説明

微生物検査用カバーシート、微生物検査用カバーシートの製造方法、及び微生物検査用キット

【課題】発色指示薬の安定性を維持するために煩雑な製造工程を経ることなく、コロニーの良好な視認性を実現することができる微生物検査用カバーシート、該微生物検査用カバーシートの製造方法、及び微生物検査用キットを提供すること。
【解決手段】本発明の微生物検査用カバーシートは、微生物を培養する培養層の表面を被覆する微生物検査用カバーシートであって、上記カバーシートは、微生物のコロニーを着色させる発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を最外層に備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物検査に用いられる微生物培養器具に関し、詳細には、微生物の存在を確認するための発色指示薬を含有する微生物検査用カバーシート、微生物検査用カバーシートの製造方法、及び微生物検査用カバーシートを含む微生物検査用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物の存在を確認したり、微生物数を測定したりする方法としては、寒天平板混釈法がある。この方法では、透明な寒天培地上で微生物が発育すると白濁したコロニーが形成されることから、このコロニー数を計測することで菌数検査を行っている。
【0003】
近年、微生物検査をより簡便に行えるように設計された微生物培養器具が開発されている。例えば、方形の粘着シート上に円形の水溶性高分子化合物層と多孔質マトリックス層とを積層し、その上に方形の透明フィルムを配設したシート状の微生物培養器がある(特許文献1参照)。また、その他にもプラスチック容器内に、水溶性高分子化合物、栄養成分、発色指示薬を含有した乾燥培地を備える簡易微生物培養器具もある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4396078号公報
【特許文献2】特許第3630737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、微生物検査では、コロニーの計数が正確かつ容易に行える必要がある。そこで、形成されたコロニーの視認性を向上させるために、コロニーを着色することができる発色指示薬を培地中に含有させることが行われている。
【0006】
しかしながら、発色指示薬は熱等に対して不安定なものが多く、試薬の管理や調製、滅菌処理の際に注意を払う必要がある。上記特許文献1では、TTC等の発色指示薬を水溶性高分子化合物層に含有させているが、発色指示薬は、乾燥工程時の熱処理や滅菌工程時のγ線照射に不安定であり、さらに上記工程時に栄養成分等の様々な種類の材料と混在している状態で処理されるとより不安定化しやすくなる恐れがある。そのため、発色指示薬を培養層側に混入する際には、あらかじめ他の成分を添加した水溶性高分子化合物層を形成した後に、発色指示薬を添加した水溶性高分子化合物層を形成する等、熱処理をより低温にて行うための工夫がなされており、製造方法が煩雑なものとなっている。また、上記特許文献1,2では、滅菌手法も発色指示薬の分解等を抑制するために、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌を採用しており、残留ガスの人体への影響が懸念される。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発色指示薬の安定性を維持するために煩雑な製造工程を経ることなく、コロニーの良好な視認性を実現することができる微生物検査用カバーシート、該微生物検査用カバーシートの製造方法、及び微生物検査用キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意研究を重ねたところ、発色指示薬を、微生物を培養する培養層側ではなく、培養層の表面を被覆するカバーシート側に含有させることで、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 微生物を培養する培養層の表面を被覆する微生物検査用カバーシートであって、上記カバーシートは、微生物のコロニーを着色させる発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を最外層に備えている微生物検査用カバーシート。
【0010】
(2) 上記バインダー樹脂層の厚みは、0.05〜5.0μmの範囲内である(1)に記載の微生物検査用カバーシート。
【0011】
(3) 上記バインダー樹脂層は、ポリアミド系樹脂をバインダーとする(1)又は(2)に記載の微生物検査用カバーシート。
【0012】
(4) 上記発色指示薬は、トリフェニルテトラゾリウムクロライド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルフォスフェイト2ナトリウム1水和物からなる群から選択される少なくとも1種である(1)〜(3)いずれかに記載の微生物検査用カバーシート。
【0013】
(5) (1)〜(4)いずれかに記載のカバーシートと、当該カバーシート中に含まれている発色指示薬を実質的に含有しない培養層を備えている微生物培養シートと、を含む微生物検査用キット。
【0014】
(6) 微生物を培養する培養層の表面を被覆する微生物検査用カバーシートの製造方法であって、微生物のコロニーを着色させる発色指示薬をバインダー樹脂に溶解させてバインダー樹脂層形成用塗工液を調製するバインダー樹脂層形成用塗工液調製工程と、当該バインダー樹脂層形成用塗工液を用いて、基材上にバインダー樹脂層を形成するバインダー樹脂層形成工程と、を含む微生物検査用カバーシートの製造方法。
【0015】
(7) 上記バインダー樹脂層形成工程では、グラビア印刷法によりバインダー樹脂層を形成する(6)に記載の微生物検査用カバーシートの製造方法。
【0016】
(8) 上記バインダー樹脂層形成工程後に、γ線照射により滅菌処理する滅菌処理工程を有する(6)又は(7)に記載の微生物検査用カバーシートの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の微生物検査用カバーシートによれば、発色指示薬の安定性を維持するために煩雑な製造工程を経ることなく、コロニーの良好な視認性を実現することができる。また、γ線照射による滅菌処理が可能となるので、EOG滅菌による残留ガスの問題が生じない。
本発明の微生物検査用カバーシートの製造方法によれば、上記効果を有する微生物検査用カバーシートを提供することができる。
本発明の微生物検査用キットによれば、コロニーの視認性が良好となり、コロニーの計数を正確かつ容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る微生物検査用カバーシートを示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る微生物検査用キットを示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る微生物検査用キットの使用態様の一例を示す断面図((a)本発明の一実施形態に係る微生物検査用カバーシートのバインダー樹脂層の面と、培養層上に接種された被検液の面とが接触する被覆態様を示す図、(b)本発明の一実施形態に係る微生物検査用カバーシートのバインダー樹脂層の面と、被検液を含有する培養層の面とが接触する被覆態様を示す図)である。
【図4】実施例1の微生物検査用カバーシートを用いた場合のコロニーの着色状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
[微生物検査用カバーシート]
本発明の微生物検査用カバーシート(以下、カバーシートという)は、微生物を培養する培養層の表面を被覆するものであり、微生物のコロニーを着色させる発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を最外層に備えている。また、培養層とは、微生物を培養するための栄養成分とコロニー形成を可能とする足場となるようなもの(例えば、ゲル状物質や不織布等)とからなる層をいい、被検液を接種した場合には、被検液を含有する上記層をいう。
【0021】
従来、発色指示薬は微生物を培養する培養層に含有させていた。しかしながら、発色指示薬は、乾燥工程時の熱処理や滅菌工程時のγ線照射に不安定であり、さらに上記工程時に栄養成分等の様々な種類の材料と混在している状態で処理されることでより不安定となることから、発色指示薬を培養層に含有させる際には、煩雑な製造工程を経ていた。そこで、本発明では、発色指示薬を培養層の表面を被覆するカバーシートに含有させることとした。このように、発色指示薬をカバーシートに含有させると、培養層を形成する様々な成分とともに熱処理したり、γ線照射したりしなくてもよいため、発色指示薬の安定性を容易に維持することができ、有毒ガス発生の懸念がないγ線照射による滅菌処理も可能となる。さらに、本発明のカバーシートは、発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を最外層に形成させ、培養層の表面に被覆させることで、発色指示薬を培養層に速やかに移行させ、培養層上に形成された微生物コロニーを着色させることを可能とした。
【0022】
以下、本発明の一実施形態に係るカバーシートの構成について、図面を用いて説明する。なお、以下に示す各図(図1〜3)は、模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るカバーシートを模式的に示した断面図である。図1において、カバーシート10は、基材20の一方の面に発色指示薬を含有するバインダー樹脂層21がカバーシート10の最外層となるように形成された構成となっている。そして、基材20の他方の面には、桝目柄が印刷されている。
【0024】
本発明の一実施形態に係るカバーシート10によれば、発色指示薬を含有するバインダー樹脂層21がカバーシート10の最外層となるように形成されているので、培養層の表面と接触するように被覆するだけで、バインダー樹脂層21中の発色指示薬が培養層側に移行し、培養層上に形成された微生物のコロニーを着色させることができる。また、不安定な発色指示薬をバインダー樹脂層21に含有させているので、有毒ガス発生の懸念がないγ線照射による滅菌処理が可能である。
【0025】
また、本発明の一実施形態に係るカバーシート10によれば、基材20に桝目柄が印刷されているので、微生物のコロニーが多数形成された場合に、数ヶ所の桝目内のコロニーを計測按分するだけで、おおよその全体数を求めることができる。
【0026】
なお、本発明の一実施形態に係るカバーシートでは、基材20の一方の面にバインダー樹脂層21が形成され、他方の面に桝目柄が印刷されている場合について説明したが、基材20の桝目柄が印刷されている面が、バインダー樹脂層21の面と対向している構成であってもよい。
【0027】
以下、本発明の実施形態に係るカバーシート10の各構成について、詳細に説明する。
【0028】
<バインダー樹脂層>
本発明のカバーシートは、微生物のコロニーを着色させる発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を備えている。発色指示薬は、培養過程で発育する微生物の代謝により産出される特異物質との反応、pH変化の認識、酵素との反応等によって発色してコロニーを着色し、コロニー数の計測を極めて容易にする効果を有するものである。しかしながら、一般に、発色指示薬は熱等に対して不安定であり、微生物培養器具では、製造工程中に発色指示薬の熱変性や熱分解を生じやすい。本発明のカバーシートによれば、製造工程中も発色指示薬の安定性を維持することが可能となる。本発明のカバーシートにおいて、バインダー樹脂層に含まれる発色指示薬は、特に限定されるものではなく、例えば、一般生菌用としては、トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)、p−トリルテトラゾリウムレッド、テトラゾリウムバイオレット、ペテトリルテトラゾリウムブルー等のテトラゾリウム塩が挙げられる。大腸菌・大腸菌群用としては、酵素基質反応を利用する5−ブロモ−3−インドリル−β−D−ガラクトシド(Blugal)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド(X−Gal)、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−グルコピラノシド(X−Gluc)等が挙げられる。黄色ブドウ球菌用としては、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルフォスフェイト2ナトリウム1水和物、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルフォスフェイト2ナトリウム3水和物等が挙げられる。これらの中でも、TTC、X−Gal、及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルフォスフェイト2ナトリウム1水和物が好ましく、TTCがより好ましい。TTCは、還元性物質であり、熱や光に対して不安定で、かつ、γ線照射時にも変性又は変色しやすいことから、本発明において使用する発色指示薬としてより好適である。
【0029】
本発明のカバーシートでは、バインダー樹脂層を構成するバインダー樹脂は、上記発色指示薬が溶解可能な溶剤に溶解又は分散し、印刷や塗布が可能であれば、特に限定されず、従来公知の樹脂を用いることができる。例えば、一般生菌用の発色指示薬であるTTCは、アルコール系溶媒や水に溶解することから、TTCをバインダー樹脂層に含有させる場合には、アルコール系溶媒や水に溶解又は分散する樹脂を選択するとよい。上記したように、発色指示薬は熱に対して不安定であり、分解や変性を生じやすい。そのため、バインダー樹脂層形成時の溶剤除去に、高温加熱を必要としないアルコール系溶媒に溶解又は分散し、印刷や塗布が可能な樹脂を選択することが好ましい。アルコール系溶媒としては、炭素数が1〜5のアルコールが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等が挙げられる。これらのアルコールを単独又は2種以上混合したものに溶解又は分散し、インキ化可能な樹脂を選択することがより好ましい。このような樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の公知の樹脂が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明のカバーシートでは、発色指示薬を安定に保持しつつ、培養層と接触した際に徐々に発色指示薬を放出できるという点において、ポリアミド系樹脂が好ましい。また、バインダー樹脂は微生物の発育を阻害しない樹脂であることが好ましい。
【0030】
本発明のカバーシートでは、培養層を被覆する際に、該培養層と直接接する態様となることで、バインダー樹脂層内の発色指示薬が培養層側に移行する。そのため、バインダー樹脂は、粘着性を有していないものが好ましい。バインダー樹脂が粘着性を有していると、カバーシートを培養層に被覆する際に、粘着部位が基材や容器、培養層等に接触することで隙間が生じやすくなったり、シワがよりやすくなったりする等の問題が発生する確率が高くなるからである。その他にも、製造時やキット販売する際に粘着性が作業に悪影響を与えたり、製品を積み重ねる際に製品同士が張り付いたりする可能性があるため、粘着性を有するバインダー樹脂層に離型紙を貼り合わせる等の工夫が必要となる場合がある。その結果、製品のコスト増加に繋がる。
【0031】
なお、バインダー樹脂の粘着性の有無を判断する指標としては、例えばガラス転移点(Tg)が挙げられ、本発明では、バインダー樹脂のガラス転移点が50℃以上であることが好ましい。バインダー樹脂のガラス転移点が50℃以上であれば、通常、室温下で行われる製造や培養作業時にバインダー樹脂による粘着力が小さく、上記問題が発生しにくくなる。ガラス転移点は、例えば動的粘弾性測定(DMA)や示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。また、バインダー樹脂の粘着性の有無は、貯蔵弾性率(G’)やタック力によっても判断することができる。貯蔵弾性率(G’)はDMAにより測定することができ、本発明では、室温下においてこの値が10Pa以上であることが好ましい。タック力は、例えば株式会社RHESCA製のプローブタック試験機TAC−IIを用い、JIS Z 0237に準拠した方法にて測定することができ、本発明では、室温下においてこの値が100kPa以下であることが好ましく、10kPa以下であることがより好ましい。貯蔵弾性率やタック力が上記値であれば、ガラス転移点の場合と同様に、製造や培養作業時において上記問題が発生しにくくなる。
【0032】
バインダー樹脂層における発色指示薬の含有量は、含有させる発色指示薬の種類により異なるため、一概に規定することはできない。そのため、発色指示薬の種類に応じて、適宜、調整するとよい。通常、コロニーを良好に視認できる着色が可能で、かつ、微生物の発育を阻害しない適切な量を含有させる。
【0033】
バインダー樹脂層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは0.05〜5.0μmであり、より好ましくは0.1〜1.5μmである。0.05〜5.0μmであれば、所望の着色効果を発揮させるために必要な量の発色指示薬を含有させることができ、かつ、グラビア印刷法による形成が可能となるため、カバーシートの生産効率を向上させることができる。なお、5.0μmを超えると、グラビア印刷法により形成した場合に溶剤の乾燥が困難になるためカバーシートの生産速度が遅くなったり、カバーシートの巻き取り保管が困難になったりする等の問題が生じたり、透明性や柔軟性が低下することにより、操作性が悪くなったりする場合がある。また、0.05μmに満たないと、所望の着色効果を発揮させるために、発色指示薬の含有量を増加させる必要が生じ、発色指示薬を安定な状態でバインダー樹脂層に含有させることが困難となる場合がある。バインダー樹脂層の形成方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の印刷、塗布、コーティング等の手法により形成することができる。印刷による形成方法としては、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等が挙げられる。塗布による形成方法としては、ディスペンサーによる塗布等が挙げられる。コーティングによる形成方法としては、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ロールコート、リバースコート等が挙げられる。
【0034】
上記バインダー樹脂層には、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて、滑り性向上のための添加剤やブロッキング防止剤等の各種添加剤を配合してもよい。
【0035】
<基材>
本発明のカバーシートでは、基材は、特に限定されるものでないが、防水性、水蒸気不透過性を有すると同時に、微生物の培養後、カバーシートを通してコロニーを観察したり、計数したりできるように、透明であることが好ましい。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックフィルムが好適である。カバーシートは、培養層や被検液を被覆する際に作業を効率化するために、適度な柔軟性を有することが好ましい。この点を考慮すると、これらの中でもポリエステルフィルムやポリオレフィンフィルムがより好適である。
【0036】
基材の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜200μmであり、より好ましくは20〜70μmである。基材の厚みが、上記範囲内であれば、適度な柔軟性を有するので、カバーシートの作業性が良好となる。また、機械的強度が十分であり、連続帯状で供給して加工することも可能である。なお、基材の大きさは、どのような形状であってもよいが、雑菌の進入を防ぐため、培養層を被覆できるように培養層よりも大きいサイズであることが好ましい。
【0037】
本発明のカバーシートでは、基材上にバインダー樹脂層を形成する。そこで、バインダー樹脂層と基材との密着性を向上させるために、表面処理を施した基材を使用することが好ましい。表面処理は、特に限定されるものではなく、例えば、コロナ放電処理、オゾン処理、グロー放電処理、酸素ガス又は窒素ガスを用いる低温プラズマ処理等の公知の表面処理が挙げられる。また、アンカーコート剤の塗布による表面処理を施してもよい。
【0038】
本発明のカバーシートでは、基材に桝目柄が印刷されていてもよい。桝目柄が印刷された基材を備えているカバーシートによれば、コロニーが多数形成された場合に、数ヶ所の枡目内の菌数を計測按分するだけで、おおよその全体数を求めることができる。使用するインクは、水に不溶で、微生物の生育に影響を与えないものを使用する。印刷の版式は、着色剤、樹脂、溶剤等の選択範囲が広い点でグラビア印刷が好ましい。枡目の大きさは1cm角程度が適当である。
【0039】
[カバーシートの製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係るカバーシートの製造方法について詳細に説明する。
【0040】
一例として、発色指示薬としてTTC、バインダーとしてポリアミド樹脂を選択し、グラビア印刷法により、基材上にバインダー樹脂層を形成する場合について、説明する。まず、アルコール系溶媒にポリアミド樹脂を溶解させ、グラビア印刷が可能な粘度のバインダー溶液を調製する。該バインダー溶液に、発色指示薬であるTTCを溶解させ、バインダー樹脂層形成用塗工液を調製する。そして、基材の表面処理を施した面に、バインダー樹脂層形成用塗工液をグラビア印刷した後、乾燥させ、バインダー樹脂層を形成することにより、カバーシートを得ることができる。得られたカバーシートは、γ線照射により滅菌処理を施すことで製品とする。なお、上記のように、グラビア印刷によってバインダー樹脂層を形成すると、70℃、1秒以下での乾燥が可能となる。
【0041】
滅菌処理としては、EOGによる滅菌も可能であるが、有害なガスを使用するため人体への影響が懸念される。そのため、より安全性の高いγ線照射による滅菌処理を採用することが好ましい。基本的に、γ線照射すると多くの成分はラジカルを発生する。ラジカルは非常に反応性が高いので、TTC等の発色指示薬の変性(還元)を促進する。培養層中には、栄養成分(種々のタンパク成分)、ゲル化剤、バインダー等が存在しているので、ラジカルの発生量が多く、培養層中に発色指示薬が含まれていると、発色指示薬が変性しやすい。しかしながら、本発明では、上記のラジカルが多く発生しやすい成分を含まないカバーシートに発色指示薬を含有させているので、γ線照射したとしてもラジカルの発生量が少なく、変性が生じ難いと推測される。
【0042】
カバーシートの厚みは、10〜200μmであることが好ましく、20〜80μmであることがより好ましい。上記範囲内であれば、作業性が良好となる。
【0043】
[微生物検査用キット]
本発明では、上記カバーシートと、該カバーシート中に含まれている発色指示薬を実質的に含有しない培養層を備えている微生物培養シートとを組み合わせて、微生物検査用キットとすることができる。ここで、発色指示薬を実質的に含有しないとは、発色指示薬としての機能を発揮する程度の量を含有していないことを意味する。
【0044】
図2は、本発明の一実施形態に係る微生物検査用キット30を模式的に示した断面図である。図2において、カバーシート10は、基材20の一方の面に発色指示薬を含有するバインダー樹脂層21がカバーシート10の最外層となるように形成された構成となっている。そして、基材の他方の面には、桝目柄が印刷されている。そして、微生物培養シート40は、基材50上に、上記カバーシート10中に含まれている発色指示薬を含有しない培養層51が形成されている。
【0045】
本発明の一実施形態に係る微生物検査用キット30によれば、熱に不安定な発色指示薬を含有するバインダー樹脂層21を備えているカバーシート10と、該カバーシート10
中に含まれている発色指示薬を含有しない培養層51を備えている微生物培養シート40と、を別々に製造し、滅菌処理を行うことで発色指示薬を安定に保持した微生物検査用キット30とすることができる。これらの微生物検査用キット30を用いることで、微生物検査に際して、発色指示薬の安定性が維持された状態での微生物検査が可能となり、発色指示薬が本来有する効果を十分に発揮させることができる。
【0046】
なお、図2に示す本発明の一実施形態に係る微生物検査用キット30では、基材50上に培養層51のみが形成されている微生物培養シート40について説明したが、該微生物培養シート40は、培養層51の外周に疎水性樹脂からなる枠層が形成された構成となっていてもよい。微生物培養シート40が、培養層51の外周に疎水性樹脂からなる枠層を備えていると、被検液を培養層51上に接種した場合に、被検液が枠層まで速やかに拡がるため、培養層51による被検液の吸水を待たずにカバーシート10を被覆することができ、接種操作を短時間で行うことが可能となる。
【0047】
[微生物検査用キットの使用方法]
図3は、本発明の一実施形態に係る微生物検査用キットの使用態様の一例を示す断面図である。本発明の一実施形態に係る微生物検査用キットは、発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を最外層に備えているカバーシートと、微生物を培養可能な培養層を備えている微生物培養シートとから構成されている。本発明の一実施形態に係る微生物検査用キット30では、微生物培養シート40に備えられている培養層51上に被検液を接種した後、カバーシート10の最外層に備えられているバインダー樹脂層21の面と、微生物培養シート40に備えられている培養層51の面とが対向するように、カバーシート10を培養層51に被覆させる。そうすると、バインダー樹脂層21の面が培養層51の面に接触し、バインダー樹脂層21に含まれる発色指示薬が培養層51側に移行する。ここで、カバーシート10を培養層51に被覆させるタイミングは、図3(a)に示すように、培養層51上に被検液52を接種した直後であってもよい。このように、バインダー樹脂層21の面が被検液52の面に接触する態様で被覆することで、バインダー樹脂層21中の発色指示薬を速やかに培養層51側に移行させることができる。また、図3(b)に示すように、培養層51上に被検液52を接種した後、被検液52を吸水して膨潤した培養層51の面に、バインダー樹脂層21の面が接触する態様で被覆してもよい。このように被覆することで、コロニーが生成される培養層51の表面に、発色指示薬を効率的に移行させることができる。
【0048】
[微生物培養シート]
本発明の微生物検査用キットに含まれる微生物培養シートは、上記カバーシート中に含まれている発色指示薬を含有せず、かつ、微生物を培養可能な培養層を備えていれば、特に限定されるものではない。例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等のプラスチックシート等の耐水性と耐熱性とを有する基材上に、培養層が形成されているものが挙げられる。培養層は、微生物を培養するための栄養成分とコロニー形成を可能とする足場となるようなもの(例えば、ゲル状物質や不織布等)からなる層であることが好ましい。より好ましくは、バインダーに、ゲル化剤、栄養成分、選択剤等の他の成分を含有させた培地液を印刷や塗布することにより形成した培養層を使用する。ここで、バインダーとは、ゲル化剤、栄養成分、選択剤等の他の成分を基材に固着させる役割を有するものであり、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール等が挙げられる。ゲル化剤としては、例えば、カラギーナン、グアーガム、キタンサンガム、ローカストビーンガム、アルギン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。ゲル化剤によれば、被検液の滴下により培養層が増粘又はゲル化し、微生物の発育に適した環境となるとともに、カバーシートとの密着性が向上するので、バインダー樹脂層から培養層へ発色指示薬を確実かつ速やかに移行させることができる。また、培養時の水分の蒸発を抑制することもできる。
【0049】
栄養成分は、微生物の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、一般生菌検査用としては、酵母エキス・ペプトン・ブドウ糖混合物、肉エキス・ペプトン混合物、ペプトン・大豆ペプトン・ブドウ糖混合物等や、これらにリン酸二カリウム及び/又は塩化ナトリウムを加えた混合物が挙げられ、大腸菌・大腸菌群検査用としては、デソキシコール酸ナトリウム・ペプトン・クエン酸鉄アンモニウム・塩化ナトリウム・リン酸二カリウム・乳糖混合物、ペプトン・乳糖・リン酸二カリウム混合物等が挙げられる。これらの中から、発育させようとする微生物の種類に応じて、1種類又はそれ以上を選択し、混合して使用することができる。選択剤は、検出目的以外の微生物の発育を抑える役割を有するものであり、例えば、抗生物質、合成抗菌剤、静菌又は殺菌作用を有する色素等が挙げられる。
【0050】
本発明の微生物検査用キットに含まれる微生物培養シートは、例えば、以下の方法により製造することができる。バインダーをアルコール系溶媒に溶解させた後、該溶解液に、ゲル化剤、栄養成分、選択剤等の成分を少なくとも1種を含有させた培地液を調製し、該調製液を基材上にパターン形成する。次いで、上記培地液に含まれる上記アルコールを除去して培養層を形成する。培養層の外周に枠層を備える微生物培養シートの場合には、培養層の形成前又は形成後に、基材上に疎水性樹脂を用いて枠層をパターン形成する。疎水性樹脂としては、例えば、UV硬化樹脂、ホットメルト樹脂、熱発泡インク、UV発泡剤等を好適に使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
【0052】
[製造例1]微生物培養シート(A)の製造方法
ゲル化剤としてグアーガム粉末(商品名「NEOVISCO G」,400メッシュタイプ,三晶社製)60g、栄養成分としてトリプトン(商品名「BACT TRYPTONE」,Becton,Dickinson and Company社製)3.26g、肉エキス(商品名「Lab−Lemco」,Oxoid社製)0.82g、酵母エキス(商品名「YEAST EXTRACT」,Becton,Dickinson and Company社製)0.03g、ブドウ糖(商品名「D−(+)−GLUCOSE」,和光純薬工業社製)0.16g、塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)0.41g、及びリン酸水素二ナトリウム(和光純薬工業社製)0.37gを培養時に影響を与えない固着剤(ポリビニルピロリドン,商品名「PVP K−90」,日本触媒社製)のメタノール溶液と混合して培養層形成用培地液を調製した。そして、この培養層形成用培地液を用いて、基材シート(ポリエチレンテレフタレートフィルム,商品名「テイジンテトロンフィルム」,帝人デュポンフィルム社製)上に、ワイヤバーによってコーティングすることで培養層を形成し、微生物培養シート(A)を得た。
【0053】
[製造例2]微生物培養シート(B)の製造方法
ゲル化剤としてグアーガム粉末(商品名「NEOVISCO G」,400メッシュタイプ,三晶社製)60g、栄養成分としてトリプトン(商品名「BACT TRYPTONE」,Becton,Dickinson and Company社製)3.26g、肉エキス(商品名「Lab−Lemco」,Oxoid社製)0.82g、酵母エキス(商品名「YEAST EXTRACT」,Becton,Dickinson and Company社製)0.03g、ブドウ糖(商品名「D−(+)−GLUCOSE」,和光純薬工業社製)0.16g、塩化ナトリウム(和光純薬工業社製)0.41g、リン酸水素2ナトリウム(和光純薬工業社製)0.37g、及びトリフェニルテトラゾリウムクロライド(Aldrich社製)0.02gを培養時に影響を与えない固着剤(ポリビニルピロリドン,商品名「PVP K−90」,日本触媒社製)のメタノール溶液と混合して、培養層形成用培地液を調製した。そして、この培養層形成用培地液を用いて、基材シート(ポリエチレンテレフタレートフィルム,商品名「テイジンテトロンフィルム」,帝人デュポンフィルム社製)上に、ワイヤバーによってコーティングすることで培養層を形成し、微生物培養シート(B)を得た。
【0054】
[製造例3]カバーシート(A)の製造方法
ポリアミド樹脂(商品名「バーサミド713」,コグニスジャパン社製)を1−プロパノール及び変性エタノールの混合溶媒(混合比=1:1)に溶解させ、グラビア印刷が可能な粘度となるように調製した。これに、発色指示薬であるトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)をさらに溶解させ、バインダー樹脂層形成用塗工液を調製した。そして、厚さ40μmのOPPフィルム(商品名「OP−U1」,片面コロナ処理,東セロ社製)のコロナ処理面に、バインダー樹脂層形成用塗工液をグラビア印刷した後、乾燥させ、バインダー樹脂層(乾燥後の厚み:約1μm,乾燥後の塗布量:約1.0g/m,TTCの含有量:約60mg/m)を形成し、カバーシート(A)を得た。
【0055】
[製造例4]カバーシート(B)の製造方法
アクリル酸エステル樹脂を酢酸エチルとメタノールとの混合溶媒(混合比4:1)に溶解させたもの(商品名「NKポリマーMK−100IC」,新中村化学社製)に、発色指示薬であるトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)を溶解させ、インキを調製した。そして、厚さ40μmのOPPフィルム(商品名「OP−U1」,片面コロナ処理,東セロ社製)のコロナ処理面に、上記インキをワイヤバーにより塗工した後、60℃で2分間乾燥させ、バインダー樹脂層(乾燥後の塗布量:約2.0g/m,TTCの含有量:約80mg/m)を形成し、カバーシート(B)を得た。
【0056】
[製造例5]カバーシート(C)の製造方法
塩素化ポリプロピレン樹脂を水に分散させたエマルジョン溶液(商品名「スーパークロンE−503」,日本製紙ケミカル社製)に、発色指示薬であるトリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)を溶解させ、インキを調製した。そして、厚さ40μmのOPPフィルム(商品名「OP−U1」,片面コロナ処理,東セロ社製)のコロナ処理面に、上記インキをワイヤバーにより塗工した後、60℃で2分間乾燥させ、バインダー樹脂層(乾燥後の塗布量:約1.5g/m,TTCの含有量:約80mg/m)を形成し、カバーシート(C)を得た。
【0057】
<実施例1>
製造例1で得た培養層を有する微生物培養シート(A)と、製造例3で得たバインダー樹脂層を有するカバーシート(A)とを、培養層とバインダー樹脂層とが対向するように重ね、一辺の端部を接着し、実施例1の微生物培養器具を得た。
【0058】
<実施例2>
製造例1で得た培養層を有する微生物培養シート(A)と、製造例4で得たバインダー樹脂層を有するカバーシート(B)とを、培養層とバインダー樹脂層とが対向するように重ね、一辺の端部を接着し、実施例2の微生物培養器具を得た。
【0059】
<実施例3>
製造例1で得た培養層を有する微生物培養シート(A)と、製造例5で得たバインダー樹脂層を有するカバーシート(C)とを、培養層とバインダー樹脂層とが対向するように重ね、一辺の端部を接着し、実施例3の微生物培養器具を得た。
【0060】
<実施例4>
標準寒天培地(商品名「標準寒天培地」,Becton,Dickinson and Company社製)を滅菌精製水に溶かし、培地液を調製した。そして、この培地液をシャーレに適正量分注し、寒天平板培地を調製した。次いで、製造例3で得たバインダー樹脂層を有するカバーシート(A)を、該カバーシート(A)のバインダー樹脂層面が寒天平板培地面と接触するように被覆し、実施例4の微生物培養器具を得た。
【0061】
<比較例1>
製造例2で得た培養層を有する微生物培養シート(B)と、厚さ40μmのOPPフィルム(商品名「OP−U1」,片面コロナ処理,東セロ社製)とを、培養層とOPPフィルムとが対向するように重ね、一辺の端部を接着し、比較例1の微生物培養器具を得た。
【0062】
[発色指示薬安定性試験]
実施例1〜3及び比較例1の微生物培養器具に対して、γ線照射による滅菌処理を行い、発色指示薬の安定性を確認した。なお、γ線の線量は約10kGyとした。その結果、発色指示薬であるTTCを培養層に含有させた微生物培養器具(比較例1)では、TTCが変色し、培養層全体が赤く着色した。これに対して、TTCをカバーシートに含有させた微生物培養器具(実施例1〜3)では、TTCは変色することなくカバーシートに安定に保持されており、培養層の着色は認められなかった。
【0063】
[培養試験]
実施例1〜4の微生物培養器具を用いて、培養試験を行った。E.coli(ATCC 25922)を液体培地(TRYPTIC SOY BROTH)にて36±1℃で18時間振盪培養した。そして、得られた被検液を菌数が10/mlとなるように滅菌生理食塩水で希釈し、培養試験用被検液を調製した。この培養試験用被検液を、実施例1〜3の微生物培養器具の培養層上に滅菌済みのピペットで1ml接種した後、カバーシートを被せることで培養試験用被検液を培養層全体に拡げ、約1分間静置してゲルを形成させた。その後、孵卵器に入れ、37℃±1℃で48時間培養し、培養後に発生したコロニーの発色状態を目視にて確認した。なお、実施例4の微生物培養器具については、以下の方法にて培養試験を行った。上記培地液分注の際に、あらかじめシャーレ内に滅菌済みのピペットで1mlの培養試験用被検液を添加し、そこに60℃に加温して流動性を与えた培地液を分注し、軽く混釈した後、室温まで冷却し寒天を固化させた。次いで、カバーシートを寒天培地表面に被せ、実施例1〜3と同様に孵卵器に入れ、37℃±1℃で48時間培養し、培養後に発生したコロニーの発色状態を目視にて確認した。その結果、実施例1〜4のいずれの微生物培養器具についても、菌の発育が確認可能な程度にまでコロニーが着色されており、視認性が良好であった。実施例1の微生物培養器具におけるコロニーの着色状態を図4に示す。
【符号の説明】
【0064】
10 微生物検査用カバーシート
20 基材
21 バインダー樹脂層
30 微生物検査用キット
40 微生物培養シート
50 基材
51 培養層
52 被検液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を培養する培養層の表面を被覆する微生物検査用カバーシートであって、
前記カバーシートは、微生物のコロニーを着色させる発色指示薬を含有するバインダー樹脂層を最外層に備えている微生物検査用カバーシート。
【請求項2】
前記バインダー樹脂層の厚みは、0.05〜5.0μmの範囲内である請求項1に記載の微生物検査用カバーシート。
【請求項3】
前記バインダー樹脂層は、ポリアミド系樹脂をバインダーとする請求項1又は2に記載の微生物検査用カバーシート。
【請求項4】
前記発色指示薬は、トリフェニルテトラゾリウムクロライド、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトピラノシド、及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルフォスフェイト2ナトリウム1水和物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の微生物検査用カバーシート。
【請求項5】
請求項1〜4いずれかに記載のカバーシートと、当該カバーシート中に含まれている発色指示薬を実質的に含有しない培養層を備えている微生物培養シートと、を含む微生物検査用キット。
【請求項6】
微生物を培養する培養層の表面を被覆する微生物検査用カバーシートの製造方法であって、
微生物のコロニーを着色させる発色指示薬をバインダー樹脂に溶解させてバインダー樹脂層形成用塗工液を調製するバインダー樹脂層形成用塗工液調製工程と、
当該バインダー樹脂層形成用塗工液を用いて、基材上にバインダー樹脂層を形成するバインダー樹脂層形成工程と、を含む微生物検査用カバーシートの製造方法。
【請求項7】
前記バインダー樹脂層形成工程では、グラビア印刷法によりバインダー樹脂層を形成する請求項6に記載の微生物検査用カバーシートの製造方法。
【請求項8】
前記バインダー樹脂層形成工程後に、γ線照射により滅菌処理する滅菌処理工程を有する請求項6又は7に記載の微生物検査用カバーシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−75377(P2012−75377A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223097(P2010−223097)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】