説明

微生物農薬組成物および汚れの少ない農作物の生産方法

【課題】微生物の安定性に優れ、且つ散布した際に農作物に汚れが生じ難い微生物農薬組成物、および微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む汚れの少ない農作物の生産方法を提供する。
【解決手段】硫酸カルシウム、植物の病害を防除する効果を有する微生物、および界面活性剤の合計量に対して、硫酸カルシウム60〜99重量%、植物の病害を防除する効果を有する微生物1〜40重量%、および界面活性剤0〜30重量%で含有する、微生物農薬組成物。硫酸カルシウムと植物の病害を防除する効果を有する微生物とを含有する微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む、汚れの少ない農作物の生産方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物農薬組成物および汚れの少ない農作物の生産方法に関する。より詳細に、本発明は、微生物の保存安定性に優れ、且つ散布した際に農作物に汚れが生じ難い微生物農薬組成物、および微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む汚れの少ない農作物の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物農薬は、生きた状態のウイルス、細菌、糸状菌、線虫などの微生物を有効成分として含有する農薬である。該微生物農薬では、微生物の保存安定性が低いために、防除効果が低下しやすい場合が多い。また、微生物農薬を農作物に散布した際に農作物に汚れが生じることがある。
微生物の保存安定性を向上させる方法として、例えば、特許文献1には、菌体乾燥物と、硫酸カルシウムと、界面活性剤とを含有する水和剤組成物を、乾燥剤含有包材に封入することが提案されている。乾燥剤としては、合成ゼオライトを含有する樹脂を原材料とする吸湿樹脂などが具体的に示されている。
また、特許文献2には、微生物、粘土鉱物、界面活性剤および乾燥剤を含有する微生物農薬が提案されている。乾燥剤としては、シリカゲル、塩化カルシウム、III型無水石膏が具体的に示されている。
【0003】
一方、農作物に汚れが生じないようにするために、例えば、特許文献3には、植物の病害を防除する効果を有する微生物、含酸素無機塩および尿素を含有する微生物農薬組成物が提案されている。含酸素無機塩として硫酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを使用した製剤が具体的に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−196920号公報
【特許文献2】特開2004−35421号公報
【特許文献3】特開2005−75813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らの検討によると、上述の特許文献に具体的に記載されている微生物農薬は、微生物の安定性が未だ十分でなく、しかも農作物に散布した際に汚れが未だに生じやすいものであった。
そこで、本発明の課題は、微生物の安定性に優れ、且つ散布した際に農作物に汚れが生じ難い微生物農薬組成物、および微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む汚れの少ない農作物の生産方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、植物の病害を防除する効果を有する微生物と硫酸カルシウムとを含有する組成物は、微生物の保存安定性に優れ、且つ散布によって農作物表面に汚れが生じ難いことを見出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねることによって完成するに至ったものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
(1) 硫酸カルシウムと植物の病害を防除する効果を有する微生物とを含有する微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む、汚れの少ない農作物の生産方法。
(2) 微生物農薬組成物は、さらに界面活性剤を含有する、前記(1)に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
(3) 微生物農薬組成物は、硫酸カルシウム、微生物、および界面活性剤の合計量に対して、硫酸カルシウム60〜99重量%、微生物1〜40重量%、および界面活性剤0〜30重量%で含有する、前記(1)または(2)に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
(4) 微生物がバチルス属菌またはシュードモナス属菌である、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
(5) 微生物がバチルス ズブチリスである、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
(6) 微生物がシュードモナス ロデシアである、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
【0008】
(7) 硫酸カルシウムと、植物の病害を防除する効果を有するバチルス属菌とを含有する微生物農薬組成物。
(8) さらに界面活性剤を含有する前記(7)に記載の微生物農薬組成物。
(9) バチルス属菌がバチルス ズブチリスである、前記(7)または(8)に記載の微生物農薬組成物。
【0009】
(10) 硫酸カルシウム、植物の病害を防除する効果を有する微生物、および界面活性剤の合計量に対して、硫酸カルシウム60〜99重量%、植物の病害を防除する効果を有する微生物1〜40重量%、および界面活性剤0〜30重量%で含有する、微生物農薬組成物。
(11) 微生物がバチルス ズブチリスである、前記(10)に記載の微生物農薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る農作物の生産方法によれば、高い生産性で且つ汚れの少ない農作物を得ることができる。また、本発明の微生物農薬組成物は、それに含有される微生物の保存安定性に優れ、製剤にした際の剤形安定性が高く、かつ散布した際に農作物表面に汚れが生じ難い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の汚れの少ない農作物の生産方法は、硫酸カルシウムと植物の病害を防除する効果を有する微生物とを含有する微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む。
【0012】
本発明に係る微生物農薬組成物に含有される硫酸カルシウムは、カルシウムの硫酸塩であれば特に制限されない。例えば、無水硫酸カルシウムの無水物、硫酸カルシウムの1/2水和物(CaSO4・0.5H2O、焼石膏)、硫酸カルシウムの2水和物(CaSO4・2H2O、二水石膏)などが挙げられる。これらのうち、硫酸カルシウム2水和物が好ましい。
【0013】
本発明に係る微生物農薬組成物に含有される微生物としては、微生物農薬の主成分となりうるものであれば特に制限はなく、細菌類、放線菌類、真菌類、粘菌類、非病原性菌類などが挙げられる。
該微生物としては、バチルス属、シュードモナス属、フザリウム属、ゲオトリクム属、グリオクラディウム属、トリコデルマ属、タラロマイセス属、ペニシリウム属等が挙げられる。これらのうち、バチルス属またはシュードモナス属が好ましい。
バチルス属としては、バチルス ズブチリスが好ましく、FERM BP-10244の受託番号によりブタペスト条約により国際寄託された菌株がより好ましい。
シュードモナス属としては、シュードモナス ロデシアが好ましく、FERM BP-10912の受託番号によりブタペスト条約により国際寄託された菌株がより好ましい。
本発明に用いられる微生物は、生菌体、乾燥菌体、あるいはこれらの微生物から発生する胞子などの休眠体などのいずれであってもよい。また、これらの微生物は、1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、該微生物としては、風乾やスプレードライ、凍結乾燥など何らかの方法で乾燥させてなる乾燥菌体を用いることができる。尚、該微生物の乾燥は、公知の装置および条件によって得ることができる。
【0014】
微生物の凍結乾燥は、塩類および/または糖類を添加して行うことができる。塩類としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。糖類としては、グルコース、ラクトース、ショ糖(スクロース)、ラフィノース、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、トレハロース、パラチノース、パラチニット等が挙げられる。これら塩類および糖類は、それぞれ、1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
塩類は、凍結乾燥する菌体培養液中に、0.1%以上2.0%未満の濃度になるように添加することが好ましい。菌体培養液に、塩類を添加混合することで、凍結乾燥時の菌体の保護効果が得られる。さらに、菌体乾燥物の安定化効果も得られる。
【0016】
糖類は、凍結乾燥する菌体培養液中に、10%以上50%未満の濃度になるように添加することが好ましい。菌体培養液に、糖類を添加混合することで、凍結乾燥時の菌体の保護効果が得られる。
【0017】
凍結乾燥物は、市販粉砕機で粉砕して粉末にすることができる。粉末は、篩別し、粉粒の大きさを、好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下にすることができる。
【0018】
本発明に係る微生物農薬組成物は、界面活性剤をさらに含有していることが好ましい。本発明に用いられる「界面活性剤」は、通常の農薬製剤において使用されるものであれば特に制限されない。例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
ノニオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の糖エステル型界面活性剤;POE脂肪酸エステル、POE樹脂酸エステル、POE脂肪酸ジエステル等の脂肪酸エステル型界面活性剤;POEアルキルエーテル等のアルコール型界面活性剤;POEアルキルフェニルエーテル、POEジアルキルフェニルエーテル、POEアルキルフェニルエーテルホルマリン縮合物等のアルキルフェノール型界面活性剤;ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、アルキルポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマーエーテル等のポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型界面活性剤;POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド等のアルキルアミン型界面活性剤;POE脂肪酸ビスフェニルエーテル等のビスフェノール型界面活性剤;POAベンジルフェニル(またはフェニルフェニル)エーテル、POAスチリルフェニル(またはフェニルフェニル)エーテル等の多芳香環型界面活性剤;POEエーテルまたはエステル型シリコンまたはフッ素系界面活性剤等のシリコン系またはフッ素系界面活性剤;POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等の植物油型界面活性剤;が挙げられる。
【0020】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート、POEアルキルエーテルサルフェート、POEアルキルフェニルエーテルサルフェート、POEベンジル(またはスチリル)フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルサルフェート、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンブロックポリマーサルフェート等のサルフェート型界面活性剤;パラフィン(アルカン)スルホネート、AOS、ジアルキルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホネート、モノまたはジアルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホネート、リグニンスルホネート、POEアルキルフェニルエーテルスルホネート、POEアルキルエーテルスルホコハク酸ハーフエステル等のスルホネート型界面活性剤;カルボン酸型脂肪酸塩、N-メチル-脂肪酸サルコシネート、樹脂酸塩等のPOEアルキルエーテルホスフェート;POEモノまたはジアルキルフェニルエーテルホスフェート、POEベンジル(またはスチリル)化フェニル(またはフェニルフェニル)エーテルホスフェート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ホスファチジルコリン・ホスファチジルエタノールイミン(レシチン)、アルキルホスフェート等のホスフェート型界面活性剤;が挙げられる。
【0021】
カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、メチル・ポリオキシエチレン・アルキルアンモニウムクロライド、アルキル・N-メチルピリジウムブロマイド、モノまたはジアルキルメチル化アンモニウムクロライド、アルキルペンタメチルプロピレンジアミンジクロライド等のアンモニウム型界面活性剤;アルキルジメチルベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド(オクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド)等のベンザルコニウム型界面活性剤;が挙げられる。
【0022】
両性界面活性剤としては、ジアルキルジアミノエチルベタイン、アルキルジメチルベンジルベタイン等のベタイン型界面活性剤;ジアルキルジアミノエチルグリシン、アルキルジメチルベンジルグリシン等のグリシン型界面活性剤;が挙げられる。
【0023】
これらのうち、ノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤が好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、POEアルキルフェニルエーテルが好ましく、POEアリルフェニルエーテルがより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物またはPOEアルキルフェニルエーテルスルホネートが好ましい。アルキルサルフェートとしては、ラウリル硫酸ナトリウムが好ましく、ナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウムが好ましく、POEアルキルフェニルエーテルスルホネートとしては、POEアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウムがより好ましい。
【0024】
これらの界面活性剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤の組み合わせとしては、アルキルサルフェートとナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物との組み合わせ、またはナフタレンスルホネート・ホルマリン縮合物とPOEアルキルフェニルエーテルスルホネートとの組み合わせが好ましく、ラウリル硫酸ナトリウムとナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩との組み合わせまたはPOEアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウムとPOEアリルフェニルエーテルとの組み合わせがより好ましい。
【0025】
本発明に係る微生物農薬組成物は、所望の剤形や効果に応じて他の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、担体、分散剤、補助剤、酸化防止剤、着色剤、滑剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、防腐剤などを挙げることができる。
【0026】
本発明に係る微生物農薬組成物は、硫酸カルシウム、微生物、並びに好ましくは界面活性剤および前記の任意成分を混合することで得られる。
【0027】
本発明に係る微生物農薬組成物は、硫酸カルシウム、微生物、および界面活性剤の合計量に対して、硫酸カルシウム60〜99重量%、微生物1〜40重量%および界面活性剤0〜30重量%で含有することが好ましく、硫酸カルシウム65〜94重量%、微生物1〜30重量%および界面活性剤5〜25重量%で含有することがより好ましい。なお、微生物の重量は、菌体乾燥物の重量として表記している。
【0028】
本発明に係る微生物農薬組成物の剤形としては特に制限はなく、水和剤、乳剤、懸濁剤、フロアブル剤、水溶剤、顆粒水和剤等が挙げられる。これらのうち、水和剤であることが好ましい。
【0029】
本発明の農作物の生産方法は、硫酸カルシウムと植物の病害を防除する効果を有する微生物とを含有する微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む。散布方法は、特に制限されない。通常の化学農薬における散布方法を採用することができる。散布に当たっては、本発明の微生物農薬組成物を適当量の水等で希釈して使用することができる。
【0030】
本発明の微生物農薬組成物は、広範囲の種類の細菌および糸状菌に対し優れた防除力を発揮する。
本発明の微生物農薬組成物により防除できる植物の病害としては、例えば、
「テンサイ」の、褐斑病(Cercospora beticola)、黒根病(Aphanomyces cochlloides)、根腐病(Thanatephorus cucumeris)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris);
「ラッカセイ」の、褐斑病(Mycosphaerella arachidis)、黒渋病(Mycosphaerella berkeleyi);
「キュウリ」の、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、炭そ病(Colletotrichum orbiculare)、黒星病(Cladosporium cucumerinum)、褐斑病(Corynespora cassicola)、苗立枯病(Pythium debaryanam、Rhizoctonia solani Kuhn)、斑点細菌病(Pseudomonas syringae pv.Lecrymans);
【0031】
「トマト」の、うどんこ病(oidium violae,Oidiopsis sicula)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、葉かび病(Fulvia fulva)、疫病(Phytophthora infestans)、軟腐病(Erwinia carotovola subsp. carotovora)、青枯病(Ralstonia solanacearum);
「ナス」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒枯病(Corynespora melongenae)、うどんこ病(Oidium sp., Oidiopsis sicula)、すすかび病(Mycovellosiella nattrassii)、青枯病(Ralstonia solanacerum);
「イチゴ」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Sohaerotheca humuli)、炭そ病(Colletotrichum acutatum、Colletotrichum fragariae)、疫病(Phytophthora cactorum);
【0032】
「タマネギ」の、灰色腐敗病(Botrytis allii)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、白斑葉枯病(Botrytis squamosa)、べと病(Peronospora destructor)、軟腐病(Erwinia carotovola subsp. carotovora);
「キャベツ」の、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、軟腐病(Erwinia carotovora)、べと病(Peronospora parasitica)、黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris)灰色かび病(Botrytis cinerea);
「ハクサイ」の、軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris);
「ダイコン」の、軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、黒腐病(Xanthomonas campestris pv. campestris);
「レタス」の、軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、腐敗病(Pseudomonas cichorii,Pseudomonas marginalis pv. marginalis)、灰色かび病(Botrytis cinerea);
「インゲン」の、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、灰色かび病(Botrytis cinerea);
【0033】
「りんご」の、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、黒星病(Venturia inaequalis)、モニリア病(Monilinia mali)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、腐らん病(Valsa mali)、斑点落葉病(Alternaria mali)、赤星病(Gymnosporangium yamadae)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、炭そ病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、褐斑病(Diplocarpon mali)、すす点病(Zygophiala jamaicensis)、すす斑病(Gloeodes pomigena);
「カキ」の、うどんこ病(Phyllactinia kakicola)、炭そ病(Gloeosporium kaki)、角斑落葉病(Cercospora kaki)、灰色かび病(Botrytis cinerea);
「モモ」の、灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis sp.)、せん孔細菌病(Xanthomonas campestris pv. pruni);
「オウトウ」の、灰星病(Monilinia fructicola);
「ブドウ」の、灰色かび病(Botrytis cinerea)、うどんこ病(Uncinula necator)、晩腐病(Glomerella cingulata、Colletotrichum acutatum)、べと病(Plasmopara viticola)、黒とう病(Elsinoe ampelina)、褐斑病(Pseudocercospora vitis)、黒腐病(Guignardia bidwellii);
「ナシ」の、黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium asiaticum)、黒斑病(Alternaria kikuchiana)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、うどんこ病(Phyllactinia mali);
【0034】
「チャ」の、輪斑病(Pestalotia theae)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis);
「カンキツ」の、そうか病(Elsinoe fawcetti)、青かび病(Penicillium italicum)、緑かび病(Penicillium digitatum)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、黒点病(Diaporthe citri)、かいよう病(Xanthomonas campestris pv.citri);
「ウメ」の、かいよう病(Pseudomonas syringae pv. morsprunorum);
【0035】
「コムギ」の、うどんこ病(Erysiphe graminis f.sp.tritici)、赤かび病(Gibberella zeae)、赤さび病(Puccinia recondita)、褐色雪腐病(Pythium iwayamai)、紅色雪腐病(Monographella nivalis)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、雪腐小粒菌核病(Typhula incarnata)、雪腐大粒菌核病(Myriosclerotinia borealis)、立枯病(Gaeumanomyces graminis);
「オオムギ」の、斑葉病(Pyrenophora graminea)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、裸黒穂病(Ustilago tritici、U.nuda);
「イネ」の、いもち病(Pyricularia oryzae)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi)、ごま葉枯病(Cochliobolus niyabeanus)、苗立枯病(Pythium graminicola)、白葉枯病(Xanthomonas oryzae)、苗立枯細菌病(Burkholderia plantarii)、褐条病(Acidovorax avenae)、もみ枯細菌病(Burkholderia glumae);
【0036】
「タバコ」の、菌核病(Sclerotinia sclerotiorum)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);
「チューリップ」の、灰色かび病(Botrytis cinerea);
「ベントグラス」の、雪腐大粒菌核病(Sclerotinia borealis)、赤焼病(Pythium aphanidermatum);
「オーチャードグラス」の、うどんこ病(Erysiphe graminis);
【0037】
「ダイズ」の、紫斑病(Cercospora kikuchii)、べと病(Peronospora Manshurica)、茎疫病(Phytophthora sojae);
「バレイショ」の、軟腐病(Erwinia carotovora subsp. carotovora)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、疫病(Phytophthora infestans);
等が挙げられる。
【実施例】
【0038】
次に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施例によって何ら制限されるものではない。なお、「部」は重量部を意味する。
【0039】
実施例1:微生物農薬組成物の製造
(実施例1−1)
バチルス属菌(FERM BP−10244株)の培養液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物をパルペライザー(不二パウダル社製KII−1型)で粉砕し、篩別して、100μm以下の粉末にした。この粉末2部を、硫酸カルシウム2水和物87部、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩9部およびアルキル硫酸ナトリウム2部と混合し、微生物農薬組成物からなる製剤E1を得た。
【0040】
(実施例1−2)
シュードモナス属菌(FERM BP−10912株)の培養液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物を乳鉢で粉砕し、篩別して、150μm以下の粉末にした。この粉末8.2部を、硫酸カルシウム2水和物71.8部、ホワイトカーボンにPOEアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウムが重量比1:1で吸着してなるもの15部およびホワイトカーボンにPOEアリルフェニルエーテルが重量比1:1で吸着してなるもの5部と混合し、微生物農薬組成物からなる製剤E2を得た。
【0041】
(比較例1−1)
硫酸カルシウム2水和物を、硫酸ナトリウムに置き換えた以外は実施例1−1と同じ手法にて微生物農薬組成物からなる製剤R1を得た。
(比較例1−2)
硫酸カルシウム2水和物を、硫酸ナトリウムに置き換えた以外は実施例1−2と同じ手法にて微生物農薬組成物からなる製剤R2を得た。
【0042】
実施例2:安定性試験
(実施例2−1:ケーキング試験)
200mLビーカーに、製剤20gを入れ、これにポリエチレン製袋で包んだ重り(700g)を載せた。ビーカーごとアルミラミネート袋に入れ、ヒートシールで密栓した。それを5℃で静置した。静置開始時ならびに、静置開始から1ヶ月経過時および2ヶ月経過時にアルミラミネート袋からビーカーを取り出して重りを取り除き、製剤を薬包紙の上に静かに取り出して外観観察およびスパチュラで押した際の硬さを調べ、ケーキング性の評価を行った。次いで、製剤中の生菌数を測定した。
なお、ケーキング性の評価は以下の基準に従った。
○ : 静置開始時の粉状の外観を保っていた
△ : 塊は有るものの、スパチュラで容易にほぐれた
× : 固まっており、スパチュラで押してもほぐれなかった
【0043】
上記のケーキング性の評価と生菌数の測定を、上記の製剤E1および製剤R1について行った。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
(実施例2−2:希釈液中の生菌安定性)
製剤を滅菌水で100倍希釈して室温(15〜20℃)下で静置した。希釈直後、希釈から1時間経過時および24時間経過時に、溶液中の生菌数を測定した。
この生菌安定性評価を、上記の製剤E2および製剤R2について行った。その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
表1および表2から、硫酸カルシウムと、植物の病害を防除する効果を有する微生物とを含有する微生物農薬組成物からなる製剤は、製剤が固まらず、且つ製剤中の微生物の保存安定性が高いことがわかる。
【0048】
実施例3:散布による作物表面の汚れ試験
微生物農薬組成物からなる製剤を、水道水で所定倍率で希釈し、薬液を調製した。調製薬液をハンドスプレーにてひもで吊るしたナス果実に散布処理した。散布液量は、果実表面に斑点状で付着し且つ流れ落ちない程度の量にした。
対照として、市販水和剤を水道水で希釈して調製した薬液、または水道水のみを用いて、上記と同じ手法で散布処理した。
散布処理後、ナス果実を室内で風乾した。ナス果実の外観を目視観察し、汚れの程度を評価した。
水道水のみを散布処理した果実の汚れ程度を「0」とし、市販剤で調製した薬液のうち汚れ程度が最も酷いものを「5」とし、「0」〜「5」の6段階の汚れ指数で汚れ程度を表した。
【0049】
上記の汚れ試験を、製剤E1、製剤E2、ボトキラー水和剤(出光興産社製)、バイオキーパー水和剤(日産化学社製)、ベジキーパー水和剤(セントラル硝子社製)、Zボルドー水和剤(日本農薬社製)、スターナ水和剤(住友化学社製)およびカッパーシン水和剤(明治製菓社製)について行った。その結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から、本発明の微生物農薬組成物からなる製剤は、市販水和剤に比べてナス果実を汚さないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸カルシウムと植物の病害を防除する効果を有する微生物とを含有する微生物農薬組成物を農作物に散布することを含む、汚れの少ない農作物の生産方法。
【請求項2】
微生物農薬組成物は、さらに界面活性剤を含有する、請求項1に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
【請求項3】
微生物農薬組成物は、硫酸カルシウム、微生物、および界面活性剤の合計量に対して、硫酸カルシウム60〜99重量%、微生物1〜40重量%、および界面活性剤0〜30重量%で含有する、請求項1または2に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
【請求項4】
微生物がバチルス属菌またはシュードモナス属菌である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
【請求項5】
微生物がバチルス ズブチリスである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
【請求項6】
微生物がシュードモナス ロデシアである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の汚れの少ない農作物の生産方法。
【請求項7】
硫酸カルシウムと、植物の病害を防除する効果を有するバチルス属菌とを含有する微生物農薬組成物。
【請求項8】
さらに界面活性剤を含有する請求項7に記載の微生物農薬組成物。
【請求項9】
バチルス属菌がバチルス ズブチリスである、請求項7または8に記載の微生物農薬組成物。
【請求項10】
硫酸カルシウム、植物の病害を防除する効果を有する微生物、および界面活性剤の合計量に対して、硫酸カルシウム60〜99重量%、植物の病害を防除する効果を有する微生物1〜40重量%、および界面活性剤0〜30重量%で含有する、微生物農薬組成物。
【請求項11】
微生物がバチルス ズブチリスである、請求項10に記載の微生物農薬組成物。

【公開番号】特開2011−184370(P2011−184370A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52059(P2010−52059)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】