説明

微生物検出用オリゴヌクレオチドおよびそのアレイ、微生物検出器具、微生物検出方法ならびに微生物検出キット

本発明は、被検試料中に混入している微生物を簡便な操作で迅速かつ正確に判定することができる微生物検出器具、微生物検出方法および微生物検出キットを提供する。本発明に係る微生物検出器具は、対象となる微生物が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板表面に固定化されたマイクロアレイ型の器具である。被検試料から調製したプローブと上記基板表面に固定化されたオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの成立の有無により、被検試料中の微生物を簡便、迅速かつ正確に検出および/または同定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物検出用オリゴヌクレオチドおよびそのアレイ、微生物検出器具、微生物検出方法ならびに微生物検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
食品中に有害微生物が混入すると、品質劣化の原因となる。例えば、麦芽アルコール飲料中に有害な微生物が混入した場合、濁りや風味劣化などが生じる。さらに、例えば、ビールにおいては、ブレタノマイセス(デッケラ)(Brettanomyces (Dekkera)属、カンジダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属、醸造用酵母以外のサッカロマイセス(Saccharomyces)属といった非醸造用酵母が混入すると、ビールの品質が低下し、混濁やオフフレーバーの原因となる。これらの有害微生物を検出する方法として、現在最も一般的なものは、対象となるビールをメンブランフィルターでろ過後、適当な培地中で培養し、生育するコロニーを検出する方法である。
【0003】
さらに、このコロニーが上記有害微生物であるかどうかを判定する方法としては、コロニーから抽出したDNAを鋳型として、上記有害微生物に特異的なプライマーを用いてPCRを行い、PCR産物が得られるかどうかを電気泳動で判定する方法(例えば、特開平7−289295号公報を参照)が用いられている。しかしながら、この方法では、菌種ごとに多数のプライマーを用いてPCRを複数回行う必要があるため、操作が極めて煩雑であり、迅速性に問題がある。また、要する時間を短縮するために多数のプライマーを混合して1つのチューブで増幅反応を行うことは可能であるが、使用できるプライマーの数には限界があり、微量な検体に基づいて正確な判定を行う事は困難である。
【0004】
上記問題点を解決するために、それぞれの菌種に普遍的に存在している遺伝子の種特異的な配列を含む部分が増幅されるようにプライマーを設計し、増幅後に種特異的な配列を認識する制限酵素で増幅産物を切断し、電気泳動で得られるバンドサイズからどの菌種の遺伝子であるかを特定する方法が用いられている。しかしながら、必ずしも対象となる全ての菌種について判別可能な制限酵素が存在するとは限らず、また、得られた増幅産物を数種類の制限酵素で各々切断し、電気泳動に供するという極めて煩雑な操作が必要であり、迅速性、簡便性という面では問題がある。
【0005】
さらに、上記のような問題点を解決するために、種特異的な配列をプローブとして用い、被検体中のDNAまたはRNAにその配列と相補的な配列が存在するかどうかをハイブリダイゼーションによって判定する方法も行われている。
【特許文献1】特開平7−289295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記ハイブリダイゼーションによって判定する方法でも、非常に近縁でDNAの相同性が高い菌種では、別の種と誤ってハイブリダイズしてしまうクロスハイブリダイゼーションが頻繁に生じるという問題があり、正確に菌種を同定することが困難となる場合も生じる。
【0007】
したがって、特定の微生物の存在の有無をより正確かつ簡便または迅速に判定するための菌種の判別方法が求められている。
【0008】
特に、上記方法に用いることのできるクロスハイブリダイゼーションの問題を生じない、特異的な核酸プローブが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、麦芽アルコール飲料の代表的な汚染微生物のITS領域(微生物の18SリボソームRNA遺伝子と25SリボソームRNA遺伝子の間のスペーサー領域)に対応する塩基配列において、特定の属または特定の種に特異的な配列を見出し、この塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドをプローブとして用いることにより、迅速かつ正確に被検試料中の目的の微生物を検出および/または同定できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示すオリゴヌクレオチド、被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイ、そのようなアレイを備える微生物検出用器具、キット、および被検試料中の微生物の存在を検出する方法を提供する。
(1)配列番号1〜64の核酸配列のいずれかを含んでなるオリゴヌクレオチド。
(1a)配列番号1〜64の核酸配列のいずれかからなるオリゴヌクレオチド。
(2)被検試料中の微生物の存在を検出するためのプローブとして用いる、上記(1)または(1a)に記載のオリゴヌクレオチド。
(2a)上記被検試料が食品である、上記(2)に記載のオリゴヌクレオチド。
(2b)上記被検試料が麦芽アルコール飲料である、上記(2)に記載のオリゴヌクレオチド。
(3)核酸配列が配列番号1〜64の配列のうちのいずれかを含有し、以下の微生物のグループ(i)〜(vii):
(i)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、
(ii)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
(iii)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物、
(iv)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物、
(v)ハンセニアスポウバウムウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)に属する微生物、および
(vi)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)に属する微生物、および
(vii)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)もしくはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
の中から選択された1つのグループに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る、またはグループ(i)〜(vii)から選択された複数のグループのそれぞれに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチド。
【0011】
(4)被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイであって、
支持体に固定された、配列番号1〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む、
オリゴヌクレオチドアレイ。
(4a)被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイであって、
支持体に固定された、配列番号1〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む、
オリゴヌクレオチドアレイ。
(5)被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイであって、支持体に固定された、以下の(A)〜(G):
(A)配列番号1〜6、8、および10〜14の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(B)配列番号15〜22、および25〜29の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(C)配列番号30〜43の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(D)配列番号44〜52の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(E)配列番号53〜56の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(F)配列番号57〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、もしくは
(G)配列番号7、9、23、および24の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
のいずれか、またはこれらの任意の組み合わせを含む、オリゴヌクレオチドアレイ。
(5a)被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイであって、支持体に固定された、以下の(A)〜(G):
(A)配列番号1〜6、8、および10〜14の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(B)配列番号15〜22、および25〜29の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(C)配列番号30〜43の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチド、
(D)配列番号44〜52の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(E)配列番号53〜56の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(F)配列番号57〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、もしくは
(G)配列番号7、9、23、および24の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
のいずれか、またはこれらの任意の組み合わせからなる、オリゴヌクレオチドアレイ。
(6)少なくとも上記(A)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(7)上記微生物が、少なくともブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物である、上記(6)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(8)少なくとも上記(B)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(9)上記微生物が、少なくともブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物である、上記(8)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(10)少なくとも上記(C)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(11)上記微生物が、少なくともサッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物である、上記(10)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(12)少なくとも上記(D)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(13)上記微生物が、少なくともピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物である、上記(12)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(14)少なくとも上記(E)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(15)上記微生物が、少なくともハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)に属する微生物である、上記(14)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(16)少なくとも上記(F)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(17)上記微生物が、少なくともキャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)に属する微生物である、上記(16)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(18)少なくとも上記(G)のオリゴヌクレオチドを含む、上記(5)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(19)上記微生物が、少なくともブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、またはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物のいずれかである、上記(18)に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
(20)上記被検試料が食品である、上記(4)〜(19)のいずれかに記載のアレイ。
(20a)上記被検試料が麦芽アルコール飲料である、上記(4)〜(19)のいずれかに記載のアレイ。
【0012】
(21)被検試料中の微生物が、以下の微生物のグループ(i)〜(vii):
(i)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、
(ii)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
(iii)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)のいずれかに属する微生物、
(iv)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物、
(v)ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)のいずれかに属する微生物、および
(vi)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)のいずれかに属する微生物、および
(vii)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)もしくはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)のいずれかに属する微生物、
の中から選択される1つのグループの微生物であること、または複数のグループのうちのいずれかのグループの微生物であることを検出および/または同定するための器具であって、
選択された1つのグループに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、または選択された複数のグループのそれぞれに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを固定した支持体を備える、器具。
(22)上記グループ(i)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号1〜6、8、および10〜14の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(22a)上記グループ(i)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号1〜6、8、および10〜14の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(23)上記グループ(ii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号15〜22、および25〜29の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(23a)上記グループ(ii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号15〜22、および25〜29の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(24)上記グループ(iii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号30〜43の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(24a)上記グループ(iii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号30〜43の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(25)上記グループ(iv)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号44〜52の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(25a)上記グループ(iv)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号44〜52の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(26)上記グループ(v)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号53〜56の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(26a)上記グループ(v)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号53〜56の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(27)上記グループ(vi)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号57〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(27a)上記グループ(vi)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号57〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(28)上記グループ(vii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号7、9、23、および24の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(28a)上記グループ(vii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号7、9、23、および24の核酸配列からなる群から選択されるいずれか核酸配列からなるオリゴヌクレオチドである、上記(21)に記載の器具。
(29)上記支持体表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と上記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることにより、上記オリゴヌクレオチドが支持体に固定されていることを特徴とする、上記(21)〜(28a)のいずれか1項に記載の器具。
【0013】
(30)被検試料中の微生物の検出、被検試料中の微生物が属するグループの同定、または被検試料中の微生物の検出と該微生物が属するグループの同定とを行うための方法であって、
被検試料中の微生物の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
上記(1)〜(3)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、上記(4)〜(20)のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ、または上記(21)〜(29)のいずれか1項に記載の器具を用いて、支持体表面に固定されたオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
(31)上記被検試料が食品であることを特徴とする、上記(30)に記載の方法。
(31a)上記被検試料が麦芽アルコール飲料であることを特徴とする、上記(30)に記載の方法。
【0014】
(32)上記(30)〜(31a)のいずれか1項に記載の方法を実施するための微生物検出キットであって、
上記(1)〜(3)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、上記(4)〜(20)のいずれか1項に記載のアレイ、または上記(21)〜(29)のいずれか1項に記載の器具を含む、
キット。
(33)さらに、上記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で用いる試薬を含む、
上記(32)に記載のキット。
(34)さらに、上記プローブ調製工程および/または上記核酸調製工程で用いる試薬を含む、上記(32)または(33)に記載のキット。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、被検試料中の微生物を検出および/または同定する方法において、クロスハイブリダイゼーションの問題を最小限に抑えることができるオリゴヌクレオチドプローブが提供される。
【0016】
本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具によれば、対象となる微生物が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを使用して当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションを行うことにより、被検試料中の微生物を検出および/または同定するため、正確かつ簡便に微生物の検出および/または同定を行うことができる。
【0017】
また、基板表面に複数の微生物種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを含むアレイを使用することにより、網羅的な検査を行うことができる。
【0018】
さらに、本発明に係る微生物検出キットは、上記微生物検査オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検査器具および必要な試薬を含むものであるため、向上した操作性が提供され、従来よりも一層簡便に微生物の検出および/または同定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、1つの局面において、配列番号1〜64の核酸配列のいずれかを含んでなるオリゴヌクレオチドを提供する(表1−1および表1−2を参照)。これらのオリゴヌクレオチドは、被検試料中の微生物の存在を検出するためのプローブとして用いることができる。上記被検試料は、好ましくは、食品であり、より好ましくは、麦芽アルコール飲料である。
【0020】
本発明のオリゴヌクレオチドを使用して検出し得る被検試料中の微生物は、(i)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、(ii)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、(iii)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)のいずれかに属する微生物、(iv)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物、(v)ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)のいずれかに属する微生物、(vi)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)のいずれかに属する微生物、および(vii)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)もしくはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)のいずれかに属する微生物である。
【0021】
また、本発明は、別の局面において、被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイを提供する。このオリゴヌクレオチドアレイは、支持体に固定された、配列番号1〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む。
【0022】
本発明において、被検試料中の微生物を検出および/または同定するためのプローブとして使用され得るオリゴヌクレオチドは、以下に示すように種または属によってグループ分けすることができる。本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具において、これらのオリゴヌクレオチドの少なくとも1つ以上が支持体表面に固定されている。
【0023】
(A)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物のITS領域に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号1〜6、8、および10〜14に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0024】
(B)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物のITS領域に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号15〜22、および25〜29に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0025】
(C)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、サッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物のITS領域に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号30ないし43に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0026】
(D)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)のITS領域に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号44ないし52に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0027】
(E)ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)のITS領域に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号53ないし56に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0028】
(F)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)のITS領域に対応する塩基配列のうち、同種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号57ないし64に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0029】
上記(A)〜(F)に記載のオリゴヌクレオチドを支持体(例えば、基板)表面に固定化した本発明の微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具を用いることにより、食品中の汚染菌、特に麦芽アルコール飲料(ビール)、雑酒(発泡酒)、リキュール類、低アルコール飲料(例えば、アルコール分1%未満の麦芽発酵飲料、ビールテイスト飲料)中の汚染菌を網羅的に検出および/または同定することが可能となる。
【0030】
さらに、上記オリゴヌクレオチドに加えて、下記(G)に記載のオリゴヌクレオチドを上記基板表面に固定化した本発明のオリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具を使用して、食品中の汚染菌を網羅的に検出および/または同定することができる。
【0031】
(G)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)もしくはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)のITS領域に対応する塩基配列のうち、これらの種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドであって、配列番号7、9、23、および24に示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチド。
【0032】
表1−1および表1−2に、配列番号1〜64の配列およびそれらに対応する微生物にちなんで命名したオリゴ名を記載して示す。なお、表1−3は、後に詳述するが、本発明において使用するコントロールオリゴヌクレオチド等の配列を示す。
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0033】
本発明はまた、被検試料中の微生物を検出および/または同定するための方法を提供し、この方法は、被検試料中の微生物の核酸を調製する核酸調製工程と、当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、上記本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具を用いて、支持体表面に固定化されたオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含むことを特徴としている。
【0034】
本発明に係る微生物検出方法の被検試料としては、食品が好適であり、なかでも麦芽アルコール飲料等の飲料が最も適している。
【0035】
本発明はまた、微生物検出キットを提供し、このキットは、代表的には上記本発明に係る微生物検出方法を実施するために使用され、上記本発明に係る微生物検出器具が含まれる。さらに、ハイブリダイゼーション工程、シグナル検出工程、プローブ調製工程、核酸調製工程で用いる試薬を含むことが好ましい。
【0036】
以下、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0037】
(1)本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具
本発明に係る被検試料中の微生物を検出および/または同定するためのオリゴヌクレオチドアレイまたは器具においては、対象となる微生物が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドが基板のような支持体表面に固定化されており、当該オリゴヌクレオチドと被検試料に由来する核酸とのハイブリダイゼーションにより被検試料中の微生物が検出および/または同定される。
【0038】
〔支持体〕
本発明に係る微生物検出器具に用いる支持体としては、オリゴヌクレオチドを安定して固定化することができるものであればよい。例えば、ポリカーボネートやプラスチックなどの合成樹脂、ガラス等でできた基板を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。支持体の形態も特に限定されるものではないが、例えば、板状、フィルム状等の基板を好適に用いることができる。
【0039】
また、支持体にオリゴヌクレオチドを結合させる方法は、当業者に周知のものが使用され得る(例えば、特許公表2003−530861;特許公表2004−526402などに記載される手順が参照され得る)。本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具においては、上記支持体表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と上記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることが好ましい。
【0040】
〔支持体表面に固定化されるオリゴヌクレオチド〕
本発明に係るオリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具の支持体表面に固定化されるオリゴヌクレオチドは、検出対象微生物が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドであればよい。当該オリゴヌクレオチドと被検試料由来の核酸との間にハイブリダイゼーションが成立することにより、被検試料中に含まれている目的の種または属に属する微生物を検出することが可能となる。なお、上記検出対象微生物が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドを、以下適宜「キャプチャーオリゴ」と称する。
【0041】
上記特異的な塩基配列は、検出対象微生物のゲノムの塩基配列から属または種特異的な塩基配列を見出せばよいが、検出対象微生物のリボソームRNA遺伝子に対応する塩基配列から見出すことが好ましい。なかでも微生物の18SリボソームRNA遺伝子と25SリボソームRNA遺伝子の間のスペーサー領域(ITS領域)は属または種特異的な塩基配列を多く有していることが知られており、ITS領域に対応するDNA配列中から属または種特異的な塩基配列を見出すことが特に好ましい。ITS領域の塩基配列は、GenBank、EMBL、DDBJ等のデータベース等から入手することができる。
【0042】
キャプチャーオリゴは上記属または種特異的な塩基配列に基づいて設計すればよい。したがって、上記属または種特異的な塩基配列そのものであってもよいし、検出対象微生物から調製した核酸と特異的なハイブリダイゼーションが成立する限りにおいて、例えば、数個の塩基の置換、欠失、挿入、および/または付加などの変異が含まれていてもよい。変異の位置は特に限定されるものではない。
【0043】
キャプチャーオリゴの長さ(塩基数)は特に限定されるものではないが、短すぎるとハイブリダイゼーションの検出が困難になり、長すぎると非特異的ハイブリダイゼーションを許容してしまう。発明者らは、キャプチャーオリゴの長さの最適化について検討を重ね、標準的な長さを12〜24塩基とした。より好ましくは13〜22塩基である。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、この範囲の長さよりも数塩基短いもの(例えば、8塩基、9塩基、10塩基、11塩基)または数塩基長いもの(例えば、25塩基、26塩基、27塩基、28塩基)などでもよい。塩基長は主として配列特性(特定の塩基の含有率,同一塩基のリピート)に依存するものであり、結合性の良いものは短鎖でも特異的ハイブリダイゼーションが可能であることが、発明者らにより確認されている。
【0044】
キャプチャーオリゴが、被検試料由来の核酸とのハイブリダイゼーションを妨害するヘアピン構造、ループ構造、またはそれ以外の立体構造を持つ場合、キャプチャーオリゴを構成する1またはそれ以上のヌクレオチドをイノシンまたはいずれのヌクレオチドとも対合しない核酸に置換することにより、その立体構造を解除することができる。
【0045】
キャプチャーオリゴの合成法は特に限定されるものではなく、公知の方法(例えば、Maniatis, T. et al., Molecular Cloning A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)に記載の方法等)により合成すればよい。一般的には、市販のDNA合成機を用いて化学合成することができる。
【0046】
本発明に係るオリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具において、上記検出対象微生物が属する種または属に特異的な塩基配列に基づくオリゴヌクレオチドのみではなく、それらに加えて、いわゆるコントロール・キャプチャーオリゴを支持体表面に固定化することが好ましい。コントロール・キャプチャーオリゴには、陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが含まれる(表1−3を参照)。陽性コントロール・キャプチャーオリゴは、後述するプローブ調製工程において増幅反応がうまくいっているかどうかと、ハイブリダイゼーションがうまく行っているかどうかを判定するために用いるものである。陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、非特異的ハイブリダイゼーションが生じていないこと、すなわち擬陽性のハイブリダイゼーションシグナルが生じていないことを確認するために用いるものである。これらの陽性コントロール・キャプチャーオリゴおよび陰性コントロール・キャプチャーオリゴが支持体表面に固定化された微生物検出用アレイまたは器具も本発明に含まれる。
【0047】
陽性コントロール・キャプチャーオリゴは検出対象微生物から調製するプローブに含まれる塩基配列に基づいて設計されるものであればよい。また、複数の検出対象微生物を同時に同一の微生物検出器具を用いて検出する場合には、各検出対象微生物について陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよいが、複数の検出対象微生物から調製するプローブに共通する塩基配列に基づいて設計してもよい。すべての検出対象微生物から調製するプローブに共通する塩基配列がない場合は、いくつかのグループごとに陽性コントロール・キャプチャーオリゴを設計してもよい。あるいは、プライマー配列部分が同じで、対象となる微生物の配列とは異なる人工的な配列を設計し、この配列の一部を陽性コントロール・キャプチャーオリゴとすることもできる。上記人工的な配列を鋳型としてプローブを調製し(本明細書では、このようなプローブをコントロールプローブと称する。)、被検試料から調製したプローブに添加することにより、ハイブリダイゼーションの特異性を検証することが可能となる。なお、上記プローブについては後述する。
【0048】
陰性コントロール・キャプチャーオリゴは、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列において、1塩基以上であり、かつ、当該配列の有する塩基数の20%未満の範囲内で人為的な塩基の置換を含む塩基配列を有するように設計することが好ましい。塩基置換を行う塩基数は、ハイブリダイゼーションの条件との関係で決定され、検出対象微生物由来のプローブがハイブリダイゼーションを生じないような塩基数を選択すればよい。
【0049】
検出対象微生物は特に限定されるものではなく、目的とする被検試料中から検出しようとする微生物を適宜選択すればよい。例えば、食品中に混入し当該食品を汚染する可能性のある微生物を挙げることができる。食品中に有害な微生物が混入することは、公衆衛生上非常に大きな問題となる。また、ビールや発泡酒に代表される麦芽アルコール飲料においては、有害な微生物が混入した場合、濁りや風味劣化などの品質劣化の原因となるため、これらの有害微生物を迅速かつ正確に検出および/または同定する方法の開発が特に強く望まれている。
【0050】
麦芽アルコール飲料を含む食品を汚染する微生物、特に真菌としては、ブレタノマイセス(デッケラ)(Brettanomyces (Dekkera)属、カンジダ(Candida)属、ピキア(Pichia)属、ハンセニアスポラ(Hanseniaspora)属、醸造用酵母以外のサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する微生物を挙げることができる。また、ブレタノマイセス(デッケラ)(Brettanomyces (Dekkera)属に属する真菌種としては、ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)、ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)を挙げることができる。また、醸造用酵母以外のサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する真菌種としては、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)もしくはサッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)を挙げることができる。
【0051】
また、食品を汚染する真菌として、上記の他にピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)、ハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)、キャンディダ・バリダ(Candida valida)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)を挙げることができる。ただし、検出対象微生物はこれらに限定されるものではない。
【0052】
上記例示した微生物を検出および/または同定するためのキャプチャーオリゴとしては、ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)、ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)、サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、サッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)、ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)、ハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)、キャンディダ・バリダ(Candida valida)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)由来のオリゴヌクレオチドのうち、各微生物種に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドを挙げることができる。具体的には、配列番号1〜64に示されたいずれかの塩基配列を含むオリゴヌクレオチドを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明に係る微生物検出器具の支持体(例えば、基板)表面に固定化されるキャプチャーオリゴは、対象とする微生物から調製されたプローブとハイブリダイゼーションが成立するものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明のオリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜64に示されたいずれかの塩基配列のみからなるものであってもよく、配列番号1〜64に示されたいずれかの塩基配列以外の配列を含むものであってもよい。配列番号1〜64に示されたいずれかの塩基配列以外の配列を含むキャプチャーオリゴとしては、配列番号1〜64に示された各塩基配列の5’側もしくは3’側またはその両方に対して、各々のITS領域の塩基配列に基づいて伸長させた塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを挙げることができ、このようなオリゴヌクレオチドを支持体表面に固定化された微生物検出器具も本発明に含まれる。
【0054】
1つの支持体上に固定化するキャプチャーオリゴは、少なくとも1種類以上であればよく、特に上限はない。一般に、試料中に混入した微生物を検出する場合は、被検試料中から検出可能な微生物を1つの基板で網羅的に検出できることが、操作の簡便性および検査の迅速性の観点から好ましいといえる。したがって、本発明に係る微生物検出器具も、1つの支持体上に目的の微生物種または属に対応するキャプチャーオリゴを複数固定化した、いわゆるマイクロアレイ型の器具とすることが最も好ましい。例えば、麦芽アルコール飲料を被検試料とする場合には、ブレタノマイセス(デッケラ)(Brettanomyces)属、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)等に属する微生物に対応したキャプチャーオリゴを支持体表面に固定化することが好ましい。
【0055】
〔オリゴヌクレオチド(キャプチャーオリゴ)の固定化〕
オリゴヌクレオチドの支持体(例えば、基板)表面への固定化法は特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜選択して用いればよい。例えば、物理的吸着、電気的結合または分子共有結合などの一般的なハイブリダイゼーション法に用いられる手法が利用可能である。本発明に係る微生物検出器具においては、表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有する基材を使用し(米国特許:US5,908,746、特開平8−23975号)、固定化することが好ましい。オリゴヌクレオチドは、支持体上に、アレイ状またはマトリクス状にスポットされ得る。
【0056】
オリゴヌクレオチドをスポッティングする際に、オリゴヌクレオチドのスポット量が少なすぎると、オリゴヌクレオチドとプローブとの間の反応性を十分に確保することができず、判定が困難になることがある。また、高集積度のスポッティングは技術的な問題と同時にコストがかかり、さらにプローブの蛍光標識や化学発色などを用いたハイブリダイゼーションシグナルの検出にもより精密で高額な検出装置(例えば、スキャナー)が必要となる。したがって、オリゴヌクレオチドは、基板の表面に径10〜1,000μmのサイズに固定することが好ましい。オリゴヌクレオチドの基板上へのスポッティング方法は特に限定されるものではない。例えば、スポッティングマシンを使用して基板上にオリゴヌクレオチド溶液をスポッティングすることにより行うことができる。これによりオリゴヌクレオチド溶液は、通常ほぼ円形にスポッティングされる。キャプチャーオリゴの支持体への固定化方法については、さらに、例えば、特開2002−65274号(例えば、段落[0062]-[0066]の記載)等が参照され得る。
【0057】
(2)本発明に係る微生物検出方法
本発明に係る微生物検出方法は、被検試料中の微生物の核酸を調製する核酸調製工程と、当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、対象となる微生物が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程とを含む、被検試料中の微生物を検出および/または同定するための方法である。本検出方法のハイブリダイゼーション工程においては、本発明に係る、配列番号1〜64のいずれかの核酸配列からなる(またはそれを含んでなる)1つ以上のオリゴヌクレオチド、微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイ、または微生物検出器具を用いることができる。本発明のオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具を用いることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出および/または同定を行うことが可能となる。また、本検出方法の被検試料としては、食品であることが好ましい。以下各工程に分けて詳細に説明する。
【0058】
〔核酸調製工程〕
被検試料中の微生物の核酸を調製する工程である。被検試料からの核酸の調製法は、公知の核酸の調製法を適宜選択して用いることができる。例えば、DNAの調製は、R−F.Wangが紹介する方法に従って抽出することができる(Molecular and Cellular Probes(2000) 14,1−5)。この方法は標準的な調製法であるが、多くの代替法があり、いずれを採用してもよいことはいうまでもない。また、市販のキットを使用してもよい。
【0059】
〔プローブ調製工程〕
上記核酸調製工程で調製した核酸を鋳型として標識プローブを調製する工程である。プローブは、例えば、キャプチャーオリゴおよび陽性コントロール・キャプチャーオリゴの塩基配列を含むよう核酸増幅により作製することができる。核酸増幅の方法としては、例えば、PCRによりDNAとして増幅する方法、あるいはインビトロ・トランスクリプション(in vitro transcription)法によりRNAとして増幅する方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
例えば、PCRにより標識プローブを調製する場合には、PCRに用いるプライマーは、プローブがキャプチャーオリゴおよび陽性コントロール・キャプチャーオリゴと相補的な塩基配列を含むように設計される。なお、ハイブリダイゼーションが可能である限りにおいて、プローブはキャプチャーオリゴまたは陽性コントロール・キャプチャーオリゴよりも長くても短くてもよい。標識プローブを得るために、PCRに用いるプライマーを予め標識しておくことが可能である。また、PCRの基質(デオキシヌクレオシド三リン酸)を標識しておくことにより標識プローブを得ることもできる。あるいはPCR終了後にプローブを標識してもよい。標識物質は特に限定されるものではなく、例えば、蛍光物質、ハプテン、放射性物質等、通常のハイブリダイゼーションに用いるプローブと同様の標識物質を使用することができる。具体的には、蛍光物質としてはフルオレセイン(FITC)、ローダミン(Rodamine)、フィコエリスリン(PE)、テキサスレッド(Texas Red)、シアニン系蛍光色素等が、ハプテンとしてはビオチン(BIOTIN)、ジゴキシゲニン(Dig)、ジニトロフェニル(DNP)、フルオレセイン等を挙げることができる。
【0061】
〔ハイブリダイゼーション工程〕
ハイブリダイゼーション工程は、対象となる微生物が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチド(例えば、配列番号1〜64のいずれかの核酸配列からなる(またはそれを含んでなる)1つ以上のオリゴヌクレオチド)と上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行う工程である。ハイブリダイゼーションは上記オリゴヌクレオチドを固定化したメンブレン上等で行うことができる。あるいは、本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイまたは微生物検出器具を用いることができる。当該微生物検出用アレイまたは器具を用いることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出および/または同定を行うことが可能となる。ハイブリダイゼーション工程に用いる方法は特に限定されるものではなく、公知の核酸ハイブリダイゼーション方法を適宜選択して用いることができる。以下に、具体的なハイブリダイゼーション方法の一例を示す。
【0062】
SSC(Standard Saline Citrate)などの塩溶液、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などのブロッキング溶液、および融合反応促進のための添加剤からなる融合液に、標識プローブを加える。プローブが2本鎖の場合は熱等による変性を行う。基板上に標識プローブ液を数μL添加した後、数時間加熱操作(通常37〜50℃)を行い、基板上に固定化されているオリゴヌクレオチドと標識プローブ間でハイブリッドを形成させる。その後、基板上に5×SSCまたは3Mテトラメチルアンモニウムクロライドを加えて加熱し(通常37〜50℃)、特異的なハイブリッドを形成していない標識プローブを基板から剥離させ、特異的なハイブリッドのみを選択的に基板上に残す。
【0063】
ハイブリダイゼーションは、クロスハイブリダイゼーションが生じないために、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行うことが好ましい。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、その条件下でプローブがその標的となる部分配列にハイブリダイズされるが、他の配列への、あるいはその差異が同定されるような他の配列へのハイブリダイゼーションは実質的には起こらないような条件を意味する。ストリンジェント条件は、配列依存性であり、また周囲の条件により異なり得る。配列が長いほど、より高い温度で特異的にハイブリダイズされる。一般的には、ストリンジェント条件は、規定のイオン強度とpHにおいて特定配列の熱融解点(Tm)よりも約5℃低くなるように選択される。Tmは、所定のイオン強度、pH、および核酸濃度の下で、標的配列に相補的なプローブの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズされる温度である。一般的には、標的となる配列が過剰に存在するため、Tmでは、プローブの50%が平衡状態では標的に占有される。典型的には、ストリンジェント条件は、pH7.0〜8.3でNaあるいはその他の塩の濃度が少なくとも約0.01〜1.0M、また温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)で少なくとも約30℃である条件である。ストリンジェント条件はまた、ホルムアミドなどの不安定化薬剤の添加によっても達成することができる。
【0064】
本明細書中、「特異的にハイブリダイズする」または「特異的にハイブリダイズし得る」という用語は、その配列がDNAあるいはRNAの複合体混合物の中に存在するとき、ストリンジェント条件下で特定のヌクレオチド配列あるいは配列群に、分子が実質的に、あるいはそれのみに結合、二本鎖化、あるいはハイブリダイズされることを意味する。一般的に、核酸は、温度を上昇させることにより、あるいはその核酸を含有する緩衝液の塩濃度を減少させることにより変性することが分かっている。低ストリンジェント条件(例えば、低温度および/または高塩濃度)下では、ハイブリッド二本鎖(例えば、DNA:DNA、RNA:RNAあるいはRNA:DNA)が、徐冷再対合された配列が完全に相補的ではない場合であっても、形成されることになる。したがって、ハイブリダイゼーションの特異性は、低ストリンジェント下では減少される。反対に、高ストリンジェント下では(例えば、高温度あるいは低塩濃度)ハイブリダイゼーションを成功裡に行うにはミスマッチがなるべく少ないことが要求される。
【0065】
当業者であれば、ハイブリダイゼーション条件は任意のストリンジェント性の程度をもたらすように選択することができることを理解する。1つの例示的な態様では、ハイブリダイゼーションは低ストリンジェント下で、例えば、6×SSPE−Tで37℃にて(0.005% トリトンX−100)で実施され、ハイブリダイゼーションが確実なものにされる。またその後、引き続いてミスマッチハイブリッド二本鎖を取り除くために洗浄が高ストリンジェント下で(例えば、1×SSPE−Tで37℃にて)実施される。ハイブリダイゼーション特異性の所望されるレベルが得られるまで、連続洗浄を段々と高いストリンジェント性(例えば、0.25×SSPE−Tで37℃〜50℃)で実施することができる。ストリンジェント性はまた、ホルムアミドなどの薬剤の添加により上昇させることができる。ハイブリダイゼーション特異性は、存在し得る種々のコントロール(例えば、発現レベルコントロール、標準化コントロール、ミスマッチコントロール、その他)へのハイブリダイゼーションとの、テストプローブに対するハイブリダイゼーションの比較により評価することができる。
【0066】
ハイブリダイゼーション条件の最適化に関する諸方法は、当業者は周知である(例えば、P. Tijssen編『生化学と分子生物学における実験室技術』、第24巻、核酸プローブによるハイブリダイゼーション(Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology. Vol. 24; Hybridization With Nucleic Acid Probes)、1993年、Elsevier社刊、N.Y.参照のこと)。
【0067】
〔シグナル検出工程〕
シグナル検出工程は、上記ハイブリダイゼーション工程においてハイブリダイゼーションの成立の有無を判定する工程であり、通常上記ハイブリダイゼーション工程と連続的に行われる。
【0068】
ハイブリッド検出工程で用いる方法は、上記プローブ調製工程で調製したプローブに導入された標識物質に依存する。すなわち、ハイブリッドの検出には、プローブに導入されている蛍光物質、ハプテン等の標識物質を使用する。したがって、用いたプローブに導入した標識物質を検出するための公知の方法を適宜選択して使用すればよい。
【0069】
例えば、ハプテンを使用する場合は、ハプテンを認識するタンパクまたはそれに結合するタンパクと、アルカリフォスファターゼまたはホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ等の結合体(酵素コンジュゲート)を含む溶液を基板上に加え、室温で数10分間反応させる。なお、このハプテンと酵素コンジュゲートの結合反応を行う前に、オリゴヌクレオチドを固定した領域以外の基板の領域をカゼインなどのタンパクを用いて完全に被覆することによって、酵素コンジュゲートと基板の非特異的吸着反応を阻止することができる。これは、オリゴヌクレオチドを固定した後に基板上にカゼインなどのタンパクの溶液を加え、室温で数10分間放置することによって行うことができる。酵素コンジュゲートとプローブ中のハプテンとの結合反応終了後、ハプテンと結合しなかった酵素コンジュゲートを、界面活性剤を含む適当な緩衝液で洗浄し排除する。これによって、基板上にはプローブ中のハプテンと結合した酵素コンジュゲートのみが残ることになる。
【0070】
ハイブリッドの視覚化には、ハプテンと酵素コンジュゲート結合体のみが存在する場合にのみ不溶化合物が形成されるような化合物を添加する。その不溶性化合物の生成は、酵素反応によって増幅され可視化される。添加される化合物として、酵素コンジュゲート中の酵素がアルカリフォスファターゼの場合には、ニトロブルーテトラゾリウムクロライド(NBT)とBCIP(5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸−pトルイジン塩)が用いられ、酵素がホースラディッシ・ペルオキシダーゼの場合には、TMB(3,3’,5,5’テトラメチルベンチジン)などが用いられる。
【0071】
キャプチャーオリゴを固定化した位置におけるハイブリッドの色素沈着または蛍光発色等のハイブリダイゼーションシグナルを見ることによって、被検試料中に含まれる微生物種の判定を行う。すなわち、ハイブリダイゼーションシグナルが検出された場合には、当該シグナルがある位置にスポットされたオリゴヌクレオチドに対応する微生物が、被検試料中に含まれていることを意味する。なお、陽性コントロール・キャプチャーオリゴの位置にシグナルが認められれば、本試験が正常に機能していることが確認でき、陰性コントロール・キャプチャーオリゴの位置にシグナルが認められなければ、ハイブリダイゼーションが適当な条件で行われたことが確認できる。
【0072】
(3)本発明に係る微生物検出キット
本発明に係る微生物検出キットは、上述の本発明に係る微生物検出方法を実施するためのキットである。したがって、本発明に係る微生物検出方法を実施できるものであれば、キットに含まれる構成は特に限定されるものではない。
【0073】
本発明の微生物検出キットは、代表的には、本発明の配列番号1〜64のいずれかの核酸配列からなる(もしくはそれを含んでなる)1つ以上のオリゴヌクレオチド、本発明に係る微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイ、または微生物検出器具を含む。これらを含むキットとすることにより、簡便、迅速かつ正確に網羅的な検出および/または同定を行うことが可能となる。また、本微生物検出キットには、上記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で使用する試薬を含むことが好ましい。ハイブリダイゼーション工程で用いる試薬としては、例えば、SSC(Standard Saline Citrate)などの塩溶液、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、ウシ血清アルブミン(BSA)などのブロッキング溶液、融合反応促進のための添加剤等を挙げることができ、シグナル検出工程で使用する試薬としては、例えば、ハプテンを認識するタンパクと酵素との結合体(酵素コンジュゲート)や、NBT、BCIP、TMB等の発色基質等を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、目的に適合するように適宜適切な試薬を選択してキットの構成とすればよい。
【0074】
本発明の微生物検出キットは、上記プローブ調製工程で使用する試薬を含むことが好ましく、さらに、上記核酸調製工程で使用する試薬を含むことが好ましい。プローブ調製工程で使用する試薬としては、例えば、PCR用緩衝液、耐熱性DNA合成酵素、デオキシヌクレオシド三リン酸混合液等を挙げることができ、核酸調製工程で使用する試薬としては、溶菌用緩衝液、DNA回収用カラム、DNA抽出用緩衝液等を挙げることができる。ただしこれに限定されるものではなく、目的に適合するように適宜適切な試薬を選択してキットの構成とすればよい。
【0075】
本発明に係るキット(例えば、本発明に係る微生物検出用アレイまたは器具および各工程に使用する試薬を含むもの)を用いることにより、被検試料受領後約6時間で被検試料中に含まれる微生物の検出および/または同定を実施することができる。
【0076】
(4)本発明の用途
本発明のオリゴヌクレオチドは、被検試料中の微生物を検出および/または同定するためのプローブとして使用され得る。対象となる微生物は、(1)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)、(2)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)、(3)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)もしくはサッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物が含まれる。
【0077】
さらに、本発明における検出対象微生物としては、(4)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)、(5)ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)、または(6)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)に属する微生物が含まれる。
【0078】
本発明に係るオリゴヌクレオチド、微生物検出用オリゴヌクレオチドアレイ、微生物検出器具、微生物検出方法、および微生物検出キットの用途は、微生物の判定が必要な用途であれば、特に限定されるものではなく、全てに用いることができる。具体的には、例えば、微生物による汚染が品質に大きな影響を及ぼす各種工業製品の製造工程で、同工業製品やその製造環境等から分離された微生物を迅速かつ正確に検出および/または同定する必要がある場合に好適に用いられる。
【0079】
判定の対象となる被判定微生物の由来となる上記工業製品としては、代表的なものとして、食品、飲料、医薬品・試薬・医薬部外品、使い捨ての医療用器具等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。本発明は上記例示した工業製品のなかでの食品に応用することが好ましい。食品としては、より具体的には、パン、和洋菓子(冷菓等も含む)、惣菜食品、乳製品、シリアル食品、豆腐・油揚げ類、麺類、弁当類、調味料、小麦粉や食肉等の農産加工品、栄養補助食品(サプリメント等)、長期保存食品(缶詰、冷凍食品、レトルト食品等)等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0080】
本発明は、上記例示した食品のなかでも、特にビール、発泡酒、リキュール類、低アルコール飲料(例えば、アルコール分1%未満の麦芽発酵飲料、ビールテイスト飲料等の飲料を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0081】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0082】
〔オリゴヌクレオチドの合成〕
定法に従い、オリゴヌクレオチド合成機(Perkin−elmer Applied biosystems 社製)を用いてオリゴヌクレオチドを合成し、脱保護を施した後乾燥させた。このオリゴヌクレオチド乾燥体を、10mM Tris−HCl(pH7.5)・1mM EDTA緩衝液を用いて溶解し、100pmol/μLのオリゴヌクレオチド溶液を調製した。本実施例に使用したすべてのオリゴヌクレオチドはこの方法で合成した。合成したオリゴヌクレオチドの塩基配列を配列番号1〜69に示した。これらのうち、配列番号1〜64がキャプチャーオリゴであり、配列番号65が陰性コントロール・キャプチャーオリゴであり、配列番号66〜67がプライマーであり、配列番号68がコントロールプローブであり、配列番号69がコントロールプローブに対する陽性コントロール・キャプチャーオリゴある。キャプチャーオリゴヌクレオチドについては上記合成機を用いて5’末端にアミノ基を結合させ、プライマーは5’末端にビオチンを結合させた。
【0083】
〔基板へのキャプチャーオリゴヌクレオチドのスポッティング〕
5’末端にアミノ基を有するオリゴヌクレオチド溶液10μLに対してマイクロスポッティング溶液(TeleChem International Inc.製)を10μL混合し、マイクロタイタープレート(Greiner Laboratory Inc.製)上に分注した。スポッティングマシンの所定の位置にカルボジイミド樹脂処理スライドグラスCarbostation(日清紡績株式会社製)を配置し、スポッティングマシンを作動させた。スポッティング終了後、スライドグラスに熱水からの蒸気を数秒間あて、その後紫外線を600mJ照射した。再度蒸気に数秒間曝露した後、ホットプレート上にスライドグラスを置いて水分を除去した。スライドグラスを3% BSA(ウシ血清アルブミン)を含む100mM Tris−HCl(pH7.5)・100mM NaCl・0.1% Triton X−100に室温で30分間浸し、ブロッキングした。その後、10mM Tris−HCl(pH7.5)・1mM EDTA緩衝液で洗浄した。スライドグラスを室温で乾燥させ、使用まで乾燥状態で冷暗所にて保存した。図1(A)に、本実施例で実際に使用した微生物検出器具の基板上に固定化されているオリゴヌクレオチドの配置を示した。
【0084】
〔核酸調製工程〕
検体として用いた微生物はブレタノマイセス属2種、サッカロマイセス属4種、キャンディダ属2種、ピキア属2種、ハンセニアスポラ属2種の合計11種類の微生物である。検体として用いた微生物を表2に示した。
【表2】

【0085】
これらの各微生物に最適な培養条件で培養した菌液から、Genomic DNA Purif. Kit(EdgeBioSystems製、Cat. No. #85171)を用いて各微生物のゲノムDNAをそれぞれ調製した。
【0086】
〔プローブ調製工程〕
得られた各微生物のDNAを鋳型としてPCRによりプローブ核酸を調製した。PCR反応液の組成は、Taqポリメラーゼ:1unit、ビオチン化プライマー(配列番号66および67):各10 pmol、反応用緩衝液(10×):5μL、dNTP:各10 nmol、鋳型DNA:100ngに滅菌蒸留水を加えて総量50μLとした。サーマルサイクラーを用いて、95℃で3分間保持した後、95℃:30秒間、55℃:15秒間、72℃:1分間の反応を30サイクル行い、72℃で5分間保持して反応を終了した。
【0087】
また、プライマー配列部分が同じで対象となる微生物の配列とは異なる人工的な配列を設計し、これをコントロールプローブとした。これを鋳型としてPCRを行い、ビオチン化コントロールプローブを調製した。PCR反応液の組成は、鋳型DNAを1ngとした点を除いて上記と同様である。また、反応温度およびサイクル数は上記と同一である。プローブの精製は行わず、PCR反応液をそのままプローブ溶液として、以下のハイブリダイゼーション工程で使用した。
【0088】
〔ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程〕
上記プローブ核酸溶液3μLと、ビオチン化コントロールプローブ溶液1μLと、ArrayIt Unihyb Hybridization Solution(TeleChem International Inc.製)16μL とを加えて混合し、100℃で1分間加熱処理を行った後、氷中に5分間浸した。このプローブ核酸溶液を全量とり、キャプチャーオリゴヌクレオチドを固定化した基板に載せ、その上にカバーグラスを載せた。これを保湿箱に入れ、37℃に設定した恒温器中に120分間静置した。基板を取り出し、すばやく室温下で2×SSC溶液(2×SSC:0.033M NaCl、0.033Mクエン酸ナトリウム)に浸してカバーグラスを除去し、37℃に保温した2×SSC中に5分間浸した。
【0089】
基板を2×SSCから取り出し、遠心機(Beckman社製)にセットして、2,000rpmで1分間遠心した。次にVECTASTAIN Elite ABC kit(VECTOR社製)を用いてアビジン−ビオチン化ペルオキシダーゼ複合体を作製し基板上に1.4mL滴下し、室温で30分間静置した。その後、PBS(10mMリン酸ナトリウム(pH7.5)、0.9%塩化ナトリウム)中で洗浄した。TMB substrate kit for peroxidase (VECTOR社)を用いて発色溶液を作製し、基板上に1.4mL滴下して室温で30分間静置した。基盤を蒸留水で洗浄して発色反応を止めた。
【0090】
〔判定〕
EPSON社製スキャナーGT−8700Fおよびその透過型ユニットを用いてハイブリダイゼーションを行った領域を600dpiにてスキャンし、スキャン画像を目視により発色の有無を確認した。図1(B)にスキャン画像の一例として、Dekkera bruxellensisのスキャン画像を示した。なお、図1(A)は基板上のオリゴヌクレオチドの配置を示している。
【0091】
〔結果〕
検体として用いた11種類の各微生物についての結果を表3〜13に示した。各表とも○印が発色の確認されたスポットを表し、−印が発色の確認されなかったスポットを表す。表3〜13から明らかなように全ての場合、コントロールプローブではそれに対する陽性コントロール・キャプチャーオリゴ(配列番号69)に発色が見られ、また、陰性コントロール・キャプチャーオリゴでは発色が認められず、増幅およびハイブリダイゼーションの工程が共に正常に機能していることが確認された。このことより微生物より調整した核酸が増幅されていることも確認された。なお、以下の結果の説明においては陽性コントロール・キャプチャーオリゴ(配列番号69)の発色は含めないものとする。
【0092】
表3にはBrettanomyces (Dekkera) bruxellensisの結果を示した。Brettanomyces (Dekkera) bruxellensisは16個所のBrettanomyces (Dekkera) bruxellensis検出用キャプチャーオリゴ(配列番号1から14、および23、24)のみで発色が確認された(図1参照)。同様に、表4にはBrettanomyces (Dekkera) anomalaの結果を示した。Brettanomyces (Dekkera) anomalaは17個所のBrettanomyces (Dekkera) anomala検出用キャプチャーオリゴ(配列番号7,9および15から29)のみで発色が確認された。表5にはSaccharomyces cerevisiaeの結果を示した。Saccharomyces cerevisiaeは14個所のSaccharomyces検出用キャプチャーオリゴ(配列番号30から43)のみで発色が確認された。表6にはSaccharomyces diastaticusの結果を示した。Saccharomyces diastaticusは14個所のSaccharomyces検出用キャプチャーオリゴ(配列番号30から43)のみで発色が確認された。表7にはSaccharomyces pastorianusの結果を示した。Saccharomyces pastorianusは14個所のSaccharomyces検出用キャプチャーオリゴ(配列番号30から43)の少なくとも5箇所以上で発色が確認された。表8にはSaccharomyces bayanusの結果を示した。Saccharomyces bayanusは14個所のSaccharomyces検出用キャプチャーオリゴ(配列番号30から43)の少なくとも5箇所以上で発色が確認された。表9にはPichia anomalaの結果を示した。Pichia anomalaは9個所のPichia anomala検出用キャプチャーオリゴ(配列番号44から52)のみで発色が確認された。表10にはHanseniaspora uvarumの結果を示した。Hanseniaspora uvarumは4個所のHanseniaspora uvarumおよびHanseniaspora guilliermondii検出用キャプチャーオリゴ(配列番号53から56)のみで発色が確認された。表11にはHanseniaspora guilliermondiiの結果を示した。Hanseniaspora guilliermondiiは4個所のHanseniaspora uvarumおよびHanseniaspora guilliermondii検出用キャプチャーオリゴ(配列番号53から56)のみで発色が確認された。表12にはCandida validaの結果を示した。Candida validaは8個所のCandida validaおよびPichia membranaefaciens検出用キャプチャーオリゴ(配列番号57から64)のみで発色が確認された。表13にはPichia membranaefaciensの結果を示した。Pichia membranaefaciensは8個所のCandida validaおよびPichia membranaefaciens検出用キャプチャーオリゴ(配列番号57から64)のみで発色が確認された。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【0093】
以上の結果は、検体として用いた各微生物において、各微生物に特異的なキャプチャーオリゴを固定化したスポットのみで発色が認められ、非特異的な発色は全く認められなかったことを示すものである。したがって、本実施例において作製した微生物検出器具は、表2に示した微生物を種特異的に検出できる微生物検出器具であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、被検試料中に混入している微生物を簡便な操作で迅速かつ正確に判定することができる微生物検出器具、微生物検出方法および微生物検出キットを提供するものである。したがって、本発明は、食品製造業、飲食産業、薬品産業等における衛生管理、工程管理、品質管理に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】実施例において使用した、本発明に係る微生物検出器具の基板上に固定化されているオリゴヌクレオチドの配置(A)、および本発明に係る微生物検出器具を用いてBrettanomyces (Dekkera) bruxellensisを検出した結果(B)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜64の核酸配列のいずれかを含んでなるオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
被検試料中の微生物の存在を検出するためのプローブとして用いる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
核酸配列が配列番号1〜64の配列のうちのいずれかを含有し、以下の微生物のグループ(i)〜(vii):
(i)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、
(ii)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
(iii)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物、
(iv)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物、
(v)ハンセニアスポウバウムウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)に属する微生物、および
(vi)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)に属する微生物、および
(vii)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)もしくはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
の中から選択された1つのグループに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る、またはグループ(i)〜(vii)から選択された複数のグループのそれぞれに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイであって、
支持体に固定された、配列番号1〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを備える、
オリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項5】
被検試料中の微生物の存在を検出するためのオリゴヌクレオチドアレイであって、支持体に固定された、以下の(A)〜(G):
(A)配列番号1〜6、8、および10〜14の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(B)配列番号15〜22、および25〜29の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(C)配列番号30〜43の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(D)配列番号44〜52の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(E)配列番号53〜56の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
(F)配列番号57〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、もしくは
(G)配列番号7、9、23、および24の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなる少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、
のいずれか、またはこれらの任意の組み合わせを備える、オリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項6】
少なくとも前記(A)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項7】
前記微生物が、少なくともブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物である、請求項6に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項8】
少なくとも前記(B)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項9】
前記微生物が、少なくともブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物である、請求項8に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項10】
少なくとも前記(C)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項11】
前記微生物が、少なくともサッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物である、請求項10に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項12】
少なくとも前記(D)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項13】
前記微生物が、少なくともピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物である、請求項12に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項14】
少なくとも前記(E)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項15】
前記微生物が、少なくともハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)に属する微生物である、請求項14に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項16】
少なくとも前記(F)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項17】
前記微生物が、少なくともキャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)に属する微生物である、請求項16に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項18】
少なくとも前記(G)のオリゴヌクレオチドを備える、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項19】
前記微生物が、少なくともブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、またはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物のいずれかである、請求項18に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項20】
前記被検試料が食品である、請求項4〜19のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項21】
被検試料中の微生物が、以下の微生物のグループ(i)〜(vii):
(i)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)に属する微生物、
(ii)ブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
(iii)サッカロマイセス・セレヴィシエ((Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・ディアスタティカス(Saccharomyces diastaticus)サッカロマイセス・パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、もしくはサッカロマイセス・バイヤヌス(Saccharomyces bayanus)に属する微生物、
(iv)ピキア・アノマラ(Pichia anomala)に属する微生物、
(v)ハンセニアスポラ・ウバラム(Hanseniaspora uvarum)もしくはハンセニアスポラ・グイリアモンディ(Hanseniaspora guilliermondii)に属する微生物、および
(vi)キャンディダ・バリダ(Candida valida)もしくはピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefaciens)に属する微生物、および
(vii)ブレタノマイセス(デッケラ)・ブリュクセレンシス(Brettanomyces (Dekkera) bruxellensis)もしくはブレタノマイセス(デッケラ)・アノマラ(Brettanomyces (Dekkera) anomala)に属する微生物、
の中から選択される1つのグループの微生物であること、または複数のグループのうちのいずれかのグループの微生物であることを検出・同定するための器具であって、
選択された1つのグループに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る少なくとも1つのオリゴヌクレオチド、または選択された複数のグループのそれぞれに属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得る少なくとも2つのオリゴヌクレオチドを固定した支持体を備える、器具。
【請求項22】
前記グループ(i)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号1〜6、8、および10〜14の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項23】
前記グループ(ii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号15〜22、および25〜29の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項24】
前記グループ(iii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号30〜43の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項25】
前記グループ(iv)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号44〜52の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項26】
前記グループ(v)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号53〜56の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項27】
前記グループ(vi)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号57〜64の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項28】
前記グループ(vii)に属する微生物の核酸の相補鎖に対して特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドが、配列番号7、9、23、および24の核酸配列からなる群から選択されるいずれかの核酸配列を含んでなるオリゴヌクレオチドである、請求項21に記載の器具。
【請求項29】
前記支持体表面にカルボジイミド基またはイソシアネート基を有し、当該カルボジイミド基またはイソシアネート基と前記オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド末端に付加されたリンカーとの反応により共有結合が形成されることにより、前記オリゴヌクレオチドが前記支持体に固定されていることを特徴とする、請求項21〜28のいずれか1項に記載の器具。
【請求項30】
被検試料中の微生物の検出、被検試料中の微生物が属するグループの同定、または被検試料中の微生物の検出と該微生物が属するグループの同定とを行うための方法であって、
被検試料中の微生物の核酸を調製する核酸調製工程と、
当該核酸を鋳型として標識プローブを調製するプローブ調製工程と、
請求項1〜3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、請求項4〜20のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ、または請求項21〜29のいずれか1項に記載の器具を用いて、支持体表面に固定されたオリゴヌクレオチドと前記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行うハイブリダイゼーション工程と、
ハイブリダイゼーションシグナルを検出するシグナル検出工程と、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項31】
前記被検試料が食品であることを特徴とする、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
請求項30または31に記載の方法を実施するための微生物検出キットであって、
請求項1〜3のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、請求項4〜20のいずれか1項に記載のアレイ、または請求項21〜29のいずれか1項に記載の器具を含む、
キット。
【請求項33】
さらに、前記ハイブリダイゼーション工程およびシグナル検出工程で用いる試薬を含む、
請求項32に記載のキット。
【請求項34】
さらに、前記プローブ調製工程および/または前記核酸調製工程で用いる試薬を含む、請求項32または33に記載のキット。

【図1】
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【公表番号】特表2009−504134(P2009−504134A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505681(P2008−505681)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/JP2006/316440
【国際公開番号】WO2007/021027
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】