説明

微粉炭火力発電設備および微粉炭火力発電方法

【課題】 微粉炭の性状を適正に把握して、適正な発電制御を可能にする。
【解決手段】 微粉炭機4とボイラ5との間に配設され、微粉炭機4からの微粉炭を定期的に採取するサンプリング装置6と、サンプリング装置6で採取された微粉炭に対して、複数の所定の性状分析を並行して行う分析装置7と、分析装置7で分析された複数の分析結果に基づいて、微粉炭のボイラ5への投入量などを制御する制御コンピュータ8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、石炭を微粉炭にしてボイラで燃焼する微粉炭火力発電設備および微粉炭火力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭は、埋蔵量が多く、また、世界各地に賦存していることから、今後も安定したエネルギー源として利用される燃料のひとつである。このような石炭の使用に際しては、微粉炭機(ミル)で石炭を微粉炭化してボイラで燃焼する、微粉炭燃料方式が多く採用されている。
【0003】
また、石炭は、銘柄、産炭地などにより、発熱量・カロリー、灰分などの基本性状が異なり、基本性状が異なるとボイラによる蒸気発生量が変動する。このため、適正な蒸気発生量および発電量を出力するには、石炭の基本性状に適合した燃料量をボイラに投入する必要がある。このようなことから、石炭の受け入れ時に基本性状の分析、調査が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−209282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電力需要などに応じて発電機の出力を変化させようとする場合、発電機出力に応じた蒸気発生量、つまり燃料量をプラント全体のバランスを勘案しながら、制御する必要がある。しかしながら、石炭は、粉砕工程で微粉炭化・粉化されて使用されるため、流動性が高いLNGや石油などとは異なり、燃料制御が難しく、LNGや石油などに比べて急速な出力変化が困難である、という問題があった。
【0006】
また、石炭は、固形・固体燃料であるため、同一銘柄の炭種であっても、サンプリングのタイミングにより性状が異なり、これらの性状の違いによって燃料制御がさらに困難となっていた。しかも、従来の性状分析は、石炭をプラントに受け入れた際に行い、熱量、融点、灰分などの各種分析を順次行っていた。このため、分析が完了するまでには数日〜2週間ほど要し、受け入れ時に分析を行った石炭がボイラに供給されるまでに、多くの時間が経過してしまい、石炭の性状が変化したり、分析対象とは異なる石炭がボイラに投入されたりする場合があった。すなわち、分析された性状と、ボイラに投入された石炭の性状とが異なり、適正な制御が行えない、という問題があった。
【0007】
そこでこの発明は、微粉炭の性状を適正に把握して、適正な発電制御を可能にする微粉炭火力発電設備および微粉炭火力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、石炭を貯留するバンカと、前記バンカからの石炭を微粉炭化する微粉炭機と、前記微粉炭機からの微粉炭を燃焼するボイラと、を備えた微粉炭火力発電設備であって、前記微粉炭機とボイラとの間に配設され、前記微粉炭機からの微粉炭を定期的に採取するサンプリング手段と、前記サンプリング手段で採取された微粉炭に対して、複数の所定の性状分析を並行して行う分析手段と、前記分析手段で分析された複数の分析結果に基づいて、前記微粉炭の前記ボイラへの投入量などを制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、微粉炭機からの微粉炭がサンプリング手段によって定期的に採取され、採取された微粉炭に対して、分析手段によって複数の所定の性状分析が並行して行われる。そして、分析手段で分析された複数の分析結果に基づいて、制御手段によって微粉炭のボイラへの投入量などが制御される。
【0010】
請求項2の発明は、石炭をバンカに貯留し、バンカからの石炭を微粉炭機で微粉炭化して、微粉炭をボイラで燃焼する微粉炭火力発電方法であって、前記微粉炭機からの微粉炭を定期的に採取し、採取した微粉炭に対して、複数の所定の性状分析を並行して行い、分析した複数の分析結果に基づいて、前記微粉炭の前記ボイラへの投入量などを制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2の発明によれば、微粉炭機からボイラに供給される前の微粉炭が採取されるため、従来のように受け入れ時に採取する場合に比べて、採取からボイラへの投入までの時間が著しく短縮される。また、採取した微粉炭に対して、複数の性状分析が並行して(同時に)行われるため、分析完了までの時間が著しく短縮される。これらの結果、採取、分析、投入までの間に、石炭の性状が大きく変化したり、分析対象とは異なる石炭がボイラに投入されたりすることが抑制・防止される。
【0012】
すなわち、分析された性状とボイラ投入直前の性状とが等しくなり、実際にボイラに投入される微粉炭の性状を適正に把握することが可能となる。この結果、分析された性状に基づいて微粉炭の投入量などを制御することで、適正に発電出力を制御すること、ひいては、電力需要等に応じた迅速な出力変化を行うことが可能となる。しかも、定期的に微粉炭を採取して性状分析を行うため、石炭・微粉炭の性状が変化したとしても、その変化に随時適合した発電制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態に係る微粉炭火力発電設備を示す概略構成図である。
【図2】図1の微粉炭火力発電設備のサンプリング装置の概略構成図である。
【図3】図1の微粉炭火力発電設備の分析装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の実施の形態に係る微粉炭火力発電設備1を示す概略構成図である。この微粉炭火力発電設備1は、石炭を微粉炭にしてボイラ5で燃焼し、発電機で発電する火力発電設備であり、主として、バンカ2と、微粉炭機(ミル)4と、ボイラ5と、サンプリング装置(サンプリング手段)6と、分析装置(分析手段)7と、制御コンピュータ(制御手段)8とを備えている。
【0016】
バンカ2は、石炭を貯留する容器であり、下側の開口部に配設された給炭機3を介して、バンカ2内の石炭が微粉炭機4に供給されるようになっている。この微粉炭機4は、バンカ2からの石炭を粉砕して微粉炭化・粉化する装置であり、微粉炭機4で生成された微粉炭がボイラ5に搬送されて、ボイラ5で燃焼されるようになっている。ここで、バンカ2と給炭機3と微粉炭機4とは、複数ユニット配設され、各ユニットからの微粉炭が、微粉炭機4毎の搬送路41を経由してボイラ5のバーナ段に搬送されるようになっている。また、給炭機3から微粉炭機4に石炭が供給される際に、石炭の粉砕性(HGI:Hardgrove Grindability Index)が測定され、測定結果に基づいて微粉炭機4が制御されるようになっている。
【0017】
サンプリング装置6は、各微粉炭機4とボイラ5との間、つまり搬送路41上に配設され、各微粉炭機4からの微粉炭を定期的に採取する装置である。ここで、この実施の形態では、サンプリング装置6の配設位置は、サンプリング装置6による採取、分析装置7による分析などに要する時間と、サンプリング装置6で採取した周辺の微粉炭がボイラ5に供給・投入されるまでの時間とが、ほぼ一致するように設定されている。つまり、採取、分析の対象となった微粉炭がボイラ5に投入され、分析された微粉炭の性状とボイラ投入直前の微粉炭の性状とが、等しくなるようになっている。
【0018】
このサンプリング装置6は、図2に示すように、一端が搬送路41に接続された採取管61を備え、この採取管61には、結露による微粉炭の閉塞や腐食を防止するためのヒータ62が配設されている。また、採取管61の上流側には、第1のバルブ63が配設され、採取管61の中央部には、第2のバルブ64が配設された排出管67が接続されている。さらに、採取管61の上流側には、第3のバルブ65が配設されたパージ管68が接続され、採取管61の下流側には、第4のバルブ66が配設されている。一方、排出管67の排出側には、排出管67から排出された微粉炭を一定量ずつ、複数の採取管に採取する分取装置(フラクションコレクタ、図示せず)が配置されている。
【0019】
そして、次のようにして微粉炭を定期的に採取する。すなわち、第3のバルブ65と第4のバルブ66を閉じた状態で、第1のバルブ63と第2のバルブ64とが開くことで、搬送路41上の微粉炭が、採取管61および排出管67を経由して分取装置に供給され、分取装置で一定量ずつ採取管に採取される。このとき、バルブ63、64の開弁時刻が、分析装置7に送信され、分析装置7による分析結果と採取時刻(採取対象)とが関連付けられる(タイムスタンプされる)ようになっている。
【0020】
次に、所定数(4本)の採取管への採取が完了すると、第1のバルブ63と第2のバルブ64とを閉じる。続いて、第3のバルブ65と第4のバルブ66とが開き、パージ管68から圧縮空気が一定時間供給されることで、採取管61および排出管67がパージ(ラインパージ)され、管61、67内の微粉炭が除去される。その後、第3のバルブ65と第4のバルブ66を閉じることで、1回の採取が終了し、このような採取を定期的に、かつ、石炭の炭種が変わるごとに、行うものである。ここで、定期的に行う周期は、後述するようにして分析された微粉炭の性状と、ボイラ投入直前の微粉炭の性状とが等しくなり、制御コンピュータ8による制御が適正になるように設定されている。
【0021】
分析装置7は、サンプリング装置6で採取された微粉炭に対して、複数の所定の性状分析を並行して行う装置であり、複数の分析器71〜74と、分析コンピュータ75とを備えている。第1の分析器(TG−DTA−1)71と第2の分析器(TG−DTA−2)72とは、TG(Thermogravimetry)にDTA(Differential Thermal Analysis)機能を組み込んだ示差熱熱重量同時測定器であり、水分量や灰分量、発揮分、固定炭素などの分析が行えるものである。ここで、複数の分析を並行・同時に行うために、第1の分析器71では、微粉炭の水分量と発揮分とを分析し、第2の分析器72では、微粉炭の灰分量と固定炭素とを分析するようになっている。
【0022】
第3の分析器(DSC計)73は、示差走査熱量測定器(Differential Scanning Calorimetry)で、微粉炭の熱量と融点とを分析・測定するものである。第4の分析器(CHN計)74は、元素分析装置で、微粉炭中の窒素、水素および炭素の量を分析・測定するものである。
【0023】
このような分析器71〜74には、サンプリング装置6で採取された採取管がそれぞれ1本ずつ供給され、各分析器71〜74による分析を並行・同時に行うようになっている。
【0024】
分析コンピュータ75は、各分析器71〜74で分析された分析結果・分析値に基づいて、採取した微粉炭の発熱量、湿度、窒素分、灰分、燃料比、灰融点などの分析結果を算出する計算機である。そして、算出した分析結果と上記の採取時刻とが、制御コンピュータ8に送信されるようになっている。
【0025】
制御コンピュータ8は、分析装置7で分析された複数の分析結果に基づいて、微粉炭のボイラ5への投入量などを制御するものである。すなわち、分析コンピュータ75から受信した微粉炭の発熱量、湿度、窒素分、灰分、燃料比、灰融点などの分析結果と、電力需要等に応じた所要発電出力、さらにはプラント全体のバランスなどとに基づいて、ボイラ5への微粉炭の投入量などを算出し、投入装置などを制御する。このような制御コンピュータ8による制御内容は、従来の制御と同様・同等であり、制御の基になる制御パラメータである分析結果が、従来と異なるものである。
【0026】
そして、このようなサンプリング装置6、分析装置7および制御コンピュータ8が、微粉炭機4毎に設けられている。
【0027】
次に、このような構成の微粉炭火力発電設備1の作用および、微粉炭火力発電方法などについて説明する。
【0028】
まず、各バンカ2内の石炭が、給炭機3を介して微粉炭機4に供給され、微粉炭機4によって微粉炭化される。次に、各微粉炭機4からの微粉炭が、搬送路41を経由してボイラ5側に搬送され、定期的に、および石炭の炭種が変わった際に、上記のようにしてサンプリング装置6によって、搬送路41上の微粉炭が採取される。
【0029】
次に、採取された微粉炭に対して、分析装置7によって、複数の所定の性状分析が並行に行われる。すなわち、上記のように、各分析器71〜74による所定の性状分析が、並行・同時に行われ、その結果に基づいて、微粉炭の発熱量、湿度、窒素分、灰分などの分析結果が算出される。そして、この分析結果などに基づいて、制御コンピュータ8によって微粉炭のボイラ5への投入量などが制御されるものである。
【0030】
以上のように、この微粉炭火力発電設備1および微粉炭火力発電方法によれば、各微粉炭機4からボイラ5に供給される前の微粉炭が、サンプリング装置6によって採取されるため、従来のように受け入れ時に採取する場合に比べて、採取からボイラ5への投入までの時間が著しく短縮される。また、採取した微粉炭に対して、分析装置7において、複数の性状分析が並行して(同時に)行われるため、分析完了までの時間が著しく短縮される。これらの結果、採取、分析、投入までの間に、石炭の性状が大きく変化したり、分析対象とは異なる石炭がボイラ5に投入されたりすることが抑制・防止される。
【0031】
すなわち、分析された性状とボイラ投入直前の性状とが等しくなり、実際にボイラ5に投入される微粉炭の性状を適正に把握することが可能となる。この結果、制御コンピュータ8において、分析された性状に基づいて微粉炭の投入量などを制御することで、適正に発電出力を制御すること、ひいては、電力需要等に応じた迅速な出力変化を行うことが可能となる。しかも、定期的かつ炭種変更の都度、微粉炭の採取、分析が行われるため、石炭・微粉炭の性状が変化したとしても、その変化に随時適合したリアルタイムな発電制御を行うことが可能となる。さらに、分析装置7による分析結果と採取時刻とが関連付けられるため、採取・分析対象の微粉炭を特定して、制御コンピュータ8によってこの微粉炭に対する制御を適正に行うことができる。
【0032】
また、微粉炭の性状を逐次、迅速・リアルタイムに把握可能なため、設備のトラブルなどが発生した際に、各時の微粉炭の性状を確認することで、適正かつ迅速な対応を行うことや、未然防止策を講じることが可能となる。さらに、従来は、作業者が炭種の切り替わりを判断して、石炭の性状データを制御装置に入力していたが、このような入力などが自動で行われるため、作業者による労力を軽減することができる。
【0033】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、分析装置7に上記のような分析器71〜74を備えているが、必要な分析項目や分析精度などに応じて、その他の分析器を備えてもよい。また、微粉炭機4毎に制御コンピュータ8を設けているが、各分析装置7による分析結果を総合的に判断して、微粉炭のボイラ5への投入量などを制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 微粉炭火力発電設備
2 バンカ
3 給炭機
4 微粉炭機
5 ボイラ
6 サンプリング装置(サンプリング手段)
7 分析装置(分析手段)
8 制御コンピュータ(制御手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭を貯留するバンカと、前記バンカからの石炭を微粉炭化する微粉炭機と、前記微粉炭機からの微粉炭を燃焼するボイラと、を備えた微粉炭火力発電設備であって、
前記微粉炭機とボイラとの間に配設され、前記微粉炭機からの微粉炭を定期的に採取するサンプリング手段と、
前記サンプリング手段で採取された微粉炭に対して、複数の所定の性状分析を並行して行う分析手段と、
前記分析手段で分析された複数の分析結果に基づいて、前記微粉炭の前記ボイラへの投入量などを制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする微粉炭火力発電設備。
【請求項2】
石炭をバンカに貯留し、バンカからの石炭を微粉炭機で微粉炭化して、微粉炭をボイラで燃焼する微粉炭火力発電方法であって、
前記微粉炭機からの微粉炭を定期的に採取し、
採取した微粉炭に対して、複数の所定の性状分析を並行して行い、
分析した複数の分析結果に基づいて、前記微粉炭の前記ボイラへの投入量などを制御する、
ことを特徴とする微粉炭火力発電方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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