説明

微生物産生成分の回収方法

【課題】 培養された微細藻類を3つの工程(第一工程:濃縮・収穫、第二工程:脱水・乾燥、第三工程:有機溶媒抽出)を行なうことなく、有毒な有機溶剤の使用や多量の有機溶剤を使用せずとも、炭化水素等の微生物が産生する成分と水を分離させ、簡単で効率よく微生物が産生する成分を回収する方法を提供すること。
【解決手段】 細胞壁を有する微生物を含むスラリー中で、該微生物及び/または該微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスを機械的に粉砕または破砕した後、該スラリーから該微生物が産生する成分を回収することを特徴とする、微生物産生成分の回収方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類を含む微生物産生成分の回収方法に関し、微生物及び/または微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスを機械的に粉砕または破砕した後、該スラリーから該微生物が産生する成分を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスを用いた液体燃料、健康食品、香粧品、動物性飼料、医薬品等の製造は、持続的な経済発展に不可欠な技術である。例えば、光合成により炭化水素を生産する微生物の一種である微細藻類による液体燃料の製造は、その潜在的生産能力の大きさから期待が大きいと言われている。
微細藻類の光合成能力は高く、単位面積あたりではトウモロコシの100倍以上もあり、微細藻類には重油や軽油などの「緑の原油(炭化水素)」を合成する種類もあり、その温暖化ガス吸収効率の高さとともに、近年食物と競合しないバイオ燃料源として注目されている。
【0003】
このような微生物の一種である微細藻類を用いる場合、従来の方法では、培養された微細藻類を以下の3つの工程を得て、微細藻類からの炭化水素を回収している。
第一工程:培養された微細藻類を膜分離、遠心分離、凝集剤による沈降分離等の固液分離操作で「濃縮と収穫」
第二工程:収穫された微細藻類を「脱水及び乾燥」
第三工程:乾燥された微細藻類を「溶媒抽出」
しかし、微細藻類を用いる場合、ほとんどが水中で光合成するので多量の水を含み、この水分が微細藻類から炭化水素を取り出す際の大きな障害になっている。
【0004】
つまり、第一工程で濃縮と収穫された微細藻類においては、水分が90%近く残りペースト状態(泥状)であり、目的とする炭化水素量に比べて水分量がはるかに大きいことであることや微細藻類の多くが厚い細胞壁をもつことから、圧搾法は効率の良い炭化水素の回収方法とはいえなかった。
そのため第一工程で得られたペースト状(泥状)の微細藻類は濃縮と収穫後、第二工程で天日干しや高温加熱等によって乾燥され、粉状とされる。このとき、粉状の乾燥微細藻類は細胞壁で覆われているため、第三工程で乾燥微細藻類から炭化水素を抽出するためには、細胞壁を酸や粉砕によって破壊しなければならず、ヘキサン、アセトン、クロロホルム等の有機溶剤が用いられている。さらに第三工程には、抽出液に含まれるこれら多量の有機溶剤を蒸発させて除去する必要がある。
【0005】
また、第三工程で乾燥微細藻類からの炭化水素を溶媒抽出する方法では、抽出に用いる溶媒に、毒性のないこと、水と相溶でないこと、目的物質の溶解性能に優れていること、水との密度差が大きいこと、安価で入手し易いことといった要件と同時に、沸点が低く容易に回収及び再利用が可能であることが求められている。また、溶媒抽出を効率的に行うには、微細藻類と溶媒との接触を促進する必要があるため、微細藻類を取り囲む水分をできるだけ少なくすることが求められている。このような様々な要件を全て満たす抽出法による回収プロセスは、操作が煩雑で、エネルギー消費も大きいため、経済性を含めて課題が多かった。
【0006】
上述の技術的課題は、炭化水素生産能を有する微細藻類だけでなく、天然物の色素の一種であるアスタキサンチン生産能を有する微細藻類(特許文献1)や、高度不飽和脂肪酸の生産能を有する微細藻類(特許文献2)などにも同じことが言える。つまり、光合成に
よって作られた炭化水素等を含む微細藻類が生産する成分を取り出すのに、濃縮・収穫、脱水・乾燥、細胞壁の破壊、多量の有機溶剤の使用や有毒な溶剤の使用と除去といった、複雑な工程と、それに伴う多くのエネルギーが必要になるという問題がある。
【0007】
そこで、微細藻類を高温高圧で保持する水熱処理を用いた方法が提案されている(例えば、特許文献3、非特許文献1、2)。この方法では、水熱反応によって、微細藻類を構成するセルロース等の固体バイオマス成分を液化することができるため、微細藻類から効率よく炭化水素を回収することができる。
しかしながら、水熱処理を用いた方法においては、上述のとおり、得られる炭化水素に固体バイオマス成分に由来する成分が必然的に含有されるため、炭化水素生産性微生物により生産された炭化水素を選択的に回収することは困難であった。
【0008】
すなわち、水熱処理により得られる炭化水素においては、炭化水素生産性微生物により生産された炭化水素以外の夾雑物質(例えば、含酸素化合物)の混入を避けることができなかった。
また、炭化水素生産性微生物の水性スラリーを加熱して45℃以上、150℃未満の温度で保持する加熱処理工程と、前記水性スラリーから、前記炭化水素生産性微生物により生産された炭化水素を含有する油状物質を回収する方法が提案されている(特許文献2)。
【0009】
上述の方法では、従来の高温高圧で保持する水熱処理を用いた方法よりは、加熱処理に要するエネルギーや時間を低減することができることや、炭化水素以外の夾雑物質の混入をさけることができる。
しかしながら、この方法では加熱処理工程前か加熱処理工程後に、水性スラリー中に炭化水素の良溶媒(例えば、ヘキサンやヘプタンなど)を添加しているため、溶媒で炭化水素を抽出した後、溶媒の除去といった問題がある。
【0010】
すなわち、多くの水分を含んでいる水性スラリー内で微細藻類の厚い細胞壁を破壊することなく、ヘキサン等の良溶媒を含む水性スラリーを加熱して、炭化水素を効率よく溶媒抽出して回収しているため、回収工程で溶媒の除去が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−306870号公報
【特許文献2】特開平9−271388号公報
【特許文献3】特開平6−041545号公報
【特許文献4】特開2010−111865号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Inoue et al., Biomass and Bioenergy, Vo.6, No.4, pp.269-274, 1994
【非特許文献2】Dote et al., Fuel, Vol.73, No.12, pp.1855-1857, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、培養された微細藻類を3つの工程(第一工程:濃縮・収穫、第二工程:脱水・乾燥、第三工程:有機溶媒抽出)を行なうことなく、有毒な有機溶剤の使用や多量の有機溶剤を使用せずとも、炭化水素等の微生物が産生する成分と水を分離させ、簡単で効率よく微生物が産生する成分を回収する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
細胞壁を有する微生物を含むスラリー中で、該微生物及び/または該微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスを機械的に粉砕または破砕した後、該スラリーから該微生物が産生する成分を回収することにより上記課題が解決できることがわかり、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、細胞壁を有する微生物を含むスラリー中で、該微生物及び/または該微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスを機械的に粉砕または破砕した後、該スラリーから該微生物が産生する成分を回収することを特徴とする、微生物産生成分の回収方法に存する。
【発明の効果】
【0015】
容易な操作で効率よく、微生物産生成分を回収することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定はされない。
細胞壁を有する微生物を含むスラリー中で、該微生物及び/または該微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスを機械的に粉砕または破砕した後、該スラリーから該微生物が産生する成分を回収することを特徴とする。
【0017】
まず、細胞壁を有する微生物について説明する。微生物としては、バクテリア、原虫、藻類、菌類が含まれる。この中で、細胞壁を有する微生物とは「バクテリア(細菌)、菌類、藻類」があり、特に藻類(微細藻類)を指すことが多い。
細胞壁を有する微生物としては、高度不飽和脂肪酸、天然色素、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、脂肪酸、有機酸または炭化水素から選ばれる1つ以上の物質を生産する微細藻類、細菌または菌類が挙げられる。
【0018】
具体的には、炭化水素の生産能を有する細菌(Vibrio furnisssii, Pseudomonas anaerooleophila, Klebsiella anaerooleophilaなど)、天然物の色素の一種であるアスタキサンチン生産能を有する微細藻類(Haematococus pluvialis, Chlorella zofigiensis, Chlorococcumsp., Phaffis rhodozyma, Monoraphidium sp.など)、高度不飽和脂肪酸の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の生産能を有する微細藻類(Pinguichrysis sp., Pavlova sp., Pheodactylum tricornutum, Nannochloropsis oceanicなど)が挙げられ、特に、炭化水素を生産する微細藻類(Botryococcus braunii, Chlorella sp., Cylindrotheca sp., Dunaliella primolecta, Isochrysis sp., Nannochloris sp., Nannochloropsissp., Neochloris oleoabundaus, Nitzschia sp., Phaeodactylum tricornutum, Schizochytrium sp., Tetraselmis sueica, Pseudochoricystis ellipsoidea, Microcystis sp., Aurantiochytrium sp.など)が好ましく、該微細藻類がボトリオコッカス・ブラウニイ、シュードコリシスチス・エリプソイディア、オーランチオキトリウム、シキゾリウムから選ばれる微細藻類またはこれら微細藻類の変異株もしくは遺伝子組み換え株であることが好ましい。
【0019】
微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスについて説明する。細胞間マトリクスとは、個々の細胞をつなぎとめて細胞の群体を形成する役割を持つ。また、細胞外マトリクスとも呼ばれ、細胞の外側にある安定な物質であり、細胞自体が合成分泌する物質が含まれている。具体的にはセルロース、脂肪酸、 細胞間物質,細胞外基質などともいう.動物細胞の外側にある安定な物質で,細胞自体.....高度不飽和脂肪酸、天然色素、ビタミン
、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、有機酸、炭化水素、難分解性ポリマーなどが挙げられる。
【0020】
ボトリオコッカス・ブラウニイとしては、例えば、ボトリオコッカス・ブラウニイA品種やボトリオコッカス・ブラウニイB品種を使用することができる(P.METZGER et al.Phytochemistry,Vol.24,No.10,pp.2305−2
312,1985)。 ボトリオコッカス・ブラウニイA品種は、脂肪酸由来の直鎖状炭化水素を生産し、炭素数が25以上、31以下の範囲内の奇数である直鎖状のアルカジエン及びアルカトリエンを生産する。
【0021】
ボトリオコッカス・ブラウニイB品種は、例えば、テルペン性の炭化水素を生産し、炭素数が30以上、37以下であるメチル化されたトリテルペンを生産する。
これら細胞壁を有する微生物を含むスラリーをまず作製する。スラリーの分散媒としては、水、有機溶媒もしくはこれらの混合物が挙げられる。分散媒は主として水であることが好ましく、すなわち、水性スラリーであることが好ましい。具体的には、スラリー中の60重量%以上が水である水性スラリーが好ましい。
【0022】
有機溶媒としては、毒性が低く、極性の低い溶媒であることが好ましく、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系溶媒であることが好ましい。尚、水性スラリーは有機溶媒を含有することが好ましい。有機溶媒を含有する場合は、10重量%以下であることが好ましい。
以下、炭化水素を生産する微細藻類を例にして説明するが、スラリーは、培養された微細藻類の培養液から直接調製することが好ましい。
【0023】
微細藻類に光合成を行わせて炭化水素を生産させた後、炭化水素が蓄積された微細藻類を含有する培養液が得られる。
具体的には、栄養源を含む培養液中に微細藻類を分散させ、当該分散液を培養容器に入れる。そして、培養容器内において、微細藻類に光を照射しながら所定の温度及び雰囲気下で所定時間保持することにより培養する。培養中の微細藻類は、培養液中の栄養源を資化して光合成を行い、炭化水素を生成する。
【0024】
炭化水素は、例えば、微細藻類の細胞質内に蓄積される。また、生成された炭化水素は、例えば、細胞外に分泌される。そして、微細藻類が集合してコロニーを形成する場合には、分泌された炭化水素は当該コロニーを形成している微細藻類の細胞体間に蓄積する。

炭化水素を蓄積した微細藻類を含有する培養液から、ろ過等を行い水分の一部を除去することにより、培養液から直接スラリーを調製する。スラリーの含水率は、通常、60重量%以上、好ましくは70重量%以上、通常98重量%以下、好ましくは90重量%以下である。
【0025】
スラリー中の微細藻類の固形分濃度は、0.001〜50重量%であることが好ましい。
得られたスラリー中で、微細藻類を機械的に粉砕または破砕する。具体的には、回転式ホモジナイザーまたはビーズミルにより、粉砕または破砕する。
回転式ホモジナイザーとしては、刃やスクリューを回転させ、スリットから吐出させることで流体に剪断を与える分散機などが挙げられ、特に高速回転式ホモジナイザーであることが好ましい。中でもエムテクニック社製の「クレアミックス」であることが好ましい。
【0026】
エムテクニック社製の「クレアミックス」は高速回転ホモジナイザーの一種であり、高速で刃やスクリューを回転させ、スリットから吐出させることで流体に剪断を与える分散機である。分散体へ衝撃エネルギーを加えるメディアを必要としないため、分散液へのメディア由来の不純物混入を極力抑制できるメリットがある。
回転式ホモジナイザーを使用する場合の条件としては、従来から知られているセルロースを解繊する方法を採用すればよいのであり、特に制限されない。
【0027】
より具体的には、回転式ホモジナイザーで微細藻類を含むスラリーを処理する時の温度と圧力は、特に制限はなく、温度は常温で使用することが好ましく、圧力は常圧で使用することが好ましい。
回転式ホモジナイザーのスクリューの回転数は、特に制限は無く、10rpmから30000rpm
の範囲で行うことが好ましい。
【0028】
回転式ホモジナイザーに使用するスクリーンの種類は、特に制限はない。
回転式ホモジナイザーで微細藻類を含むスラリーを処理する時の処理時間は、微細藻類の性状により、特に規定することはできないが、24時間以内で行なうことが好ましい。
回転式ホモジナイザーに微細藻類を含むスラリーを流し込む場合、使用するポンプの流速に、特に制限はなく、1L/minから100L/minの範囲で行なうことが好ましい。
【0029】
また、ビーズミルとしては、メディア間の衝突エネルギーで分散体を粉砕・分散させる分散機(メディアミル)などが挙げられる。中でもターボ工業社製の「OBミル」であることが好ましい。
ターボ工業社製の「OBミル」はメディアミルの一種であり、ローターの回転エネルギーがメディアに伝わり、メディア間の衝突エネルギーで分散体を粉砕・分散させる分散機である。メディア間に挟まれた微細藻類に「すりつぶす」力が働き、細胞壁の粉砕・破壊することができる。
【0030】
ビーズミルを使用する場合の条件としては、従来から知られているセルロースを解繊する方法を採用すればよいのであり、特に制限されない。
より具体的には、微細藻類を含むスラリーを流し込む送液スピードは、特に制限がなく、1 mL/分〜1000mL/分の範囲で行なうことが好ましい。
ビーズミルで微細藻類を含むスラリーを処理する時の処理時間は、微細藻類の性状により、特に規定することはできないが、24時間以内で行なうことが好ましい。
【0031】
ビーズミルに使用するメディアは、特に制限はないが、1mm径ビーズから1000mm径ビー
ズを使用することが好ましい。
ビーズミルの周速は、特に制限はないが、1 m/s から50m/sの範囲が好ましい。
ビーズミルに使用するピラミッドスクリーンギャップは、特に制限はない。
機械的な粉砕または破砕を行った後、炭化水素を含有する油状層と水相が分離し、炭化水素を含有する油状物質層相をろ過、デカンデーション、膜分離などを行うことにより分離回収する。
【0032】
ろ過としては、重力ろ過、重圧ろ過、真空ろ過、加圧ろ過、フィルターろ過などが挙げられる。中でもスラリー中の固液の比重差を応用する「重力ろ過」の一つである分液漏斗、油水分離装置や浮上油回収装置などを利用するやフィルターろ過することが好ましい。
ろ過条件としては、従来から知られている条件を採用すればよく、特に制限されない。具体的には、分液漏斗などの装置に処理したスラリーを常温・常圧条件で投入し、水相と油状物質層相が分離すると、水相の上にある油状物質層相を回収することや水相を取り除いて油状物質層相を回収することが好ましい。
【0033】
フィルターろ過では、例えば、航空機燃料、ガソリン、灯油などに混入した遊離水分を分離する油水/水油分離フィルターを利用する液液分離が好ましく、処理した後のスラリー中の水分除去を行い、油状物質層相を回収することが好ましい。
この例では炭化水素を回収することができるが、上記本発明の方法により、用いる微生
物に応じて、高度不飽和脂肪酸、脂肪酸、天然色素、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、有機酸などを回収することが可能である。
【実施例】
【0034】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
(実施例1)
炭化水素生産性微生物(ボトリオコッカス・ブラウニイ)を使用する。これらの微細藻類を培地中に照度の光照射下で培養する。
【0035】
次いで、微細藻類を含有する培養液を回収し、藻体を通過させない網目のメッシュで当該培養液をろ過して、濃縮することにより水性スラリーを調製する。このとき、水性スラリー内に含まれている藻体の固形分濃度は、10.0g/L(1.0重量%)である。
得られた水性スラリーを回転式ホモジナイザー(エム・テクニック社製 クレアミックス0.8S、2.2S、11S)にて20000rpmで180(3hr)分処理を行なう。このとき、藻体の細胞壁
が破壊され、細胞内の炭化水素を含有する油状物質が出てくる。
【0036】
水性スラリーをクレアミックスで処理した後、炭化水素を含有する油状層と水相が分離し、炭化水素を含有する油状物質層相を分液漏斗などの方法で分離回収する。
こうして、微細藻類が生産した炭化水素を含有する油状物質として、粘性の高い油状の抽出物を得ることができる。
(実施例2)
炭化水素生産性微生物(ボトリオコッカス・ブラウニイ)を使用する。これらの微細藻類を培地中に照度の光照射下で培養する。
【0037】
次いで、微細藻類を含有する培養液を回収し、藻体を含む培養液スラリーを調製する。このとき、培養液スラリー内に含まれている藻体の固形分濃度は、2.0g/L(0.2%)である。
得られた培養液スラリーを回転式ホモジナイザー(エム・テクニック社製 クレアミックス0.8S、2.2S、11S)にて20000rpmで180(3hr)分処理を行なう。このとき、藻体の細胞
壁が破壊され、細胞内の炭化水素を含有する油状物質が出てくる。
【0038】
培養液スラリーをクレアミックス解繊処理した後、炭化水素を含有する油状層と水相が分離し、炭化水素を含有する油状物質層相を分液漏斗などの方法で分離回収する。
こうして、微細藻類が生産した炭化水素を含有する油状物質として、粘性の高い油状の抽出物を得ることができる。
上記、実施例1と2を行なうことにより、微細藻類を脱水して乾燥させることなく、多くの水分を含んだ水性スラリーの中で、炭化水素生産性微生物の細胞壁を破壊することができ、有毒な有機溶剤を使った溶剤抽出を行なわないで、低エネルギーで効率よく炭化水素を含有する油状物質を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞壁を有する微生物を含むスラリー中で、該微生物及び/または該微生物が細胞外に生産する細胞間マトリクスを機械的に粉砕または破砕した後、該スラリーから該微生物が産生する成分を回収することを特徴とする、微生物産生成分の回収方法。
【請求項2】
回転式ホモジナイザーまたはビーズミルにより、粉砕または破砕する、請求項1に記載の微生物産生成分の回収方法。
【請求項3】
回転式ホモジナイザーが、高速回転式ホモジナイザーである、請求項2に記載の微生物産生成分の回収方法。
【請求項4】
ろ過により微生物産生成分を回収する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物産生成分の回収方法。
【請求項5】
前記スラリーが水性スラリーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物産生成分の回収方法。
【請求項6】
該水性スラリーが有機溶媒を含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の微生物産生成分の回収方法。
【請求項7】
前記微生物が、高度不飽和脂肪酸、天然色素、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、脂肪酸、有機酸または炭化水素から選ばれる1つ以上の物質を生産する微細藻類である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微生物産生成分の回収方法。
【請求項8】
該微生物が炭化水素を生産する微細藻類であって、該微細藻類がボトリオコッカス・ブラウニイ、シュードコリシスチス・エリプソイディア、オーランチオキトリウム、シキゾリウムから選ばれる藻類またはこれら藻類の変異株もしくは遺伝子組み換え株である、請求項7に記載の微生物産生成分の回収方法。

【公開番号】特開2013−70688(P2013−70688A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214475(P2011−214475)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】