説明

微生物検出装置用の試薬カートリッジ

【課題】本発明の課題は、微生物の検出を、より短時間に行うことができる微生物検出装置用の試薬カートリッジを提供することにある。
【解決手段】本発明の微生物検出装置用の試薬カートリッジ2は、複数の試薬容器21同士が一体に接続されて並列していることを特徴とする。この試薬カートリッジ2によれば、微生物の検出操作に必要な複数の試薬を、複数の試薬容器21に分けて入れることができ、ユーザーは、これを一纏めで装置内の所定の位置に配置することができるので、微生物の検出時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物検出装置用の試薬カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サンプル中の微生物の検出を行う微生物検出装置としては、アデノシン三リン酸(以下、ATPという)を用いたATP法を使用して微生物の計数を行うものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この微生物検出装置は、サンプル中の微生物から抽出したATPを含むATP抽出液を、反応容器内のATP発光試薬と反応させた際の発光強度に応じて微生物を計数するように構成されている。
このような微生物検出装置によれば、例えば平板培地で培養した微生物のコロニー数によって捕集した微生物を計数する計数方法ではその結果を得るまでに数日間を要するところ、数時間以内に検査時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような微生物検出装置(例えば、特許文献1参照)としては、ATP抽出液をATP発光試薬の入った反応容器に分注する分注機構を備えた構成に加えて、サンプル中の微生物からATPを抽出する工程を実行する機構を更に有するものが考えられる。
この微生物検出装置によれば、微生物を含むサンプルをこの装置に供することによって微生物の検出が自動的に実行されるので、微生物の検出結果を得るまでの時間を更に短縮できることが予想される。
【0005】
その一方で、サンプル中の微生物からATPを抽出するためには、少なくとも、サンプルに含まれる微生物の細胞外に存在するATPを消去する工程と、微生物に内在するATPを抽出する工程とが更に必要となる。つまり、微生物検出装置内には、少なくともATP消去試薬と、ATP抽出試薬と、ATP発光試薬とが配置されることとなる。
そして、微生物検出装置が前記したように自動化されるためには、これらの試薬を予め定められた順番で分注していく分注機構が必要なことは勿論のこと、分注機構がその順番で各試薬を分注するように、試薬の位置(座標)が分注機構の制御部に記憶されている必要がある。
【0006】
そこで、これらの試薬を位置決めする構成として、例えば、装置内の所定の位置に設けたラックに、複数のエッペンドルフ(登録商標)テストチューブ等の試薬容器を配列して立て掛ける構成が考えられる。
しかしながら、複数の試薬容器のそれぞれを個別にラックに立て掛ける構成は、試薬容器の配置や取り外し等に煩雑を極めて、結果的に微生物の検出までの時間が余計に掛かってしまう。
【0007】
そこで、本発明の課題は、微生物の検出を、より短時間に行うことができる微生物検出装置用の試薬カートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決した本発明の微生物検出装置用の試薬カートリッジは、複数の試薬容器同士が一体に接続されて並列していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、微生物の検出を、より短時間に行うことができる微生物検出装置用の試薬カートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る試薬カートリッジが搭載される微生物検出装置の構成説明図である。
【図2】図1の微生物検出装置における試薬カートリッジの搭載部付近の様子を示す斜視図である。
【図3】図1の微生物検出装置に搭載された微生物捕集具の様子を示す断面図である。
【図4】制御部の指令に基づいて微生物検出装置が動作する工程を示すフローチャートである。
【図5】(a−1)から(a−4)は、微生物検出装置で微生物を検出する際の微生物捕集具内の様子を模式的に示す断面図、(b−1)から(b−4)は、(a−1)から(a−4)に対応する場面でのフィルター近傍の様子を拡大して示す模式図である。
【図6】(a)は、本実施形態に係る試薬カートリッジの斜視図、(b)は、(a)のVIb−VIb断面図である。
【図7】(a)は、試薬カートリッジの第1変形例を示す斜視図、(b)は、試薬カートリッジの第2変形例を示す斜視図、(c)は、試薬カートリッジの第3変形例を示す斜視図である。
【図8】(a)は、試薬カートリッジの第4変形例、及びこの第4変形例に係る試薬カートリッジが微生物検出装置に搭載される様子を示す斜視図、(b)及び(c)は、(a)の試薬カートリッジが微生物検出装置に搭載される際に、試薬カートリッジが微生物検出装置に係止される様子を示す概念図であり、(a)のVIII−VIII断面に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態に係る試薬カートリッジについて適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下では、微生物検出装置としての、サンプル中の微生物を計数する装置(以下、微生物計数装置という)に取り付ける試薬カートリッジを例にとって、微生物計数装置の全体構成、及びその微生物計数装置における微生物の計数原理について説明し、その後に本実施形態に係る試薬カートリッジについて説明する。
【0012】
(微生物計数装置の全体構成)
図1に示すように、微生物計数装置10は、サンプルに含まれる微生物をATP法に準拠して計数する装置であって、筐体101内に、ATP法の実施に必要な複数の試薬Rが入った試薬カートリッジ2を搭載する試薬搭載部110と、サンプルを内部に有する微生物捕集具1(図2参照)を搭載するサンプル搭載部102と、温水供給部103と、吸引ユニット104と、液体タンク105と、分注ユニット106と、発光強度測定ユニット107と、制御部108とを備えて構成されている。
なお、図1中、筐体101及び試薬カートリッジ2は、作図の便宜上、仮想線で示し、微生物捕集具1は、記載を省略している。
【0013】
試薬搭載部110は、図2に示すように、装置本体10aの所定の位置に試薬カートリッジ2を位置決めするように配置された係止部110aで構成されている。本実施形態での係止部110aは、装置本体10aに立設された4つのリブからなり、この4つのリブは、後記する試薬カートリッジ2の下部側面に4方向から当接することで、試薬カートリッジ2を装置本体10a上で着脱可能に係止することとなる。
【0014】
サンプル搭載部102は、図2に示すように、微生物捕集具1の後記するハウジング6を収容する凹部102aを有しており、この凹部102aの開口周りには、係合リング102bが更に配置されている。
【0015】
係合リング102bは、微生物捕集具1のハウジング6に設けられた係合爪62aと係合することで、ハウジング6をサンプル搭載部102に支持するようになっている。ちなみに、係合リング102bは、ハウジング6の係合爪62aが収まるような平面形状の切欠き102dを有すると共に、凹部102aが形成される装置本体10aとの間に係合爪62aを受け入れ可能な厚さで隙間Gを形成している。
つまり、ハウジング6を凹部102a内に装嵌する際に、係合爪62aを、切欠き102dを介して凹部102a内に入れ、ハウジング6を回転させて係合爪62aを隙間Gに滑り込ませることで、ハウジング6は係合リング102bと係合することとなる。
【0016】
このようなサンプル搭載部102に搭載される微生物捕集具1は、図2に示すように、略逆円錐形のロト形状を呈するハウジング6と、このハウジング6の上側開口を塞ぐように載置される捕集ディッシュ4とを備えている。
【0017】
この捕集ディッシュ4は、円盤形状を呈しており、その中央部には、この捕集ディッシュ4を上下に貫通する貫通孔41が形成されている。
そして、図3に示すように、サンプル搭載部102に搭載された微生物捕集具1は、貫通孔41が上方を向いて開口すると共に、ハウジング6の内部空間66と外部とを連通させている。
【0018】
また、捕集ディッシュ4の裏側には、担体5が配置されている。この担体5は、担体5が上向きとなるように捕集ディッシュ4がエアーサンプラー(図示省略)に配置された際に、エアーサンプラーによって吸引される空気の流れを受けて、この空気に同伴した微生物を捕集するものである。
【0019】
ちなみに、本実施形態での担体5は、常温から昇温することでゲルからゾルに相変位する材料で形成されている。この担体5の材料としては、30℃以上でゾルに相変位するものが望ましく、37〜40℃で液化するものが更に望ましい。中でも、ゼラチン、ゼラチンとグリセロールの混合物、及びN−アクリロイルグリシンアミドとN−メタクリロイル−N´−ビオチニルプロピレンジアミンとの10:1のコポリマーが望ましい。
【0020】
そして、ハウジング6の最下部には、図3に示すように、内部空間66の内容物を排出する排出開口64aが形成されており、この排出開口64aの出口には、フィルター7が配置されている。このフィルター7は、メンブレンフィルターであって二重構造になっており、上側に配置された親水性フィルター7aと、下側に配置された疎水性フィルター7bとが重ね合わせられている。
【0021】
なお、図3中、符号102aは、サンプル搭載部102を構成する前記した凹部であり、符号102bは、ハウジング6の係合爪62aと係合する係合リングであり、符号104aは、後記する吸引ユニット104を構成する吸引ヘッドである。
【0022】
また、図3中、符号102cは、ヒーターであって、凹部102aの周囲に配置された良熱伝導性部材(例えばアルミ材等)に埋設されている。このヒーター102cは、微生物捕集具1がサンプル搭載部102に搭載された際に、ゲル状の担体5を昇温させて、そのゾル化を促がすものである。
【0023】
図1に示す温水供給部103は、液体タンク105から供給された滅菌蒸留水を温めて供給するものである。更に詳しく説明すると、捕集ディッシュ4の貫通孔41(図3参照)を介して温水をハウジング6の内部空間66(図3参照)に注入するものである。この温水供給部103は、図示を省略するが、例えばペリスタポンプに接続された配管チューブをチューブヒーターやカートリッジヒーター等により加温することで、送液されながら所定温度に温められた温水を、フレキシブルチューブ等で形成されたノズルを介して吐出するものが挙げられる。ちなみに、このノズルは、微生物捕集具1をサンプル搭載部102に搭載する際に、予め捕集ディッシュ4の貫通孔41(図3参照)を介してハウジング6の内部空間66(図3参照)内に挿入される。
【0024】
図1に示す吸引ユニット104は、ハウジング6の内部空間66(図3参照)内に注入した温水や、後記する試薬R等を吸引することで、これらを、フィルター7(図3参照)を介して排出するものである。この吸引ユニット104は、例えば、前記した吸引ヘッド104a(図3参照)と、この吸引ヘッド104aに所定の配管を介して接続される図示しない吸引ポンプ及び廃液タンク等で構成することができる。
【0025】
ちなみに、本実施形態での吸引ユニット104は、サンプル搭載部102に支持されたハウジング6(図3参照)に対して、吸引ヘッド104a(図3参照)の連結及び離反が可能なように、吸引ヘッド104aを上下移動させる昇降装置(図示省略)を更に備えている。
【0026】
図1に示す液体タンク105は、滅菌蒸留水、バッファー液(例えば、リン酸水溶液)等の液体を貯留するものである。本実施形態での液体タンク105は、前記したように、滅菌蒸留水を貯留することを想定している。この滅菌蒸留水は、例えば、後記する被検出物捕集具1の担体5(図3参照)のろ過速度の向上や、洗浄のためにハウジング6(図3参照)内に加えられ、更には後記する図1に示す分注ユニット106のシリンジポンプ106cの配管系に満たされる。
【0027】
図1に示す分注ユニット106は、前記した試薬Rを、微生物捕集具1のハウジング6内に分注するものである。また、分注ユニット106は、試薬Rやハウジング6(図3参照)内の後記するATP抽出液を、発光強度測定ユニット107の発光用チューブ107a内に分注するものである。
【0028】
この分注ユニット106は、細管で形成された分注ノズル106aと、分注ノズル106aを3軸方向に移動させるアクチュエーター106bと、分注ノズル106aに所定のフレキシブル配管で接続されたシリンジポンプ106cと、このシリンジポンプ106cを介して分注ノズル106aに滅菌蒸留水を液体タンク105から供給するための図示しない配管等で構成することができる。
【0029】
図1に示す発光強度測定ユニット107としては、ハウジング6(図3参照)内から分注された後記するATP抽出液を受け入れて、ATPを発光させる発光用チューブ107aと、このATPの発光強度を検出する光電子増倍管等を有する光検出部本体107bとを備えるものが挙げられる。
【0030】
図1に示す制御部108は、微生物計数装置10を全体的に統括して制御すると共に、微生物捕集具1(図3参照)をサンプル搭載部102に搭載した後、温水供給部103、吸引ユニット104、分注ユニット106、及び発光強度測定ユニット107を次に説明する手順で制御するように構成されている。このような制御部108は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路等を含んで構成されている。
【0031】
(微生物計数装置の動作及び微生物の計数原理)
次に、制御部108が実行する手順を説明しながら、この微生物計数装置10の動作及び微生物の計数原理について説明する。次に参照する図4は、制御部の指令に基づいて微生物計数装置が動作する工程を示すフローチャートである。
【0032】
図1に示す微生物計数装置10では、微生物捕集具1(図3参照)をサンプル搭載部102に搭載した後に図示しない起動スイッチをオンにすることで、制御部108が次の手順を実行する。
【0033】
制御部108は、図4に示すように、ヒーター102c(図3参照)に通電するように所定のインバータ等に指令を出力してヒーター102cを発熱させる。つまり、制御部108は、ヒーター102cで被検出物捕集具1の担体5(図3参照)を昇温させる(ステップS201)。その結果、担体5は、ゾル化することで捕集ディッシュ4(図3参照)からハウジング6(図3参照)内の底部に剥落する。
【0034】
次に、制御部108は、温水供給部103(図1参照)に指令を出力して、温水をハウジング6(図3参照)内に注入させる(ステップS202)。その結果、担体5(図3参照)のゾル化が促進されると共に、温水で担体5は希釈される。
【0035】
次に、制御部108は、吸引ユニット104(図1参照)に指令を出力して、吸引ヘッド104a(図3参照)をハウジング6(図3参照)に接続させると共に吸引させて、ハウジング6(図3参照)の内容物をろ過させる(ステップS203)。その結果、担体5に捕集された微生物は、フィルター7(図3参照)で分離して保持されると共に、希釈された担体5は、ろ過されてハウジング6外に排出される。
【0036】
次に、制御部108は、再び温水供給部103に指令を出力して、温水をハウジング6(図3参照)内に分注させる(ステップS204)。その後、再びこの温水をろ過する(ステップS205)。これによりハウジング6内が洗浄され、フィルター7での微生物の回収率が向上する。
【0037】
次に、制御部108は、分注ユニット106(図1参照)に指令を出力して、試薬カートリッジ2のATP消去試薬(図1の試薬R)をハウジング6(図3参照)内に分注させる(ステップS206)。その結果、フィルター7上の微生物の細胞外に存在するATPが消去される。
【0038】
次に、制御部108は、吸引ユニット104(図1参照)に指令を出力して吸引させて、ハウジング6(図3参照)の内容物をろ過させる(ステップS207)。その結果、微生物は、フィルター7(図3参照)で分離して保持されると共に、ATP消去試薬及び温水は、ろ過されてハウジング6外に排出される。
【0039】
分注ユニット106(図1参照)に指令を出力して、試薬カートリッジ2のATP発光試薬を発光用チューブ107a(図1参照)に分注させる(ステップS208)。
【0040】
次に、制御部108は、発光強度測定ユニット107(図1参照)に指令を出力して光検出部本体107b(図1参照)をオンにする(ステップS209)。
【0041】
次に、制御部108は、分注ユニット106(図1参照)に指令を出力して、試薬カートリッジ2のATP抽出液をハウジング6(図3参照)内に分注させる(ステップS210)。その結果、フィルター7に保持された微生物からATPが抽出されフィルター7上にサンプル液が調製される。
【0042】
ステップS208,S209の結果、発光強度測定ユニット107の光検出部は、発光用チューブ107aにおけるATP発光試薬のバックグラウンドの測定を行う。
【0043】
次に、制御部108は、分注ユニット106(図1参照)に指令を出力して、ハウジング6内のATP抽出液を、バックグラウンド測定を行った発光用チューブ107aに分注させる(ステップS211)。その結果、発光用チューブ107a内では、ATP抽出液と、ステップS208において、先に分注されたATP発光試薬との反応によって発光する。
【0044】
次に、制御部108は、発光強度測定ユニット107(図1参照)の光検出部本体107b(図1参照)がATPの発光を検出して出力した信号をデジタル処理し、単一光子計数法に基づいて発光強度を測定する(ステップS212)。そして、制御部108は、予め記憶しているATP量(amol)と、発光強度(CPS)との関係を示す検量線に基づいて、発光用チューブ107aに分注したATP抽出液に含まれるATP量(amol)を演算すると共に、このATP量(amol)、並びにステップS210で調製したサンプル液中のATP抽出液量に基づいて、担体5に含まれる微生物等量のATP換算値として微生物の計数を行う(ステップS213)。
【0045】
以上のように微生物計数装置10が動作する際の微生物捕集具内の状態について説明する。
次に参照する図5(a−1)から(a−4)は、微生物計数装置10で微生物を検出する際の微生物捕集具内の様子を模式的に示す断面図、(b−1)から(b−4)は、(a−1)から(a−4)に対応する場面でのフィルター近傍の様子を拡大して示す模式図である。
なお、図5(b−1)から(b−4)中、符号Bで示される微生物は、実際には、マイクロメーターレベルの大きさであり、ATPは、実際には分子レベルの大きさであって、図5(b−1)から(b−4)は、これらの相対的な大きさを示すものではない。
【0046】
前記したステップS201(図4参照)で担体5が昇温されると、図5(a−1)に示すように、捕集ディッシュ4に保持された担体5は、ゾル化してハウジング6のロト部64に剥落する。この際、図5(b−1)に示すように、担体5に捕集された微生物Bは、フィルター7上で担体5と共に滞留する。
【0047】
次に、前記したステップS202(図4参照)でハウジング6内に温水HWが注入されると、担体5のゾル化がさらに促進されると共に、温水で希釈される。この際、フィルター7は、図5(a−2)に示すように、その下側が疎水性フィルター7bで構成されているので、担体5を希釈して含む温水HWは、ハウジング6内に滞留する。そして、微生物Bは、フィルター7上で担体5を希釈して含む温水HWと共に滞留する。なお、図5(a−2)中、符号4は、捕集ディッシュであり、符号64はロト部である(以下の図中、この符号について同じ)。
【0048】
次に、前記したステップS203(図4参照)で、ハウジング6内の内容物がろ過されると、ハウジング6内の担体5を希釈して含む温水HW(図5(a−2)参照)は、図5(a−3)に示すように、排出される。この際、担体5を希釈して含む温水HW中の微生物Bは、図5(b−3)に示すように、フィルター7で分離されて、保持される。
【0049】
ちなみに、本実施形態でのフィルター7は、図5(b−3)に示すように、親水性フィルター7aと疎水性フィルター7bの二重構造になっているために、従来のATP法で使用される親水性フィルターのみのフィルターで形成されたものと異なって、疎水性フィルター7bの作用により、吸引または加圧ろ過をしない限り、上部に液体を保持することができるので、ATP抽出などの試薬反応処理をフィルター7上で行うことができる。
【0050】
そして、前記したステップS206(図4参照)で、ハウジング6内にATP消去試薬(図1の試薬R)を分注した後に、前記したステップS210(図4参照)で、ハウジング6内にATP抽出試薬(図1の試薬R)が分注される。
【0051】
そして、前記したステップS210(図4参照)で、ATP抽出試薬が注入されたハウジング6内には、図5(a−4)に示すように、ATP抽出液EXが滞留することとなる。この際、図5(b−4)に示すように、ATP抽出液EXには、微生物Bの数に対応した量で、ATPが存在することとなる。
【0052】
そして、前記したステップS211(図4参照)で、図5(b−4)に示すATP抽出液EXが発光用チューブ107a(図1参照)に分注されて、その際の発光強度に応じて微生物が計数される。
【0053】
(試薬カートリッジ)
次に、本実施形態に係る試薬カートリッジ2について図6(a)及び(b)を参照しながら更に詳しく説明する。図6(a)は、本実施形態に係る試薬カートリッジの斜視図、図6(b)は、図6(a)のVIb−VIb断面図である。
【0054】
図6(a)及び(b)に示すように、試薬カートリッジ2は、有底の管状体で構成された試薬容器21を複数備えている。この試薬容器21は、上部に開口部21aを有し、底部は徐々に縮径していく略逆円錐形状を呈している。
ちなみに、本実施形態での試薬カートリッジ2は、等間隔に縦2列及び横5列に合計10個の試薬容器21が並ぶように配置されている。
【0055】
これらの複数の試薬容器21同士は、平面視での輪郭が矩形の支持板22によって、試薬容器21の周壁を介して相互に接続されて一体となっている。特に、本実施形態では、支持板22が試薬容器21の開口部21aの近傍の周壁を介して試薬容器21同士を一体に接続している。
【0056】
そして、試薬カートリッジ2は、支持板22の4辺にそれぞれ接続される4つの矩形の側板23によって前記した10個の試薬容器21群が囲まれて、その外形が略直方体に形成されている。
この試薬カートリッジ2は、成形可能な樹脂で形成することができ、中でもPP(ポリプロピレン)が望ましい。
【0057】
このような試薬カートリッジ2は、ATP法に必要な複数の試薬R、具体的には、前記したATP消去試薬、ATP抽出試薬及びATP発光試薬が各試薬容器21に入れられる。
【0058】
ちなみに、ATP消去試薬としては、例えば、ATP分解酵素が挙げられる。
ATP抽出試薬としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、トリクロロ酢酸、トリス緩衝液等が挙げられる。
ATP発光試薬としては、例えば、ルシフェラーゼ・ルシフェリン試薬が挙げられる。
【0059】
また、この試薬Rには、前記したATP量(amol)と発光強度(CPS)との関係を示す検量線を作成するために段階的に既知の濃度に希釈した複数のATP試薬、発光強度測定ユニット107(図1参照)の補正試薬(ATP標準試薬)、保存しておいたATP発光試薬等を使用した際の補正試薬(ATP標準試薬)、滅菌純水等をも含めることができる。
【0060】
そして、これらの試薬Rが各試薬容器21に入れられることによって、各試薬Rが一纏めになって、サンプル搭載部102に搭載された微生物捕集具1の近傍で、望ましくは微生物捕集具1及び発光用チューブ107a(図1参照)の近傍で、試薬搭載部110に位置決めされて配置されることとなる。
【0061】
つまり、この試薬カートリッジ2は、前記した分注ユニット106の分注ノズル106aが、予め定められた順番で各試薬Rを微生物捕集具1のハウジング6内、及び発光強度測定ユニット107の発光用チューブ107a内に、最短距離の移動で分注できるように、各試薬Rを位置決めしている。
ちなみに、各試薬Rの位置(座標)は、分注ユニット106を制御する前記した制御部108に記憶されている。
【0062】
次に、本実施形態に係る試薬カートリッジ2の作用効果について説明する。
以上の試薬カートリッジ2によれば、複数の試薬容器21同士が一体に接続されているので、ATP法に必要な複数の試薬Rを各試薬容器21内に入れることで、これらの試薬Rを一纏めに集合させることができる。
【0063】
つまり、ユーザーは、試薬カートリッジ2を前記した試薬搭載部110に単に配置するという簡単な1工程の操作で、分注ユニット106を制御する制御部108が参照することとなる、予め定められた試薬Rの位置(座標)に複数の試薬Rのそれぞれを配置することができる。
【0064】
したがって、この試薬カートリッジ2によれば、例えば微生物計数装置10内の所定の位置に設けたラックに、複数の試薬容器のそれぞれを個別に配列して立て掛ける構成と異なって、微生物計数装置10からの試薬容器21の配置や取り外しを簡単に行うことができるので、結果的に微生物の検出までの時間を短縮することができる。
【0065】
また、この試薬カートリッジ2によれば、例えば微生物計数装置10内の所定の位置に設けたラックに、複数の試薬容器のそれぞれを個別に配列して立て掛ける構成と異なって、試薬容器の全てにユーザーの手指が触れることはない。
特に、ユーザーが試薬カートリッジ2の側板23を把持することで、ユーザーの手指が試薬容器21に触れることを完全に避けることができる。
【0066】
したがって、この試薬カートリッジ2によれば、試薬容器21や試薬Rが微生物の検出の外乱要因となる物質で汚染されることを、より確実に防止することができ、その結果として、サンプルに含まれる微生物を、より正確に検出することができる。
【0067】
また、この試薬カートリッジ2は、支持板22及び側板23によって、等間隔に配置された複数の試薬容器21が自立し、そして、支持板22及び側板23は、これらの試薬容器21を囲むように配置されているので、例えば、複数の試薬容器21同士の間が中実に形成されたものと比較して、より軽量にかつ低コストに製造することができる。
【0068】
また、この試薬カートリッジ2は、支持板22及び側板23によって、等間隔に配置された複数の試薬容器21が自立し、そして、支持板22及び側板23は、これらの試薬容器21を囲むように配置されているので、各試薬容器21の大気に対する接触面積を大きく確保することができる。
したがって、この試薬カートリッジ2によれば、冷蔵した試薬Rを注入した際に、より早くこれを室温に戻すことができる。
【0069】
また、この試薬カートリッジ2は、支持板22及び側板23によって、等間隔に配置された複数の試薬容器21が自立し、そして、支持板22及び側板23は、これらの試薬容器21を囲むように配置されているので、これを成形する際の型抜きを容易に行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
次に参照する図7(a)は、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2の第1変形例を示す斜視図、図7(b)は、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2の第2変形例を示す斜視図、図7(c)は、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2の第3変形例を示す斜視図である。
【0071】
図7(a)に示すように、第1変形例に係る試薬カートリッジ2aは、一体となった複数の試薬容器21とは、別に独立した試薬容器25を着脱自在に係合させる係合片26を備えている。この係合片26は、特許請求の範囲にいう「係合部」に相当する。
また、この試薬カートリッジ2aは、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2において、その一角に位置する試薬容器21を省略し、その省略した試薬容器21に代えて独立した試薬容器25が着脱自在に配置されるように、係合片26を設けたものである。
この試薬カートリッジ2aは、試薬容器21を省略した角部を形成する側板23(図6参照)から延出した係合片26が、その弾性力によって独立した試薬容器25の周壁を把持するように構成されている。
【0072】
このような第1変形例に係る試薬カートリッジ2aによれば、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2と同様の効果を奏すると共に、試薬容器21に注入する試薬Rとは、異なる環境で(例えば、更に厳しい清浄度の管理基準で)調製しなければならない試薬Rsを、試薬カートリッジ2aに別途に含めることができる。
【0073】
なお、この第1変形例に係る試薬カートリッジ2aでは、一角に位置する試薬容器21を省略したその代わりに独立した試薬容器25を配置するように構成されているが、試薬容器21を省略しない前記実施形態に係る試薬カートリッジ2の側板23に係合片26を設けて、独立した試薬容器25を配置する構成であってもよい。
【0074】
図7(b)に示すように、第2変形例に係る試薬カートリッジ2bは、試薬容器21に所定の試薬Rが注入されており、全ての試薬容器21の開口部21aは、一枚のシート部材27で塞がれている。このシート部材27は、特許請求の範囲にいう「開封可能な封止部材」に相当する。
このシート部材27は、熱可塑性樹脂フィルムとアルミニウム箔とのラミネートフィルムであって、各試薬容器21の開口部12aの開口縁に熱可塑性樹脂フィルム側が熱融着されている。
ちなみに、このシート部材27は、ユーザーが手指で試薬容器21側から剥離可能となっている。
また、このシート部材27は、前記した分注ユニット106の分注ノズル106a(図1参照)によって、穿孔可能となっている。
【0075】
このような第2変形例に係る試薬カートリッジ2bによれば、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2と同様の効果を奏すると共に、試薬容器21内の試薬Rを通常通りに分取可能としつつ、試薬Rが汚染されることを確実に防止することができる。
したがって、この第2変形例に係る試薬カートリッジ2bによれば、より一層正確に、微生物を検出することができる。
【0076】
なお、第2変形例に係る試薬カートリッジ2bでは、一枚のシート部材27で全ての試薬容器21の開口部21aを塞いでいるが、本発明は、数本の試薬容器21の開口部21aごとに、又は各開口部21aごとにこれを塞ぐ、複数のシート部材27を有するものであってもよい。
また、第2変形例に係る試薬カートリッジ2bでの封止部材は、シート部材27に限定されず、開封可能な栓部材であってもよい。
【0077】
図7(c)に示すように、第3変形例に係る試薬カートリッジ2cは、複数の試薬容器21同士が、一枚のシート部材27のみで一体に接続されて並列している。
このような第3変形例に係る試薬カートリッジ2cによれば、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2と同様の効果を奏すると共に、一枚のシート部材27のみで一体に接続されているので、更に軽量にかつ低コストに製造することができる。
【0078】
なお、第3変形例に係る試薬カートリッジ2cでは、図示しないが、シート部材27にミシン目等の切取り線を付与して、数本の試薬容器21ごとに分割可能とすることができる。
【0079】
前記実施形態では、試薬搭載部110として、試薬カートリッジ2に当接するリブで形成される係止部110aを例示したが、試薬カートリッジ2は、装置本体10aの係止部110aに係脱自在に係止される被係止部を備えることができる。
【0080】
次に、図8を参照しながら、装置本体10aに設けた凹部に嵌合する突起を備える試薬カートリッジ2d(第4変形例)について具体的に説明する。次に参照する図8(a)は、試薬カートリッジの第4変形例、及びこの第4変形例に係る試薬カートリッジが微生物検出装置に搭載される様子を示す斜視図、(b)及び(c)は、(a)の試薬カートリッジが微生物検出装置に搭載される際に、試薬カートリッジが微生物検出装置に係止される様子を示す概念図であり、(a)のVIII−VIII断面に相当する図である。なお、この第4変形例において、前記実施形態に係る試薬カートリッジ2と同様の構成要素については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0081】
図8(a)に示すように、この第4変形例に係る試薬カートリッジ2dは、4つの側板23のうち、支持板22の短辺側に接続される、一対の対向する側板23のそれぞれに突起28を備えている。この突起28は、前記した「被係止部」に相当する。突起28は、各側板23の下縁に形成され、側板23から外側に向けて突出している。この突起28は、対向する側板23のそれぞれで非対称となっており、一方の側板23に形成された突起28は1つであり、他方の側板23に形成された突起28は、2つである。これらの突起28は、装置本体10aに設けられた係止部110aに係脱自在に係止されるようになっている。
【0082】
ここでの係止部110aは、試薬カートリッジ2dの底部を受け入れる枠体111で形成されている。この枠体111の一対の短辺側には、溝112がそれぞれ形成されており、この溝112内には、受け入れた試薬カートリッジ2dの突起28がスライド移動可能となっている。
枠体111の短辺側には、試薬カートリッジ2dの突起28に対応する位置に溝112に通じる切り欠き113が形成されており、突起28は、この切り欠き113を介して溝112内に受け入れられる。
【0083】
図8(b)及び(c)に示すように、この試薬カートリッジ2dは、その突起28が切り欠き113を介して溝112に嵌め入れられ、スライド移動することで、突起28が枠体111に係止されて固定される。また、試薬カートリッジ2dは、これとは逆の経路を移動することで、枠体111に対する突起28の係止が解かれて枠体111から取り外し可能となる。
【0084】
このような試薬カートリッジ2dによれば、突起28が枠体111を介して装置本体10aに固定されるので、試薬カートリッジ2dを、より確実に装置本体10aに対して位置決めすることができる。
また、このような試薬カートリッジ2dによれば、突起28が対向する側板23のそれぞれで非対称となっているので、ユーザーが試薬カートリッジ2dの配置向きを間違えることを防ぐことができる。その結果、複数の試薬Rが適正に装置本体10aに配置される。
【0085】
また、前記した試薬カートリッジ2dにおいては、一方の側板23と他方の側板23の突起28の数を変えることで非対称を構成したが、突起28の形状を変えることで非対称を構成してもよい。
【0086】
また、本発明は、図7(a)に示す係合片26を有する試薬カートリッジ2a、及び図7(b)に示すシート部材27を有する試薬カートリッジ2bに被係止部(突起28)を設けたものであってもよい。
特に、シート部材27を有する試薬カートリッジ2bは、前記したように、分注ノズル106a(図1参照)がシート部材27を穿孔した後に上昇移動した際に、試薬カートリッジ2bが係止部110aから持ち上がるのを防ぐことができる。
【0087】
また、図8(a)から(c)に示す試薬カートリッジ2dは、支持板22の短辺側に接続される側板23に突起28を備えているが、本発明は支持板22の長辺側に接続される、一対の側板23に突起28を配置したものであってもよい。
ちなみに、この試薬カートリッジ2dの突起28を係止する装置本体10aの枠体111は、その一対の長辺側に溝112がそれぞれ形成され、その長辺側の溝112に沿って試薬カートリッジ2dの突起28がスライド移動することとなる。
【符号の説明】
【0088】
2 試薬カートリッジ
2a 試薬カートリッジ
2b 試薬カートリッジ
2c 試薬カートリッジ
2d 試薬カートリッジ
10 微生物計数装置(微生物検出装置)
10a 装置本体
12a 開口部
21 試薬容器
21a 開口部
22 支持板
23 側板
25 試薬容器
26 係合片
27 シート部材(封止部材)
28 突起(被係止部)
R 試薬
Rs 試薬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器同士が一体に接続されて並列していることを特徴とする微生物検出装置用の試薬カートリッジ。
【請求項2】
請求項1の試薬カートリッジにおいて、
前記試薬容器とは別に、独立した試薬容器を着脱自在に前記複数の試薬容器と並列するように係合する係合部を更に備えることを特徴とする試薬カートリッジ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の試薬カートリッジにおいて、
前記試薬容器に所定の試薬が注入されており、前記試薬容器の開口部は、開封可能な封止部材で塞がれていることを特徴とする試薬カートリッジ。
【請求項4】
請求項3に記載の試薬カートリッジにおいて、
前記封止部材は、全ての前記試薬容器の開口部を覆う一枚のシート部材で形成されていることを特徴とする試薬カートリッジ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の試薬カートリッジにおいて、
前記微生物検出装置によって係脱自在に係止される被係止部を更に備えることを特徴とする試薬カートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載の試薬カートリッジにおいて、
前記複数の試薬容器同士は、一枚の前記シート部材のみで一体に接続されて並列していることを特徴とする微生物検出装置用の試薬カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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