説明

微生物燃料電池及び微生物燃料電池用の隔膜カセット

【課題】エネルギー回収効率を低下させずに部品を交換できる微生物燃料電池及び微生物燃料電池用の隔膜カセットを提供する。
【解決手段】嫌気性微生物群11を担持させる負電極10を有機性基質Sに浸漬すると共に、少なくとも一部分がイオン透過性隔膜21で形成された外殻25と入出孔22、23とを有する密閉型中空カセット20内に電解液Dと共に封入し又はカセット20のイオン透過性隔膜21の内側に結合した正電極15を有機性基質Sに差し込み、入出孔22、23経由でカセット内に酸素Oを供給しつつ負電極10及び正電極15を電気的に接続する回路18経由で電気を取り出す。好ましくは、密閉型中空カセット20の外殻25を、イオン透過性隔膜21を張設することで密閉される開口26と入出孔22、23とを有する中空外殻フレーム25とし、イオン透過性隔膜21を正電極15と一体成形された膜・電極接合体(MEA)とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物燃料電池及び微生物燃料電池用の隔膜カセットに関し、とくに嫌気性微生物の代謝反応を利用して有機性基質から電気を取り出す微生物燃料電池、及びその微生物燃料電池に用いる隔膜カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1及び2が開示するように、嫌気性微生物を用いたメタン発酵その他の嫌気発酵処理により有機性基質からメタンガスや水素ガス等のバイオガスを回収し、そのバイオガスをタービン、燃料電池等に供給することでエネルギーを取り出すシステムが開発されている。例えば特許文献1は、生ごみスラリー・有機排液等の廃棄物系有機性基質をメタン生成菌等の嫌気性微生物の担体が保持されたバイオリアクターに投入してバイオガスに変換(分解)し、そのバイオガスを燃料電池に導入して電気エネルギーを生産する生ごみのエネルギー回収システムを開示している。しかし、このように有機性基質を一旦バイオガス等に変換したうえでエネルギーを回収するシステムは、変換ステップにおけるエネルギーロスが大きく、有機性基質からのエネルギー回収効率が低い(通常は40%程度又はそれ以下)という問題点がある。
【0003】
これに対し、例えば特許文献3及び4が開示するように、バイオガス等への変換ステップを経ることなく、嫌気性微生物により有機性基質から直接的に電気エネルギーを回収する微生物燃料電池(Microbial Fuel Cell;以下、MFCということがある)の開発が進められている。図12(A)及び(B)は、特許文献3及び4の開示する微生物燃料電池をそれぞれ示す。以下、同図を参照して微生物燃料電池の原理を、本発明の理解に必要な程度において簡単に説明する。
【0004】
図12(A)の微生物燃料電池50は、微生物を担持する導電性で多孔質(例えば炭素繊維製)の作用極(負電極)51と、酸化性物質に接触させる導電性の対極(正電極)52と、両電極の間に挟持させたイオン透過性隔膜53とを有し、作用極51に有機性物質含有水等の被電解物質含有液(又はガス)57を供給すると共に、対極52に空気(又は酸素)58を供給する。作用極51及び対極52に仕切板54、54を介して電気的に接続された集電シート55、55は、外部回路(図示せず)を介して相互に接続することにより閉回路を形成する。作用極51では微生物の触媒作用により被電解物質含有液57から水素イオン(H)及び電子(e)が生成され、水素イオンはイオン透過性隔膜53を透過して対極52側へ移動し、電子は集電シート55及び外部回路を介して対極52側へ移動する。作用極51から移動した水素イオン及び電子は対極52において酸素(O)と結合し、水(HO)となって消費される。その際に、閉回路に流れる電気エネルギーを回収する。
【0005】
図12(B)の微生物燃料電池60は、内側の円筒形アノード61(負電極)と外側の円筒形カソード(正電極)63との間に円筒形のイオン透過性膜62を挟持させて3重筒状体とし、円筒形アノード61の内側空隙に嫌気性下で生育可能な微生物及び有機性物質を含む溶液又は懸濁液64を流し、円筒形カソード63の外側周面を空気65と接触させる。同図(A)の場合と同様に、アノード61では微生物により有機性物質64から水素イオン(H)及び電子(e)が生成され、水素イオンはイオン透過性隔膜62を透過してカソード63側へ移動するので、アノード61とカソード63との間に電位差が生じる。この状態で、アノード61とカソード63とを導線66によって接続すると電位差電流が流れるので閉回路が形成され、導線66に流れる電気エネルギーを回収する。
【0006】
図12に示す微生物燃料電池50、60は何れも、微生物の触媒作用(代謝反応、生物化学的変換)によって有機性基質等から直接的に電気エネルギーを生産し、バイオガス等に変換するステップが存在しないので、従来の変換ステップを用いるエネルギー回収システムに比して回収効率の向上が期待できる。また、発電のみならず、排水処理、有機性廃棄物処理、有機性廃棄物処理の付帯設備等としても利用できる。なお、作用極51又はアノード61において生成された有機性基質由来の電子は微生物の電子伝達系等を介して最終的に作用極51又はアノード61に受け渡されるが、微生物からの電子の受け渡しを促進するため、メディエータ(電子伝達体)を微生物に加える場合もある。
【0007】
【特許文献1】特開2000−167523号公報
【特許文献2】特開2002−280054号公報
【特許文献3】特開2006−159112号公報
【特許文献4】特開2004−342412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図12の微生物燃料電池において、燃料たる有機性基質を分解して電気を生産する微生物(発電を担う微生物)は負電極51、61又はその近傍で生息・活動しているが、運転状況によって隔膜53、62又は正電極52、63においても或る種の微生物(好気性微生物等)が付着・増殖し、隔膜53、62又は正電極52、63の発電に関する性能が低下(劣化)する場合がある。また、一般に燃料電池においては、長期間使用すると発電時に生じるラジカル等によって隔膜又は正電極に劣化が発生することも報告されている。従って、微生物燃料電池の高いエネルギー回収効率を長期間維持するためには、劣化した隔膜及び/又は正電極を定期的に又は必要に応じて交換する必要がある。
【0009】
しかし、図12(A)及び(B)の微生物燃料電池は、何れも隔膜53、62及び正電極52、63が負電極51、61の密閉を維持するための構造部材となっており、隔膜53、62又は正電極52、63を交換する際に電池を分解して負電極51、61の密閉を解除しなければならない問題点がある。微生物燃料電池の負電極に生息する微生物(発電を担う微生物)は嫌気性微生物が主体であり、一般に酸素に弱く、空気への暴露により生物活性(発電活性)が著しい損傷を受けることが分かっている。従って、劣化した隔膜53、62又は正電極52、63を交換するために負電極51、61の密閉を解除すると、負電極51、61に生息する微生物が空気に暴露されて損傷を受け、交換後に負電極51、61の微生物を再度馴養しなければ所定の出力を回復することができず、数日から数週間にわたりエネルギー回収効率が低下してしまう(後述の実験例2参照)。
【0010】
このような微生物の損傷(死滅や活性低下等)を避けるため、研究室等では微生物燃料電池を嫌気インキュベータ内に持ち込み、酸素のない雰囲気下で電池の解体と劣化した部品の交換とを行なっている。しかし、電池の形状・大きさ・設置場所等の理由によって嫌気インキュベータ内に持ち込めない場合、或いは利用できる嫌気インキュベータがない場合があり、そのような場合は微生物活性の著しい損傷を覚悟の上で部品の交換作業を空気中で行わざるを得ないのが実情である。また、現時点で商品化等されている微生物燃料電池は存在しないが、今後実用化が望まれる長期運転可能な大型の微生物燃料電池では、劣化した部品の交換のために嫌気インキュベータを利用することは困難である。微生物燃料電池の実用化を図るため、エネルギー回収効率を低下させずに劣化した部品を交換できる技術の開発が求められている。
【0011】
そこで本発明の目的は、エネルギー回収効率を低下させずに部品を交換できる微生物燃料電池及び微生物燃料電池用の隔膜カセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図1の実施例及び図2のブロック図を参照するに、本発明による微生物燃料電池1は、有機性基質Sに浸漬して嫌気性微生物11を担持させる負電極10、及び少なくとも一部分がイオン透過性隔膜21で形成された外殻25(図3(B)及び図4(G)参照)と入出孔22、23とを有する密閉型中空カセット20内に電解液Dと共に封入して(図5参照)又はカセット20のイオン透過性隔膜21の内側に結合して(図3(B)参照)有機性基質S中に差し込む正電極15を備え、入出孔22、23経由でカセット20内に酸素Oを供給しつつ負電極10及び正電極15を電気的に接続する回路18(図2参照)経由で電気を取り出すものである。
【0013】
好ましくは、図3(B)の実施例に示すように、密閉型中空カセット20に、イオン透過性隔膜21を張設することで密閉される開口26と入出孔22、23とを有する中空外殻フレーム25を含め、イオン透過性隔膜21を正電極15と一体成形された膜・電極接合体(Membrane Electrode Assembly;以下、MEAということがある)とする。或いは、図4(G)の実施例に示すように、正電極15を通気加工された電極15aとし、密閉型中空カセット20を、その通気性正電極15aの全表面にコーティングされたイオン透過性隔膜21とその通気性正電極15aに接続された微細孔22a、23a付き通気管22、23とにより形成してもよい。
【0014】
更に好ましくは、図1及び図2に示すように、負電極10を保持しつつ有機性基質Sを滞留させて負電極10を浸漬させる内部空間3と、内部空間3の有機性基質Sに密閉型中空カセット20を差し込む開閉可能な差込口6と、差込口6の開放時に内部空間3へ不活性ガスGを注入するガス注入口7とを有する嫌気性電解槽2を設ける。この場合は、図3(A)に示すように、密閉型中空カセット20に嫌気性電解槽2の差込口6を閉鎖する蓋部材29を含めることができる。
【0015】
また、図3の実施例を参照するに、本発明による微生物燃料電池用の隔膜カセット19は、有機性基質Sに浸漬して嫌気性微生物11を担持させる負電極10と酸素Oに接触させる正電極15とを有する微生物燃料電池1の両電極10、15の間に設ける隔膜において、少なくとも一部分がイオン透過性隔膜21で形成された外殻25(図3(B)参照)と入出孔22、23とを有する密閉型中空カセット20を備えてなるものである。好ましくは、密閉型中空カセット20に、イオン透過性隔膜21を張設することで密閉される開口26と入出孔22、23とを有する中空外殻フレーム25を含め、イオン透過性隔膜21を正電極15と一体成形された膜・電極接合体(MEA)とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明による微生物燃料電池は、嫌気性微生物11を担持させる負電極10を有機性基質Sに浸漬すると共に、少なくとも一部分がイオン透過性隔膜21で形成された外殻25と入出孔22、23とを有する密閉型中空カセット20内に電解液Dと共に封入した又はカセット20のイオン透過性隔膜21の内側に結合した正電極15を有機性基質Sに差し込み、入出孔22、23経由でカセット20内に酸素Oを供給しつつ負電極10及び正電極15を電気的に接続する回路18経由で電気を取り出すので、次の顕著な効果を奏する。
【0017】
(A)イオン透過性隔膜21を正電極15が内側に封入又は結合された密閉型中空カセット20としているので、負電極10を有機性基質Sに浸漬させたまま、カセット20だけを有機性基質Sに差し込み又は抜き出して隔膜21及び/又は正電極15を簡単に交換することができる。
(B)また、密閉型中空カセット20を交換する際に負電極10を有機性基質Sに浸漬させたままとすることができ、空気への暴露による負電極10の嫌気性微生物11の損傷(死滅や活性低下等)を小さく抑えることができる。
(C)有機性基質Sを滞留して負電極10を浸漬させる内部空間3と、密閉型中空カセット20を有機性基質Sに差し込む開閉可能な差込口6と、不活性ガスGの注入口7とを有する嫌気性電解槽2を設け、差込口6の開放時に不活性ガスGを注入しながらカセット20を交換すれば、カセット20の交換に伴う負電極10の嫌気性微生物11の損傷を更に小さく抑えることができる。
(D)従って、従来の微生物燃料電池のように隔膜21及び/又は正電極15の交換の際に微生物を再馴養することが不要となり、交換後直ちに微生物燃料電池の所定発電能力を発揮させ、エネルギー回収効率の低下を避けることができる。
(E)嫌気インキュベータの利用が困難な大型の微生物燃料電池にも適用可能であり、微生物燃料電池の実用化への寄与が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、カセット差込口6を有する嫌気性電解槽2を用いた本発明の微生物燃料電池1の一実施例を示し、図2はそのブロック図を示す。図示例の嫌気性電解槽2は蓋体8により密閉された内部空間3を有し、その内部空間3の内側に負電極10を保持すると共に燃料たる有機性基質Sを滞留させて負電極10を浸漬する。内部空間3に保持された負電極10は、嫌気性微生物11が付着して生息する固定床としての機能も果たす。例えば生ごみスラリー・有機排液等の廃棄物系有機性基質Sを流入口4から電解槽2の内部空間3へ流入させ、内部空間3に一定時間滞留させて基質S中の有機物を負電極10と接触させて分解したのち、流出口5から電解槽2外へ排出する。
【0019】
また図示例の電解槽2(図示例では蓋体8)は開閉可能な差込口6を有し、その差込口6から内部空間3の有機性基質S中に、外殻25の少なくとも一部分がイオン透過性隔膜21で形成され且つ内側に正電極15が封入又は結合された隔膜カセット19(密閉型中空カセット20)を差し込む。好ましくは、負電極10と近接対向するが接触しないようにカセット19を差し込み、負電極10と対向するカセット19の外殻面をイオン透過性隔膜21で形成する。負電極10に接続されて電解槽2外に引き出した負極導線(リード線)12と、カセット19内の正電極15に接続されて電解槽2外に引き出した正極導線(リード線)16とを、図2に示すような外部回路18を介して電気的に接続することにより微生物燃料電池1のセルを構成する。
【0020】
ただし、本発明の微生物燃料電池1は、嫌気性微生物11を担持する負電極10と正電極15が内側に封入又は結合された隔膜カセット19を備えていれば足り、電解槽2を必須の構成とするものではない。例えば、特許文献1及び2が開示するような既存の嫌気性処理槽(バイオリアクター)に、その微生物固定床に代えて負電極10を浸漬し又は炭素繊維製等の導電性のある微生物固定床を負電極10として用い、且つ、隔膜カセット19を差し込むことで、本発明の微生物燃料電池1を適用することができる。
【0021】
図3(C)は、嫌気性微生物11を担持できる導電性材料、例えば炭素繊維の織布又は不織布製の電極材料に負極導線12を接続した負電極10の一例を示す。炭素繊維製の負電極10は多くの細孔を有しており、その細孔に微生物が付着して生息するので、短時間のうちに微生物を効率的に担持させることができ、しかも担持させた微生物が剥離しにくい利点を有している。負電極10に担持させる嫌気性微生物11はとくに培養して用意する必要はなく、負電極10を有機性基質S中に浸漬しておけば、嫌気条件下で有機性基質S中に自然状態で存在する発電を担う微生物(通常は嫌気性の混合微生物群)を負電極10上で馴養することができる。ただし、必要に応じて有機性基質S中へ浸漬する前に、別途培養した発電を担う嫌気性微生物11を負電極10に付着させてもよい。また、必要に応じて嫌気性微生物11にメディエータ(電子伝達体)を加えてもよい。なお、図示例は板状の負電極10を示しているが、炭素繊維の織布又は不織布は様々な形状に加工することが可能であり、例えば図12(B)に示すように負電極10を円筒形状とすることもできる。
【0022】
図3(A)及び同図(B)は、内側に正電極15を封入又は結合すべき隔膜カセット19の一例を示す。同図(B)の分解図に示すように、図示例の隔膜カセット19は、入出孔22、23及び開口26を有する中空外殻フレーム25(同図(D)及び同図(F)も参照)と、そのフレーム25の開口26に張設する一対のイオン透過性隔膜21と、各隔膜21をフレーム25の開口26に固定する一対の開口26付き固定部材28とで構成された密閉型中空カセット20を有している。図示例では、フレーム25を貫通する開口26の両端にそれぞれ隔膜21を張設し、その隔膜21を固定部材28で開口26の周縁に固定又は接着することにより、密閉された中空部27を有するカセット20が形成される(同図(E)も参照)。ただし、開口26は必ずしもフレーム25を貫通している必要はなく、中空部27に連通する少なくとも1つの開口26を設け、その開口26を隔膜21で密閉すれば足りる。また、隔膜21の固定に接着剤等を用いることができれば固定部材28を省略してもよい。
【0023】
密閉型中空カセット20のフレーム25及び固定部材28は、例えば塩化ビニール、アクリル、ボリカーボネート、フッ素樹脂等のプラスチック材料製とすることができる。フレーム25及び固定部材28を鉄、ステンレス等の金属材料製としてもよいが、有機性基質Sに浸漬して長期間使用するためには腐食防止塗装等を施すことが望ましい。図示例の固定部材28はイオン透過性隔膜21の外側に配置され、隔膜21と負電極10との接触を避ける機能を果たし得るが、後述するように隔膜21を膜・電極接合体(MEA)とする場合は、隔膜21と負電極10との電気的接触(導通)を避けるために固定部材28を絶縁材料製とすることも有効である。
【0024】
カセット20に張設するイオン透過性隔膜21は、イオン交換膜、又は膜状の基体にイオン交換樹脂を塗布したもの等とすることができ、例えばアメリカデュポン社製のナフィオン、株式会社トクヤマ製のネオセプタ等のイオン交換樹膜又は樹脂を用いることができる。ただし、隔膜21は必ずしもイオン選択透過性がなくてもよく、最低限、止水性能(水漏れしない能力)があれば足りる。酸素透過性は低い方が好ましいが、イオン透過性能は高い方がよく、この性質は一般に相反する。また、隔膜21としてセラミック等を利用することも考えられる。
【0025】
カセット20には、図5に示すように中空部27に正電極15を電解液D(例えばNaCl溶液、KCl溶液等)と共に封入するか、又は図3(B)に示すようにイオン透過性隔膜21の内側に正電極15を結合する。正電極15は金属又は炭素繊維等の導電性材料製とすることができるが、従来の燃料電池分野の研究からとくに白金(Pt)が優れていることが知られている。ただし、白金は非常に高価な貴金属材料であることから、有効表面積を最大化するために白金パウダー又はカーボンパウダーに担持させた白金をカーボン電極材料等に塗布して正電極15とする。図3の実施例では、イオン透過性隔膜21を正電極15が一体成形されたMEA(15+21)としている。従来から固体高分子型燃料電池の分野においてフッ素系MEA、炭化水素系MEA等が開発されており、そのようなMEA(15+21)をカセット20の開口26に張設して利用することができる。イオン透過性隔膜21をMEA(15+21)とすることにより、カセット20内の中空部27に電解液Dを封入する必要がなくなり、カセット20を構成が簡単な空気正極(エアカソード)とすることができる。
【0026】
密閉型中空カセット20に設けた一対の入出孔22、23は、密閉されたカセット20の中空部27に正電極15と接触させる酸素(又は空気)Oを供給するためのものである。例えば、MEA(15+21)を用いてカセット20を空気正極とした場合は、入出孔22、23をガス送入孔22及びガス送出孔23とし、図2に示すようにガス送入装置31から酸素(又は空気)Oをカセット20の中空部27に供給する。図3(D)に示すように、送入孔22には中空部27の下端部にまで延びる延長管(例えばホース等)24を接続し、中空部27の下端部に酸素Oを供給して上端部の送出孔23から排出することにより中空部27の全体に酸素Oを均等に供給し、正電極15と酸素Oとの接触の効率化を図ることができる。図5のように正電極15を電解液Dと共に封入したカセット20においても図3(D)と同様に酸素を供給することができるが、正電極15の邪魔とならないように、カセット20の中空部27の周縁に沿わせて比較的小径の(細い)延長管24を用いることが望ましい。また加工がやや難しくなるが、同図(G)に示すように、送入孔22(又は送出孔23)を外殻フレーム25の内部に上端部から下端部まで穿った貫通孔とすることも有効である。
【0027】
なお、図示例では、カセット20内の正電極15に接続された正極導線16を入出孔22、23の一方(図示例では送出孔23)を介してカセット20の外部に引き出している。ただし、正極導線16の引き出し方法は図示例に限定されない。また、図示例では断面矩形の中空外殻フレーム25を用いてカセット20を矩形箱型としているが、フレーム25及びカセット20の形状は電解槽2及び負電極10の形状等に応じて任意に選択可能である。例えば、カセット20を外周面の全体又は少なくとも一部分がイオン透過性隔膜21で形成された円筒形とし、そのようなカセット20を図12(B)に示すように円筒形状の負電極10の中空部に差し込んで多重筒状(入れ子状)構造の微生物燃料電池1とすることができる。
【0028】
図4(G)は、図3のような外殻フレーム25を用いない密閉型中空カセット20の他の一例を示す。図示例では、通気加工された正電極15aを用い、その通気性正電極15aの全表面にコーティングされたイオン透過性隔膜21と、その通気性正電極15aに接続された一対の微細孔22a、23a付き通気管22、23とによりカセット20を形成している。通気加工された正電極15aの一例は、例えば通気加工された正電極材料15aに正極導線16を接続し(同図(B)参照)、更に正電極材料15aの一端縁に沿って微細孔22a付き通気管22を密着させて接続すると共に他端縁に沿って微細孔23a付き通気管23を密着させて接続したのち(同図(C)参照)、電極材料15aの表面全体に白金パウダー等を塗布したものである(同図(D)参照)。例えば、そのように形成された正電極15aをイオン透過性樹脂溶液30中に浸漬することで正電極15aの全表面にイオン透過性隔膜21を塗布し(同図(E)参照)、塗布したイオン透過性隔膜21を固化・重合・乾燥させることでカセット20の外殻25を形成する(同図(F)参照)。同図(D)の白金塗布工程を省略し、例えば白金パウダー等が懸濁したイオン透過性樹脂溶液30を正電極材料15aの全表面に塗布することにより、イオン透過性隔膜21でコーティングされた正電極15(カセット20)を形成してもよい。なお、図4に示すカセット20も、正電極15の形状に応じて板状、棒状、筒状等の任意の形状とすることが可能である。
【0029】
図1及び図2の微生物燃料電池1を駆動する場合は、嫌気性電解槽2の差込口6を開放して負電極10が浸漬する有機性基質S中に正電極15が封入又は保持された隔膜カセット19(密閉型中空カセット20)を差し込み、差込口6を蓋部材29で閉鎖したうえでカセット20内に入出孔22、23経由で酸素Oを供給する。図示例では、差込口6の蓋部材29をカセット20に一体的に取り付け、その蓋部材29をカセット20が電解槽2内の所定位置に位置決めされるように設計している。図12を参照して上述したように、有機性基質Sに浸漬した負電極10では、担持させた嫌気性微生物11により水素イオン(H)及び電子(e)が生成される。生成された水素イオンはイオン透過性隔膜21を透過してカセット20の内側へ移動し、電子は負極導線12、外部回路18、正極導線16を介してカセット20の内側の正電極15へ移動し、両者は正電極15において供給された酸素Oと結合して水(HO)となる。その際に、外部回路18に流れる電気を取り出すことでエネルギーを回収する。
【0030】
負電極10で生成した水素イオンがイオン透過性隔膜21を透過して密閉型中空カセット20の内側へ移動するためには、カセット20のイオン透過性隔膜21と負電極10とをできるだけ接近させることが望ましく、両者の間隔が大きくなるとエネルギー回収効率(発電効率)の低下の原因となる。図示例では、説明容易化のため負電極10とカセット20との間に比較的広い間隔を設けて表しているが、望ましくはイオン透過性隔膜21と負電極10とを水素イオンが移動容易な微小間隔、例えば1cm以下、好ましくは5mm以下の間隙で対向するように、カセット20を位置決めする。更に望ましくは、負電極10と対向するカセット20の外殻面の全体又はできるだけ広範囲をイオン透過性隔膜21で形成し、負電極10とイオン透過性隔膜21との対向面積を大きくする。
【0031】
図5のように密閉型中空カセット20内に正電極15が電解液Dと共に封入されてイオン透過性隔膜21と正電極15との間に電解液Dが介在する場合、又は図3(B)のようなMEA(15+21)においてイオン透過性隔膜21の内側に結合された正電極15が外側(負電極10に面した側)へ滲出しない場合は、イオン透過性隔膜21の外側面と負電極10とが接触してもとくに問題はない。しかし、MEA(15+21)のイオン透過性隔膜21の内側に結合された正電極15が外側へ滲出しうる場合、又は上述した図4において白金パウダー等が懸濁したイオン透過性樹脂溶液30を正電極材料15aの表面に塗布することで正電極15(カセット20)を形成した場合は、イオン透過性隔膜21の外側面と負電極10とが電気的に接触(導通)すると負電極10で生成された電子が外部回路18ではなく正電極15に流れ、外部回路18を介して電気エネルギーを効率的に回収できなくなるので、イオン透過性隔膜21と負電極10とをできるだけ接近させつつ接触させないことが有効である。そのような場合は、例えばカセット20の隔膜21の外側に配置する固定部材28(図3(B)参照)を絶縁材料製とし、その固定部材28によってイオン透過性隔膜21と負電極10との間に導通しない微小間隙を確保してもよい。
【0032】
なお、図示例では微生物燃料電池1の複数のセルを外部回路18により並列に接続しているが、図5に示すように、外部回路18により微生物燃料電池1の複数のセルを直列接続としてもよい。また、図6に示すように、微生物燃料電池1の複数のセルをそれぞれ隔壁32で分離し、各セルを電気的に隔離することができる。燃料たる有機性基質Sの導電性がそれほど高くない場合は、燃料を介して生じる各セル間の干渉による電圧低下は小さいので各セルを隔壁32で分離する必要性はあまり大きくないが、導電性の高い有機性基質Sを使用する場合は、各セルを隔壁32により電気的に隔離しなければ電子が燃料を導通して異なるセル間でリーク電流が生じ得るので、直列接続の利点を生かすために各セルを隔壁32で隔離することが有効である。理想的には、図6に示すように各セル毎に有機性基質Sの流入口4及び流出口5を設け、各セルの有機性基質Sを完全に絶縁する。ただし、各セルの有機性基質Sが完全に絶縁されていなくても、適切な隔壁32により各セル間の干渉を十分に低く抑える設計は可能であり、その場合は流入口4及び流出口5を各セル毎に設ける必要はない。なお、カセット20と負電極10とは図1、2、5のように平行に対向させる必要はなく、例えば図8に示すように断面円形の電解槽2を用いる場合は、カセット20と負電極10とを同一中心の周りに放射状に並べて相互に対向させてもよい。
【0033】
嫌気性電解槽2の有機性基質S中に差し込んだ密閉型中空カセット20は、隔膜21又は正電極15の劣化等に応じて差込口6を開放して抜き出すことにより、新たなカセット20に容易に交換することができる。その際に、負電極10は有機性基質Sに浸漬させたままとし、負電極10を空気に晒さないようにすることができるので、負電極10に付着した嫌気性微生物11の損傷(死滅や活性低下等)を抑えることができる。好ましくは、図1及び2に示すように電解槽2の気相部に不活性ガスGを注入するガス注入口7を設け、差込口6の開放時に電解槽2の内部空間3(この場合は気相部)に酸素を含まない不活性ガス(窒素ガス等)を注入し、差込口6から電解槽2内への空気の進入を防止する。差込口6からの空気の混入を防止しながら緩やかに素早くカセット20の交換を行なえば、負電極10の嫌気性微生物11の損傷を更に小さく抑えることができる。
【0034】
なお、嫌気性電解槽2から抜き出した密閉型中空カセット20、すなわち微生物の付着や汚れ・析出物により劣化した密閉型中空カセット20は、例えば活性汚泥法で実用化されている浸漬膜と同様に、イオン透過性隔膜21又はMEA(15+21)を洗浄したのち再利用することが可能である。図5のようにイオン透過性隔膜21と正電極15とを分離している場合は、劣化したカセット20から抜き出した正電極15を新たなカセット20に封入して再利用することが可能であり、高価な貴金属を利用する正電極15を比較的寿命の短い隔膜21から分離して隔膜21のみを交換すれば足りるので、図3に示すようなMEA(15+21)を用いたカセット20(エアカソード)に比してカセット20の交換に伴う費用を低く抑えることも可能である
【0035】
[実験例1]
本発明による微生物燃料電池1及び密閉型中空カセット20の有効性を確認するため、容積3リットルの嫌気性電解槽2を用いて微生物燃料電池1を試作し、先ず長期連続運転時のエネルギー回収効率の変化を確認する実験を行なった。本実験では、図3(B)のような中空外殻フレーム25(約50×200mm)を貫通する開口26(断面約40×180mm)の両端にMEA(15+21)を張設した密閉型中空カセット20を空気正極(エアカソードユニット)として用い、図8に示す断面円形の電解槽2内に5枚のカーボンフェルト製負電極10(約50×200mm、アノード)を浸漬し、その間に5枚のカセット20を負電極10に対向するように差し込むことにより微生物燃料電池1を構成した。また、電解槽2内にスターチ等の有機性高分子を含む人工廃水(有機性基質)Sを所定COD負荷(1〜3kg/m3/日)で連続的に流入させつつ160日間にわたり微生物燃料電池1を連続運転し、外部回路18の抵抗器(負荷2Ω)で電圧を継続的に測定した。人工廃水(有機性基質)S中には、発電を担う嫌気性微生物11として土壌微生物を植種した。本実験による150日間の電圧の測定結果を図9のグラフに示す。
【0036】
図9のグラフは、負電極10の発電を担う嫌気性微生物11の初期馴養に30日程度の期間が必要であり、その間に外部回路18で得られる電圧が徐々に上昇することを示す。また同グラフから、約30日後に安定期に入り、外部回路18の電圧がほぼ350mVで一定に維持され、エネルギー回収効率が安定的に維持されることが分かる。しかし、運転開始から100日程度を経過すると電圧が徐々に下降し、エネルギー回収効率が低下した。この効率の低下は、カセット20のMEA(15+21)の表面に形成された好気性微生物を主とするバイオフィルム等が原因であると考えられる。すなわち、実験に用いた微生物燃料電池1では、100日程度の連続運転によりイオン透過性隔膜21が劣化し、エネルギー回収効率を維持するために劣化した隔膜21を交換する必要が生じた。
【0037】
[実験例2]
続いて、実験例1と同じ微生物燃料電池1及び有機性基質Sを用いて長期連続運転を行い、運転開始から101日目に微生物燃料電池1を分解し、負電極10が空気に晒される状態で密閉型中空カセット20を交換する実験を行なった。本実験では、カセット20の交換時にボルト9(図1及び図2参照)を解除して嫌気性電解槽2から蓋体8を外し、電解槽2の内部空間3を空気中に開放しながら劣化した5つのカセット20を基質Sから抜き出し、新たな5つのカセット20を差し込んだのち再度蓋体8で電解槽2を密閉して実験を再開した。本実験による電圧の測定結果を図10のグラフに示す。図10のグラフから、負電極10が空気に晒される状態で隔膜21を交換すると負電極10に生息する微生物が損傷を受け、外部回路18で得られる電圧が著しく低下することが分かる。また、交換前の電圧に復帰するために初期馴養(再立ち上げ)に近い約25日の期間が必要であることが分かる。
【0038】
[実験例3]
更に、実験例1と同じ微生物燃料電池1及び有機性基質Sを用いて長期連続運転を行い、運転開始から101日目に嫌気性電解槽2の差込口6を一時的に開放して密閉型中空カセット20を交換する実験を行なった。電解槽2には各カセット20に対応する5つの差込口6を設け、各差込口6を順次に開放してカセット20を1枚ずつ抜き出したのち、迅速に新たなカセット20を差し込んで差込口6を閉鎖するサイクルを繰り返した。負電極10は有機性基体S中に保持し、できるだけ空気に晒されないようにした。本実験による電圧の測定結果を図11のグラフに示す。
【0039】
図11のグラフから、開閉可能な差込口6を介してカセット20を交換した場合は、差込口6の開放時に嫌気性電解槽2内に僅かに混入した空気の影響と思われる若干の電圧低下が発生したが、カセット20を交換したのち数日以内に交換前の電圧に復帰することが分かる。すなわち、本発明の微生物燃料電池1及び密閉型中空カセット20は、隔膜21及び/又は正電極15を交換時におけるエネルギー回収効率の低下を抑えることに有効であることが確認できた。また、差込口6の開放時にガス注入口7から電解槽2の気相部に不活性ガスGを注入しながらカセット20を交換する更なる実験を行なった結果、図11に示す電圧低下を更に小さくできることを確認できた。すなわち、本発明の微生物燃料電池1及び密閉型中空カセット20を用いれば、実質的にエネルギー回収効率を安定的に維持しながら微生物燃料電池1の隔膜21及び/又は正電極15を交換可能であることを確認することができた。
【0040】
こうして本発明の目的である「エネルギー回収効率を低下させずに部品を交換できる微生物燃料電池及び微生物燃料電池用の隔膜カセット」の提供を達成できる。
【実施例1】
【0041】
以上、正電極15が内側に封入又は結合された隔膜カセット19(密閉型中空カセット20)を負電極10が浸漬する有機性基質S中に差し込み、入出孔22、23を介してカセット19内に酸素Oを供給しながら外部回路18を介して電気エネルギーを回収する微生物燃料電池について説明したが、本発明による密閉型中空カセット20を備えた隔膜カセット19は、図7のように負電極10が浸漬する負極槽(嫌気性電解槽)2と正電極15が浸漬する正極槽42とを分離した2槽式の微生物燃料電池1においても有効に利用できる。
【0042】
図7の2槽式の微生物燃料電池1は、有機性基質Sを滞留させて負電極10を浸漬させる内部空間3を有する負極槽(嫌気性電解槽)2と、電解液Dを滞留させて正電極15及び密閉型中空カセット20を浸漬させる内部空間43を有する正極槽42と、負極槽2の有機性基質Sを正極槽42のカセット20に循環させるポンプ等の基質循環装置41とを有する。負極槽2の負電極10に接続されて負極槽2外に引き出した負極導線12と、正電槽42の正電極15に接続されて正極槽42外に引き出した正極導線16とを、外部回路18を介して電気的に接続することにより微生物燃料電池1を構成する。正極槽42の電解液D内には、例えば電解液Dの正電極15の下端付近に差し込んだ散気管(図示せず)を介して、正電極15と接触させる酸素(又は空気)を供給する。或いは、予め十分に酸素(空気)を飽和させた電解液Dを正極槽42の流入口44から供給し、流出口43から排出された電解液Dに再び酸素(空気)を飽和させて流入口44へ戻して循環させる方法も考えられる。
【0043】
図7の微生物燃料電池1では、正極槽42に浸漬させた密閉型中空カセット20の入出孔22、23を基質送入孔22及び基質送出孔23とし、負極槽2の負電極10で生成された水素イオン(H)を有機性基質Sと共にカセット20の内側に循環させ、その水素イオンを正極槽42内のカセット20外に配置された正電極15へカセット20のイオン透過性隔膜21と電解液Dとを介して移動させる。また、負極槽2の負電極10で生成された電子は負極導線12、外部回路18、正極導線16を介して正極槽42の正電極15へ移動させ、その外部回路18に流れる電気を取り出すことでエネルギーを回収する。なお、図示例ではカセット20と正電極15とを分離しているが、カセット20の隔膜21を外側に正電極15が一体成形されたMEAとし、その隔膜21の外側を酸素(又は空気)と接触させてもよく、その場合は電解液Dがなくてもよい。
【0044】
図7のように微生物燃料電池1を2槽式とすれば、負電極10と正電極15との間の距離が長くなって電池の内部抵抗が高くなる可能性はあるものの、イオン透過性隔膜21又は正電極15の劣化時に正極槽42において密閉型中空カセット20を交換すれば足り、負極槽2を何ら開放する必要がなくなる。従って、隔膜21及び/又は正電極15を交換時に負電極10の嫌気性微生物11が空気に晒されて損傷を受けるおそれがなく、交換後直ちに微生物燃料電池1の所定発電能力を発揮させることが可能となる。また、高価な貴金属を利用する正電極15と寿命の短いイオン透過性隔膜21とを分離することができ、カセット20の交換に伴う費用を低く抑えることができる。なお、図7のように負極槽2と正極槽42とを分離した2槽式において、図1及び図2のようにカセット20を負極槽2に差し込み、正極槽42の電解液Dをカセット21の入出孔22、23に循環させて微生物燃料電池1を構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の微生物燃料電池の一実施例の説明図である。
【図2】図1の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の隔膜カセットの一実施例の説明図である。
【図4】本発明の隔膜カセットの他の実施例の説明図である。
【図5】本発明の微生物燃料電池の他の実施例の説明図である。
【図6】本発明の微生物燃料電池の更に他の実施例の説明図である。
【図7】2つの電解槽を用いた本発明の微生物燃料電池の実施例の説明図である。
【図8】断面円形の電解槽を用いた本発明の微生物燃料電池の実施例の説明図である。
【図9】本発明の微生物燃料電池の長期連続運転実験の実験結果を示すグラフの一例である。
【図10】本発明の微生物燃料電池の長期連続運転実験の実験結果を示すグラフの他の一例である。
【図11】本発明の微生物燃料電池の長期連続運転実験の実験結果を示すグラフの更に他の一例である。
【図12】従来の微生物燃料電池の説明図である。
【符号の説明】
【0046】
1…微生物燃料電池 2…嫌気性電解槽(負極槽)
2a…フランジ 3…内部空間
4…基質流入口 4a…基質流入管
5…基質流出口 5a…基質流出管
6…カセット差込口 7…不活性ガス注入口
8…蓋体 9…ボルト
10…負電極 11…嫌気性微生物
12…負極導線(リード線) 15…正電極
15a…通気性正電極(材料) 16…正極導線(リード線)
18…外部回路 19…隔膜カセット
20…密閉型中空カセット 21…イオン透過性隔膜
22…送入孔又は通気管 22a…通気管の微細孔
23…送出孔又は通気管 23a…通気管の微細孔
24…延長管 25…中空外殻フレーム(外殻)
26…開口(窓) 27…中空部
28…固定部材(窓枠部材) 29…差込口蓋部材
30…イオン透過性樹脂溶液 30a…容器
31…ガス送入装置 32…隔壁
41…基質循環装置 42…正極槽
43…内部空間 44…電解液流入口
45…電解液流出口
50…微生物燃料電池 51…作用極(負電極)
52…対極(正電極) 53…イオン透過性隔膜
54…仕切板 55…集電シート
56…押さえ板 57…被電解物質含有液(又はガス)
58…空気(又は酸素) 59…加湿用水溶液
60…微生物燃料電池 61…アノード(負電極)
62…イオン透過性隔膜 63…カソード(正電極)
64…有機性溶液又は懸濁液 65…空気
66…導線
D…電解液 G…不活性ガス
O…酸素(又は空気) S…有機性基質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性基質に浸漬して嫌気性微生物を担持させる負電極、及び少なくとも一部分がイオン透過性隔膜で形成された外殻と入出孔とを有する密閉型中空カセット内に電解液と共に封入し又は当該カセットの隔膜の内側に結合して前記有機性基質中に差し込む正電極を備え、前記入出孔経由でカセット内に酸素を供給しつつ前記負電極及び正電極を電気的に接続する回路経由で電気を取り出してなる微生物燃料電池。
【請求項2】
請求項1の燃料電池において、前記密閉型中空カセットに、前記イオン透過性隔膜を張設することで密閉される開口と入出孔とを有する中空外殻フレームを含めてなる微生物燃料電池。
【請求項3】
請求項1又は2の燃料電池において、前記イオン透過性隔膜を、前記正電極と一体成形された膜・電極接合体(MEA)としてなる微生物燃料電池。
【請求項4】
請求項1の燃料電池において、前記正電極を通気加工された電極とし、前記密閉型中空カセットを、当該正電極の全表面にコーティングされたイオン透過性隔膜と当該正電極に接続された微細孔付き通気管とにより形成してなる微生物燃料電池。
【請求項5】
請求項1から4の何れかの燃料電池において、前記負電極を保持しつつ有機性基質を滞留させて負電極を浸漬させる内部空間と、当該内部空間の有機性基質に前記密閉型中空カセットを差し込む開閉可能な差込口と、当該差込口の開放時に内部空間へ不活性ガスを注入するガス注入口とを有する嫌気性電解槽を設けてなる微生物燃料電池。
【請求項6】
請求項5の燃料電池において、前記密閉型中空カセットに、前記嫌気性電解槽の差込口を閉鎖する蓋部材を含めてなる微生物燃料電池。
【請求項7】
有機性基質に浸漬して嫌気性微生物を担持させる負電極と酸素に接触させる正電極とを有する微生物燃料電池の当該両電極間に設ける隔膜において、少なくとも一部分がイオン透過性隔膜で形成された外殻と入出孔とを有する密閉型中空カセットを備えてなる微生物燃料電池用の隔膜カセット。
【請求項8】
請求項7の隔膜カセットにおいて、前記入出孔をカセット内に酸素を供給するガス入出孔とし、前記密閉型中空カセット内に電解液と共に正電極を封入し又は当該カセットの隔膜内側に正電極を結合してなる微生物燃料電池用の隔膜カセット。
【請求項9】
請求項7の隔膜カセットにおいて、前記密閉型中空カセットの入出孔をカセット内に前記負電極の浸漬する有機性基質を循環させる基質入出孔とし、前記カセット外に電解液を介して正電極を配置し又は当該カセットの隔膜外側に正電極を結合してなる微生物燃料電池用の隔膜カセット。
【請求項10】
請求項7から9の何れかの隔膜カセットにおいて、前記密閉型中空カセットに、前記イオン透過性隔膜を張設することで密閉される開口と入出孔とを有する中空外殻フレームを含めてなる微生物燃料電池用の隔膜カセット。
【請求項11】
請求項7から10の何れかの隔膜カセットにおいて、前記イオン透過性隔膜を、前記正電極と一体成形された膜・電極接合体(MEA)としてなる微生物燃料電池用の隔膜カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−93861(P2009−93861A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261796(P2007−261796)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度及び平成19年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 新エネルギー技術研究開発 バイオマスエネルギー高効率転換技術開発(先導技術開発) 廃棄物系バイオマスを原料とする微生物燃料電池の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】