説明

微粒分の少ない炭酸カルシウムスラリー及び塗工層にこれを備えた塗工紙

【課題】隠蔽性の高い塗工層を提供することができる炭酸カルシウムスラリーを提供すること、及び該炭酸カルシウムを含有する塗工層に備えた隠蔽性の高い塗工紙を提供すること。
【解決手段】レーザー散乱法による平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下であり、勾配係数(D30/D70)(式中、Dxはこの径に対する粒子のx重量%がより微細な等価球径を示す)が40以上である炭酸カルシウムスラリー、及び該炭酸カルシウムを含有する塗工層に備えた塗工紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽性の高い塗工層を提供することができる微粒分の少ない炭酸カルシウムスラリー及び該炭酸カルシウムを含有する塗工層を有する塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗工紙は種々の方法により製造されており、その1つの方法として、カーテンコーターを用いて塗工する方法が知られている。例えば、特許文献1には、ブレードコーター、ロッドコーター等のポストメータリング方式のコーターでウェブに下層の塗布を行う第1工程と、前記第1工程の後に、所定のドゥエルタイムを経てからカーテンコーターで上層の塗布を行う第2工程と、前記第1工程および第2工程の後に、前記下層と前記上層を塗布した前記ウェブを乾燥する第3工程とを含んで成ることを特徴とする製造方法が開示されており、この方法によれば、塗料の粘度や表面張力の自由度が大きく、コート原紙の平滑度が低くても良好な塗工紙を製造することができるとされている。
しかしながら、塗工紙(塗工板紙を含む)では一層隠蔽性の高い塗工層を有する塗工紙の製造方法が望まれている。塗工層の隠蔽性が高いと低品質の原紙でも高白色の紙として使えるようになる。特に、裏抜け防止や原紙層の隠蔽のため塗工層の隠蔽性は重要な要素である。重質炭酸カルシウムは、白色度が高く、また印刷適正に優れることから塗工層用のピグメントとして広く使われているが、隠蔽性は十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−331260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、隠蔽性の高い塗工層を提供することができる炭酸カルシウムスラリーを提供することを目的とする。
本発明は、上記炭酸カルシウム粒子を含有する塗工層に備えた隠蔽性の高い塗工紙を提供することを目的とする。
本発明は、隠蔽性の高い塗工紙の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炭酸カルシウムスラリーの特性について種々の検討した結果、炭酸カルシウム粒子の平均粒径と勾配係数(D30/D70)とが特定の範囲となるように、微粒分を低減させて粒径を調整すると、隠蔽性の高い塗工層を提供することができ、これにより上記課題を解決できるとの知見により、なされたものである。
すなわち、本発明は、レーザー散乱法による平均粒径が0.5〜1.5μmであり、勾配係数(D30/D70)(式中、DXはこの径に対する粒子のX重量%がより微細な等価球径を示す)が40以上であることを特徴とする炭酸カルシウムスラリーを提供する。
本発明は、又、上記炭酸カルシウムを含有する塗工層に備えることを特徴とする塗工紙を提供する。
本発明は、又、上記炭酸カルシウムを含有する水性塗工液を、支持体上に塗布して塗工層を形成させることを特徴とする塗工紙の製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明で対象とする炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムが好ましく、これは、例えば、特許第3595686号公報に記載の方法などにより容易に調製することができる。具体的には、天然石灰石を乾式粉砕し得られた粉体に水と分散剤とを添加して水に分散させて重質炭酸カルシウムスラリーを調製する。特に、このようにして調製した水性スラリーを、さらに、ビーズミル等を用い湿式粉砕したものが好ましい。
この際、天然石灰石を直ちに湿式粉砕することができるが、湿式粉砕に先立って、予めを乾式粉砕してもよい。乾式粉砕では、石灰石の粒径を40mm以下、好ましくは平均粒径を2mm〜2μm程度に粉砕しておくのがよい。
【0007】
以下、特に断らない限り部、%は重量部、重量%である。上記粉砕した石灰石の表面に有機分散剤が施すのがよい。これは種々の方法で行うことができるが、乾式粉砕した石灰石を有機分散剤の存在下で湿式粉砕することにより行うのが好ましい。具体的には、石灰石/水性媒体(好ましくは水)との重量比が30/70〜85/15、好ましくは60/40〜80/20の範囲となるように石灰石に水性媒体を加え、ここに分散剤を加える。使用する分散剤の量は特に限定されないが、重質炭酸カルシウム100部当たり固形分として0.1〜2.0部用いるのが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0部添加し、常法により湿式粉砕する。又は、上記範囲の量となる分散剤を予め溶解した水性媒体を石灰石と混合し、常法により湿式粉砕する。湿式粉砕は、バッチ式でも連続式でもよく、サンドミル、アトライター、ボールミルなどの粉砕媒体を使用したミルなどが使用するのが好ましい。このように湿式粉砕することにより、平均粒径が2μm以下、好ましくは平均粒径0.5〜2μm、より好ましくは平均粒径0.5〜1.5μmのものが得られる。又、液温20℃における粘度を300mPa・s以下に調整したものが好ましく、特に50〜200mPa・sに調整したものが好ましい。
【0008】
ここで、分散剤としては、特許第3595686号公報に記載の水溶性カチオン系界面活性剤(A)、水溶性アニオン系界面活性剤(B)および/又は水溶性非イオン系界面活性剤(C)を用いるのがよい。
このようにして、重質炭酸カルシウム水性スラリー濃度を所定の濃度に調整し、次に遠心分離機を用いる次の方法により、重質炭酸カルシウム水性スラリーを調製するのがよい。
方法1
上記の方法により湿式粉砕した平均粒径が0.5〜2μm、固形分濃度が74〜80重量%(好ましくは75〜77重量%)であって、液温20℃における粘度が300mPa・s以下(より好ましくは200mPa・s以下、特に50〜150mPa・s)の重質炭酸カルシウム水性スラリーを遠心分離機に導入して、下記の式で表される遠心効果Zが200〜3000(好ましくは500〜1500)の範囲で、重液と軽液とに、遠心分離前の水性スラリーの固形分濃度と遠心分離後の軽液の固形分濃度の差が1重量%以下(好ましくは0.2〜0.5重量%)となるように連続的に遠心分離し、粗粒子を含有する重液を回収し、軽液を除去することを特徴とする勾配係数が40以上であることを特徴とする重質炭酸カルシウム水性スラリーの調製方法。
Z=(N2 π2 r)/(900g)
(式中、Nは回転数[rpm]、rは転半径[m]、gは重力加速度[m/sec2 ]を表す。)
又、特許第3595686号公報に記載の方法2や3を採用しても良い。
【0009】
上記遠心分離操作は、遠心分離器に1回または複数回通液して行うことができる。使用する遠心分離器は一般に固液分離や分級に用いられるものでよく、例えばデカンタータイプ、バスケットタイプなどの遠心分離器があげられる。このうち、デカンタータイプの遠心分離器が好ましい。粒度分布は遠心効果、供給液濃度、供給液量を任意に調整することによって任意に制御できる。
【0010】
本発明では、例えば、上記の製造方法で得られた重質炭酸カルシウムの微粒分を低減させて粒径を調整して、レーザー散乱法による平均粒径が0.5μm以上1.5μm以下であり、勾配係数(D30/D70)(式中、Dxはこの径に対する粒子のx重量%がより微細な等価球径を示す)が40以上である炭酸カルシウムスラリーを得る。具体的には、遠心分離機を用い、遠心効果Zが200〜3000(好ましくは500〜1500)の範囲で1回以上通すことによって行う。
ここで、レーザー散乱法による粒径(平均、D30、D70)は、日機装製マイクロトラックを用いて測定することができる。又、等価球径とは、炭酸カルシウムは球形で球径はないので、同体積の球と仮定した場合の直径のことをいう。
本発明で用いる炭酸カルシウム粒子のレーザー散乱法による平均粒径は、0.5μm〜1.5μmであるのが好ましく、勾配係数(D30/D70)は42〜65であるのが好ましく、より好ましくは45〜60である。
【0011】
本発明では、上記炭酸カルシウムスラリーを用いて、炭酸カルシウムスラリーを含有する塗工層を調製する。このような塗工層としては、ピグメント100部に対して、8〜17部のバインダーからなる。これらに各々のコーターに適した粘度になるよう水を加えて粘度調製し、スラリーとし、常法により、支持体上に塗工層を塗布することにより塗工紙を調製することができる。
具体的には、ブレードコーター、サイズプレス、カーテンコーター(DFコーター)、スプレーコーターなど公知の塗工方法により、支持体上に塗工層を塗布することができる。
尚、バインダーとしては、ラテックス、スターチ等公知のバインダーを用いることができる。さらに、カオリン、クレイ等のピグメントを併用してもよい。また界面活性剤、粘度調整剤、消泡剤、造膜助剤など通常使用されている各種助剤を併用してもよい。
このようにして得られた塗工紙は、印刷用紙、板紙、ライナー原紙などとして幅広く用いることができる。
次に本発明を実施例により説明する。
【実施例】
【0012】
実施例1及び比較例
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1及び比較例で用いた重質炭酸カルシウムの特性をまとめて表1に示す。
表1

【0013】
表中の実施例1及び比較例の炭酸カルシウムは、以下のようにして調製した。
比較例で用いたサンプル3点(重質炭酸カルシウム)は、平均粒子径8μmの重質炭酸カルシウム(太平洋セメント株式会社製の石灰石原料の乾式粉砕品)に水を加え、重質炭酸カルシウム100部当たり分散剤(アニオン系分散剤、サンノプコ社製:F-130)を0.4部加え、アトライターで所定の平均粒径になるよう湿式粉砕し、次いで350Meshスクリーンで分級し、75%の水性スラリーを得た。
実施例で用いた重質炭酸カルシウムは、さらに上記スラリーをデカンタータイプの遠心分離器(回転半径0.077m、有効体積1.8リットル)に0.367m3/時間で供給し、1500Gの遠心力をかけたところ(遠心効果Z1500)、粗粒が遠心分離器の内壁に沈降した。この沈降した粗粒子をスクリュウによって外部に搬送、回収した(固形分量82%)。これに水を加え、71%、粘度175mPa・sのスラリーを得た。
又、実施例1及び比較例の炭酸カルシウムの粒径(平均、D30、D70)を日機装製マイクロトラックを用い、レーザー散乱法により測定した。
【0014】
このような炭酸カルシウムスラリーに水、バインダー、添加剤を加えて、固形分の濃度が62%である水性塗工液をつくった。塗工液に用いた配合を表2に示す。
表2

ここで、バインダーとしては、SBラテックス(JSR製2635G)、界面活性剤としては、日信化学工業株式会社製WE−003、粘性調整剤としては、サンノプコ株式会社製SNシックナー929−Sを用いた。
【0015】
次に、この塗工液を用いて、表3に示す塗工条件に従って、塗工液の乾燥後の塗布量が30g/m2である塗工紙を製造した。
表3

【0016】
使用したライナー中芯原紙と炭酸カルシウムの白色度を表4に示す。
表4

表に示す白色度は、日本電色工業株式会社製分光色彩白度計 PF10 により測定した。
【0017】
得られた塗工紙の白色度を表5に示す。尚、隠蔽性の評価方法として、原紙の白色度が低く、炭酸カルシウムの白色度が高いため、塗工紙の白色度を隠蔽性の指標として用いた。塗工量30g/m2での隠蔽性は以下の通りである。
表5

この結果から、本発明によれば、極めて隠蔽性に優れた塗工紙を得ることができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5〜1.5μmであり、勾配係数(D30/D70)(式中、DXはこの径に対する粒子のX重量%がより微細な等価球径を示す)が40以上であることを特徴とする炭酸カルシウムスラリー。
【請求項2】
請求項1の炭酸カルシウムを含有する塗工層に備えることを特徴とする塗工紙。
【請求項3】
カーテンコートによる塗工方式により塗工層が施される請求項2記載の塗工紙。
【請求項4】
請求項1記載の炭酸カルシウムを含有する水性塗工液を、カーテンコーターにより支持体上に塗布して塗工層を形成させることを特徴とする塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2012−207346(P2012−207346A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74687(P2011−74687)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(591093140)株式会社ファイマテック (3)
【Fターム(参考)】