説明

微粒子の精製方法、及び該微粒子の精製方法を含む遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法

【課題】イオン性不純物の分離効率に優れ、濾過膜への負荷及び洗浄水の使用量を低減することができる微粒子の精製方法であって、イオン性不純物の含有量が著しく低減され、且つ、高分散性を有する微粒子を簡便且つ効率よく得ることができる微粒子の精製方法を提供する。
【解決手段】本発明の微粒子の精製方法は、微粒子中に含まれるイオン性不純物を分離除去する微粒子の精製方法であって、微粒子濃度が0.1〜40重量%の微粒子水分散液をクロスフロー方式により膜濾過し、イオン性不純物を透過液と共に分離除去して濃縮された微粒子水分散液を得、該濃縮された微粒子水分散液に水を加えて、微粒子濃度が上記範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す循環膜濾過方式により微粒子を精製すると共に、定期的に濾過膜を逆洗浄することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロスフロー膜濾過方式による微粒子の精製方法、及び該微粒子の精製方法を含む遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子などの微粒子は、普通の固体に比べて反応性が飛躍的に向上し、光特性、磁気特性、機械的特性、熱特性などに優れるため、幅広い分野での応用が期待されている。ここでナノ粒子とは、一般に、微粒子の中でも粒子の長径、短径、厚みのうち少なくとも1つが100nm以下である超微粒子のことである。
【0003】
例えば、高周波帯を使用する電子機器においては、ニッケル、鉄、コバルト等のような磁性を有する金属微粒子を、基板材料中にフィラーとして分散させることにより、基板に磁気特性を付与することが行われている。また、酸化チタンは、紫外線等の照射により優れた光触媒能を発揮して有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することが可能であり、抗菌、防かび、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚などさまざまな用途に、酸化チタン微粒子が固定化されて利用されている。
【0004】
フィラーとして使用する金属微粒子にアンモニウムイオン等のイオン性不純物を含有する場合は分散性等が低下することが問題であり、酸化チタン微粒子にハロゲンイオン等のイオン性不純物を含有する場合は光に対する応答性が低下することが問題である。
【0005】
上記問題を解決する方法としては、例えば、水等で洗浄し、全量濾過方式を使用した加圧若しくは減圧濾過や、遠心分離等の処理を施すことにより固液分離して、イオン性不純物を除去する方法等が知られている(特許文献1、2等参照)。
【0006】
しかし、上記不純物除去方法では、イオン性不純物の含有量を十分に低減することが困難であること、上記不純物除去処理により微粒子が圧密化されて濾過に長時間を要すること、不純物除去処理後に粉砕処理に付す必要が生じ手間がかかること、濾過膜への負荷が大きく膜寿命が短いこと、洗浄水を大量に必要とすること、通常の遠心分離機では小さい粒子の回収が困難であり収率が低下し、得られる微粒子の比表面積が低下すること、収率及び比表面積の向上のためには超高速の遠心力が必要となり設備にコストがかかること等が問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−158015号公報
【特許文献2】特開昭62−235215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、イオン性不純物の分離効率に優れ、濾過膜への負荷及び洗浄水の使用量を低減することができる微粒子の精製方法であって、イオン性不純物の含有量を著しく低減することができ、且つ、高分散性を有する微粒子を簡便且つ効率よく得ることができる、微粒子の精製方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、前記微粒子の精製方法により精製された微粒子を使用して、優れた可視光応答性及び光触媒能を有する遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を製造する遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、微粒子水分散液を、クロスフロー濾過方式により膜濾過し、膜濾過を経て得られた濃縮液(濃縮された微粒子水分散液)を水で希釈して更に膜濾過すると、濾過膜表面に圧密化された濾滓を形成することなく、イオン性不純物を効率よく取り除くことができ、イオン性不純物の含有量が極めて低く、且つ、微粒子が圧密化されることなく高分散性を維持している、比表面積の極めて広い微粒子水分散液を速やかに得ることができること、イオン性不純物を効率よく取り除くことができるため洗浄水の使用量を低減することができること、水で希釈することにより微粒子水分散液濃度を一定に保持しつつ濾過処理を繰り返すため濾過膜への負荷を軽減することができ、濾過膜の寿命を向上することができること、透過液のpHや電気伝導度を監視することにより容易にイオン性不純物の除去処理の進行度を確認することができ、濾過処理の終了時期を決定することができることを見いだした。
【0011】
また、濾過膜の目詰まりにより透過速度が低下しても、逆洗浄することにより目詰まりしている微粒子を容易に取り除くことができ、透過速度を速やかに回復できること、逆洗浄してもなお一部の微粒子が残存する場合があるが、該残存微粒子は、濾過膜表面を薄くコーティングして保護する効果を有し、濾過膜の劣化を防止し、濾過膜の寿命を向上させる効果を発揮することを見出した。
【0012】
更にまた、上記方法により精製された酸化チタン微粒子は、イオン性不純物の含有量が極めて低く、高分散性を有し、比表面積が極めて広い。そのため、粉砕処理を施す必要がなく、そのまま、遷移金属化合物担持処理に付すことができ、更にその後、再びクロスフロー方式により、透過液の電気伝導度が一定の値以下となるまで、繰り返し濾過処理を施すことにより、優れた光触媒能を有する遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を容易に得ることができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、微粒子中に含まれるイオン性不純物を分離除去する微粒子の精製方法であって、微粒子濃度が0.1〜40重量%の微粒子水分散液をクロスフロー方式により膜濾過し、イオン性不純物を透過液と共に分離除去して濃縮された微粒子水分散液を得、該濃縮された微粒子水分散液に水を加えて、微粒子濃度が上記範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す循環膜濾過方式により微粒子を精製すると共に、定期的に濾過膜を逆洗浄することを特徴とする微粒子の精製方法を提供する。
【0014】
濾過膜としては、限外濾過膜(分画分子量:1000〜300000)を使用することが好ましい。
【0015】
透過液のpHが2〜7となるまでクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返すことが好ましい。
【0016】
クロスフロー方式による膜濾過における濃縮倍率は、1〜400倍が好ましい。
【0017】
逆洗浄により膜通過した洗浄水は、濃縮された微粒子水分散液の希釈用の水として再利用することが好ましい。
【0018】
微粒子としては、酸化チタン微粒子が好ましい。酸化チタン微粒子のなかでも、チタン化合物を水性媒体中で水熱処理して得られるルチル型酸化チタン微粒子が好ましく、特に、ロッド状ルチル型酸化チタン微粒子が好ましい。
【0019】
本発明は、また、前記微粒子の製造方法により得られる微粒子を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、上記微粒子の精製方法により酸化チタン微粒子を精製する工程、及び、前記工程で得られた精製された酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させる工程を有する遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法は、前記遷移金属化合物を担持させる工程の後、更に、透過液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまでクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す工程を有することが好ましい。
【0022】
酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させる工程においては、励起光照射下で、酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させることが好ましい。
【0023】
遷移金属化合物としては鉄化合物又は白金化合物が好ましく、特に鉄化合物が好ましい。遷移金属化合物は、酸化チタン微粒子の酸化反応面に選択的に担持されていることが好ましい。
【0024】
本発明は、更にまた、前記遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法により得られる遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る微粒子の精製方法は上記構成を有するため、容易且つ効率よく、イオン性不純物を除去することができ、イオン性不純物の含有量が極めて低く、且つ、分散性に優れ、比表面積が極めて広い微粒子を得ることができる。また、洗浄水の使用量を抑制することができ、膜寿命を向上させることができる。そのため、経済性に優れ、工業化に最適である。
【0026】
また、本発明に係る遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法によれば、上記微粒子の精製方法により得られたイオン性不純物の含有量が極めて低く、且つ、分散性に優れ、比表面積が極めて広い酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させるため、粉砕処理等の手間を省いて遷移金属化合物の担持工程に付すことができ、作業性に優れ、優れた可視光応答性及び光触媒能を有する遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の微粒子の精製方法における循環膜濾過方式の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の微粒子の精製方法における逆洗浄方法の一例を示す概略図である。
【図3】(110)(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子、及び(110)(111)(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る微粒子の精製方法は、微粒子中に含まれるイオン性不純物を分離除去する微粒子の精製方法であって、微粒子濃度が0.1〜40重量%の微粒子水分散液をクロスフロー方式により膜濾過し、イオン性不純物を透過液と共に分離除去して濃縮された微粒子水分散液を得、該濃縮された微粒子水分散液に水を加えて、微粒子濃度が上記範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す循環膜濾過方式により微粒子を精製すると共に、定期的に濾過膜を逆洗浄することを特徴とする。
【0029】
図1は、本願の微粒子の精製方法における循環膜濾過方式の一例を示す概略図である。仕込みタンクに仕込まれた微粒子水分散液を含む供給液は、クロスフロー濾過方式で膜濾過され、濃縮された微粒子水分散液(濃縮液)が得られる。濃縮された微粒子水分散液は、再度、仕込みタンクへ循環し、希釈用の水(希釈用水)で希釈され、再びクロスフロー濾過方式で膜濾過される。
【0030】
(微粒子)
本発明における微粒子は、1nm〜50000nm程度の粒径を有し、極めて広い比表面積(例えば10〜200m2/g程度、好ましくは10〜100m2/g)を有することを特徴とし、例えば、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化コバルト、酸化銅、酸化クロミウム、酸化鉄、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化ニッケル、酸化ジルコニウム等の金属酸化物や、金、銀、銅、パラジウム、白金、硫化亜鉛、セレン化カドミウム、モリブデン、ニッケル、シリコン、ダイヤモンド、シリカ、タンタル等の金属単体等の微粒子を挙げることができる。
【0031】
本発明における微粒子としては、なかでも、酸化チタン微粒子が好ましい。酸化チタン微粒子としては、例えば、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型酸化チタン微粒子等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、安定な結晶面が露出している点でルチル型、又はアナターゼ型酸化チタン微粒子(より優れた光触媒能を発揮することができる点で、ルチル型酸化チタン微粒子が更に好ましく、特に好ましくは(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子及び/又は(110)面(111)面及び(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子である)が好ましい。
【0032】
酸化チタン微粒子として、例えば、ロッド状ルチル型酸化チタン微粒子は、チタン化合物を水性媒体(例えば、水又は水と水溶性有機溶媒との混合液)中で水熱処理[例えば、100〜220℃、2〜48時間(好ましくは2〜15時間、特に好ましくは5〜15時間)]することにより合成することができる。また、水熱処理の際にハロゲン化物を添加すると、得られる粒子のサイズ及び表面積を調整することができるため好ましい。
【0033】
前記チタン化合物としては、3価のチタン化合物、4価のチタン化合物を挙げることができる。3価のチタン化合物としては、例えば、三塩化チタンや三臭化チタンなどのトリハロゲン化チタン等を挙げることができる。本発明における3価のチタン化合物としては、なかでも安価で、入手が容易な点で三塩化チタン(TiCl3)が好ましい。
【0034】
また、本発明における4価のチタン化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
Ti(OR)t4-t (1)
(式中、Rは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。tは0〜3の整数を示す)
【0035】
Rにおける炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等のC1-4脂肪族炭化水素基等を挙げることができる。
【0036】
Xにおけるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0037】
このような4価のチタン化合物としては、例えば、TiCl4、TiBr4、TiI4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH3)Cl3、Ti(OC25)Cl3、Ti(OC49)Cl3、Ti(OC25)Br3、Ti(OC49)Br3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH32Cl2、Ti(OC252Cl2、Ti(OC492Cl2、Ti(OC252Br2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH33Cl、Ti(OC253Cl、Ti(OC493Cl、Ti(OC253Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン等を挙げることができる。本発明における4価のチタン化合物としては、なかでも安価で、入手が容易な点で、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタン(TiCl4)、四塩化チタン水溶液が好ましい。
【0038】
微粒子水分散液としては、微粒子含有量が、例えば0.1〜40重量%程度、好ましくは0.1〜20重量%程度となるように、水(例えば、精製水、蒸留水、純水、イオン交換水等)で希釈したものを使用することができる。微粒子含有量が上記範囲を外れると、イオン性不純物の除去効率が低下する傾向がある。また、微粒子含有量が上記範囲を上回る場合は、粘度が高くなりすぎ、ファウリング(目詰まり)し易くなる傾向もある。そして膜濾過処理により、水がイオン性不純物と共に透過液として分離されるため、例えば、1〜400倍程度(なかでも、1〜20倍、特に、1〜10倍)に濃縮された微粒子水分散液が得られる。そのため、本発明においては、水(例えば、精製水、蒸留水、純水、イオン交換水等)で希釈することにより、微粒子水分散液の濃度を上記範囲に調整し、その後、再び膜濾過処理に付す。それにより、イオン性不純物の分離効率を向上させることができ、その上、ファウリング(目詰まり)等による濾過膜の負荷を軽減し、濾過膜の寿命を向上させることができる。
【0039】
(イオン性不純物)
本発明におけるイオン性不純物について、酸化チタン微粒子に含まれるイオン性不純物としては、例えば、原料となるチタン化合物に由来するチタンイオン、鉄イオン、ハロゲンイオン(例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、装置材料から混入するイオン(例えば、タンタルイオン、ジルコニウムイオン、モリブデンイオン、ニッケルイオン、鉄イオン、クロムイオン、ケイ素イオン、アルミニウムイオン等)である。
【0040】
本発明の微粒子の精製方法では、微粒子中に含まれるイオン性不純物量を、例えば0.01ppm〜5000ppm程度(好ましくは、1〜3000ppm程度)まで低減することが好ましい。酸化チタン微粒子に含有するイオン性不純物が上記範囲を上回ると、光に対する応答性が低下する傾向がある。
【0041】
(濾過膜)
濾過膜としては、例えば、限外濾過膜、精密濾過膜、ナノフィルター、逆浸透膜等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、分画分子量の点で限外濾過膜を使用することが好ましい。
【0042】
限外濾過膜は、孔サイズが1〜20nm(好ましくは、1〜10nm)であり、分子量1000〜300000の物質(分子サイズとして0.001〜0.01μm程度)[好ましくは、分子量1000〜50000(分子サイズとして1〜10nm)]を分離対象とする分離膜である。
【0043】
限外濾過膜の膜形状としては、例えば、中空糸型濾過膜、チューブラー膜、スパイラル膜、平膜等の何れであっても良いが、逆洗浄が比較的容易に行える点から、中空糸型濾過膜、又はチューブラー膜を使用することが好ましい。
【0044】
中空糸型濾過膜における中空糸膜の内径は、汚染物質の閉塞の防止、膜モジュールへの中空糸充填率の向上という観点から、0.1〜2.0mm程度の範囲が好ましく、0.5〜1.0mmの範囲がさらに好ましい。
【0045】
濾過膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セラミックなどの一般的な材質を特に制限されることなく使用することができる。本発明においては、なかでも、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミドが好ましい。
【0046】
中空糸膜としては、例えば、酢酸セルロース系中空糸膜、ポリスルホン系中空糸膜、ポリアクリロニトリル系中空糸膜、ポリフッ化ビニリデン中空糸膜、ポリエーテルスルホン系中空糸膜等を挙げることができるが、これらの中でも、酸に対する耐性が高いことから、ポリエーテルスルホン系中空糸膜又はポリスルホン系中空糸膜が好ましい。
【0047】
中空糸型濾過膜を使用する場合、微粒子水分散液を流す方法(濾過方式)としては、内側(中空糸膜の内側)に微粒子水分散液を含む供給液を流し、外側(中空糸膜の外側)に透過水を流す方式(内圧濾過方式)と、その逆に外側に微粒子水分散液を含む供給液を流し、内側に向けて透過水が流れる方式(外圧濾過方式)が挙げられる。本発明においては、なかでも、膜面流速を高く維持できる点で内圧濾過方式が好ましい。
【0048】
(クロスフロー方式)
クロスフロー方式とは、濾過膜面に平行に被処理水を流し、濾滓の沈着による濾過膜汚染を防ぎながら被処理水の一部を、被処理水の流れの側方で濾過する方式である。
【0049】
クロスフロー方式による膜濾過における濃縮倍率としては、1〜400倍程度(なかでも1〜20倍、特に1〜10倍)が好ましい。濃縮倍率が上記範囲を上回ると、膜面への付着物質の堆積抑制が困難となり、濾過速度及び膜寿命が低下し易くなる傾向がある。一方、濃縮倍率が上記範囲を下回ると、イオン性不純物の分離効率が低下し、洗浄水の使用量が増加する傾向がある。
【0050】
クロスフロー方式による膜濾過における濃縮倍率は、例えば、濾過圧力、微粒子水分散液の膜面線速(クロスフロー速度)等をコントロールすることにより調整することができる。濾過圧力は、例えば0.001〜5.0MPa程度であり、好ましくは0.005〜3MPa、特に好ましくは0.01〜2.0MPaである。
【0051】
また、微粒子水分散液を含む供給液の膜面線速が大きいほど膜面への付着物質の堆積が抑制されるので高い濾過流束(フラックス)が得られ、例えば、膜面線速(クロスフロー速度)は、例えば0.02m/s以上、3m/s未満であり、好ましくは0.05m/s以上、1.5m/s未満である。
【0052】
(逆洗浄)
本発明に係る微粒子の精製方法では、濾過膜面への付着物質の堆積を防止して濾過膜への負担を軽減し、長期間膜濾過運転を行うため、濾過膜に対し洗浄水により間欠的な逆洗浄を施すことが好ましい。逆洗浄は圧力及び流速を制御しつつ予め定められた周期で行うのが好ましい。
【0053】
逆洗浄の圧力としては、例えば0.01〜3.0MPa程度であり、好ましくは0.01〜2.0MPa、特に好ましくは0.01〜1.0MPa、最も好ましくは0.01〜0.5MPa、さらに好ましくは0.05〜0.5MPaである。また、逆洗浄の流速としては、例えば0.01〜10kg/mim程度、好ましくは0.05〜5kg/mim、特に好ましくは0.1〜5kg/mim[或いは、例えば1×10-7〜2×10-4m/sec程度、好ましくは8×10-7〜9×10-5m/sec、特に好ましくは1×10-6〜9×10-5m/sec]である。逆洗浄の頻度としては、例えば0.5〜3時間に1回程度行うことが好ましい。逆洗浄の時間は0.5〜2分程度が好ましい。
【0054】
なお、逆洗浄に用いる洗浄水としては、水(例えば、精製水、蒸留水、純水、イオン交換水等)を使用することが好ましい。また、逆洗浄により膜通過した洗浄水は、濃縮された微粒子水分散液の希釈用の水として再利用することが好ましい(図2参照)。
【0055】
本発明においては、透過液のpHを監視することにより容易にイオン性不純物の除去処理の進行度を確認することができ、例えば、透過液のpHが2〜7(好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜5、最も好ましくは3〜5)となるまでクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返すことが好ましい。透過液のpHが上記範囲を外れる場合は、イオン性不純物の除去処理が不十分となる場合がある。
【0056】
上記微粒子の精製方法により得られる微粒子は、イオン性不純物の含有量が極めて低く、且つ、分散性に優れ、比表面積が極めて広い。そのため、粉砕処理、分散処理等の手間を省いて遷移金属化合物の担持工程に付すことができる。
【0057】
(遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法)
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法は、上記微粒子の精製方法により酸化チタン微粒子を精製する工程、及び、前記工程で得られた精製された酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させる工程を有することを特徴とする。遷移金属化合物を担持することにより、酸化チタン微粒子に、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲の光に対する応答性を付与し、太陽光や白熱灯、蛍光灯等の通常の生活空間における光を吸収して、高い触媒活性を発揮させることができる。遷移金属化合物は、例えば、遷移金属イオン、遷移金属単体、遷移金属塩、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物又は遷移金属錯体の状態で担持される。
【0058】
遷移金属化合物の担持量としては、例えば10〜5000ppm程度(好ましくは50〜3000ppm、特に好ましくは100〜2000ppm)である。遷移金属化合物の担持量が上記範囲を上回ると、励起電子が有効に作用せず、光触媒能が低下する傾向がある。一方、遷移金属化合物の担持量が上記範囲を下回ると、可視光線応答性が低下する傾向がある。
【0059】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子としては、特に、遷移金属化合物が面選択的に担持され、且つ、その担持量が上記範囲内であることが、酸化反応と還元反応の反応場の分離性をより高めることができ、それにより励起電子とホールとの再結合を抑制し、逆反応の進行を抑制することができ、光触媒活性を飛躍的に向上させることができる点で好ましく、特に、酸化反応面に選択的に遷移金属化合物が担持されていることが好ましい。
【0060】
尚、本発明において「遷移金属化合物が面選択的に担持」とは、露出結晶面を有する酸化チタン微粒子に担持する遷移金属化合物の50%を超える量(好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)が2面以上の露出結晶面のうち、全ての面ではなく、特定の面(例えば、特定の1面又は2面等)に担持されていることをいう。尚、面選択率の上限は100%である。面選択性は、透過型電子顕微鏡(TEM)やエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を使用し、遷移金属化合物由来のシグナルを確認することで、各露出結晶面上の遷移金属化合物の有無により判定できる。
【0061】
遷移金属化合物としては、可視光領域に吸収スペクトルを有し、励起状態で伝導帯に電子を注入することができるものが好ましく、例えば、周期表第3〜第11族元素化合物、なかでも周期表第8〜第11族元素化合物であり、特に鉄化合物又は白金化合物が好ましく、最も好ましくは三価の鉄化合物(Fe3+)である。鉄化合物の酸化チタン微粒子への担持においては、三価の鉄化合物(Fe3+)は吸着しやすく、二価の鉄化合物(Fe2+)は吸着しにくい特性を有するため、その特性を利用することにより容易に面選択的に担持することができるからである。
【0062】
遷移金属化合物の酸化チタン微粒子への担持は、酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を含浸する含浸法により行うことができる。具体的には、上記微粒子の精製方法により得られる精製された酸化チタン微粒子水分散液中に、撹拌しながら、遷移金属化合物を添加することにより行うことができる。例えば、遷移金属化合物として三価の鉄化合物(Fe3+)を担持した酸化チタン微粒子は、酸化チタン微粒子に硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等を添加して含浸させることにより得られる。
【0063】
遷移金属化合物の添加量としては、例えば、酸化チタン微粒子に対して0.01〜10重量%程度、好ましくは0.05〜5重量%程度である。遷移金属化合物の添加量が上記範囲を下回ると、酸化チタン微粒子への遷移金属化合物の担持量が低下し、光触媒活性が低下する傾向があり、一方、遷移金属化合物の添加量が上記範囲を上回ると、注入電子の逆電子移動等により励起電子が有効に作用せず、光触媒活性が低下する傾向がある。含浸時間としては、例えば1分から24時間程度、好ましくは5分から10時間程度である。
【0064】
そして、本発明においては、酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を含浸する際に励起光を照射することが、大掛かりな設備などを要することなく容易に、且つ効率よく、特定面に選択的に遷移金属化合物を担持することができる点で好ましい。励起光を照射すると、酸化チタン微粒子の価電子帯の電子が伝導帯に励起し、価電子帯にホール、伝導帯に励起電子が生成し、これらは粒子表面へ拡散し、各露出結晶面の特性に従って励起電子とホールとが分離されて酸化反応面と還元反応面とを形成する。この状態で遷移金属化合物として、例えば三価の鉄化合物の含浸を行うと、三価の鉄化合物(Fe3+)は酸化反応面には吸着するが、還元反応面では三価の鉄化合物(Fe3+)は二価の鉄化合物(Fe2+)に還元され、二価の鉄化合物(Fe2+)は吸着しにくい特性を有するため、溶液中に溶出し、結果として酸化反応面に選択的に鉄化合物(Fe3+)が担持された鉄担持酸化チタン微粒子を得ることができる。
【0065】
励起光の照射は、バンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光を照射することにより行うことができ、例えば、紫外線を照射することにより行うことができる。紫外線照射手段としては、例えば、中・高圧水銀灯、UVレーザー、UV−LED、ブラックライト等の紫外線を効率よく発生させる光源を有する紫外線露光装置等を使用することができる。励起光の照射量としては、例えば0.1〜300mW/cm2程度、好ましくは0.5〜100mW/cm2である。
【0066】
さらに、本発明においては、含浸の際に犠牲剤を添加することが好ましい。犠牲剤を添加することにより、酸化チタン微粒子表面において、特定の露出結晶面に高い選択率で遷移金属化合物を担持させることができる。犠牲剤としては、それ自体が電子を放出しやすい有機化合物を使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸等のカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン等を挙げることができる。
【0067】
犠牲剤の添加量としては、適宜調整することができ、例えば、精製された酸化チタン微粒子水分散液の0.5〜20.0重量%程度、好ましくは1.0〜5.0重量%程度である。犠牲剤は過剰量を使用してもよい。
【0068】
上記方法により遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子水分散液が得られる。遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子水分散液からは、周知慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を分離・精製することができる。
【0069】
本発明においては、なかでも、遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子濃度が0.1〜40重量%の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子水分散液を、上記微粒子の精製方法と同様にして、クロスフロー方式により膜濾過してイオン性不純物を透過液と共に分離除去して濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子水分散液を得、該濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子水分散液に水を加えて、遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子濃度が上記範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す循環膜濾過方式により遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を精製すると共に、定期的に濾過膜を逆洗浄することが好ましく、特に、濾過膜として限外濾過膜(分画分子量:1000〜300000)を使用して、透過液の電気伝導度が300μS/cm以下(例えば、0.5〜300μS/cm、好ましくは0.5〜200μS/cm)となるまで、繰り返し濾過処理を施すことが、更にイオン性不純物の含有量を低減することができる点で好ましい。また、濾過処理後は、乾燥処理等に付すことにより、イオン性不純物含有量が極めて低い遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子を得ることができる。
【0070】
上記遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法により得られる遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の遷移金属化合物担持量としては、例えば90ppm以上、好ましくは100ppm以上、さらに好ましくは200ppm以上、特に好ましくは300ppm以上、最も好ましくは500ppm以上である。
【0071】
上記遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法により得られる遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子は、優れた可視光応答性及び光触媒能を有し、気相にて下記方法によりトルエンを酸化した際に生成するCO2量は、例えば400ppm以上、好ましくは460ppm以上、さらに好ましくは500ppm以上、特に好ましくは700ppm以上である。また、メタノールを酸化した際に生成するCO2量は、例えば500ppm以上、好ましくは600ppm以上、さらに好ましくは700ppm以上、特に好ましくは750ppm以上である。
【0072】
尚、前記トルエンを酸化した際に生成するCO2量の測定方法は、下記の通りである。
遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、100ppmのトルエンガス 125mLを反応容器内に吹き込む。トルエンガスの遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子への吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/cm2、光の波長:455nm)を行い、光照射開始から24時間後のCO2の生成量を測定する。
【0073】
また、前記メタノールを酸化した際に生成するCO2量の測定方法は、下記の通りである。
遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、800ppmのメタノールガス125mLを反応容器内に吹き込む。メタノールガスの遷移金属化合物担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/m2、光の波長:455nm)を行い、光照射開始から24時間後のCO2の生成量を測定する。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0075】
実施例1
(酸化チタン微粒子水懸濁液(スラリー液)の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液 560gを容量1Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、酸化チタン微粒子含有スラリー液(1)560gを取り出した。
【0076】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(1)を純水で10倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.05MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが2.9になるまで繰り返し濾過処理に付した。これにより、精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1) 560gを得た。この間、1時間に1回の割合で0.15MPaの圧力、0.1kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1)を減圧下、60℃で15時間乾燥したところ、(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子と、(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の混合物(1)を得た(図3参照)。得られたロッド状ルチル型酸化チタン微粒子(1)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は617ppm(CO2発生率:93%)であった。
【0077】
(鉄担持処理)
上記で得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)0.3gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール 9.6gを添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:0.9mW/cm2)、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1-1)を得た。
【0078】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1-1)を純水で10倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.05MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が21μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付し、精製された鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.15MPaの圧力、0.1kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0079】
その後、減圧下、60℃で15時間乾燥して、鉄担持酸化チタン微粒子(1)40gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(1)の鉄の含有量は420ppmであった。また、下記可視光によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は416ppmであり、下記メタノール酸化法により評価した光触媒能は716ppmであった。
【0080】
実施例2
(酸化チタン微粒子水懸濁液(スラリー液)の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液 5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で5時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを40℃以下まで冷却した。その後、更に、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で5時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、酸化チタン微粒子含有スラリー液(2)5650gを取り出した。
【0081】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(2)を純水で3倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。これにより、精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(2-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(2-1)を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子と、(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の混合物(1) 525gを得た。得られたロッド状ルチル型酸化チタン微粒子(1)の下記紫外線によるトルエン酸化法で評価した光触媒能は625ppm(分解率:94%)であった。
【0082】
(鉄担持処理)
上記で得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(2-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール 95gを添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm2)、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(2-1-1)を得た。
【0083】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(2-1-1)を純水で3倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付し、精製された鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(2-1-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0084】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、鉄担持酸化チタン微粒子(2)を得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(2)の鉄の含有量は800ppmであった。また、下記メタノール酸化法により評価した光触媒能は734ppmであった。
【0085】
実施例3
(酸化チタン微粒子水懸濁液(スラリー液)の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液 5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、酸化チタン微粒子含有スラリー液(3)5650gを取り出した。
【0086】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(3)を純水で3倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。これにより、精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1)5590gを得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1)を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子と、(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の混合物(3)533gを得た。得られたロッド状ルチル型酸化チタン微粒子(3)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は647ppm(分解率:95%)であった。
【0087】
(鉄担持処理)
上記で得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール 95gを添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm2)、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1-1)を得た。
【0088】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1-1)を純水で3倍に希釈して、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付し、精製された鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0089】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、鉄担持酸化チタン微粒子(3)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(3)の鉄の含有量は830ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は775ppmであった。
【0090】
実施例4
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が150μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例3と同様にして、鉄担持酸化チタン微粒子(4)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(4)の鉄の含有量は890ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は795ppmであった。
【0091】
実施例5
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が100μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例3と同様にして、鉄担持酸化チタン微粒子(5)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(5)の鉄の含有量は950ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は800ppmであった。
【0092】
実施例6
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例3と同様にして、鉄担持酸化チタン微粒子(6)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(6)の鉄の含有量は1200ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は800ppmであった。
【0093】
実施例7
上記(鉄担持処理)において、塩化鉄水溶液(35重量%)の使用量を7.5gから6.5gに変更した以外は実施例3と同様にして、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1-2)を得、鉄担持酸化チタン微粒子(7)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(7)の鉄の含有量は700ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は780ppmであった。
【0094】
実施例8
上記(鉄担持処理)において、塩化鉄水溶液(35重量%)の使用量を7.5gから15.0gに変更した以外は実施例3と同様にして、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(3-1-3)を得、鉄担持酸化チタン微粒子(8)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(8)の鉄の含有量は2000ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は753ppmであった。
【0095】
実施例9
上記(酸化チタン微粒子水懸濁液(スラリー液)の調製)において、反応温度(オートクレーブ内温度)を140℃から120℃に変更した以外は実施例3と同様にして、酸化チタン微粒子含有スラリー液(4)を得、得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(4)について、実施例3と同様に上記(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))を施したところ、(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子と、(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の混合物(9)530gを得た。得られたロッド状ルチル型酸化チタン微粒子(9)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は600ppm(CO2発生率:90%)であった。
【0096】
その後、実施例3と同様に(鉄担持処理)、(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))を施して、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(4-1-1)を得、鉄担持酸化チタン微粒子(9)を得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(9)の鉄の含有量は780ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は691ppmであった。
【0097】
実施例10
上記(酸化チタン微粒子水懸濁液(スラリー液)の調製)において、反応温度(オートクレーブ内温度)を140℃から160℃に変更した以外は実施例3と同様にして、酸化チタン微粒子含有スラリー液(5)を得、得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(5)について、実施例3と同様に上記(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))を施したところ、(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子と、(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の混合物(10)530gを得た。得られたロッド状ルチル型酸化チタン微粒子(10)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は645ppm(分解率:95%)であった。
【0098】
その後、実施例3と同様に(鉄担持処理)、(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))を施して、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(5-1-1)を得、鉄担持酸化チタン微粒子(10)を得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(10)の鉄の含有量は820ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は727ppmであった。
【0099】
実施例11
(酸化チタン微粒子水懸濁液(スラリー液)の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液 5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、酸化チタン微粒子含有スラリー液(6)5650gを取り出した。
【0100】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(6)を純水で希釈することなく、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。これにより、精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(6-1)5650gを得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。精製された酸化チタン微粒子含有スラリー液(6-1)を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、(110)面及び(111)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子と、(110)面(111)面及び(001)面を有するロッド状ルチル型酸化チタン微粒子の混合物(11)を得た。得られたロッド状ルチル型酸化チタン微粒子(11)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は647ppm(分解率:95%)であった。
【0101】
(鉄担持処理)
上記で得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(6-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール 95gを添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm2)、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(6-1-1)を得た。
【0102】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(6-1-1)を純水で希釈することなく、限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付し、精製された鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(6-1-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0103】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、鉄担持酸化チタン微粒子(11)530gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(11)の鉄の含有量は820ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は778ppmであった。
【0104】
比較例1
実施例1の(酸化チタン微粒子懸濁液(スラリー液)の調製)で得られた酸化チタン微粒子含有スラリー液(1)560gを遠心分離(20000G×60分間)し、得られた固体を水に分散して上澄み液のpHが3になるまで水洗処理を施した。その後、全量濾過方式で濾過して濾滓(1)を得た。得られた濾滓(1)を水で希釈して10重量%の酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-2)を得た。スラリーを得るのに48時間の撹拌を要した。
【0105】
酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-1)に代えて、前記酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-2)を使用した以外は実施例1の(鉄担持処理)と同様にして、鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-2-1)を得た。
【0106】
得られた鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液(1-2-1)を、更に、上記と同様に、遠心分離し、得られた固体を水に分散して、上澄み液の電気伝導度が200μS/cmになるまで水洗処理を施して、精製された鉄担持酸化チタン微粒子含有スラリー液を得た。水洗処理を繰り返す際、濾滓を再分散させるのに1回当たり48時間の攪拌を要した。
その後、減圧下、60℃で15時間乾燥して、鉄担持酸化チタン微粒子(12)40gを得た。得られた鉄担持酸化チタン微粒子(12)の鉄の含有量は88ppmであった。また、下記可視光によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は459ppmであり、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は491ppmであった。
比較例1で得られた鉄担持酸化チタン微粒子(12)は、調製に時間がかかりすぎ、工業的に行うには不適な方法であった。
【0107】
<光触媒能の評価方法>
(可視光によるトルエン酸化法)
実施例及び比較例で得られた鉄担持酸化チタン微粒子を光触媒として使用し、気相にてトルエンを酸化し、生成するCO2量を測定することにより光触媒能を評価した。
鉄担持酸化チタン微粒子 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、100ppmのトルエンガス 125mLを反応容器内に吹き込んだ。トルエンガスの鉄担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5mW/cm2、光の波長:455nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO2の生成量(反応容器内のCO2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)に付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。
【0108】
(可視光によるメタノール酸化法)
実施例及び比較例で得られた鉄担持酸化チタン微粒子を光触媒として使用し、気相メタノールを酸化し、生成するCO2量を測定することにより光触媒能を評価した。
鉄担持酸化チタン微粒子 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、800ppmのメタノールガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。メタノールガスの鉄担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/m2、光の波長:455nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO2の生成量(反応容器内のCO2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)を付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。
【0109】
(紫外線によるトルエン酸化法)
実施例で得られた酸化チタン粒子を光触媒として使用し、気相トルエンを酸化し、生成するCO2量を測定することにより光触媒能を評価した。
酸化チタン粒子 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、100ppmのトルエンガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。トルエンガスの酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:0.1mW/cm2、光の波長:365nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO2の生成量(反応容器内のCO2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)を付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。
【0110】
(紫外線によるメタノール酸化法)
実施例で得られた酸化チタン粒子を光触媒として使用し、気相メタノールを酸化し、生成するCO2量を測定することにより光触媒能を評価した。
酸化チタン微粒子 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、800ppmのメタノールガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。メタノールガスの酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/m2、光の波長:365nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO2の生成量(反応容器内のCO2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)を付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子中に含まれるイオン性不純物を分離除去する微粒子の精製方法であって、微粒子濃度が0.1〜40重量%の微粒子水分散液をクロスフロー方式により膜濾過し、イオン性不純物を透過液と共に分離除去して濃縮された微粒子水分散液を得、該濃縮された微粒子水分散液に水を加えて、微粒子濃度が上記範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す循環膜濾過方式により微粒子を精製すると共に、定期的に濾過膜を逆洗浄することを特徴とする微粒子の精製方法。
【請求項2】
濾過膜として、限外濾過膜(分画分子量:1000〜300000)を使用する請求項1に記載の微粒子の精製方法。
【請求項3】
透過液のpHが2〜7となるまでクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す請求項1又は2に記載の微粒子の精製方法。
【請求項4】
クロスフロー方式による膜濾過における濃縮倍率が1〜400倍である請求項1〜3の何れか一項に記載の微粒子の精製方法。
【請求項5】
逆洗浄により膜通過した洗浄水を濃縮された微粒子水分散液の希釈用の水として再利用する請求項1〜4の何れか一項に記載の微粒子の精製方法。
【請求項6】
微粒子が酸化チタン微粒子である請求項1〜5の何れか一項に記載の微粒子の精製方法。
【請求項7】
酸化チタン微粒子が、チタン化合物を水性媒体中で水熱処理して得られるルチル型酸化チタン微粒子である請求項6に記載の微粒子の精製方法。
【請求項8】
酸化チタン微粒子がロッド状ルチル型酸化チタン微粒子である請求項6又は7に記載の微粒子の精製方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の微粒子の製造方法により得られる微粒子。
【請求項10】
請求項6〜8の何れか一項に記載の微粒子の精製方法により酸化チタン微粒子を精製する工程、及び、前記工程で得られた精製された酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させる工程を有する遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項11】
遷移金属化合物を担持させる工程の後、更に、透過液の電気伝導度が300μS/cm以下になるまでクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返す工程を有する請求項10に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項12】
励起光照射下で、酸化チタン微粒子に遷移金属化合物を担持させる請求項10又は11に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項13】
遷移金属化合物が鉄化合物又は白金化合物である請求項10〜12の何れか一項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項14】
遷移金属化合物が鉄化合物である請求項10〜13の何れか一項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項15】
遷移金属化合物が、酸化チタン微粒子の酸化反応面に選択的に担持されている請求項10〜14の何れか一項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法。
【請求項16】
請求項10〜15の何れか一項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子の製造方法により得られる遷移金属化合物担持酸化チタン微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−206933(P2012−206933A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−57607(P2012−57607)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】