説明

微生物検出方法

【課題】迅速かつ高感度に微生物を検出することができる微生物検出方法を提供する。
【解決手段】微生物を検出する方法は、上記液溜め部の中の少なくとも一種の微生物を含む液体を、メンブレンフィルタ130の下方から除去して、メンブレンフィルタ130上に微生物を濃縮する工程と、生理活性物質を含む液体培地を液溜め部に導入し、液体培地中に浮遊している微生物を培養する工程と、メンブレンフィルタ130の下方から液体培地を除去して、メンブレンフィルタ130上に前記微生物を捕集する工程と、微生物の生死を判別する試薬を液溜め部に導入る工程と、チップ(センサーチップ100)内の微生物を観察する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を検出する方法として、一般的に培養方法が用いられる。この培養方法では、たとえば24時間培養を行うため、非常に時間がかかることが知られている。
【0003】
特許文献1には、微生物を個別に検出する点が改善された微生物検出方法が記載されている。同文献によれば、微生物を検出表面上に結合させた状態で、当該微生物の増殖を行っている。これにより、微生物を個別に検出することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−523820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、上記文献記載の従来技術は、微生物を検出するまでに時間がかかっていた。そのため、迅速に、微生物を検出する方法が望まれている。
【0006】
また、特許文献1のように、微生物の一部をある表面上に結合させた状態で培養すると、培養液と微生物とが接触してない部分があるので、培養速度が遅くなることがあった。さらに、表面近傍では液体中の組成濃度にバラツキが生じるため、たとえば、抗菌剤を添加した場合の微生物の増殖の結果については、再現性よく得ることが困難であった。加えて、振盪機構を備えていないため、菌種によっては培養が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
少なくとも一種の微生物を含む被検用の液体を溜める液溜め部と、
前記液溜め部の下面に設けられた開口部と、
前記開口部を覆うように設けられたメンブレンフィルタと、を有する検出部を備えるチップを準備し、
前記液溜め部の中の前記被検用の液体を、前記メンブレンフィルタの下方から除去して、前記メンブレンフィルタ上に前記微生物を濃縮する工程と、
生理活性物質を含む液体培地を前記液溜め部に導入し、前記液体培地中に浮遊している前記微生物を培養する工程と、
前記メンブレンフィルタの下方から前記液体培地を除去して、前記メンブレンフィルタ上に前記微生物を捕集する工程と、
前記微生物の生死を判別する試薬を前記液溜め部に導入する工程と、
前記チップ内の前記微生物を観察する工程と、を含む、微生物検出方法が提供される。
ただし、この工程は状況により順番が変更される場合もある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、迅速かつ高感度に微生物を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態の微生物を検出する方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態の薬剤感受性の検出方法を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の薬剤感受性の検出方法を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施の形態のセンサーチップを模式的に示す上面図である。
【図5】本発明の実施の形態のセンサーチップのA−Aの模式断面図である。
【図6】本発明の実施の形態のセンサーチップのB−Bの模式断面図である。
【図7】本発明の実施の形態の濃縮装置を示す模式断面図である。
【図8】本発明の実施の形態の吸引機構を示す模式断面図である。
【図9】本発明の実施の形態の検出装置を示す模式断面図である。
【図10】大腸菌の生菌数の時間変化を示す図である。
【図11】抗生物質を添加した場合の大腸菌の生菌数の時間変化を示す図である。
【図12】添加した抗生物質の濃度を比較したときの大腸菌の生菌数比を示す図である。
【図13】大腸菌の生菌数の時間変化を示す図である。
【図14】抗生物質を添加した場合の大腸菌の生菌数の時間変化を示す図である。
【図15】抗生物質の添加の有無を比較したときの大腸菌の生菌数比を示す図である。
【図16】検出部の蛍光観察の結果を示す図である。
【図17】従来の方法(希釈法)によりMICを測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態の微生物を検出する方法を示すフローチャートである。図5は、本実施の形態に係るセンサーチップ100を示す模式断面図である。
本実施の形態の微生物を検出する方法は、まず、少なくとも一種の微生物を含む被検用の液体を溜める液溜め部と、液溜め部の下面に設けられた開口部と、前記開口部を覆うように設けられたメンブレンフィルタ130と、を有する検出部140を備えるチップ(センサーチップ100)を準備する。そして、このチップ上で示す一連の工程を実施する。
また、本実施の形態の微生物を検出する方法は、以下の工程を含む。
工程(1)上記液溜め部の中の少なくとも一種の微生物を含む被検用の液体を、メンブレンフィルタ130の下方から除去して、メンブレンフィルタ130上に微生物を濃縮する工程(S100、S102)。
工程(2)生理活性物質を含む液体培地を液溜め部に導入し、液体培地中に浮遊している微生物を培養する工程(S104)。
工程(3)メンブレンフィルタ130の下方から液体培地を除去して、メンブレンフィルタ130上に培養後の微生物を捕集する工程(S106)。
工程(4)微生物の生死を判別する試薬を液溜め部に導入る工程(S108)。
工程(5)チップ(センサーチップ100)内の微生物を観察する工程(S110)。
【0012】
本実施の形態の微生物を検出する方法の概要について説明する。
本実施の形態の微生物を検出する方法においては、本方法の一連の工程を、センサーチップ100上、特に検出部140で実施することができる(S100からS110)。このため、本発明によれば、迅速に微生物を検出することができる。そして、本発明によれば、全体の検出時間を短縮することができる。
また、本実施の形態において、生理活性物質を含む液体培地中で微生物を培養する検出部140を、検出対象の検出部140とし、一方、生理活性物質を含まない液体培地中で微生物を培養する検出部140を、参照対象の検出部140とする。このとき、検出対象においては、生理活性物質の作用が強まり、一方、参照対象においては、微生物の増殖速度が早くなる。さらに、振盪培養を行うことで、このような効果を高めることができる。このため、本発明においては、検出対象と参照対象との生菌数比の違いが明瞭となり、高感度かつ迅速に微生物の感受性を検出することができる。また、培養後、微生物を極めて微小な領域に捕集して微生物を蛍光観察し、計数するため、微生物の非常に大きな集団であるコロニーを観察する培養法や、試料の濁度を検出する従来法と比べて、極めて微量な微生物数の変化を検出することができる。このように、本発明においては、高感度かつ迅速に微生物の感受性を検出することができる。
【0013】
本実施の形態においては、生理活性物質としては、たとえば、抗生物質を用いることができる。また、微生物の生死を判別する試薬としては、たとえば、市販の蛍光染色試薬を用いることができる。抗生物質を用いた場合には、検出対象菌の薬剤感受性を調べることができる。ここで、本実施の形態において、微生物としては、細菌や菌類等が挙げられる。
【0014】
次に、本実施の形態の微生物検出方法に用いる微生物検出システムについて説明する。
本実施の形態においては、一連の本工程をセンサーチップ100上で実施するために、送液機構、吸引機構、振盪機構、恒温機構、洗浄機構、移動機構および検出機構を備える微生物検出システムを用いることができる。たとえば、本実施の形態では、図7および図9に示す濃縮装置160および検出装置190を含む微生物検出システムを使用する。
各工程に応じて、センサーチップ100をセットした状態で、濃縮装置160および検出装置190を使用する。これにより、センサーチップ100上で迅速に微生物を検出することができる。
【0015】
まず、微生物検出システムの前提として、本実施の形態に係るセンサーチップ100について説明する。
図4は、本実施の形態に係るセンサーチップ100を示す。図5は、図4中のセンサーチップ100のA−Aの断面図を示す。図6は、図4中のセンサーチップ100のB−Bの断面図を示す。
【0016】
センサーチップ100は、少なくとも一種の微生物を含む被検用の液体(試料)を溜める液溜め部と、液溜め部の下面に設けられた開口部と、開口部を覆うように設けられたメンブレンフィルタ130と、を有する、検出部140を備えるチップ(センサーチップ100)を準備する。1つのセンサーチップ100には、複数の検出部140がアレイ状に配置されている。検出部140の数としては、特に限定されない。複数の検出部140が設けられているセンサーチップアレイを用いることにより、同一工程で、複数種類の抗生物質や複数の菌種について感受性を検出することができる。
【0017】
センサーチップ100は、たとえば樹脂製とすることができる。センサーチップ100は、たとえばレーザ成形、射出成形等により得られる。センサーチップ100平面方向の検出部140の形状は、特に限定されないが、たとえば円とすることができる。また、センサーチップ100平面方向に対して垂直方向の検出部140の断面形状は、特に限定されないが、少なくとも一部がテーパ状とすることができる。検出部140の径(有効フィルタ径)は、特に限定されないが、たとえば0.1mm以上、5mm以下(通常のフィルタ径よりはるかに小さいため微小領域に微生物を捕集する)とすることができる。また、検出部140の高さは、蛍光観察時における、対物レンズの焦点距離の観点から決定する。
【0018】
また、メンブレンフィルタ130の孔径は、特に限定されないが、たとえば0.1μm以上、1μm以下とする。さらに、メンブレンフィルタ130は、チタンなどの金属がコーティングされていてもよい。または、酸化アルミニウム製のフィルタを用いてもよい。これにより、メンブレンフィルタ130の自己発光を抑えて、検知の際のノイズを低減させることができる。
【0019】
また、図5に示すように、センサーチップ100は、液溜め用の筒部材(液溜め部)が設けられた上板110と、孔が設けられた下板120とを備える。メンブレンフィルタ130が間に挟まれるように、上板110と下板120とが接合されている。接合手段としては、たとえば、上板110の上面と下板120の下面とをクランプするクランプ手段、上板110と下板120とをネジ止めする手段等を用いることができる。または、射出成型したプラスチックを、溶剤で接着することもできる。その他、接合手段として、接着剤や超音波接合なども挙げられる。
【0020】
ここで、クランプ手段の一例としては、図6に示すように、チップ台150内壁に溝部を設け、この溝部に、上板110および下板120の端部を挿入する。これにより、端部がクランプされ、上板110と下板120とが接合される。そのため、センサーチップ100は、一体となった状態でチップ台150に載置されることになる。さらに、図6に示すように、センサーチップ100平面方向に対して垂直方向から見たとき、上板110の開口部(筒部材の内孔)、メンブレンフィルタ130、下板120の孔およびチップ台150の開口部152が重なるように、配置されている。
【0021】
次に、本実施の形態に係る濃縮装置160について説明する。図7(a)は、濃縮装置160を模式的に示す。図7(b)は、図7(a)に示す濃縮装置160の一部を模式的に示す。図8は、吸引機構の一部を模式的に示す。
図7(a)に示すように、濃縮装置160は、培養機構164および吸引機構162を備える。培養機構164は、ヒータ180、フィン178、不図示の温度センサおよび振盪器182を備える。また、吸引機構162は、真空ポンプ166、廃液タンク168、送液ポンプ172、洗浄液タンク170、送液用チューブ184および廃液用チューブ186を備える。さらに、濃縮装置160は、培養液タンク174および蛍光試料タンク176を備えていてもよい。このような濃縮装置160は、1つの筐体中に設けられている。また、図7(a)に示すように、筐体中において、培養機構164と吸引機構162との間に、仕切り板208が設けられている。本実施の形態では、この仕切り板208上に培養機構164が設けられているが、この態様に限定されない。
【0022】
図7(a)に示す吸引機構162においては、センサーチップ100の液溜め部に導入された、試料、液体培地または蛍光試薬等の液体を、真空ポンプ166が吸引する。これらの液体は、不図示のポンプ等を用いて、洗浄液タンク170、培養液タンク174または蛍光試料タンク176等から検出部140に導入される。たとえば、送液ポンプ172は、洗浄液タンク170の中の洗浄液について送液用チューブ184を介して、液溜め部に導入する。洗浄液としては、たとえば生理食塩水やリン酸緩衝液などが挙げられる。この場合、送液用チューブ184に対して、振盪器182上のセンサーチップ100の位置が移動する。これにより、送液用チューブ184は、複数の検出部140中に液体を導入する。また、液体はピペット等により、上記液体を液溜め部に導入されてもよい。
吸引された液体は、液溜め部中からメンブレンフィルタ130を通過して、チップ台150の開口部152から廃液用チューブ186を介して、廃液タンク168に排除される。
このようにして、溜め部の中の液体を、メンブレンフィルタ130の下方から吸引除去して、メンブレンフィルタ130上に培養された微生物を残すことができる。
【0023】
また、吸引機構162は、図8に示すように、検出部140の下方に設けられ、液体を吸引する吸引プラグ188を備える。吸引機構162中の不図示の第1の制御部により、吸引プラグ188の圧力が制御されている。制御部は、吸引プラグ188の圧力を検出し、検出値に応じて、吸引プラグ188の圧力値をフィードバック補正する。このとき、図8(a)に示す例では、検出部140のそれぞれに吸引プラグ188が設けられている。吸引プラグ188は、互いに分離により検出部140中の液体を真空ポンプ166により個々に吸引する。また、図8(b)に示す例では、複数の検出部140に対して1つの吸引プラグ188が設けられている。吸引プラグ188は、複数の検出部140中の液体を真空ポンプ166により同時に吸引する。または、スライド機構を用いてチップを移動させ各々の検出部について順次吸引する。
【0024】
培養機構164においては、ヒータ180とフィン178とにより、培養温度を調節する。このとき、フィン178を用いない場合には、ヒータ180のオンオフのみで温度調節をすることができる。培養温度は、不図示の温度センサで測定しつつ、微生物の種類、抗生物質の種類等に応じて調節する。培養温度としては、たとえば、室温(25℃程度)から45℃程度とすることができる。ここで、培養機構164の制御温度は、たとえば室温(25℃程度)から60℃程度とすることができる。また、振盪器182は、センサーチップ100が載置されているチップ台150を振盪する。たとえば、偏心モータによりチップ台150を振盪する。これらにより、センサーチップ100の検出部140中の微生物を、恒温の条件下、液体培地中で振盪培養することができる。
このとき、図7(b)に示す濃縮装置160において、開閉自在のカバー210および仕切り板208から構成される内部空間(密閉空間)中にセンサーチップ100が設けられている。カバー210が開放すると、センサーチップ100の上方が露出する。このため、センサーチップ100の操作性が向上する。つまり、簡便かつ効率良く、センサーチップ100の移動、センサーチップ100の振盪、センサーチップ100への液体の導入等を実施することができる。
【0025】
このように、濃縮装置160は、センサーチップ100上で微生物の濃縮、培養、洗浄、蛍光染色を実行する。つまり、濃縮装置160は、まず、検出部140のメンブレンフィルタ130上に微生物を濃縮し、続いて、この微生物を液体培地中で培養してメンブレンフィルタ130上に捕捉し、この後、微生物について洗浄および蛍光染色を実行する。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係る検出装置190について説明する。図9は、検出装置190を模式的に示す。
検出装置190は、濃縮装置160により蛍光染色されたセンサーチップ100上の検出部140中の微生物を蛍光観察する。また、検出装置190には、特に限定されず、たとえば汎用の蛍光顕微鏡を用いることができる。
検出装置190は、移動ステージ192、励起用光源194、励起光用光学フィルタ195(光源が多くの波長を含む白色光源である場合などは、励起フィルタを用いる必要がある)、対物レンズ196、ダイクロイックミラー198、放射光吸収光学フィルタ200、結像レンズ202、検知機構204、PC206を備える。
移動ステージ192は、センサーチップ100が載置されたチップ台150をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向(三次元方向)に自在に移動させることができる。これにより、対物レンズ196に対して、センサーチップ100上の検出部140の位置および高さを調節する。
【0027】
また、図9に示す検出装置190においては、励起用光源194は励起光を照射する。ダイクロイックミラー198は励起用光源194から照射された励起光を分光させる。対物レンズ196はこの分光した励起光を集光させる。続いて、集光した励起光がセンサーチップ100上の検出部140に照射すると、微生物などが蛍光を発光する。そして、光学フィルタ200は当該蛍光を上記対物レンズ196とダイクロイックミラー198とを経由して透過させる。結像レンズ202はこの透過した蛍光の光束を結像させる。検知機構204により、この結像が電子データに変換される。励起用光源194としては、LED等(その他レーザー)を用いることができる。また、検知機構204としては、CCDカメラ(電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD))等(その他CMOS)を用いる。これにより、CCDカメラに接続したPC206を用いた画像解析もすることができる。また、各検出部140中の微生物の生菌の発光を示す画像データが得られる。また、検知機構204として、CCDカメラに代えて、接眼レンズを用いてもよい。これにより、目視による観察を行うことができる。
【0028】
次に、微生物検出システムを用いた本実施の形態の各工程について、以下説明する。
図2および図3は、本発明の実施形態の薬剤感受性の検出方法の手順を示す。
図2は、参照対象(ネガティブコントロール)の検出部140(第1の検出部)を表し、図3は、検出対象の検出部140(第2の検出部)を表す。また、図2では、抗生物質を含まない液体培地310を用い、一方、図3では、抗生物質を含む液体培地320を用いている。
【0029】
[工程(1)]
まず、センサーチップ100を用い、参照対象および検出対象の検出部140中の液溜め部に、試料300(微生物を含む被検用の液体)を分けて導入する(S100、図2(a)、図3(a))。
本工程では、参照対象と検出対象には、被検用の液体として、同じ試料300を用いる。そのため、参照対象および検出対象の試料300中の微生物の初期濃度はほぼ同一となる。また、前提として、試料300は、後述の工程で添加する抗生物質により殺菌される、あるいは細菌の増殖が阻害される、対象菌340(微生物)を含むものとする。
【0030】
試料300は、あらゆる場所から採取してきた微生物を溶媒に拡散して得られる。採取場所は、たとえば、水、飲料、食品、畜産動物、植物、ベット等の生活環境、血液、皮膚、唾液、痰、創傷、胃内容物、尿または糞便等の人体等を挙げることができる。溶媒は、たとえば、生理食塩水やリン酸緩衝液等を用いることができる。また、試料300には、通常の培養方法により、あらかじめ培養しておいた微生物を用いてもよい。
【0031】
試料300の微生物の初期濃度は、非常に低濃度でよい。例えば、初期濃度を、1個/ml以上程度から、10E5個/ml以下程度とすることができる。
【0032】
続いて、検出部140中の試料300を除去して、メンブレンフィルタ130上に対象菌340を残す(S102、図2(b)、図3(b))。これにより、対象菌340の液体中の濃度が濃縮される。このとき、図7に示す吸引機構162を用いて、検出部140の下方から試料300中の液体を吸引する。
【0033】
[工程(2)]
続いて、参照対象の検出部140中に液体培地310を導入し、検出対象の検出部140中に抗生物質を含む液体培地320を導入する。そして、図7に示す培養機構164を用いて、各センサーチップ100を振盪器182で振盪させ、各検出部140中の対象菌340を振盪培養する(S104、図2(c)、図3(c))。
このように、本培養工程では、検出部140中に導入された際に発生する液体培地の対流等の作用により、メンブレンフィルタ130上から離れ、液体培地中に微生物が浮遊する。本培養工程中、いずれかの微生物が液体培地中に浮遊している。さらに、振盪を行うことで、微生物を浮遊させるとともに、液体培地中の微生物の密度を均一にすることができる。このように浮遊している状態で培養することで、微生物の増殖速度を増加させたり、抗生物質の増殖阻害作用を強めたりできる。さらに、振盪培養を行うことで、微生物の増殖に必要な酸素、培地成分及び増殖阻害物質が効率よく微生物と接触するため、このような効果を高めることができ、また、微生物の増殖の結果については、再現性良く得ることができる。
【0034】
ここで、参照対象の検出部140では、対象菌340が増殖する。図2(c)に示すように、増殖した微生物を増殖菌370とする。一方、検出対象の検出部140では、抗生物質の殺菌作用により、対象菌340の増殖が阻害される。図3(c)に示すように、増殖が阻害された微生物を増殖抑制菌380とする。
【0035】
本実施の形態に係る抗生物質は、たとえば、ペニシリン系、セファム系、βラクタム系、アミノグリコシド系、ペプチド系、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系、クロラムフェニコール系、アミノ配糖体系等を用いることができる。
液体培地としては、微生物の種類にもよるが、たとえばLB培地やミュラーヒントン培地などを用いることができる。
培養時間は、微生物の種類にもよるが、特に限定されず、たとえば15分以上、180分以下程度とすることができる。また、培養温度としては、微生物の種類および抗生物質の種類にもよるが、特に限定されず、30℃以上、45℃以下程度とすることができる。
【0036】
[工程(3)]
続いて、参照対象の検出部140中の液体培地310を除去して、メンブレンフィルタ130上に対象菌340、増殖菌370を残す。また、検出対象の検出部140中の抗生物質を含む液体培地320を除去して、メンブレンフィルタ130上に対象菌340、増殖抑制菌380を残す(S106、図2(d)、図3(d))。このとき、図7に示す吸引機構162を用いて、検出部140の下方から液体培地310および抗生物質を含む液体培地320中の液体を吸引する。
このようにして、参照対象および検出対象のそれぞれのメンブレンフィルタ130上に対象菌340および増殖菌370、対象菌340および増殖抑制菌380が捕集される。また、死んだ細胞は、細胞膜が弱体化するため、吸引力を制御することで、死菌をばらばらにして、膜(メンブレンフィルタ130)を通過させることもできる。このような微生物の捕集工程により、微生物を含む液体培地のうち、微生物と液体培地等とを分け、この微生物(とくに生菌)を有意に微小な領域に集めることができる。
【0037】
[工程(4)]
続いて、微生物の生死を判別する試薬(蛍光試薬330)を液溜め部に導入する(S108、図2(e)、図3(e))。蛍光試薬330としては、たとえば、生菌のみを蛍光染色する試薬が用いられる。
蛍光試薬330の導入量は、特に限定されず、微生物(対象菌340、増殖菌370、増殖抑制菌380)が蛍光試薬330と接触する量であればよい。
【0038】
ここで、微生物の生死を判別する方法としては、これに限らず、例えば、市販の蛍光染色試薬を用いて生死菌の判別をする方法を用いることができる。生死菌を判別する方法には、(a)複合蛍光染色法、または(b)生菌染色法と全菌染色法との組み合わせた方法などがある。
(a)に示す方法の場合、蛍光染色試薬として、生死菌で発光色の違う蛍光試薬が用いられる。具体的には、緑色蛍光のSYTO9色素と赤色蛍光のヨウ化プロビジウム色素を含む複合蛍光染色試薬を用いることができる。この他にも、死菌の標識として、YOYO−1、7ADD、生菌の標識として、Ethidium homodimer−1、FDA、Calcein AM、LDS751などを含む、蛍光染色試薬を用いることができる。
(b)に示す方法の場合、DAPI染色法、EB染色法、SYBR Green1染色法などの全菌染色法と、CTC染色法、CFDA染色法などの生菌染色法とを組み合わせて用いることができる。例えば、DAPI染色法とCFDA染色法との二重染色により、生死菌の判別をする。
【0039】
[工程(5)]
続いて、蛍光観察する前に、各検出部140内部を洗浄する。洗浄するには、たとえば、検出部140に洗浄液を導入し、この洗浄液を吸収除去する。この後、センサーチップ100を濃縮装置160から検出装置190に移動させる。そして、検出装置190を用い、センサーチップ100の検出部140中の微生物を蛍光観察する(S110、図2(f)、図3(f))。本工程では、たとえば、光学倍率を掛けて、蛍光観察する。
蛍光試薬330は、たとえば生菌350のみ蛍光染色する。そのため、図2(f)、図3(f)に示すように、参照対象の検出部140においては、対象菌340および増殖菌370が生菌350として検出される。一方、検出対象の検出部140においては、増殖抑制菌380は死菌360であるため検出されず、対象菌340のみが生菌350として検出される。そして、微小領域に捕集した微生物数(たとえば生菌数)を計数して、参照対象の検出部140に対する、検出対象の検出部140の生菌数比を算出する。
【0040】
ここで、本実施の形態の微生物検出方法により得られた、生菌数比について説明する。
本実施の形態においては、生菌数比は、微生物の感受性を示すパラメータである。
この生菌数比の定義を以下に示す。
(i)生菌数比が1.0±α(対数換算)以内の場合は、検出対象の微生物は抗生物質に対して感受性を示さない基準とする(つまり、微生物に耐性が有る場合には、生菌数比は、ほぼ1かそれ以上になる)。
(ii)生菌数比が1.0−α(対数換算)より小さい範囲では、検出対象の微生物は抗生物質に対して感受性を示す基準とする。
ここで、αは、培養時間、培養温度および抗生物質の濃度等により決定する。αとしては、たとえば、0.5以下、さらには0.2以下と設定することができる。
【0041】
生菌数比を算出する方法について説明する。本実施の形態において、生菌数比を算出するには、たとえば、(1)生菌数をカウントして生菌数比を算出してもよいし、(2)生菌を示す画像データの蛍光面積の比を換算して生菌数比を算出してもよい。
(1)生菌数から生菌数比を算出する方法について説明する。まず、1視野当たりの生菌数をカウントし、検出部140の開口面積(ろ過面積)/1視野あたりの面積を掛ける。つまり、次の式により、生菌数が算出される。生菌数=(1視野当たりの生菌数の平均値)×(ろ過面積)/1視野あたりの面積。そして、第1の生菌数(参照対象の検出部140中の生菌数)に対する第2の生菌数(検出対象の検出部140中の生菌数)の生菌数比を算出する。
(2)蛍光面積の比を換算して生菌数比を算出する方法について説明する。まず、各検出部140の生菌350を示す蛍光画像データを得る。そして、1視野当たりの蛍光面積を算出し、検出部140の開口面積(ろ過面積)/1視野あたりの面積を掛ける。つまり、次の式により、蛍光面積が算出される。蛍光面積=(1視野当たりの蛍光面積の平均値)×(ろ過面積)/1視野あたりの面積。そして、第1の蛍光面積(参照対象の検出部140中の蛍光面積)に対する第2の蛍光面積(検出対象の検出部140中の蛍光面積)の蛍光面積比を算出し、この蛍光面積比を換算して生菌数比とする。
【0042】
以上のように、参照対象の検出部140に対する、検出対象の検出部140の生菌数比を算出することで、微生物の高感度かつ迅速に微生物の感受性を検出することができる。
【0043】
本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態の微生物検出方法においては、濃縮、培養、蛍光観察等の一連の工程を、センサーチップ100上で実施することができる。このため、迅速に微生物を検出することができる。そのため、全体の検出時間を短縮することができる。
また、本実施の形態によれば、濃縮工程や微生物を微小領域に捕集し蛍光観察する工程を行っているので、その濃縮効果のために、微小な微生物数の変化を極めて正確に検出できる。
【0044】
本実施の形態において、検出対象の検出部140では、抗生物質を含む液体培地中で微生物を振盪培養している。これにより、抗生物質の増殖阻害作用が強まり、参照対象の検出部140中の生菌数は減少する。そのため、検出対象の検出部140において、培養前と培養後との生菌数比の違いが明瞭となり、抗生物質に感受性を示す微生物を迅速に検出することができる。
さらに、参照対象の検出部140では、抗生物質を含まない液体培地中で微生物を振盪培養している。これにより、微生物の増殖速度が早くなり、参照対象の検出部140中の生菌数は増加する。そのため、培養後において、検出対象と参照対象との生菌数比の違いが明瞭となり、より高感度かつ迅速に微生物の感受性を検出することができる。
【0045】
このように、同じ試料(微生物を含む液体)を前提として、抗生物質を含まない条件下の第1の生菌数と抗生物質を含む条件下の第2の生菌数との生菌数比を算出することにより、微生物の抗生物質に対する感受性を高感度に検出することができる。
【0046】
本実施の形態では、培養前に、メンブレンフィルタ130上に微生物を微小領域に濃縮している。このため、試料中の微生物の濃度が、非常に低濃度でも、微生物の感受性を検出することができる。さらには、本実施の形態の培養工程により、生菌数比の差が明瞭となり、高感度に微生物の感受性を検出することができる。そのため、試料中の微生物の濃度に依存せずに、微生物の感受性を検出できる。例えば、試料中の微生物の初期濃度が10個/ml以上程度、さらには1個/ml以上程度から、検出装置190により、微生物を検出できる。
【0047】
本実施の形態では、濃縮装置160および検出装置190を用いて、センサーチップ100上で培養、濃縮、蛍光観察を統合して実施できる。そのため、本実施の形態においては、工程の簡便化、作業の効率化および汚染や感染の危険性の軽減を図ることができる。また、センサーチップ100中で全ての工程について処理をすることができるため、汚染の恐れも少ない上、実験者の安全が図れる。
【0048】
また、本実施の形態の薬剤感受性の検出方法では、抗生物質に接触した微生物を捕集し、この捕集した微生物の殺菌作用による生死を直接検出することで、微生物の薬剤感受性を迅速に検査することができる。培養法やPCR法等と比べると検査に要する試料の処理工程が少ないため、非常に簡単である。さらに、培養法を除くほかの検査方法と比べると使用する試薬が少ないため、ランニングコストを低く抑えることも可能である。また、この薬剤感受性の検出方法は、院内感染原因菌の検出、感染症診断および抗菌剤の迅速感受性試験等に応用することもできる。
【0049】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態の微生物検出方法について、以下説明する。
第2の実施の形態の微生物検出方法は、最小発育阻止濃度(MIC)を算出する方法である。つまり、第1の実施の形態の微生物検出方法により得られた生菌数比を示すデータの結果から最小発育阻止濃度(MIC)を算出する。
【0050】
本実施の形態の微生物検出方法は、第1の検出部および第2の検出部からなる第1の検出部群を、複数備えるチップ(センサーチップ100)を用い、微生物を濃縮する工程において、第1の検出部および第2の検出部に同一の被検用の液体を分けて導入し、微生物を培養する工程において、第1の検出部群の間で液体培地中の生理活性物質(第1の抗生物質)の濃度を異ならせ、微生物を観察する工程において、生理活性物質(第1の抗生物質)の濃度に対応する、第1の生菌数に対する第2の生菌数の生菌数比を算出する工程を含む。
このとき、第1の検出部は、参照対象の検出部140を表し、第2の検出部は、検出対象の検出部140を表す。また、第1の生菌数は、第1の検出部中の生菌数を表し、第2の生菌数は、第2の検出部の生菌数を表す。
【0051】
さらに、本実施の形態の微生物検出方法は、第3の検出部をさらに備えるチップ(センサーチップ100)を用い、微生物を濃縮する工程において、第1の検出部、第2の検出部および第3の検出部に同一の被検用の液体を分けて導入し、微生物を培養する工程において、第3の検出部では、第2の検出部と異なる種類の生理活性物質(第2の抗生物質)を含む液体培地を液溜め部に導入し、液体培地中に浮遊している微生物を培養し、微生物を観察する工程において、さらに、第1の検出部内の微生物の第1の生菌数と第3の検出部内の微生物の第3の生菌数とを測定し、第1の生菌数に対する前記第3の生菌数の生菌数比を算出する工程を含む。
このとき、第3の検出部は、第2の検出部と異なる、検出対象の検出部140を表す。また、第3の生菌数は、第3の検出部中の生菌数を表す。また、第1の検出部、第2の検出部および第3の検出部から第2の検出部群が構成されている。
【0052】
本実施の形態では、複数の検出部を備えるチップとして、図4に示す縦横の検出部140の数が3個×6個である、センサーチップ100を用いることができる。
図4に示すB−B矢視方向の検出部140においては、抗生物質を含まない液体培地、第1の抗生物質を含む液体培地、第2の抗生物質を含む液体培地を順に導入する。また、図4に示すA−A矢視方向の検出部140においては、第1の抗生物質の濃度および第2の抗生物質の濃度が6つの異なる濃度とする。
このようにして、2種類の第1の抗生物質および第2の抗生物質について、第1の濃度から第6の濃度(第1の濃度>第6の濃度)までに対応する、複数個の生菌数のデータを得ることができる。
【0053】
続いて、第1の実施の形態と同様にして、抗生物質を含まない条件下の第1の生菌数と第1の抗生物質を含む条件下の第2の生菌数との、第1の生菌数比を算出する。さらに、第1の濃度から第6の濃度に対応する第1の生菌数比を算出する。これらの生菌数比は、(試料中の微生物の初期濃度が同一の試料)を前提とする。
【0054】
続いて、最小発育阻止濃度(MIC)を算出するには、得られた生菌数比を示すデータの結果から、第1の抗生物質に対する微生物の感受性の有無を判断する。
たとえば、第1の生菌数比のうち、第1の濃度から第4の濃度では、感受性を示す基準の値であり、他方、第5の濃度および第6の濃度では、感受性を示さない基準の値であるとする。この場合、第1の抗生物質に対する微生物の第1のMICは、第4の濃度と決定することができる。さらに、第4の濃度と第5の濃度との濃度間で、濃度をふって、第1の生菌数比を算出し、感受性の有無の結果から、より正確に第1のMICを算出することができる。
【0055】
さらに、前述の第1の生菌数比にくわえ、抗生物質を含まない条件下の第1の生菌数と第2の抗生物質を含む条件下の第3の生菌数との、第2の生菌数比を算出する。さらに、第1の濃度から第6の濃度に対応する第2の生菌数比を算出する。この第2の生菌数比の結果から、第2の抗生物質に対する微生物の第2のMICを算出することができる。ここで、これらの生菌数比は、(試料中の微生物の初期濃度が同一の試料)を前提とする。
以上により、第2の実施の形態によれば、同時に2種類のMICを算出できる。つまり、第1の抗生物質に対する微生物の第1のMICおよび第2の抗生物質に対する微生物の第2のMICを算出することができる。
【0056】
このように、複数の検出部140を備えるセンサーチップ100を用いて、本実施の形態の微生物検出方法を実施することにより、抗生物質に対するMICを迅速かつ高感度に決定することができる。また、本実施の形態によれば、複数種類の抗生物質に対するMICを同時に検出することができる。
【0057】
また、本実施の形態の薬剤感受性を調べる方法を利用すると、微生物の種類が未知の場合には、準備した試料について薬剤耐性菌の有無の判別をすることができるとともに、MICを調べることもできる。微生物の種類が未知の場合であっても、複数種類の抗生物質の感受性反応や選択培地の使用により、未知の微生物の菌種を大まかに予想することもできる。一方、微生物の種類が既知の場合には、上述のとおり、抗生物質の薬剤感受性およびMICを調べることができる。
【0058】
次に、本実施の形態の微生物検出方法により、得られたMICの結果から、生理活性物質(抗生物質)に対する微生物の耐性の有無を評価した、データを生成する。
まず、第2の実施の形態の微生物検出方法により、生菌数比を示すデータの結果から最小発育阻止濃度(MIC)を算出する。そして、生理活性物質(抗生物質)の最小発育阻止濃度が所定濃度以上である場合には、微生物が前記生理活性物質(抗生物質)に対して耐性を示すと判断する。このとき、生理活性物質(抗生物質)に対する微生物の耐性の有無を示すデータを生成する。
【0059】
ここで、耐性を示すと判断するための、最小発育阻止濃度(MIC)の基準を以下の(1)、(2)に示す。
(1)MICがR[μg/ml]以上である場合には、抗生物質に対して微生物が耐性ありと判断する。
(2)MICがR[μg/ml]未満である場合には、抗生物質に対して微生物が耐性無しと判断する。
【0060】
また、R[μg/ml]以上である場合に、耐性の度合について段階ごとに評価してもよい。たとえば、Rが1以上、10未満[μg/ml]の場合には、低程度の耐性あり(LR(Low Resistant))と評価し、Rが10以上、25未満[μg/ml]の場合には、中程度の耐性あり(MR(Middle Resistant))と評価し、Rが25以上[μg/ml]の場合には、高程度の耐性あり(HR(Hight Resistant))と評価する。
【0061】
さらに、本実施の形態においては、このような微生物の耐性の有無を示すデータから、微生物が耐性を示さない生理活性物質(抗生物質)を選択することができる。
なお、実際には、たとえ微生物が耐性を示したとしても、そのような抗生物質も使用する可能性がある。この場合には、本実施の形態においては、低程度の耐性から中程度の耐性を示す抗生物質を選択することができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態では、複数種類の抗生物質に対して、簡便かつ迅速に、微生物の感受性、MICおよび耐性の有無についての検査結果が得られる。このため、臨床現場において、抗生物質投与の迅速かつ的確な判断が可能となる。そのため、術後感染症、敗血症、薬剤耐性菌(MRSA等)による院内感染等のリスクが軽減される。
【0063】
このような医療環境の観点から、センサーチップ100の検出部140の個数が多い方が好ましい。たとえば、たとえば、92個(12個(11種類の抗生物質+ネガティブコントロール)×8個(8種類の濃度))の検出部140を設けることにより、複数種類の抗生物質について、同時かつ迅速に感受性を高感度に検出することができる。
【0064】
また、本実施の形態においては、液体培地中で微生物を振盪培養している。そのため、液体培地中の抗生物質の濃度が均一となる結果、検出対象中の微生物に対する抗生物質の効果が再現性よく得られる。このため、本実施の形態によれば、生菌数、生菌数比のバラツキが小さくなり、再現性よく微生物の感受性、MIC等の結果が得られる。
【0065】
一般的に、術後感染症や院内感染等に際し、培養法による薬剤感受性試験により適切な抗生物質が選択され、この抗生物質が患者に処置されている。ところが、培養法は通常1日以上かかるため、迅速に、抗生物質の選択を行うことが困難である。このため、迅速の観点から、多種類の抗生物質を用いると、新たな耐性菌の出現の原因となる上、副作用など患者への負担が大きくなる要因となる。
【0066】
これに対して、本実施の形態においては、複数種類の抗生物質について、同時かつ迅速に感受性を高感度に検出することができる。そのため、薬剤耐性菌などによる院内感染が発生した場合も同様で、迅速に感受性試験を実施できる。また、外科手術後、患者は術後感染症の脅威に晒され、致命的な敗血症に至る場合においても、臨床医は最も効果的な抗生物質を可能な限り早く見つけて、処置をすることができる。また、本実施の形態の微生物検出方法は、臨床医が患者一人分の感受性試験を緊急に行いたいといった用途にも利用できる。
【0067】
(第3の実施の形態)
本実施の形態の微生物検出方法を用いた、抗菌活性を示す物質のスクリーニング方法について説明する。この迅速スクリーニングは、製薬、あるいは、抗菌物質の作製などに利用できる。
第3の実施の形態では、生理活性物質としては、抗菌活性の有無が未確認の未知物質を用いる。未知物質としては、たとえば、放線菌の抽出液、既知の化合物、抗菌活性を示す化合物の誘導体、タンパク質等を挙げることができる。
【0068】
第3の実施の形態の未知物質の抗菌活性を調べる方法は、以下の工程を含む。まず、少なくとも一種の既知の微生物を含む試料を複数の検出部140に導入する。続いて、微生物を培養する工程において、ネガティブコントロールとして液体培地のみの場合、ポジティブコントロールとして既知の抗生物質を含む液体培地の場合、検出対象として未知物質を含む液体培地の場合の3つの液体培地を、3つの各検出部140に導入して微生物を振盪培養する。続いて、ネガティブコントロールに対するポジティブコントロールの第3の生菌数比およびネガティブコントロールに対する検出対象の第4の生菌数比を算出する。
このとき、抗菌活性を示す基準を第3の生菌数比とする。そして、以下に示す基準により、未知物質の抗菌活性の有無を判断することができる。
(1)第4の生菌数比が、第3の生菌数比と同程度または第3の生菌数比以上の場合、未知物質は、抗菌活性あり。
(2)第4の生菌数比が、第3の生菌数比より小さい場合には、未知物質は、抗菌活性無し。
【0069】
また、既知抗生物質と未知物質との間で得られた上記検出結果を比較して、未知物質の殺菌性を示すデータを生成する。これにより、既知微生物Dに対する既知抗生物質Rの殺菌作用Yと、同質の殺菌作用Yを有すると考えられる未知物質をスクリーニングすることができる。また、既知微生物Dが異なれば、既知抗生物質Rは殺菌作用Yとなる場合がある。このときには、未知物質は同質の殺菌作用Yを有するものとしてスクリーニングされる。
【実施例】
【0070】
本実施例は、本実施の形態の微生物の感受性および微生物のMIC(最小発育阻止濃度)の検出ついての具体例を示す。
(実施例1)
実施例1では、図10から図12に示すように、微生物の感受性を検出するとともに、検出可能な微生物の濃度を測定した。
検出対象成分: 大腸菌
検出方法: 蛍光顕微鏡観察
蛍光染色: 複合蛍光染色試薬
また、実施例1では、図4に示すセンサーチップ100、図7に示す濃縮装置160および図9に示す検出装置190を用いた。
生菌数測定: 生菌数=(1視野当たりの生菌数の平均値)×(フィルタ面積)/(1視野の面積)
検出精度: 本発明のフィルタ法(個/ml)と混釈平板法(CFU/ml)との相関係数は、0.95。
液溜め容量: 1ml
フィルタ径: 3mm
温度: 37℃(±1℃)
対物レンズ: ×10
【0071】
まず、大腸菌の濃度が異なる6つの被検用の液体試料を準備する。そして、大腸菌の初期濃度が同じ被検用の液体試料を分けて、参照対象および検出対象のセンサーチップ100の各検出部140に導入する。6種類の大腸菌の初期濃度に応じて、6セットの参照対象および検出対象を作製する。続いて、濃縮装置160の吸引機構162を用いて試料内の大腸菌を、メンブレンフィルタ130上に濃縮した。続いて、参照対象の検出部140には、液体培地800μlと生理食塩水100μlとを導入した。一方、検出対象の検出部140には、液体培地800μlと抗生物質(セファム系抗生物質製剤「パンスポリン」武田薬品工業社製、濃度:10g/L)100μlとを導入した。続いて、濃縮装置160の培養機構164を用い、培養温度37℃で、培養時間の条件を0min、30min、60minと変えて、センサーチップ100中の大腸菌を振盪培養した。
続いて、吸引機構162を用いて、メンブレンフィルタ130上に大腸菌を捕捉した。続いて、各検出部140に、染色液(複合蛍光染色試薬)を導入した。
ここで、複合蛍光染色試薬として、LIVE/DEAD BacLight(商標) Bacterial Viability Kits(Invitrogen社製)を用いた。複合蛍光染色試薬は、緑色蛍光のSYTO9色素と赤色蛍光のヨウ化プロビジウム色素を含んでおり、これらは膜透過性に違いがある。SYTO9は生死菌両方の膜を透過し緑色に染色する。一方、ヨウ化プロビジウムは死菌のダメージを受けた膜のみを透過し赤色に染色する。また、両方の色素がバクテリア中に存在すると、SYTO9の蛍光は減衰する。従って、細菌が生存していれば、複合蛍光試薬は緑色に蛍光し、細菌が死亡しているなら、複合蛍光試薬は、赤色に蛍光する。分子化学反応に、10分要した。
その後、吸引機構162を用い、洗浄液(PBS)を導入して検出部140内部を洗浄した。この後、検出装置190を用い、センサーチップ100の各検出部140について蛍光顕微鏡観察を行った。このとき、各検出部140の大腸菌の生菌数を算出し、その結果から、参照対象と検出対象との生菌数比を算出した。
【0072】
図10は、参照対象(抗生物質を含まない)の生菌数の時間変化を示す。横軸は、時間(min)を表し、縦軸は、フィルタ法により測定した大腸菌の生菌数(対数)を表す。ここでは、大腸菌の初期濃度(試料中の濃度)は、混釈平板法により測定した場合では、黒丸が9.4×10E4(CFU/ml)を表し、黒三角が2.0×10E4(CFU/ml)を表し、黒菱形が3.5×10E3(CFU/ml)を表し、白丸が1.2×10E3(CFU/ml)を表し、白三角が6.2×10E2(CFU/ml)を表し、白四角が6.0×10E1(CFU/ml)を表す。
図11は、検出対象(抗生物質を含む)の生菌数の時間変化を示す。図中の記号は、図10と同じである。
図12は、参照対象と検出対象との生菌数比の時間変化を示す。図中の縦軸が、生菌数比を表す以外は、図中の記号は、図10と同じである。
【0073】
このように、全ての初期濃度において、培養時間が30min程度で、生菌数比が1よりかなり小さくなっている。そのため、本発明の微生物検出方法によれば、試料の初期濃度が、少なくとも、1個/mlから10E5個/ml程度範囲で微生物の感受性を高感度に検出することができることが分かった。また、本発明の微生物検出方法によれば、培養時間が30minから60min程度で、微生物の感受性を迅速に検出することができることが分かった。
【0074】
(実施例2)
実施例2では、図13から図15に示すように、微生物のMICの検出を行った。
実施例2は、実施例1における試料の大腸菌の初期濃度を変化させた条件に代えて、抗生物質の濃度を変化させた条件にした以外、実施例1と同様に行った。
【0075】
図13は、参照対象(抗生物質を含まない)の生菌数の時間変化を示す。横軸は、時間(min)を表し、縦軸は、フィルタ法により測定した大腸菌の生菌数(対数)を表す。ここでは、検出対象の抗生物質の濃度は、黒丸が10E3(μg/ml)を表し、黒三角が10E2(μg/ml)を表し、黒四角が10E1(μg/ml)を表し、黒菱形が10E0(μg/ml)を表し、白丸が10E−1(μg/ml)を表し、白三角が10E−2(μg/ml)を表す。
図14は、検出対象(抗生物質を含む)の生菌数の時間変化を示す。図中の記号は、図13と同じである。
図15は、参照対象と検出対象との生菌数比の時間変化を示す。図中の縦軸が、生菌数比を表す以外は、図中の記号は、図13と同じである。
また、図16は、抗生物質の濃度が10E1(μg/ml)である、参照対象および検出対象の検出部140中の観察結果を示す図である。
【0076】
図15の結果から、抗生物質の濃度が、10E−1および10E−2(μg/ml)の場合には、生菌数比は、ほぼ1である。一方、抗生物質の濃度が、10E0(μg/ml)以上の場合には、生菌数比は、1よりかなり小さくなる。このため、パンスポリンに対する大腸菌のMICは、10E0(μg/ml)以下程度であることがわかった。この範囲でさらに、抗生物質の濃度をふって、再度検出することにより、正確なMICを検出することがわかった。また、培養時間が30minから60min程度で、生菌数比の差が顕著になるため、迅速に、微生物のMICを検出することができることが分かった。
【0077】
(比較例)
従来の希釈法により、パンスポリンに対する大腸菌のMICを測定した。被検薬剤の2倍希釈系列についてLB液体培地を用いて調整後、これに10E5または10E6(cfu/ml)の菌(大腸菌)を接種し、37℃一夜培養を行う。この後、菌の発育阻止が認められる薬剤(パンスポリン)の最小濃度をMICとした。
この結果を、図17に示す。MICは、一回目が310(ng/ml)、二回目が630(ng/ml)だった。この希釈法によるMICは、本発明による結果とほぼ同一となることが分かった。しかしながら、従来の希釈法では、試料の準備からMICを決定するまでに、18間以上かかった。これに対して、本発明では、MICを決定するまでに、試料の準備工程、蛍光観察工程の時間を加えても、1.5時間程度であった。
【0078】
(参照例)
参照例では、実施例1の液体培地を用いて培養せず、試料中にパンスポリンを導入したのち、蛍光観察した。その結果、生菌数、生菌数比等の結果にばらつきが出た。また、感受性を示す生菌数比を得るために、試料中にパンスポリンを導入する時間が最低でも60分以上必要となることが分かった。
これに対して、本発明に係る微生物検出方法は、液体培地を用いた培養工程を含むので、参照対象と検出対象との生菌数比の違いが明瞭になり、迅速かつ高感度に、微生物の感受性を検出することができた。
【0079】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
たとえば、吸引機構162は、センサーチップ100のメンブレンフィルタ130上の微生物が乾燥しないように、検出部140中の液体の水位を調節してもよい。また、吸引機構162は、微生物が乾燥しないように、所定間隔で液体(液体培地、試料、洗浄液等)を添加してもよい。
【0080】
また、センサーチップ100は、耐熱性を有する材料で構成されてもよい。これにより、センサーチップ100についてオートクレーブ等を実施することにより、センサーチップ100を繰り返し使用可能となる。なお、センサーチップ100は、安全性の観点から、使い捨ててもよい。
【0081】
また、メンブレンフィルタ130と下板120との間に、Oリング等を設けてもよい。これにより、液漏れ防止機能をさらに向上させることができる。または、メンブレンフィルタとチップ素材を直接、接着剤や超音波接合などで接合をしてもよい。また、図5に示すように、検出部140の断面形状は、テーパ状となっている。このため、検出部140の下面開口部分のメンブレンフィルタ130上に、微生物が効率良く捕集される。
【0082】
また、本実施の形態に係る生理活性物質は、上述の抗生物質またはスクリーニング用試料等に限定されず、たとえば、ファージ等であってもよい。ファージに接触した微生物の溶菌による生菌数比を算出することにより、微生物の菌種を迅速に特定することができる。ファージを用いた特定菌の検出方法は、食品衛生検査、環境衛生分析および感染症診断等に応用することできる。
【符号の説明】
【0083】
100 センサーチップ
110 上板
120 下板
130 メンブレンフィルタ
140 検出部
150 チップ台
152 開口部
160 濃縮装置
162 吸引機構
164 培養機構
166 真空ポンプ
168 廃液タンク
170 洗浄液タンク
172 送液ポンプ
174 培養液タンク
176 蛍光試料タンク
178 フィン
180 ヒータ
182 振盪器
184 送液用チューブ
186 廃液用チューブ
188 吸引プラグ
190 検出装置
192 移動ステージ
194 励起用光源
195 励起光用光学フィルタ
196 対物レンズ
198 ダイクロイックミラー
200 光学フィルタ
202 結像レンズ
204 検知機構
206 PC
208 仕切り板
210 カバー
300 試料
310 抗生物質を含まない液体培地
320 抗生物質を含む液体培地
330 蛍光試薬
340 対象菌
350 生菌
360 死菌
370 増殖菌
380 増殖抑制菌

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種の微生物を含む被検用の液体を溜める液溜め部と、
前記液溜め部の下面に設けられた開口部と、
前記開口部を覆うように設けられたメンブレンフィルタと、を有する検出部を備えるチップを準備し、
前記液溜め部の中の前記被検用の液体を、前記メンブレンフィルタの下方から除去して、前記メンブレンフィルタ上に前記微生物を濃縮する工程と、
生理活性物質を含む液体培地を前記液溜め部に導入し、前記液体培地中に浮遊している前記微生物を培養する工程と、
前記メンブレンフィルタの下方から前記液体培地を除去して、前記メンブレンフィルタ上に前記微生物を捕集する工程と、
前記微生物の生死を判別する試薬を前記液溜め部に導入する工程と、
前記チップ内の前記微生物を観察する工程と、を含む、微生物検出方法。
【請求項2】
複数の前記検出部を備える前記チップを用いる、請求項1に記載の微生物検出方法。
【請求項3】
前記微生物を濃縮する工程において、第1の前記検出部および第2の前記検出部に同一の前記被検用の液体を分けて導入し、
前記微生物を培養する工程において、第1の前記検出部では、前記生理活性物質を含まない液体培地を前記液溜め部に導入し、第2の前記検出部では、前記生理活性物質を含む液体培地を前記液溜め部に導入し、前記液体培地中に浮遊している前記微生物を培養し、
前記微生物を観察する工程において、第1の前記検出部内の前記微生物の第1の生菌数と前記2の検出部内の前記微生物の第2の生菌数とを算出する工程をさらに含む、請求項2に記載の微生物検出方法。
【請求項4】
前記生理活性物質が、抗生物質である、請求項1から3のいずれかに記載の微生物検出方法。
【請求項5】
第1の前記検出部および第2の前記検出部からなる第1の検出部群を、複数備える前記チップを用い、
前記微生物を培養する工程において、前記第1の検出部群の間で前記液体培地中の前記生理活性物質の濃度を異ならせ、
前記微生物を観察する工程において、前記生理活性物質の濃度に応じて、前記第1の生菌数に対する前記第2の生菌数の生菌数比を算出する工程をさらに含む、請求項3または4に記載の微生物検出方法。
【請求項6】
第3の前記検出部をさらに備える前記チップを用い、
前記微生物を濃縮する工程において、第1の前記検出部、第2の前記検出部および第3の前記検出部に同一の前記被検用の液体を分けて導入し、
前記微生物を培養する工程において、第3の前記検出部では、第2の前記検出部と異なる種類の生理活性物質を含む液体培地を前記液溜め部に導入し、前記液体培地中に浮遊している前記微生物を培養し、
前記微生物を観察する工程において、第1の前記検出部内の前記微生物の第1の生菌数と前記第3の検出部内の前記微生物の第3の生菌数とを測定し、前記第1の生菌数に対する前記第3の生菌数の生菌数比を算出する工程をさらに含む、請求項3から5のいずれかに記載の微生物検出方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の微生物検出方法は、前記生菌数比を示すデータの結果から最小発育阻止濃度(MIC)を算出する方法であり、
前記生理活性物質の前記最小発育阻止濃度が所定濃度以上である場合には、前記微生物が前記生理活性物質に対して耐性を示すと判断するとともに、前記生理活性物質に対する前記微生物の耐性の有無を示すデータを生成する、微生物検出方法。
【請求項8】
前記生理活性物質に対する前記微生物の耐性の有無を示すデータから、前記微生物が耐性を示さない前記生理活性物質を選択する工程をさらに含む、請求項7に記載の微生物検出方法。
【請求項9】
前記微生物を培養する工程は、前記チップを振盪させた状態で、前記微生物を培養する、請求項1から8のいずれかに記載の微生物検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−231678(P2012−231678A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210759(P2009−210759)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(506027941)株式会社ESPINEX (6)
【Fターム(参考)】