説明

微粉末

【課題】
鱗片状の微細な粉末(微粉末)とすることにより、これを例えば塗料などに含有させても従来品に比して凝集しにくく、さらに銀が外因によって劣化してしまわないようにした、銀特有の光沢を備えた微粉末を提供する。
【解決手段】
高分子樹脂フィルムを基材フィルムとし、前記基材フィルムの表面に、第1無機酸化物による第1無機酸化物層と、その表面に積層された銀による銀層と、さらにその表面に積層された第2無機酸化物層による第2無機酸化物層と、により構成される積層物を積層してなる積層体から、前記積層物を前記基材フィルムから剥離し、剥離後の前記積層物を微粉砕することにより得られてなることを特徴とする微粉末とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粉末に関するものであり、より具体的には光沢性や耐殺傷性などを備えた微粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用電気製品や自動車等の塗装として、重厚感や高級感を呈するために塗料の中に金属光沢を備えた微粒子(以下、単に「金属微粒子」とも言う。)を混合したものが用いられることがある。また、他方では、その使用時にきらびやかな印象を呈するために口紅やアイシャドウ等の化粧料に金属光沢を備えた微粒子を配合したものが提供されている。
【0003】
上述したような場面における利用のために、例えば銀の微粒子を用いることは広く行われているところ、この銀による美麗な金属光沢を得るためには銀微粒子が極力微細化されている(以下、「銀微粉末とも言う。」)ことが好ましい。例えば塗料に含有して用いる場合、出来るだけ銀微粒子を細かな粉末、即ち銀微粉末としなければ、これを用いることにより得られる鏡面性等の効果を発揮することはできない。つまり、表面の凹凸があればあるほど入射した光線が乱反射を起してしまい、そのために美麗な鏡面状とすることにより得られる金属光沢を発揮することができず、その結果所望する効果が得られないからである。
【0004】
また、銀微粉末を化粧料に含有させて用いる場合、例えばこれを頬に塗ることで頬に小さなスパンコールをちりばめて貼り付けたかのような、いわゆるラメ感を呈することによりきらびやかな表情を与える効果を期待するのであるが、やはり銀粉それ自体の大きさが充分に微細化されていなければ、上記同様表面に微細な凹凸ができてしまい、その結果高級感を得られないので、銀粉よりもより一層微細な銀微粉末とした方が効果を得られやすい。
【0005】
しかし上述した銀粉や銀微粉末において銀が露出した状態であるならば空気中の酸素と接することにより容易に銀が酸化してしまい黒ずんでしまう、という問題があった。
そこで、このような問題に対処するために、例えば銀微粉末を酸化物でコーティングすることが考えられるが、その例として特許文献1に開示されたものがある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−143563号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1にて開示された発明は例えば導電性ペーストの原料として用いることを想定しているが、銀の粉の表面を酸化物でコーティングする、という考え方に基づいているものである。しかし、この特許文献1に記載の発明に記載された複合酸化物コート銀粉であれば、銀粉はやはり粒状であり、またその製造についても、いったん銀粉を水に分散させて銀粉スラリーを用意し、しかる後に粒状の銀粉表面に酸化マンガンと酸化銀との複合層を形成する、またそれを濾過などにより取り出す、といったような大変複雑な工程を数次にわたり繰り返さなければならないので、必ずしも好ましいものとは言えなかった。
【0008】
また個々の形状も粒状のままであるため、例えば塗料などに含有させてこれを用いようとしても塗料中においてこれらは容易に凝集してしまい、つまり微粒子が凝集するためにすでに微粒子ではなく単なる粒となってしまうために、本来の目的である微粒子とすることにより得られる効果が得られなくなってしまう、といった問題や、表面が平滑にならない、換言するならば表面に凝集した粒となってしまったことを原因とした凸部が容易にかつランダムに生じてしまい、表面平滑性を求められる場面では用いることができない、といった問題も生じていた。
【0009】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来は粒状であったところ鱗片状の微細な粉末(微粉末)とすることにより、これを例えば塗料などに含有させても従来品に比して凝集しにくく、さらに銀が外因によって劣化してしまわないようにした、銀特有の光沢を備えた微粉末を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するために、本願発明の請求項1に記載の微粉末に関する発明は、高分子樹脂フィルムを基材フィルムとし、前記基材フィルムの表面に、第1無機酸化物による第1無機酸化物層と、その表面に積層された銀による銀層と、さらにその表面に積層された第2無機酸化物層による第2無機酸化物層と、により構成される積層物を積層してなる積層体から、前記積層物を前記基材フィルムから剥離し、剥離後の前記積層物を微粉砕することにより得られてなること、を特徴とする。
【0011】
本願発明の請求項2に記載の微粉末に関する発明は、請求項1に記載の微粉末であって、前記微粉末が鱗片状であり、前記第1無機酸化物層の厚みが5nm以上100nm以下であり、前記銀層の厚みが5nm以上100nm以下であり、前記第2無機酸化物層の厚みが5nm以上100nm以下であり、前記鱗片状微粉末の面における最も長い端から端の長さの平均値である平均長径が0.1μm以上50μm以下であり、前記平均長径と前記厚みとの比、即ち平均長径/厚みで示されるアスペクト比が20以上であること、を特徴とする。
【0012】
本願発明の請求項3に記載の微粉末に関する発明は、請求項1又は請求項2に記載の微粉末であって、前記第1無機酸化物が、酸化珪素、酸化チタン、又は酸化アルミニウムの何れかであり、前記第2無機酸化物が、酸化珪素、酸化チタン、又は酸化アルミニウムの何れかであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本願発明に係る微粉末であれば、個々の微粉末が単なる略粒形状なのではなく鱗片状とした微粉末となるので、例えばこれを塗料に含有させて用いると、従来の略粒形状粉末を用いたのであれば塗布後の表面に粒が浮き出てしまい表面がざらついた印象となり滑らかさを得られずその表面も緻密なものとできなかったところ、本願発明に係る微粉末を用いたのであれば塗布後であっても表面に微粉末が浮き出てしまうこともなく滑らかなままとすることができる。またより多量の本願発明に係る微粉末を用いたならば、その表面を滑らかな鏡面状の金属光沢とすることが可能となる。また化粧料に含有させて用いるならば表面が滑らかな高級ラメ感を呈することができるようになる
【0014】
さらに本願発明により得られる鱗片状微粉末の平均長径が0.1μm以上50μm以下であり、厚みの平均的な値が2nm以上500nm以下であり、平均長径/厚みで示されるアスペクト比が20以上であることとしたので、これを塗料や化粧料に含有して用いても、前述のような従来の粒状の粉末を用いる場合に比べて表面をスムーズにすることができるので、美麗な外観を呈することに寄与できる鱗片状の微粉末とすることができる。そして本願発明に係る微粉末であると、中心が銀層であるので、抗菌性を備えた微粉末とすることができると同時に、その両面を無機酸化物でサンドイッチ状としているので、銀層が容易に空気と接して劣化する、ということを防ぐことが可能となり、即ち銀による効果を持続させることができるようになるばかりではなく、無機酸化物層が存在することにより銀層に光線屈折率が異なる層が積層されていることとなり、その結果銀による光輝性をより一層向上させることができるようになる。さらに両面に無機酸化物層が位置することにより、微粉末同士が容易に凝固してしまうことを防ぐことができるようになり、即ち溶液等における分散性が好ましいものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
本願発明に係る微粉末につき、第1の実施の形態として説明する。
この微粉末は、第1無機酸化物層の表面に銀層が、さらにその表面に第2無機酸化物層が、それぞれ積層されてなる構成、即ち銀層を芯材とし、その両面に銀層を挟み込むように無機酸化物による層が積層されている、という構成を有する。
【0017】
以下、順に説明をする。
まず最初に第1無機酸化物層について説明すると、これは略透明であることが望ましいものであって、即ち後述の銀層による金属光沢を遮らない程度に透明であることが望ましい。具体的には、第1無機酸化物層における可視光線透過率が50%以上であることが望ましい。これは、後述の銀層による金属光沢をより効果的に生かすためであり、換言すると、ある程度の透明性がなければ銀層による金属光沢を得られないからであり、またある程度の可視光線を透過させることにより、透過した可視光線が銀層で再び銀の光沢を呈しつつ外部へと反射するのと同時に第1無機酸化物層内でも可視光線が反射することにより、単純に銀層による金属光沢を呈する以上に、より一層効果的な金属光沢を呈するためでもある。
【0018】
またこの第1無機酸化物層は後述の銀層を保護する層としても作用する。即ち、銀が大気中において露出した状態であるならば大気中の酸素と反応して酸化銀となってしまい、当初銀による高級な光沢を呈していたところ、酸化銀となることにより黒ずんでしまう、という現象が生じるが、第1無機酸化物層をその表面に形成することによって、大気中の酸素と直接反応することがほとんど無くなるので、大気中の酸素によって銀が黒ずむといった現象を防止することができるようになるのである。
【0019】
この第1無機酸化物層を形成する第1無機酸化物としては、例えば酸化珪素、酸化チタン、又は酸化アルミニウム等の無機物を酸化であって、前述のとおり層となした時にある程度に透明な層とすることができる物質を用いてなり、本実施の形態では酸化珪素であるものとする。
【0020】
この第1無機酸化物による第1無機酸化物層の厚みは5nm以上100nm以下であることが望ましい。これは、厚みが5nm以下であると後述の第1無機酸化物層を積層することにより得られる効果が得られないためであり、また100nm以上とすると、本実施の形態に係る微粉末の厚みそれ自体が厚いものとなってしまい、例えば充分な分散性が得られなくなってしまう、等のような問題が生じてしまうので、上述の範囲とすることが好適であると言える。
【0021】
次いでこの第1無機酸化物層の表面に積層されてなる銀層につき説明する。
本実施の形態に係る微粉末は装飾性を付与するために用いられることを目的のひとつとしているが、そのために普及性があり、かつ銀単体として微粉末としての加工が比較的容易であることと同程度に、その表面に無機酸化物を積層していても微粉末としての加工が比較的容易である、という理由により銀を用いている。つまり、高級な金属光沢感を得るために銀が好適であり、それ故に銀層としているのであるが、銀には高級な金属光沢感を呈するという効果以外にも抗菌性を有するという効果も有しており、この点においても本実施の形態に係る微粉末により得られる効果として抗菌性、又は耐殺傷性、というものが期待されるところである。
【0022】
この銀層の厚みは5nm以上100nm以下であることが望ましいが、これは厚みが5nm以下であると、薄すぎるが故に必要充分な金属光沢を呈することができないという現象が生じるためであり、また100nm以上であるとすると、本実施の形態に係る微粉末全体の厚みが必要以上に薄いものとすることができなくなるからであり、よって上述の範囲とすることが好適であると言える。
【0023】
次いでこの銀層の表面に積層されてなる第2無機酸化物層につき説明する。
この第2無機酸化物層とは、前述の第1無機酸化物層と全く同様である。即ち、ある程度透明であること、また酸化珪素等により形成されること、第2無機酸化物層により得られる効果、その厚み、等に関し全く同様であってよい。そして第2無機酸化物層に用いられる物質は第1無機酸化物層に用いられる無機酸化物と同一であり、またその厚みも同一であることが望ましいが、これは前述の銀層の両面が同一の物質で、なおかつ同一の厚みであることにより、いわば表裏のない微粉末となすことができ、その結果取扱に格段の注意を払う必要もなく、ただ単純に容易に利用することができるからである。ただし本願発明に係る微粉末として必ず第1無機酸化物層と第2無機酸化物層とが全く同一である必要もなく、例えば用いられる無機酸化物が異なるものとすれば、いわばこの微粉末に表裏ができることとなり、これを例えば塗料に含有して用いる場合において表裏により異なる金属光沢が一面混在することとなり、そこよりは複雑な光沢感を得ることができる、等の効果を得られることが期待されるからである、ということを付言しておく。
【0024】
本実施の形態に係る微粉末は以上のとおりであるが、次にその製造に関し説明する。
まず最初に基材フィルムの表面に、第1無機酸化物層/銀層/第2無機酸化物層よりなる積層体を積層する積層工程につき説明する。
【0025】
この工程は、要するに本実施の形態に係る鱗片状である微粉末を得るための積層体を作る工程であり、即ちいったん基材フィルム上に薄膜を積層して形成した後に薄膜を基材フィルムから剥離しこれを粉砕するという作業に用いるための、いわば原材料とも言うべき積層体を作るための工程であると言うことができる。
【0026】
全体の工程は、高分子樹脂フィルムを基材フィルムとし、前記基材フィルムの表面に、第1無機酸化物による第1無機酸化物層と、その表面に積層された銀による銀層と、さらにその表面に積層された第2無機酸化物層による第2無機酸化物層と、により構成される積層物を積層してなる積層工程と、前記積層物を前記基材フィルムから剥離する剥離工程と、剥離後の前記積層物を微粉砕する微粉砕工程と、よりなる。
【0027】
まず基材フィルムとして高分子樹脂フィルムを用いるが、例えばポリエチレンテレフタレート等の高分子樹脂フィルムを用いることが好適である。さらに後述のように、得られた積層体を溶媒を用いて剥離する際に、用いられる溶媒によって損傷しない高分子樹脂フィルムを用いておけば、これを再利用することが考えられるので好ましいと言える。尚、この高分子樹脂フィルムの厚みとしては特段の制限はないが、6μm以上100μm以下であれば、その厚みのものであれば入手しやすく、また後述の工程を実施する際に取扱がやりやすい、換言すれば、薄すぎれば搬送する際に薄膜が容易に離脱してしまい生産性を阻害することが考えられ、また厚すぎれば重量が不用意に増してしまう、後述の剥離工程がやりにくくなってしまう、等の状況が生じてしまう可能性が考えられるが、上述の厚みであればかような心配は無用なものとなる。尚、以下本実施の形態においては厚み6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いることとする。
【0028】
ちなみにこの基材フィルムの表面に剥離剤を塗布して剥離層を形成しても構わない。これは後述のように、基材フィルムたる高分子樹脂フィルムとその表面に積層した第1無機酸化物層とがいったん積層すると剥離しにくいものとなってしまう場合に有効である。この剥離層に用いる剥離剤は特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いればよいのであるが、何を選定するかという観点で説明をすれば、前述した高分子樹脂フィルムの表面にも容易に積層可能であり、また後述する第1無機酸化物を積層するのも容易である物質でなければならない、ということは重要である。つまり後述の剥離工程が実施されるまでは基材フィルムと後述の第1無機酸化物層とが剥離してはならず、しかし剥離工程を実施することによりこれらは容易に剥離しなければならない、という矛盾した目的を達する必要があり、そのためには高分子樹脂フィルムと第1無機酸化物層との両方に対してこの目的を達するものを選択しなければならないのである。故に公知な剥離剤であれば無条件に何であってもよいというものではなく、前述の条件を満たす必要はある、と言える。
【0029】
またこの剥離層を積層するのであれば、いわゆるウェットコーティングと呼ばれる手法によって基材フィルム表面に塗布、積層されること、さらにはその厚みとして0.01μm以上0.50μm以下であることが好ましい。
【0030】
ただし本実施の形態においては、基材フィルムに剥離層を積層せずとも後述の剥離工程で積層体を容易に剥離できるものとして、さらに説明を続ける。
【0031】
次に基材フィルムの表面に積層体を積層する。積層体は前述のとおり、第1無機酸化物層の表面に銀層が、そしてさらにその表面に第2無機酸化物層が、それぞれ積層されてなる構成を有するものである。
【0032】
まず最初に基材フィルムであるPETフィルムの表面に第1無機酸化物層を積層するが、以下の説明において第1無機酸化物層を形成するのは酸化珪素であるものとする。しかし必ずしもこれに限定されるものではないことを予め断っておく。
【0033】
PETフィルムの表面に酸化珪素を積層する方法としては従来公知の手法であってよく、例えば真空蒸着やスパッタリング法等を適宜利用すればよいが、本実施の形態においてはスパッタリング法により積層するものとする。これは、この方法は本実施の形態のような積層物を積層する場合に広く用いられている方法であり、また所望の薄さにかつ平滑に積層しやすい、という利点があるからである。またこの酸化珪素の厚みについては前述のとおり5nm以上100nm以下となるようにすればよいが、本実施の形態では10nmであるものとする。
【0034】
次にこの酸化珪素の表面に銀を積層する。この銀層もやはり真空蒸着やスパッタリング法等を適宜利用することにより酸化珪素による第1無機酸化物層の表面に積層される。またその厚みについてもやはり前述同様、5nm以上100nm以下となるようにすればよく、本実施の形態では10nmであるものとする。
【0035】
そして最後にこの銀層のさらに表面に第2無機酸化物層を積層してなるが、本実施の形態では酸化珪素を積層することとし、その手法及びその厚みについても前述の第1無機酸化物層を形成する場合と同様であるものとする。このように第1無機酸化物層と第2無機酸化物層とを、同じ物質を用い、また同じ厚みである、と設定することにより作業が容易なものとなるので好適であると言える。
【0036】
以上のようにして基材フィルムたるPETフィルムの表面に、酸化珪素/銀/酸化珪素よりなる積層体が積層され、積層工程を終える。尚、本実施の形態では基材フィルムたるPETフィルムの片側表面のみに積層体を積層することとしているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、即ちPETフィルムの両面に対し同様の積層体を積層する、としても構わない。しかしここではPETフィルムの両面に積層することに関しこれ以上の詳述は省略する。
【0037】
以上の作業を経て積層工程が終わると、次にPETフィルムの表面から積層体を剥離する剥離工程を行う。この剥離工程では、積層体を積層したPETフィルムごと、特定の溶媒に浸漬させることでPETフィルムの表面に積層されている積層体を剥離することを特徴としている。ここで注意すべき事柄は、特定の溶媒として、積層体に何らかの損傷を与えるものであってはならず、しかし積層体がそのままの状態で確実に剥離することが可能なものを選定することであるが、この際において基材フィルムそれ自体は溶媒に溶解してしまっても構わない。しかしこの点については前述したとおり、基材フィルムとしてこの溶媒によって損傷しない、又は溶解しないもの、例えば水系溶媒や有機系溶媒を選択すれば、この基材フィルムを再利用することが可能となるので、剥離層は容易に溶解するが基材フィルムは何ら損傷を受けない、という溶媒とすればより一層好適なものとなせるのである。また剥離させる際に、積層体の構成に損傷を与えないことが重要である、ということは述べたとおりであるが、その際に積層体が破砕されることについては特に問題とする必要はない。なぜならばこの積層体は最終的に微粉砕されるからである。
【0038】
この剥離工程を終えた後、溶液中には積層体などの他に積層体が剥離された基材フィルムも存在しているので、これを溶液中から除外する。よってこの剥離工程を終えた後の液体には、剥離層を溶解した溶媒と基材フィルムから剥離した積層体とが存在していることとなる。この時点において積層体は自然とある程度細かな破片となって割れた状態、即ち粗粉状で存在している。
【0039】
そしてこの剥離工程を終えた次の段階として、積層体を微粉砕する粉砕工程を行うのであるが、本実施の形態では上述の、溶媒中に積層体が粗粉状で存在しているままの状態で粉砕工程を行うこととする。
【0040】
この粉砕工程として、本実施の形態では特に何らかの手法に限定するものではなく、従来より微粉末を得るために用いられてきた公知なる技術を用いればそれでよいものとするが、重要な事柄は、この粉砕工程を終えることにより得られた鱗片状微粉末の、面における最も長い端から端の長さの平均値である平均長径が0.1μm以上50μm以下であることが好ましい。一方、先に述べたとおり鱗片状微粉末の厚みは2nm以上500nm以下であるものとしており、そして平均長径及び厚みがこれらの範囲であって、かつ得られる鱗片状微粉末のアスペクト比が20以上であるものとすると、使い勝手のよい、即ちインクや塗料、化粧料等に含有させた場合に効果を発揮しやすいものとすることができる。
【0041】
尚、詳細な説明は省略するが、粉砕工程を行うに際して、濾過を行うことにより粗粉状態の積層体を取り出し、これを粉砕することも考えられるが、この場合、濾過を終えた積層体を確実に微粉砕するためには、濾過を経て取り出された積層体を確実に乾燥させる必要があり、その分手間と時間がかかってしまうことがあるが、反面、最終的に得られる微粉末は充分に乾燥されたものとすることができるので、溶液中に存在したまま粉砕するか、いったん取り出して粉砕するか、何れの手法を採用するかは適宜状況に応じて判断すればよいものであり、これ以上の詳述は省略する。
【0042】
以上の工程を経て、最終的に本実施の形態に係る微粉末が溶液中に存在した状態で得られるが、得られた微粉末を含有した溶液に含まれる鱗片状微粉末そのものが必要であるならば、これを構成する溶媒を何らかの手法、例えば蒸発、濾過、等の手法で除去すればよく、また得られた鱗片状微粉末含有溶液を、例えばインクや塗料、化粧品などの製品に含有させることで、鱗片状微粉末の有する効果を付与することができる。つまり、例えば鱗片状微粉末が金属光沢を備えたものであれば、これを化粧料に含有させることで、得られる化粧料にはラメ状の金属光沢が付与されることとなり、しかも鱗片状微粉末であるため、略粒状のものに比べ、一見すると表面がぶつぶつに見えない、滑らかな状態で、なおかつスパンコールのように金属光沢を放つ化粧品とすることができるのであり、従来の略粒状の微粉末を含有させた場合に比べ、はるかに印象的な意匠性を周囲に与えることができるようになるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂フィルムを基材フィルムとし、
前記基材フィルムの表面に、
第1無機酸化物による第1無機酸化物層と、その表面に積層された銀による銀層と、さらにその表面に積層された第2無機酸化物層による第2無機酸化物層と、により構成される積層物を積層してなる積層体から、
前記積層物を前記基材フィルムから剥離し、
剥離後の前記積層物を微粉砕することにより得られてなること、
を特徴とする、微粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の微粉末であって、
前記微粉末が鱗片状であり、
前記第1無機酸化物層の厚みが5nm以上100nm以下であり、
前記銀層の厚みが5nm以上100nm以下であり、
前記第2無機酸化物層の厚みが5nm以上100nm以下であり、
前記鱗片状微粉末の面における最も長い端から端の長さの平均値である平均長径が0.1μm以上50μm以下であり、
前記平均長径と前記厚みとの比、即ち平均長径/厚みで示されるアスペクト比が20以上であること、
を特徴とする、微粉末。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の微粉末であって、
前記第1無機酸化物が、酸化珪素、酸化チタン、又は酸化アルミニウムの何れかであり、
前記第2無機酸化物が、酸化珪素、酸化チタン、又は酸化アルミニウムの何れかであること、
を特徴とする、微粉末。

【公開番号】特開2008−303414(P2008−303414A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150090(P2007−150090)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】