微粒子、偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シート、偽造防止媒体、および微粒子の製造方法
【課題】本発明は、微粒子による偽造防止技術において、新規な微粒子を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とする微粒子を提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】本発明は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とする微粒子を提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子による偽造防止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偽造防止技術としては、ホログラム、透かし、潜像模様、パールインキ、発光インキ、凹版印刷、マイクロ文字等が知られている。中でも、偽造防止技術が適用されていることが容易に確認できない場合には模倣の可能性が低くなることから、目視(肉眼)では確認できない情報を利用する偽造防止技術が注目されている。しかしながら、近年では印刷技術が発展し高精細な印刷が可能となっていることから、目視では確認できない情報であっても、情報の位置が特定されると、模倣される可能性が高くなるという問題があった。
【0003】
そこで、微粒子による偽造防止技術が提案されている。この微粒子は、タガント(taggant)(追跡用添加物)とも称されるものであり、偽造防止媒体に適用した際には、個体によって微粒子の位置が異なることから、微粒子自体の確認が難しく、複製が困難であり、高度な偽造防止を実現することができる。また、個体の識別も可能となる。
【0004】
上記微粒子には、拡大して観察することで識別可能な情報を有するものが知られており、例えば、文字、数字、符号、標章等の記号や特殊な形状を有する微粒子や、有色の薄膜が複数層積層された微粒子が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。記号や特殊な形状を有する微粒子では、拡大して記号や特殊な形状を識別することで、真贋判定を行うことができる。また、有色の薄膜が複数層積層された微粒子では、拡大して積層した色のパターンを識別することで、真贋判定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3665282号公報
【特許文献2】特開2008−230228号公報
【特許文献3】特開2009−193069号公報
【特許文献4】特開2001−288698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の記号や特殊な形状を有する微粒子は、一般的に平面的な粒子であり、製造が容易である。そのため、模倣される可能性がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、微粒子による偽造防止技術において、新規な微粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とする微粒子を提供する。
【0008】
本発明によれば、拡大して観察することで識別可能な情報が、少なくとも曲面を有する立体形状であるので、従来の平面で構成されているものと比較して、微粒子の製造が困難であり、偽造防止効果を向上させることが可能である。また本発明によれば、少なくとも曲面を有する立体形状とすることで、表現できる識別可能な情報の選択肢が広がるため、多彩なデザインが可能であり、自他識別機能を発揮させることも可能となる。
【0009】
上記発明においては、上記微粒子が、感光性樹脂を含有することが好ましい。感光性樹脂を用いることで、直接描画や階調マスク等により生産性良く安価に微粒子を製造することができるからである。
【0010】
また本発明においては、上記微粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましい。微粒子表面での曲面の割合が多いほど、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
【0011】
さらに本発明においては、上記微粒子の粒径(L)および上記微粒子の厚み(H)が、H/L≧1/30を満たすことが好ましい。微粒子の粒径(L)に対する微粒子の厚み(H)の比が上記範囲であれば、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
【0012】
また本発明の微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。微粒子を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。
【0013】
さらに本発明の微粒子は、樹脂層と、上記樹脂層上に形成され、上記微粒子の表面に形成された金属層とを有することも好ましい。立体形状を有する微粒子の表面に金属層が形成されていることで、光の反射により立体形状を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。
【0014】
また本発明は、上述の微粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インクおよび偽造防止用トナーを提供する。
本発明においては、上述の微粒子を含有するので、本発明の偽造防止用インクおよび偽造防止用トナーを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用インクおよび偽造防止用トナーを偽造防止媒体に用いる際には、支持体上に本発明の偽造防止用インクを塗布したり、支持体上に本発明の偽造防止用トナーを転写したりすることにより、支持体上に微粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
【0015】
さらに本発明は、上述の微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シートを提供する。
本発明においては、上述の微粒子を含有する微粒子含有層を有するので、本発明の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用シートにおける微粒子の個数や位置を予め決めた状態で、偽造防止媒体に適用することができるので、高度な偽造防止を実現することが可能である。
【0016】
また本発明は、支持体上に、上述の微粒子が固定されていることを特徴とする偽造防止媒体を提供する。
本発明の偽造防止媒体においては、上述の微粒子を用いるので、偽造防止に非常に有用である。また本発明においては、ルーペ等の簡易器具のみで、真贋判定を容易に行うことが可能である。
【0017】
また本発明は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する露光現像工程と、上記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
【0018】
本発明においては、感光性樹脂層に階調露光を施して、所定の立体形状を有する微粒子を製造するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。また本発明においては、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
【0019】
さらに本発明は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、上記原版を用いて、上記微粒子を形成する微粒子形成工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
【0020】
本発明においては、原版を用いて所定の立体形状を有する微粒子を製造するので、微粒子の形成に樹脂成分、金属等の種々の材料を使用することができ、微粒子の材料の選択肢が広がるという利点を有する。また本発明によれば、感光性樹脂層に階調露光を施して、原版を作製するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。さらに本発明においては、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
【0021】
上記発明においては、上記露光現像工程の階調露光では、上記感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行うことが好ましい。また上記発明においては、上記露光現像工程の階調露光では、階調マスクを用いることも好ましい。複雑な立体形状も形成可能となるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、拡大して観察することで識別可能な情報が、少なくとも曲面を有する立体形状であるので、従来の平面で構成されているものと比較して、微粒子の製造が困難であり、偽造防止効果を向上させることが可能であるとともに、多彩なデザインが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の微粒子の一例を示す上面図および断面図である。
【図2】本発明の微粒子の他の例を示す斜視図および側面図である。
【図3】本発明の微粒子の他の例を示す上面図および断面図である。
【図4】本発明の微粒子の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の偽造防止用シートの検査方法の一例を示す模式図である。
【図12】本発明の偽造防止媒体の一例を示す上面図および断面図である。
【図13】本発明の偽造防止媒体の他の例を示す上面図、断面図および斜視図である。
【図14】本発明の微粒子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図15】本発明の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図16】本発明の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図17】本発明の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図18】従来の微粒子の一例を示す上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の微粒子、偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シート、偽造防止媒体、および微粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0025】
A.微粒子
本発明の微粒子は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明の微粒子について図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)は本発明の微粒子の一例を示す模式図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)、(b)に示す微粒子1は、表面5および裏面6を有し、表面5に拡大して観察することで識別可能な立体形状2(ティーポット)を有しており、この立体形状2は曲面で構成されている。
【0027】
図2(a)〜(c)は本発明の微粒子の他の例を示す模式図であり、図2(a)、(b)は斜視図、図2(c)は側面図である。図2(a)〜(c)に示す微粒子1A〜1Cはそれぞれ、表面5および裏面6を有し、表面5に拡大して観察することで識別可能な立体形状2(D・N・Pの文字)を有しており、この立体形状2は曲面で構成されている。
【0028】
図18(a)、(b)は従来の微粒子の一例を示す模式図であり、図18(a)は上面図、図18(b)は図18(a)のX−X線断面図である。図18(a)、(b)に示す微粒子101は、例えば金属多層膜103の表面に凹部がパターン状に形成されたものであり、拡大して観察することで識別可能な部分102(星)を有し、この識別可能な部分102は平面で構成されている。
【0029】
本発明によれば、拡大して観察することで識別可能な情報が、少なくとも曲面を有する立体形状であるので、平面で構成されている従来のものと比較して、微粒子の製造が困難であり、偽造防止効果を向上させることが可能である。また本発明によれば、少なくとも曲面を有する立体形状とすることで、表現できる識別可能な情報の選択肢が広がるため、多彩なデザインが可能であり、自他識別機能を発揮させることも可能となる。
【0030】
以下、本発明の微粒子における各構成について説明する。
【0031】
1.立体形状
本発明における立体形状は、拡大して観察することで識別可能なものであり、少なくとも曲面を有するものである。
【0032】
なお、「拡大して観察することで識別可能」とは、目視観察では識別困難であり、ルーペ等の簡易拡大鏡や顕微鏡等の光学的拡大装置を用い、拡大して観察することで識別可能であることをいう。
【0033】
立体形状が少なくとも曲面を有することは、反射特性を測定することにより確認することができる。平面は法線方向が一つであるのに対して、曲面は法線方向が場所によって異なる。そのため、平面と曲面とでは反射光の明暗が異なる。また、平面と曲面とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
具体的に、立体形状が曲面を有することは、破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
破壊式の検査方法は、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等により微粒子を切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する手法が挙げられる。
非破壊式の検査方法は、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する手法が挙げられる。接触式の形状測定は、例えば針を微粒子に接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定機を用いる手法が挙げられる。非接触式の形状測定は、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型などの等光路干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いる手法が挙げられる。
【0034】
立体形状は、少なくとも曲面を有していればよく、例えば、曲面のみを有していてもよく、曲面および平面を有していてもよい。
【0035】
立体形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。立体形状が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、立体形状の大きさは、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。
【0036】
このような立体形状としては、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の立体形状とすることができる。これらの立体形状は、本発明の微粒子の用途等に合わせた形状とすることができ、また所定の意味を表現する形状とすることもできる。
本発明の微粒子は、図1(a)に例示するように同一の立体形状を有する1種類の微粒子であってもよく、図2(a)に例示するように異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子の集合体であってもよい。
【0037】
2.微粒子の構造
本発明の微粒子は、上記立体形状を有するものである。
本発明の微粒子は、拡大して観察することで識別可能な情報として、上記立体形状を有していればよく、例えば、図1(a)、(b)および図2(a)〜(c)に示すように立体形状2のみを有していてもよく、図3(a)、(b)に示すように立体形状2および印(しるし)3を有していてもよい。
なお、図3(a)、(b)は本発明の微粒子の他の例を示す模式図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のC−C線断面図である。
【0038】
印の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。印が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、印の大きさは、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。なお、印の大きさは50μm以下であってもよい。この場合、簡易器具による真贋判断は困難となるが、顕微鏡等を用いての観察が可能である。印が小さくなれば、製造が困難となり偽造防止効果も高くなる。
【0039】
印としては、例えば、文字、数字、符号、標章等の記号等が挙げられる。これらの印は、本発明の微粒子の用途等に合わせた印とすることができ、所定の意味を表現する印とすることができる。
本発明の微粒子は、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子であってもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子の集合体であってもよい。
【0040】
本発明の微粒子は、通常、図1(b)、図2(c)および図3(b)に例示するように、立体形状2を有する表面5と、この表面5に対向する裏面6とを有している。また、図示しないが、本発明の微粒子は、表面、裏面および側面を有していてもよい。
本発明において、微粒子は表面に立体形状を有し、立体形状は少なくとも曲面を有することから、微粒子は表面に少なくとも曲面を有している。このように微粒子は表面に少なくとも曲面を有していればよく、例えば、曲面のみを有していてもよく、曲面および平面を有していてもよい。
中でも、微粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましく、75%以上が曲面で構成されていることがより好ましい。微粒子表面での曲面の割合が多いほど、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
なお、上記曲面の割合は、上述の破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0041】
本発明の微粒子の粒径は、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。微粒子の粒径が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止媒体に用いた際に微粒子の位置が特定されてしまうため、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、微粒子の粒径は、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。また、微粒子の粒径が小さすぎると、微粒子の表面に立体形状を形成することが困難となる場合があるからである。
【0042】
なお、粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0043】
本発明の微粒子の厚みは、微粒子の表面に立体形状を形成可能な厚みであれば特に限定されるものではないが、中でも、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。微粒子の厚みが上記範囲であれば、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となる。一方、微粒子の厚みが厚すぎると、微粒子の製造が困難となる場合があり、微粒子の厚みが薄すぎると、微粒子の表面に立体形状を形成することが困難となったり、微粒子の強度が弱くなったりする場合がある。
なお、上記の微粒子の厚みは、微粒子の裏面に略垂直な断面における微粒子の厚みをいう。例えば図3(a)に示すような微粒子の厚みHをいう。
【0044】
また本発明においては、微粒子の粒径(L)および微粒子の厚み(H)が、H/L≧1/30を満たすことが好ましく、中でもH/L≧1/20を満たすことがより好ましく、H/L≧1/10を満たすことがさらに好ましい。微粒子の粒径(L)に対する微粒子の厚み(H)の比が上記範囲であれば、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。一方、上記の比が大きすぎると、微粒子の製造が困難となる場合があり、上記の比が小さすぎると、微粒子の表面に立体形状を形成することが困難となる場合がある。また、上記の比が小さいと、微粒子の厚み(H)も相対的に小さくなり、微粒子の強度が弱くなってしまうおそれがある。
なお、上記の微粒子の粒径(L)は、微粒子の表面側からの平面視における微粒子の粒径をいう。例えば図3(a)に示すように、微粒子1が長径L1および短径L2を有する場合には、微粒子の長径L1を微粒子の粒径とする。また、上記の微粒子の厚み(H)は、上述したように、微粒子の裏面に略垂直な断面における微粒子の厚みをいう。例えば図3(a)に示すような微粒子の厚みHをいう。
微粒子の粒径(L)および厚み(H)は、上述の破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0045】
本発明の微粒子は、無色であってもよく有色であってもよく、後述の微粒子の材料に応じて適宜選択される。微粒子が有色である場合には、微粒子を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0046】
また、本発明の微粒子は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、後述の微粒子の材料に応じて適宜選択される。微粒子が光透過性を有さない場合には、微粒子を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0047】
3.微粒子の材料
本発明の微粒子の材料としては、上記立体形状を有する微粒子を製造できる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂、金属、金属化合物等を用いることができる。樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂を例示することができる。また、金属および金属化合物としては、蒸着法、メッキ法、スパッタ法により成膜可能なものであれば特に限定されるものではなく、金属化合物としては、金属酸化物、金属硫化物等が用いられ、金属および金属化合物として例えばAl、ZnS、TiO2、Cu、Au、Pt等が挙げられる。
【0048】
中でも、微粒子の材料は樹脂であることが好ましい。樹脂には、後述するような紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、着色材料等の機能性材料を添加することが可能であり、微粒子を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。また、樹脂は、微細加工ができるだけでなく、生産効率を向上させることができるからである。
【0049】
樹脂は、耐溶剤性を有することが好ましく、中でも、本発明の微粒子を用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成する際に使用される溶媒に対して不溶であることが好ましい。
【0050】
樹脂の中でも、特に感光性樹脂が好適である。後述の「E.微粒子の製造方法」の項に記載するように、直接描画や階調マスク等により生産性良く安価に微粒子を製造することができるからである。
感光性樹脂としては、ポジ型感光性樹脂およびネガ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
【0051】
また本発明の微粒子は、図4に例示するように、樹脂層7と、樹脂層7上に形成され、微粒子1の表面5に形成された金属層8とを有することも好ましい。立体形状を有する微粒子の表面に金属層が形成されていることで、光の反射により立体形状を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明の微粒子を用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成する場合には、微粒子が樹脂からなる場合、微粒子と透明樹脂との屈折率の差が小さいために、微粒子と透明樹脂との界面が見えにくくなり、微粒子の立体形状を視認するのが困難になることが懸念されるが、微粒子の表面に金属層が形成されていることで、立体形状の視認性を高めることが可能となる。
【0052】
樹脂層の材料としては、上記の樹脂を用いることができる。また、金属層の材料としては、上記の金属や金属化合物を用いることができる。
金属層の形成方法としては、蒸着法を挙げることができる。
金属層の厚みとしては、本発明の微粒子を用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成した場合に、立体形状の視認性を向上させることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜250nm程度とすることができ、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。金属層が厚すぎると、立体形状が損なわれてしまうおそれがあり、金属層が薄すぎると、金属層の形成が困難であったり、立体形状の視認性を高める効果が十分に得られなかったりする可能性があるからである。
【0053】
本発明の微粒子が樹脂を含有する場合、微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、顔料や染料等の着色材料等の機能性材料を含有することが好ましい。上述したように、微粒子を視認しやすく、真贋判定が容易になるからである。中でも、本発明の微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの材料は、材料の特性による識別が可能であり、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明の微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料および量子ドット材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。発光により識別が可能であり、真贋判定をさらに容易に行うことができるからである。
以下、各機能性材料に分けて説明する。
【0054】
(1)紫外線発光材料
本発明に用いられる紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0055】
微粒子中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0056】
(2)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0057】
微粒子中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0058】
(3)赤外線反射材料
本発明に用いられる赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0059】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0060】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0061】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0062】
微粒子中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0063】
(4)赤外線吸収材料
本発明に用いられる赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0064】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0065】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂や感光性樹脂を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0066】
微粒子中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0067】
(5)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズの微粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0068】
量子ドット材料は、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0069】
量子ドット材料のコアとなる材料として具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0070】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
【0071】
なかでも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0072】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0073】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0074】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0075】
また、量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0076】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0077】
微粒子中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0078】
(6)磁性材料
本発明に用いられる磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0079】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明の微粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有する微粒子と、磁性材料を含有しない微粒子とに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有する微粒子では共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しない微粒子では共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することにより微粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0080】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す微粒子を例示することができる。
【0081】
微粒子中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲内がより好ましい。磁性材料の含有量が少なすぎると、識別が困難となり、磁性材料の含有量が多すぎると、微粒子表面への立体形状の形成が困難となる場合があるからである。
【0082】
(7)着色材料
本発明に用いられる着色材料としては、顔料、染料を挙げることができる。
着色材料は、微粒子に含有させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な顔料、染料を用いることができる。
【0083】
微粒子中の着色材料の含有量としては、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0084】
4.微粒子の製造方法
本発明の微粒子の製造方法については、後述の「F.微粒子の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0085】
5.用途
本発明の微粒子は、偽造防止用途に好適であり、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0086】
B.偽造防止用インク
本発明の偽造防止用インクは、上述の微粒子を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、上述の微粒子を含有するので、本発明の偽造防止用インクを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用する際には、支持体上に本発明の偽造防止用インクを塗布することにより、支持体上に微粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
以下、本発明の偽造防止用インクにおける各構成について説明する。
【0087】
1.微粒子
本発明に用いられる微粒子としては、上記「A.微粒子」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0088】
微粒子としては、1種類の微粒子を用いてもよく、2種以上の微粒子を用いてもよい。例えば、同一の立体形状を有する1種類の微粒子を用いてもよく、異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。また、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子を用いてもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。2種類以上の微粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微粒子を組み合わせて使用することができる。
【0089】
偽造防止用インク中の微粒子の含有量としては、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に用いた場合に、微粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、0.01質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0090】
2.透明樹脂成分
本発明の偽造防止用インクは、通常、透明樹脂成分中に上述の微粒子が分散されたものである。
【0091】
本発明に用いられる透明樹脂成分の光透過性としては、本発明の偽造防止用インクを用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成した際に、微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂成分を所定の厚みで成膜したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0092】
透明樹脂成分としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分等の硬化性樹脂成分が好ましく、特に光硬化性樹脂成分が好ましい。光硬化性樹脂成分を用いることにより、耐熱性の低い支持体にも本発明の偽造防止用インクを適用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、本発明の偽造防止用インクを用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成する場合には、生産効率を向上させることができるからである。
【0093】
3.機能性材料
本発明の偽造防止用インクは、上記の微粒子および透明樹脂成分の他に、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料を含有していてもよい。
【0094】
例えば、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微粒子が紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有しない場合には、発光の有無により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微粒子も紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合には、発光の波長により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0095】
偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微粒子が赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有しない場合には、赤外線の吸収または反射の有無により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微粒子も赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合には、吸収または反射する赤外線の波長により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0096】
偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微粒子が量子ドット材料を含有しない場合には、発光の有無により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微粒子も量子ドット材料を含有する場合には、発光の波長により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0097】
なお、機能性材料については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0098】
偽造防止用インク中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0099】
偽造防止用インク中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0100】
偽造防止用インク中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0101】
偽造防止用インク中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0102】
偽造防止用インク中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0103】
4.溶媒
本発明の偽造防止用インクは、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、上記の微粒子および透明樹脂成分が分散するものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用インクの塗布方法等に応じて適宜選択される。また、溶媒は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
例えばグラビア印刷用インキとして用いる場合、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。オフセット印刷用インキやシルクスクリーン印刷用インキとして用いる場合は、高沸点の石油系溶剤(炭素数が15以上(C15以上)の炭化水素類)が挙げられる。
【0104】
本発明の偽造防止用インクの固形分濃度は、偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用可能であれば特に限定されるものではなく、20質量%〜85質量%程度とすることができる。
【0105】
C.偽造防止用トナー
本発明の偽造防止用トナーは、上述の微粒子を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、上述の微粒子を含有するので、本発明の偽造防止用トナーを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用トナーを偽造防止媒体に適用する際には、支持体上に本発明の偽造防止用トナーを転写することにより、支持体上に微粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
【0106】
本発明の偽造防止用トナーは、上記微粒子を含有するものであればよく、乾式トナーおよび湿式トナーのいずれであってもよく、その組成としては一般的な組成とすることができる。本発明の偽造防止用トナーは、例えば、主樹脂、副樹脂、着色剤、荷電制御剤、流動性制御剤等を含有することができる。
主樹脂としては、光透過性を有し、上記の微粒子が分散するものであれば特に限定されるものではない。主樹脂の光透過性としては、上述の偽造防止用インクにおける透明樹脂成分の光透過性と同様とすることができる。主樹脂にはスチレン−アクリル系、ポリエステル系が主として使用される。副樹脂にはポリプロピレン、ポリエチレン、WAX類が使用される。主樹脂や副樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤にはカーボン、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等が使用される。荷電制御剤はプラス系、マイナス系があり、金属を含有したものや、樹脂系、四級アンモニウム塩等が挙げられる。流動制御剤はシリカ等が使用される。
【0107】
なお、微粒子については、上述の偽造防止用インクにおける微粒子と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本発明の偽造防止用トナーは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料をさらに含有していてもよい。機能性材料としては、上述の偽造防止用インクにおける機能性材料と同様とすることができる。
【0109】
D.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、上述の微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を有することを特徴とするものである。
【0110】
本発明の偽造防止用シートについて図面を参照しながら説明する。
図5は本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。図5に示す偽造防止用シート20は、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22からなるものである。
【0111】
本発明においては、上述の微粒子を含有する微粒子含有層を有するので、本発明の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、微粒子を偽造防止媒体に適用する際に、微粒子を含有するインクを支持体上に塗布する場合には、インクの塗布量が少ないと支持体上に微粒子が存在していない可能性があり、偽造防止効果が得られないおそれがあるが、本発明においては、偽造防止用シートにおける微粒子の個数が予め分かった状態で、偽造防止媒体に適用することができるので、確実に偽造防止効果を達成することができる。さらに本発明においては、偽造防止用シートにおける微粒子の位置についてマッピングを行うことが可能であり、高度な偽造防止を実現することが可能である。また、本発明の偽造防止用シートは偽造防止媒体への適用が容易であるという利点も有する。さらには、本発明の偽造防止用シートは他のシートとの積層も容易であり、付加価値を高めることができる。
【0112】
図6は本発明の偽造防止用シートの例を示す概略断面図である。図6に示す偽造防止用シート20においては、剥離層23と、粘着層24と、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22とが順に積層されている。
【0113】
図7は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図7に示す偽造防止用シート20は、基材25と、基材25上に形成され、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22とを有し、微粒子含有層22側に粘着層24および剥離層23が順に積層されている。
【0114】
図8は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図8に示す偽造防止用シート20は、基材25と、基材25上に形成され、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22と、微粒子含有層22上に形成されたハードコート層26とを有し、基材25側に粘着層24および剥離層23が順に積層されている。
【0115】
図9は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図9に示す偽造防止用シート20においては、剥離層23と、粘着層24と、ホログラム層27と、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22とが順に積層されている。
【0116】
図10は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図10に示す偽造防止用シート20は、基材25と、基材25上に形成され、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22と、微粒子含有層22上に形成されたハードコート層26とを有し、基材25側にホログラム層27と粘着層24と剥離層23とが順に積層されている。
【0117】
このように、本発明の偽造防止用シートは、微粒子含有層以外に他の構成を有していてもよい。
以下、本発明の偽造防止用シートにおける各構成について説明する。
【0118】
1.微粒子含有層
本発明における微粒子含有層は、上述の微粒子が透明樹脂中に分散されたものである。
なお、微粒子については、上記「A.微粒子」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0119】
微粒子としては、1種類の微粒子を用いてもよく、2種以上の微粒子を用いてもよい。例えば、同一の立体形状を有する1種類の微粒子を用いてもよく、異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。また、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子を用いてもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。2種類以上の微粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微粒子を組み合わせて使用することができる。
【0120】
本発明に用いられる透明樹脂の光透過性としては、微粒子含有層中の微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂からなる層を微粒子含有層と同じ厚みで形成したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0121】
透明樹脂としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂好ましく、特に光硬化性樹脂が好ましい。例えば図7、図8および図10に示すように、基材25上に微粒子含有層22が形成されている場合には、光硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性の低い基材も使用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、偽造防止用シートの生産効率を向上させることができるからである。
透明樹脂は、上記「B.偽造防止用インク」の項に記載した透明樹脂成分を固化させたものとすることができる。
【0122】
微粒子含有層中の微粒子の含有量としては、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではないが、微粒子含有層1cm2当たりに少なくとも1個以上の微粒子が含有されていることが好ましい。
【0123】
また、微粒子含有層が基材上に形成されている場合には、微粒子含有層は基材上に一面に形成されていてもよくパターン状に形成されていてもよい。微粒子含有層のパターン形状が所定の意味を表す形状である場合には、微粒子を隠し情報として利用することができ、偽造防止効果を高めることができる。
【0124】
微粒子含有層の膜厚としては、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、本発明の偽造防止用シートの層構成や微粒子含有層に含まれる透明樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば図7、図8および図10に示すように、基材25上に微粒子含有層22が形成されている場合には、微粒子含有層の膜厚は比較的薄くともよい。一方、図5に例示するように、微粒子含有層22が単独で形成されている場合には、自己支持性の観点から、微粒子含有層の膜厚は比較的厚いことが好ましい。また、微粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、割れを抑制する観点から、微粒子含有層の膜厚は比較的薄いことが好ましい。
具体的に、微粒子含有層の膜厚は、0.1μm〜500μm程度とすることができ、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0125】
微粒子含有層の形成方法としては、例えば、上述の偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。例えば図7、図8および図10に示すように、基材25上に微粒子含有層22が形成されている場合には、基材上に偽造防止用インクを塗布し、固化させることで、微粒子含有層を形成することができる。また、図5に例示するように、微粒子含有層22が単独で形成されている場合には、基板上に偽造防止用インクを塗布し、固化させた後、基板から微粒子含有層を剥離することで、微粒子含有層を単独で得ることができる。この際に用いられる基板としては、光透過性を有していても有さなくてもよく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0126】
偽造防止用インクの塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。
また、偽造防止用インクの固化方法としては、透明樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化性樹脂の場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。熱可塑性樹脂の場合には、冷却する方法が用いられる。
【0127】
2.基材
本発明においては、図7、図8および図10に例示するように、微粒子含有層22が基材25上に形成されていてもよい。本発明の偽造防止用シートの強度を高めることができ、また取扱い性が良好となるからである。中でも、微粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、微粒子含有層の割れを抑制する観点から、微粒子含有層は比較的薄いことが好ましいので、基材上に微粒子含有層が形成されていることが好ましい。また、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材25が微粒子含有層22よりも表面側となるように配置されている場合には、基材により微粒子含有層を保護することもできる。図7および図10に例示する層構成の場合には、透明基材が用いられ、図8に例示する層構成の場合には、不透明基材を使用することもできる。
【0128】
本発明に用いられる基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、基材の形成位置により適宜選択される。本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材25が微粒子含有層22よりも表面側となるように配置されている場合や、図10に例示するように、基材25がホログラム層27よりも表面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有することが好ましい。一方、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8に例示するように、基材25が微粒子含有層22よりも裏面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0129】
基材が光透過性を有する場合、その光透過性としては、微粒子含有層中の微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0130】
また、基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本発明の偽造防止用シートを種々の形状の偽造防止媒体に適用することが可能となるからである。
【0131】
このような基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0132】
また、基材の表面は、微粒子含有層との密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、微粒子含有層および基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、基材製造時に処理されるものと、製造後の基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0133】
基材の厚みは、本発明の偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0134】
3.粘着層
本発明においては、図6〜図10に例示するように、微粒子含有層22上に粘着層24が積層されていてもよい。粘着層を介して、本発明の偽造防止用シートを貼付することができるからである。
【0135】
粘着層は、基材上に微粒子含有層が形成されている場合、基材側に積層されていてもよく、微粒子含有層側に積層されていてもよい。微粒子含有層上に後述のハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層とは反対側の面に粘着層が配置される。また、微粒子含有層とホログラム層とが積層されている場合には、ホログラム層側に粘着層が配置される。
【0136】
粘着層の材料としては、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑系、熱硬化系、光硬化系、エラストマー系のいずれも用いることができ、偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択される。偽造防止用シートを転写箔として使用する場合には、ヒートシール性を有する粘着層が用いられる。
【0137】
粘着層の膜厚は、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
粘着層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0138】
4.剥離層
本発明においては、図6〜図10に例示するように、微粒子含有層22上に粘着層24と剥離層23とが順に積層されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本発明の偽造防止用シートの取り扱いが容易になるからである。
本発明の偽造防止用シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0139】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0140】
5.ハードコート層
本発明においては、図8および図10に例示するように、微粒子含有層22上にハードコート層26が形成されていてもよい。ハードコート層により微粒子含有層を保護することができるからである。
ハードコート層は、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8および図10に例示するように、ハードコート層26が微粒子含有層22よりも表面側となるように配置される。
【0141】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、微粒子含有層中の微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0142】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、微粒子含有層を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0143】
ハードコート層の膜厚は、微粒子含有層を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0144】
6.ホログラム層
本発明においては、図9および図10に例示するように、微粒子含有層22上にホログラム層27が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0145】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0146】
ホログラム層は、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9および図10に例示するように、ホログラム層27が微粒子含有層22よりも裏面側になるように配置される。これにより、微粒子含有層をホログラム層の保護層として利用することができる。
【0147】
7.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0148】
また、本発明の偽造防止用シートの形状としては、特に限定されるものではなく、矩形、多角形、円形、楕円形、その他、任意の形状とすることができる。本発明の偽造防止用シートの形状が所定の意味を表す形状である場合には、微粒子を隠し情報として利用することができる。
【0149】
本発明の偽造防止用シートの検査方法としては、例えば図11に示すように、偽造防止用シート20にLED照明51で光を照射し、カメラ(ラインセンサ)52により画像を取得する方法を挙げることができる。図11においては、微粒子含有シート20に対してカメラ52と反対側にLED照明51を配置して、透過光を観察しているが、図示しないが、微粒子含有シートに対してカメラと同じ側にLED照明を配置して、反射光を観察してもよい。
偽造防止用シートの検査装置では、微粒子の位置をマッピングし、データベースに保存し、照合が可能である。
検査において、微粒子含有層に微粒子が含有されていない領域があった場合には、レーザーマーキング装置を使用し、微粒子が含有されていない領域にマーキングを行い、偽造防止用シートを所定の形状とする際に排除してもよい。
【0150】
本発明の偽造防止用シートは、そのままラベルとして使用したり、転写箔として使用したりすることが可能である。また、偽造防止用シートは、ホログラム層を有する場合には、ホログラムラベルやホログラム転写箔として使用することもできる。さらに、偽造防止用シートは、偽造防止媒体へのラミネートフィルムとして使用することもできる。
偽造防止用シート自体は光透過性を有するものとすることができるので、様々な偽造防止媒体に適用することができる。
【0151】
さらに、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用する際には、偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着してもよく、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートを埋め込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込んでもよい。偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着する場合には、偽造防止用シートをそのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。転写方法としては、熱転写法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体については、後述の「E.偽造防止媒体」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0152】
E.偽造防止媒体
本発明の偽造防止媒体は、支持体上に、上述の微粒子が固定されていることを特徴とするものである。
【0153】
図12(a)、(b)は本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図であり、図12(a)は上面図、図12(b)は図12(a)のD−D線断面図である。図12(a)、(b)に示す偽造防止媒体30においては、支持体31の表面に、上述の微粒子1が透明樹脂21中に分散された微粒子含有層22が固着されている。
【0154】
図13(a)〜(c)は本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図であり、図13(a)は上面図、図13(b)は図13(a)のE−E線断面図、図13(c)は偽造防止媒体の積層構造を示す斜視図である。図13(a)〜(c)に示す偽造防止媒体30おいては、支持体31上に第1樹脂層32と上述の微粒子1が透明樹脂21中に分散された微粒子含有層22からなる偽造防止用シート20と第2樹脂層33とが積層されており、偽造防止媒体30の内部に偽造防止用シート20が埋め込まれている。偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートが埋め込まれている場合には、偽造防止用シートが剥がされて悪用されるのを防ぐことができる。
【0155】
本発明の偽造防止媒体においては、上述の微粒子を用いるので、偽造防止に非常に有用である。また本発明においては、ルーペ等の簡易器具のみで、真贋判定を容易に行うことが可能である。
【0156】
以下、本発明の偽造防止媒体における各構成について説明する。
なお、微粒子については、上記「A.微粒子」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0157】
微粒子としては、1種類の微粒子を用いてもよく、2種以上の微粒子を用いてもよい。例えば、同一の立体形状を有する1種類の微粒子を用いてもよく、異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。また、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子を用いてもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。2種類以上の微粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微粒子を組み合わせて使用することができる。
【0158】
支持体上に微粒子を固定する方法としては、上述の偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シートを用いる方法が挙げられる。偽造防止用インクを用いる場合、支持体上に偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。偽造防止用トナーを用いる場合、支持体上に偽造防止用トナーを転写する方法が挙げられる。偽造防止用シートを用いる場合、支持体の表面に偽造防止用シートを固着する方法、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層とを積層する方法、支持体が紙である場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込む方法が挙げられる。支持体の表面に偽造防止用シートを固着する際には、そのまま貼ってもよく、転写してもよい。また、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層との積層方法としては、例えば、各層を接着層を介して積層する方法、各層を熱圧着により積層する方法等を挙げることができる。
【0159】
本発明に用いられる支持体としては、本発明の偽造防止媒体の用途に応じて適宜選択されるものである。支持体は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。支持体の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0160】
また、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層とが積層されている場合、第1樹脂層は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、支持体と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第2基材としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0161】
本発明の偽造防止媒体の用途としては、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等を挙げることができる。
【0162】
F.微粒子の製造方法
本発明の微粒子の製造方法は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であり、2つの実施態様を有する。
【0163】
第1実施態様は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する露光現像工程と、上記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法である。
第2実施態様は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、上記原版を用いて、上記微粒子を形成する微粒子形成工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法である。
以下、各実施態様に分けて説明する。
【0164】
1.第1実施態様
本実施態様の微粒子の製造方法は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する露光現像工程と、上記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程とを有することを特徴とする。
【0165】
図14(a)〜(e)は本実施態様の微粒子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図14(a)に示すように、基板12上に、溶媒溶解性を有する犠牲層13と感光性樹脂層14aとが順に積層された積層体10を準備する(積層体準備工程)。次に、図14(b)に示すように、感光性樹脂層14aに描画装置16によりレーザー光17を照射して直接描画を行って、階調露光を施した後、現像処理を行い、図14(c)に示すように、所定の立体形状2が形成された粒子層14bを得る(露光現像工程)。次いで、図14(d)に示すように、粒子層14bおよび犠牲層13が形成された基板12を溶媒Sに浸漬させ、犠牲層13を溶解し、粒子層14bを基板12から分離する(犠牲層溶解工程)。このようにして、図14(e)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる。
【0166】
図15(a)〜(e)は本実施態様の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図15(a)に示すように、基板12上に、溶媒溶解性を有する犠牲層13と感光性樹脂層14aとが順に積層された積層体10を準備する(積層体準備工程)。次に、図15(b)に示すように、感光性樹脂層14aに階調マスク18を介して光19を照射して、階調露光を施した後、現像処理を行い、図15(c)に示すように、所定の立体形状2が形成された粒子層14bを得る(露光現像工程)。次いで、図15(d)に示すように、粒子層14bおよび犠牲層13が形成された基板12を溶媒Sに浸漬させ、犠牲層13を溶解し、粒子層14bを基板12から分離する(犠牲層溶解工程)。このようにして、図15(e)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる。
【0167】
本実施態様においては、感光性樹脂を含有する微粒子を得ることができる。本実施態様によれば、感光性樹脂層を階調露光を施して、所定の立体形状を有する微粒子を製造するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。また、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
以下、本実施態様の微粒子の製造方法における各工程について説明する。
【0168】
(1)積層体準備工程
本実施態様における積層体準備工程は、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層と感光性樹脂層とが順に積層された積層体を準備する工程である。
以下、積層体における各構成について説明する。
【0169】
(a)犠牲層
本実施態様に用いられる犠牲層は、基板上に形成され、溶媒溶解性を有するものである。
【0170】
犠牲層の溶媒溶解性としては、特に限定されるものではなく、極性溶媒に対する溶解性であってもよく、非極性溶媒に対する溶解性であってもよい。中でも、犠牲層は、極性溶媒、特に水に対する溶解性を有することが好ましい。その他の溶剤を使用するよりも環境に対し負荷の少ない処理とすることができるからである。
【0171】
犠牲層の材料としては、溶媒溶解性を有するものであれば特に限定されるものではなく、犠牲層が溶媒溶解性を有する溶媒の種類に応じて適宜選択される。具体的には、溶媒溶解性を有する樹脂が用いられる。中でも、水溶性高分子化合物であることが好ましく、ポリビニルアルコールを用いることがさらに好ましい。ポリビニルアルコールは水に溶解する水溶性高分子化合物であり、水を用いることにより、その他の溶剤を使用するよりも環境に対し負荷の少ない処理とすることができるからである。
【0172】
犠牲層の膜厚としては、犠牲層が溶解可能な膜厚であれば特に限定されるものではない。
犠牲層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0173】
(b)感光性樹脂層
本実施態様に用いられる感光性樹脂層は、上記犠牲層上に形成されるものである。
感光性樹脂層に含まれる感光性樹脂成分としては、ポジ型感光性樹脂成分およびネガ型感光性樹脂成分のいずれも用いることができる。
【0174】
感光性樹脂層の膜厚としては、所定の立体形状を形成可能な膜厚であれば特に限定されるものではないが、上記「A.微粒子」の項に記載した微粒子の厚みと同程度であることが好ましい。
感光性樹脂層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0175】
(c)基板
本実施態様に用いられる基板としては、上記の犠牲層および感光性樹脂層を基板上に形成可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0176】
(2)露光現像工程
本実施態様における露光現像工程は、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する工程である。
【0177】
感光性樹脂層に階調露光を施す方法としては、感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行うことで、所定の立体形状を形成可能であれば特に限定されるものではないが、感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法、および、階調マスクを用いる方法が好ましい。複雑な立体形状も形成可能となるからである。
【0178】
感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法の場合、描画装置としては、例えば、レーザー描画装置や電子線描画装置を用いることができる。
本実施態様において、所定の立体形状の他に所定の印を有する微粒子を製造する場合にも、1回の直接描画を行うことで、立体形状および印を形成することができる。
【0179】
また、階調マスクを用いる方法の場合、階調マスクとしては、例えば、露光波長では解像しない微細なドットパターンの分布状態により、露光する際の透過光量(露光量)分布を制御するフォトマスクや、透明基板上に遮光剤が所定の濃度パターンで分散しているフォトマスク(グレイマスク)を用いることができる。
ドットパターンのフォトマスクについては、特開2004−296590号公報を参照することができる。また、グレイマスクについては、特開2002−6473号公報を参照することができる。
本実施態様において、所定の立体形状の他に所定の印を有する微粒子を製造する場合には、2種類の階調マスクを準備し、階調マスクを変えて2回露光することで、立体形状および印を形成することができる。
【0180】
現像処理を行う方法としては、特に限定されるものではないが、例えば現像液を用いる方法等を挙げることができる。現像液としては、一般的な現像液を用いることができ、感光性樹脂層の種類等に応じて適宜選択される。
【0181】
(3)犠牲層溶解工程
本実施態様における犠牲層溶解工程は、上記犠牲層を溶解する工程である。
犠牲層を溶解する方法としては、例えば、溶媒に浸漬する方法を挙げることができる。この際、超音波を併用してもよい。
溶媒としては、犠牲層の溶媒溶解性に応じて適宜選択される。中でも極性溶媒、特に水を使用することが好ましい。犠牲層溶解工程において発生する廃液処理において、その他の溶剤を使用するよりも環境に対し負荷の少ない処理とすることができるからである。
【0182】
(4)微粒子回収工程
本実施態様においては、犠牲層溶解工程後に、通常、微粒子を回収する微粒子回収工程が行われる。
微粒子を回収する方法としては、例えば、犠牲層が溶解した溶媒を含有する溶液中で微粒子を沈降させる方法を挙げることができる。この際、微粒子を沈降させるために、遠心分離を行ってもよい。
また、微粒子を回収した後は、分級を行ってもよい。これにより、立体形状の識別が困難であるような非常に小さい微粒子を取り除くことができるからである。
なお、微粒子のその他の点については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0183】
2.第2実施態様
本実施態様の微粒子の製造方法は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、上記原版を用いて、上記微粒子を形成する微粒子形成工程とを有することを特徴とする。
【0184】
図16(a)〜(e)は本実施態様の微粒子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図16(a)に示すように、基板42上に感光性樹脂層44aが形成された積層体40を準備する(積層体準備工程)。次に、図16(b)に示すように、感光性樹脂層44aに描画装置16によりレーザー光17を照射して直接描画を行って、階調露光を施した後、現像処理を行い、図16(c)に示すように、所定の立体形状とは逆の立体形状45aが形成された鋳型層44bを得る(露光現像工程)。これにより、原版41が得られる(原版形成工程)。次に、図16(d)に示すように、原版41の鋳型層44bの立体形状45aが形成された凹部に微粒子用材料46を充填し、微粒子用材料46を固化させた後、原版41から取り外し、図16(e)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる(微粒子形成工程)。
【0185】
図17(a)〜(g)は本実施態様の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図17(a)に示すように、基板42上に感光性樹脂層44aが形成された積層体40を準備する(積層体準備工程)。次に、図17(b)に示すように、感光性樹脂層44aに階調マスク18を介して光19を照射して、階調露光を施した後、現像処理を行い、図17(c)に示すように、所定の立体形状と同一の立体形状45bが形成された鋳型層44bを得る(露光現像工程)。次いで、図17(d)に示すように、鋳型層44b上に金属の蒸着またはメッキを行って、立体形状45b、すなわち所定の立体形状とは逆の立体形状45aを有する第2鋳型層47を形成し、図17(e)に示すように、第2鋳型層47から鋳型層44bを剥離する。これにより、原版41が得られる(原版形成工程)。次に、図17(f)に示すように、原版41(第2鋳型層47)の立体形状45aが形成された凹部に微粒子用材料46を充填し、微粒子用材料46を固化させた後、原版41から取り外し、図17(g)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる(微粒子形成工程)。
【0186】
本実施態様においては、原版を用いて微粒子を形成するので、微粒子用材料に樹脂成分、金属等の種々の材料を使用することができ、微粒子の材料の選択肢が広がるという利点を有する。また本実施態様によれば、感光性樹脂層に階調露光を施して、原版を作製するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。また、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
以下、本実施態様の微粒子の製造方法における各工程について説明する。
【0187】
(1)原版形成工程
本実施態様における原版形成工程は、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程とを有し、原版を形成する工程である。
以下、原版形成工程のおける各工程について説明する。
【0188】
(a)積層体準備工程
本実施態様における積層体準備工程は、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する工程である。
なお、基板および感光性樹脂層については、上記第1実施態様に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0189】
(b)露光現像工程
本実施態様における露光現像工程は、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する工程である。
【0190】
なお、階調露光および現像処理については、上記第1実施態様に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0191】
本工程において、微粒子が有する立体形状と同一の立体形状を形成するか、微粒子が有する立体形状と逆の立体形状を形成するかは、原版の形成方法に応じて適宜選択される。なお、原版を形成する際の複製方法については、公知の方法を用いることができる。
【0192】
(c)原版
本実施態様における原版としては、微粒子が有する立体形状は逆の立体形状を有するものであれば特に限定されるものではなく、原版の形成方法に応じて適宜選択される。原版における逆の立体形状を有する層の材料は、樹脂であってもよく金属であってよい。金属の場合には、耐久性が高いという利点を有する。
原版は、離型処理が施されていてもよい。
【0193】
(2)微粒子形成工程
本実施態様における微粒子形成工程は、上記原版を用いて、微粒子を形成する工程である。
【0194】
原版を用いて微粒子を形成する方法としては、原版の逆の立体形状が形成された凹部に微粒子用材料を充填し、固化させる方法や、原版を樹脂層に型押しする方法を挙げることができる。
【0195】
微粒子用材料としては、原版を用いて所定の立体形状を有する微粒子を製造できる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂成分、金属、金属化合物等を用いることができる。なお、これらの材料については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
微粒子用材料の充填方法としては、微粒子用材料の種類に応じて適宜選択される。樹脂成分を用いる場合には、微粒子用材料を塗布する方法が挙げられる。また、金属や金属化合物を用いる場合には、微粒子用材料を蒸着する方法が挙げられる。金属の場合には、メッキ法も適用することができる。
微粒子用材料の固化方法としては、微粒子用材料の種類に応じて適宜選択される。樹脂成分が硬化性樹脂成分である場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。樹脂成分が熱可塑性樹脂成分である場合には、冷却する方法が用いられる。
【0196】
また、原版を型押しする樹脂層に用いられる樹脂としては、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様とすることができる。
樹脂層への原版の型押しを行った後は、樹脂層を打ち抜くことで、微粒子を製造することができる。樹脂層を打ち抜く際には、型押し後に、金型により樹脂層を打ち抜いてもよく、原版が金属製である場合には、原版により型押しと当時に打ち抜きを行ってもよい。また、型押し後に、レーザーにより樹脂層を切断することで、微粒子を製造することもできる。
【0197】
得られた微粒子には、分級を行ってもよい。これにより、立体形状の識別が困難であるような非常に小さい微粒子を取り除くことができるからである。
なお、微粒子のその他の点については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0198】
3.他の実施態様
本発明においては、樹脂層や金属層に切削加工やレーザー加工を行うことにより、所定の立体形状または逆の立体形状を形成することもできる。切削加工およびレーザー加工としては、所定の立体形状を形成可能であれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
また、本発明においては、光造形法により、所定の立体形状または逆の立体形状を形成することもできる。光造形法としては、公知の方法を適用することができる。
【0199】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(犠牲層の形成)
100mm×100mm×0.7mmの無アルカリガラス(HOYA製NA35)基板上に、固形分20wt%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコーターにて550rpmの条件で塗布し、ホットプレートで110℃にて10分間乾燥することにより、膜厚1μmのポリビニルアルコール層を形成した。
【0201】
(感光性樹脂層の形成)
犠牲層を形成した基板を脱水ベイクした後、ヘキサメチルジンラザンを気化した気体を噴霧し、密着性向上処理を行った(HMDS処理)。次に犠牲層上にポジ型レジスト材料(東京応化製PMER-HA1300PM)をスピンコーターにて350rpmの条件にて塗布し、ホットプレートで130℃にて15分間乾燥することにより、膜厚25μmの感光性樹脂層を形成した。
【0202】
(露光現像)
100μm×100μmの10,000個のティーポットのパターンが描画された、微細なドットパターンからなるポジ型階調マスクを用い、UVアライナーより365nmの紫外光を800mJ照射した。ポジ型レジスト現像液(東京応化製NMD-3)を用いて5分間現像した後、水にて10秒間リンスした。感光性樹脂層は100μm×100μm×20μmの10,000個のティーポット形状にパターニングされ、各ティーポットの形状は階調マスクに応じた立体的な曲面を有する形状となった。
【0203】
(微粒子回収工程)
現像後の基板を水に浸漬させ、超音波処理水槽に入れ、3分間超音波を印加した。犠牲層は溶解し、ティーポットのパターンが基板より剥離した。浸漬させた水を回収、乾燥させることにより、ティーポット型の立体曲面形状を有する100μm×100μm×20μmの10,000個の微粒子を抽出することができた。
【符号の説明】
【0204】
1、1A、1B、1C … 微粒子
2 … 立体形状
3 … 印
5 … 微粒子の表面
6 … 微粒子の裏面
10、40 … 積層体
12、42 … 基板
13 … 犠牲層
14a、44a … 感光性樹脂層
14b … 粒子層
20 … 偽造防止用シート
21 … 透明樹脂
22 … 微粒子含有層
23 … 剥離層
24 … 粘着層
25 … 基材
26 … ハードコート層
27 … ホログラム層
30 … 偽造防止媒体
31 … 支持体
41 … 原版
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子による偽造防止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偽造防止技術としては、ホログラム、透かし、潜像模様、パールインキ、発光インキ、凹版印刷、マイクロ文字等が知られている。中でも、偽造防止技術が適用されていることが容易に確認できない場合には模倣の可能性が低くなることから、目視(肉眼)では確認できない情報を利用する偽造防止技術が注目されている。しかしながら、近年では印刷技術が発展し高精細な印刷が可能となっていることから、目視では確認できない情報であっても、情報の位置が特定されると、模倣される可能性が高くなるという問題があった。
【0003】
そこで、微粒子による偽造防止技術が提案されている。この微粒子は、タガント(taggant)(追跡用添加物)とも称されるものであり、偽造防止媒体に適用した際には、個体によって微粒子の位置が異なることから、微粒子自体の確認が難しく、複製が困難であり、高度な偽造防止を実現することができる。また、個体の識別も可能となる。
【0004】
上記微粒子には、拡大して観察することで識別可能な情報を有するものが知られており、例えば、文字、数字、符号、標章等の記号や特殊な形状を有する微粒子や、有色の薄膜が複数層積層された微粒子が提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。記号や特殊な形状を有する微粒子では、拡大して記号や特殊な形状を識別することで、真贋判定を行うことができる。また、有色の薄膜が複数層積層された微粒子では、拡大して積層した色のパターンを識別することで、真贋判定を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3665282号公報
【特許文献2】特開2008−230228号公報
【特許文献3】特開2009−193069号公報
【特許文献4】特開2001−288698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の記号や特殊な形状を有する微粒子は、一般的に平面的な粒子であり、製造が容易である。そのため、模倣される可能性がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、微粒子による偽造防止技術において、新規な微粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とする微粒子を提供する。
【0008】
本発明によれば、拡大して観察することで識別可能な情報が、少なくとも曲面を有する立体形状であるので、従来の平面で構成されているものと比較して、微粒子の製造が困難であり、偽造防止効果を向上させることが可能である。また本発明によれば、少なくとも曲面を有する立体形状とすることで、表現できる識別可能な情報の選択肢が広がるため、多彩なデザインが可能であり、自他識別機能を発揮させることも可能となる。
【0009】
上記発明においては、上記微粒子が、感光性樹脂を含有することが好ましい。感光性樹脂を用いることで、直接描画や階調マスク等により生産性良く安価に微粒子を製造することができるからである。
【0010】
また本発明においては、上記微粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましい。微粒子表面での曲面の割合が多いほど、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
【0011】
さらに本発明においては、上記微粒子の粒径(L)および上記微粒子の厚み(H)が、H/L≧1/30を満たすことが好ましい。微粒子の粒径(L)に対する微粒子の厚み(H)の比が上記範囲であれば、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
【0012】
また本発明の微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。微粒子を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。
【0013】
さらに本発明の微粒子は、樹脂層と、上記樹脂層上に形成され、上記微粒子の表面に形成された金属層とを有することも好ましい。立体形状を有する微粒子の表面に金属層が形成されていることで、光の反射により立体形状を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。
【0014】
また本発明は、上述の微粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インクおよび偽造防止用トナーを提供する。
本発明においては、上述の微粒子を含有するので、本発明の偽造防止用インクおよび偽造防止用トナーを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用インクおよび偽造防止用トナーを偽造防止媒体に用いる際には、支持体上に本発明の偽造防止用インクを塗布したり、支持体上に本発明の偽造防止用トナーを転写したりすることにより、支持体上に微粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
【0015】
さらに本発明は、上述の微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シートを提供する。
本発明においては、上述の微粒子を含有する微粒子含有層を有するので、本発明の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用シートにおける微粒子の個数や位置を予め決めた状態で、偽造防止媒体に適用することができるので、高度な偽造防止を実現することが可能である。
【0016】
また本発明は、支持体上に、上述の微粒子が固定されていることを特徴とする偽造防止媒体を提供する。
本発明の偽造防止媒体においては、上述の微粒子を用いるので、偽造防止に非常に有用である。また本発明においては、ルーペ等の簡易器具のみで、真贋判定を容易に行うことが可能である。
【0017】
また本発明は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する露光現像工程と、上記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
【0018】
本発明においては、感光性樹脂層に階調露光を施して、所定の立体形状を有する微粒子を製造するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。また本発明においては、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
【0019】
さらに本発明は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、上記原版を用いて、上記微粒子を形成する微粒子形成工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法を提供する。
【0020】
本発明においては、原版を用いて所定の立体形状を有する微粒子を製造するので、微粒子の形成に樹脂成分、金属等の種々の材料を使用することができ、微粒子の材料の選択肢が広がるという利点を有する。また本発明によれば、感光性樹脂層に階調露光を施して、原版を作製するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。さらに本発明においては、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
【0021】
上記発明においては、上記露光現像工程の階調露光では、上記感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行うことが好ましい。また上記発明においては、上記露光現像工程の階調露光では、階調マスクを用いることも好ましい。複雑な立体形状も形成可能となるからである。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、拡大して観察することで識別可能な情報が、少なくとも曲面を有する立体形状であるので、従来の平面で構成されているものと比較して、微粒子の製造が困難であり、偽造防止効果を向上させることが可能であるとともに、多彩なデザインが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の微粒子の一例を示す上面図および断面図である。
【図2】本発明の微粒子の他の例を示す斜視図および側面図である。
【図3】本発明の微粒子の他の例を示す上面図および断面図である。
【図4】本発明の微粒子の他の例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の偽造防止用シートの検査方法の一例を示す模式図である。
【図12】本発明の偽造防止媒体の一例を示す上面図および断面図である。
【図13】本発明の偽造防止媒体の他の例を示す上面図、断面図および斜視図である。
【図14】本発明の微粒子の製造方法の一例を示す工程図である。
【図15】本発明の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図16】本発明の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図17】本発明の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。
【図18】従来の微粒子の一例を示す上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の微粒子、偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シート、偽造防止媒体、および微粒子の製造方法について詳細に説明する。
【0025】
A.微粒子
本発明の微粒子は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明の微粒子について図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)は本発明の微粒子の一例を示す模式図であり、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。図1(a)、(b)に示す微粒子1は、表面5および裏面6を有し、表面5に拡大して観察することで識別可能な立体形状2(ティーポット)を有しており、この立体形状2は曲面で構成されている。
【0027】
図2(a)〜(c)は本発明の微粒子の他の例を示す模式図であり、図2(a)、(b)は斜視図、図2(c)は側面図である。図2(a)〜(c)に示す微粒子1A〜1Cはそれぞれ、表面5および裏面6を有し、表面5に拡大して観察することで識別可能な立体形状2(D・N・Pの文字)を有しており、この立体形状2は曲面で構成されている。
【0028】
図18(a)、(b)は従来の微粒子の一例を示す模式図であり、図18(a)は上面図、図18(b)は図18(a)のX−X線断面図である。図18(a)、(b)に示す微粒子101は、例えば金属多層膜103の表面に凹部がパターン状に形成されたものであり、拡大して観察することで識別可能な部分102(星)を有し、この識別可能な部分102は平面で構成されている。
【0029】
本発明によれば、拡大して観察することで識別可能な情報が、少なくとも曲面を有する立体形状であるので、平面で構成されている従来のものと比較して、微粒子の製造が困難であり、偽造防止効果を向上させることが可能である。また本発明によれば、少なくとも曲面を有する立体形状とすることで、表現できる識別可能な情報の選択肢が広がるため、多彩なデザインが可能であり、自他識別機能を発揮させることも可能となる。
【0030】
以下、本発明の微粒子における各構成について説明する。
【0031】
1.立体形状
本発明における立体形状は、拡大して観察することで識別可能なものであり、少なくとも曲面を有するものである。
【0032】
なお、「拡大して観察することで識別可能」とは、目視観察では識別困難であり、ルーペ等の簡易拡大鏡や顕微鏡等の光学的拡大装置を用い、拡大して観察することで識別可能であることをいう。
【0033】
立体形状が少なくとも曲面を有することは、反射特性を測定することにより確認することができる。平面は法線方向が一つであるのに対して、曲面は法線方向が場所によって異なる。そのため、平面と曲面とでは反射光の明暗が異なる。また、平面と曲面とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
具体的に、立体形状が曲面を有することは、破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
破壊式の検査方法は、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等により微粒子を切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する手法が挙げられる。
非破壊式の検査方法は、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する手法が挙げられる。接触式の形状測定は、例えば針を微粒子に接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定機を用いる手法が挙げられる。非接触式の形状測定は、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型などの等光路干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いる手法が挙げられる。
【0034】
立体形状は、少なくとも曲面を有していればよく、例えば、曲面のみを有していてもよく、曲面および平面を有していてもよい。
【0035】
立体形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。立体形状が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、立体形状の大きさは、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。
【0036】
このような立体形状としては、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の立体形状とすることができる。これらの立体形状は、本発明の微粒子の用途等に合わせた形状とすることができ、また所定の意味を表現する形状とすることもできる。
本発明の微粒子は、図1(a)に例示するように同一の立体形状を有する1種類の微粒子であってもよく、図2(a)に例示するように異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子の集合体であってもよい。
【0037】
2.微粒子の構造
本発明の微粒子は、上記立体形状を有するものである。
本発明の微粒子は、拡大して観察することで識別可能な情報として、上記立体形状を有していればよく、例えば、図1(a)、(b)および図2(a)〜(c)に示すように立体形状2のみを有していてもよく、図3(a)、(b)に示すように立体形状2および印(しるし)3を有していてもよい。
なお、図3(a)、(b)は本発明の微粒子の他の例を示す模式図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のC−C線断面図である。
【0038】
印の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。印が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、印の大きさは、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。なお、印の大きさは50μm以下であってもよい。この場合、簡易器具による真贋判断は困難となるが、顕微鏡等を用いての観察が可能である。印が小さくなれば、製造が困難となり偽造防止効果も高くなる。
【0039】
印としては、例えば、文字、数字、符号、標章等の記号等が挙げられる。これらの印は、本発明の微粒子の用途等に合わせた印とすることができ、所定の意味を表現する印とすることができる。
本発明の微粒子は、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子であってもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子の集合体であってもよい。
【0040】
本発明の微粒子は、通常、図1(b)、図2(c)および図3(b)に例示するように、立体形状2を有する表面5と、この表面5に対向する裏面6とを有している。また、図示しないが、本発明の微粒子は、表面、裏面および側面を有していてもよい。
本発明において、微粒子は表面に立体形状を有し、立体形状は少なくとも曲面を有することから、微粒子は表面に少なくとも曲面を有している。このように微粒子は表面に少なくとも曲面を有していればよく、例えば、曲面のみを有していてもよく、曲面および平面を有していてもよい。
中でも、微粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましく、75%以上が曲面で構成されていることがより好ましい。微粒子表面での曲面の割合が多いほど、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。
なお、上記曲面の割合は、上述の破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0041】
本発明の微粒子の粒径は、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。微粒子の粒径が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止媒体に用いた際に微粒子の位置が特定されてしまうため、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、微粒子の粒径は、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。また、微粒子の粒径が小さすぎると、微粒子の表面に立体形状を形成することが困難となる場合があるからである。
【0042】
なお、粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0043】
本発明の微粒子の厚みは、微粒子の表面に立体形状を形成可能な厚みであれば特に限定されるものではないが、中でも、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、5μm〜25μmの範囲内であることがより好ましい。微粒子の厚みが上記範囲であれば、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となる。一方、微粒子の厚みが厚すぎると、微粒子の製造が困難となる場合があり、微粒子の厚みが薄すぎると、微粒子の表面に立体形状を形成することが困難となったり、微粒子の強度が弱くなったりする場合がある。
なお、上記の微粒子の厚みは、微粒子の裏面に略垂直な断面における微粒子の厚みをいう。例えば図3(a)に示すような微粒子の厚みHをいう。
【0044】
また本発明においては、微粒子の粒径(L)および微粒子の厚み(H)が、H/L≧1/30を満たすことが好ましく、中でもH/L≧1/20を満たすことがより好ましく、H/L≧1/10を満たすことがさらに好ましい。微粒子の粒径(L)に対する微粒子の厚み(H)の比が上記範囲であれば、光の反射により立体形状を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。一方、上記の比が大きすぎると、微粒子の製造が困難となる場合があり、上記の比が小さすぎると、微粒子の表面に立体形状を形成することが困難となる場合がある。また、上記の比が小さいと、微粒子の厚み(H)も相対的に小さくなり、微粒子の強度が弱くなってしまうおそれがある。
なお、上記の微粒子の粒径(L)は、微粒子の表面側からの平面視における微粒子の粒径をいう。例えば図3(a)に示すように、微粒子1が長径L1および短径L2を有する場合には、微粒子の長径L1を微粒子の粒径とする。また、上記の微粒子の厚み(H)は、上述したように、微粒子の裏面に略垂直な断面における微粒子の厚みをいう。例えば図3(a)に示すような微粒子の厚みHをいう。
微粒子の粒径(L)および厚み(H)は、上述の破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0045】
本発明の微粒子は、無色であってもよく有色であってもよく、後述の微粒子の材料に応じて適宜選択される。微粒子が有色である場合には、微粒子を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0046】
また、本発明の微粒子は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、後述の微粒子の材料に応じて適宜選択される。微粒子が光透過性を有さない場合には、微粒子を視認しやすくなり、識別が容易となる。
【0047】
3.微粒子の材料
本発明の微粒子の材料としては、上記立体形状を有する微粒子を製造できる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂、金属、金属化合物等を用いることができる。樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、感光性樹脂を例示することができる。また、金属および金属化合物としては、蒸着法、メッキ法、スパッタ法により成膜可能なものであれば特に限定されるものではなく、金属化合物としては、金属酸化物、金属硫化物等が用いられ、金属および金属化合物として例えばAl、ZnS、TiO2、Cu、Au、Pt等が挙げられる。
【0048】
中でも、微粒子の材料は樹脂であることが好ましい。樹脂には、後述するような紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、着色材料等の機能性材料を添加することが可能であり、微粒子を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。また、樹脂は、微細加工ができるだけでなく、生産効率を向上させることができるからである。
【0049】
樹脂は、耐溶剤性を有することが好ましく、中でも、本発明の微粒子を用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成する際に使用される溶媒に対して不溶であることが好ましい。
【0050】
樹脂の中でも、特に感光性樹脂が好適である。後述の「E.微粒子の製造方法」の項に記載するように、直接描画や階調マスク等により生産性良く安価に微粒子を製造することができるからである。
感光性樹脂としては、ポジ型感光性樹脂およびネガ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
【0051】
また本発明の微粒子は、図4に例示するように、樹脂層7と、樹脂層7上に形成され、微粒子1の表面5に形成された金属層8とを有することも好ましい。立体形状を有する微粒子の表面に金属層が形成されていることで、光の反射により立体形状を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明の微粒子を用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成する場合には、微粒子が樹脂からなる場合、微粒子と透明樹脂との屈折率の差が小さいために、微粒子と透明樹脂との界面が見えにくくなり、微粒子の立体形状を視認するのが困難になることが懸念されるが、微粒子の表面に金属層が形成されていることで、立体形状の視認性を高めることが可能となる。
【0052】
樹脂層の材料としては、上記の樹脂を用いることができる。また、金属層の材料としては、上記の金属や金属化合物を用いることができる。
金属層の形成方法としては、蒸着法を挙げることができる。
金属層の厚みとしては、本発明の微粒子を用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成した場合に、立体形状の視認性を向上させることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜250nm程度とすることができ、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。金属層が厚すぎると、立体形状が損なわれてしまうおそれがあり、金属層が薄すぎると、金属層の形成が困難であったり、立体形状の視認性を高める効果が十分に得られなかったりする可能性があるからである。
【0053】
本発明の微粒子が樹脂を含有する場合、微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、顔料や染料等の着色材料等の機能性材料を含有することが好ましい。上述したように、微粒子を視認しやすく、真贋判定が容易になるからである。中でも、本発明の微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの材料は、材料の特性による識別が可能であり、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明の微粒子は、紫外線発光材料、赤外線発光材料および量子ドット材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。発光により識別が可能であり、真贋判定をさらに容易に行うことができるからである。
以下、各機能性材料に分けて説明する。
【0054】
(1)紫外線発光材料
本発明に用いられる紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0055】
微粒子中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0056】
(2)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0057】
微粒子中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0058】
(3)赤外線反射材料
本発明に用いられる赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0059】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0060】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0061】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0062】
微粒子中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0063】
(4)赤外線吸収材料
本発明に用いられる赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0064】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0065】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂や感光性樹脂を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0066】
微粒子中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0067】
(5)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズの微粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0068】
量子ドット材料は、1種の半導体化合物からなるものであっても、2種以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0069】
量子ドット材料のコアとなる材料として具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0070】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
【0071】
なかでも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0072】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0073】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0074】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0075】
また、量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0076】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0077】
微粒子中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0078】
(6)磁性材料
本発明に用いられる磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0079】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明の微粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有する微粒子と、磁性材料を含有しない微粒子とに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有する微粒子では共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しない微粒子では共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することにより微粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0080】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す微粒子を例示することができる。
【0081】
微粒子中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲内がより好ましい。磁性材料の含有量が少なすぎると、識別が困難となり、磁性材料の含有量が多すぎると、微粒子表面への立体形状の形成が困難となる場合があるからである。
【0082】
(7)着色材料
本発明に用いられる着色材料としては、顔料、染料を挙げることができる。
着色材料は、微粒子に含有させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な顔料、染料を用いることができる。
【0083】
微粒子中の着色材料の含有量としては、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0084】
4.微粒子の製造方法
本発明の微粒子の製造方法については、後述の「F.微粒子の製造方法」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0085】
5.用途
本発明の微粒子は、偽造防止用途に好適であり、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0086】
B.偽造防止用インク
本発明の偽造防止用インクは、上述の微粒子を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、上述の微粒子を含有するので、本発明の偽造防止用インクを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用する際には、支持体上に本発明の偽造防止用インクを塗布することにより、支持体上に微粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
以下、本発明の偽造防止用インクにおける各構成について説明する。
【0087】
1.微粒子
本発明に用いられる微粒子としては、上記「A.微粒子」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0088】
微粒子としては、1種類の微粒子を用いてもよく、2種以上の微粒子を用いてもよい。例えば、同一の立体形状を有する1種類の微粒子を用いてもよく、異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。また、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子を用いてもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。2種類以上の微粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微粒子を組み合わせて使用することができる。
【0089】
偽造防止用インク中の微粒子の含有量としては、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に用いた場合に、微粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、0.01質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0090】
2.透明樹脂成分
本発明の偽造防止用インクは、通常、透明樹脂成分中に上述の微粒子が分散されたものである。
【0091】
本発明に用いられる透明樹脂成分の光透過性としては、本発明の偽造防止用インクを用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成した際に、微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂成分を所定の厚みで成膜したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0092】
透明樹脂成分としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分等の硬化性樹脂成分が好ましく、特に光硬化性樹脂成分が好ましい。光硬化性樹脂成分を用いることにより、耐熱性の低い支持体にも本発明の偽造防止用インクを適用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、本発明の偽造防止用インクを用いて微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を形成する場合には、生産効率を向上させることができるからである。
【0093】
3.機能性材料
本発明の偽造防止用インクは、上記の微粒子および透明樹脂成分の他に、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料を含有していてもよい。
【0094】
例えば、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微粒子が紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有しない場合には、発光の有無により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微粒子も紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合には、発光の波長により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0095】
偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微粒子が赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有しない場合には、赤外線の吸収または反射の有無により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微粒子も赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合には、吸収または反射する赤外線の波長により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0096】
偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微粒子が量子ドット材料を含有しない場合には、発光の有無により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微粒子も量子ドット材料を含有する場合には、発光の波長により、微粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0097】
なお、機能性材料については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0098】
偽造防止用インク中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0099】
偽造防止用インク中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0100】
偽造防止用インク中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0101】
偽造防止用インク中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0102】
偽造防止用インク中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0103】
4.溶媒
本発明の偽造防止用インクは、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、上記の微粒子および透明樹脂成分が分散するものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用インクの塗布方法等に応じて適宜選択される。また、溶媒は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
例えばグラビア印刷用インキとして用いる場合、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。オフセット印刷用インキやシルクスクリーン印刷用インキとして用いる場合は、高沸点の石油系溶剤(炭素数が15以上(C15以上)の炭化水素類)が挙げられる。
【0104】
本発明の偽造防止用インクの固形分濃度は、偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用可能であれば特に限定されるものではなく、20質量%〜85質量%程度とすることができる。
【0105】
C.偽造防止用トナー
本発明の偽造防止用トナーは、上述の微粒子を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、上述の微粒子を含有するので、本発明の偽造防止用トナーを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用トナーを偽造防止媒体に適用する際には、支持体上に本発明の偽造防止用トナーを転写することにより、支持体上に微粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
【0106】
本発明の偽造防止用トナーは、上記微粒子を含有するものであればよく、乾式トナーおよび湿式トナーのいずれであってもよく、その組成としては一般的な組成とすることができる。本発明の偽造防止用トナーは、例えば、主樹脂、副樹脂、着色剤、荷電制御剤、流動性制御剤等を含有することができる。
主樹脂としては、光透過性を有し、上記の微粒子が分散するものであれば特に限定されるものではない。主樹脂の光透過性としては、上述の偽造防止用インクにおける透明樹脂成分の光透過性と同様とすることができる。主樹脂にはスチレン−アクリル系、ポリエステル系が主として使用される。副樹脂にはポリプロピレン、ポリエチレン、WAX類が使用される。主樹脂や副樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤にはカーボン、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等が使用される。荷電制御剤はプラス系、マイナス系があり、金属を含有したものや、樹脂系、四級アンモニウム塩等が挙げられる。流動制御剤はシリカ等が使用される。
【0107】
なお、微粒子については、上述の偽造防止用インクにおける微粒子と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
本発明の偽造防止用トナーは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料をさらに含有していてもよい。機能性材料としては、上述の偽造防止用インクにおける機能性材料と同様とすることができる。
【0109】
D.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、上述の微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を有することを特徴とするものである。
【0110】
本発明の偽造防止用シートについて図面を参照しながら説明する。
図5は本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。図5に示す偽造防止用シート20は、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22からなるものである。
【0111】
本発明においては、上述の微粒子を含有する微粒子含有層を有するので、本発明の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、微粒子を偽造防止媒体に適用する際に、微粒子を含有するインクを支持体上に塗布する場合には、インクの塗布量が少ないと支持体上に微粒子が存在していない可能性があり、偽造防止効果が得られないおそれがあるが、本発明においては、偽造防止用シートにおける微粒子の個数が予め分かった状態で、偽造防止媒体に適用することができるので、確実に偽造防止効果を達成することができる。さらに本発明においては、偽造防止用シートにおける微粒子の位置についてマッピングを行うことが可能であり、高度な偽造防止を実現することが可能である。また、本発明の偽造防止用シートは偽造防止媒体への適用が容易であるという利点も有する。さらには、本発明の偽造防止用シートは他のシートとの積層も容易であり、付加価値を高めることができる。
【0112】
図6は本発明の偽造防止用シートの例を示す概略断面図である。図6に示す偽造防止用シート20においては、剥離層23と、粘着層24と、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22とが順に積層されている。
【0113】
図7は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図7に示す偽造防止用シート20は、基材25と、基材25上に形成され、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22とを有し、微粒子含有層22側に粘着層24および剥離層23が順に積層されている。
【0114】
図8は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図8に示す偽造防止用シート20は、基材25と、基材25上に形成され、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22と、微粒子含有層22上に形成されたハードコート層26とを有し、基材25側に粘着層24および剥離層23が順に積層されている。
【0115】
図9は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図9に示す偽造防止用シート20においては、剥離層23と、粘着層24と、ホログラム層27と、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22とが順に積層されている。
【0116】
図10は本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図10に示す偽造防止用シート20は、基材25と、基材25上に形成され、透明樹脂21中に所定の微粒子1が分散された微粒子含有層22と、微粒子含有層22上に形成されたハードコート層26とを有し、基材25側にホログラム層27と粘着層24と剥離層23とが順に積層されている。
【0117】
このように、本発明の偽造防止用シートは、微粒子含有層以外に他の構成を有していてもよい。
以下、本発明の偽造防止用シートにおける各構成について説明する。
【0118】
1.微粒子含有層
本発明における微粒子含有層は、上述の微粒子が透明樹脂中に分散されたものである。
なお、微粒子については、上記「A.微粒子」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0119】
微粒子としては、1種類の微粒子を用いてもよく、2種以上の微粒子を用いてもよい。例えば、同一の立体形状を有する1種類の微粒子を用いてもよく、異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。また、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子を用いてもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。2種類以上の微粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微粒子を組み合わせて使用することができる。
【0120】
本発明に用いられる透明樹脂の光透過性としては、微粒子含有層中の微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂からなる層を微粒子含有層と同じ厚みで形成したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0121】
透明樹脂としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂好ましく、特に光硬化性樹脂が好ましい。例えば図7、図8および図10に示すように、基材25上に微粒子含有層22が形成されている場合には、光硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性の低い基材も使用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、偽造防止用シートの生産効率を向上させることができるからである。
透明樹脂は、上記「B.偽造防止用インク」の項に記載した透明樹脂成分を固化させたものとすることができる。
【0122】
微粒子含有層中の微粒子の含有量としては、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではないが、微粒子含有層1cm2当たりに少なくとも1個以上の微粒子が含有されていることが好ましい。
【0123】
また、微粒子含有層が基材上に形成されている場合には、微粒子含有層は基材上に一面に形成されていてもよくパターン状に形成されていてもよい。微粒子含有層のパターン形状が所定の意味を表す形状である場合には、微粒子を隠し情報として利用することができ、偽造防止効果を高めることができる。
【0124】
微粒子含有層の膜厚としては、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、本発明の偽造防止用シートの層構成や微粒子含有層に含まれる透明樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば図7、図8および図10に示すように、基材25上に微粒子含有層22が形成されている場合には、微粒子含有層の膜厚は比較的薄くともよい。一方、図5に例示するように、微粒子含有層22が単独で形成されている場合には、自己支持性の観点から、微粒子含有層の膜厚は比較的厚いことが好ましい。また、微粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、割れを抑制する観点から、微粒子含有層の膜厚は比較的薄いことが好ましい。
具体的に、微粒子含有層の膜厚は、0.1μm〜500μm程度とすることができ、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0125】
微粒子含有層の形成方法としては、例えば、上述の偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。例えば図7、図8および図10に示すように、基材25上に微粒子含有層22が形成されている場合には、基材上に偽造防止用インクを塗布し、固化させることで、微粒子含有層を形成することができる。また、図5に例示するように、微粒子含有層22が単独で形成されている場合には、基板上に偽造防止用インクを塗布し、固化させた後、基板から微粒子含有層を剥離することで、微粒子含有層を単独で得ることができる。この際に用いられる基板としては、光透過性を有していても有さなくてもよく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0126】
偽造防止用インクの塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。
また、偽造防止用インクの固化方法としては、透明樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化性樹脂の場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。熱可塑性樹脂の場合には、冷却する方法が用いられる。
【0127】
2.基材
本発明においては、図7、図8および図10に例示するように、微粒子含有層22が基材25上に形成されていてもよい。本発明の偽造防止用シートの強度を高めることができ、また取扱い性が良好となるからである。中でも、微粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、微粒子含有層の割れを抑制する観点から、微粒子含有層は比較的薄いことが好ましいので、基材上に微粒子含有層が形成されていることが好ましい。また、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材25が微粒子含有層22よりも表面側となるように配置されている場合には、基材により微粒子含有層を保護することもできる。図7および図10に例示する層構成の場合には、透明基材が用いられ、図8に例示する層構成の場合には、不透明基材を使用することもできる。
【0128】
本発明に用いられる基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、基材の形成位置により適宜選択される。本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材25が微粒子含有層22よりも表面側となるように配置されている場合や、図10に例示するように、基材25がホログラム層27よりも表面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有することが好ましい。一方、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8に例示するように、基材25が微粒子含有層22よりも裏面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0129】
基材が光透過性を有する場合、その光透過性としては、微粒子含有層中の微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0130】
また、基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本発明の偽造防止用シートを種々の形状の偽造防止媒体に適用することが可能となるからである。
【0131】
このような基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0132】
また、基材の表面は、微粒子含有層との密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、微粒子含有層および基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、基材製造時に処理されるものと、製造後の基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0133】
基材の厚みは、本発明の偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0134】
3.粘着層
本発明においては、図6〜図10に例示するように、微粒子含有層22上に粘着層24が積層されていてもよい。粘着層を介して、本発明の偽造防止用シートを貼付することができるからである。
【0135】
粘着層は、基材上に微粒子含有層が形成されている場合、基材側に積層されていてもよく、微粒子含有層側に積層されていてもよい。微粒子含有層上に後述のハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層とは反対側の面に粘着層が配置される。また、微粒子含有層とホログラム層とが積層されている場合には、ホログラム層側に粘着層が配置される。
【0136】
粘着層の材料としては、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑系、熱硬化系、光硬化系、エラストマー系のいずれも用いることができ、偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択される。偽造防止用シートを転写箔として使用する場合には、ヒートシール性を有する粘着層が用いられる。
【0137】
粘着層の膜厚は、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
粘着層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0138】
4.剥離層
本発明においては、図6〜図10に例示するように、微粒子含有層22上に粘着層24と剥離層23とが順に積層されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本発明の偽造防止用シートの取り扱いが容易になるからである。
本発明の偽造防止用シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0139】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0140】
5.ハードコート層
本発明においては、図8および図10に例示するように、微粒子含有層22上にハードコート層26が形成されていてもよい。ハードコート層により微粒子含有層を保護することができるからである。
ハードコート層は、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8および図10に例示するように、ハードコート層26が微粒子含有層22よりも表面側となるように配置される。
【0141】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、微粒子含有層中の微粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0142】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、微粒子含有層を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0143】
ハードコート層の膜厚は、微粒子含有層を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0144】
6.ホログラム層
本発明においては、図9および図10に例示するように、微粒子含有層22上にホログラム層27が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0145】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0146】
ホログラム層は、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9および図10に例示するように、ホログラム層27が微粒子含有層22よりも裏面側になるように配置される。これにより、微粒子含有層をホログラム層の保護層として利用することができる。
【0147】
7.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0148】
また、本発明の偽造防止用シートの形状としては、特に限定されるものではなく、矩形、多角形、円形、楕円形、その他、任意の形状とすることができる。本発明の偽造防止用シートの形状が所定の意味を表す形状である場合には、微粒子を隠し情報として利用することができる。
【0149】
本発明の偽造防止用シートの検査方法としては、例えば図11に示すように、偽造防止用シート20にLED照明51で光を照射し、カメラ(ラインセンサ)52により画像を取得する方法を挙げることができる。図11においては、微粒子含有シート20に対してカメラ52と反対側にLED照明51を配置して、透過光を観察しているが、図示しないが、微粒子含有シートに対してカメラと同じ側にLED照明を配置して、反射光を観察してもよい。
偽造防止用シートの検査装置では、微粒子の位置をマッピングし、データベースに保存し、照合が可能である。
検査において、微粒子含有層に微粒子が含有されていない領域があった場合には、レーザーマーキング装置を使用し、微粒子が含有されていない領域にマーキングを行い、偽造防止用シートを所定の形状とする際に排除してもよい。
【0150】
本発明の偽造防止用シートは、そのままラベルとして使用したり、転写箔として使用したりすることが可能である。また、偽造防止用シートは、ホログラム層を有する場合には、ホログラムラベルやホログラム転写箔として使用することもできる。さらに、偽造防止用シートは、偽造防止媒体へのラミネートフィルムとして使用することもできる。
偽造防止用シート自体は光透過性を有するものとすることができるので、様々な偽造防止媒体に適用することができる。
【0151】
さらに、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用する際には、偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着してもよく、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートを埋め込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込んでもよい。偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着する場合には、偽造防止用シートをそのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。転写方法としては、熱転写法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体については、後述の「E.偽造防止媒体」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0152】
E.偽造防止媒体
本発明の偽造防止媒体は、支持体上に、上述の微粒子が固定されていることを特徴とするものである。
【0153】
図12(a)、(b)は本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図であり、図12(a)は上面図、図12(b)は図12(a)のD−D線断面図である。図12(a)、(b)に示す偽造防止媒体30においては、支持体31の表面に、上述の微粒子1が透明樹脂21中に分散された微粒子含有層22が固着されている。
【0154】
図13(a)〜(c)は本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図であり、図13(a)は上面図、図13(b)は図13(a)のE−E線断面図、図13(c)は偽造防止媒体の積層構造を示す斜視図である。図13(a)〜(c)に示す偽造防止媒体30おいては、支持体31上に第1樹脂層32と上述の微粒子1が透明樹脂21中に分散された微粒子含有層22からなる偽造防止用シート20と第2樹脂層33とが積層されており、偽造防止媒体30の内部に偽造防止用シート20が埋め込まれている。偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートが埋め込まれている場合には、偽造防止用シートが剥がされて悪用されるのを防ぐことができる。
【0155】
本発明の偽造防止媒体においては、上述の微粒子を用いるので、偽造防止に非常に有用である。また本発明においては、ルーペ等の簡易器具のみで、真贋判定を容易に行うことが可能である。
【0156】
以下、本発明の偽造防止媒体における各構成について説明する。
なお、微粒子については、上記「A.微粒子」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0157】
微粒子としては、1種類の微粒子を用いてもよく、2種以上の微粒子を用いてもよい。例えば、同一の立体形状を有する1種類の微粒子を用いてもよく、異なる立体形状を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。また、同一の立体形状を有し、同一の印を有する1種類の微粒子を用いてもよく、同一の立体形状を有し、異なる印を有する2種類以上の微粒子を用いてもよい。2種類以上の微粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微粒子を組み合わせて使用することができる。
【0158】
支持体上に微粒子を固定する方法としては、上述の偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シートを用いる方法が挙げられる。偽造防止用インクを用いる場合、支持体上に偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。偽造防止用トナーを用いる場合、支持体上に偽造防止用トナーを転写する方法が挙げられる。偽造防止用シートを用いる場合、支持体の表面に偽造防止用シートを固着する方法、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層とを積層する方法、支持体が紙である場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込む方法が挙げられる。支持体の表面に偽造防止用シートを固着する際には、そのまま貼ってもよく、転写してもよい。また、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層との積層方法としては、例えば、各層を接着層を介して積層する方法、各層を熱圧着により積層する方法等を挙げることができる。
【0159】
本発明に用いられる支持体としては、本発明の偽造防止媒体の用途に応じて適宜選択されるものである。支持体は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。支持体の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0160】
また、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層とが積層されている場合、第1樹脂層は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、支持体と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第2基材としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0161】
本発明の偽造防止媒体の用途としては、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等を挙げることができる。
【0162】
F.微粒子の製造方法
本発明の微粒子の製造方法は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であり、2つの実施態様を有する。
【0163】
第1実施態様は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する露光現像工程と、上記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法である。
第2実施態様は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、上記原版を用いて、上記微粒子を形成する微粒子形成工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法である。
以下、各実施態様に分けて説明する。
【0164】
1.第1実施態様
本実施態様の微粒子の製造方法は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する露光現像工程と、上記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程とを有することを特徴とする。
【0165】
図14(a)〜(e)は本実施態様の微粒子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図14(a)に示すように、基板12上に、溶媒溶解性を有する犠牲層13と感光性樹脂層14aとが順に積層された積層体10を準備する(積層体準備工程)。次に、図14(b)に示すように、感光性樹脂層14aに描画装置16によりレーザー光17を照射して直接描画を行って、階調露光を施した後、現像処理を行い、図14(c)に示すように、所定の立体形状2が形成された粒子層14bを得る(露光現像工程)。次いで、図14(d)に示すように、粒子層14bおよび犠牲層13が形成された基板12を溶媒Sに浸漬させ、犠牲層13を溶解し、粒子層14bを基板12から分離する(犠牲層溶解工程)。このようにして、図14(e)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる。
【0166】
図15(a)〜(e)は本実施態様の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図15(a)に示すように、基板12上に、溶媒溶解性を有する犠牲層13と感光性樹脂層14aとが順に積層された積層体10を準備する(積層体準備工程)。次に、図15(b)に示すように、感光性樹脂層14aに階調マスク18を介して光19を照射して、階調露光を施した後、現像処理を行い、図15(c)に示すように、所定の立体形状2が形成された粒子層14bを得る(露光現像工程)。次いで、図15(d)に示すように、粒子層14bおよび犠牲層13が形成された基板12を溶媒Sに浸漬させ、犠牲層13を溶解し、粒子層14bを基板12から分離する(犠牲層溶解工程)。このようにして、図15(e)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる。
【0167】
本実施態様においては、感光性樹脂を含有する微粒子を得ることができる。本実施態様によれば、感光性樹脂層を階調露光を施して、所定の立体形状を有する微粒子を製造するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。また、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
以下、本実施態様の微粒子の製造方法における各工程について説明する。
【0168】
(1)積層体準備工程
本実施態様における積層体準備工程は、基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層と感光性樹脂層とが順に積層された積層体を準備する工程である。
以下、積層体における各構成について説明する。
【0169】
(a)犠牲層
本実施態様に用いられる犠牲層は、基板上に形成され、溶媒溶解性を有するものである。
【0170】
犠牲層の溶媒溶解性としては、特に限定されるものではなく、極性溶媒に対する溶解性であってもよく、非極性溶媒に対する溶解性であってもよい。中でも、犠牲層は、極性溶媒、特に水に対する溶解性を有することが好ましい。その他の溶剤を使用するよりも環境に対し負荷の少ない処理とすることができるからである。
【0171】
犠牲層の材料としては、溶媒溶解性を有するものであれば特に限定されるものではなく、犠牲層が溶媒溶解性を有する溶媒の種類に応じて適宜選択される。具体的には、溶媒溶解性を有する樹脂が用いられる。中でも、水溶性高分子化合物であることが好ましく、ポリビニルアルコールを用いることがさらに好ましい。ポリビニルアルコールは水に溶解する水溶性高分子化合物であり、水を用いることにより、その他の溶剤を使用するよりも環境に対し負荷の少ない処理とすることができるからである。
【0172】
犠牲層の膜厚としては、犠牲層が溶解可能な膜厚であれば特に限定されるものではない。
犠牲層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0173】
(b)感光性樹脂層
本実施態様に用いられる感光性樹脂層は、上記犠牲層上に形成されるものである。
感光性樹脂層に含まれる感光性樹脂成分としては、ポジ型感光性樹脂成分およびネガ型感光性樹脂成分のいずれも用いることができる。
【0174】
感光性樹脂層の膜厚としては、所定の立体形状を形成可能な膜厚であれば特に限定されるものではないが、上記「A.微粒子」の項に記載した微粒子の厚みと同程度であることが好ましい。
感光性樹脂層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
【0175】
(c)基板
本実施態様に用いられる基板としては、上記の犠牲層および感光性樹脂層を基板上に形成可能であれば特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0176】
(2)露光現像工程
本実施態様における露光現像工程は、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状を形成する工程である。
【0177】
感光性樹脂層に階調露光を施す方法としては、感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行うことで、所定の立体形状を形成可能であれば特に限定されるものではないが、感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法、および、階調マスクを用いる方法が好ましい。複雑な立体形状も形成可能となるからである。
【0178】
感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行う方法の場合、描画装置としては、例えば、レーザー描画装置や電子線描画装置を用いることができる。
本実施態様において、所定の立体形状の他に所定の印を有する微粒子を製造する場合にも、1回の直接描画を行うことで、立体形状および印を形成することができる。
【0179】
また、階調マスクを用いる方法の場合、階調マスクとしては、例えば、露光波長では解像しない微細なドットパターンの分布状態により、露光する際の透過光量(露光量)分布を制御するフォトマスクや、透明基板上に遮光剤が所定の濃度パターンで分散しているフォトマスク(グレイマスク)を用いることができる。
ドットパターンのフォトマスクについては、特開2004−296590号公報を参照することができる。また、グレイマスクについては、特開2002−6473号公報を参照することができる。
本実施態様において、所定の立体形状の他に所定の印を有する微粒子を製造する場合には、2種類の階調マスクを準備し、階調マスクを変えて2回露光することで、立体形状および印を形成することができる。
【0180】
現像処理を行う方法としては、特に限定されるものではないが、例えば現像液を用いる方法等を挙げることができる。現像液としては、一般的な現像液を用いることができ、感光性樹脂層の種類等に応じて適宜選択される。
【0181】
(3)犠牲層溶解工程
本実施態様における犠牲層溶解工程は、上記犠牲層を溶解する工程である。
犠牲層を溶解する方法としては、例えば、溶媒に浸漬する方法を挙げることができる。この際、超音波を併用してもよい。
溶媒としては、犠牲層の溶媒溶解性に応じて適宜選択される。中でも極性溶媒、特に水を使用することが好ましい。犠牲層溶解工程において発生する廃液処理において、その他の溶剤を使用するよりも環境に対し負荷の少ない処理とすることができるからである。
【0182】
(4)微粒子回収工程
本実施態様においては、犠牲層溶解工程後に、通常、微粒子を回収する微粒子回収工程が行われる。
微粒子を回収する方法としては、例えば、犠牲層が溶解した溶媒を含有する溶液中で微粒子を沈降させる方法を挙げることができる。この際、微粒子を沈降させるために、遠心分離を行ってもよい。
また、微粒子を回収した後は、分級を行ってもよい。これにより、立体形状の識別が困難であるような非常に小さい微粒子を取り除くことができるからである。
なお、微粒子のその他の点については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0183】
2.第2実施態様
本実施態様の微粒子の製造方法は、拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、上記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、上記原版を用いて、上記微粒子を形成する微粒子形成工程とを有することを特徴とする。
【0184】
図16(a)〜(e)は本実施態様の微粒子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図16(a)に示すように、基板42上に感光性樹脂層44aが形成された積層体40を準備する(積層体準備工程)。次に、図16(b)に示すように、感光性樹脂層44aに描画装置16によりレーザー光17を照射して直接描画を行って、階調露光を施した後、現像処理を行い、図16(c)に示すように、所定の立体形状とは逆の立体形状45aが形成された鋳型層44bを得る(露光現像工程)。これにより、原版41が得られる(原版形成工程)。次に、図16(d)に示すように、原版41の鋳型層44bの立体形状45aが形成された凹部に微粒子用材料46を充填し、微粒子用材料46を固化させた後、原版41から取り外し、図16(e)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる(微粒子形成工程)。
【0185】
図17(a)〜(g)は本実施態様の微粒子の製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図17(a)に示すように、基板42上に感光性樹脂層44aが形成された積層体40を準備する(積層体準備工程)。次に、図17(b)に示すように、感光性樹脂層44aに階調マスク18を介して光19を照射して、階調露光を施した後、現像処理を行い、図17(c)に示すように、所定の立体形状と同一の立体形状45bが形成された鋳型層44bを得る(露光現像工程)。次いで、図17(d)に示すように、鋳型層44b上に金属の蒸着またはメッキを行って、立体形状45b、すなわち所定の立体形状とは逆の立体形状45aを有する第2鋳型層47を形成し、図17(e)に示すように、第2鋳型層47から鋳型層44bを剥離する。これにより、原版41が得られる(原版形成工程)。次に、図17(f)に示すように、原版41(第2鋳型層47)の立体形状45aが形成された凹部に微粒子用材料46を充填し、微粒子用材料46を固化させた後、原版41から取り外し、図17(g)に示すように、所定の立体形状2を有する微粒子1を得ることができる(微粒子形成工程)。
【0186】
本実施態様においては、原版を用いて微粒子を形成するので、微粒子用材料に樹脂成分、金属等の種々の材料を使用することができ、微粒子の材料の選択肢が広がるという利点を有する。また本実施態様によれば、感光性樹脂層に階調露光を施して、原版を作製するので、生産性良く安価に微粒子を製造することが可能である。また、感光性樹脂層に階調露光を施すので、複雑な立体形状も形成することが可能であり、偽造防止効果に優れる微粒子を得ることが可能となる。
以下、本実施態様の微粒子の製造方法における各工程について説明する。
【0187】
(1)原版形成工程
本実施態様における原版形成工程は、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程と、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程とを有し、原版を形成する工程である。
以下、原版形成工程のおける各工程について説明する。
【0188】
(a)積層体準備工程
本実施態様における積層体準備工程は、基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する工程である。
なお、基板および感光性樹脂層については、上記第1実施態様に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0189】
(b)露光現像工程
本実施態様における露光現像工程は、上記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、上記立体形状または上記立体形状とは逆の立体形状を形成する工程である。
【0190】
なお、階調露光および現像処理については、上記第1実施態様に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0191】
本工程において、微粒子が有する立体形状と同一の立体形状を形成するか、微粒子が有する立体形状と逆の立体形状を形成するかは、原版の形成方法に応じて適宜選択される。なお、原版を形成する際の複製方法については、公知の方法を用いることができる。
【0192】
(c)原版
本実施態様における原版としては、微粒子が有する立体形状は逆の立体形状を有するものであれば特に限定されるものではなく、原版の形成方法に応じて適宜選択される。原版における逆の立体形状を有する層の材料は、樹脂であってもよく金属であってよい。金属の場合には、耐久性が高いという利点を有する。
原版は、離型処理が施されていてもよい。
【0193】
(2)微粒子形成工程
本実施態様における微粒子形成工程は、上記原版を用いて、微粒子を形成する工程である。
【0194】
原版を用いて微粒子を形成する方法としては、原版の逆の立体形状が形成された凹部に微粒子用材料を充填し、固化させる方法や、原版を樹脂層に型押しする方法を挙げることができる。
【0195】
微粒子用材料としては、原版を用いて所定の立体形状を有する微粒子を製造できる材料であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂成分、金属、金属化合物等を用いることができる。なお、これらの材料については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
微粒子用材料の充填方法としては、微粒子用材料の種類に応じて適宜選択される。樹脂成分を用いる場合には、微粒子用材料を塗布する方法が挙げられる。また、金属や金属化合物を用いる場合には、微粒子用材料を蒸着する方法が挙げられる。金属の場合には、メッキ法も適用することができる。
微粒子用材料の固化方法としては、微粒子用材料の種類に応じて適宜選択される。樹脂成分が硬化性樹脂成分である場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。樹脂成分が熱可塑性樹脂成分である場合には、冷却する方法が用いられる。
【0196】
また、原版を型押しする樹脂層に用いられる樹脂としては、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様とすることができる。
樹脂層への原版の型押しを行った後は、樹脂層を打ち抜くことで、微粒子を製造することができる。樹脂層を打ち抜く際には、型押し後に、金型により樹脂層を打ち抜いてもよく、原版が金属製である場合には、原版により型押しと当時に打ち抜きを行ってもよい。また、型押し後に、レーザーにより樹脂層を切断することで、微粒子を製造することもできる。
【0197】
得られた微粒子には、分級を行ってもよい。これにより、立体形状の識別が困難であるような非常に小さい微粒子を取り除くことができるからである。
なお、微粒子のその他の点については、上記「A.微粒子」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0198】
3.他の実施態様
本発明においては、樹脂層や金属層に切削加工やレーザー加工を行うことにより、所定の立体形状または逆の立体形状を形成することもできる。切削加工およびレーザー加工としては、所定の立体形状を形成可能であれば特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
また、本発明においては、光造形法により、所定の立体形状または逆の立体形状を形成することもできる。光造形法としては、公知の方法を適用することができる。
【0199】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0200】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
(犠牲層の形成)
100mm×100mm×0.7mmの無アルカリガラス(HOYA製NA35)基板上に、固形分20wt%のポリビニルアルコール水溶液をスピンコーターにて550rpmの条件で塗布し、ホットプレートで110℃にて10分間乾燥することにより、膜厚1μmのポリビニルアルコール層を形成した。
【0201】
(感光性樹脂層の形成)
犠牲層を形成した基板を脱水ベイクした後、ヘキサメチルジンラザンを気化した気体を噴霧し、密着性向上処理を行った(HMDS処理)。次に犠牲層上にポジ型レジスト材料(東京応化製PMER-HA1300PM)をスピンコーターにて350rpmの条件にて塗布し、ホットプレートで130℃にて15分間乾燥することにより、膜厚25μmの感光性樹脂層を形成した。
【0202】
(露光現像)
100μm×100μmの10,000個のティーポットのパターンが描画された、微細なドットパターンからなるポジ型階調マスクを用い、UVアライナーより365nmの紫外光を800mJ照射した。ポジ型レジスト現像液(東京応化製NMD-3)を用いて5分間現像した後、水にて10秒間リンスした。感光性樹脂層は100μm×100μm×20μmの10,000個のティーポット形状にパターニングされ、各ティーポットの形状は階調マスクに応じた立体的な曲面を有する形状となった。
【0203】
(微粒子回収工程)
現像後の基板を水に浸漬させ、超音波処理水槽に入れ、3分間超音波を印加した。犠牲層は溶解し、ティーポットのパターンが基板より剥離した。浸漬させた水を回収、乾燥させることにより、ティーポット型の立体曲面形状を有する100μm×100μm×20μmの10,000個の微粒子を抽出することができた。
【符号の説明】
【0204】
1、1A、1B、1C … 微粒子
2 … 立体形状
3 … 印
5 … 微粒子の表面
6 … 微粒子の裏面
10、40 … 積層体
12、42 … 基板
13 … 犠牲層
14a、44a … 感光性樹脂層
14b … 粒子層
20 … 偽造防止用シート
21 … 透明樹脂
22 … 微粒子含有層
23 … 剥離層
24 … 粘着層
25 … 基材
26 … ハードコート層
27 … ホログラム層
30 … 偽造防止媒体
31 … 支持体
41 … 原版
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、前記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とする微粒子。
【請求項2】
前記微粒子が、感光性樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の微粒子。
【請求項3】
前記微粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微粒子。
【請求項4】
前記微粒子の粒径(L)および前記微粒子の厚み(H)が、H/L≧1/30を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの記載の微粒子。
【請求項5】
紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の微粒子。
【請求項6】
樹脂層と、前記樹脂層上に形成され、前記微粒子の表面に形成された金属層とを有することを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の微粒子。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子を含有することを特徴とする偽造防止用トナー。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項10】
支持体上に、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子が固定されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項11】
拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、前記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、
基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、
前記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、前記立体形状を形成する露光現像工程と、
前記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程と
を有することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項12】
拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、前記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、
基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、前記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、前記立体形状または前記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、
前記原版を用いて、前記微粒子を形成する微粒子形成工程と
を有することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記露光現像工程の階調露光では、前記感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行うことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記露光現像工程の階調露光では、階調マスクを用いることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の微粒子の製造方法。
【請求項1】
拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、前記立体形状が少なくとも曲面を有することを特徴とする微粒子。
【請求項2】
前記微粒子が、感光性樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の微粒子。
【請求項3】
前記微粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微粒子。
【請求項4】
前記微粒子の粒径(L)および前記微粒子の厚み(H)が、H/L≧1/30を満たすことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの記載の微粒子。
【請求項5】
紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料および磁性材料からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の微粒子。
【請求項6】
樹脂層と、前記樹脂層上に形成され、前記微粒子の表面に形成された金属層とを有することを特徴とする請求項2から請求項4までのいずれかに記載の微粒子。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項8】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子を含有することを特徴とする偽造防止用トナー。
【請求項9】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子が透明樹脂中に分散された微粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項10】
支持体上に、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の微粒子が固定されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項11】
拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、前記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、
基板上に、溶媒溶解性を有する犠牲層および感光性樹脂層が順に積層された積層体を準備する積層体準備工程と、
前記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、前記立体形状を形成する露光現像工程と、
前記犠牲層を溶解する犠牲層溶解工程と
を有することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項12】
拡大して観察することで識別可能な立体形状を有し、前記立体形状が少なくとも曲面を有する微粒子の製造方法であって、
基板上に感光性樹脂層が形成された積層体を準備する積層体準備工程、および、前記感光性樹脂層に階調露光を施し、現像処理を行い、前記立体形状または前記立体形状とは逆の立体形状を形成する露光現像工程を有し、原版を形成する原版形成工程と、
前記原版を用いて、前記微粒子を形成する微粒子形成工程と
を有することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項13】
前記露光現像工程の階調露光では、前記感光性樹脂層に描画装置により直接描画を行うことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の微粒子の製造方法。
【請求項14】
前記露光現像工程の階調露光では、階調マスクを用いることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の微粒子の製造方法。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
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【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2012−121170(P2012−121170A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271755(P2010−271755)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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