微生物検査方法

【課題】迅速化された微生物検査方法を提供する。
【解決手段】(a)同一の検査対象に対し真菌培養と細菌培養とを行い、各々の培養物を得る段階と、(b)前記各々の培養物を培地ごと混合し、さらにそれらの混合培養物を得る段階と、(c)前記混合培養物中の微生物の検出及び測定を行う段階と、を含むことを特徴とする微生物検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物検査方法、特にその迅速化に関する。
【背景技術】
【0002】
薬事法第62条において化粧品に準用される同法第56条第7項には、「病原微生物その他疾病の原因となるものにより汚染され、又は汚染されているおそれがある医薬品」の販売、製造等を禁ずることが規定されている。また、日本化粧品工業会からも、「目の周辺に使用する化粧品は、細菌数1000cfu/g以下、病原菌を認めないこと」という自主基準が出されている。そのため、各社は製品について微生物出荷検査を行い、これらを遵守している。
【0003】
化粧品の微生物出荷検査としては、微生物限度試験(生菌数試験並びに特定微生物試験)が一般的に行われている。生菌数試験は製品中に存在する増殖能力を有する微生物の定量試験法であり、特定微生物試験は製品中に存在する増殖能力を有する特定微生物の定性試験法である。また、生菌数を測定するのではなく、増菌培養を行うことで、試料中に菌が存在しないことを確認する方法も行われており、この場合は特定微生物試験を並行して行うことも可能である。
【0004】
後者の増菌試験法は、目に見えない微生物を、微生物検査用培地にて増菌培養し、微生物の存在を確認する手順を必要とするが、増菌培養する期間に数日を要するため、結果を得るのに時間がかかる。また、前記微生物検査用培地に関しては、目的とする菌種に応じて培養に用いる培地組成が異なってくるため、通常、同一対象(製品)に対して複数の測定用検体を用意しなければならない。一般的には真菌用培地と細菌用培地の少なくとも2種類の培地が用いられるが、工場規模で様々な製品を製造しているような場合は、応じて測定の件数が膨大な数に上り、生菌数/特定微生物両試験を並行して行うことを考慮しても、培養に費やされる時間及びコストは計り知れない。さらに、これには多量の検査用培地を廃棄し続けなくてはならないといった問題も伴い、増大する検査結果を迅速且つ正確に判定するために、熟練技術者の育成も必要となる。
【0005】
ところで、近年、このような培養を要する微生物検査を迅速化する技術として、ATP法の応用が注目されている。
ATP法は、微生物を含む全ての生物がエネルギーとして有するATPを発光試薬と作用させ、生物発光を生じさせることによって生菌の存在を検出する技術であり、該方法の適用により、生菌の存在を簡便且つ迅速に判定することが可能となることが知られている。
このATP法の微生物検査への応用においては、かつて、検体の菌体以外に含まれるATPも同時に検出されてしまうという問題があったが、菌体以外のATPを特定酵素によって予め消去する技術の開発により解決されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−182600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、微生物検査では、上記のような測定段階における作業の簡素化・迅速化は行われているものの、前述の培養段階における諸問題(膨大な試験数、培地の調製・廃棄などの問題)の解決策は何ら講じられていない。特に、対象ごとに少なくとも真菌培養と細菌培養の2検体についての測定が必要とされる点については、微生物検査全体の効率化に関連する問題として早急な解決が望まれている。
本発明は上記問題に鑑みなされたものであり、迅速化された微生物検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明者らが鋭意検討を行った結果、微生物を測定する前に、真菌を培養した培地と細菌を培養した培地を混合して一つの検体とすることで、同一の検査対象における測定回数を減じることができ、しかも真菌及び細菌を別々に測定した際と同等の測定精度が維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる微生物検査方法は、(a)同一の検査対象に対し真菌培養と細菌培養とを行い、各々の培養物を得る段階と、(b)前記各々の培養物を培地ごと混合し、さらにそれらの混合培養物を得る段階と、(c)前記混合培養物中の微生物の検出及び測定を行う段階と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、前記微生物検査方法は、前記(c)段階において、微生物の検出及び測定を行う方法が、ATP法であることが好適である。
また、前記微生物検査方法は、前記(a)段階において、真菌培養と細菌培養とを行う培地が、それぞれ液体培地であることが好適である。
また、前記微生物検査方法は、真菌培養を行う培地がGPLP培地であり、細菌培養を行う培地がSCDLP培地であることが好適である。
また、前記微生物検査方法は、前記(b)段階において、混合する真菌培養の培養物と、細菌培養の培養物との量比が、1:10〜10:1(真菌培養物:細菌培養物)であることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、微生物検査方法における微生物の検出及び測定を迅速に行うことを可能とする。また、本発明によれば、真菌と細菌の検出及び測定を別々でなく、一度に行うことができることから、微生物検査の時間短縮、並びに使用する試薬のコスト削減などが期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明において「微生物検査」とは、化粧品、医薬品、食品等の製造において行われる検査であって、真菌及び細菌による製品や原料の汚染の有無を調べることを指す。このような微生物検査の手段としては、主に寒天培地を用いて生菌数を求める方法と液体培地を用いて一定試料中に菌が存在しないことを確認する方法があり、本発明は後者において、
(a)同一の検査対象に対し真菌培養と細菌培養とを行い、各々の培養物を得る段階と、
(b)前記各々の培養物を培地ごと混合し、さらにそれらの混合培養物を得る段階と、
(c)前記混合培養物中の微生物の検出及び測定を行う段階、
を適用し、これらを含む方法である。なお、本発明の方法は、上記(a)〜(c)工程を含むものであれば、いずれの微生物検査にも適用することができる。
次に、(a)〜(c)の各段階について説明する。
【0012】
(a)段階
本発明に係る微生物検査方法の(a)段階は、同一の検査対象に対し真菌培養と細菌培養とを行い、各々の培養物を得る段階である。本願において「検査対象」とは、検査によって微生物汚染の有無を調べる対象を指し、化粧品、化粧用具、医薬品、食品等を含むあらゆる分野における製品及び原料を含み得るが、本発明において特に好ましくは化粧品及び化粧用具の製品である。本発明の方法は、本段階で前記検査対象を試料として培地へ適用(接種)し、真菌培養と細菌培養をそれぞれ別々に行っておき、後述する(b)段階でこれらの培養物を混合し、(c)段階で真菌と細菌を一度に検出・測定するものである。したがって、本発明の微生物検査方法に用いる検査対象について特に制限はないものの、一つの検査対象についての真菌及び細菌(すなわち微生物)の汚染を同時に検査するという目的から、ここで行う真菌培養及び細菌培養には、いずれも同じ検査対象を用いることを要する。
【0013】
続いて、真菌培養と細菌培養について説明する。
(a)段階における真菌培養及び細菌培養には、基本的に公知の微生物検査に適用され得る培養方法を適用することができるが、その使用する培地や培養方法・条件等は、試料となる検査対象や、検出及び測定を所望する菌の種類などにより、適宜調整してもよい。
本段階の真菌培養に使用する培地には、例えば、ブドウ糖ペプトン(GP)培地、抗生物質添加ブドウ糖ペプトン(GP)培地、レシチン・ポリソルベート80添加ブドウ糖ペプトン(GPLP)培地、麦芽エキスブロス等が挙げられる。本発明においては、液体培地又は半流動培地の使用が好ましく、さらには、一般真菌の培養能や、(b)段階における培養物混合のし易さの点から、真菌培養の培地として、特にGPLP培地を用いることが好ましい。
【0014】
本段階の細菌培養に使用する培地としては、例えば、ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地(SCD)、レシチン・ポリソルベート80添加ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCDLP)培地、ニュートリエントブロス等が挙げられる。本発明においては、特に液体培地又は半流動培地の使用が好ましく、さらには、一般細菌の培養能や、(b)段階における培養物混合のし易さの点から、細菌培養の培地として、特にSCDLP液体培地を用いることが好ましい。
【0015】
ここで、本願における半流動培地とは、例えば、液体培地に少量の寒天を加えて撹拌し、培地に半流動性を与えたものを指す。前記撹拌には、例えば、適当な粒径のガラスビーズを媒体とした撹拌手段を用いることができる。
なお、上記各培地は、公知の方法に従って調製して得たものであっても、市販品として得たものであってもよく、さらには、実施する検査の内容に応じて、適宜成分を調製したものや、微生物の選択性を付与するために添加物等を配合したものでも問題なく使用することができる。
【0016】
真菌及び細菌の各培養方法としては、一般的な培養方法をはじめ、微生物検査で行われる公知の培養方法を適用することができ、例えば、一般的な無菌試験の手法であるメンブランフィルター法及び直接法が挙げられる。
メンブランフィルター法は、検査対象が液体の場合はそのまま、固体の場合は適当な溶剤、生理食塩液、水等に溶解又は懸濁して試料溶液とし、これを滅菌メンブランフィルターでろ過し、該ろ過後のメンブランフィルターを培地に入れて培養するというものである。
直接法は、試料又は試料溶液の全部又は一部を、注射器等の適当な器具により直接培地へ接種するものであり、培養条件は前記メンブランフィルター法と同様である。
【0017】
培地の量は、検査対象の剤形に応じて適宜調整すればよく、一般に、試料溶液(検査対象)との量比が1:10〜1:10000(試料溶液:培地)となるように設定することができる。
培養温度は、一般に、真菌培養であれば20〜25℃、細菌培養であれば30〜35℃、培養時間は、一般に真菌培養であれば48〜72時間、細菌培養であれば12〜48時間とされるが、本発明においては、微生物の増加を損なわない範囲において適宜設定すればよい。
なお、培養に使用する培地や試料の量についても、微生物の検出及び測定が可能である限り特に限定されない。
(a)段階において、適用する微生物検査に必要な期間、上記培養を行った後、真菌培養と細菌培養のそれぞれの培養物を得る。
【0018】
(b)段階
本発明に係る微生物検査方法の(b)段階は、前記(a)段階において、別々に行われた真菌培養及び細菌培養の各培養物を、その培地ごと混合し、混合培養物を得る段階である。
本段階において、真菌培養及び細菌培養の各培養物を混合して一つにすることにより、(c)段階で行う微生物の検出及び測定を一度に行うことが可能となる。すなわち、従来、一つの検査対象における微生物の検出及び測定は、真菌培養物及び細菌培養物に対しそれぞれ別に行う必要があったところ、本発明の方法によれば、検出及び測定の精度を下げることなく、これらを同時に行うことができるのである。
【0019】
(a)段階で得た真菌培養及び細菌培養の各培養物は、培地ごと一つの容器に入れる。各培養物は必ずしも全てを混合に用いなくてもよく、各培養物から検出及び測定に必要な量のみを取り、混合することができる。混合する真菌培養物と細菌培養物の量比は特に制限されず、好ましくは1:10〜10:1(真菌培養物:細菌培養物)である。すなわち、本発明の方法では、混合培養物において、どちらかの培養物が少量であっても、微生物の検出及び測定の精度に影響はない。
【0020】
(c)段階
本発明に係る微生物検査方法の(c)段階は、(b)段階で得た混合培養物中の微生物の検出及び測定を行う段階である。
本段階において混合培養物中の微生物の検出及び測定を行う方法としては、例えば、アデノシン三リン酸(ATP)法、蛍光染色法、フローサイトメトリー法、インピーダンス法等が挙げられる。これらのうち、混合培養物からの微生物検出精度が高く、また、操作が簡便であり、測定装置及び測定用試薬の性能にも優れている点から、特にATP法を使用することが好ましい。
【0021】
以下、ATP法の手順に沿って、(c)段階について説明する。
ATP法は、ルシフェリン及びルシフェラーゼを含む発光試薬を培養物へ添加することにより、該試薬が培養物中の微生物のもつATPと反応し、発光することを利用して微生物(生菌)の有無及び存在数を検出及び測定する方法である。
ATP法の実施に際しては、微生物に由来しない遊離のATPが検出され、測定結果に影響を与えることを避けるため、予め培養物にATP分解酵素を含むATP消去剤を添加し、培地中の遊離ATPを除去しておく。ATP消去剤としては、例えば、アデノシンリン酸デアミナーゼ、アピラーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、ヘキソキナーゼ、アデノシントリホスファターゼ等を含むものが挙げられ、特にアデノシンリン酸デアミナーゼを有効成分とするものが好ましい。該成分を含むATP消去剤の市販品としては、例えば、ルシフェールシリーズ(キッコーマン社製)が挙げられ、本発明において好適に用いることができる。
ATP消去剤を添加・混合した培養物は、所定の時間室温に静置して遊離ATPの除去を行った後、微生物由来のATPの検出及び測定に影響を与えないよう、必要に応じ、阻害剤を加えるなどして該ATP消去剤を失活させておくことが好ましい。
【0022】
培地中の遊離ATPの除去後、培養物にATP抽出剤を添加し、微生物由来のATPを抽出し、ATPの検出及び測定を進める。ATP抽出剤としては、例えば、界面活性剤、エタノールとアンモニアの混合液、メタノール、エタノール、トリクロロ酢酸、過塩素酸等を含むものが挙げられ、特に界面活性剤を使用したものが好ましい。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、モノラウロイルリン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
微生物由来のATPを抽出後、培養物に発光試薬を添加し、ATPを検出及び測定する。発光試薬には、一般に、ルシフェリン及びルシフェラーゼが使用される。検出及び測定は、発光試薬の添加により発光した培養物の発光量を検出及び測定して行う。抽出された微生物由来のATPが存在すれば発光試薬の添加により発光が生じ、該発光量が多いほど、ATPの産生源である微生物が多く存在することになる。
【0023】
微生物由来ATP(の発光量)の検出及び測定は、市販の装置(ルミノメーター)を用いることにより、より簡便に行うことができる。このような装置としては、例えば、ルミテスターC−110、C−100、K−100、K−200、K−210(キッコーマン社製)、ルミネッセンスリーダーBLR−201(ALOKA社製)、Lumat LB9501(Berthold社製)、Advance Luminometer(Celsis社製)等が知られ、いずれも本段階において用いることができるが、本発明による測定効率改善の面で、とりわけルミテスターC−110の使用が好ましい。
【0024】
前記検出及び測定装置は、該装置にセットされたサンプルについて測定を行うものである。したがって、通常は、前記測定装置による測定に先立ち、適量の培養物を試験管等に取り、ここにATP消去剤を添加してATP除去処理後、ATP抽出剤を添加して微生物由来ATPを抽出し、さらに発光試薬を添加した状態のサンプルを作成する。通常、このサンプル作成は、真菌培養物と細菌培養物のそれぞれについて行われるが、本発明の方法では、前記(b)段階において予め両培養物を混合しているため、該混合培養物についてのみ行えば済む。したがって、培養物に対して使用する各試薬(ATP消去剤、ATP抽出剤、発光試薬等)は、通常、真菌培養物と細菌培養物のそれぞれ2回分を要するところ、1回の測定分、すなわち通常の半量とすることができるのである。
【0025】
前記混合培養物に使用する各試薬の使用量は、真菌培養物と細菌培養物のそれぞれについて測定を行う場合と同様の量、すなわち、各試薬についての公知の使用量範囲であれば、十分に微生物を検出することができる。また、測定に供する混合培養物の量についても、使用する試薬や測定装置の仕様等を考慮した公知のプロトコルに従えばよい。例えば、本発明はこれに制限されないが、上記ATP法において、ATP消去剤としてアデノシンリン酸デアミナーゼを用いる場合、一般に、0.01〜0.1U/mlのアデノシンリン酸デアミナーゼを培養物100重量部に対して50〜100重量部使用することができるが、これは本発明の方法においても適用され得る。
なお、混合培養物における真菌培養物及び細菌培養物の量比は、前述のとおり、(b)段階における培養物混合時に適宜設定すればよい。
【0026】
なお、培養物の分注、試薬の添加、混合、測定部へのセットなどのサンプル調製を自動的に行う装置を使用する場合は、装置設定を本発明の方法に適するように調整するか、又は、自動化が可能な工程以外は手動で行うとよい(例えば、培養物の分注、試薬の添加、混合)。
【0027】
前述の一般的な検出及び測定装置を使用した場合、ATP消去剤を用いると、培地の遊離ATPの発光量は、10〜500RLU程度となるが、微生物が含まれていた場合の培養物の発光量は10,000〜1,000,000RLUとなり、問題なく微生物を検出することが出来る。
微生物の有無を試験する場合(無菌試験)、前記発光量により判定可能である。培養物中の微生物を特定する場合は、(a)段階で特定微生物用の培地を使用しておくか、又は検出された微生物についてさらに同定試験を行う。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明するが、これら実施例は本発明を限定するものではない。
真菌培地であるGPLP培地と、細菌培地であるSCDLP培地に関し、両培地を混合した際の培地中の遊離ATP除去可能性について次の試験を行った。
<試験方法>
下記表1に示す量の液体のGPLP培地とSCDLP培地を調製した。GPLP培地とSCDLP培地の両方を含む試料は、それぞれの培地を記載量ずつウェルに入れて混合して得た。同じ構成の試料を2つずつ準備し、片方にATP消去剤50μLと希釈液350μLを、もう片方には希釈液350μLのみを添加した。30分静置した後、それぞれを100μL移し変え、そこにATP抽出剤及び発光試薬を加え、ルミノメーター(ルミテスターC−110、キッコーマン社製)を用いて発光量を測定した。結果を表1に示す(発光量以外の単位は全てμL)。
なお、上記試験で使用した全ての試薬(ATP消去剤、ATP抽出剤、発光試薬、希釈液)は、キッコーマン株式会社製の微生物測定用試薬キット「ルシフェールAT100」を構成する試薬であり、使用手順も該キットの指示に則り行った。
【0029】
【表1】

*1)GPLP培地とSCDLP培地を1mLずつウェルに入れて混合した混合液を50μL取り、サンプルとした。
【0030】
表1に示すとおり、真菌培養用の培地であるGPLP培地と、細菌培養用の培地であるSCDLP培地を混合した場合(試験例1−5〜1−10)についても、GPLP培地又はSCDLP培地を単独で用いた場合(試験例1−1〜1−4)と同様に、ATP消去剤を添加した例において発光量が微生物の検出及び測定に影響のない値まで低下した。したがって、真菌培養用の培地で培養した培養物と、細菌培養の培地で培養した培養物とを混合した混合培養物に対しても、従来のATP用いることによって、培地中の遊離ATPを除去できると考えられる。また、ATP消去剤は、混合培地の場合であっても、従来どおり単体の培地による培養物を測定する場合と同じ使用量で効果が得られた。
以上のことから、本発明において、真菌培地と細菌培地を混合し、ATP法により微生物の検出及び測定を行うことができる。
【0031】
続いて、緑膿菌及びサルモネラ菌を含む化粧品を検査対象とした細菌培養物について、微生物の検出及び測定可能性を下記の方法により検討した。
<試験方法>
下記表2に示す各化粧品(いずれも市販品)1gを、試験用緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、菌数17cfuを接種したSCDLP液体培地(日水製薬社製)100mLに入れ、30℃で24時間培養した。その後、それぞれの細菌培養物について、
(A)細菌培養物と無菌GPLP培地(日水製薬)を等量混合し、得られた混合溶液の50μLを試料とした場合
(B)細菌培養物50μLを試料とした場合
(C)細菌培養物と無菌GPLP培地(日水製薬)を等量混合し、得られた混合溶液の100μLを試料とした場合、
をそれぞれ調製した。
得られた上記各試料に、それぞれATP消去剤50μL((C)の場合は100μL)と希釈液350μL((C)の場合は700μL)を加えて30分間処理し、それぞれを50μL((C)の場合は100μL)移し変え、その後ATP抽出剤50μL((C)の場合は100μL)を加え、さらに発光試薬を50μL((C)の場合は100μL)添加して、ルミノメーター(ルミテスターC−110、キッコーマン社製)を用いて発光量(RLU)を測定した。結果を表2に示す。
また、培養時間を48時間とした以外は、上記と同様に試験を行った結果を表3に示す。
また、緑膿菌に代えて試験用サルモネラ菌(Salmonella enterica subsp.enterica、菌数22cfu)を用いた以外は、上記と同様に試験を行った結果を表4に示す。
また、緑膿菌に代えて試験用サルモネラ菌(Salmonella enterica subsp.enterica、菌数22cfu)を用い、培養時間を48時間とした以外は、上記と同様に試験を行った結果を表5に示す。
なお、上記試験で使用した全ての試薬(ATP消去剤、ATP抽出剤、発光試薬、希釈液)は、キッコーマン株式会社製の微生物測定用試薬キット「ルシフェールAT100」を構成する試薬であり、使用手順も該キットの指示に則った。
また、各表において、「999999」という数値は、発光量が測定上限を超えたことを表す。
【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
【表4】

【0035】
【表5】

【0036】
上記表2〜5に示すとおり、緑膿菌及びサルモネラ菌のいずれも、24時間で検出可能な発光量となるまで培養された。また、(A)〜(C)のいずれの試料構成のものも、同様に細菌の培養が可能であった。特に、(A)及び(B)の比較から、実際に検査対象に細菌が存在していた場合、該細菌の培養物と真菌培養物とを混合して、同時に測定を行っても、細菌の検出精度に影響はないと考えられる。また、(A)と(C)の比較から、測定に供する細菌培養物が50μLであっても、問題なく細菌が検出されたことが明らかである。
以上のことから、本発明において、真菌培地と細菌培地を混合し、培養された細菌を検出・測定を行うことができる。
【0037】
さらに、黄色ブドウ球菌を含む化粧品を検査対象とした細菌培養物について、真菌用培地との混合比を下記の方法により検討した。
<試験方法>
下記表6に示す各化粧品(いずれも市販品)1gを、試験用黄色ブドウ球菌(Staphylococcus
aureus、菌数36cfu)を接種したSCDLP液体培地(日水製薬社製)100mLに入れ、30℃で48時間培養した。その後、それぞれの細菌培養物について、
(D)細菌培養物50μLを取り、得た試料、
(E)細菌培養物50μLを取り、無菌GPLP培地(日水製薬社製)300μLと混合して得た試料、
(F)細菌培養物50μLを取り、無菌GPLP培地(日水製薬社製)500μLと混合して得た試料、
をそれぞれ調製した。
得られた上記各試料50μLに、それぞれATP消去剤50μLと希釈液350μLを加えて30分間処理し、それぞれを50μL移し変え、その後ATP抽出剤50μLを加え、さらに発光試薬を50μL添加して、ルミノメーター(ルミテスターC−110、キッコーマン社製)を用いて発光量(RLU)を測定した。結果を表6に示す。
なお、上記試験で使用した全ての試薬(ATP消去剤、ATP抽出剤、発光試薬、希釈液)は、キッコーマン株式会社製の微生物測定用試薬キット「ルシフェールAT100」を構成する試薬であり、使用手順も該キットの指示に則った。
また、各表において、「999999」という数値は、発光量が測定上限を超えたことを表す。
【0038】
【表6】

【0039】
表6に示すとおり、(D)〜(F)のいずれの試料構成の場合も、培養された細菌(黄色ブドウ球菌)を、検出可能な発光量で問題なく検出することができた。すなわち、試料構成(F)のように細菌培地(培養物):真菌培地が1:10であっても、培地を混合しない場合(すなわち、試料構成(D))と同様に細菌を検出・測定することが可能である。
なお、表1〜6の結果から、本発明においては、混合する真菌培養の培養物と、細菌培養の培養物との量比を、1:10〜10:1(真菌培養物:細菌培養物)とすることができる。
【0040】
さらに、クロカビ(A.niger)又はアオカビ(Penicillium属)を含む化粧品を検査対象とした真菌培養物について検討した。
<試験方法>
GPLP液体培地にクロラムフェニコール0.01質量%と、寒天(メーカー)0.2質量%とを予め添加しておき、ここに試験用クロカビ(A.niger 110cfu)を接種した。前記培地に、下記表7に示す各化粧品(いずれも市販品)を溶解し、それぞれ25℃で48時間真菌培養した。その後、それぞれの真菌培養物について、
(G)真菌培養物を50μL取り、得た試料、
(H)真菌培養物と無菌SCDLP培地を等量混合し、そこから50μL取り、得た試料、
をそれぞれ調製した。
得られた上記各試料に、それぞれATP消去剤50μLと希釈水350μLを加えて30分間処理し、それぞれから50μL移し変え、その後ATP抽出剤50μLを加え、さらに発光試薬を50μL添加して、ルミノメーター(ルミテスターC−110、キッコーマン社製)を用いて発光量(RLU)を測定した。結果を表7に示す。
また、クロカビに代えて試験用アオカビ(Penicillium属、76cfu)を用いた以外は、上記と同様に試験を行った結果についても表7に示す。
なお、上記試験で使用した全ての試薬(ATP消去剤、ATP抽出剤、発光試薬、希釈液)は、キッコーマン株式会社製の微生物測定用試薬キット「ルシフェールAT100」を構成する試薬であり、使用手順も該キットの指示に則った。
【0041】
【表7】

【0042】
表7に示すとおり、(G)及び(H)いずれの試料構成の場合も、培養された真菌を、検出可能な発光量で問題なく検出することができた。すなわち、真菌培養物を細菌用培地と混合しても、微生物(真菌)の検出及び測定が十分に可能であることが明らかである。
以上のことから、本発明において、真菌培地と細菌培地を混合し、培養された真菌を検出・測定を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)同一の検査対象に対し真菌培養と細菌培養とを行い、各々の培養物を得る段階と、
(b)前記各々の培養物を培地ごと混合し、さらにそれらの混合培養物を得る段階と、
(c)前記混合培養物中の微生物の検出及び測定を行う段階と、
を含むことを特徴とする微生物検査方法。
【請求項2】
前記(c)段階において、微生物の検出及び測定を行う方法が、ATP法であることを特徴とする請求項1に記載の微生物検査方法。
【請求項3】
前記(a)段階において、真菌培養と細菌培養とを行う培地が、それぞれ液体培地又は半流動培地であることを特徴とする請求項1又は2に記載の微生物検査方法。
【請求項4】
真菌培養を行う培地がGPLP培地であり、細菌培養を行う培地がSCDLP培地であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の微生物検査方法。
【請求項5】
前記(b)段階において、混合する真菌培養の培養物と、細菌培養の培養物との量比が、1:10〜10:1(真菌培養物:細菌培養物)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の微生物検査方法。


【公開番号】特開2013−78270(P2013−78270A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219239(P2011−219239)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】