説明

微粒子の製造

両親媒性ポリマーの存在下、機械的攪拌機を使用してチャンバ内の溶液と沈殿剤との同時に導入した流れを混合することを含む、有機化合物の沈殿方法。本方法は連続方式で実施することができ、容易に分散可能な、ナノサイズの粒子形状の低溶解性有機化合物(たとえば薬剤)を製造規模で提供するのに特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子形状の有機化合物を沈殿させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬分野では、薬剤の生物利用性、そして疾患及び医学的障害に対する有効性に影響を与え得る多くの因子が存在する。これらの因子としては、活性成分の粒径、粒径分布及び溶解速度が挙げられる。生物利用性が低いと、医薬組成物、特に水に対する溶解性が乏しい活性成分を含有する医薬組成物の開発では深刻な問題に直面する。水溶性の低い薬剤、たとえば薬10mg/ml未満の溶解性を有する薬剤は、血液循環に吸収される前に胃腸管から排泄される傾向がある。さらに水溶性の乏しい薬剤は、静脈注射が必要なときに針を閉塞させたり、さらには患者の細い血管を詰まらせるという点で問題を引き起こしてしまうことがある。
【0003】
粒状の薬剤の溶解速度は、例えば粒径を小さくするなどの方法で表面積を増大させると増加し得ることが知られている。従って、微粉末薬剤の製造法が研究されており、医薬組成物中の薬剤粒子のサイズ及びサイズ範囲を制御するための取り組みが行われてきた。たとえば乾燥粉砕法は、粒径を小さくして、薬剤吸収に影響を与えるために使用されてきた。しかしながら慣用の乾燥粉砕では、材料が粉砕チャンバの壁上で固まり始めるとき、微粉度の限界は100ミクロン(100,000nm)の範囲内であることが多い。湿潤粉砕はさらに粒径を小さくするのに役立つが、凝集によって多くの場合、粒径の下限は約10ミクロン(10,000nm)に制限される。
【0004】
工業的なエアジェット粉砕法では、最小で約1ミクロン〜約50ミクロン(1,000〜50,000nm)の平均粒径を変動する粒子が提供された。
有機化合物の小粒子を製造する一つの公知方法では、Johnson,Brian K.;Saad,Walid;Prud’homme,Robert K,.Department of Chemical Engineering,Princeton University,Princeton,NJ.アメリカ合衆国、ACS Symposium Series(2006),924(Polymeric Drug Delivery II),278-291.出版社:American Chemical Sciety,CODEN:ACSMC8 ISSN:0097-6156の18章に開示されているように、溶媒、貧溶媒(anti-solvent)及び衝突噴流を使用する。この衝突噴流法は通常、直ちに高い乱流衝撃を作り出すように衝突する、貧溶媒及び溶媒の二つの実質的に正反対のジェット流を提供することを含む。貧溶媒は溶媒中に存在する全ての化合物を溶液から沈殿させ、粒状沈殿物を生じさせる。
【0005】
我々の経験では、対向噴射衝撃法には実用上若干の問題点がある。ジェットがラインから少しでも外れると、溶媒と貧溶媒が完全に混合せず、粒径分布が広がってしまうので、ジェットノズルを正確に配置配列することが必要である。さらに、ジェットノズルの向きが少しでもずれると、沈殿がノズルに生じて、これがノズルを閉塞させてしまうことがある。特に溶液の大部分が所望の衝撃点でマイクロ混合(micro mix)されないと、一つ以上のジェットノズルからの流速が不十分であると、生成される全てのバッチの品質に影響が生じることがある。そのような場合には、狭い、小さな粒径分布は得ることができない。通常、噴流ジェット流の好ましい流れには分散の余地が殆どない。
【0006】
Gassmannら(Eur.J.Pharm.Biopharm.40(2),64-72(1994))は、実験室スケールで薬剤活性剤を含むヒドロゾルを製造した。彼らは有機溶媒中に溶解させた薬剤(低溶解性を有していた)の溶液を、水及び安定化剤を既に入れた開放ビーカー中に攪拌しながら注入した。安定化剤は、化学的に変性させたゼラチン、Poloxamer(商標)188(分子量8,400をもつと記載されたブロックコポリマー)とPoloxamer(商標)407(分子量12,500をもつと記載されたブロックコポリマー)とを含んでいた。Gassmannらは、自分たちの方法をスケールアップすることは殆ど不可能だとコメントした。Gassmannらはまた、混合するために乱流を利用した静的ミキサーを用いてヒドロゾルを製造した。入口と出口は流れ及びガラス管と同一の軸を共有し、この中にバッフルを通して乱流を作り出した。
【0007】
米国特許第4,826,689号明細書は、薬剤の有機溶媒中の溶液に水をゆっくりと注入することを含む、水不溶性薬剤の粒子の製造法について記載する。貧溶媒として作用するこの水は、たとえばPluronic F-68またはゼラチンなどの界面活性剤を含んでいてもよい。このバッチ式方法は、非常に遅く、労力を要するように思われる。
【0008】
米国特許出願公開第2005/0202095A1号明細書は、Silverson Model L4RT-A Rotor-Statorのような容易に入手可能なローター固定子デバイス(rotor stator device)中で所望の化合物を含む溶媒と貧溶媒とを混合することによって微粒子を製造する別の方法について記載する。しかしながら得られた粒子は、たとえば実施例では非常に大きく、沈殿したグリシン粒子のサイズは4.4ミクロンから300ミクロンまで変動した。
【0009】
米国特許第5,543,158号明細書は、生物学的に活性な成分を含有する生分解性の固体コアを含む表面上にポリ(アルキレングリコール)(PEG)を有する注射可能なナノ粒子の製造について記載する。これらのナノ粒子は、PEGを含有する両親媒性コポリマーを含んでいてもよく、30分間、水中油型エマルションをボルテックス化し及び超音波分解した後、数時間緩やかに攪拌して有機溶媒をゆっくりと蒸発させることにより、バッチ方式で製造した。従ってこの方法はやや時間がかかり、労力を要した。
【0010】
米国特許第7,153,520号明細書は、多くは生分解性ポリマーから製造したインプラント中に両親媒性ジブロックコポリマーと水溶性の低い薬剤とを含む徐放性薬剤のためのインプラントの製造について記載する。この組成物は丸底フラスコに入った種々の成分を単純に混合することにより製造する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,826,689号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0202095A1号明細書
【特許文献3】米国特許第5,543,158号明細書
【特許文献4】米国特許第7,153,520号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Eur.J.Pharm.Biopharm.40(1994),64-72
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
無駄や損害をもたらす可能性がある粉砕を実施する必要なく、且つ閉塞の原因となり得るジェットを正確に配置する必要なしに、小さな粒径の有機化合物、特に医薬活性剤を製造する方法が必要とされている。理想的には、この方法は工業スケールで操作可能であり、迅速で、過度に複雑でなく、迅速に再分散可能な粒子をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、有機化合物の沈殿方法であって、
(a)溶媒中の前記有機化合物の溶液(I)を第一の入口から混合チャンバに導入する工程;
(b)工程(a)と同時に、第二の入口から沈殿剤(II)を混合チャンバに導入する工程;
(c)前記有機化合物の溶液(I)と前記沈殿剤(II)とを混合し、それによって有機化合物の沈殿と液相とが形成されるようにする工程;及び
(d)前記有機化合物の沈殿と前記液相を一つ以上の出口を通じて混合チャンバから排出する工程を含み、工程(c)は、両親媒性ポリマーの存在下で機械的攪拌手段を使用して実施されることを特徴とする前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の方法を実施するのに使用し得るデバイスの概略を示す図である。
【図2】図2は、デバイスの好ましい態様の断面図である。
【図3】図3は、デバイスの別の好ましい態様の断面図である。
【図3A】図3Aは、図3に示されているデバイスのより好ましい態様の上面図を示す図である。
【図3B】図3Bは、図3に示されているデバイスのより好ましい態様の上面図を示す図である。
【図4】図4は、デバイスのさらに別の好ましい態様の断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書(請求の範囲を含む)において、「含む(comprise)」なる動詞及びその活用形は、非限定的な意味で使用され、その語に続く項目は包含されるが、具体的に記載されていない項目は除外されないことを意味する。さらに、不定冠詞“a”または“an”は、その前後関係が明らかに一つ及び唯一の要素であることを必要としない限り、二つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。従って、不定冠詞“「a”または“an”は、通常「少なくとも一つ」を意味する。
【0017】
本明細書において、最広義の「有機化合物」なる用語は、少なくとも1個の炭素原子を含む化合物を指す。通常、有機化合物は水素原子も含む。有機化合物は、酸素原子、窒素原子及び/または硫黄原子などのヘテロ原子も含む。特に、「有機化合物」なる用語は、医薬、染料、農業及び化学業界の分野において有機化合物と通常考えられているものを指す。「有機化合物」なる用語は、金属原子を含む化合物、即ち、ヘモグロビンなどの有機金属化合物、及び塩も包含する。「有機化合物」なる用語としては、「生物学的」有機化合物、たとえばホルモン、タンパク質、ペプチド、炭水化物、アミノ酸、脂質、ビタミン、酵素などが挙げられる。「有機化合物」なる用語は、種々の結晶形、即ち、多形体、水和物及び溶媒和物、並びに付加塩などの塩も含む。
【0018】
「沈殿」なる用語は、溶液沈殿分野のサブクラスを指す。沈殿は、以下の特徴の一つ以上によって認識されることが多い:(i)沈殿した粒子の低溶解性、(ii)早い方法、(iii)小さな粒径、及び(iv)方法の不可逆性(W.Gerhartz、Ullman’s encyclopedia of Industrial Chemistry、第B2巻、第5版、VHC Verlagsgessellschaft mbH、Weinheim、FGR、1988年)。本発明との関連では、沈殿の好適な定義は、液体溶液相から難溶性の固相を比較的急速に形成することである(Handbook of Industrial crystallization、Allan S.Myerson、Butterworth Heinemann,Oxford、141頁)。
【0019】
通常、二種類の沈殿方法を区別することができる。
・第一の型の方法は、貧溶媒(貧溶媒(anti-solvent)及び非溶媒(non-solvent)ともいう)沈殿である。溶解した有機化合物を、沈殿が生じるようにその溶解性を低下させる溶媒と混合する。貧溶媒沈殿の変形は、溶解した有機化合物を貧溶媒と必ずしも混合しないが、沈殿溶媒(precipitating solvent)の溶解性が低下して核が生成するように混合する。これは、たとえば温度、pH(酸またはアルカリ性溶液の添加)、イオン強度など及びそのような因子の組み合わせに変化が生じることによって実現され得る。
・第二の型の方法は、反応沈殿(reaction precipitation)である。二つの化合物を混合すると、新しく有機化合物が生成し、使用した混合または反応条件下でのこの生成した有機化合物の低い溶解性により、沈殿が生じる。
【0020】
明らかに、「沈殿」なる用語は、結晶化などの小さな固体粒子が生成する任意の方法を包含するが、これらに限定されない。
「貧溶媒」又は「非溶媒」なる用語は通常、温度20℃、圧力1バールのもとで、溶媒と有機化合物との全重量をベースとして、有機化合物の溶解性が1重量%未満、より好ましくは10-2重量%未満である液体として理解すべきである。溶媒は極性であっても非極性であってもよい。溶媒はプロトン性であっても非プロトン性であってもよい。溶媒はさらに非イオン性であってもイオン性であってもよい。しかしながら、溶媒は有機溶媒であるか、またはこれを含むのが好ましい。溶媒と貧溶媒とは混和性であることが好ましい。
【0021】
「過飽和」なる用語は、所与の条件(即ち溶媒または溶媒混合物、温度、pH、イオン強度など)のもと、過剰飽和である有機化合物の濃度を意味する。
本発明の典型的な方法では、溶媒中の有機化合物または有機化合物の前駆体の溶液(I)が提供され、これは第一の入口から混合チャンバへ連続流で供給することができる。同時に沈殿剤(II)も第二の入口から前記混合チャンバへ連続流で供給することができる。混合チャンバは、溶液(I)用に二つ以上の第一の入口と、沈殿剤(II)用に二つ以上の第二の入口が備えられていてもよい。次の工程では、溶液(I)と沈殿剤(II)とを混合し、この混合物は過飽和をもたらす。最後に沈殿物と液相との混合物を混合チャンバから、好ましくはこれも連続流で、好ましくは収集容器(または受け器)に排出する。本発明では、基本的には混合チャンバの出口では過飽和が存在しないことが好ましい。一つの出口または二つ以上の出口があってもよい。さらに一態様では、混合チャンバには、入口と(単数または複数の)出口の他に全く開口部がない。これは溶媒、液体、溶液、粒子などが第一の入口及び第二の入口及び出口から以外には混合チャンバ内に全く入ることも出ることもできないことを意味している。そのようなチャンバは、「閉鎖型(closed type)」混合チャンバということが多い。
【0022】
この混合チャンバは二つの入口と一つの出口を含むのが好ましい。
有機化合物の溶液(I)は単一溶媒または溶媒混合物を含むことができ、ここで前記単数または複数種類の溶媒は極性であっても非極性であってもよく、プロトン性であっても非プロトン性であってもよく、及び/または非イオン性であってもイオン性であってもよい。溶媒は、超臨界状態の気体、好適な場合には、たとえば超臨界二酸化炭素であってもよい。
【0023】
沈殿剤(II)の好ましい性質及び組成は使用する有機化合物及び方法に依存し、たとえば溶液(I)よりも(低温沈殿形成の場合には)低い温度、溶液(I)とは異なるイオン強度または異なるpHをもつ溶液であってもよい。沈殿剤(II)は、非溶媒、非溶媒の混合物、または非溶媒と溶媒との混合物であってもよい。
【0024】
本発明の方法は、低いミクロン、さらにはナノメートル範囲の狭い平均粒径分布をもつ非常に小さな粒子の製造に非常に好適である。そのように小さな粒子の欠点は、該粒子が不安定になる傾向があるということである。それゆえ粒径が成長したり凝集することを防止又は抑制するために、一種以上の両親媒性ポリマーを安定化剤として配合する。
【0025】
溶液(I)及び/または沈殿剤(II)は湿潤剤を含むことが好ましい。
両親媒性ポリマーは、有機化合物と水の両方に関して親和性をもつのが好ましい。有機化合物が水中で低溶解性をもつとき、両親媒性ポリマーは通常、水に対する親和性をもつ親水性部分と、親水性の低い部分、たとえば有機溶媒に対して親和性をもつ比較的疎水性部分とを有する。両親媒性ポリマーの比較的親水性部分は、非イオン性(たとえばポリエチレンオキシド単位)及び/またはイオン性(たとえばアニオンまたはカチオンに帯電した基をもつ)であることが多いが、親水性が低い部分または疎水性部分は電気的に中性であり、比較的非極性(たとえばポリラクチド基)であることが多い。
【0026】
好ましい両親媒性ポリマーは両親媒性ブロックコポリマー、特に生体適合性の両親媒性ブロックコポリマーである。好ましいブロック型及びブロック長は、沈殿させる有機化合物と、沈殿後の好ましい平均粒径に依存して変動し得る。好ましくは、両親媒性ポリマーは、親水性と比較的疎水性のセグメントを含む。好ましくは、両親媒性ポリマーはトリブロックとジブロックコポリマー、特にジブロックコポリマーである。通常は、そのようなコポリマーは少なくとも一つの疎水性ブロックと少なくとも一つの親水性ブロックとを含む。
【0027】
好ましい親水性ブロックは、ポリ(エチレングリコール)(PEG)及び/またはポリ(エチレングリコール)モノエーテル(PEGエーテル)ブロックである。好ましいエーテル類は1〜4個の炭素原子をもち、メチルエーテルが最も好ましい。比較的疎水性の好ましいブロックは、ポリ(乳酸-コ-グリコール)酸(PLGA)、ポリ(スチレン)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(ε-カプロラクトン)及び特にポリラクチド(PLA)ブロックである。ポリラクチドは乳酸の重合により形成されるポリエステルである。ポリラクチドは、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド及びポリD,L-ラクチドとして存在する。
【0028】
好ましい生体適合性の両親媒性ブロックコポリマーとしては、一つ以上のPEG及び/またはPEGエーテルブロックと一つ以上のポリラクチド(PLA)ブロックとを含むコポリマーが挙げられる。ポリラクチドは乳酸の重合から形成されるポリエステルである。ポリラクチドは、ポリ-L-ラクチド、ポリ-D-ラクチド及びポリD,L-ラクチドとして存在する。
【0029】
好ましくは、(単数または複数種類の)PEGとPEGエーテルブロックは、250〜5000、より好ましくは400〜4000、特に500〜2000、特に600〜1500のMn(Mnは数平均分子量を意味する)をもつ。Mn750のPEGで非常によい結果が得られた。かくして本発明の好ましい方法では、両親媒性コポリマーは、PEG Mn250〜5000のブロック及び/またはPEG Mn250〜5000(C1-4-アルキル)エーテルブロックを含む両親媒性ブロックコポリマーであり、(単数または複数種類の)そのようなブロックの好ましいMnは、400〜4000、特に500〜2000、特に600〜1500、特に750である。好ましくは(単数または複数種類の)PLAブロックはMn250〜5000、より好ましくは400〜4000、特に500〜2000、特に600〜1500をもつ。Mn1000のPLAブロックで非常に良好な結果が得られた。特に好ましい両親媒性ブロックコポリマーは、上記のMnをもつPEGエーテルとPLAのジブロックコポリマーであり、それぞれのブロックのMnは上記のとおりであるのが好ましい。
【0030】
これらのブロックコポリマーの例としては、以下のものが挙げられる:
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチド(C1-4-アルキル)エーテル、PEG Mn350〜1500、PLA Mn500〜2000;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチド(C1-4-アルキル)エーテル、PEG Mn500〜1100、PLA Mn600〜1600;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチド(C1-4-アルキル)エーテル、PEG Mn600〜900、PLA Mn800〜1200;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチド(C1-4-アルキル)エーテル、PEG Mn700〜900、PLA Mn800〜1200;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチドメチルエーテル、PEG Mn700〜900、PLA Mn800〜1200;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチド(C1-4-アルキル)エーテル、PEG Mn750、PLA Mn1000;及び
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチドメチルエーテル、PEG Mn750、PLA Mn1000。
【0031】
両親媒性ブロックコポリマーの例としては、以下のものが挙げられる:ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチドメチルエーテル、PEG Mn1000(PEGモノメチルエーテルMn750 PLA Mn1000としても公知);
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチドメチルエーテル、PEG Mn350、PLA Mn1000;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ラクトン)メチルエーテル、PEG Mn5000、ポリラクチドMn〜5000;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)メチルエーテル、PEG Mn5,000、ポリカプロラクトンMn5,000;
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)メチルエーテル、PEG Mn5,000、ポリカプロラクトンMn13,000;及び
ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(ε-カプロラクトン)メチルエーテル、PEG Mn5,000、ポリカプロラクトンMn32,000;これらは全てSigma-Aldrich社から市販されている。
【0032】
当業者には容易に理解されるように、「メチルエーテル」はPEG鎖の一端のメチル基を指す(両端ではない。というのもこれによってPLAがPEGに結合することを妨げているからである)。またPEG、たとえば「PEGモノメチルエーテルMn750」のようなMn値はPEGそれ自体のMnを指し、メチル基の追加のCH2基を含まない。
【0033】
両親媒性ポリマーは商業的な供給元から入手でき、あるいは、これらは本発明の方法に使用するために個別に合成してもよい。両親媒性ポリマーは、単一の両親媒性ポリマーまたは、二つ以上(たとえば2〜5つ)の両親媒性ポリマーを含む混合物であってもよい。ポリ(アルキレングリコール)(PAG)ブロック(たとえばポリ(エチレングリコール)(PEG)ブロック)をもつ好ましい両親媒性ジブロックコポリマーの製造は、色々な方法で実施することができる。方法としては、
(i)疎水性ポリマーとメトキシポリ(アルキレングリコール)、たとえばメトキシPEGまたは別の酸素保護基で保護したPEG(一つの末端ヒドロキシル基を保護し、他方は疎水性ポリマーと反応させるために自由であるようにした)とを反応させること;または
(ii)メトキシ若しくは単一保護(monoprotected)PAG(例えば単一保護PEG)上の疎水性ポリマーを重合させることが挙げられる。幾つかの刊行物は後者のタイプの反応の実施方法について教示する。マルチブロックポリマーは、D,L-ラクチドとPEGとを170℃〜200℃でバルク共重合させることにより製造された(X.M.Dengら、J of Polymer Science:Part C:Polymer Letters,28,411-416(1990))。三つ及び四つのアームの星型PEG-PLAコポリマーは、開始剤であるオクタン酸第一スズの存在下、160℃で星型PEG上にラクチドを重合させることによって製造した(K.J.Zhuら、J.Polym.Sci,Polym.Lett.Ed.,24,331(1996),“Preparation,characterization and properties of polylactide (PLA)-poly(ethylene glycol)(PEG)copolymers:a potential drug carrier”)。PLA-PEG-PLAのトリブロックコポリマーは、溶媒を使用することなく、触媒としてオクタン酸第一スズを使用して、二つの末端ヒドロキシル基を含むPEGの存在下、D,L-ラクチドから180°〜190℃で開環重合させることにより合成した。多分散性(Mw対Mnの比)は2〜3の範囲であった。
【0034】
別の態様では、疎水性ポリマーまたはモノマーを、アミノ官能基で末端停止されているポリ(アルキレングリコール)(Shearwater Polymers,Inc.製)と反応させて、エステル結合よりも一般的に強いアミド結合を形成させることができる。
【0035】
ポリ(アルキレングリコール)、特にポリ(エチレングリコール)で末端停止したブロックの両親媒性コポリマーのトリブロックまたは他の種類は、上記反応を使用して、分岐若しくは他の好適なポリ(アルキレングリコール)を使用して、及び反応すべきでない末端基を保護して製造することができる。Shearwater Polymers,Inc.は、広範な種類のポリ(アルキレングリコール)誘導体を適用する。トリブロックの例としては、PEG-PLGA-PEGがある。
【0036】
PEG-PLGA-PEGなどの線状トリブロック両親媒性コポリマーは、オクタン酸第一スズの存在下、トルエン中、ラクチド、グリコリド及びポリエチレングリコールを還流させることによって製造することができる。このトリブロックコポリマーは、CH3O(CH2CH2)n-O-PLGA-OHとHO-PLGAとを反応させることによっても得ることができる。
【0037】
一態様において、マルチブロック両親媒性コポリマーを使用し、これは、PLAまたはPLGAなどの疎水性ポリマーブロックの末端基と、好適なポリカルボン酸モノマー、たとえば1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、ブタン-1,1,4-トリカルボン酸、トリカルバアリリック(tricarballylic)酸(プロパン-1,2,3-トリカルボン酸)、及びブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸とを反応させることによって製造することができ、ここで反応用ではないカルボン酸基は当業者に公知の方法によって保護される。次いでこの保護基を除去し、残りのカルボン酸基をポリ(アルキレングリコール)と反応させる。別の態様では、ジ、トリまたはポリアミンを同様に分岐剤(branching agent)として使用する。
【0038】
好ましくは、溶液(I)及び/または沈殿剤(II)は、有機化合物用の安定化剤を含む。この安定化剤は、たとえば両親媒性ブロックコポリマーであり得る。かくして溶液(I)と沈殿剤(II)は、両親媒性ブロックコポリマーを含むことができる。好ましい態様では、溶液(I)と沈殿剤(II)の少なくとも一つは両親媒性ブロックコポリマーを含み、他方はゼラチン、特に組み換えゼラチン(recombinant gelatine)を含む。
【0039】
さらに、湿潤剤が存在する場合には、該湿潤剤はドデシル硫酸ナトリウムTween 80、Cremophor A25、Cremophor EL、Pluronic F68、Pluronic L62、Pluronic F88、Span 20、Tween 20、Cetomacrogol 1000、ラウリル硫酸ナトリウム、Pluronic F127、Brij 78、Klucel、Plasdone K90、Methocel E5、PEG、Triton X100、Witconol-14F及びEthos D70-20Cからなる群から選択されるのが好ましい。本発明の方法によって沈殿させる粒子を医薬用途で使用しなければならない場合、安定化剤と湿潤剤は生体適合性であることが好ましい。
【0040】
本発明の一態様では、湿潤剤は混合チャンバの代わりに収集容器に供給することができる。本発明の別の態様では、安定化剤及び/または湿潤剤は、収集容器と混合チャンバの両方に供給することができる。
【0041】
有機化合物はそれ自体、本発明の方法で使用する必要はない。有機化合物の前駆体を使用することが可能であり、ここで該前駆体を有機化合物それ自体に変換することができる沈殿剤を使用する。従って、本発明のこの態様では、有機化合物の前駆体と反応する沈殿剤を使用する。これによって、プロトン化/脱プロトン化により、アニオン/カチオン交換により、酸付加塩形成/分離、レドックス反応、付加反応などによって、共有結合またはイオン結合の形成に関与する前駆体と沈殿剤との間の実質的に瞬間的な化学反応が可能になる。「実質的に瞬間的な(substantially instantaneous)」なる用語は、混合チャンバ内の有機化合物の(前駆体の)平均滞留時間よりも実質的に短い時間を意味する。
【0042】
有機化合物の溶液(I)は、過飽和によって沈殿形成が可能な混合チャンバの一部分で、制御された方法で沈殿生成が起こるように、沈殿剤(II)と非常に良く混合することが重要である。有機化合物の沈殿と液相の連続的な流出により、混合チャンバ内では定常状態に到達して、これの状態を連続的に保持することができる。通常、そして好ましくは、混合チャンバ内の滞留時間は0.0001秒を超え、5秒未満、好ましくは0.001秒を超え、3秒未満である。滞留時間が長すぎると、混合チャンバ内に一度形成した非常に微細粒が大きなサイズに成長し、平均粒径分布が広がるため望ましくない。滞留時間が短すぎると、生成する粒子が少なすぎることがある。最適な滞留時間は、有機化合物の種類によって異なり、簡単な試行錯誤によって最適化することができる。
【0043】
溶液(I)と沈殿剤(II)は、好ましくは閉鎖混合チャンバ内で溶液(I)と沈殿剤(II)との安定な混合物が得られるように種々の方法で混合することができる。溶液(I)と沈殿剤(II)は、任意の機械的手段によって混合される。該機械的手段は、任意の方法によって(例えば、駆動軸により、または回転磁石などによって)駆動することができる。好ましくは、機械的攪拌手段は、混合チャンバ内で回転可能である。たとえば、これは回転可能なブレードを含んでいてもよい。ブレードは任意の形状であってもよく、任意のアスペクト比をもち、たとえばその高さ対幅の比が同様であるパドル形であってもよく、またその高さがその幅よりもずっと小さいようなディスク形であってもよい。幅とは、パドルの回転中心軸からその一番外側の縁までの直径の距離を意味する。機械的攪拌手段の容積は混合チャンバの容積の少なくとも10%であり且つ最高99%であることが好ましく、より好ましくは少なくとも15%であり且つ最高95%である。さらに、機械的攪拌手段は、軸、及び、軸によって回転可能な攪拌翼を含むことができる。攪拌翼の好ましいサイズは、混合チャンバの最小径の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、特に80%〜99%、特に80%〜95%である。
【0044】
混合を容易にするために、有機化合物の沈殿と液相は出口を通じて混合チャンバから排出されることが好ましい。この出口は、混合チャンバの入口とは反対の端部に向かっていて、入口と同じ線上にはない。たとえば、入口は混合チャンバの底部に配置することができ、(単数または複数の)出口は混合チャンバの上部に配置することができる。一態様において、入口はチャンバの中央線よりも下である(たとえば高さの30%または20%)。(単数または複数の)出口は高さの70%より上であってもよい。別の態様では、(単数または複数の)出口は、入口を通る溶液(I)と沈殿剤(II)の流れに対してほぼ直角(たとえば80°〜100°、特に90°)である。このようにして、入口を通って入ってくる液体は、適切に攪拌されずに出口を通って直ちに出ることはない。
【0045】
一態様において、混合チャンバは二つ以上の出口をもつ。
有機化合物の沈殿及び液相は好ましくは収集容器から排出される。この収集容器には、安定化剤、湿潤剤、非溶媒、溶媒またはこれらの混合物の一種以上を含む第二の液相を入れてよい。
【0046】
別の態様では、有機化合物の沈殿の熟成(ripening)は、好ましい平均粒径及び/または平均粒径分布が得られるまで、収集容器内で実施される。この変性または熟成は、収集容器内の液相と沈殿を攪拌することによって実施することができる。変性または熟成の間、平均粒径は増加するかもしれないが、平均粒径分布は通常狭くなり、このことは時に都合が良い。変性または熟成は、種々のパラメーター、たとえば温度、pHまたはイオン強度によって制御することができる。従って、この好ましい態様では、本発明の方法はさらに、有機化合物の沈殿と液相が収集容器から排出され、有機化合物の沈殿は熟成段階にかけられる段階(e)を含む。
【0047】
さらに別の態様では、沈殿剤は、沈殿すべき化合物の小粒子を含む。この場合、より大きな粒子が制御下で得ることができる。
本発明の沈殿生成方法の誘導期間の間、沈殿剤(II)は混合チャンバ内に連続流で導入されて、出口から収集容器に向けて混合チャンバを離れることができる。続いて有機化合物の溶液(I)を連続流で混合チャンバ内に導入し、これにより有機化合物が過飽和になって、その結果沈殿と液相の形成が開始される。液相では、過飽和を、混合チャンバの外部では本質的に全く沈殿が起きないレベルまで低下させることができる。この態様では、有機化合物の溶液(I)と沈殿剤(II)を連続的に供給するので、最終的には沈殿と液相の連続流出流が得られる。誘導期間後、混合チャンバでは定常状態に達するが、このことは、基本的に混合チャンバ内の混合物の組成が安定で、且つ本質的に経時で変動しないということを意味する。さらに沈殿及び液相を含む流出流の組成は安定であり、該組成は本質的に経時的に変動しない。
【0048】
溶液(I)及び沈殿剤(II)を含む流入物の速度は高速とは限らない。複数の入口を使用する場合、一つの流入物の速度は他の流入物の速度と違っていてもよい。しかしながら通常、溶液(I)及び沈殿剤(II)を含む流入物の供給速度は0.01m/秒、0.1m/秒または1m/秒であってよい。10m/秒または、50m/秒を超える速度でさえも使用することができる。しかしながら本発明の方法の好都合な点は、比較的低い供給速度を使用すると、小さな粒子の沈殿が得られるということである。複数の入口の場合、供給速度は同等である必要はない。対照的に、衝突ジェットミキサーの場合には、これらの供給速度が互いに均衡していることが重要であり、実際上は不可欠である。溶液(I)及び沈殿剤(II)の供給速度比は、1:99〜99:1でありえる。誘導期間の間、混合チャンバの流出物は、抽出物の組成が本質的に一定になるまで集められる。定常状態に到達するとすぐに、沈殿及び液相を収集容器に集める。
【0049】
本発明では、沈殿すべき有機化合物、またはその前駆体は好ましくは上述のごとく溶媒または溶媒混合物に溶解するのが好ましい。沈殿剤(II)の種類または性質は、沈殿法に依存する。溶媒−非溶媒沈殿の場合には、沈殿剤は好ましくは、非溶媒、非溶媒の混合物または、非溶媒と溶媒との混合物であり、前記混合物は非溶媒として作用する。温度を下げることによって沈殿が生じるとき、沈殿剤は好ましくは、沈殿生成を開始する温度の溶媒または溶媒混合物である。pH沈殿またはイオン強度沈殿の場合には、沈殿剤は、それぞれ沈殿生成を開始するpHまたはイオン強度を有する溶液であり得る。反応沈殿の場合には、沈殿剤は、有機化合物の前駆体と反応して沈殿生成を誘導する反応物質である。
【0050】
Soehnel及びGarside(Precipitation,Basic Principles and Industrial Applications,Butterworth-Heinemann,1992)は、従来の核形成理論を用いて、閉鎖系の沈殿反応速度論を記載した。113〜114頁で、彼らは臨界核サイズと予想される誘導時間の関係について示している。従来の核形成理論では主として、定常状態核形成速度J(即ち熱力学的に順安定系の単位容積中の単位時間間隔当たりに生成した超臨界クラスターの数の推定)の決定について取り扱う。通常、Jの値が高いと、多くの粒子が得られ、粒径は小さい。Schmelzer及びSlezov(第9章、Theoretical Determination of the Number of Clusters Formed in Nucleation-Growth Processes,in:Aggregation Phenomena in Complex Systems,Ed.:J.Schmelzer,G.Ropke,R.Mahnke,Wiley-VCH,1999)は、従来の理論が使用していた仮定をほとんど採用せずに従来の核形成及び成長理論を改良した。たとえば、彼らは核の成長が一度に一つの単量体単位で起きるという仮定を採用しなかった。過飽和は、沈殿形成の間の核形成と固体の成長速度を決定する重要なパラメーターの一つである。核形成理論は塩の沈殿に関しては広範囲にわたって使用され成功を収めてきたが、溶媒非溶媒沈殿における沈殿した有機固体の粒径分布を予想する場合には限られた成果しか上げていなかった。
【0051】
最も実用的なバッチ用途では、定常状態は、非常に短い期間しか系内で確立することができない。これは、系から単量体単位が減少してしまって、過飽和が低下してしまうためである。一度沈殿生成が開始した後の系内の実際の過飽和は、モノマー濃度が上記のように低下し、混合が非効率であるため、計算することも、又、予想することも非常に困難である。Baldygaら(J.Baldyga,W.Podgorska及びR.Pohorecki,Chem.Eng.Sci.,第50巻、第8号、pp1281〜1300,1995年)は、ダブルジェットシステムにおけるBaSO4に関する研究について報告しており、当該システムでは、タービン攪拌機(turbine agitator)のついた単一容器に関する乱流モデルを完全核形成及び成長モデル(ポピュレーションバランス)と組み合わせている。この研究は数学的に非常に複雑である。
【0052】
連続沈殿法の場合には、混合機及び混合機からの過飽和の流出物中の供給されたモノマー、核形成及び固体の成長のバランスにより、しばらくの後過飽和が安定する。
核形成速度の計算に対する必要な単純化を行うために、我々は沈殿方法を混合チャンバ内で常に完全に混合しているプラグ-フロー混合方法(plug-flow mixing process)として処理し、過飽和比S10を以下のように定義する(我々は計算において固体の形成を無視する。)。
【数1】

式中、C10は添加開始10秒後の溶質濃度に等しく、C10,eは、添加開始10秒後の溶質の平衡溶質濃度に等しい。
流れ、温度または濃度が時間依存性である場合、S10は、時間依存性であり得る。10秒で不安定化混合チャンバ組成と温度の始動効果がもたらされた。好ましい実験条件は、S10が高い値となるようなものである。沈殿させる化合物に応じて、1.5を超える、2.5を超える、10を超える、さらにそれ以上のS10値が好都合であることが分かった。化合物によっては、100以上の過飽和値が好都合になり得る。
【0053】
本発明の方法は、活性な医薬化合物を、小さな平均粒径と狭い粒径分布をもつ粒子、場合により結晶質の粒子の沈殿生成に非常に適している。小さな医薬粒子は薬剤で使用するのに非常に適している。本発明の別の好都合な点は、有機化合物が非常に純粋に沈殿するという点である。
【0054】
本発明の方法によって得られた粒子は、アモルファスであっても結晶質であってもよい。
本発明の方法に従って沈殿し得る有機化合物は、好ましくは医薬的に活性な有機化合物、好ましくは、タンパク同化ステロイド、中枢神経興奮剤、鎮痛剤、麻酔剤、制酸剤、抗不整脈剤(anti-arrythmics)、抗ぜんそく薬(anti-asthmatics)、抗生物質、抗腫瘍薬、抗ガン剤、抗凝血剤、anticofonergics、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病薬、下痢止め(anti-diarrhoeal)、制吐薬、抗てんかん薬、抗真菌薬、抗痔薬(anti hemorrhoidals)、抗ヒスタミン剤、抗ホルモン薬、降圧剤、抗低血圧薬、抗炎症薬、抗ムスカリン作用薬、抗真菌薬、抗新生物薬、抗肥満薬、抗プラーク薬、抗原虫薬、抗精神病薬、防腐剤、抗痙攣薬(anti-spasmotics)、抗トロンビン薬(anti-thrombics)、鎮咳薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、収斂剤、ベータ-アドレナリン受容体遮断薬、胆汁酸、息清涼剤(breath freshner)、気管支鎮痙薬(bronchospasmolytic drug)、気管支拡張剤、カルシウムチャンネル遮断薬、強心配糖体、避妊薬、副腎皮質ステロイド、充血除去剤、診断薬、消化薬、利尿薬、ドーパミン作動薬、電解質、吐剤、去痰薬、止血薬、ホルモン、ホルモン補充治療薬、睡眠薬、血糖降下薬、免疫抑制剤、性的不全治療薬、下剤、脂質調節薬(lipid regulator)、粘液溶解薬、筋肉弛緩剤、非ステロイド抗炎症薬、栄養補助食品、鎮痛剤、副交感神経遮断薬(parasympathicolytic)、副交感神経作用薬(paracympathicomimetic)、プロスタグランジン、精神刺激薬、向精神薬、鎮静剤、性ステロイド、鎮座薬、ステロイド、興奮剤、スルホンアミド、交感神経遮断薬(sympathicolytic)、交感神経作用薬、交感神経様作用薬、甲状腺ホルモン様作用薬(thyreomimetic)、甲状腺ホルモン抑制薬(thyreostatic drug)、血管拡張剤、ビタミン、キサンチン及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましい有機化合物は、パクリタキセル(タキソール:Taxolとしても公知)である。
【0055】
混合チャンバのサイズは、沈殿形成を実施するスケールに依存する。小スケールでは、容積0.5〜150cm3または0.15〜100cm3の混合チャンバを通常使用し、中スケールでは、容積150〜500cm3または100〜250cm3の混合チャンバを使用し、大スケールでは、500cm3を超え1000cm3以下の混合チャンバを使用することができる。好ましくは、混合チャンバのサイズは1cm3〜1dm3である。当然のことであるが、混合チャンバの容積は、機械的攪拌手段が存在しない状態での容積である。好ましい態様では、混合チャンバは閉鎖型混合チャンバである。
【0056】
好ましくは、少なくとも一つの攪拌翼は、攪拌翼が溶液(I)と沈殿剤(II)の入ってくる流れの間で物理的バリヤとして作用するように、入口の間に配置される。このようにして、攪拌翼は、閉塞する可能性のある入口で沈殿が形成する可能性を低下させる。溶液(I)の流れの代わりに、沈殿剤(II)を、「真正面」方式の代わりに円周方式で接触する。
【0057】
本発明の方法を実施するのに使用し得るデバイスを図1に模式的に示す。第一の好ましい態様のデバイスは、機械的攪拌手段1、シャフト2、混合チャンバ3、混合チャンバ壁7、溶液中の有機化合物の溶液(I)を供給するための第一の入口4(該入口4は混合チャンバ3に接続されている。)、沈殿剤(II)を混合チャンバ3に供給するための第二の入口5(該入口5は混合チャンバ3に接続されている。)、及び有機化合物の沈殿と液相を受けるための出口6(該出口6は混合チャンバ3に接続されている。)とを含む。説明のために、機械的攪拌手段1は単一の攪拌翼として示すが、必要に応じて、二つ以上の攪拌翼またはチャンバ3に関して迅速に移動可能な他の機械的手段も使用することができる。入口4及び入口5と出口6に関して図1に実際に示されているような配置は、説明目的のために示されているだけである。しかしながら、これらの入口4及び入口5と出口6の他の配置も実行可能であり、且つ本発明の範囲内である。特に、入口4及び入口5の位置と出口6の位置は、閉鎖混合チャンバ内の有機化合物の平均滞留時間を一部決定する。通常、混合チャンバは底部部分と上部部分とを有する。さらに混合チャンバを底部部分と上部部分に分けている混合チャンバの中央線(middle line)を画定することができる。さらに、最も下の底部部分は高さ0%、中央線は高さ50%、最上部分は高さ100%と画定することができる。混合チャンバの概要を使用して、入口4と入口5は、中央線よりも下の、たとえば高さ30%または高さ20%未満の混合チャンバの底部部分に接続すべきである。出口6は、中央線より上、たとえば高さ70%を超えて混合チャンバの上部部分に位置すべきである。入口4と入口5は互いに正反対であってもよい。入口4と入口5は本質的に並行となるように整列していてもよい。入口4と入口5は、下部底部部分を介して混合チャンバに独立して入ってもよい。同様に出口6は、混合チャンバ3の上部に配置されているように図1に示されている。この態様の好都合な点は、ベアリングが必要ないということである。ベアリングがあると、汚染を引き起こすことがある。さらに混合チャンバ3の上部に出口6を配置することによって、沈殿を含む液体の流出をより制御し易くなる。
【0058】
混合チャンバ3のサイズは、沈殿形成を実施するスケールに依存する。必要に応じて、小スケールでは、0.5〜150cm3または0.15〜100cm3の混合チャンバを通常使用し、中スケールでは、150〜500cm3または100〜250cm3の混合チャンバを使用し、大スケールでは、500cm3を超え1000cm3以下の混合チャンバを使用することができる。当然のことながら、混合チャンバの容積は、機械的攪拌手段が存在しない状態での容積である。混合チャンバのサイズは1cm3〜1dm3であることが好ましい。
【0059】
デバイスには、好ましくは収集容器が設置されているか、又はこれに接続されていてもよい。収集容器は好ましくは攪拌手段を含む。必要に応じて、混合チャンバは収集容器によって取り囲まれていてもよい。あるいは混合チャンバは、ユーザーの好みに応じて収集容器に隣接して、又はこれと離して配置されていてよい。デバイス及び/または収集容器は、たとえば混合チャンバと収集容器の温度を制御するための手段をそれぞれ備えることができる。そのような制御手段は、たとえば溶液(I)、沈殿剤(II)、閉鎖型混合チャンバ3と供給タンクの温度を制御するのに使用することができる。
【0060】
デバイスは、有機化合物の溶液(I)を含む供給タンク(図示されていない)と、沈殿剤(II)を含む供給タンク(図示されていない)とを含むことができる。供給タンクは、たとえばホースまたは固定パイプであってもよい、供給ラインによって混合チャンバに接続することができる。混合チャンバへの輸送は、ポンプによって提供される連続流で実施することができる。ポンプが長期間にわたって安定的な流れを提供できる限り、当業界で公知の任意のポンプであってもよい。好適なポンプはたとえば、プランジャーポンプ、蠕動ポンプなどである。
【0061】
原則として閉鎖型混合チャンバの形状は自由に選択することができ、中心軸の周りで回転対称である場合、たとえば互いに距離xだけ離れた二つの同一表面(即ち一つの上部面と一つの底部面)によって特定することができる。適用できる場合、その表面は長方形から十二角形または最小径Dminの円までの任意の形状を取ることができる。たとえば正方形の形状の混合チャンバの場合には、Dminは両端の間の距離である。この態様において、xはDminよりも大きくてもよく、あるいはxはDminよりも小さくてもよい。さらなる態様では、上部面と下部面は同一である必要はないが、たとえば一つの表面は他方よりも小さくてもよい。
【0062】
好ましいデバイスを図2に示す。本デバイスは本質的に、本明細書中、参照として含まれる米国特許第5,985,535号に開示された装置である。図2において、デバイスは磁気的に駆動される機械的攪拌手段1a及び1b、上部方向と下部方向に面している回転中心軸をもつチャンバ壁7と、前記チャンバ壁の上部及び下部開口端部をシールするタンク壁として機能するシールプレート8とからなる混合チャンバ3を含む。以下により詳細に説明される磁気的に駆動される機械的攪拌手段を使用する場合には、チャンバ壁7とシールプレート8は透磁性が優れている非磁気材料から作られているのが好ましい。攪拌軸2a及び2bには、外部マグネット9a及び9bが備えられており、混合チャンバ3の上端部と下端部の外側に配置されており、これらは本質的に互いに向かい合っている。外部マグネット9a、9bは磁力によってチャンバ内側の機械的攪拌手段1a、1bと結合している。モーター10a及び10bは外部マグネットを逆方向に駆動する。これによって、機械的攪拌手段1a、1bは、混合チャンバ内で逆方向に回転する。
【0063】
さらに図2では、混合チャンバには、混合チャンバに接続されている、溶媒中の有機化合物の溶液(I)を供給するための第一の入口4、混合チャンバに接続されている、混合チャンバ3に沈殿剤(II)を供給するための第二の入口5と、混合チャンバに接続されている、有機化合物の沈殿と液相を受けるための単一の出口6とが備えられている。入口4と入口5は正反対に示されているが、これらは本質的に並行になるように整列されていてもよい。閉鎖型混合チャンバの形状としては筒状が使用されることが多いが、長方形、六角形及び他の種々の形状を使用することができる。同様に軸2a、2bによって外部マグネット9a、9bを駆動しているモーター10a、10b、機械的攪拌手段1a、1bが、混合チャンバ3の向かい合った上端部と底端部に配置されているが、これらは混合チャンバの形状に依存して、向かい合った左側と右側とに明らかに配置されていてもよく、また対角線上に配置されていてもよい。さらに、混合チャンバ3は、反対に回転する機械的攪拌手段の対をさらに含んでいてもよい。
【0064】
図2のデバイスの別の態様では、奇数個の磁気的に駆動される機械的攪拌手段、たとえば1、3または5個の磁気的に駆動される機械的攪拌手段を使用することができる。さらに、単一の攪拌手段と組み合わせたペアワイズ(pair wise)配向機械的攪拌手段を使用することによって、さらにより効率に攪拌することができるかもしれない。
【0065】
好ましい方法は、図2に示されているデバイスを使用することなどにより、以下の工程:
(I)有機化合物と溶媒を含む溶液(I)とを含むフロー(i)を第一の入口を経て閉鎖型混合チャンバに供給し、フロー(i)と、第二の入口から混合チャンバにフロー(i)と同時に供給された沈殿剤(II)を含むフロー(ii)とを接触させて、有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を形成する工程;及び
(II)好ましくは有機化合物の溶液を含むフロー(i)が混合チャンバに供給される方向と並流(cocurrent)の幾何学的方向に、単一出口または二つ以上の出口を通じて混合チャンバから有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を排出する工程、
を含む。
【0066】
「並流方向(cocurrent direction)」なる用語は、フロー(iii)の方向がフロー(i)の方向と逆流ではないと理解すべきである。「並流方向」なる用語は、特に、フロー(i)の軸とフロー(iii)の軸によって規定される角度が90°〜180°を変動するものと理解すべきである。
【0067】
好ましい方法において、沈殿剤(II)を含むフロー(ii)は、有機化合物を含む溶液(I)を含むフロー(i)が閉鎖型混合チャンバに供給される方向と本質的に正反対の方向に、混合チャンバに供給されるのが好ましい。
【0068】
別の好ましい態様では、図3によるデバイスを使用する。図3において、デバイスは機械的攪拌手段1、上部及び底部方向に向かう回転中心軸をもつチャンバ壁7からなる混合チャンバ3を含む。攪拌手段1は混合チャンバ3の中央に配置されるのが好ましく、チャンバの容積の大部分の割合(%)を占め、攪拌軸2とモーター(図示されていない)によって直接駆動できることが好ましい。入口4と入口5は好ましくは本質的に互いに直角である。しかしながら、入口4と入口5の配置は互いに交換可能であり、即ち入口4はその底部から混合チャンバ3に入り、他方、入口5は側壁から混合チャンバ3に入ってもよい。あるいは入口5はその底部から混合チャンバ3に入ってもよく、他方、入口4は側壁から混合チャンバ3に入る。入口4と入口5のいずれもが側壁を通って入ることも可能であり、そのとき入口と入口の水平面における角度は任意の値であってもよいが、90°〜180°であることが好ましい。この態様では、攪拌軸またはシャフト2は混合チャンバ3の出口6の内部に配置されている。入口4と入口5はいずれも混合チャンバ3の底部から入ることも可能である。好ましい態様において、貧溶媒が混合チャンバに入る入口5は底部に配置される。この態様において、入口での反応チャンバ内への不都合な沈殿形成は予防される。
【0069】
さらに一態様において、攪拌手段1の容積は、混合チャンバ3の容積の少なくとも10%(たとえば80%を超える)且つ99%以下、好ましくは95%以下であることが非常に好ましい。従って、本発明のこの好ましい態様では、軸またはシャフト2を含む攪拌手段1、上部及び底部方向を向いている回転中心軸をもつチャンバ壁7を含む混合チャンバ3、好ましくは互いに本質的に垂直である入口4と入口5、及び攪拌手段1の軸またはシャフト2が配置されている出口6を含む沈殿形成デバイスを使用する。
【0070】
図3によるデバイスは、デバイスのこの態様の上面図を示している図3A及び図3Bに示されているように、可動部品から構築されていてもよい。ここで混合チャンバ3は、ヒンジ12の周りを回転可能な二つの可動チャンバ部品11によって形成される。可動チャンバ部品11は、シャフト2によって駆動される機械的攪拌手段1(回転可能なディスクの形状の攪拌翼)の周りで連結する。
【0071】
本発明では、好ましい方法は、たとえば図3に示されているデバイスを使用して以下の工程:
(I)有機化合物と溶媒を含む溶液(I)を含むフロー(i)を第一の入口から閉鎖型混合チャンバに供給し、フロー(i)と、第二の入口から混合チャンバにフロー(i)と同時に供給された沈殿剤(II)を含むフロー(ii)とを接触させて、有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を形成する工程;及び
(II)有機化合物の溶液を含むフロー(i)が混合チャンバに供給される方向か、又は沈殿剤(II)を含むフロー(ii)が混合チャンバに供給される方向と本質的に垂直の幾何学的方向に、混合チャンバから有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を排出する工程、を含む。
【0072】
あるいは、工程(II)は、両方の入口がその底部部分から混合チャンバに入る場合、有機化合物の溶液を含むフロー(i)が混合チャンバに供給される方向、または沈殿剤(II)を含むフロー(ii)が混合チャンバに供給される方向、あるいはこの両方の方向と本質的に並流である幾何学方向に混合チャンバから有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を排出することも含み得る。
【0073】
本発明の方法を実施するために使用し得る別のデバイスを図4に示す。また本態様は、図3A及び図3Bに示されているように可動部品から構築することができる。
図4において、ディスク形の機械的攪拌手段1a、1b、区画からなる混合チャンバ3を含み、チャンバ壁7と攪拌手段1a、1bとシャフト2との間には空き領域(free area)がある。またこの態様では、攪拌軸またはシャフト2は、混合チャンバ3の単一出口6内に配置されている。入口4と入口5は、好ましくは互いに本質的に垂直である。しかしながら、本態様においても、入口4と入口5の配置は互いに交換可能であり、本態様において、入口4と入口5は、混合チャンバの側壁を通って又は底部部分から混合チャンバに入ってもよい。好ましい態様では、沈殿剤(II)は、混合チャンバの底部部分から入る。
【0074】
さらに少なくともこの態様では、ディスク形の1a、1bをもつ機械的攪拌手段1の容積は、混合チャンバ3の容積の少なくとも10%(たとえば少なくとも80%)且つ99%以下、好ましくは95%以下であることが非常に好ましい。図示されている本態様において、攪拌軸は二つのディスク1a、1bを含み、混合チャンバ3は分離壁13により形成された区画を含む。機械的攪拌手段として一つのディスクをもつ混合チャンバを使用することもできるが、それぞれの区画には一つの単一軸に付けられている機械的攪拌手段としてディスクが備えられている、三つ以上の区画をもつ混合チャンバも使用することができる。従ってこの好ましい態様では、デバイスは、シャフト2によって駆動されているディスク形の少なくとも一つ、好ましくは二つ、三つまたはそれ以上の機械的攪拌手段、上部及び底部方向に向かう攪拌中心軸をもつチャンバ壁7からなる混合チャンバ3、前記混合チャンバは好ましくは互いに本質的に垂直である入口4と入口5、及び攪拌手段1を駆動するシャフト2が配置されている出口6を含む。必要に応じて、混合チャンバ3は、一つ以上の分離壁13によって区画に分割されていてもよい。一つ以上の分離壁によって一つ以上の区画に分離されていない混合チャンバ内に機械的攪拌手段として二つ以上の攪拌ディスクを含むデバイス、並びに一つ以上の分離壁によって幾つかの区画に分離されている混合チャンバと機械的攪拌手段として二つ以上の攪拌ディスクを含むデバイスも本発明の範囲内である。明らかにデバイスが機械的攪拌手段として単一の攪拌ディスクを含む場合、デバイスは通常、分離壁を含まないので、混合チャンバはたった一つの区画を含む。
【0075】
図4によるデバイスは、以下の工程:
(I)有機化合物と溶媒を含む溶液(I)を含むフロー(i)を第一の入口から混合チャンバに供給し、フロー(i)と、第二の入口から混合チャンバにフロー(i)と同時に供給された沈殿剤(II)を含むフロー(ii)とを接触させて、有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を形成する工程;及び
(II)有機化合物の溶液を含むフロー(i)が混合チャンバに供給される方向か、又は沈殿剤(II)を含むフロー(ii)が混合チャンバに供給される方向と本質的に垂直の幾何学的方向に、混合チャンバから有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を排出する工程、を含む方法を可能にする。
【0076】
図3の態様と同様に、工程(II)は、両方の入口がその底部部分から混合チャンバに入る場合、有機化合物の溶液を含むフロー(i)が混合チャンバに供給される方向か、又は沈殿剤(II)を含むフロー(ii)が混合チャンバに供給される方向、あるいはこの両方と本質的に並流の幾何学的方向に、混合チャンバから有機化合物の沈殿と液相とを含むフロー(iii)を排出することも含む。
【0077】
好ましくは、混合チャンバ内で混合物と接触している混合チャンバの全ての部品は、粘着(adhering)、付着(fouling)、堆積(incrustation)などを防止する材料の層でコーティングされている。好ましい材料は、相対湿度50%及び温度23℃で、ASTM D570による1%未満の吸湿性をもつものである。そのような材料の好適な例としては、フッ素化アルケンポリマー及びコポリマー、たとえばポリテトラフルオロエチレン及びポリアセタール、たとえばポリオキシメチレンが挙げられる。
【0078】
核形成の開始時には、核は通常、過飽和流体によって取り囲まれている。これらの粒子の二個以上が長い間接触したままでいると、これらは一緒に「接着して(cement)」凝集体を形成するだろう。さらに水性媒体中の無機粒子とは異なり、有機粒子は通常、電気的に帯電していないので、これらの有機粒子は強い静電反発機構(electrostatic repulsive mechanism)を持たない。本発明において、流体の動きによって核上に課せられた混合チャンバ内の牽引力/剪断力は、粒子が凝集体にならないようにすることができる。本発明の一態様において、過度の乱流を使用して、粒子間の接触時間を、周囲の流体はまだ過飽和であるが、材料が得られる程度の凝集は許容しないような値に低下させる。
【0079】
本発明において、機械的攪拌手段の好ましい直径は、混合チャンバの最小径の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは80〜99%であることが分かった。混合チャンバの最小径の約90%〜95%の直径をもつ機械的攪拌手段で非常に優れた結果が得られた。別の態様では、混合チャンバの最小径の80%〜90%の直径をもつ機械的攪拌手段で非常に優れた結果が得られた。
【0080】
本発明において、対向する機械的手段を混合チャンバ内で駆動する(即ちシャフトが反対方向に回転する)とき、高い混合効率を得るために高速で機械的攪拌手段を回転させることが好ましい。回転速度は好ましくは1,000rpm以上、より好ましくは3,000rpm以上、及び特に5,000以上である。反対に回転している攪拌手段一対を、同じ回転速度または異なる回転速度で回転させることができる。軸の周囲に対照的である機械的攪拌手段の場合、攪拌速度は500rpmを超え、たとえば1,000rpmまたは5,000rpmまたは10,000rpmであるべきである。今日、メカニカル攪拌は、20,000rpm及びそれ以上の攪拌速度のものが市販されている。通常、攪拌速度が速ければ速いほどよく混合されるので、攪拌速度に関しては特別な上限はない。
【0081】
混合チャンバ内の有機化合物の滞留時間は、とりわけ種々のパラメーター、たとえば有機化合物の溶液(I)の流入、沈殿剤(II)の流入、機械的攪拌手段の型、たとえば形状及びサイズの選択、混合強度、並びに入口及び単一出口の配置を変動させることによって変動させることができる。混合チャンバ内の滞留時間が短すぎるのは、混合チャンバの外での核形成が制御できなくなってしまうことがあるので不都合である。混合チャンバ内の滞留時間が長すぎると、過剰に凝集体が形成し、成長してしまうことがあるのでこれも不都合である。溶媒及び非溶媒と、たとえば温度とを一緒に選択して、核形成速度を制御することができる。核形成時間は、たとえば10-9〜10-2秒であってもよい。従って混合は重要な因子である。というのも、これらの非常に高い核形成速度の下で混合効率が低下すると、不都合な凝集を引き起こすことがあるからである。
【0082】
また、そのような迅速な核形成時間を持たない化合物に関しては、混合チャンバ内の滞留時間は長すぎない方がよい。というのも沈殿形成方法の効率が低下するためである。さらに滞留時間が長いと、平均粒径分布が広くなり大きな粒子となることがある。実際には、混合チャンバ滞留時間は3秒を超えず、1秒未満であることが好ましい。核形成速度が遅いとき、たとえば10-3から10-6秒までであるとき、条件は、滞留時間が0.1を超えるが5秒未満、より好ましくは3秒未満、さらにより好ましくは1秒未満であるように選択することが好ましい。
【0083】
滞留時間tは、以下のようにして計算することができる:
【数2】

式中、vは混合容器の混合空間容積(cm3)であり;
aは有機化合物溶媒溶液の添加流れ(cm3/秒)であり;及び
bは沈殿剤の添加流れ(cm3/秒)である。
【0084】
好ましくは、本発明の方法から生じる沈殿有機化合物は、1ミクロン未満の平均粒径をもち、より好ましくは700nm未満、特に500nm未満、さらに200nm未満の平均粒径をもつ。好ましくは沈殿した有機化合物は、単峰型(ユニモーダル)粒径分布をもつ。
【0085】
所望により、本発明の方法は、たとえばスプレードライヤーを使用して、沈殿した有機化合物を乾燥する工程も含むことができる。好ましくは、沈殿した有機化合物の乾燥は、工程(c)を実施する10分間の間に開始し、5分以内がより好ましく、2分以内が特に好ましく、工程(c)を実施する1分間の間に開始することが特に好ましい。このようにして、粒径の成長を全体で減少させ又は防止する。
【0086】
本発明の方法は、任意のスケールで実施することができ、工程(a)〜(d)は連続法で実施することができる。このようにして大量の所望の粒状有機化合物を、工業スケールなどで製造することができる。本方法には注意深く整列させなければならないジェットを配置する必要はない。条件を調整して、容易に単離且つ再分散し得る小粒子を得ることができる。
【0087】
本方法は粒状の医薬活性物質を製造するのに特に有用であり、農薬、着色料、化粧品などの他の有機化合物の粒子を得るのにも使用することができる。
好ましくは、沈殿した有機化合物は粒状であり、500nm未満、より好ましくは400nm未満、特に300nm未満、さらに200nm未満のD50をもつ。D50は、たとえばMalvern Mastersizer 2000粒径アナライザーを使用して、ISO 13320-1に従った方法を使用してレーザー回折により当業界で公知の方法により測定することができる。
【0088】
別の側面では、本発明は、本発明の方法を実施することを含む薬剤の製造方法であって、有機化合物が医薬的活性成分である、前記方法も提供する。
好ましくは、この方法はさらに、本方法の生成物と、医薬的に許容可能なキャリヤまたは賦形剤とを混合して薬剤を与える工程を含む。
【0089】
キャリヤまたは賦形剤の性質は、それが医薬的に許容可能であれば、重要ではない。そのようなキャリヤ及び賦形剤の例としては、医薬業界で通常使用される希釈剤、添加剤、充填剤、滑剤及びバインダーが挙げられる。
【0090】
好ましい側面では、薬剤は錠剤、トローチ、粉末、シロップ、パッチ、リポソーム、注射用分散液、懸濁液、カプセル、クリーム、軟膏またはエーロゾルの形態である。
かくして、経口用途で使用するための薬剤は、本願において請求された方法の生成物(本願において請求された生成物は、以後、単に「活性成分」と省略されることが多い)に加えて、一種以上の着色剤、甘味料、フレーバー剤及び/または防腐剤などを含むことができる。
【0091】
錠剤またはトローチ製剤用の好適な医薬的に許容可能なキャリヤ及び賦形剤としては、たとえば不活性希釈剤、たとえばラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム若しくは炭酸カルシウム、造粒剤及び崩壊剤、たとえばコーンスターチ若しくはアルギン酸(algenic acid);結合剤、たとえばスターチ;滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸若しくはタルク;防腐剤、たとえばエチル若しくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエート、及び酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸が挙げられる。錠剤製剤は、胃腸管内でその崩壊性を変性させ、活性成分を続いて吸収させるため、またはその安定性及び/または外観を改良するために、いずれの場合も当業界で公知の慣用のコーティング剤及び手順を使用してコーティングしてもコーティングしなくてもよい。
【0092】
経口用途用の組成物はハードゼラチンカプセルの形状であってもよく、この場合、活性成分は炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンなどの不活性固体希釈剤と混合し、またソフトゼラチンカプセルの形状であってもよく、この場合、活性成分はピーナッツ油、液体パラフィン若しくはオリーブ油などの油若しくは水と混合する。
【0093】
水性懸濁液は通常、一種以上の懸濁剤、たとえばナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムなど;分散剤若しくは湿潤剤、たとえばレシチン若しくは、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(たとえばポリオキシエチレンステアレート)、若しくはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、若しくはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールから誘導した部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、若しくはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコール類との縮合生成物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、若しくはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトールとから誘導した部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、若しくはエチレンオキシドと、脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導した部分エステルとの縮合生成物、たとえばポリエチレンソルビタンモノオレエートと一緒に、溶解した又は粒状の活性成分を含む。水性懸濁液は、一種以上の防腐剤(たとえばエチル若しくはプロピルp-ヒドロキシベンゾエート)、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、着色剤、フレーバー剤及び/または甘味料(たとえばショ糖、サッカリン若しくはアスパルテーム)も含むことができる。
【0094】
油性懸濁液は、植物油(たとえば落花生油、オリーブ油、ごま油若しくはヤシ油)または鉱油(たとえば液体パラフィン)中に活性成分を懸濁させることによって配合することができる。油性懸濁液は、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールなどの増粘剤も含むことができる。上記のような甘味料、及びフレーバー剤も添加して、口当たりの良い経口製剤を提供することができる。これらの組成物は、アスコルビン酸などの酸化防止剤を添加して保存することができる。
【0095】
水を添加することによって水性懸濁液を製造するのに好適な分散可能な粉末及び粒子は通常、活性成分と、場合により一緒に分散若しくは湿潤剤、懸濁化剤と、一種以上の防腐剤を含む。好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤は、上記のものが挙げられる。追加の賦形剤、たとえば甘味料、フレーバー剤及び着色料も配合することができる。
【0096】
本発明の薬剤は、水中油型エマルションの形状であってもよい。油相は植物油、たとえばオリーブ油若しくは落花生油、または鉱油、たとえば液体パラフィン若しくはこれらの任意のものの混合物であってもよい。好適な乳化剤は、たとえば天然ゴム、たとえばアカシアゴム若しくはトラガカントゴム、天然リン脂質、たとえば大豆、レシチン、脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導したエステル若しくは部分エステル(たとえばソルビタンモノオレエート)、及び前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、たとえばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどであってもよい。エマルションは甘味料、フレーバー剤及び防腐剤も含むことができる。
【0097】
シロップ及びエリキシルは、甘味料、たとえばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテームまたはショ糖と一緒に配合することができ、鎮痛薬、防腐剤、フレーバー剤、及び/または着色料も含むことができる。
【0098】
薬剤は、滅菌の注射可能な水性または油性懸濁液の形状であってもよく、これは上記の好適な分散剤または湿潤剤と懸濁化剤の一種以上を使用して、公知手順に従って配合することができる。滅菌の注射可能な製剤は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤若しくは溶媒中の滅菌の注射可能な溶液または懸濁液、たとえば1,3-ブタンジオール中の溶液であってもよい。
【0099】
坐薬製剤は、通常の温度では固体であるが、直腸温度では液体なので、腸内で溶解して薬剤を放出する、好適な非刺激性賦形剤と活性成分とを混合することによって製造することができる。好適な賦形剤としては、たとえばココアバター及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0100】
局所製剤、たとえばクリーム、軟膏、ゲル及び水性または油性溶液または懸濁液は通常、活性成分と慣用の、局所許容可能なビヒクルまたは希釈剤を当業界で公知の慣用手順を使用して配合することによって得ることができる。
【0101】
吸入によって投与するための薬剤は、本願で請求した方法によって製造した粒子の形状であってもよく、粉末それ自体は活性成分を単独で含むか、または乳糖などの一種以上の生理学的に許容可能なキャリヤで希釈する。吸入用の粉末は、公知の薬剤ナトリウムクロモグリケートの吸入に使用されるような、ターボ吸入デバイスで使用するための活性成分1〜50mgを含むカプセル中に保持されるのが好都合である。
【0102】
吸入により投与するための薬剤は、微粉砕固体を含むエーロゾルまたは液滴として活性成分を分散させるために準備された慣用の加圧エーロゾルの形状であってもよい。揮発性フッ化炭化水素または炭化水素などの慣用のエーロゾル噴射剤を使用することができ、エーロゾルデバイスは活性成分の計量分を分配するように準備されているのが好都合である。
【0103】
製剤に関する詳細な情報に関しては、Comprehensive Medicinal Chemistryの第5巻、25.2章(Corwin Hansch;Chairman of Editorial Board)、Pergamon Press 1990年を参照されたい。
【0104】
必要に応じて本方法はさらに、沈殿した医薬的に活性な有機化合物の滅菌段階も含むことができる。滅菌の目的は、特に患者の免疫系が傷ついていた場合に、患者に害を与えるかもしれない全ての不都合な細菌を殺すためである。典型的な滅菌法としては、照射殺菌、加熱及び殺生物剤による処置が挙げられる。
【0105】
本発明の上記のさらなる側面で言及される医薬的に活性化合物は、本明細書で先に記載した医薬的に活性な有機化合物のいずれであってもよく、特にパクリタキセルまたはシクロスポリン(たとえばシクロスポリンA)である。
【0106】
また、本発明は、本発明の方法によって得られる薬剤を提供する。
また、本発明は、本発明の方法によって得られる薬剤の投与を含む、ヒトまたは動物の処置法を提供する。また本発明は、癌の処置のための薬剤の製造のための、本発明の方法により得られた医薬的に活性な有機化合物の使用を提供する。
【0107】
本発明を以下の非限定的な実施例により説明する。ここで特に断りのない限り、全ての部及び割合は重量である。
全ての実施例において使用した化学薬品は、以下の通りである。
【0108】
以下の化学薬品は、Sigma-Aldrich Co.,Zwijndrecht,オランダから入手した;
パクリタキセル:セイヨウイチイ(taxus brevifolia),95%(HPLC);
プレグネノロン、98%;
フェノフィブラート、99%粉末;
シクロスポリンA、BioChemika、98.5%(TLC);
テトラヒドロフラン(THF)バイオテクノロジー等級99.9%、阻害剤含まず;
クエン酸、USP等級;
D-マンニトール、USP等級;
MPEG-PLAブロックコポリマー。
【0109】
無水エタノール100%DAB、PH.EURは、Boom B.V.、Meppel、オランダから入手した;
魚ゼラチン150kDaはNorland Products Inc.、Cranbury、アメリカから入手した;
加水分解魚ゼラチン4.2kDaはNitta Gelatin Inc.、日本から入手した;
使用した水は、脱塩及び現場(on-situ)濾過法にて精製した。
【実施例】
【0110】
実施例
実施例1
本実施例では、有機化合物、フェノフィブラートは、両親媒性ブロックコポリマーを使用して、米国特許第5,985,535号に記載の一般的なタイプのデバイスで沈殿させた。
【0111】
(A)溶液(I)の製造
フェノフィブラート(20g/l)とポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリラクチドメチルエーテル(PEG Mn750、PLA Mn1000、(4.4g/l);Sigma Aldrichより市販)を含むエタノール性溶液を製造した。溶液の温度は293Kに調節した。
【0112】
(B)沈殿剤(II)の製造
水と非-加水分解非ゲル化魚ゼラチン、平均分子量150kDa(4g/l)とからなる貧溶媒を含む沈殿剤を製造した。この貧溶媒の温度は293Kに調節した。
【0113】
(C)方法
溶液(I)と沈殿剤(II)は、1.5cm3の内部容積、二つの離れた入口、機械的攪拌手段として一対の磁気的に駆動される攪拌翼と一つの出口とを備えた円筒状チャンバをもつ、米国特許第5,985,535号の図1に示された一般的なタイプのデバイスの混合チャンバに同時に供給した。溶液(I)の供給速度は10cm3/分であり、沈殿剤(II)の供給速度は110cm3/分であった。攪拌翼はチャンバ径の83%の径を有し、反対方向に6,000RPMで操作した。溶媒溶液と沈殿剤を導入した直後に、濁りが観察された。
【0114】
生成物100cm3とするまでの総バッチ添加時間は50秒であった。得られた粒子を、出口を通してチャンバから排出し、集めた。
得られた粒子の粒径分布を、Malvern Mastersizer 2000を使用して測定した。粒子は単峰型粒径分布を有し、平均粒径はナノメートル範囲であった。粒子のD50は111nmであった。粒子のD90は206nmであった。
【0115】
実施例2
(A)溶液(I)の製造
テトラヒドロフランとパクリタキセル(10g/l)とポリ(エチレングリコール)-ブロック-メチルエーテルブロック-ポリラクチド(PEG平均Mn5000、PLA平均Mn5000)(10g/l)を含む溶液を20℃で製造した。
【0116】
(B)沈殿剤(II)の製造
沈殿剤(II)は、0℃の純水であった。
(C)方法
溶液(I)と沈殿剤(II)は、1.5cm3の内部容積、二つの離れた入口、機械的攪拌手段として一対の磁気的に駆動される攪拌翼と一つの出口とを備えた円筒状チャンバをもつ、米国特許第5,985,535号の図1に示された一般的なタイプのデバイスの混合チャンバに同時に供給した。溶液(I)の供給速度は15cm3/分であり、沈殿剤(II)の供給速度は105cm3/分であった。溶媒溶液対沈殿剤(II)の比は20:100であった。攪拌翼はチャンバ径の83%の径を有し、反対方向に6,000RPMで操作した。
【0117】
得られた初期粒径(D50)は約260nmであった。
実施例3
(A)溶液(I)の製造
テトラヒドロフランとパクリタキセル(10g/l)とポリ(エチレングリコール)-ブロック-メチルエーテルブロック-ポリラクチド(PEG平均Mn350、PLA平均Mn1000)(10g/l)を含む溶液を20℃で製造した。
【0118】
(B)沈殿剤(II)の製造
沈殿剤(II)は、0℃の純水であった。
(C)方法
溶液(I)と沈殿剤(II)は、1.5cm3の内部容積、二つの離れた入口、機械的攪拌手段として一対の磁気的に駆動される攪拌翼と一つの出口とを備えた円筒状チャンバをもつ、米国特許第5,985,535号の図1に示された一般的なタイプのデバイスの混合チャンバに同時に供給した。溶液(I)の供給速度は15cm3/分であり、沈殿剤(II)の供給速度は105cm3/分であった。溶液(I)対沈殿剤(II)の比は15:105であった。攪拌翼はチャンバ径の83%の径を有し、反対方向に6,000RPMで操作した。
【0119】
得られた初期粒径(D50)は約123nmであった。
実施例4
(A)溶液(I)の製造
テトラヒドロフランとパクリタキセル(10g/l)とポリ(エチレングリコール)-ブロック-メチルエーテルブロック-ポリラクチド(PEG平均Mn750、PLA平均Mn1000)(10g/l)を含む溶液を20℃で製造した。
【0120】
(B)沈殿剤(II)の製造
沈殿剤(II)は、0℃の純水であった。
(C)方法
溶液(I)と沈殿剤(II)は、1.5cm3の内部容積、二つの離れた入口、機械的攪拌手段として一対の磁気的に駆動される攪拌翼と一つの出口とを備えた円筒状チャンバをもつ、米国特許第5,985,535号の図1に示された一般的なタイプのデバイスの混合チャンバに同時に供給した。溶液(I)の供給速度は15cm3/分であり、沈殿剤(II)の供給速度は105cm3/分であった。溶媒溶液対沈殿剤(II)の比は15:105であった。攪拌翼はチャンバ径の83%の径を有し、反対方向に6,000RPMで操作した。
【0121】
得られた初期粒径(D50)は115nm未満であった。
実施例5
(A)溶液(I)の製造
テトラヒドロフランとシクロスポリンA(10g/l)とポリ(エチレングリコール)-ブロック-メチルエーテルブロック-ポリラクチド(PEG平均Mn750、PLA平均Mn1000)(10g/l)を含む溶液を20℃で製造した。
【0122】
(B)沈殿剤(II)の製造
沈殿剤(II)は、0℃の純水中クエン酸1重量%溶液であった。
(C)方法
溶液(I)と沈殿剤(II)は、1.5cm3の内部容積、二つの離れた入口、機械的攪拌手段として一対の磁気的に駆動される攪拌翼と一つの出口とを備えた円筒状チャンバをもつ、米国特許第5,985,535号の図1に示された一般的なタイプのデバイスの混合チャンバに同時に供給した。溶液(I)の供給速度は15cm3/分であり、沈殿剤(II)の供給速度は105cm3/分であった。溶液(I)対沈殿剤(II)の比は15:105であった。攪拌翼はチャンバ径の83%の径を有し、反対方向に6,000RPMで操作した。
【0123】
得られた初期粒径(D50)は約132nmであった。
実施例6−両親媒性ブロックコポリマーではない両親媒性ポリマー
本実施例では、有機化合物であるプレグネノロンを、ブロックコポリマーではない両親媒性コポリマーを使用して、米国特許第5,985,535号に記載の一般的なタイプのデバイスで沈殿させた。
【0124】
溶液(I)の代わりに、50℃でエタノール中のプレグネノロン(34g/l)を使用し、又、沈殿剤が加水分解非ゲル化(non-gelling)魚ゼラチン、分子量4.2kDaを含む水であった以外には、実施例1の方法を繰り返した。生成物100cm3とするまでの総バッチ添加時間は50秒であった。得られた粒子を、出口を通してチャンバから排出し、集めた。
【0125】
得られた粒子の粒径分布を、Malvern Mastersizer 2000を使用して測定した。粒子は二峰型粒径分布を有していた。粒子のD50は1.36μmであった。粒子のD90は4.58μmであった。
【0126】
実施例7
(A)溶液(I)の製造
テトラヒドロフランとパクリタキセルA(10g/l)とポリ(エチレングリコール)-ブロック-メチルエーテルブロック-ポリラクチド(PEG平均Mn750、PLA平均Mn1000)(10g/l)を含む溶液を20℃で製造した。
【0127】
(B)沈殿剤(II)の製造
沈殿剤(II)は、クエン酸(1重量%)とマンニトール(5重量%)とを含む0℃の純水であった。
【0128】
(C)方法
溶液(I)と沈殿剤(II)は、1.5cm3の内部容積、二つの離れた入口、機械的攪拌手段として一対の磁気的に駆動される攪拌翼と一つの出口とを備えた円筒状チャンバをもつ、米国特許第5,985,535号の図1に示された一般的なタイプのデバイスの混合チャンバに同時に供給した。溶液(I)の供給速度は15cm3/分であり、沈殿剤(II)の供給速度は105cm3/分であった。溶液(I)対沈殿剤(II)の比は15:105であった。攪拌翼はチャンバ径の83%の径を有し、反対方向に6,000RPMで操作した。
【0129】
Mastersizerにより得られたD50は約118nmであった。
比較例1−連続攪拌タンク−両親媒性ポリマーなし−同時添加なし
エタノール中のプレグネノロンの溶液(34g/l)を、沈殿剤として純水(1500cm3)を含むタンクに、攪拌しながら45秒で添加した。添加速度は1000cm3/分であった。攪拌機の回転速度は750rpmであった。添加開始直後に濁りが観察された。
【0130】
プレグネノロンは沈殿し、その粒径をMalvern Mastersizer 2000で分析した。粒子は、広い粒径分布を有していることが判明し、10μm以上の端長(edge length)をもつ粒子も多かった。粒子のD50は14.59μmであった。粒子のD90は36.22μmであった。
【0131】
比較例2−チャンバ−両親媒性ポリマーなし
溶液(I)の代わりに、エタノール中のプレグネノロンの溶液(34g/l)を使用し、沈殿剤として水を使用した以外には、実施例1の方法を繰り返した。溶媒溶液と沈殿剤を275Kでチャンバに供給した。生成物100cm3とするまでの総バッチ添加時間は50秒であった。得られた粒子を、出口を通してチャンバから排出し、集めた。
【0132】
得られた粒子の粒径分布を、Malvern Mastersizer 2000を使用して測定した。粒子は比較例1よりも狭い粒径分布を有しており、平均粒径はナノメートル範囲であった。粒子のD50は9.17μmであった。粒子のD90は18.72μmであった。
【0133】
【表1】

【0134】
【表2】

【符号の説明】
【0135】
1,1a、1b:機械的攪拌手段
2,2a、2b:軸またはシャフト
3:混合チャンバ
4:溶液(I)を供給するための第一の入口
5:沈殿剤(II)を供給するための第二の入口
6:出口
7:混合チャンバ壁
8:シール板
9a、9b:外部マグネット
10a、10b:モーター
11:移動可能なチャンバ部品
12:ヒンジ
13:分離壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物の沈殿方法であって、
(a)溶媒中の前記有機化合物の溶液(I)を第一の入口から混合チャンバに導入する工程、
(b)段階(a)と同時に、第二の入口から沈殿剤(II)を混合チャンバに導入する工程、
(c)前記有機化合物の溶液(I)と前記沈殿剤(II)とを混合し、それによって有機化合物の沈殿と液相とを形成する工程、及び
(d)前記有機化合物の沈殿と前記液相を、一つ以上の出口を通じて混合チャンバから排出する工程
を含み、工程(c)は、両親媒性ポリマーの存在下で機械的攪拌手段を使用して実施する、前記沈殿方法。
【請求項2】
前記両親媒性ポリマーが両親媒性ブロックコポリマーである、請求項1に記載の沈殿方法。
【請求項3】
前記攪拌手段が、前記混合チャンバの最小径の少なくとも70%の直径をもつ攪拌翼を含む、請求項1または2に記載の沈殿方法。
【請求項4】
前記攪拌手段が、前記混合チャンバの最小径の80〜99%の直径をもつ攪拌翼を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項5】
前記攪拌手段が1,000rpm以上の回転速度である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項6】
前記混合チャンバ内の有機化合物の滞留時間が0.1ミリ秒より長い、請求項1〜5のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項7】
前記混合チャンバ内の有機化合物の滞留時間が5秒より短い、請求項1〜6のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項8】
工程(c)の混合は、反対方向に回転している攪拌機によって実施する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項9】
前記の一つ以上の出口は入口を通る溶液(I)と沈殿剤(II)の流れに対してほぼ直角である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項10】
工程(a)〜(d)を連続方式で実施する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項11】
前記両親媒性ポリマーが、一種以上のPEG及び/またはPEGエーテルブロックと一つ以上の比較的疎水性のブロックとを含む両親媒性ブロックコポリマーである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項12】
前記両親媒性ポリマーが、両親媒性ジブロックコポリマーまたはトリブロックコポリマーである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項13】
前記両親媒性コポリマーが、PEG Mn250〜5000のブロック及び/またはPEG Mn250〜5000(C1-4-アルキル)エーテルブロックを含む両親媒性ブロックコポリマーである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項14】
前記溶液(I)及び沈殿剤(II)とが混和性である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項15】
工程(c)での混合は、反対方向に回転している複数の機械的攪拌手段によって実施する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項16】
前記溶媒が有機溶媒を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項17】
前記溶液(I)と前記沈殿剤(II)の少なくとも一方が両親媒性ブロックポリマーを含み、且つ他方がゼラチンを含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項18】
前記チャンバが閉鎖型混合チャンバである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の沈殿方法であって、
(e)前記両親媒性ポリマーが一種以上のPEG及び/またはPEGエーテルブロック並びに一種以上のPLAブロックとを含み、
(f)前記混合は、反対方向に回転している複数の機械的攪拌手段により実施され、
(g)前記溶媒は有機溶媒を含み、
(h)前記溶液(I)及びまたは沈殿剤(II)は前記両親媒性ブロックポリマーを含み、
(i)前記混合チャンバ内の前記有機化合物の滞留時間は、0.1ミリ秒より長く且つ5秒より短く、及び
(j)前記溶液(I)と前記沈殿剤(II)とは混和性である
ことを特徴とする前記沈殿方法。
【請求項20】
前記混合は、前記混合チャンバの最小径の80%〜99%の直径をもつ攪拌翼を含む機械的攪拌手段を使用して実施する、請求項19に記載の沈殿方法。
【請求項21】
前記機械的攪拌手段は、1,000rpm以上の回転速度である、請求項19または20に記載の沈殿方法。
【請求項22】
前記沈殿有機化合物は粒子形状であり、且つ500nm未満のD50をもつ、請求項1〜21のいずれか1項に記載の沈殿方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の沈殿方法により得られる粒子形状の有機化合物。
【請求項24】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の沈殿方法を実施することを含む薬剤の製造方法であって、前記有機化合物が医薬的に活性な有機化合物であることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項25】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の沈殿方法を実施すること、及び、該沈殿方法の生成物と医薬的に許容可能なキャリヤ又は賦形剤とを混合して薬剤を得ることを含む薬剤の製造方法であって、前記有機化合物が医薬的に活性な化合物であることを特徴とする前記製造方法。
【請求項26】
前記薬剤が錠剤、トローチ、粉末、シロップ、パッチ、リポソーム、分散液、懸濁液、カプセル、クリーム、軟膏またはエーロゾルの形状である、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記有機化合物がパクリタキセル又はシクロスポリンである、請求項1〜23または24〜26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項28】
請求項24〜27のいずれか1項に記載の製造方法により得られる薬剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−503721(P2010−503721A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528774(P2009−528774)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002786
【国際公開番号】WO2008/035028
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(509077761)フジフィルム・マニュファクチュアリング・ヨーロッパ・ベスローテン・フエンノートシャップ (25)
【Fターム(参考)】