説明

微生物検査装置及びそれに用いる微生物検査チップ

【課題】
微生物検査チップに実装する微量な染色液の取り扱い性を改善することが可能な微生物検査装置及び微生物検査チップを提供する。
【解決手段】
微生物検査チップ10は、検体容器151、食品残渣除去部160、全微生物用染色液1522を保持する全微生物染色容器152、死微生物用染色液を保持する死微生物染色容器153、微生物検出用流路173、検出液廃棄容器156を備え、全微生物染色容器152と死微生物染色容器153は疎水性表面を持つ容器とし、全微生物用染色液1522を親水性の多孔質担体である全微生物用染色液保持担体1521に保持させて全微生物染色容器152に実装し、死微生物用染色液は親水性の多孔質担体である死微生物用染色液保持担体1531に保持させて死微生物染色容器153に実装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物検査装置及びそれに用いる微生物検査チップにかかり、特に、蛍光サイトメトリー法を用いた微生物検査装置及びそれに用いる微生物検査チップに関する。
【背景技術】
【0002】
食品中に含まれる生菌数の計測の迅速化および簡便化を目的とした生菌数計測装置(微生物検査装置)が市場に提供されている。その中でも、迅速性と定量性に優れている生菌数計測装置として、蛍光フローサイトメトリー法を使用した生菌数計測装置が注目されている。蛍光フローサイトメトリー法を使用した生菌数計測装置は、蛍光色素によって染色した生菌を含む検体液が流れる流路を細くして、流路に流れる生菌を一個ずつ光学的に検出するもので、生菌数の計測が短時間に行うことができる。
【0003】
蛍光フローサイトメトリー法を使用した生菌数計測装置で食品中の生菌数を測定するには、一般的に、生菌の蛍光染色を手操作で行う必要がある。生菌の蛍光染色は、生菌(菌体)を含む検体液に一定量の蛍光色素を分注・撹拌し、一定時間静置することで行う。一回あたり使用する蛍光色素の量は検体1mlあたり数μlと非常に微量である。また、複数の蛍光色素(試薬)を使用するときには、分注の順番や静置の時間が異なることもある。このようなことから蛍光染色の作業には高い専門性と正確性が求められている。
【0004】
検体液の保持容器や、蛍光試薬の保持容器、生菌の個数の測定を行う検出用流路、これらの保持容器や検出用流路を連結する流路を一つのチップ内に形成し、蛍光試薬(試薬液)を前もってチップ内に封入した検査チップを、励起光源や光検出器からなる検出装置等を備えた検査装置に装着して、微生物を検査するようにした微生物検査装置が提案されている(例えば、特許文献1や特許文献2参照)。このような微生物検査装置では、検査チップに検体液を注入し、検査装置に装着することによって、検査チップ内で自動的に検体液に含まれる生菌に蛍光染色を行うことができることから、高度な専門性を要することなく、確実に生菌に蛍光染色を施すことができ、簡易に微生物検査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-157829号公報
【特許文献2】特開2011-92104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液体の試薬を検査チップ内の容器に保持させた場合、容器に連結した流路を経由して液体の試薬が容器外に流動しないようにすることが重要である。特許文献1や特許文献2では、容器間(または容器と検出用流路)を連結する流路の最高点が容器内の液体の水位よりも高くなるように流路を形成することによって、容器内の液体が下流の容器又は検出用流路に流入しないようにしている。しかし、試薬は微量であることから、容器に連結する流路部分に試薬が流動し、容器外に滞留する試薬が染色に有効に利用されない場合には、検体液中の生菌に対して十分な染色が行われない可能性もある。また、検査チップを検査装置に装着する前の段階では、検査チップの取り扱い方によっては試薬が容器外に流出してしまう可能性もある。また、試薬は非常に微量であることから、検査チップに定量性良く試薬(染色液)を実装することは容易ではない。
【0007】
本発明は、微生物検査チップに実装する微量な試薬(染色液)の取り扱い性を改善することが可能な微生物検査装置及び微生物検査チップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、親水性の担体に液体の試薬を保持させて微生物検査チップ内の容器に入れるようにしたものである。
【0009】
親水性の担体は多孔質担体であることが望ましい。
【0010】
容器としては疎水性表面を持つ容器とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の何れかの作用によって、微生物検査チップに実装する微量な試薬(染色液)の取り扱い性を改善することが可能となる。
【0012】
試薬を保持させた親水性の担体を容器(疎水性表面の容器)に入れることで、検体と担体の混合前まで、担体は試薬を漏らさずに保持することが可能になる。そして、担体と検体の混合後、担体は試薬を速やかに検体中に溶出させることが可能になる。
【0013】
さらに、自動もしくは手動の分注機を使用することにより、親水性の多孔質の担体に一定量の試薬を簡便に分注することが可能となり、その結果、非常に微量な試薬であっても検査チップに定量性良く試薬(染色液)を実装することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置に用いられる微生物検査チップの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す微生物検査チップのAA’部の断面を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る微生物検査装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る担体の作製方法の例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る担体の作製に使用するトレイの概略構成を示す図である。
【図6】図5に示すトレイのBB’部の断面を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る担体の作製方法を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る担体を微生物検査チップに実装する方法の例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る担体の他の例を示す図である。
【図10】図9に示す担体の作製方法の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する実施の形態は一例であって、各実施の形態同士の組み合わせ、公知又は周知の技術との組み合わせや置換による他の態様も可能である。
【0016】
また、本明細書及び特許請求の範囲において、「微生物」は「細胞」も含み、また、「微生物」は死微生物など生物由来の物質を含む。従って、微生物検査装置及び検査方法とは、狭義の微生物のみの検査装置及び検査方法に限定されるものではない。
(A)微生物検査チップの構成及び微生物検査チップ内に保持される試薬の構成
図1は、本発明の実施の形態における微生物検査チップ10の概略構成を示す図である。
【0017】
微生物検査チップ10は、検体容器151、全微生物染色容器152、死微生物染色容器153、微生物検出用流路173、及び、検出液廃棄容器156を備えている。
【0018】
検体容器151は液体の検体1511を保持する。全微生物染色容器152は検体中の微生物(生死にかかわらず)を染色する全微生物用染色液(試薬液)1522を保持した全微生物用染色液保持担体1521を内部に備え、検体と全微生物用染色液1522を混合、反応させるものであり、試薬容器と反応容器の機能を有する。試薬容器の機能と反応容器の機能を、特許文献1に記載のように、別々の容器に持たせることも可能である。その場合、二つの容器を併せて全微生物染色容器ということになる。死微生物染色容器153は検体中の死んでいる微生物のみを染色するための死微生物用染色液(試薬液)を保持した死微生物用染色液保持担体1531を内部に備え、検体と死微生物用染色液を混合、反応させるものであり、試薬容器と反応容器の機能を有する。全微生物染色容器152と同様に試薬容器の機能と反応容器の機能を別々の容器に持たせることも可能である。その場合、二つの容器を併せて死微生物染色容器ということになる。微生物検出用流路173は外部光源からの励起光を照射して発生する微生物の蛍光を観測する蛍光フローサイトメトリー法の微生物検出部17を構成する。検出液廃棄容器156は微生物検出用流路173を通過した検体1511と全微生物用染色液1522、死微生物用染色液の混合液を廃棄するため容器である。
【0019】
微生物検査チップ10は、さらに、検体容器151、全微生物染色容器152、死微生物染色容器153、微生物検出用流路173、検出液廃棄容器156を連結し、検体1511や混合液が流動する溶液用流路1571〜1574と、後述の圧力供給装置14のチップ連結管1441〜1444(図3)と接続され、高圧気体が供給されたり大気開放される通気口1591〜1594と、通気口1591〜1594と各容器(151,152,153,156)を接続する通気用流路1581〜1584を備えている。
【0020】
溶液用流路1571〜1574、通気口1591〜1594及び通気用流路1581〜1584は、以下の説明では、纏めて表記する場合を除いて、連結する容器の名称から、検体容器−全微生物染色容器間流路1571、全微生物染色容器−死微生物染色容器間流路1572、死微生物染色容器−微生物検出用流路間流路1573、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574、検体容器通気口1591、全微生物染色容器通気口1592、死微生物染色容器通気口1593、検出液廃棄容器通気口1594、検体容器通気流路1581、全微生物染色容器通気流路1582、死微生物染色容器通気流路1583、検出液廃棄容器通気流路1584とする。
【0021】
また、検体容器−全微生物染色液容器間流路1571の検体容器151側には、検体中に含まれる食品残渣を取り除くためのフィルタである食品残渣除去部160を備えている。
【0022】
検体容器151と、食品残渣除去部160と、全微生物染色容器152と、死微生物染色容器153と、微生物検出用流路173と、検出液廃棄容器156は、溶液用流路1571〜1574により直列に連結されている。
【0023】
微生物検査チップの構成例としては、例えば、特許文献2等に記載されているように、一つの微生物染色液容器に複数の試薬を保持するようにしても良い。即ち、個別に染色を行うことが望ましいが、全微生物用染色液保持担体1521と死微生物用染色液保持担体1531を一つの微生物染色液容器内に備えるようにしても良い。
【0024】
この明細書においては、検体液の流れに沿って検体容器151の側を上流側、微生物検出用流路173の側を下流側と定義する。本実施例では、全微生物染色容器、死全微生物染色容器の順としているが、死微生物染色容器を先にしても良い。但し、全微生物染色容器、死全微生物染色容器の順と方が望ましい。
【0025】
溶液用流路1571〜1574の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mm、通気用流路1581〜1584の深さ及び流路幅は例えば1mm〜5mmの範囲で形成される。
【0026】
全微生物用染色液保持担体1521および死微生物用染色液保持担体1531は、それぞれ、全微生物染色容器通気流路1582、死微生物染色容器通気流路1583を経由して全微生物染色容器152、死微生物染色容器153内に入れることができる。また、全微生物用染色液保持担体1521および死微生物用染色液保持担体1531は、それぞれ、全微生物染色容器−死微生物染色容器間流路1572、死微生物染色容器―微生物検出用流路間流路1573に入らない大きさで、体積0.1mm〜125mmの範囲で形成される。
【0027】
検体容器151の体積は、検体1511の体積より大きい。全微生物染色容器152の体積は、検体1511と全微生物用染色液保持担体1521の合計体積より大きい。また、検体容器−全微生物染色容器間流路1571の最高点は、検体容器151中の検体1511の水位より高くなるように形成されている。これと同様に、全微生物染色容器−死微生物染色容器間流路1572の最高点は、全微生物染色容器152の検体1511と全微生物用染色液保持担体1521の混合液の水位より高くなるように形成され、死微生物染色容器―微生物検出用流路間流路1573の最高点は、死微生物染色容器153の検体1511と全微生物用染色液保持担体1521、死微生物用染色液保持担体1531の混合液の水位より高くなるようにしている。
【0028】
図2は図1AA’における微生物検査チップ10の断面図である。微生物検査チップ10は、大小の凹凸を備えたチップ本体部101と板状のチップカバー部102を貼り合わせた構造である。全微生物染色容器152は内部に全微生物用染色液保持担体1521を備えている。溶液用流路1572の断面積は全微生物用染色液保持担体1521の断面積より小さいため全微生物用染色液保持担体1521は全微生物染色容器152内に留まる。全微生物用染色液を保持した全微生物用染色液保持担体1521は、通気口1592から通気用流路1582を経由して全微生物染色容器152に挿入することができる。
【0029】
微生物検査チップ10は、保管時や測定時に全微生物用染色液1522や死微生物用染色液を外部の光から保護するため、光透過率が1%未満であることが好ましく、さらには微生物検査チップ10の色は黒が好ましい。
【0030】
全微生物用染色液保持担体1521と死微生物用染色液保持担体1531は、それぞれ、一定量の全微生物用染色液1522と死微生物用染色液を保持している。測定に必要な液量に相当する数の全微生物用染色液保持担体1521と死微生物用染色液保持担体1531が微生物検査チップ10内に前もって封入されている。全微生物用染色液保持担体1521と死微生物用染色液保持担体1531は、親水性多孔質で構成されており、それぞれの一部に全微生物用染色液1522と死微生物用染色液1532を保持している。
【0031】
また担体(全微生物用染色液保持担体1521と死微生物用染色液保持担体1531を含む)は、空孔率が80%以上、内部の孔がつながっている連続気孔であることが特徴で、平均孔径は0.1mm〜2mmのときに染色液の保持と染色液の放出のバランスがいい。
【0032】
親水性多孔質の材料としてはポリビニルアルコール、親水性ポリウレタンなどの親水性樹脂を材料とした多孔質材、金属を材料とした多孔質材、金属またはセラミクスまたは樹脂の粉体を加熱して固めた焼結体、ガラス繊維を編んだガラスウールがある。これらの材質の水の接触角は60゜以下になる。また、水との接触角が70゜以上の疎水性多孔質表面を糖鎖コート、シランコート、ゾルゲル法などの親水性処理を施すことによって水との接触角は60゜以下となり、親水性多孔質として使用することができる。このときの材質には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンを材料とした多孔質材がある。
【0033】
微生物検査チップ10の材質には、担体の材料より表面エネルギーが小さく濡れ性が悪いものを使用する。例えば疎水性の樹脂が好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイト、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリメタクリル酸メチルエステル等の疎水性の樹脂の射出成型で形成されることが好ましい。ここでの疎水性とは、水の接触角が70゜以上になるものをいう。微生物検査チップ10の材質として、光透過率の観点で金属が優れているが、表面で反射した励起光が迷光の要因になるほか、金属表面は親水性のため担体から染色液が漏れやすくなるため本発明の微生物検査チップには余り適さない。
【0034】
検体1511は検査前に通気口1591から検体容器151に注入する。ここで使用した検体1511は、検査する食品に対し質量比10倍の生理食塩水を加え、ストマッキング処理を行った後、終濃度が10%になるようグリセリンを追加したものである。
【0035】
全微生物染色液1522には、例えば全微生物用シアニン系蛍光色素(0.1mM〜10mM)、LDS751(0.1mg/ml〜20mg/ml)、DAPI(4'、6−ヂアミジン−2'−フェニルインドール)(0.1mg/ml〜20mg/ml)、HOECHST33258(0.1mg/ml〜20mg/ml)、HOECHST34580(0.1mg/ml〜20mg/ml)があり、死微生物染色液1532には、例えば死微生物用シアニン系蛍光色素(終濃度:0.01mM〜10mM)、PI(プロピディウムイオダイド)(0.1mg/ml〜20mg/ml)、EB(エチジウムイオダイド)(0.1mg/ml〜20mg/ml)がある。溶媒にはDMSO(ジメチルスルオキシド)、エタノール類、水などがあるが、蛍光色素の分解を抑制する効果や氷点下で固体になる性質があることから保管性に優れたDMSOが好ましい。
【0036】
染色液を保持した担体を微生物検査チップの容器に入れる場合、担体には以下の機能を備えていることが重要となる。
【0037】
一つめは、担体と検体の混合直前まで、担体は試薬を保持していること、
二つめは、担体と検体の混合後は、担体は速やかに試薬を検体中に溶出すること、
三つめは、一定量の試薬の分注が容易であることである。
【0038】
即ち、一つ目と二つ目の機能について言えば、全微生物用染色液保持担体1521は、全微生物染色容器152において、検体1511との混合前は全微生物染色液1522を保持する機能と、検体1511との混合後は速やかに全微生物染色液1522を検体1511中に溶出する機能が必要になる。本実施の形態では染色液保持担体には親水性多孔質の物質を使用し、微生物検査チップ10には疎水性の樹脂を使用することで相反する二つの機能を成立させている。その原理を検体1511と染色液保持担体の混合の前後に分け説明する。以下、全微生物染色液保持担体1521の機能説明を示すが、死微生物染色液保持担体1531も同様の機能を有する。尚、三つめの機能については後述する。
(1)混合前
検体1511と全微生物染色液保持担体1521の混合前は、全微生物染色液1522は全微生物染色液保持担体1521の孔の中に保持されている。このとき全微生物染色液保持担体1521の一部は微生物検査チップ10の全微生物染色容器152の壁面に接している。表面エネルギーが大きい表面ほど親水性で、表面エネルギーが小さい表面ほど疎水性になる。全微生物染色液1522は全微生物染色液保持担体1521から漏れだすより、担体の孔の中に保持されているほうがエネルギー的に安定(得をする)ため、全微生物染色液1522は全微生物染色液保持担体1521の内部に留まる。
(2)混合後
検体1511と全微生物染色液保持担体1521の混合後は、全微生物染色液保持担体1521は検体1511に包まれた状態になる。検体1511は水を主成分とする液体であるため表面エネルギーが非常に大きい。全微生物染色液1522は全微生物染色液保持担体152の孔の中に留まるより検体液1511に溶出したほうがエネルギー的に安定するため、全微生物染色液1522は全微生物染色液保持担体1521から検体1511に溶出する。
【0039】
また、全微生物染色液保持担体1521の孔の大きさが小さいほど、全微生物染色液1522を保持する力が大きくなるため、孔の大きさを調整することで全微生物染色液保持担体1521の保持性と溶出性のバランスを調整することができる。
【0040】
なお、多孔質物質などに試薬を保持させることは、微生物検査装置以外の分野ではあり得るが、試薬は一般的に固体状のものであり、本発明のような微生物検査装置における液体状の試薬の取り扱いに関する課題とは関係がないものである。また、担体に液体を保持させることも、微生物検査装置以外の分野ではあり得るが、一般的に担体から徐々に液体物質を放出することが目的であり、本発明のように、検体と混合した際に速やかに染色液を放出し混合させるというものではなく、本発明とは技術思想が異なる技術である。
(B)微生物検査装置の全体構成例
図3に、本発明の実施の形態に係る微生物検査装置1の構成図を示す。微生物検査装置1は、微生物検査チップ10、検出装置11、圧力供給装置14、システム装置18、出力装置19、X−Y可動ステージ125から構成されている。
【0041】
微生物検査チップ10は、上述したように検体や試薬を内部に保持し、微生物計測に必要な工程を行うための機構を内部に備えている。X−Y可動ステージ125は、微生物検査チップ10を保持し、微生物検査チップ10の位置を調整する。微生物検査チップ10は、基本的には一度限りの使用であり、検査毎に、X−Y可動ステージ125に装着して位置調整が行われ、検査終了後にX−Y可動ステージ125から取り外される。検出装置11は微生物検査チップ10内の微生物に励起光を照射し、微生物からの散乱光及び蛍光を電気信号に変換する。圧力供給装置14は微生物計測に必要な工程を行うために、微生物検査チップ10と連結したチップ連結管1441〜1444を介して、微生物検査チップ10内の検体や試薬の搬送を制御する。システム装置(制御装置)18は微生物検査装置1の各構成要素(検出装置11、圧力供給装置14、出力装置19、X−Y可動ステージ125)に接続し、圧力供給装置14に対する制御信号の出力と、検出装置11から入力される電気信号に対する信号処理を実行する。出力装置19はシステム装置18における電気信号の処理により得られた計測結果を表示する。
【0042】
圧力供給装置14の詳細を説明する。圧力供給装置14は、圧力調節装置付のボンベ141を有する。ボンベ141には高圧の空気、不活性気体等が封入されている。ボンベ141は、チップ連結管1441〜1444によって微生物検査チップ10の各通気口1591〜1594(図1)と接続されている。チップ連結管1441〜1444には、バルブ1421〜1424がそれぞれ設けられている。バルブ1421〜1424を開閉することにより、微生物検査チップ10内の各容器に所定の圧力の気体を供給し、又は、微生物検査チップ10内の各容器を大気開放する。この圧力の制御により、微生物検査チップ10内における検体や試薬の搬送を実現する。この圧力の制御による、微生物検査チップ10内における検体や試薬の搬送は、特許文献1に詳述されている。
【0043】
検出装置11の詳細を説明する。検出装置11は、励起光源111と、散乱光検出部と、蛍光検出部とで構成される。このうち、散乱光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの散乱光124を検出するための散乱光検出器123と、励起光源111からの励起光113が散乱光検出器123に直接入射することを防ぐための遮光板122とから構成される。一方、蛍光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの蛍光121を集光し、平行光にする対物レンズ114と、励起光113を微生物検出部17の方向に反射する一方で蛍光121は透過するダイクロイックミラー112と、蛍光121を通過するバンドパスフィルタ117と、平行光を集光させるための集光レンズ118と、迷光をカットするための空間フィルタとして用いるピンホール119と、バンドパスフィルタ117を通過した光を検出する光検出器120とで構成される。なお、照射部及び検出部は、互いの焦点が重なるように配置されている。
【0044】
尚、図3では一つの光検出器120を図示しているが、複数の試薬(全微生物染色液と死微生物染色液)を用いる場合には、それぞれの染色液からの蛍光のピーク波長に対応して光検出器等が設けられる。すなわち、蛍光分離用ダイクロイックミラーや、短波長バンドパスフィルタ、長波長バンドパスフィルタ、短波長用光検出器、長波長用光検出器等が設けられる。これらの構成は、例えば、特許文献1、特許文献2などに詳述されている。
(C)測定方法(微生物検査方法)
X−Y可動ステージ(ホルダー)125への微生物検査チップ10の装着前に、通気口1591から検体容器151に検体1511を注入する。次に、微生物検査チップ10を微生物検査装置のX−Y可動ステージ125に装着する。測定を開始する前(検出液を微生物検出用流路に流す前)に微生物検出用流路173を励起光の焦点の位置に調整する。この位置合わせ工程について説明する。検出装置11の励起光源111から出力された励起光113を微生物検出用流路173に照射し、微生物検出用流路173から生じる散乱光の光量と微生物検出部17から生じる蛍光の光量をそれぞれ検出することにより、X−Yステージ125の可動位置と各光量との関係をプロファイルとして取得する。また、検出装置11は、取得されたプロファイルに基づいてX−Y可動ステージ125を可動制御し、微生物検査チップ10(具体的には、微生物検出用流路173)を検出に適した位置に合わせる。即ち、散乱光検出部で検出される散乱光の光量が最大となる微生物検出用流路の位置を励起光の光軸と一致させ、蛍光検出部で検出される蛍光量が最大となる微生物検出用流路の位置に励起光の焦点を一致させる。この位置合わせについては特開2010−256278号公報に詳述されている。位置合わせについては、他の方法、例えば、特開2009−281753号公報に記載の方法を用いても良い。この場合、微生物検査チップに位置合わせ用試薬等の保持容器や溶液用流路、通気用流路等を設ける。また、この位置合わせ工程は、後述の前処理工程と並行して行うことができる。
【0045】
次に、微生物検査チップ10を用いた生菌数測定の手順を、各工程における各液体の移動に沿って説明する。前処理工程では、まず、検体1511を全微生物染色容器152に移動させる。この前処理工程では、通気口1591を介して検体容器151に対して圧力供給装置14(図3)からの圧力を加える。これにより、検体容器151内の気圧を上げる。同時に、全微生物染色容器通気口1592を介して全微生物染色容器152の内圧を大気圧に開放する。気圧差により、検体1511は、全微生物染色容器152に入り、全微生物染色液保持担体1521と混合される。なお、検体1511が全微生物染色容器152へ流動する際に、検体1511中の食品残渣は、食品残渣除去部160により検体1511から取り除かれる。
【0046】
混合には、バブリングを使用する。バブリングは通気口1593に対して圧力供給装置14からの圧力を加え、検体容器151の気圧より低い範囲まで死微生物染色容器153の気圧を上げる。同時に通気口1591と通気口1592を介し、検体容器151と全微生物染色容器152を大気開放する。空気は死微生物染色容器153から全微生物染色容器−死微生物染色容器間流路1572を経て全微生物染色容器152に流入する。空気は気泡となり、検体1511の下から上まで上昇する際に、全微生物染色液保持担体1521を検体1511内で攪拌し、全微生物染色液1522の全微生物染色液保持担体1521から検体1511への溶出を促進する。さらに撹拌することで溶出した全微生物染色液1522と検体1511の混合を促進する。その後一定時間(例えば30分〜1時間程度)静置することで検体1511中の生微生物および死微生物は全微生物用染色液により染色される。
【0047】
全微生物染色液保持担体を含む検体の水位は、全微生物染色容器152と死微生物染色容器153が連結する全微生物染色容器−死微生物染色容器間流路1572の最高点を越えず、さらに全微生物染色容器152中に入っている空気は、全微生物染色容器通気口1592を介して外部に放出される。全微生物染色容器152の気圧は大気圧と等しいため、検体1511は死微生物染色容器153に押し出されず、検体を反応に必要な時間中、全微生物染色液容器152に保持することができる。
【0048】
このとき、死微生物染色容器153への流入を防ぐ目的で、通気口1593に対して圧力供給装置14からの圧力を加え、検体容器151の気圧より低い範囲まで死微生物染色容器153の気圧を上げても良い。
【0049】
なお、染色中は、微生物検査チップ10の温度を一定に保つことにより、温度変化による染色の影響を小さくすることが望ましい。
【0050】
続いて、通気口1592を介して全微生物染色容器152に対して圧力供給装置14からの圧力を加える。これにより、全微生物染色容器152内の気圧を上げる。同時に、死微生物染色容器通気口1593を介して死微生物染色容器153の内圧を大気圧に開放する。気圧差により、全微生物染色容器152内の検体1511と全微生物染色液との混合液は、死微生物染色容器153に入り、死微生物染色液保持担体1531と混合される。混合には先と同様にバブリングを使用する。バブリングは通気口1594に対して圧力供給装置14からの圧力を加え、検体容器151の気圧より低い範囲まで検出液廃棄容器156の気圧を上げる。同時に通気口1591、通気口1592、通気孔1593を介し、検体容器151、全微生物染色容器152、死微生物染色容器153を大気開放する。空気は検出液廃棄容器156から微生物検出用流路173を経て死微生物染色容器153に流入する。空気は気泡となり、検体1511と全微生物染色液との混合液の下から上まで上昇する際に、死微生物染色液保持担体1531を混合液内で攪拌し、死微生物染色液1532の死微生物染色液保持担体1531から検体1511を含む混合液への溶出を促進する。さらに撹拌することで溶出した死微生物染色液1532と検体1511の混合を促進する。その後一定時間(例えば30分〜1時間程度)静置することで検体1511中の死微生物は死微生物用染色液1533により染色される。
【0051】
以上の前処理工程が終了すると、検体1511と全微生物染色液1532と死微生物染色液1532の混合液を微生物検出用流路173に移動させ、検体中の生菌を蛍光フローサイトメトリー法により計測する。この工程では、通気口1593を介し、圧力供給装置14からの圧力を加え、死微生物染色容器153内の気圧をあげる。同時に通気口1594を介し、検出液廃棄容器156を大気開放する。その他の通気口1591、1592は閉じる。気圧差により、混合液は、死微生物染色容器153から微生物検出用流路173を経由し検出液廃棄容器156まで流動する。混合液が微生物検出用流路173を流れる際に励起光113が照射されると、微生物を染色した色素からの蛍光と、微生物による散乱光が生じる。検出装置11は、生微生物については全微生物染色液の蛍光のみを検出し、死微生物については全微生物染色液と死微生物染色液の蛍光を検出する。このため、生微生物と死微生物の判別が可能になるまた、散乱光の光量は微生物の大きさにより変わるため、微生物の大きさの判別も可能になる。
(D)染色液保持担体の作製方法
染色液保持担体の作製方法の一実施例を説明する。染色液保持担体の作製は以下の手順で行う。以下、全微生物染色液保持担体1521の作製方法を示すが、死微生物染色液保持担体1531でも同様の手順で作製する。
【0052】
図4は、全微生物染色液保持担体1521に全微生物染色液を分注しているときの図である。トレイ200に配置された全微生物染色液保持担体1521に自動分注機20で全微生物用染色液を一定量分注する。自動分注機20は市販の製品を用いる。トレイ200上の全微生物染色液保持担体1521に全微生物染色液を分注したのち、微生物検査チップ10の全微生物染色容器152に挿入するまで、トレイ200を冷凍保管する。この工程は、光による染色液の劣化を防ぐため、暗室で行う。
【0053】
この工程での課題として、自動分注機20で全微生物染色液保持担体1521に全微生物染色液を分注する工程にて、全微生物染色液保持担体1521が自動分注機20の針の先に吸着し、吸着以降の分注ができなくなることがある。
【0054】
吸着を防止するために図5、図6記載のトレイ200を使用する。図5は、トレイ200の概略構造図、図6は図5AA’におけるトレイ200の断面図である。
【0055】
トレイ200にはすり鉢状の穴が設けられ、すり鉢状の穴の中心に全微生物染色液保持担体1521が入るための穴がある。すり鉢状の穴と穴の間には両面テープなどの接着材202があり、接着材202により、フィルム201はトレイ200上に固定される。図6のように、全微生物染色液保持担体1521の上面はフィルム201より下になり、両者は接しない。
【0056】
図7は、フィルムの効果を説明するための図である。分注時は自動分注機の針204が降下しフィルム201を貫通する。貫通後、全微生物染色液保持担体1521に全微生物染色液を一定量分注する。分注終了後に針は上昇し、仮に全微生物染色液保持担体1521が自動分注機の針204に吸着し針とともに上昇してもフィルムで止まるため、残りの分注に支障は生じない。フィルムの材質はポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、アイオノマー、ポリカーボネイト、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、エチレン―ビニルアルコール共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ナイロンがある。厚さは針が貫通すればよいが、例えば0.01mmから1mmの範囲である。
【0057】
図8は、全微生物染色液保持担体1521を微生物検査チップ10の全微生物染色容器152に実装するときの工程の一例を示す。先の実施例では、全微生物染色液保持担体1521を通気口1592から挿入したが、図8のようにチップカバー部102の一部に挿入用の穴を設け、その穴から全微生物染色液保持担体1521を挿入してもいい。挿入後カバー1021により穴を塞ぐ。このような実装方法は、染色液保持担体を用いることによって可能となる。
【0058】
全微生物用染色液保持担体1521や死微生物用染色液保持担体1531を全微生物染色容器通気流路1582や死微生物染色容器通気流路1583を経由して全微生物染色容器152や死微生物染色容器153内に入れる実装方法、また、図8に示す染色液保持担体の実装方法によれば、染色液を、直接、染色容器に注入する場合と比較して、容易にかつ確実に所定量の染色液を染色容器に実装することができる。即ち、染色液は検体1mlあたり数μlと非常に微量であることから、染色液を、直接、染色容器に所定量、正確に注入することは大変な作業となる。本実施例では市販の分注機を用いて容易にかつ正確に担体に分注することができ、染色容器には正確な分注がなされた染色液保持担体を実装するようにしているので、染色液が極微量であっても正確な分注が可能であり、また、作業も容易である。
【0059】
図9はチューブ形態の全微生物染色液保持担体1521の概略構造図で、図10はその作製手順を示す図である。全微生物染色液保持担体1521は中空構造のチューブ状でその内部に全微生物染色液1522を保持する。親水性チューブの材料としてはポリビニルアルコール、親水性ポリウレタンなどの親水性樹脂を材料としたチューブ、金属を材料としたチューブ、ガラス管がある。これらの材質の水の接触角は60゜以下になる。また、水との接触角が70゜以上の疎水性多孔質表面を糖鎖コート、シランコート、ゾルゲル法などの親水性処理を施すことによって水との接触角は60゜以下となり、親水性チューブとして使用することができる。このときの材質には、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンを材料としたチューブがある。チューブの内径は0.1mmから2mmで形成される。
【0060】
図10の手順でチューブ形態の全微生物染色液保持担体1521を作製する。始めにチューブ201に全微生物染色液1522を注入する。注入後チューブを冷凍し全微生物染色液1522を凝固させる。凝固させた状態で市販のチューブカッターなどを使用することにより、チューブを一定長に切断することで全微生物染色液保持担体1521を作製する。液量はチューブの内断面積と切断長の積となる。
(E)微生物検査チップの保管方法
微生物検査チップ10への全微生物染色液保持担体1521および死微生物染色液保持担体1531の挿入および微生物検査チップ10の保管は以下の手順で行う。
【0061】
(1)全微生物染色液保持担体1521および死微生物染色液保持担体1531の挿入に先立ち、微生物検査チップ10を殺菌する。殺菌はガンマ線照射などの光による殺菌、高圧滅菌による加熱殺菌、オゾンガスなどによる反応ガスによる殺菌方法がある。
【0062】
(2)全微生物染色液が凍った状態のまま、全微生物染色液保持担体1521を微生物検査チップ10の全微生物染色容器に挿入する。同様の手順で死微生物染色液保持担体1531を微生物検査チップ10の全微生物染色容器153に挿入する。挿入後に全微生物染色液保持担体1521に保持された全微生物染色液が溶解しないよう、微生物検査チップ10は前もって氷点下(例えばマイナス20℃程度)まで冷却する。
【0063】
(3)微生物検査チップ10を遮光および断気効果の高いアルミなどの袋にいれる。このとき、染色液の劣化を促進させる酸素や水を除去させる目的で、窒素ガス、脱酸素剤、脱湿気剤をカセットとともに袋に封入しても良い。また、染色液の光による劣化を防ぐため(E)の工程は暗室で行う。
【符号の説明】
【0064】
1…微生物検査装置、10…微生物検査チップ、11…検出装置、14…圧力供給装置、17…微生物検出部、18…システム装置、19…出力装置、111…励起光源、113…励起光、114…対物レンズ、119…ピンホール、121…蛍光、124…散乱光、125…X−Y可動ステージ、151…検体容器、152…全微生物染色容器、153…死微生物染色容器、156…検出液廃棄容器、161…検出用窓部、173…微生物検出用流路、1521…全微生物染色液保持担体、1522…死微生物染色液保持担体、1571〜1573…溶液用流路、1581〜1583…通気用流路、1591〜1593…通気口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体液が保持される検体容器、染色液を保持している親水性の担体を収容した染色容器、微生物検出用流路、前記検体容器と前記染色容器及び前記染色容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ接続する流路を備えた微生物検査チップと、
前記微生物検査チップが装着されるホルダーと、
前記微生物検査チップと接続され、前記検体液を前記検体容器から前記染色容器に搬送し、前記検体液と前記染色液からなる混合液を前記染色容器から前記微生物検出用流路に搬送する圧力を供給する圧力供給装置と、
前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源、前記微生物検出用流路を流れる前記検出液からの蛍光を検出して電気信号に変換する光検出器を有する検出装置と、
前記圧力供給装置及び前記検出装置と接続し、前記圧力供給装置に制御信号の出力と前記検出装置からの電気信号を処理する制御装置とを有することを特徴とする微生物検査装置。
【請求項2】
染色液と混合した検体液に励起光を照射して検体液に含まれる微生物を電気信号として検出する微生物検査装置に用いられる微生物検査チップであって、
検体液が保持される検体容器と、
染色液を保持している親水性の担体を収容した染色容器と、
前記励起光が照射される微生物検出用流路と、
前記検体容器と前記染色容器及び前記染色容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ接続する流路とを備えたことを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項3】
請求項2において、前記担体は前記染色容器より濡れ性が高いことを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項4】
請求項3において、前記染色容器は疎水性表面を持つ容器であることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項5】
請求項4において、前記染色容器は、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイト、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、又は、ポリメタクリル酸メチルエステルにより形成されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項6】
請求項2において、前記染色容器は、染色容器外から染色容器内への光の透過率が1%以下であることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項7】
請求項6において、前記染色容器の色は黒であることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項8】
請求項2において、前記担体は内部に複数の孔を備えた多孔質担体であり、その孔は連続気孔であることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項9】
請求項8において、前記担体は空孔率が80%以上であることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項10】
請求項2において、前記担体は、ポリビニルアルコール若しくは親水性ポリウレタンを材料とした樹脂多孔質、金属を材料とした多孔質、金属、セラミクス若しくは樹脂の粉体を加熱して固めた焼結体、ガラス繊維を編んだガラスウール、又は、糖鎖コート、シランコート、若しくはゾルゲル法により親水コート処理されたポリ塩化ビニル若しくはポリエチレンを材料とした樹脂多孔質であることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項11】
請求項2において、前記担体は、内部に貫通した孔を備えたチューブであり、前記孔に前記染色液を保持することを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項12】
請求項11において、前記チューブは、ポリビニルアルコール若しくは親水性ポリウレタンを材料とした樹脂チューブ、金属を材料としたチューブ、ガラス管、又は、糖鎖コート、シランコート若しくはゾルゲル法により親水コート処理されたポリ塩化ビニル若しくはポリエチレンを材料としたチューブであることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項13】
請求項2において、前記微生物検査チップは不活性ガス、脱酸素剤及び脱湿気剤のうち少なくとも一つとともに遮光性の袋に封入され保管されていることを特徴とする微生物検査チップ。
【請求項14】
請求項8に記載の微生物検査チップに用いる染色液を保持した担体を作製する微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法であって、
複数の穴を上面に備えたトレイに前記親水性の多孔質担体を配置し、
前記多孔質担体に分注機を用いて前記染色容器に収容される所定量の染色液を分注することを特徴とする微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法。
【請求項15】
請求項14において、前記染色液を分注したトレイを冷凍して保管することを特徴とする微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法。
【請求項16】
請求項14に記載の微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法に用いるトレイであって、
複数の穴を上面に備えたトレイ本体と、前記トレイ本体上面の穴と穴の間に設けた粘着層と、前記多孔質担体を前記トレイ本体に配置後に前記トレイ本体を覆うフィルムであって、前記粘着層によって前記トレイ本体に固定されるフィルムとから構成されること特徴とする微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法に用いるトレイ。
【請求項17】
請求項11に記載の微生物検査チップに用いる染色液を保持した担体を作製する微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法であって、
前記染色液をチューブに注入し、
前記染色液を注入したチューブを冷凍し、
前記冷凍したチューブを所定長に切断することにより前記染色容器に収容される所定量の染色液を保持した担体を作製することを特徴とする微生物検査チップ用の染色液保持担体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−47619(P2013−47619A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185578(P2011−185578)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】