を溶解させるステップと、
6.ステップ1で得られた該液体成分から、該遊離の循環核酸、より具体的には該細胞外微生物核酸を精製および/もしくは濃縮し、かつ/またはステップ5で得られた溶解物から、前記細胞内微生物核酸を精製および/もしくは濃縮するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記高等真核生物細胞が、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞を表わす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、体液、その濃縮物もしくは希釈溶液、またはスワブにより取得された再懸濁細胞材料、好ましくは血液または血液濃縮物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物細胞が、細菌細胞および/または真菌細胞である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1に記載の手順ステップ1および/または3における前記固体成分からの前記液体成分の実質的な分離が、前記試料の遠心分離、濾過、および/またはデカンテーションにより達成される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1.チオシアン酸グアニジニウム(GTC)、塩酸グアニジニウム(GuHCl)、イソチオシアン酸グアニジニウム(GIT)、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、尿素、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つのカオトロピック物質と、
2.脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸アルコールのポリオキシアルキレンエーテル、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル、ポロキサマー、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが特に好ましい、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤と、
3.トリス、MES、MOPS、HEPES、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つの緩衝剤物質と
を含む混合物(緩衝液1)を添加した後の前記試料におけるこれらの物質の濃度が、(1)好ましくはグアニジニウムを含むカオトロープ0.1〜2M;(2)界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤0.5〜5%(w/v);および(3)緩衝剤物質2〜50mM、好ましくは4〜10mMであって、好ましくはpH8.0であるように、これらの物質を含む該混合物中で、請求項1に記載の手順ステップ2による前記真核生物細胞の選択的溶解を実施する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の手順ステップ5における前記微生物細胞の溶解を、緩衝剤溶液の存在下において、少なくとも部分的には機械的に、好ましくは、粒子、好ましくはガラスビーズを用いる、特に好ましくはサイズが400〜600μmの範囲にあるガラスビーズを用いる、前記試料の機械的ホモジナイズにより実施する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記緩衝剤溶液(緩衝液2)が、
1.トリス−HCl、MES、MOPS、HEPES、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つの緩衝剤物質と、
2.金属イオン、より具体的には、二価金属イオンの、少なくとも1つの錯化剤、好ましくはEDTAと、
3.脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸アルコールのポリオキシアルキレンエーテル、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル、ポロキサマー、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが特に好ましい、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤と、
4.必要に応じて、Reagent DXおよびSILFOAM SREを含む群から選択されることが好ましい発泡抑制剤と
を含み、
pHが6〜10、好ましくは7.0〜9.0であり、
該緩衝剤溶液の有する物質は、より具体的には、機械的溶解の間では、(1)緩衝剤物質が2〜20mM、(2)錯化剤が0.1〜5mM、(3)界面活性剤が0.1〜5%(w/v)、および(4)必要に応じて、発泡抑制剤が0.1〜1%(v/v)の濃度で、pH8.0で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の手順ステップ5における前記微生物細胞の前記溶解を、少なくとも部分的には、請求項1に記載の手順ステップ4からの前記懸濁物に、または請求項7もしくは8から結果として得られる溶解物に、プロテイナーゼ、好ましくはプロテイナーゼKと、
1.チオシアン酸グアニジニウム(GTC)、塩酸グアニジニウム(GuHCl)、イソチオシアン酸グアニジニウム(GIT)、過塩素酸アルカリ、ヨウ化アルカリ、尿素、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つのカオトロピック物質、
2.脂肪酸のソルビタンエステル、脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸アルコールのポリオキシアルキレンエーテル、アルキルフェノールのポリオキシアルキレンエーテル、ポロキサマー、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが特に好ましい、少なくとも1つの界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤、
3.トリス、MES、MOPS、HEPES、およびこれらの混合物を含む群から選択されることが好ましい、少なくとも1つの緩衝剤物質、ならびに
4.必要に応じて、請求項1に記載の手順ステップ1からの前記液体成分
を含み、
緩衝剤溶液(緩衝液3)の有する物質が、より具体的には、該溶解の間では、(1)カオトロープ1〜5M、(2)界面活性剤5〜20%(w/v)、および(3)緩衝剤物質20〜100mMの濃度で存在し、より具体的には、pH8.0で存在する該緩衝剤溶液を添加し、得られた混合物をインキュベートすることにより実施する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
微生物細胞、高等真核生物細胞、および遊離の循環核酸、より具体的には、細胞外微生物核酸の混合物だけでなく、ウイルスも液体中に含む試料から、ウイルス核酸を蓄積および/または単離することもさらに含み、請求項1に記載の手順ステップ1における前記試料の前記液体成分と併せた前記固体試料成分から該ウイルスを取り出す、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の手順ステップ1において取り出され、前記細胞外核酸、好ましくは微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を含む前記液体成分を、請求項1に記載の手順ステップ5において得られ、請求項1に記載の手順ステップ6により前記細胞内微生物核酸が精製および/または濃縮される前の該細胞内微生物核酸を含む前記溶解物と混合する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の手順ステップ1において得られ、前記細胞外微生物核酸、および存在する場合はウイルス核酸を含む前記液体成分、ならびに請求項1に記載の手順ステップ5において得られ、前記細胞内微生物核酸を含む前記溶解物を、互いに独立して精製および/または濃縮する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載のステップ6による、前記微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸の精製および濃縮が、
6a)請求項1に記載の手順ステップ5からの前記溶解物に、および適当な場合は、ステップ1からの前記液体成分に、(1)直鎖状または分枝状のC〜Cアルコール、好ましくはイソプロパノールと、(2)(1)3〜6Mのカオトロープ、(2)10〜30%(w/v)の界面活性剤、および(3)50〜150mMの緩衝剤物質を含み、より具体的にはpH8.0である、請求項9に記載の緩衝液3との、好ましくは20〜70%の緩衝液3に対して、30〜80%の直鎖状または分枝状のC〜Cアルコールの比による混合物を含むことが好ましい溶液(結合緩衝液)を添加し、結果として得られる混合物をインキュベートするステップと、
6b)前記試料を、適切なクロマトグラフィー装置、好ましくは、前記微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を、吸着、特に好ましくはシリカベースの吸着により選択的に結合させるためのクロマトグラフィー装置にアプライするステップと、
6c)必要に応じて、前記結合させた微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を、1回以上にわたり洗浄するステップと、
6d)必要に応じて、前記微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を溶出させるステップと
を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
微生物細胞、高等真核生物細胞、および遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、さらには追加として任意のウイルスの混合物を液体中に含む試料から、細胞内微生物核酸、さらには遊離の循環核酸、より具体的には細胞外微生物核酸、および追加として任意のウイルス核酸を、選択的に蓄積および/または単離するためのキットであって、
1.(1)0.2〜4Mの、好ましくはグアニジニウムを含むカオトロープ;(2)0.5〜10%(w/v)の界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤;および(3)2〜100mMの緩衝剤物質を含み、好ましくはpH8.0である、請求項6に記載の第1の緩衝液と、
2.(1)5〜50mMの緩衝剤物質、(2)0.5〜10mMの錯化剤、(3)0.2〜10%(w/v)の界面活性剤、および(4)必要に応じて、0.1〜3%(v/v)の発泡抑制剤を含み、pH8.0である、請求項8に記載の少なくとも1つの第2の緩衝液、ならびに/または(1)3〜10Mのカオトロープ、(2)10〜40%(w/v)の界面活性剤、および(3)40〜200mMの緩衝剤物質を含み、より具体的にはpH8.0である、請求項9に記載の少なくとも1つの第2の緩衝液と、
3.直径が400〜600μmの範囲にあることが好ましく、直径が500μmであることが特に好ましいガラスビーズと
を含むキット。
【請求項15】
前記微生物核酸および存在する場合はウイルス核酸を精製および/または濃縮するためのクロマトグラフィー装置、好ましくは、該微生物核酸およびウイルス核酸を、吸着、特に好ましくはシリカベースの吸着により選択的に結合させるためのクロマトグラフィー装置をさらに含み、また、結合緩衝液、好ましくは請求項13に記載の結合緩衝液、必要に応じて1つ以上の洗浄緩衝液、必要に応じて溶出緩衝液、ならびに必要に応じて蓄積および/または単離された核酸を検出するためのさらなる構成要素もさらに含む、請求項14に記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−511269(P2013−511269A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539331(P2012−539331)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067787
【国際公開番号】WO2011/061274
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(507214038)キアゲン ゲーエムベーハー (16)