説明

微生物濃縮プロセス及びその際に使用するための濃縮剤

検出又は検定のために微生物を捕捉又は濃縮するプロセスは、(a)吸着緩衝液改質無機濃縮剤であって、(1)少なくとも1つの無機濃縮剤を少なくとも1つのカチオン含有塩溶液と接触させて、無機濃縮剤の少なくとも一部分を湿らせることと、(2)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を乾燥させることと、を含むプロセスによって調製される、吸着緩衝液改質無機濃縮剤を準備することと、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を準備することと、(c)少なくとも1つの微生物株の少なくとも一部分が、吸着緩衝液改質無機濃縮剤に結合されるか、又はそれによって捕捉されるように、吸着緩衝液改質無機濃縮剤を試料と接触させることと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2009年12月22日に出願された、米国仮出願第61/289,213号の優先権を主張し、その内容を本明細書に参考として組み込む。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、微生物が検出又は検査に対して生存可能な状態を保つように、微生物を捕捉又は濃縮するための方法に関するものである。他の態様において、本発明は、このような濃縮プロセスを実行する際に使用するための濃縮剤を調製する方法(並びに、結果として得られる濃縮剤及び結果として得られる濃縮剤を含む診断キット)にもまた関するものである。
【背景技術】
【0003】
微生物汚染により生じる食品媒介疾患及び院内感染は、世界中の無数の場所で懸案となっている。したがって、存在する微生物の素性及び/又は量を決定するために、さまざまな医療、食品、環境、又はその他の試料中における、細菌又は他の微生物の存在を検定することがしばしば望ましく、あるいは必要である。
【0004】
例えば、細菌DNA又は細菌RNAを検定して、たとえ他の細菌種の存在においても特定の細菌種の存在又は不在を評価することができる。しかしながら、特定の細菌の存在を検出する能力は、少なくとも部分的に、分析される試料中の細菌の濃度に依存する。細菌試料は、検出に適切な濃度の確保に試料中の細菌の数を増加させるために播種され又は培養されるが、この培養工程はしばしば時間がかかり、評価結果を顕著に遅らせることがある。
【0005】
試料中の細菌を濃縮することで、培養時間を短縮することができ、培養工程の必要性を排除することすら可能になる。このように、菌株に特異的な抗体を使用することによって(例えば、抗体をコーティングした磁性粒子又は非磁性粒子の形態で)、特定の細菌株を分離する(及びこれにより濃縮する)ための方法が開発されている。しかしながらこのような方法は高価であり、少なくとも一部の診断用途に望まれるよりも依然としてやや遅い傾向がある。
【0006】
菌株特異的でない濃縮方法も使用されている(例えば、試料中に存在する微生物のより総合的な評価を得るため)。混合した微生物群を濃縮した後、所望ならば、菌株特異的なプローブを用いることによって特定の菌株の存在を判定することができる。
【0007】
微生物の非特異的な濃縮又は捕捉は、炭水化物とレクチンタンパク質との相互作用に基づいた方法によって達成されている。これまでに非特異的捕捉装置としてキトサンをコーティングした支持体が使用され、微生物の栄養素の役目を果たす物質(例えば、炭水化物、ビタミン、鉄キレート化合物、及びシデロホア)が、微生物の非特異的捕捉を提供するための配位子として有用であることも記述されてきた。
【0008】
さまざまな無機材料(例えばヒドロキシアパタイト及び金属水酸化物)が、細菌を非特異的に結合し濃縮するために使用されてきた。非特異的な捕捉のためには、無機結合剤の使用及び/又は不使用の、物理的な濃縮方法(例えば濾過、クロマトグラフィー、遠心分離、及び重力沈降)も利用されている。このような非特異的な濃縮方法は、速度、費用(少なくとも一部のものは高価な装置、材料、及び/又は訓練を受けた技術者が必要になる)、試料要件(例えば、試料の性質及び/又は量の制限)、空間的要件、使用の容易さ(少なくとも一部のものは複雑な複数の工程のプロセスを必要とする)、現場使用の適合性、及び/又は高価さの点において様々に異なっている。
【0009】
非特異的な濃縮方法の少なくとも幾つか(例えば、無機結合剤を利用する方法の少なくとも幾つか)は、微生物結合を強化するための添加剤としてのカチオン含有吸着緩衝液の使用を伴っている。このような緩衝液は、典型的に、液体形態で(例えば、塩水溶液の形態で)使用されている。このような緩衝液の現場での使用は、菌液の移送及び取扱い、又は滅菌状態下における緩衝液の乾燥塩からの現場での再構成のどちらかを必要とするため、吸着緩衝液の現場での使用に対する好適性は、幾らか制限されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
このように、本発明者らは、病原微生物を迅速に検出するための方法に対する切迫したニーズがあると認識している。このようなプロセスは、好ましくは迅速なだけでなく、コストが低く、簡単であり(複雑な機器又は手順の必要がない)、及び/又は様々な条件下で有効である(例えば、様々なタイプの試料マトリックスで使用でき、細菌の量が変わっても、及び試料の量が変わっても、使用できる)。
【0011】
簡単に言えば、1つの態様では、本発明は、微生物が1つ以上の株の検出又は検定の目的で生存可能な状態を保つように、試料中に存在する微生物株(例えば細菌、真菌、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、及び細菌内生胞子)を、非特異的に濃縮する方法を提供する。本方法は、(a)吸着緩衝液改質無機濃縮剤であって、(1)少なくとも1つの無機濃縮剤(好ましくは、粒子無機濃縮剤)を少なくとも1つのカチオン含有塩溶液(好ましくは、水性)と接触させて(好ましくは洗浄することによって)、無機濃縮剤の少なくとも一部分を湿らせることと、(2)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を(好ましくは、25℃より高い温度に加熱することによって)乾燥させることと、を含むプロセスによって調製される、吸着緩衝液改質無機濃縮剤を準備することと、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を(好ましくは流体の形態で)準備することと、(c)吸着緩衝液改質無機濃縮剤を前記試料と(好ましくは、混合することによって)接触させることであって、それにより少なくとも1つの微生物株の少なくとも一部分が、吸着緩衝液改質無機濃縮剤に結合されるか、又はそれによって捕捉されることと、を含む。カチオン含有塩溶液は、好ましくは、少なくとも1つの多価カチオン(より好ましくは、少なくとも1つの二価カチオン、最も好ましくは、二価カルシウムカチオン、二価マグネシウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの二価カチオン)を含む。
【0012】
好ましくは、濃縮プロセスは、少なくとも1つの結合された微生物株の存在を検出すること(例えば、培養による方法、顕微鏡/画像手法、遺伝子学的方法、生物発光による方法、又は免疫学的検出方法)、及び/又は結果として得られた微生物結合された濃縮剤を凝離すること(好ましくは、重力沈殿により)を更に含む。このプロセスは所望により、得られた凝離濃縮剤を試料から分離することを更に含む。
【0013】
本発明の濃縮プロセスは、特定の微生物株を標的とするものではない。むしろ、比較的安価な非特異的な無機濃縮剤の捕捉効率又は結合効率は、驚くべきことに、薬剤を吸着緩衝液と接触させ、次いで乾燥させる、簡単な表面処理方法によって強化され得ることが発見された。結果として得られる吸着緩衝液改質無機濃縮剤は、さまざまな微生物を捕捉することにおいて、それらの未処理の対応物よりも少なくとも幾らかは効率的であり、調製後は、滅菌液緩衝溶液の移送及び/又は取扱いの必要性、あるいは滅菌状態下における緩衝溶液の現場での再構築の必要性なく、現場で(現地で)使用され得る。吸着緩衝液改質無機濃縮剤を使用して、1つ以上の微生物株(好ましくは、1つ以上の細菌株)をより容易、かつ迅速に検定することができるように、試料(例えば、食品試料)中に存在する微生物株を、非株特異的な方法で濃縮することができる。
【0014】
本発明の濃縮プロセスは比較的簡単かつ低コストであり(複雑な装置又は高価な株特異性物質を必要としない)、比較的迅速であり得る(好ましい実施形態は、濃縮剤のない対応する対照試料に比べ、試料中に存在する微生物の少なくとも約70パーセント(より好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を約30分以内に捕捉する)。加えて、この方法は、さまざまな微生物(グラム陽性菌とグラム陰性菌の両方などの病原体を含む)及びさまざまな試料(さまざまな試料マトリックスを含み、しかも少なくとも一部の従来技術とは違って、微生物含有量が少ない試料及び/又は大量の試料であっても)に有効であり得る。よって、本発明の方法の少なくともいくつかの実施形態は、さまざまな状況下で病原微生物を迅速に検出するための低コストで単純な方法に対する、上述のような緊迫したニーズに対応することができる。
【0015】
別の態様において、本発明は、(a)吸着緩衝液改質無機濃縮剤であって、少なくとも1つのカチオンを含む少なくとも1つの吸着緩衝液(塩又は塩溶液)を用いて、少なくとも1つのシリコン含有無機濃縮剤を処理して(例えば、物理蒸着(PVD)を含む本明細書に記載の方法を含む、2つの物質の間に接触をもたらす任意のさまざまな既知の方法又は今後開発される方法によって接触させることによって)、X線光電子分光法(XPS)によって判定される、少なくとも1つのカチオンの原子(カチオン原子の合計は、例えば、以下の表4を参照のこと)とシリコンの原子との比率が、対応する未処理のシリコン含有無機濃縮剤の比率よりも大きい(好ましくは少なくとも約50パーセント大きく、より好ましくは少なくとも約75パーセント大きく、更により好ましくは少なくとも約100パーセント大きく、最も好ましくは少なくとも約200パーセント又は300パーセント大きい)表面組成物を有するシリコン含有無機濃縮剤(好ましくは、実質的に乾燥又は無溶媒の形態で)を準備することを含むプロセスによって調製される、吸着緩衝液改質無機濃縮剤を準備することと、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を準備することと、(c)吸着緩衝液改質無機濃縮剤を試料と接触させることであって、それにより少なくとも1つの微生物株の少なくとも一部分が、吸着緩衝液改質無機濃縮剤に結合されるか、又はそれによって捕捉されることと、を含む、好ましい濃縮プロセスを提供する。有用な物理蒸着(PVD)技術は、(例えば、珪藻土上の金属付着に関して)以下に記載されるものを含む。
【0016】
更に他の態様において、本発明は、それぞれの場合において、調製プロセスが微生物含有試料の実質的な非存在下において実行される(つまり、無機濃縮剤と少なくとも1つの微生物株を含む試料を接触させるより前、したがって無機濃縮剤が本質的に少なくとも1つの無機材料からなる)という条件で、吸着緩衝液改質無機濃縮剤が(a)少なくとも1つの無機濃縮剤(好ましくは、微粒子無機濃縮剤)と少なくとも1つのカチオン含有塩溶液(好ましくは、水性)を(好ましくは、洗浄することによって)接触させて、無機濃縮剤の少なくとも一部分を湿らせることと、(b)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を(好ましくは、25℃よりも高い温度に熱することによって)乾燥させることと、を含むプロセスによって調製されるか、あるいは、吸着緩衝液改質無機濃縮剤が、少なくとも1つのカチオンを含む少なくとも1つの吸着緩衝液(塩又は塩溶液)を用いて、少なくとも1つのシリコン含有無機濃縮剤を処理して(例えば、物理蒸着(PVD)を含む本明細書に記載の方法を含む、2つの物質の間に接触をもたらす任意のさまざまな既知の方法又は今後開発される方法によって接触させることによって)、X線光電子分光法(XPS)によって判定される、少なくとも1つのカチオンの原子(カチオン原子の合計は、例えば以下の表4を参照のこと)とシリコンの原子との比率が、対応する未処理のシリコン含有無機濃縮剤の比率よりも大きい(好ましくは少なくとも約50パーセント大きく、より好ましくは少なくとも約75パーセント大きく、更により好ましくは少なくとも約100パーセント大きく、最も好ましくは少なくとも約200パーセント又は300パーセント大きい)表面組成物を有するシリコン含有無機濃縮剤(好ましくは、実質的に乾燥又は無溶媒の形態で)を準備することを含むプロセスによって調製される、本発明の濃縮プロセスを実行する際に使用するための吸着緩衝液改質無機濃縮剤の調製のための2つのプロセス(加えて、それによって調製された改質薬剤及びその改質薬剤を含む診断キット)を提供する。有用な物理蒸着(PVD)技術は、(例えば、珪藻土上の金属付着に関して)以下に記載されるものを含む。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の「発明を実施するための形態」では、種々の組の数値範囲(例えば、特定の部分における炭素原子の数、又は特定の成分の量など)が記載され、各組内では、範囲の任意の下限を範囲の任意の上限と対にすることができる。同様に、このような数値範囲は、範囲内に含まれる全ての数を含むことを意味する(例えば1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
【0019】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同一又は異なる条件下において、他の実施形態が好ましい場合もある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の引用は、他の実施形態が有用でないことを含意するものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0020】
用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が説明文及び特許請求の範囲において現れる場合、限定的な意味を有するものではない。
【0021】
本明細書で使用するとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、同じ意味で使用される。そのため、例えば、「1つの(a)」標的微生物を含有する疑いがある液体試料は、液体試料が「1つ以上の」標的微生物を含み得ることを意味すると解釈することができる。
【0022】
上記「課題を解決するための手段」の節は、全ての実施形態又は本発明の全ての実施を説明しようとするものではない。以下の「発明を実施するための形態」が実施形態をより具体的に例示する。「発明を実施するための形態」にわたり、複数の実施例の一覧を通してガイダンスが提供されており、それら実施例は様々な組合せで用いられ得る。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【0023】
用語の定義
本特許出願で使用される場合:
「濃縮剤」は、微生物を結合する材料又は組成物(好ましくは少なくとも約60パーセント、より好ましくは少なくとも約70パーセント、更により好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセントの微生物捕捉又は結合効率を有する)を意味する。
「培養デバイス」は、細胞分裂を少なくとも1回生じさせ得る条件下において、微生物を増殖させるために使用することができる、装置を意味する(好ましくは培養デバイスは、偶発的汚染の可能性を低減するか最小化するハウジング及び/又は微生物の増殖を支持する栄養素供給源を含む)。
「検出」とは、これによりその微生物が存在すると判定させる、微生物の少なくとも構成要素の同定を意味する。
「一般的検出」とは、標的微生物に由来するDNA又はRNAなどの一般的物質の構成要素の同定を意味する。
「免疫学的検出」とは、標的微生物に由来するタンパク質又はプロテオグリカンなどの抗原性物質の同定を意味する。
「微生物」は、分析又は検出に好適な遺伝物質を有する何らかの細胞又は粒子を意味する(例えば、細菌、酵母、ウイルス、及び細菌内生胞子が挙げられる)。
「微生物株」は、検出方法により識別可能な微生物(例えば、異なる属、属内の異なる種、又は種内の異なる隔離体の微生物)の特定のタイプを意味する。
「試料」は、(例えば分析のために)採取される物質又は材料を意味する。
「試料マトリックス」は、試料の微生物以外の試料の構成成分を意味する。
「標的微生物」とは、検出したい微生物を意味する。
【0024】
無機濃縮剤
全般
本発明のプロセスを実行する際に使用するために好適な濃縮剤は、微生物を結合することができる無機材料又は組成物を含む。好ましくは、無機濃縮剤は、対応する濃縮剤不含の対照試料と比較して、試料中に存在する微生物の少なくとも約60パーセント(より好ましくは少なくとも約70パーセント、更により好ましくは少なくとも約80パーセント、最も好ましくは少なくとも約90パーセント)を捕捉又は結合することができる。
【0025】
好ましい無機材料としては、金属酸化物、金属ケイ酸塩(例えば、ケイ酸マグネシウム)、金属アルミノケイ酸塩、シリカ、金属炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム)、金属リン酸塩(例えば、ヒドロキシアパタイト)、珪藻土、金属酸化物改質珪藻土、表面改質珪藻土等、及びこれらの組み合わせから選択される材料が挙げられる。望まれる場合には、このような無機材料のコーティングを担持する粒子(例えば、無機表面コーティングを持つ磁気コアを備える粒子)が、使用されてもよい。
【0026】
好ましい無機材料には、シリコン含有無機材料(例えば、金属ケイ酸塩、金属アルミノケイ酸塩、シリカ、珪藻土、表面改質珪藻土等、及びこれらの組み合わせ)及びこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましい無機材料には、金属ケイ酸塩、金属アルミノケイ酸塩、シリカ、珪藻土、金属酸化物改質珪藻土、金改質珪藻土、又は白金改質珪藻土、及びこれらの組み合わせが含まれる。金属酸化物改質(好ましくは、二酸化チタン改質、又は酸化第二鉄改質)珪藻土、金属アルミノケイ酸塩、非晶質金属ケイ酸塩(好ましくは非晶質ケイ酸マグネシウム、より好ましくは非晶質の長球化ケイ酸マグネシウム)、及びこれらの組み合わせは、更により好ましい(非晶質金属ケイ酸塩及びこれらの組み合わせがより好ましく、非晶質の長球化ケイ酸マグネシウムが最も好ましい)。
【0027】
好ましくは、無機濃縮剤は、粒子形態であり、より好ましくは微小粒子を含む。好ましくは粒子は約1マイクロメートル(より好ましくは約2マイクロメートル、更により好ましくは約3マイクロメートル、最も好ましくは約4マイクロメートル)〜約100マイクロメートル(より好ましくは約50マイクロメートル、更により好ましくは約25マイクロメートル、最も好ましくは約20マイクロメートル)の範囲の粒径を有し、ここで任意の下限を範囲の任意の上限と組み合わせることができる。
【0028】
上記の濃縮剤を使用した濃縮又は捕捉は一般的に特定の株、種、又は微生物のタイプに対して特異的ではなく、よって、試料内の微生物の全体的な個体群の濃縮を提供する。次に、株特異的精査を伴う任意の既知の光学的検出方法を用いて、捕捉された微生物群の中から、微生物の具体的な株を検出することができる。
【0029】
無機材料は、水系に分散又は懸濁されると、その物質及び水系のpHに特徴的な表面電荷を示す。物質−水の界面の両側の電位は「ゼータ電位」と呼ばれ、電気泳動における移動度から(すなわち、水系中に置かれた帯電電極間を物質の粒子が移動する速度から)計算することができる。好ましくは無機濃縮剤は、約7のpHにおいて負のゼータ電位を有する。
【0030】
金属ケイ酸塩
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な金属ケイ酸塩濃縮剤としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、鉄、チタン、及び同様物など(好ましくはマグネシウム、亜鉛、鉄、及びチタン;より好ましくはマグネシウム)、及びこれらの組み合わせなどの金属の非晶質ケイ酸塩が挙げられる。好ましいのは、少なくとも部分溶融した粒子形状(より好ましくは、非晶質、球体化された金属ケイ酸塩、最も好ましくは、非晶質、球体化されたケイ酸マグネシウム)の非晶質金属ケイ酸塩である。金属ケイ酸塩は既知であり、既知の方法によって化学的に合成するか、又は天然に生じる未加工鉱石の採鉱及び処理によって入手することができる。
【0031】
金属ケイ酸塩の非晶質の少なくとも部分溶融した粒子形状は、比較的小さい供給粒子(例えば、約25マイクロメートルまでの平均粒子サイズ)を、概ね回転楕円体又は球の形状の粒子(すなわち、真に又は実質的に円及び楕円の形状及び任意の他の丸い又は曲がった形状を含む、概ね丸く、鋭利な角又は縁を含まない、拡大された二次元像を有する粒子)を作製するための制御された条件下で融解又は軟化させる既知の方法のいずれによっても作製可能である。このような方法には微粒化、ファイアポリッシュ、直接溶融などが挙げられる。好ましい方法は、固体フィード粒子の直接溶融又はファイアポリッシュにより、少なくとも部分的に溶融した、実質的にガラス状粒子が形成される、火焔溶融(例えば、記述が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第6,045,913号(Castle)に述べられている方法におけるような)である。最も好ましくは、不規則形状をした供給粒子の実質的な部分(例えば、約15〜約99容積パーセント、好ましくは、約50〜約99容積パーセント、より好ましくは、約75〜約99容積パーセント、最も好ましくは、約90〜約99容積パーセント)を概ね回転楕円体又は球体の粒子に変換することにより、このような方法を使用して、非晶質の球体化された金属ケイ酸塩を製造することができる。
【0032】
ある非晶質金属ケイ酸塩は市販されている。例えば、非晶質の長球化されたケイ酸マグネシウムは、化粧品処方の使用のために市販されている(例えば、3M(商標)コスメティック・ミクロスフェアズCM−111(ミネソタ州セントポール市の3M社から販売))。
【0033】
非晶質金属ケイ酸塩濃縮剤は更に、金属(例えば鉄又はチタン)酸化物、結晶質金属ケイ酸塩、他の結晶質材料、及び同様物などを含む、他の材料を含み得る。しかしながら、濃縮剤は、好ましくは本質的に結晶質シリカを含まない。
【0034】
本発明のプロセスの実施に用いるのに好適な特に好ましい濃縮剤としては、非晶質金属ケイ酸塩を含み、X線光電子分光法(XPS)で測定したケイ素原子に対する金属原子の比が約0.5以下(好ましくは約0.4以下、より好ましくは約0.3以下、最も好ましくは約0.2以下)である表面組成を有する、濃縮剤が挙げられる。このような濃縮剤としては、米国特許仮出願番号第60/977,180号(3M Innovative Properties Company)に記載の濃縮剤が挙げられ、濃縮剤及びその調製方法についての記載は、参考として本明細書に組み込まれる。
【0035】
好ましくは、この特に好ましい濃度剤の表面組成はまた、X線光電子分光法(XPS)で測定されるものとして少なくとも平均約10原子パーセントの炭素を含む(より好ましくは少なくとも平均約12原子パーセントの炭素を含み、最も好ましくは少なくとも平均約14原子パーセントの炭素を含む)。XPSは、試料表面の最も外側のほぼ3〜10ナノメートル(nm)の元素組成を定量することができ、水素及びヘリウムを除いて周期率表中の全ての元素に感度のある手法である。XPSは、大多数の元素に対して0.1〜1原子パーセント濃度範囲の検出限界を持つ定量的な手法である。XPSの好ましい表面組成評価条件には、受光立体角±10度で試料表面に対して測定される取り出し角90度が含まれ得る。
【0036】
このような好ましい金属ケイ酸塩濃縮剤は、例えば、普通のタルクなどの一般的な金属ケイ酸塩よりも負のゼータ電位を有する。それにもかかわらず、濃縮剤は、その表面が一般に負帯電である傾向がある、細菌などの微生物の濃縮においてタルクよりも驚くほど有効である。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でスモルコウスキーゼータ電位が約−9ミリボルト〜約−25ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でスモルコウスキーゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でスモルコウスキーゼータ電位が約−11ミリボルト〜約−15ミリボルトの範囲である)。
【0037】
表面改質珪藻土
本発明の方法を実施する際に使用するために好適な表面改質珪藻土濃縮剤には、金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン又は酸化第二鉄)、微細ナノスケール金若しくは白金又はこれらの組み合わせを含む表面改質剤を含む表面処理剤を、その表面の少なくとも一部の上に担持する珪藻土を含むものが含まれる。このような濃縮剤としては、米国特許仮出願番号第60/977,200号(3M Innovative Properties Company)に記載の濃縮剤が挙げられ、濃縮剤及びその調製方法についての記載は、参考として本明細書に組み込まれる。表面処理は好ましくは、酸化第二鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウムなど、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物(より好ましくは酸化第二鉄)を更に含む。金などの貴金属は、抗菌特性を呈することが知られているにもかかわらず、本発明の方法において使用される金含有濃縮剤は、微生物の濃縮に有効なだけでなく、検出又は分析の目的に微生物を生存可能な状態に保つことができる。
【0038】
有用な表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも1つの金属酸化物(好ましくは、二酸化チタン、酸化第二鉄、又はこれらの組み合わせ)と組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも1つの他の金属酸化物(すなわち二酸化チタン以外)と組み合わせた酸化第二鉄、など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、少なくとも酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、少なくとも酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
より好ましい表面改質剤としては、微細ナノスケール金、微細ナノスケール白金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、二酸化チタン、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせが含まれる(更に好ましくは、微細ナノスケール金、酸化第二鉄又は二酸化チタンと組み合わせた微細ナノスケール金、酸化第二鉄と組み合わせた二酸化チタン、二酸化チタン、酸化第二鉄、及びこれらの組み合わせが含まれる)。酸化第二鉄、二酸化チタン、及びこれらの組み合わせが最も好ましい。
【0040】
表面改質珪藻土濃縮剤のうち少なくともいくつかは、未処理の珪藻土に比べて少なくともある程度、正であるゼータ電位を有し、この濃縮剤は、細菌などの微生物の濃縮について、未処理の珪藻土よりも驚くべきほど顕著に有効であり得、このような濃縮剤の表面は一般に負に帯電している傾向にある。好ましくは、濃縮剤はpHが約7で負のゼータ電位を有する(より好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−5ミリボルト〜約−20ミリボルトの範囲、更に好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−8ミリボルト〜約−19ミリボルトの範囲、最も好ましくは、pHが約7でゼータ電位が約−10ミリボルト〜約−18ミリボルトの範囲である)。
【0041】
微細ナノスケール金又は白金を含む、表面改質珪藻土濃縮剤は、物理蒸着(所望により、酸化雰囲気中での物理蒸着)によって珪藻土に金又は白金を堆積することにより調製することができる。本明細書で使用するとき、用語「微細ナノスケール金又は白金」は、サイズで5ナノメートル(nm)以下の寸法を有する金又は白金の物体(例えば、粒子又は原子クラスタ)を意味する。好ましくは、堆積した金又は白金の少なくとも一部は、最大約10nm(10nm以下)(より好ましくは、最大約5nm、更により好ましくは最大約3nm)の範囲の平均サイズの寸法(例えば、粒子の直径又は原子クラスタの直径)を有する。
【0042】
最も好ましい実施形態において、金の少なくとも一部分は、超ナノスケールである(すなわち、0.5nm未満のサイズの少なくとも2つの寸法、1.5nm未満のサイズの全ての寸法を有する)。個別の金又は白金のナノ粒子のサイズは、当該技術分野において周知であるように、透過電子顕微鏡(TEM)分析によって定量することができる。
【0043】
珪藻土(又はキーゼルグール)は、海生微生物類である珪藻の残存物から生じた、天然のシリカ材料である。このように、これは天然資源から取得可能であり、市販もされている(例えば、Alfa Aesar,A Johnson Matthey Company(Ward Hill,MA)から)。珪藻土粒子は、一般に、対称な立方体、円筒形、球形、プレート状、矩形の箱形などの形態の、小さな開放網状構造を含む。これらの粒子の孔構造は、一般に、非常に均一であり得る。
【0044】
珪藻土は、原材料として、粉砕した材料として、又は精製及び所望により粉砕した粒子として使用することができる。好ましくは、珪藻土は、直径約1マイクロメートル〜約50マイクロメートル(より好ましくは約3マイクロメートル〜約10マイクロメートル)の範囲にある寸法の粉砕粒子形状である。
【0045】
珪藻土は、場合によっては、使用前に加熱処理を行い、有機残留物の痕跡を除去することができる。加熱処理を使用する場合は、高温になるほど好ましくない結晶シリカが高比率に生じ得るため、加熱処理は500℃以下で行うことが望ましい。
【0046】
珪藻土上に供給される金又は白金の量は、広い範囲で変えることができる。金及び白金は高価であるため、望ましい濃縮活性を達成するのに妥当な必要とされる量を超えては使用しないことが望ましい。更に、ナノスケール金又は白金は、PVDを使用して堆積する際、非常に易動性であることがあるため、金又は白金を使用しすぎると、金又は白金の少なくとも一部が融合してより大きな塊になることにより、活性が低下することがある。
【0047】
これらの理由から、珪藻土上の金又は白金の重量の装填量は、珪藻土と金との合計重量を基準として、好ましくは約0.005(より好ましくは0.05)〜約10重量パーセント、より好ましくは約0.005(更に好ましくは0.05)〜約5重量パーセント、及び更に好ましくは約0.005(最も好ましくは0.05)〜約2.5重量パーセントである。
【0048】
金及び白金をPVD法(例えばスパッタリング)により堆積して、支持体表面に濃縮活性を有する微細ナノスケール粒子又は原子クラスタを形成することができる。金属は、他の酸化状態が存在する場合もあるが、主に元素の形で堆積すると考えられる。
【0049】
金及び/又は白金に加えて、同じ珪藻土支持体上に1つ以上の他の金属を供給することもでき、及び/又は、金及び/又は白金を含む支持体と別の支持体とを混合して供給することもできる。このような他の金属の例としては、銀、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、銅、イリジウム及び同等物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。使用する場合には、これらの他の金属を、使用される金又は白金の供給源ターゲットと同一又は異なるターゲット供給源から支持体上に共堆積させることができる。あるいは、このような金属を、金及び/又は白金の堆積の前又は後のいずれかにおいて、支持体上に供給することができる。有利には、活性化のための熱処理を必要とする他の金属を、金及び/又は白金の堆積前に支持体に適用し、熱処理することもできる。
【0050】
物理蒸着は、金属含有供給源又は金属含有ターゲットから支持媒体への金属の物理的な移動を指す。物理気相堆積は、さまざまな異なる方法で実施可能である。代表的な方法としては、スパッタ堆積法(好ましい方法)、蒸着法、及び陰極アーク堆積法が挙げられる。PVD法の性状は得られる活性に影響を与え得るが、これら又は他のPVDアプローチのいずれかを、本発明の方法の実施に使用する濃縮剤の作製で使用することができる。PVDは、この目的で現在使用されている装置又は今後開発される装置のいずれかのタイプを使用することにより行うことができる。
【0051】
物理気相堆積法は、支持体表面の適切な処理が確実に行われるように、好ましくは、処理対象の支持体媒質が充分に混合された状態(例えば、混転、流動化、粉砕、又は同等の処理)で実施される。PVDによる堆積の粒子混転方法は、米国特許第4,618,525号(Chamberlainら)に記述されており、この記述は参照により本明細書に組み込まれる。微細粒子又は微細粒子凝集塊(例えば、平均直径が約10マイクロメートル未満)にPVDを実施する際、支持体媒体は、好ましくは、PVD工程の少なくとも一部の間に、混合及び微粉砕の両方が行われる(例えば、ある程度まで摩砕又はミル掛けされる)。
【0052】
物理気相堆積法は、本質的には、非常に広い範囲にわたって、任意の所望の温度で実施可能である。しかしながら、金属を比較的低い温度(例えば、約150℃未満、好ましくは約50℃未満、より好ましくは室温(例えば約20℃〜約27℃)以下))で堆積する場合、堆積した金属はより高い活性を有することができる(おそらくは、移動性と融合性がより損なわれる及び/又はより低いため)。外周条件下で運転すると、堆積時の加熱又は冷却が不要となり、有効かつ経済的であるため、一般的に好ましい可能性がある。
【0053】
物理蒸着は、不活性スパッタリングガス雰囲気中(例えば、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれら2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン))で実施することができ、場合によっては、物理蒸着は酸化雰囲気中で実施可能である。好ましくは、酸化雰囲気は、少なくとも1つの酸素含有ガスを含む(より好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせから選択され、更により好ましくは、酸素含有ガスは、酸素、水、及びこれらの組み合わせから選択され、最も好ましくは酸素である)。酸化雰囲気は、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ラドン、又はこれらの2つ以上の混合物(好ましくはアルゴン)などの不活性スパッタリングガスを更に含む。PVD処理中の真空槽内の総気体圧力(全てのガス)は、約1mTorr(0.13Pa)〜約25mTorr(3.33Pa)(好ましくは約5mTorr(0.67Pa)〜約15mTorr(2.00Pa))である。酸化雰囲気は、真空槽内の全てのガスの総重量を基準にして、約0.05重量パーセント〜約60重量パーセントの酸素含有ガス(好ましくは、約0.1重量パーセント〜約50重量パーセント、より好ましくは約0.5重量パーセント〜約25重量パーセント)を含み得る。
【0054】
これにより結晶シリカの含有量が増加し得るが、珪藻土支持媒体は、場合によっては、金属堆積の前に焼成可能である。金及び白金は、PVDで堆積するとすぐに活性になるため、他の一部の方法による堆積とは違って、一般に金属堆積後に加熱処理の必要がない。ただし、このような加熱処理又は焼成は、活性を高めるために所望される場合には実行できる。
【0055】
一般に、熱処理は、支持体を、任意の好適な大気中、例えば、空気、不活性雰囲気(窒素、二酸化炭素、アルゴンなど)、還元性雰囲気(水素など)、及び同等物の中で、約125℃〜約1000℃の範囲の温度で、約1秒間〜約40時間、好ましくは約1分間〜約6時間の加熱を伴い得る。使用される具体的な熱条件は、支持体の性質を含むさまざまな要素に依存し得る。
【0056】
一般に、熱処理は、支持体の構成要素が分解するか、劣化するか、又は過度の熱により損傷する温度よりも下の温度で実施可能である。支持体の性状、金属の量などの要素に依存して、触媒活性は、系を高すぎる温度で熱処理すると、ある程度低下する可能性がある。
【0057】
金属酸化物を含む、表面改質珪藻土濃縮剤は、加水分解可能な金属酸化物前駆体化合物の加水分解によって、珪藻土上に金属酸化物を堆積させることにより調製される。適切な金属酸化物前駆体化合物としては、加水分解して金属酸化物を生成できるような金属錯体及び金属塩が挙げられる。有用な金属錯体としては、アルコキシド配位子、配位子としての過酸化水素、カルボン酸機能配位子など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。有用な金属塩としては、金属の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、シュウ酸塩、水酸化物など及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
過酸化水素又はカルボン酸機能配位子の金属塩又は金属錯体を使用する場合、化学的手段又は熱的手段によって加水分解を引き起こすことができる。化学的に引き起こされる加水分解においては、金属塩は、溶液の形態で、珪藻土の分散液に導入することができ、得られる混合物のpHは、珪藻土上に金属の水酸化物錯体として金属塩が沈殿するまで、塩基溶液を加えることによって上げることができる。適切な塩基としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物及び炭酸塩、アンモニウム及びアルキルアンモニウムの水酸化物又は炭酸塩など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。金属塩溶液及び塩基溶液は、通常、約0.1〜約2Mの濃度であり得る。
【0059】
好ましくは、珪藻土への金属塩の添加は、珪藻土分散液を撹拌(好ましくは激しく撹拌)しながら実施される。金属塩溶液及び塩基溶液は、珪藻土分散液に別々に(いずれの順番でも)又は同時に導入可能であって、得られる珪藻土の表面に金属水酸化物錯体を生じる実質的に好ましく均一な反応をもたらす。反応混合物は、場合によっては、反応中に加熱して、反応の速度を加速することができる。一般に、添加される塩基の量は、金属のモル数に、金属塩又は金属錯体の非オキソ及び非ヒドロキソ対イオン数を掛けたものに等しくなり得る。
【0060】
あるいは、チタン又は鉄の塩を使用する場合、金属塩を加熱して加水分解を起こさせて、金属水酸化物錯体を形成し、珪藻土の表面と反応させることができる。この場合、金属塩溶液を一般に、珪藻土の分散液(好ましくは撹拌した分散液)に加え、十分に高温(例えば約50℃を上回る温度)に加熱して、金属塩の加水分解を促進することができる。好ましくは、温度は約75℃〜100℃であり、ただし反応がオートクレーブ装置内で実施される場合はより高い温度を使用することができる。
【0061】
金属アルコキシド錯体を使用する場合、金属錯体に加水分解を起こさせ、アルコール溶液中で金属アルコキシドの部分的加水分解により金属の水酸化物錯体を形成させることができる。珪藻土の存在における金属アルコキシド溶液の加水分解により、珪藻土の表面に金属水酸化物種を堆積させることができる。
【0062】
あるいは、珪藻土の存在において気相の金属アルコキシドと水とを反応させることによって、金属アルコキシドを加水分解して、珪藻土の表面に堆積させることができる。この場合、珪藻土を、例えば流動床反応器又は回転ドラム反応器などのいずれかの中で堆積中に撹拌することができる。
【0063】
珪藻土の存在における金属酸化物前駆体化合物の上記の加水分解の後、得られる表面処理された珪藻土を、沈降又は濾過、又はその他の既知の方法によって分離することができる。分離した生成物を水で洗浄することによって精製し、これを乾燥させることができる(例えば50℃〜150℃)。
【0064】
表面処理された珪藻土は通常、乾燥後に機能できるが、所望により、空気中で約250℃〜650℃に加熱して焼成することにより、機能の損失なしに揮発性の副生成物を除去することができる。この焼成工程は、金属酸化物前駆体化合物として金属アルコキシドを利用した場合に望ましいことがある。
【0065】
一般に、鉄の金属酸化物前駆体化合物を用い、得られる表面処理には、ナノ粒子の酸化鉄が含まれる。珪藻土に対する酸化鉄の重量比が約0.08である場合には、X線回折(XRD)では、酸化鉄材質の存在がはっきりと示されない。むしろ、3.80、3.68、及び2.94Åで更なるX線反射が観察される。この材料のTEM評価は、球形ナノ粒子状酸化鉄材料により比較的不均一にコーティングされている珪藻土表面を示す。酸化鉄材料の結晶子の大きさは約20nm未満であり、結晶の大部分は直径が10nm未満である。珪藻土表面上のこれらの球形結晶の充填は、外観的に密であり、珪藻土の表面がこれら結晶の存在により粗化されているのが見られる。
【0066】
一般に、チタンの金属酸化物前駆体化合物と共に、得られる表面処理は、ナノ粒子チタニアを含む。珪藻土に二酸化チタンを堆積させた場合、約350℃で焼成した後に得られた生成物のXRDでは、アナターゼチタニアの小さな結晶の存在を示すことができる。チタン/珪藻土の比が比較的低い場合、又はチタン及び鉄の酸化物前駆体の混合物を使用する場合、X線分析によっては、一般に、アナターゼの証拠は観察されない。
【0067】
チタニアは強力な光酸化触媒として知られており、本発明のチタニア改質珪藻土濃縮剤は、分析用の微生物濃縮に使用することができ、更に所望により、光活性化可能剤として使用することにより、残留する微生物を殺菌し、不要な有機不純物を除去することができる。このように、チタニア改質された珪藻土は、分析のための生体材料を単離することと、次いで再使用のために光化学的にクリーニングすることの両方ができる。これらの材料は、微生物の除去と共に抗菌効果が望ましい場合、濾過用途で使用することもできる。
【0068】
吸着緩衝液改質無機濃縮剤の調製
吸着緩衝液改質無機濃縮剤は、(a)上述の無機濃縮剤の少なくとも1つを少なくとも1つのカチオン含有塩溶液(好ましくは、水性)と接触させて、無機濃縮剤の少なくとも一部分を湿らせることと、(b)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を乾燥させることと、を含むプロセスを含む方法によって調製することができる。カチオン含有塩溶液として使用するために好適な吸着緩衝溶液には、少なくとも1つの一価又は多価カチオン(好ましくは少なくとも1つの多価カチオン、より好ましくは少なくとも1つの二価カチオン、最も好ましくは二価カルシウムカチオン、二価マグネシウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの二価カチオン)を含むものが含まれる。カチオンは、好ましくは金属カチオンであるが、他のカチオン(例えば、アンモニウム)もまた有用であり得る。
【0069】
例えば、有用な吸着緩衝液は、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化カルシウム(CaCl)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、塩化カリウム(KCl)、塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸水素カリウム(KHPO)、塩化第一鉄(FeCl)、塩化ランタン(LaCl)、塩化アルミニウム(AlCl)等、及びこれらの組み合わせ等の塩を含むことができる。吸着緩衝溶液は、1つ以上の塩を、塩を溶解するために十分に極性のある1つ以上の溶媒と混合することによって調製されてもよい。好ましくは、溶媒は水である。溶媒中の塩の溶解は、必要に応じて、加熱によって、及び/又は攪拌若しくはかき混ぜによって、促進することができる。溶解後、結果として得られた溶液は、(好ましくはフィルタ滅菌によって、より好ましくは約0.22マイクロメートルの孔径を有する標準的な微生物学的フィルタを使用したフィルタ滅菌によって)滅菌されてもよい。
【0070】
(溶媒中の)塩の濃度は、塩及び溶媒の性質によって、並びに無機濃縮剤の捕捉強化の望ましいレベルによって、1リットル当たり約10ミリモル(mM/L)まで(好ましくは、約0.1mM/L〜約5mM/L)が典型的である濃度で、広い範囲にわたって変化し得る。塩溶液のpHは、約6.0〜約7.5の範囲に及び得るが、約6.5〜約7.5(より好ましくは約6.8〜約7.3、より好ましくは、約7.2)の比較的中性のpH値が好ましい。
【0071】
好ましい吸着緩衝液は、マグネシウムカチオン(Mg++)、カルシウムカチオン(Ca++)、ナトリウムカチオン(Na)、カリウムカチオン(K)、第一鉄カチオン(Fe++)、ランタンカチオン(La+++)、アルミニウムカチオン(Al+++)、及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのカチオン、更により好ましくはマグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、カリウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのカチオン、最も好ましくは、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される少なくとも1つのカチオン)から選択される少なくとも1つのカチオンを含む。本発明のプロセスに使用するために特に好ましい吸着緩衝溶液は、水1リットル当たり5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、及び1mMのKHPOを含み、7.2のpHを有する。
【0072】
上で参照された、無機濃縮剤を吸着緩衝液と接触させる工程は、以下で濃縮剤と試料を接触させることに関する節に記載されるものを含む、2つの物質の間に接触をもたらす任意のさまざまな既知又は今後開発される方法によって実行され得る。接触の際に使用される吸着緩衝液の量は、無機濃縮剤の性質及び量、並びに捕捉強化の望ましい度合いによって、広く変化し得る。吸着緩衝溶液の量は、概して、無機濃縮剤の少なくとも一部分(例えば、露出面の少なくとも一部分)を湿らせるために十分であり得る。好ましくは、無機濃縮剤の実質的に全ての露出面が湿っている(例えば、最大捕捉強化が望ましい場合)。
【0073】
無機濃縮剤を吸着緩衝液と接触させることは、好ましくは、その薬剤を緩衝溶液で少なくとも一度(好ましくは少なくとも二度、より好ましくは少なくとも三度)洗浄することによって実行される。例えば、無機濃縮剤のこのような洗浄は、無機濃縮剤の実質的に全ての露出面を湿らすために効果的であり得、薬剤を好ましい容器(例えば、試験管)内の緩衝溶液に薬剤を浸漬することによって実行され得る。薬剤は、望まれる場合は、緩衝液に接触する前に不純物を除去するために、事前洗浄されてもよい(例えば、水で洗い流すことによって)。
【0074】
例えば、多量の緩衝液の中に少なくとも1回、粒子無機濃縮剤を通過させることによって(例えば、約10分間にわたって重力沈殿に依存することによって)、洗浄を効果的にすることができる。緩衝液との接触は、混合によって(例えば、撹拌、振盪、又は揺動プラットフォームによって)強化することができ、これにより無機濃縮剤の粒子が緩衝液の大部分を通って繰り返し通過又は沈殿することができる。混合は、渦動(1分又は2分間最高速度で)等の急速なものであってもよく、あるいは、粒子無機濃縮剤と緩衝液の混合を「上下転倒」させるプロセスで穏やかに混転して(例えば、試験管又は他のタイプの反応容器を支えるよう構成された装置を用い、その試験管又は容器を「上下転倒」させるプロセスでゆっくりと回転させて)達成することができる。所望により、無機濃縮剤は、望むだけの時間(例えば、混合後約5分の間)緩衝液内に浸ることが可能であってもよい。
【0075】
したがって、無機濃縮剤の洗浄を実行することにおいて、混合(例えば、攪拌、揺動、又はかき混ぜ)及び/又は浸すことは、任意的であるが、濃縮剤との緩衝液接触を増加させるためには好ましい。1つ以上の添加剤(例えば、界面活性剤又は湿潤剤、分散剤等)は、望まれる場合、(例えば、薬剤の分散及び/又は湿潤を助けるために)無機濃縮剤と緩衝液との混合に含まれてもよい。
【0076】
接触又は洗浄工程の後、無機濃縮剤は、好ましくは凝離され(例えば、重力沈殿又は遠心分離あるいは濾過によって、好ましくは遠心分離によって)、及び/又は緩衝液から分離され(例えば、結果として得られる上澄みを注ぎ出す又は吸い上げることによる除去又は分離によって、プロセスを実施するのに使用した容器又は管の底に、無機濃縮剤を残すことができる)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤は、次いで周辺温度(例えば、約23℃)又は高温(例えば、オーブンを使用して)のどちらかで乾燥させることができる。好ましくは、乾燥は約25℃より高い温度(より好ましくは少なくとも約50℃、更により好ましくは少なくとも約70℃、最も好ましくは少なくとも約80℃)で実行される。乾燥時間の期間は、例えば、利用される乾燥温度及び少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤の量(例えば、約1グラムの少なくとも部分的に湿った薬剤は室温で約48時間以上で乾燥することができ、約5グラムの少なくとも部分的に湿った薬剤は約80℃で約5又は6時間で乾燥することができる)によって、広く変化し得る。
【0077】
試料
本発明の濃縮方法は、医療、環境、食品、飼料、臨床、及び検査室試料、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない、さまざまなタイプの試料に適用することができる。医療又は獣医試料としては、例えば、臨床診断のために検査される生物源(例えばヒト又は動物)から得た細胞、組織、又は流体を挙げることができる。環境試料は、例えば、医療機関又は獣医機関、産業用設備、土壌、水源、食品調理領域(食品接触及び非接触領域)、検査室、又はバイオテロリズムの対象になり得る領域から得たものであり得る。食品の加工、取扱い、及び調理領域の試料は、細菌病原菌による食品供給汚染に関する懸念が特にしばしばあるためより好適である。
【0078】
液体の形態で得られる試料、又は液体中の固体の分散液又は懸濁液の形態で得られる試料は、直接使用することができ、あるいは濃縮して(例えば遠心分離により)又は希釈して(例えば緩衝(pH調整された)溶液の追加により)使用することができる。固体又は半固体の試料は、直接使用するか、あるいは例えば、所望であれば、流動体媒質(例えば緩衝液)で洗浄若しくはすすぎ、又は流動体媒質中に懸濁若しくは分散させることにより抽出することができ得る。試料は表面から(例えばスワブによる拭き取り又はすすぎにより)採取することができる。好ましくは、試料は流体の形態で使用される(例えば、液体、気体、又は液体中若しくは気体中の固体若しくは液体の分散物若しくは懸濁物)。
【0079】
本発明の方法を実施する際に使用できる試料の例としては、食品(例えば、生鮮農産物又はそのまま食べる昼食若しくは「調理された」食肉)、飲料(例えばジュース又は炭酸飲料)、水(飲料水を含む)、並びに生物学的流動体(例えば全血、又は血漿、血小板の豊富な血液分画、血小板濃縮物、圧縮した赤血球などの血液構成成分、細胞調製物(例えば細胞分散液、骨髄吸引物、又は脊椎骨髄)、細胞懸濁液、尿、唾液、及びその他の体液、骨髄、肺水、脳液、外傷滲出物、外傷生検試料、眼内液、脊髄液など)が挙げられ、また溶解緩衝液の使用などの手順を使用して形成することができる細胞可溶化物などの溶解調製物が含まれる。好ましい試料としては、食品、飲料、水、生体液、及びこれらの組み合わせ(食品、飲料、水、及びこれらの組み合わせがより好ましく、水が更により好ましく、水が最も好ましい)が含まれる。
【0080】
試料の容積は、特定の用途に応じて異なり得る。例えば、本発明のプロセスが診断又は研究用途に仕様される場合、試料の量は通常、マイクロリットルの範囲であり得る(例えば10μL以上)。方法が食品病原体試験検査又は飲料水安全性試験のために使用される場合、試料の量は通常、ミリリットル〜リットルの範囲であり得る(例えば100ミリリットル〜3リットル)。例えばバイオ処理又は製剤処方などの産業用途においては、この量は何万リットルであることがある。
【0081】
本発明の方法は、濃縮状態の試料から微生物を分離し、更に、使用される検出手順を阻害し得る試料マトリックス構成成分から微生物を分離することができる。これらすべての場合において、本発明の方法は、他の微生物濃縮方法に追加して、又はその代わりに、使用することができる。よって、所望により、追加の濃縮が望ましい場合には、本発明の方法実施の前又は後に試料からの培養を行うことができる。
【0082】
接触
本発明の方法は、2つの物質の間に接触をもたらす、さまざまな既知の方法又は今後開発される方法のいずれによっても実施可能である。例えば、吸着緩衝液改質(又は処理)濃縮剤は、試料に添加されてもよく、又は試料が濃縮剤に添加されてもよい。濃縮剤でコーティングしたディップスティックを試料溶液に浸すことができ、濃縮剤を含有するフィルムの上に試料溶液を注ぐことができ、濃縮剤を含む試験管又はウェルに試料溶液を注ぐことができ、又は、濃縮剤でコーティングされたフィルタ(例えば、織布のフィルタ)に試料溶液を通すことができる。
【0083】
しかしながら好ましくは、濃縮剤及び試料は、様々な任意の容器内に合わせて入れられる(任意の追加順序を用いて)(所望により、しかしながら好ましくは、キャップ付き、閉鎖、又は密閉された容器であり、より好ましくは、キャップ付きの試験管、瓶、又は広口瓶である)。本発明の方法を実施する際の使用に好適な容器は、特定の試料によって決められ、量及び性質により大きく異なり得る。例えば、容器は10マイクロリットル容器(例えば試験管)などの小さいものであり得、又は100ミリリットルから3リットル容器(例えば三角フラスコ又はポリプロピレン製広口瓶)などの大きいものであり得る。容器、濃縮剤、及び試料に直接接触するその他の器具又は添加剤は、使用前に滅菌することができ(例えば、制御された熱、エチレンオキシドガス、又は放射線によって)、これにより検出エラーを起こし得る試料の汚染を低減又は防ぐことができる。特定の試料の微生物を捕捉又は濃縮するための、検出を成功させるのに十分な濃縮剤の量は、場合によって異なり(例えば、濃縮剤の性質及び形態並びに試料の量に依存する)、当業者によって容易に決定できる。例えば、一部の用途については、試料ミリリットル当たり、10ミリグラムの濃縮剤が有用であり得る。
【0084】
望ましい場合は、試料の中に少なくとも1回、粒子濃縮剤を通過させることによって(例えば、約10分間にわたって重力沈殿に依存することによって)、接触を効果的にすることができる。接触は、混合によって(例えば撹拌、振盪、又は揺動プラットフォームによって)強化することができ、これにより濃縮剤の粒子が試料の大部分を通って繰り返し通過又は沈殿することができる。マイクロリットルの桁の少量(典型的には0.5マイクロリットル未満)の場合、混合は、例えば米国特許第5,238,812号(Coulterら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているように、渦動又は「転動(nutation)」などの急速なものであり得る。0.5ミリリットル以上の桁の、より大量(典型的には0.5ミリリットル〜3リットル)の場合、混合は、例えば米国特許第5,576,185号(Coulterら)(この記述は参考として本明細書に組み込まれる)に記述されているように、粒子状濃縮剤及び試料を「上下転倒」させるプロセスで穏やかに混転することにより達成できる。このような混転は、例えば、試験管又は他のタイプの反応容器を支えるよう構成された装置を用い、その試験管又は容器を「上下転倒」させるプロセスでゆっくりと回転させて達成することができる。接触は、望むだけの時間、実施することができる(例えば、試料量が約100ミリリットル以下の場合、最高約60分間の接触が有用であり得、好ましくは、約15秒〜約10分又はそれ以上、より好ましくは、約15秒〜約5分の接触が有用であり得る)。
【0085】
よって、本発明のプロセスの実施において、混合(例えば攪拌、揺動、又はかき混ぜ)及び/又は培養(例えば周囲温度で)は随意ではあるが、濃縮剤との接触で微生物を増加させるために好ましい。好ましい接触方法には、生物含有試料(好ましくは流動体)を粒子濃縮剤と混合すること(例えば、約15秒〜約5分)と、培養すること(例えば、約3分〜約60分)との両方が含まれる。必要に応じて、1つ以上の添加剤(例えば、溶解試薬、生物発光検定試薬、核酸捕捉試薬(例えば磁性ビーズ)、微生物用培地、緩衝液(例えば、固形試料の湿潤のため)、微生物染色試薬、洗浄用緩衝液(例えば、結合していない物質を洗い流すため)、溶出試薬(例えば血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、Triton(商標)X−100非イオン系界面活性剤(Union Carbide Chemicals and Plastics(Houston,TX)から入手可能)、機械的磨耗/溶出試薬(例えばガラスビーズ)、吸着緩衝液(例えば吸着緩衝液改質無機濃縮剤の調製にしようされものと同一の緩衝液、又は異なる緩衝液)、及び同様物)が、濃縮剤及び試料の組み合わせに含まれ得る。好ましくは、試料の接触工程は、濃縮剤と試料の組み合わせにおける添加剤としての吸着緩衝液の包含なしに実行される。
【0086】
望ましい場合は、濃縮剤(単独で、又は例えば抗菌剤と組み合わせて、及び/又は液体形態(例えば水又は油)、固体形態(例えば布、ポリマー、紙、又は無機固体)、ゲル形態、クリーム形態、フォーム形態、又はペースト形態の担体物質と組み合わせて)は、非多孔質又は多孔質、固体、微生物に汚染されているか又は微生物に汚染可能な材質又は表面に対して、塗布又はすりつけることができる(例えば「クリーニング」剤として使用する)。結合剤、安定剤、界面活性剤、又はその他の特性変性剤も望ましい場合は利用することができる。
【0087】
このような使用のために、濃縮剤は織布又は不織布に塗布することができ、更に紙、ティッシュペーパー、綿棒などの使い捨て可能な表面、及び様々な吸収性及び非吸収性材質に塗布することができる。例えば、濃縮剤は布又は紙の担体物質に組み込み、「クリーニング」ワイプとして使用することができる。濃縮剤は、例えば住居、保育所、工場、病院などにおいて、玩具、装置、医療機器、作業台表面などを洗浄するために、固体表面に(例えば、担体物質を含むワイプ又はペーストので)適用することができる。洗浄又はその他の目的に使用する場合、試料は同時に採取することができ、望ましい場合は単一の工程で濃縮剤に接触し得る。
【0088】
凝離及び/又は分離
所望により、しかしながら好ましくは、本発明のプロセスは、得られた微生物結合の濃縮剤の凝離を更に含む。好ましくはこのような凝離は、少なくとも部分的に、重力沈殿(重力沈降;例えば、約5分間〜約30分間にわたって)に依存することによって達成することができる。しかしながらいくつかの場合において、凝離を促進すること(例えば遠心分子又は濾過によって)又は任意の凝離方法の組み合わせを使用することが望ましいことがある。
【0089】
本発明のプロセスは、所望により、得られた微生物結合の濃縮剤と試料の分離を更に含む。液体試料の場合は、凝離の結果生じた上澄みの除去又は分離が伴い得る。上澄みの分離は、当該技術分野において周知の数多くの方法によって実施することができる(例えば、上澄みを注ぎ出し又は吸い上げることによって、プロセスを実施するのに使用した容器又は管の底に、微生物結合の濃縮剤を残すことができる)。所望により、結合した微生物は、必要に応じて、(例えば、ウシ血清アルブミン溶液又は肉抽出物溶液を使用することによって化学的に、あるいは緩やかな音波処理によって物理的に)濃縮剤から溶出又は分離され得る。
【0090】
本発明の方法は、手動により(例えばバッチ単位による方法で)実施することができ、又は(例えば、連続的又は準連続的処理を実現して)自動化することができる。
【0091】
検出
本発明のプロセスを用いて、さまざまな微生物を濃縮すること、及び、所望により、しかしながら好ましくは、検出することができ、これには、例えば、細菌、真菌類、酵母、原生動物、ウイルス(非エンベロープ型ウイルス及びエンベロープ型ウイルスの両方を含む)、細菌内生胞子(例えばバチルス(炭疽菌、セレウス菌、及び枯草菌を含む)及びクロストリジウム(ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、及びウェルシュ菌))、並びに同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる(好ましくは、細菌、酵母、真菌類、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、更に好ましくは、細菌、酵母、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、更により好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌、非エンベロープ型ウイルス(例えば、ノロウイルス、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス、ライノウイルス、及びこれらの組み合わせ)、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせであり、最も好ましくは、グラム陰性菌、グラム陽性菌及びこれらの組み合わせである。この方法は、病原体の検出における有用性を有し、これは食品安全性又は医療、環境、若しくはテロ対策の理由から非常に重要であり得る。この方法は、病原菌(例えばグラム陰性菌とグラム陽性菌の両方)、並びにさまざまな酵母、カビ、及びマイコプラズマ(及びこれらの任意の組み合わせ)の検出に特に有用であり得る。
【0092】
検出される標的微生物の属には、リステリア属、大腸菌属、サルモネラ属、カンピロバクター属、クロストリジウム属、ヘリコバクター属、マイコバクテリウム属、シゲラ属、ブドウ球菌属、腸球菌属、バチルス属、ナイセリア属、シゲラ属、連鎖球菌属、ビブリオ属、エルシニア属、ボルデテラ属、ボレリア属、シュードモナス属、サッカロミケス属、カンジダ属、及び同様物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。試料には複数の微生物株が含まれることがあり、任意の株を、他の株と独立に検出することができる。検出の標的となり得る具体的な微生物には、大腸菌、腸炎エルシニア菌、エルシニア仮性結核菌、コレラ菌、腸炎ビブリオ菌、ビブリオ・バルニフィカス菌、リステリア・モノサイトゲネス、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、サッカロマイセス・セレヴィシエ、カンジダ・アルビカンス、ブドウ球菌エンテロトキシン亜種、セレウス菌、炭疽菌、バチルス・アトロファエウス、枯草菌、ウェルシュ菌、ボツリヌス菌、クロストリジウム・ディフィシル、エンテロバクター・サカザキ、緑膿菌など、並びにこれらの組み合わせ(好ましくは、黄色ブドウ球菌、リステリア・モノサイトゲネス(リステリア・イノキュアがサロゲートである)、大腸菌、緑膿菌、及びこれらの組み合わせ)が含まれる。
【0093】
濃縮剤によって捕捉又は結合した(例えば吸着によって)微生物は、現在知られている、又は今後開発される任意の望ましい方法によって本質的に検出することができる。このような方法には、例えば、培養による方法(時間が許す場合は好ましいことがある)、顕微鏡(例えば透過光型顕微鏡又はエピ蛍光顕微鏡(蛍光染料で標識した微生物を可視化するのに使用できる))、及びその他の画像手法、免疫学的検出方法、及び遺伝子学的検出方法が挙げられる。微生物群捕捉後の検出プロセスには、洗浄して試料マトリックス成分を除去すること、又は染色することなどを含み得る。
【0094】
免疫学的検出は、標的生物に由来する抗原物質の検出であり、これは一般的に、細菌又はウイルス粒子の表面にあるマーカーとして作用する生物学的分子(例えばタンパク質又はプロテオグリカン)である。抗原物質の検出は、通常、抗体によるものであることができる。抗体は、例えばファージディスプレイなどの方法によって選択されたポリペプチド、又はスクリーニング方法から得られたアプタマーである。
【0095】
免疫学的検出方法は周知であり、例えば免疫沈降及び酵素結合免疫吸着検定(ELISA)が挙げられる。抗体結合は、さまざまな方法で検出することができる(例えば、一次抗体又は二次抗体のいずれかを、蛍光染料により、量子ドットで、又は化学発光若しくは着色基質を生成できる酵素により標識し、プレートリーダー又はラテラルフロー装置のいずれかを用いる)。
【0096】
検出はまた、遺伝子学的検定法(例えば核酸のハイブリダイゼーション又はプライマーを用いた増幅)によって実行することができ、これがしばしば好ましい方法である。捕捉又は結合された微生物は溶解され、検定に利用できる遺伝子学的物質を供給する。溶解方法は周知であり、これには例えば、音波処理、浸透性ショック、高温処理(例えば約50℃〜約100℃)、及びリゾチーム、グルコラーゼ、チモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ、プロテイナーゼK、プロテイナーゼE、及びウイルスエンドリシン(enolysins)などの酵素と共にインキュベーションすることが挙げられる。
【0097】
一般的に使用されている遺伝子学的検出検定法の多くは、DNA及び/又はRNAを含む、具体的な微生物の核酸を検出する。遺伝子学的検出方法に使用される条件の厳密性は、検出される核酸配列の変異レベルに相関する。塩濃度及び温度の条件が非常に厳しいと、標的の正確な核酸配列の検出が制限され得る。このように、標的核酸配列に小さな変異を有する微生物株は、非常に厳しい遺伝子学的検定法を使用して区別することができる。遺伝子学的検出は、核酸ハイブリダイゼーションに基づいて行われ、ここにおいて一本鎖核酸プローブが微生物の変性核酸にハイブリッド化して、プローブ鎖を含む二本鎖核酸が生成される。当業者は、ゲル電気泳動、細管式電気泳動、又はその他の分離方法の後でハイブリッドを検出するための、放射性、蛍光、及び化学発光標識などのプローブ標識について熟知するであろう。
【0098】
特に有用な遺伝子学的検出方法は、プライマーを用いた増幅に基づくものである。プライマーを用いた核酸増幅方法には、例えば、熱サイクル方法(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、及びリガーゼ連鎖反応(LCR))、並びに等温方法及び鎖置換増幅(SDA)(及びこれらの組み合わせ、好ましくはPCR又はRT−PCR)が挙げられる。増幅された生成物を検出する方法は、例えばゲル電気泳動分離及び臭化エチジウム染色、並びに生成物中に組み込んだ蛍光標識又は放射性標識の検出が含まれ、これらに限定されない。増幅生成物の検出前に分離工程を必要としない方法(例えば、リアルタイムPCR又はホモジニアス検出法)も使用することができる。
【0099】
生物発光検出法は周知であり、例えば、記述が参考として本明細書に組み込まれる、米国特許第7,422,868号(Fanら)に記述されているものを含むアデノシン(adensosine)三リン酸(ATP)検出方法が挙げられる。他の発光に基づく検出方法も使用することができる。
【0100】
本発明の方法は株特異性ではないため、同じ試料内で、複数の微生物株を検定のための標的にすることができる、一般的な捕捉システムを提供する。例えば、食品試料の汚染について検定を行う場合、同じ試料内でリステリア・モノサイトゲネス、大腸菌、及びサルモネラの全部について試験を行うことが望ましいことがあり得る。捕捉工程を1回行い、次に例えば、これら微生物株それぞれの、異なる核酸配列を増幅するための固有プライマーを使用して、PCR又はRT−PCR検定を行うことができる。したがって、それぞれの株について別々の試料取扱い及び作製手順を行う必要性を回避することができる。
【0101】
診断キット
本発明のプロセスを実施する際に使用するための診断キットは、(a)上述の吸着緩衝液改質無機濃縮剤(好ましくは粒子)、(b)試験容器(好ましくは滅菌試験容器)、及び(c)本発明のプロセス実施における濃縮剤使用のための説明書を含む。好ましくは、この診断キットは更に、微生物培養媒体又は培地、溶解試薬、緩衝液、生物発光検出検定構成要素(例えば照度計、溶解試薬、ルシフェラーゼ酵素、酵素基質、反応緩衝液、その他同様物)、遺伝子学的検出検定構成要素、及びこれらの組み合わせから選択された1つ以上の構成要素を含む。好ましい溶解試薬は、緩衝液中に供給された溶解酵素であり、好ましい遺伝子学的検出検定構成要素には、標的微生物に固有の1つ以上のプライマーが含まれる。
【0102】
例えば、本発明の診断キットの好ましい実施形態には、粒子吸着緩衝液改質無機濃縮剤(例えば、ガラス製又はポリプロピレン製バイアルなどの滅菌使い捨て可能な容器入り)に、本発明のプロセスの実施における前記薬剤使用のための説明書(例えば、濃縮剤と、分析する流動体試薬とを混合し、この濃縮剤を重力によって沈殿させ、得られた上澄みを除去し、濃縮剤に結合した少なくとも1種類の標的微生物株の存在を検出すること)を組み合わせたものが含まれる。濃縮剤は、所望により、汚染を防ぐために、破って開けるタイプの密閉パウチに収容/アリコート化されてもよい。濃縮剤は、粉末状であってもよい。好ましくは、診断キットは、(より好ましくは、1つ以上の破って開けるタイプの密閉パウチに収容された)粒子吸着緩衝液改質無機濃縮剤の予め計量されたアリコート(例えば、試料量に基づく)を含む。
【実施例】
【0103】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を過度に制限するものと解釈されるべきではない。以下の実施例内の全ての部分、割合、比率などは、特に記載がない限り、重量によるものとする。微生物培養物をThe American Type Culture Collection(ATCC;Manassas,VA)から購入した。用いた溶媒及びその他の試薬は、特に記載がない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0104】
表面改質珪藻土粒子状濃縮剤の調製
Alfa Aesar(A Johnson Matthey Company,Ward Hill,MA)から、白色粉末のキーゼルグール(珪藻土)(325メッシュ;粒径が全て44マイクロメートル未満)を購入した。この材料はX線回折(XRD)によって、α−クリストバライト及び石英と共に非晶質シリカを含むことが示された。
【0105】
2つの異なる表面改質剤(すなわち二酸化チタン及び酸化第二鉄)を含む粒子状濃縮剤を、下記の方法により珪藻土を表面処理することにより調製した。
【0106】
二酸化チタンの堆積
20.0gのTiO(SO)・2HO(Noah Technologies Corporation(San Antonio,TX))を80.0gの脱イオン水に撹拌しながら溶解させることにより、20重量パーセントのオキシ硫酸チタン(IV)二水和物溶液を作製した。50.0gのこの溶液を脱イオン水175mLと混合し、二酸化チタン前駆体化合物溶液を形成した。50.0gの珪藻土を大きなビーカー中で急速に撹拌しながら500mLの脱イオン水に分散させることにより、珪藻土の分散液を作製した。この珪藻土分散液を約80℃に加熱した後、急速に撹拌しながら約1時間かけて二酸化チタン前駆体化合物溶液を滴下して加えた。添加後、ビーカーを時計皿で覆い、内容物を加熱して20分間沸騰させた。水酸化アンモニウム溶液をビーカーに加え、内容物のpHを約9にした。洗浄水のpHが中性になるまで沈降/デカンテーションにより、得られた生成物を洗浄した。生成物を濾過によって分離し、100℃で一晩乾燥させた。
【0107】
乾燥生成物の一部を磁器るつぼに入れ、加熱速度毎分約3℃で室温から350℃まで加熱することによって焼成し、350℃で1時間保持した。
【0108】
酸化鉄の堆積
175mLの脱イオン水に溶解した20.0gのFe(NO・9HO(J.T.Baker,Inc.(Phillipsburg,N.J.))を硫酸チタニル溶液に置き換えたことを除いて、本質的に上記の二酸化チタン堆積法を用いて、酸化鉄を珪藻土の上に堆積させた。更なる試験のため、得られた酸化鉄改変珪藻土の一部を同様に350℃で焼成した。
【0109】
材料
18メガオーム水:Milli−Q(商標)グラジエント脱イオンシステム(Millipore Corporation(Bedford,MA)から市販)を用いて18メガオームの滅菌脱イオン水を得た。
3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(乾燥、再水和可能培地を備える平板状フィルム型培養デバイス)は3M Company(St.Paul,MN)から得た。
3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート(少なくとも1つの発酵性栄養素を含む平板状フィルム型培養デバイス)は3M Company(St.Paul,MN)から得た。
吸着緩衝液:18メガオームの水1リットルに、5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、及び1mMのKHPOを(磁気撹拌で)混合し、次いで0.22マイクロメートルのナイロン製フィルタ膜を持つVWR(商標)真空濾過システム(VWR(West Chester,PA)から得た)を通過させることによりその溶液をフィルタ滅菌することによって作製したpH 7.2を有するカチオン含有塩溶液。
100倍吸着緩衝液:(1)100mLの18メガオーム水に、500mMのKCl、100mMのCaCl、及び10mMのMgClを含むフィルタ滅菌(本質的に上述のように)した溶液と、(2)100mLの18メガオーム水に、100mMのKHPOを含むフィルタ滅菌(本質的に上述のように)した溶液とを等量で混合することによって作製したpH 7.2を有するカチオン含有塩溶液(全ての溶液は磁気撹拌で調製した)。
30〜50マイクロメートルの範囲の寸法を有するアミン官能化(アミン官能オルガノシランを用いた反応からの有機コーティング)ガラスビーズは、PolySciences,Inc.(Warrington,PA)から入手した。
CM−111:非晶質の長球化ケイ酸マグネシウム(固形球形として成型済みの微小球、粒子密度2.3g/立方センチメートル、表面積3.3m/g、粒径:90パーセントが約11マイクロメートル未満、50パーセントが約5マイクロメートル未満、10パーセントが約2マイクロメートル未満、3M Company(St.Paul,MN)から販売の3M(商標)Cosmetic Microspheres CM−111)として入手した。
Fe−DE:本質的に上記のように、珪藻土上に酸化第二鉄を堆積させた。
Ti−DE:本質的に上記のように、珪藻土上に二酸化チタンを堆積させた。
W−210:アルカリアルミノケイ酸塩セラミック(固形球形として成型済みの微小球、粒子密度2.4g/立方センチメートル、表面積5m/立法センチメートル、粒径:95パーセントが約12マイクロメートル未満、90パーセントが約9マイクロメートル未満、50パーセントが約3マイクロメートル未満、10パーセントが約1マイクロメートル未満、3M Company(St.Paul,MN)から販売の3M(商標)Cosmetic Microspheres W−210)として入手した。
【0110】
実施例1〜4及び比較例C−1〜C−6
吸着緩衝液改質無機濃縮剤の調製
CM−111粉末の5グラムのアリコートを2つの部分に分割し、その部分を2つの50mLのポリプロピレン製遠心管に設置し、VWRアナログボルテックスミキサー(VWR(West Chester,PA))上で1分間に14,000回転(rpm;最高速度)で10秒間渦動することによって、50mLの18メガオーム滅菌水に懸濁/分散した。結果として得られた懸濁液を、次いで3000rpmで5分間遠心分離し(Eppendorf centrifuge 5804、VWR(West Chester,PA))、ペレット状のCM−111を得た。各ペレットを、次いで50mLの18メガオーム水に再懸濁し、本質的に上述のように処理することによって、再度洗浄した。CM−111を事前洗浄するこの工程を、50mLの18メガオーム水での合計三度の洗浄にわたり、再度実行した。次に、結果として得られた事前洗浄したCM−111ペレットを、本質的に上述のように渦動することによって50mL量の吸着緩衝液に分散し、次いで、本質的に上述のように遠心分離し、ペレット状のCM−111を得た。CM−111を50mLの吸着緩衝液で洗浄するこの工程を、三度行った。最終洗浄後、結果として得られた上澄みを処分し、結果として得られた少なくとも部分的に湿ったペレットを、滅菌ガラスのペトリ皿(VWR(West Chester,PA))に設置した。少なくとも部分的に湿ったペレットを、(SciGene(Sunnyvale,CA)から入手可能なRobbins Scientific Model 400ハイブリダイゼーションインキュベーターを使用して)80℃で5〜6時間にわたり乾燥させた(実施例1)。結果として得られた乾燥粉末(吸着緩衝液改質無機濃縮剤)を室温(約23℃)で保管した。
【0111】
以下の他の無機濃縮剤を、100ミリグラム量で、本質的に同一のプロセス(100mgの薬剤を50mLの18メガオーム水中で三度洗浄し、次いで50mLの吸着緩衝液中で三度洗浄する)を使用して処理した;Ti−DE(実施例2)、Fe−DE(実施例3)、アミン官能化ガラスビーズ(比較例C−6)、及びW−210(実施例4)。対応する未処理の薬剤を比較のために保持した;未処理CM−111(比較例C−1)、未処理Ti−DE(比較例C−2)、未処理Fe−DE(比較例C−3)、未処理アミン官能化ガラスビーズ(比較例C−4)、及び未処理W−210(比較例C−5)。
【0112】
微生物含有試料の濃縮
Tryptic Soy Agar平板培地(4重量パーセント(wt%)のDifco(商標)Tryptic Soy Broth、Becton Dickinson(Sparks,MD))から、白金耳量(標準的な4ミリメートルの細菌接種用ループ)のE.coli(ATCC 51813)一晩画線培養物を用いて、0.5McFarland標準(Vitek DENSICHEK,bioMerieux,Inc.,Durham,NC)の、3mLのButterfield緩衝液(pH 7.2,VWR,West Chester,PA)溶液を作製した。この標準はおよそ10コロニー形成単位/mL(CFU/mL)に相当する。連続希釈を、フィルタ滅菌(本質的に上述のように)した脱イオン18メガオーム水で行った。10CFU/mL希釈から、15mLのフィルタ滅菌18メガオーム水で更に1000倍希釈を実行し、最終濃度約100CFU/mLを得た。粒子無機濃縮剤(処理済(実施例1〜5)及び未処理(比較例C−1〜C−5))を、5mLのポリプロピレン製チューブ(BD Falcon,VWR(West Chester,PA))に計量し、100CFU/mLの試験試料の1.0mL量中の10mgの濃縮剤を使用して、細菌捕捉を試験した。次いでチューブにキャップをし、室温(23℃)にて約1分にわたって手動で振盪することによって、それらの内容物を混合した。
【0113】
混合後、Thermolyne Vari Mix(商標)揺動プラットフォーム(Barnstead International(Iowa)14サイクル/分)で、チューブを15分にわたってインキュベートした。インキュベート後、チューブをベンチトップに10分間置いて粒子濃縮剤を沈殿させた。沈殿後、1mLの結果として得られた上澄みを、ピペットを使用して除去し、3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))上に播種した。沈殿したペレットを1.0mLの水で再懸濁し、同様に播種した。
【0114】
最初の10CFU/mL希釈(粒子濃縮剤なし)からの1000倍希釈を、3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))上に対照として播種した。粒子濃縮剤(試料接触を有しない)もまた、滅菌対照として播種した。結果として得られたプレートを、37℃のインキュベーターで一晩インキュベートした(VWR Orbital Shaking Incubator VWR(West Chester.PA))。
【0115】
製造業者の説明書にしたがって、このプレートを、3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(PPR、3M Company(St.Paul)、自動光学的検出システム)を使用して分析し、コロニー計数を得た。次式を使用して結果を算出した。
捕捉効率=(濃縮剤上のコロニー数)/(対照中の全コロニー数)×100
【0116】
結果(2つのデータ点に対する平均値及び標準偏差)を以下の表1に示す。表1及び続く表内の濃縮剤の記述、「AB洗浄済」は、濃縮剤が吸着緩衝液で処理されていることを示すために使用する。
【0117】
【表1】

【0118】
比較例C−7〜C−10
別個の100mgアリコートの粉末(無機濃縮剤Ti−DE(比較例C−7)、Fe−DE(比較例C−8)、W−210(比較例C−9)、及びCM−111(比較例C−10))を、最終スピン/洗浄工程後に、結果として得られた少なくとも部分的に湿った粉末を乾燥させずに、1mL吸着緩衝液にペレットを再懸濁することによって湿ったペレットとして使用したことを除いて、本質的に上述の実施例1〜4のように処理した。1mLのスパイク水中の〜100CFUの大腸菌を用いた捕捉効率試験を、本質的に実施例1〜4に記載のように実行した。結果(2つのデータ点に対する平均値及び標準偏差)を、以下の表2に示す。
【0119】
【表2】

【0120】
実施例5及び比較例C−11
別個のCM−111ペレットを、本質的に実施例1にあるように処理したが、ペレットを80℃で乾燥させる替わりに、吸着緩衝液に再懸濁し、結果として得られたスラリーを室温(約23℃)で48時間乾燥させた(実施例5)。1.1mLのスパイク水中のおおよそ100CFUの大腸菌を用いた捕捉効率試験を、本質的に実施例1〜4に記載のように実行した。結果(2つのデータ点に対する平均値及び標準偏差)を、以下の表3に示す。
【0121】
【表3】

【0122】
室温乾燥実験に使用したCM−111ロットの未処理アリコートを、表面組成物判定のために保持した(比較例C−11)。
【0123】
元素の表面化学分析(ESCA)による表面組成物判定
吸着緩衝液処理済み及び未処理(比較)濃縮剤の表面組成物を、X線光電子分光法(XPS、ESCAとしても既知)によって分析した。粉末のアリコートを、アルミホイル上で、感圧性接着剤両面テープに押し付けた。圧縮窒素ガスを吹き付けることにより、過剰の粉末をそれぞれの試料表面から除去した。
【0124】
単色Al−Kα X線励起源(1487eV)と、一定パスエネルギーモードで動作する半球形電子エネルギーアナライザーを有する、クレイトスAXIXウルトラ(Kratos AXIS Ulta)(商標)DLDスペクトロメーター(クレイトス・アナリティカル社(Kratos Analytical))、英国マンチェスター市)を用いてスペクトルデータを取得した。試料表面に対して測定して90度のテイクオフ角度で±10度の受け取りの立体角により出射光電子を検出した。低エネルギー電子フラッドガンを使用して、表面帯電を最少化した。アノードに対して140ワット電力及び2×10−8Torr(2.67μPa)チャンバー圧力を用いて、測定を行った。
【0125】
約300マイクロメートル×約700マイクロメートルの寸法のそれぞれの濃縮剤アリコートの表面積を、それぞれのデータ点に対して分析した。それぞれのアリコートの3つの面積を分析し、平均して、報告された平均の原子パーセント値を得た。データ処理は標準のビジョン2(Vision 2)(商標)(クレイトス・アナリティカル社(KratosAnalytical)、英国マンチェスター市)を使用して実施された。実施例1〜5並びに比較例C−1〜C−6及びC−11に対してデータが収集された。結果(元素が濃縮剤の表面上に、XPSによって検出可能なレベルで存在し、報告された数字は3つのデータ点にわたって平均化される)を以下の表4に示す。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例6及び比較例C12〜C−13
分離したE.coli(ATCC 51813)のコロニーを、画線プレートから5mLのBBL(商標)Trypticase(商標)Soy Broth(Becton Dickinson,Sparks,MD)に接種し、37℃で18〜20時間にわたってインキュベートした。〜10コロニー形成単位/mLのこの一晩培養物を、Butterfield緩衝液(pH 7.2、VWR(West Chester,PA))に希釈した。10細菌/mL希釈からの1000倍希釈を100mLの飲料水で実行し、最終濃度0.1CFU/mL(合計10CFU)を有する大腸菌スパイク水を得た。比較例C−12について、100mgの未処理/対照CM−111を、100mLの大腸菌スパイク水を含有する、250mLの滅菌ポリプロピレン製円錐底遠心管(VWR(West Chester,PA))に添加した。比較例C−13について、100mgの未処理/対照CM−111を、100mLの大腸菌スパイク水及び1.1mLの100倍吸着緩衝液を含有する、250mLの滅菌ポリプロピレン製円錐底遠心管(VWR(West Chester,PA))に添加した。実施例6については、本質的に実施例1にあるように吸着緩衝液改質された100mgのCM−111を、100mLの大腸菌スパイク水を含有する、250mLの滅菌ポリプロピレン製円錐底遠心管(VWR(West Chester,PA))に添加した。チューブにキャップをし、次いでThermolyne Vari Mix(商標)揺動プラットフォーム(Barnstead International(Iowa)14サイクル/分)上で、室温(23℃)で60分間インキュベートした。インキュベーション後、チューブを30分間研究室のベンチに立てておき、CM−111粒子を沈殿させた。
【0128】
CM−111取り出し工程において、結果として得られた上澄みの80mL量を、ピペッティングにより処分し、沈殿した粒子を含有する残りの20mLを、チューブからピペットで取り出し、50mLの滅菌ポリプロピレン製チューブ(VWR(West Chester,PA))に移し、2000rpm(Eppendorf centrifuge 5804、VWR(West Chester,PA))で5分間遠沈させ、ペレットを得た。ペレットを、1mLのButterfield緩衝液に再懸濁し、3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレートに接種した。〜10CFU/mL希釈(粒子濃縮剤なし)から1mL量を、対照として正副2枚の3M(商標)Petrifilm(商標)E.coli/大腸菌群計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))に播種した。結果として得られたプレートを、製造業者の説明書にしたがって更に処理し、3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(3M Company(St.Paul,MN))を使用して分析した。結果(2つのデータ点にわたって平均化したもの)を表5に示す。
【0129】
【表5】


〜20パーセントの標準偏差
**〜10パーセントの標準偏差
【0130】
実施例7及び比較例C−14〜C−16
分離したE.coli(ATCC 51813)のコロニーを、画線プレートから5mLのBBL Trypticase Soy Broth(Becton Dickinson,Sparks,MD)に接種し、37℃で18〜20時間にわたってインキュベートした。〜10コロニー形成単位/mLのこの一晩培養物を、フィルタ滅菌18メガオーム水で希釈した。10細菌/mL希釈からの1000倍希釈を、10mLのフィルタ滅菌18メガオーム水で実行し、最終濃度〜10細菌/mL(合計〜10CFU)を有する大腸菌スパイク水を得た。実施例7について、10mgの吸着緩衝液改質(本質的に実施例1のように)されたCM−111を、10mLの大腸菌スパイク水を有する50mLの滅菌ポリプロピレン製円錐底遠心管(VWR(West Chester,PA))に添加した。チューブにキャップをし、次いでThermolyne Vari Mix(商標)揺動プラットフォーム(Barnstead International(Iowa)14サイクル/分)上で、室温(23℃)で30分間インキュベートした。インキュベーション後、2000rpm(Eppendorf centrifuge 5804、VWR(West Chester,PA))で5分間チューブを遠心分離し、CM−111粒子を沈殿させ、CM−111ペレットを形成した。
【0131】
100マイクロリットルの未スパイク水(1チューブ)及び100マイクロリットルの大腸菌スパイク水(2チューブ、それぞれ異なる希釈から)を含有する対照チューブを、CM−111濃縮剤なしで、それぞれキャップをして同様にインキュベートした(比較例C−14(未スパイク)、C−15(希釈番号1:100マイクロリットルの10CFU/mL希釈)、及びC−16(希釈番号2:100マイクロリットルの10CFU/mL希釈))。播種対照として、吸着緩衝液改質(本質的に実施例1にあるように)されたCM−111ペレット(捕捉した細菌あり)を、3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレートに播種した。結果として得られたプレートを、製造業者の説明書にしたがって、更に処理し、3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(3M Company(St.Paul.,MN))を使用して分析した。この播種対照の結果は、比較例C−15に対して1.9×10CFU/mLの濃縮を示した。CM−111播種対照は、捕捉効率100パーセントを表した。
【0132】
CM−111ペレットを、100マイクロリットルの18メガオーム水に再懸濁し、1.5mLの滅菌ポリプロピレン製微量遠心管(PLASTIBRAND(商標)、BRAND GMBH+CO(Wertheim,Germany))に移した。100マイクロリットルの量のBacTiter−Glo(商標)ATP検定試薬(Promega(Madison,WI))を、各チューブ(対照チューブ含む)に添加し、VWRアナログボルテックスミキサー(VWR(West Chester,PA))で15秒間14,000rpm(最高速度)で混合した。生物発光(対照チューブ及びCM−111ペレット含有チューブ)を、ベンチトップ照度計(FB−12単一チューブ照度計、Berthold Detection Systems USA(Oak Ridge,TN))を使用して(相対ルシフェラーゼ単位(RLU)で)測定した。結果(2つのデータ点からの平均値)を以下の表6にまとめる。
【0133】
【表6】


RLU=相対ルシフェラーゼ単位
【0134】
実施例8〜12及び比較例C−17〜C−22
白金耳量(標準的な4ミリメートルの細菌接種用ループ)の黄色ブドウ球菌(ATCC 6538)一晩培養物を用いて、0.5のMcFarland標準(〜10CFU/mLに相当)を作製し、本質的に上述のように調製した10mgのさまざまな異なる粒子濃縮剤を用いて試験した。さまざまな粒子濃縮剤(10mg)を、本質的に実施例1〜4にあるように、1.1mLの水試料からの〜100CFUの捕捉について試験し、3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))に播種した。〜10CFU/mL希釈(粒子濃縮剤なし)から1mL量を、対照として正副2枚の3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))に播種した。3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(3M Company(St.Paul.,MN))を使用して、プレートを分析した。
【0135】
黄色ブドウ球菌に対する捕捉データを、以下の表7に示す(2つのデータ点に対する平均値及び標準偏差を示す)。微生物のコロニーと濃縮剤の色が類似している(プレートリーダーに対して殆どコントラストをもたらさない)場合には、結果は上澄み液を基準とし、下記の式を用いて濃縮剤による微生物のパーセント捕捉率により報告された。
上澄み液中のCFU/mLパーセンテージ=(播種された上澄みからのコロニー数)/(播種された未処理の対照試料からのコロニー数)×100
捕捉効率又はパーセント捕捉率=100−上澄み液中のCFU/mLパーセンテージ
【0136】
上澄み液を基準とした上述の等式から計算した捕捉効率は、表7の「試験方法」に「上澄み」と標示する。濃縮剤を基準とした捕捉効率は、実施例1〜4に既定の等式に基づいたものであり、表7の「試験方法」に「剤」として標示する。
【0137】
【表7】

【0138】
実施例13〜16及び比較例C−23〜C−26
Tyrptic Soy Agar平板培地(製造業者の説明書にしたがって調製された、4重量パーセントのDifco(商標)Tryptic Soy Broth、Becton Dickinson and Company(Sparks,MD))から、白金耳量(標準的な4ミリメートルの細菌接種用ループ)の緑膿菌(ATCC 15442)一晩培養物を用いて、0.5のMcFarland標準(〜10CFU/mLに相当)を作製し、本質的に上述のように調製した10mgのさまざまな異なる粒子濃縮剤を用いて試験した。さまざまな粒子濃縮剤(10mg)を、本質的に実施例1〜4に記載のように、1.0mL水試料からの〜100CFUの捕捉について試験し、3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))上に播種した。最初の10CFU/mL希釈(濃縮剤なし)からの1mL量を、対照として正副2枚の3M(商標)Petrifilm(商標)好気性菌計測プレート(3M Company(St.Paul,MN))に播種した。結果として得られたプレートを、37℃で約24時間インキュベートし、3M(商標)Petrifilm(商標)プレートリーダー(PPR、3M Company(St.Paul))を使用して分析した。粒子薬剤の捕捉効率は、実施例1〜4に記載の式を使用することによって判定する。緑膿菌に対する捕捉データを、以下の表8に示す(2つのデータ点に対する平均値及び標準偏差)。
【0139】
【表8】

【0140】
実施例17〜21及び比較例C−27〜C−32
Blood Agar平板培地(5パーセントのBlood Agar、Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))から、白金耳量(標準的な4ミリメートルの細菌接種用ループ)のリステリア・イノキュア(ATCC 33090)一晩培養物を用いて、0.5のMcFarland標準(〜10CFU/mLに相当)を作製し、本質的に上述のように調製した10mgのさまざまな異なる粒子濃縮剤を用いて試験した。粒子濃縮剤(10mg)を本質的に実施例1〜4に記載のように1.0mLの水試料からの〜100CFUの捕捉について試験した。10分の沈殿後、結果とて得られた1mLの上澄みを、別個の5mL滅菌チューブに取り除いた。結果として得られた濃縮剤のペレットを、100マイクロリットルの18メガオーム水に再懸濁し、MOXプレート(Modified Oxford Medium Plates、Hardy Diagnostics(Santa Maria,CA))に散布することによって播種した。上澄みからの100マイクロリットル量もまた、同様に播種した。最初の〜10CFU/mL希釈(濃縮剤なし)からの10倍希釈を、対照として正副2枚に播種した。手集計によりコロニー計数を得、実施例1〜4において上述の式を使用して、粒子濃縮剤の捕捉効率を判定した。リステリア・イノキュアに対する捕捉データを、以下の表9に示す(2つのデータ点に対する平均値及び標準偏差)。
【0141】
【表9】

【0142】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び公報に含有される参照された記述内容は、その全体が、それぞれ個別に組み込まれているかのように、参照として組み込まれる。本発明に対する様々な予見できない修正及び変更が、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者に明らかとなるであろう。本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって過度に限定されるものではなく、またかかる実施例及び実施形態は、一例として表されているだけであり、但し、本発明の範囲は、以下のように本明細書に記載した請求項によってのみ限定されることを意図するものと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)吸着緩衝液改質無機濃縮剤であって、(1)少なくとも1つの無機濃縮剤を少なくとも1つのカチオン含有塩溶液と接触させ、前記無機濃縮剤の少なくとも一部分を湿らせることと、(2)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を乾燥させることと、を含むプロセスによって調製される、吸着緩衝液改質無機濃縮剤を準備することと、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を準備することと、(c)前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤を前記試料と接触させることであって、それにより前記少なくとも1つの微生物株の少なくとも一部分が、前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤に結合されるか又はそれによって捕捉されること、とを含む、プロセス。
【請求項2】
前記無機濃縮剤が、粒子濃縮剤である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記無機濃縮剤が、シリコン含有無機材料、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記シリコン含有無機材料が、金属酸化物改質珪藻土、金属アルミノケイ酸塩、非晶質金属ケイ酸塩、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記無機濃縮剤が、非晶質金属ケイ酸塩、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記無機濃縮剤が、非晶質の長球化ケイ酸マグネシウムである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記カチオン含有塩溶液が、水性である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記カチオン含有塩溶液が、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、第一鉄カチオン、ランタンカチオン、アルミニウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される、少なくとも1つのカチオンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
前記カチオン含有塩溶液が、少なくとも1つの多価カチオンを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記多価カチオンが、二価カチオンである、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記二価カチオンが、二価カルシウムカチオン、二価マグネシウムカチオン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記カチオン含有塩溶液が、水1リットル当たり、5mMのKCl、1mMのCaCl、0.1mMのMgCl、及び1mMのKHPOを含み、pH 7.2を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記無機濃縮剤を前記カチオン含有塩溶液と前記接触させるが、洗浄によって実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記乾燥させることが、前記少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を約25℃よりも高い温度に加熱することによって実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記試料が流体の形態である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記微生物株が、細菌、真菌、酵母、原生動物、ウイルス、細菌内生胞子、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤を前記試料と前記接触させることが、前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤を前記試料と混合することによって実行される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスが、結果として得られる微生物結合した吸着緩衝液改質無機濃縮剤を凝離することと、その結果得られる凝離された微生物結合した吸着緩衝液改質無機濃縮剤を前記試料から分離することと、及び/又は少なくとも1つの結合した微生物株の存在を検出することと、を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
(a)吸着緩衝液改質無機濃縮剤であって、少なくとも1つのカチオンを含む少なくとも1つの吸着緩衝液を用いて、少なくとも1つのシリコン含有無機濃縮剤を処理して、X線光電子分光法(XPS)によって判定される、前記少なくとも1つのカチオンの原子とシリコンの原子との比率が、対応する未処理のシリコン含有無機濃縮剤の比率よりも大きい表面組成物を有するシリコン含有無機濃縮剤を準備することを含むプロセスによって調製される、吸着緩衝液改質無機濃縮剤を準備することと、(b)少なくとも1つの微生物株を含む試料を提供することと、(c)前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤を前記試料と接触させることであって、前記少なくとも1つの微生物株の少なくとも一部分が、前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤に結合されるか、又はそれによって捕捉されることと、を含む、プロセス。
【請求項20】
請求項1に記載のプロセスを実行する際に使用するための吸着緩衝液改質無機濃縮剤を調製するためのプロセスであって、前記調製プロセスが微生物含有試料の実質的な非存在下において実行されるという条件で、前記調製プロセスが、(a)少なくとも1つの無機濃縮剤を、少なくとも1つのカチオン含有塩溶液と接触させて、前記無機濃縮剤の少なくとも一部分を湿らせることと、(b)結果として得られる少なくとも部分的に湿った無機濃縮剤を乾燥させることと、を含む、プロセス。
【請求項21】
請求項1に記載のプロセスを実行する際に使用するための吸着緩衝液改質無機濃縮剤を調製するためのプロセスであって、前記調製プロセスが微生物含有試料の実質的な非存在下において実行されるという条件で、前記調製プロセスが、少なくとも1つのカチオンを含む少なくとも1つの吸着緩衝液を用いて少なくとも1つのシリコン含有無機濃縮剤を処理し、X線光電子分光法(XPS)によって判定される、前記少なくとも1つのカチオンの原子とシリコンの原子との比率が、対応する未処理のシリコン含有無機濃縮剤のものよりも大きい表面組成物を有するシリコン含有無機濃縮剤を準備することを含む、プロセス。
【請求項22】
前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤が、請求項20に記載のプロセスによって調製される、請求項1に記載のプロセスを実行する際に使用するための吸着緩衝液改質無機濃縮剤。
【請求項23】
前記吸着緩衝液改質無機濃縮剤が、請求項21に記載のプロセスによって調製される、請求項1に記載のプロセスを実行する際に使用するための吸着緩衝液改質無機濃縮剤。
【請求項24】
(a)請求項22に記載の吸着緩衝液改質無機濃縮剤と、(b)試験容器と、(c)請求項1に記載のプロセスを実行する際の前記濃縮剤の使用のための説明書と、を含む、キット。
【請求項25】
(a)請求項23に記載の吸着緩衝液改質無機濃縮剤と、(b)試験容器と、(c)請求項1に記載のプロセスを実行する際の前記濃縮剤の使用のための説明書と、を含む、キット。

【公表番号】特表2013−514810(P2013−514810A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546073(P2012−546073)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/060947
【国際公開番号】WO2011/079038
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】