説明

微粒子を形成する方法およびこの微粒子を利用した生体物質の検査法

【課題】効果的な修飾微粒子の形成方法の提供。
【解決手段】微粒子を単層固定させる基板表面に金を所定の厚さで蒸着する。一方、1-ethyl-3(3-dimethylaminopropyl)carbodiimidehydrochloride(通称EDC)、NaCl、あるいは、KCl等の微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を利用した粒子固定液を作製し、これに微粒子を混合した粒子懸濁液として上記基板上に塗布することにより、金を所定の厚さで蒸着された基板表面に微粒子を単層固定させる。また、単層固定された微粒子表面に遷移金属、金属または半導体を蒸着させて修飾微粒子を形成する。基板から修飾微粒子剥離させるには、超音波洗浄装置等を利用して、基板に超音波を作用させて、剥離を促進する。修飾微粒子を生体機能分子によって修飾して生体物質の検査のための標識として利用する場合、修飾微粒子からの反射電子を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属,半導体などの微粒子を形成する方法およびこの微粒子を利用した生体物質の検査法に関する。
【背景技術】
【0002】
生命現象の理解や遺伝子の働きを調べるには遺伝子の発現状況を調べることが有効である。このため、微粒子を生体標識として利用することが行われる。本願の発明者らは、例えば、特開平11−001703「超微粒子の調製方法」において、生体標識として利用することができる微粒子の作成方法を提案した。また、特開2006−153826「生体試料標識物および生体物質標識法および生体物質の検査法」において、微粒子を生体標識として利用した生体物質の検査法を提案した。
【特許文献1】特開平11−001703
【特許文献2】特開2006−153826
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特開平11−001703には、平坦な基板上にポリスチレン球を一層に分散し、金属または半導体を蒸着することにより、蒸発源から直進した金属または半導体原子をポリスチレン球の蒸着源側のみに吸着させた微粒子の形成方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、平坦な基板上にポリスチレン球等の微粒子を一層に高密度に分散させる方法、また、金属または半導体原子をポリスチレン球等の微粒子の蒸着源側のみに吸着させた修飾微粒子を基板から剥離させて、個々の独立した修飾微粒子とする方法等の具体的な開示がない。
【0005】
したがって、これらの方法を含めて、より具体的で、効果的な修飾微粒子の形成方法の開示が望まれる。
【0006】
さらには、修飾微粒子を生体標識として利用した生体物質の検査法の改良が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記状況を鑑み、以下の遷移金属、金属または半導体で修飾された微粒子の製作方法および生体物質の検査法を提供する。
【0008】
(1)一面に金の薄膜を形成された基板、シリコン基板、または、ガラス基板を準備する工程、
所定の直径のポリスチレン製微粒子、SiO2製微粒子、または、TiO2製微粒子、適量の純水、および、前記微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を混合して、前記基板上で前記微粒子が高密度に分布できる濃度となるように懸濁した微粒子懸濁液を準備する工程、
前記微粒子懸濁液を前記基板の上に滴下して前記基板上に前記微粒子を高密度に分布させる工程、
基板上に吸着していない過剰量の微粒子を洗浄除去し、基板上に分布された微粒子を乾燥させる工程、
前記基板上に分布された前記微粒子に遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着させる工程、
前記遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着された前記微粒子に、蒸着または昇華によりSiO2を1層形成させる工程、
前記基板上に固定され、前記蒸着を済ませた前記微粒子上に、微量の純水、または、該純水にタンパク質として牛血清アルブミン(bovine serum albumin (BSA))、緩衝液としてクエン酸バッファー(standard sodium citrate (SSC))もしくはリン酸塩バッファー(phosphate buffer)、および界面活性剤として硫酸ドデシルナトリウム(sodium dodecyl sulfate (SDS))もしくはタンニン酸(tannic acid)を加えた微量の液体を滴下する工程、ならびに
前記基板の他面に超音波を作用させながら、前記微粒子が固定された前記一面側に平坦な底面を有する素材を該底面に若干加重が加わる様に載置して、該素材を任意の方向に移動させることにより前記微粒子を前記基板から剥離させる工程、
を含む、遷移金属、金属または半導体で修飾された微粒子の製作方法。
(2)前記微粒子間の静電反発力を抑制するための材料が1-ethyl-3(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride、NaCl、または、KClである上記(1)記載の微粒子の製作方法。
(3)前記遷移金属、金属または半導体が、周期律表で原子番号43番を除く79番までの遷移金属、原子番号13,31,32,33,49,50,51,81,82,もしくは83番の金属、または原子番号14,34,もしくは52番の半導体のいずれかである上記(1)記載の微粒子の製作方法。
(4)前記微粒子を基板から剥離させる工程によって得られた微粒子懸濁液に0.01%から10%以下の3-aminopropyl trimethoxy silane、3-aminopropyl triethoxy silane、または、3-aminopropyl diethoxy methyl silaneのシランカップリング剤を加えることにより、前記微粒子表面にアミノ基を導入する上記(1)記載の微粒子の製作方法。
(5)前記微粒子を基板から剥離させる工程によって得られた微粒子懸濁液に0.01%から10%以下の3-mercaptopropyl trimethoxy silaneのシランカップリング剤を加えることにより、前記微粒子表面にチオール基を導入する上記(1)記載の微粒子の製作方法。
(6)一面に金の薄膜を形成された基板、シリコン基板、または、ガラス基板を準備する工程、
所定の直径のポリスチレン製微粒子、SiO2製微粒子、または、TiO2製微粒子、適量の純水、および、前記微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を混合して、前記基板上で前記微粒子が高密度に分布できる濃度となるように懸濁した微粒子懸濁液を準備する工程、
前記微粒子懸濁液を前記基板の上に滴下して前記基板上に前記微粒子を高密度に分布させる工程、
前記基板上に分布された前記微粒子に遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着させる工程、
前記遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着された前記微粒子を有する前記基板の周辺に3-aminoprophyl trimethoxy silane、3-aminoprophyl triethoxy silane、または、3-aminoprophyl diethoxy methyl silaneのシランカップリング剤の液滴を滴下し、窒素またはアルゴン雰囲気容器内に密封し、気相中でシランカップリング剤分子を前記微粒子表面に吸着させることにより前記微粒子の表面にアミノ基を導入する工程、
前記基板上に単層固定され、蒸着を済ませた前記微粒子上に微量の純水を滴下した後、前記基板の他面に超音波を作用させながら、前記単層固定された前記微粒子の上の面に平坦な底面を有する素材を該底面に加重がかかる様に載置して任意の方向に移動させることにより前記微粒子を基板から剥離させる工程、
を含む、遷移金属、金属または半導体で修飾された微粒子の製作方法。
(7)前記3-aminoprophyl trimethoxy silane、3-aminoprophyl triethoxy silane、または、3-aminoprophyl diethoxy methyl silaneのシランカップリング剤に代えて3-mercaptopropyl trimethoxy silaneのシランカップリング剤の液滴を滴下し、窒素またはアルゴン雰囲気容器内に密封し、気相中でシランカップリング剤分子を微粒子表面に吸着させることにより前記微粒子表面にチオール基を導入する上記(6)記載の微粒子の製作方法。
(8)前記微粒子の表面にアミノ基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のアミノ基とチオール基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にチオール基を導入したDNAもしくはRNA、チオール基を有する抗体等のタンパク質を反応させて前記微粒子表面に生体機能分子を固定化する上記(1)記載の微粒子の製作方法。
(9)前記微粒子の表面にチオール基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のチオール基とアミノ基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にアミノ基を導入したDNAもしくはRNA、アミノ基を有する抗体等のタンパク質を反応させて微粒子表面に生体機能分子を固定化する上記(1)記載の微粒子の製作方法。
(10)前記2架性架橋剤が先に生体機能分子と反応させた後に前記微粒子と反応させられる上記(8)または(9)記載の微粒子の製作方法。
(11)前記微粒子の表面にアミノ基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のアミノ基とチオール基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にチオール基を導入したDNAもしくはRNA、チオール基を有する抗体等のタンパク質を反応させて前記微粒子表面に生体機能分子を固定化する上記(6)記載の微粒子の製作方法。
(12)前記微粒子の表面にチオール基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のチオール基とアミノ基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にアミノ基を導入したDNAもしくはRNA、アミノ基を有する抗体等のタンパク質を反応させて微粒子表面に生体機能分子を固定化する上記(7)記載の微粒子の製作方法。
(13)前記2架性架橋剤が先に生体機能分子と反応させた後に前記微粒子と反応させられる上記(11)または(12)記載の微粒子の製作方法。
(14)所定の直径のポリスチレン製微粒子、SiO2製微粒子、または、TiO2製微粒子の表面が遷移金属、金属または半導体で修飾される微粒子を利用するとともに、観察対象のチップ表面のプローブ固定領域に固着されている多数のプローブにDNA、mRNA、またはタンパク質を含む標的分子が結合し、該標的分子を前記微粒子表面の生体機能分子を介して標識している前記微粒子、および、前記観察対象のチップのプローブ固定領域の表面とは分離された位置に設けられた比較用の前記微粒子とを、同時に電子線で走査して得られる前記微粒子の電子線走査による反射電子線画像を得ること、
前記標識している前記微粒子の反射電子線画像の明るさから、前記微粒子表面を修飾している素材を決定して前記DNA、mRNA、またはタンパク質を含む標的分子を特定することを特徴とする生体物質の検査法。
(15)前記比較用の前記微粒子の反射電子線画像と前記標識している前記微粒子の反射電子線画像との対比によって前記微粒子表面を修飾している素材を決定して前記DNA、mRNA、またはタンパク質を含む標的分子を特定する上記(14)記載の生体物質の検査法。
(16)前記電子線で走査して得られる前記微粒子の電子線走査による反射電子線画像に加えて、電子線で走査して得られる2次電子から2次電子線画像を得て、反射電子線画像の前記微粒子の位置を特定する上記(14)記載の生体物質の検査法。
(17)前記電子線で走査して得られる前記微粒子の電子線走査による反射電子線画像、電子線で走査して得られる2次電子から2次電子線画像に加えて、電子線で走査して得られる前記微粒子の表面を修飾している素材の元素スペクトル像を得て、前記微粒子の組成元素を特定する上記(14)記載の生体物質の検査法。
(18)前記電子線で走査して得られる前記微粒子の表面を修飾している素材の元素スペクトル像に代えて、前記微粒子の表面を修飾している素材の元素マッピング像を得て、前記微粒子の組成元素を特定する上記(14)記載の生体物質の検査法。
【0009】
本発明では、微粒子を単層固定させる基板表面に金を所定の厚さで蒸着する。あるいは、微粒子を単層固定させる基板として、シリコン基板、または、ガラス基板を使用する。一方、1-ethyl-3(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride(通称EDC)、NaCl、あるいは、KCl等の微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を利用した粒子固定液を作製し、これに微粒子を混合した粒子懸濁液として前記基板上に塗布することにより、前記基板表面に微粒子を単層固定させる。
【0010】
また、修飾微粒子を前記基板から剥離させるには、超音波洗浄装置等を利用して、前記基板の背面に超音波を作用させて、剥離を促進する。
【0011】
さらには、修飾微粒子を生体機能分子によって修飾して生体物質の検査のための標識として利用する場合、生体物質の検査法の改良として、修飾微粒子からの反射電子を利用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、各種の金属修飾微粒子、あるいは、半導体修飾微粒子を容易に形成することが出来る。また、これらの修飾微粒子を生体機能分子により修飾して生体物質をより効果的に識別して検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)−(e)は本発明の修飾微粒子作成過程の最初の過程の基板上に微粒子を単層固定させる過程を説明する概念図である。本発明では基板としては、プラスチック基板、シリコン基板、または、スライドガラス等のガラス基板を使用することが出来るが、ここでは、安価で、簡便に入手できる35mmプラスチック製ペトリディッシュを利用するものとして説明する。また、基礎となる微粒子はポリスチレン製微粒子、もしくは磁性体を内包したポリスチレン製微粒子とする。これらの微粒子の大きさは、使用目的に応じて任意に選択すればよいが、例えば、直径10nm〜150μmのものから適当な直径のものを選択して使用すればよい。
【0014】
図1(a)は35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面に金2を、例えば、10nmから30nmの厚さで蒸着した状態を示す平面図である。金2の薄膜を設けることによりペトリディッシュ1の底面へのポリスチレン製微粒子の固定を安定なものとすることが出来る。ガラス基板を使用する場合は、そのまま利用することも出来るが、まず、クロム層を20nmの厚さで蒸着した後に金2の薄膜を80nmの厚さで蒸着して使用するのが良い。これらの場合、金2の薄膜、クロム層の厚さはこの値に限定されるものではない。
【0015】
図1(b)は、蓋付容器5に、所定の直径のポリスチレン製微粒子3、適量の純水、さらに1-ethyl-3(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride(通称EDC)、NaCl、あるいは、KCl等の微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を、基板上で微粒子が高密度に分布できる濃度となるように、ポリスチレン製微粒子3が凝集する寸前の濃度まで加えてピペッティング操作によりよく混合して、固定用微粒子を懸濁した微粒子懸濁液4を作製した状態を模式的に示す図である。微粒子懸濁液4の混合比率の典型的な例は、市販の1%濃度の未希釈微粒子懸濁液を使用した場合、容積比で、1%微粒子懸濁液:純水:10mM EDC=5:4:6である。微粒子懸濁液の混合比率は、室温等の諸条件に敏感であるため、その作成の都度、試行錯誤的に適当な混合比率を探すのがよい。基板上で微粒子が高密度で分布できる濃度とするには、微粒子の濃度は0.01%以上とすることが好ましい。
【0016】
図1(c)、(d)は、底面に金2を10nmから30nmの厚さで蒸着した35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の金2の層の上に微粒子懸濁液4を滴下して微粒子3を分布させた状態を示す平面図、斜視図である。ここでは、微粒子3が均一に分布した状態で示したが、実際は、適当にばらついた状態となるのは言うまでもない。
【0017】
図1(e)は、図1(c)のA−A位置で矢印方向に見た断面図である。
【0018】
図1(c)−(e)に示す底面に金2を10nmから30nmの厚さで蒸着した35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の金2の層の上に微粒子懸濁液4を滴下して微粒子3を分布させる具体的な手順の例は以下の様である。
【0019】
35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の金2の層の上に微粒子懸濁液4を滴下し、室温下で適当な時間、例えば、3分間反応させる。この時間は3分間もあれば十分であり、これ以上長くする必要はない。その後、純水にて微粒子懸濁液4を洗い流すとともに35mmプラスチック製ペトリディッシュ1を洗浄し、よく乾燥させる。これにより、金2の層の上に微粒子3が単層固定された微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1を得る。ひとつの35mmプラスチック製ペトリディッシュ上にはひとつのサイズの微粒子を固定化するものとし、異なった複数の微粒子径を固定する場合は複数の35mmプラスチック製ペトリディッシュを予め作製しておき、微粒子径が異なる微粒子をそれぞれの35mmプラスチック製ペトリディッシュに固定するのが良い。
【0020】
本発明では、作成する微粒子のサイズには制約はない。例えば、直径10nmから150nmの微粒子を直径が5nm刻みで準備するものとすれば、28段階の直径を異にする微粒子を作成でき、後述する金属あるいは半導体による修飾について、同じ素材に対して異なる粒径の標識として使用できる。
【0021】
図2(a)は抵抗加熱式蒸着装置によって、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾する方法を説明する概念図、図2(b)は蒸着源容器61の特異な構造の例を模式的に示す断面図である。
【0022】
図2(a)に示すように、まず、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3が蒸着源6を向くように抵抗加熱式蒸着装置のチャンバー内にセットする。チャンバーの真空度は、たとえば、5×10-6パスカル、チャンバー内の温度は室温である。微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1と蒸着源6との間にはシャッター7が設けられる。蒸着源6は蒸着源容器61と加熱用抵抗器62とから構成される。シャッター7は図の左脇に表示された矢印のように移動させることが出来、シャッター7が微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の全面を覆うときは微粒子3への蒸着が阻止され、シャッター7の移動により微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1が蒸着源6に曝されるときは微粒子3への蒸着が行われる。蒸着源容器61には微粒子3の表面に蒸着すべき金属、あるいは、半導体の元素が入れられる。加熱用抵抗器62は蒸着源容器61に入れられた元素を加熱し、蒸発させるための抵抗器である。
【0023】
図2(b)に、蒸着源容器61の特異な構造の例を模式的に示す。この例では、蒸着源容器61は2段構造とされ、中段部に仕切り板63が設けられている。仕切り板63の下段部にSiOを入れて加熱用抵抗器62で加熱すると、SiOが蒸発し、SiO蒸気となって仕切り板63の上段部を通って中央部からSiO蒸気がチャンバー内に流出する。SiO蒸気を微粒子3の表面に蒸着する場合は、他の金属元素の蒸気が蒸着源容器61から微粒子3に直進するのと異なり、蒸着源容器61から不規則に微粒子3の方向に進むので、蒸着の際にSiO蒸気が微粒子3の周辺全体に回り込む。このため、SiO2膜が微粒子3のほぼ全体を覆った修飾微粒子3が作製できる。
【0024】
本発明において蒸着源(修飾元素)として利用できる元素の例を列挙すると周期律表において以下のようである。
(1)原子番号43番を除く79番までの遷移金属、
(2)原子番号13,31,32,33,49,50,51,81,82,83番の金属、および
(3)原子番号14,34,52番の半導体
である。
【0025】
なお、微粒子を、磁性体を内包したポリスチレン製微粒子とするときは、内包される磁性体が、後述するエネルギー分散型特性X線検出器40−10から検出される元素スペクトル像にノイズを与えることとなる。よって、微粒子を、磁性体を内包したポリスチレン製微粒子とするときは、Fe、Co、Niは蒸着源(修飾元素)として利用しないのがよい。
【0026】
簡便に使いやすい元素としては、原子番号29番(Cu)、47番(Ag)、79番(Au)があげられる。
【0027】
図3(a)−(e)は微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により異なった厚さで修飾する方法と修飾結果を説明する概念図である。ここでは、図を見やすくするため、図2に示す微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1と蒸着源容器61の構成を上下逆転させて示す。
【0028】
図3(a)において、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子31−38の上に配置されたシャッター7は間歇的に図の左側方向に移動される。ここでは、二つの微粒子の列の幅に対応する距離だけ移動するものとした。シャッター7の上面からは、矢印8に示すように微粒子3の表面を修飾するための元素の蒸気が供給される。
【0029】
図3(b)は微粒子31,32の列に対応する位置でシャッター7が除かれて微粒子31−32が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この段階では、シャッター7が除かれて修飾元素の蒸気に曝されるのは微粒子31,32の列のみであるから、微粒子31,32の列の微粒子のみに修飾元素の層91が形成される。図3(c)はシャッター7がさらに左に移動され、微粒子31,32の列に加えて、微粒子33,34の列に対応する位置でもシャッター7が除かれて微粒子31−34が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この結果、微粒子31,32の列の微粒子は修飾元素の層91に加えて、修飾元素の層92が形成される。微粒子33,34の列の微粒子は修飾元素の層92が形成される。図3(d)はシャッター7がさらに左に移動され、微粒子31−34の列に加えて、微粒子35,36の列に対応する位置でもシャッター7が除かれて微粒子31−36が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この結果、微粒子31,32の列の微粒子は修飾元素の層91、92に加えて、修飾元素の層93が形成される。微粒子33,34の列の微粒子は修飾元素の層92に加えて、修飾元素の層93が形成される。微粒子35,36の列の微粒子は修飾元素の層93が形成される。図3(e)はシャッター7がさらに左に移動され、微粒子31−36の列に加えて、微粒子37,38の列に対応する位置でもシャッター7が除かれて微粒子31−38が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この結果、微粒子31,32の列の微粒子は修飾元素の層91、92、93に加えて、修飾元素の層94が形成される。微粒子33,34の列の微粒子は修飾元素の層92、93に加えて、修飾元素の層94が形成される。微粒子35,36の列の微粒子は修飾元素の層93に加えて、修飾元素の層94が形成される。微粒子37,38の列の微粒子は修飾元素の層94が形成される。この例では、一つの修飾元素により段階的に膜厚を異にする修飾微粒子を作成することが出来る。
【0030】
ここで、シャッター7を所定の速度で連続的に左側に移動させるものとすれば、微粒子3の大きさが共通で修飾元素の蒸着膜厚のみが連続的に異なる修飾微粒子3を得ることが出来る。このような、修飾元素の蒸着膜厚のみが連続的に異なる修飾微粒子3は、修飾微粒子3表面に生体機能分子を吸着させて生体物質の検査のための標識として利用する場合などの、その利用目的における最適な修飾元素の蒸着膜厚を決定するために有用である。すなわち、修飾元素の蒸着膜厚のみが連続的に異なる修飾微粒子3によって、あらかじめ、標識としての効果を評価して、効果の大きい修飾元素の蒸着膜厚を実際の計測用の微粒子の蒸着膜厚とすることが出来る。
【0031】
図4(a)−(d)は微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾する方法と修飾結果を説明する概念図である。ここでも、図3(a)に示すように、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子31−38の上に配置されたシャッター7は間歇的に図の左側方向に移動される。ここでは、二つの微粒子の幅に対応する距離だけ移動するものとした。シャッター7の上面からは、矢印8に示すように微粒子3の表面を修飾するための元素の蒸気が供給されるが、ここでは、シャッター7を移動させるたびに蒸着源容器61の元素を交換して、微粒子3の表面を修飾するために供給される元素の蒸気が変更される。
【0032】
図4(a)は微粒子31,32の列に対応する位置でシャッター7が除かれて微粒子31−32が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この段階では、シャッター7が除かれて修飾元素の上記に曝されるのは微粒子31,32の列のみであるから、微粒子31,32の列の微粒子のみに修飾元素の層10が形成される。図4(b)はシャッター7がさらに左に移動され、微粒子31,32の列に加えて、微粒子33,34の列に対応する位置でもシャッター7が除かれて微粒子31−34が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この結果、微粒子31,32の列の微粒子は修飾元素の層10に加えて、修飾元素の11が形成される。微粒子33,34の列の微粒子は修飾元素の層11が形成される。図4(c)はシャッター7がさらに左に移動され、微粒子31−34の列に加えて、微粒子35,36の列に対応する位置でもシャッター7が除かれて微粒子31−36が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この結果、微粒子31,32の列の微粒子は修飾元素の層10,11に加えて、修飾元素の層12が形成される。微粒子33,34の列の微粒子は修飾元素の層11に加えて、修飾元素の層12が形成される。微粒子35,36の列の微粒子は修飾元素の層12が形成される。図4(d)はシャッター7がさらに左に移動され、微粒子31−36の列に加えて、微粒子37,38の列に対応する位置でもシャッター7が除かれて微粒子31−38が修飾元素によって修飾された結果を概念的に示す図である。この結果、微粒子31,32の列の微粒子は修飾元素の層10,11,12に加えて、修飾元素の層13が形成される。微粒子33,34の列の微粒子は修飾元素の層11,12に加えて、修飾元素の層13が形成される。微粒子35,36の列の微粒子は修飾元素の層12に加えて、修飾元素の層13が形成される。微粒子37,38の列の微粒子は修飾元素の層13が形成される。
【0033】
図5は、図4(d)に示した微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾した修飾微粒子の最外層を、SiO2の層14で修飾した結果を説明する概念図である。SiOを、図2(b)で示したような特異な構造の蒸着源容器61によってSiO蒸気として修飾微粒子3の表面に供給すると、任意の金属あるいは半導体により修飾された修飾微粒子3の表面の全体が、前述したように、SiO2の層14で覆われる。
【0034】
図6は、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定され、蒸着を済ませた修飾微粒子3を、ペトリディッシュ1の底面の金2の層から剥離させる具体策について説明する概念図である。ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に修飾微粒子3が固定されている上から純水を、例えば、200μL滴下する。この滴下する純水の量は適当でよく50〜1000μL程度の範囲で任意に選んでよい。さらに、固定されている修飾微粒子3の上に、例えば、直径1cm、厚さ5mm程度の底面が平坦なガラス製セル15を乗せる。このガラス製セル15の大きさは適当でよく3mm〜2cm程度の範囲で任意に選んでよい。次いで、純水が滴下された修飾微粒子3の上に、ガラス製セル15が置かれた微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面部分のみを、水18の張られた超音波洗浄槽16の表面部に保持する。
【0035】
超音波洗浄槽16の底部に配置された超音波振動子17から超音波を発生させるとともに、固定されている修飾微粒子3の上に乗せられた底面の平坦なガラス製セル15を、矢印に示すように、固定されている修飾微粒子3の上で適宜移動させる。この結果、修飾微粒子3をペトリディッシュ1の底面の金2の層から剥離させて滴下した純水に懸濁させることができ、修飾微粒子懸濁液を得る。ここで、ガラス製セル15は、必ずしもガラスである必要はなく、適当に硬い、底面の平坦な素材であれば良い。
【0036】
ここで、修飾微粒子3を生体物質の検査のための標識として利用する場合には、タンパク質やDNA等の生体機能分子を修飾微粒子表面に吸着させる等の後処理が必要である。これをし易くするために、それぞれの過程で、以下のように種々の処理を施すのが良い。
【0037】
(1)固定されている修飾微粒子3を基板から剥離させるために滴下する純水に、例えば、タンパク質として、牛血清アルブミン(bovine serum albumin (BSA))、緩衝液として、クエン酸バッファー(standard sodium citrate (SSC))もしくはリン酸塩バッファー(phosphate buffer)、および界面活性剤として硫酸ドデシルナトリウム(sodium dodecyl sulfate (SDS))もしくはタンニン酸(tannic acid)等を加えることにより、修飾微粒子3の後処理をし易くする。
【0038】
(2)タンパク質やDNA等の生体機能分子を修飾微粒子3の表面に吸着させる目的の場合には、微粒子3に修飾元素を蒸着する際、蒸着された修飾元素最外面がSiO2、Au、Ag、Ni、Co等の生体機能分子と親和性が高い元素になるようにする。あるいは、図3、図4から分かるように、修飾微粒子3が修飾元素で覆われるのは、蒸着する際に修飾元素が照射される側の半球部分のみである。したがって、修飾微粒子3の基礎となるポリスチレン製微粒子、もしくは磁性体を内包したポリスチレン製微粒子の修飾元素で覆われていない面をタンパク質やDNA等の生体機能分子を修飾微粒子表面に吸着させる目的の表面とするのが良い。この場合、修飾元素を蒸着する前に、ポリスチレン製微粒子を生体分子で修飾しておいても良い。
【0039】
(3)SiO2を蒸着した場合は、図5から分かるように、蒸着の際に修飾元素が微粒子3全体に回り込むため、SiO2膜が修飾微粒子のほぼ全体を覆うので均一に修飾された修飾微粒子の作製に適している。この場合、以下(4)、(5)に示す、いずれかの手順で修飾微粒子3の表面にアミノ基もしくはチオール基を導入して分子を修飾する。
【0040】
(4)上述したように、超音波とガラス製セルの利用により修飾微粒子3をペトリディッシュ1の底面の金2の層から剥離させて、滴下した純水に懸濁させた修飾微粒子懸濁液に0.01%から10%以下の3-aminopropyl trimethoxy silane、3-aminopropyl triethoxy silane、3-aminopropyl diethoxy methyl silane等のシランカップリング剤を加えることにより、修飾微粒子表面にアミノ基を導入する。もしくは、0.01%から10%以下の3-mercaptopropyl trimethoxy silane等のシランカップリング剤を加えることにより、修飾微粒子表面にチオール基を導入する。
【0041】
(5)図3、図4で説明したように、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾して修飾微粒子3が固定化された35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の修飾微粒子3の傍らに3-aminoprophyl trimethoxy silane、3-aminoprophyl triethoxy silane、3-aminoprophyl diethoxy methyl silane等のシランカップリング剤の液滴を滴下し、窒素またはアルゴン雰囲気容器内に密封し、気相中でシランカップリング剤分子を修飾微粒子表面に吸着させることにより修飾微粒子3の表面にアミノ基を導入する。もしくは、3-mercaptopropyl trimethoxy silane等のシランカップリング剤の液滴を修飾微粒子3の傍らに滴下し、窒素またはアルゴン雰囲気容器内に密封し、気相中でシランカップリング剤分子を微粒子表面に吸着させることにより微粒子表面にチオール基を導入する。この場合、修飾微粒子3の表面にアミノ基あるいはチオール基を導入した後に、図6を参照して説明したようにして、修飾微粒子3を金2の層から剥離させることは言うまでもない。
【0042】
このように、修飾微粒子3の表面にアミノ基あるいはチオール基を導入する処理をした後、以下に列挙するような方法により、修飾微粒子3の表面にタンパク質やDNA等の生体機能分子を吸着させて標識としての生体機能分子修飾微粒子を作成する。
【0043】
(6)上記(3)−(5)に示した処理により表面にアミノ基を導入した微粒子に対して、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のアミノ基とチオール基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にチオール基を導入したDNAもしくはRNA、チオール基を有する抗体等のタンパク質を反応させて微粒子表面に生体機能分子を固定化する。
【0044】
(7)上記(3)−(5)に示した処理により表面にチオール基を導入した微粒子に対して、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のチオール基とアミノ基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にアミノ基を導入したDNAもしくはRNA、アミノ基を有する抗体等のタンパク質を反応させて微粒子表面に生体機能分子を固定化する。2架性架橋剤は必要に応じて、先に生体機能分子と反応させた後に微粒子と反応させる順番とする。
【0045】
(8)修飾微粒子3の蒸着金属の最外層にAu、あるいは、Agを蒸着した場合は、3’もしくは5’いずれかの末端に、チオール基を導入したDNAもしくはRNA、あるいは、チオール基を有する抗体等のタンパク質を、修飾微粒子3の最外層の蒸着金属と直接反応させて、微粒子表面に蒸着された最外層の金属上に生体機能分子を固定化する。
【0046】
(9)修飾微粒子3の蒸着金属の最外層にNi、あるいは、Coを蒸着した場合は、ヒスチジンを導入したタンパク質を修飾微粒子3の最外層の蒸着金属と直接反応させて、微粒子表面に蒸着された最外層の金属上に生体機能分子を固定化する。
【0047】
上述したように、微粒子3を任意の遷移金属、半導体、あるいは金属により修飾し、さらには、この最外層をさらにSiO2で覆って、修飾微粒子3とし、必要に応じて、修飾微粒子3の最外層に、アミノ基、あるいは、チオール基を導入し、修飾微粒子3の最外層に生体機能分子を固定化して生体機能分子修飾微粒子を作製する。このようにして、作成した生体機能分子修飾微粒子は細胞内外の標的分子、もしくは、基板上に固定化された、細胞より抽出した標的分子を検出するための標識として利用される。
【0048】
図7は、本発明の生体機能分子修飾微粒子3を生体物質の検査のための標識として利用する一例の観察対象のチップ19の構成例を模式的に示す図である。観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面には、多数のプローブ(例えば、DNA分子)が固着されているが、ここでは、単純化して、固着されたプローブ21−24のそれぞれに、標的分子(例えば、標的DNA、mRNA、タンパク質)26−29が結合し、これらの分子が、生体機能分子31-34を介して実施例の修飾微粒子36−39で標識されているものとする。この例では、観察対象のチップ19のプローブ固定領域20に対して1mMリン酸バッファー、500mM NaCl、0.5%SDS溶液に懸濁した生体機能分子修飾微粒子3を滴下し、40℃で16時間反応させる。その後、同溶媒で洗浄する。その結果、例えば、標的DNAと特異的にハイブリダイズする生体機能分子で修飾された生体機能分子修飾微粒子3が標的DNAに対して固定化されて標識として機能することになる。反応を行った試料を十分に乾燥させた後、観察する。なお、ここでは簡略化のためにDNA等の核酸分子を標的分子として捕捉する一例を採り上げたが、プローブ固定領域20の表面に固定されるプローブ分子はDNAに限らず、標的分子との親和性を考慮してRNAやタンパク質分子を適切に選択して固定する。また、プローブ固定領域20に固定化された標的捕捉用分子21−24に捕捉される標的分子としての想定はDNA、RNA、タンパク質等の細胞機能を制御する分子全般である。反応時の溶媒組成、温度、反応時間はこれらの標的分子が基板上の捕捉用分子21−24および粒子状の生体機能分子31−34と最も効率よく反応するよう、その都度決定する必要がある。特にタンパク質を標的分子として想定し検出する場合は、立体構造や活性が保存されるよう、溶媒組成と温度に特別な配慮をする必要がある。
【0049】
観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面とは分離された位置、例えば、チップ19の周辺部には比較用の修飾微粒子301,302,303,304,305,---が設けられる。これらの修飾微粒子301,302,303,304,305,---は修飾元素が何であるかは観察者に既知のものであることはいうまでもない。
【0050】
観察対象のチップ19に対して電子顕微鏡観察を行うためには、通常の電子顕微鏡試料作製手順に従って処理をしたうえで、電子顕微鏡の試料領域に挿入して観察する。試料に導電性がない場合は、試料全体がカーボンやタングステン、金、白金等で覆われるように、カーボンやタングステン、金、白金等を表面に1〜5nm程度蒸着する前処理をした上で電子顕微鏡の試料として利用する。
【0051】
図8は、実施例の生体機能分子修飾微粒子3を標識として生体物質の検査に利用する具体例として、図7で説明した態様の観察対象のチップ19を走査型電子顕微鏡で観察する例を説明する概念図である。
【0052】
観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面には、多数のプローブ(例えば、DNA分子)が固着されているが、図7では、単純化して、固着されたプローブ21−24のそれぞれに、標的分子26−29が結合し、これらの分子が、生体機能分子31-34を介して実施例の修飾微粒子36−39で標識されているものとする。この例では、修飾微粒子36−39は同一径でそれぞれ修飾金属が1層であり、最外層がSiO2で覆われているものとする。修飾微粒子36は原子番号29番(Cu)、修飾微粒子37は原子番号47番(Ag)、修飾微粒子38は原子番号79番(Au)および修飾微粒子39は原子番号28番(Ni)で修飾されているものとする。チップ19の周辺部で、被観察試料と同時に走査される領域に比較用の修飾微粒子301,302,303,304が設けられる。この場合、比較用の修飾微粒子301,302,303,304も、標識として検出対象となる修飾微粒子36−39とそれぞれ同じ金属で修飾されたものを使用する。
【0053】
チップ19のプローブ固定領域20表面上に、修飾微粒子を検出する走査型電子顕微鏡40の電子銃40−1、集束レンズ40−2、走査コイル40−3が設けられる。電子銃40−1から発せられた電子線40−4の電子は修飾微粒子36,37,38および39に衝突し、修飾微粒子は2次電子40−5および反射電子40−6を放出する。この2次電子を検出器40−7、反射電子を検出器40−8が捕える。検出器40−7で検出された2次電子を基に、2次電子線画像が得られ、修飾微粒子の位置と大きさが特定される。検出器40−8で検出された反射電子を基に得られる反射電子線画像により修飾微粒子の位置と大きさおよび表面を修飾している元素が特定される。
【0054】
一方、電子線40−4の電子が修飾微粒子36,37,38および39に衝突したとき、修飾微粒子36,37,38および39が発する、修飾微粒子の構成元素に特異的な波長のX線40−9を検出するエネルギー分散型特性X線検出器40−10を備える。すなわち、エネルギー分散型特性X線検出器40−10が検出する修飾用の構成元素に対応した波長信号から元素スペクトル像を得る。
【0055】
したがって、本発明では、チップ19のプローブ固定領域20表面のプローブ(例えば、DNA分子)に結合した生体機能分子修飾微粒子を反射電子検出を基に得られる反射電子線画像により修飾微粒子の位置と大きさおよび表面を修飾している元素を特定することを基礎とし、必要に応じて、2次電子線画像による修飾微粒子の位置と大きさ情報を利用する。さらに、必要に応じて、元素スペクトルを利用して修飾微粒子の表面に蒸着した元素の種類を識別する。微粒子の種類、すなわち微粒子表面に修飾した生体機能分子と結合する細胞内外もしくは基板上の標的分子の種類を特定する。
【0056】
図9(a)−(d)は、観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面の反射電子線画像、2次電子線画像、元素スペクトル像、および、元素マッピング像から修飾微粒子の表面に蒸着されている元素の種類を識別する具体例を模式的に示す図である。
【0057】
図9(a)は観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面の標識として検出対象となる修飾微粒子の反射電子線画像を模式的に示す図であり、ここでは、図8に示す修飾微粒子36−39の修飾元素に応じた反射電子の像と、比較用の修飾微粒子301−304の修飾元素に応じた反射電子の像とが得られていることを示す。反射電子の像は、修飾微粒子の修飾元素が重くなるほど反射電子数が増加し、軽くなるほど減少する。すなわち、修飾元素が重くなるほど明るく見えることになる。したがって、あらかじめ、走査型電子顕微鏡40の設定に応じた修飾微粒子の修飾元素に対応した反射電子の明るさを評価しておけば、反射電子線画像により性質により修飾微粒子を特定することが出来る。
【0058】
一方、走査型電子顕微鏡40の使用態様によっては、同じ修飾元素であっても、観察者に見える明るさが変動する可能性があり、また、使用する修飾微粒子の数が多くなると、修飾元素間の明るさのコントラストが小さくなり、単に明るさだけを見ても、修飾微粒子を特定することが困難になることが考えられる。このため、被観察試料と同時に電子線走査をされる領域に比較用の修飾微粒子301,302,303,304が設けられる。この場合、比較用の修飾微粒子301,302,303,304も、標識として検出対象となる修飾微粒子36−39とそれぞれ同じ金属で修飾されたものを使用する。この結果、被観察試料の反射電子線画像の明るさを、比較用の修飾微粒子の明るさを基準に評価することが出来る。すなわち、標識として検出対象となる修飾微粒子の明るさを比較用の修飾微粒子の明るさを基準に修飾微粒子の修飾元素を識別することができる。この比較用の修飾微粒子の反射電子線画像は、標識として使用する修飾微粒子の種類が増加して、修飾微粒子の反射電子線画像のコントラストが小さいものがあるときにはきわめて有用である。
【0059】
当然のことながら、比較用の修飾微粒子301,302,303,304,---は、どの位置にどの修飾元素を有する修飾微粒子が配置されているかを、チップ19の製作過程で明らかにしておくものである。
【0060】
図9(b)は、観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面の標識として検出対象となる修飾微粒子の2次電子線画像を模式的に示す図である。2次電子線画像は、修飾微粒子の修飾元素に関わらず大きさと位置を鮮明な画像として得ることが出来る。一方、反射電子線画像はコントラストが小さく、画像としては暗い画像として表示されるため、軽い元素で修飾された微粒子は、そこに修飾微粒子が有るかないかよく判断できない、あるいは、サイズが判断しにくいということが起こる。このような場合に、その位置の2次電子線画像を参照することにより、その位置に修飾微粒子があること、あるいは、その修飾微粒子のサイズを明確に判断できる。
【0061】
図9(c)は観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面の標識として検出対象となる修飾微粒子の元素スペクトル像を模式的に示す図である。横軸に波長を、縦軸に信号強度をとっている。この例では、標識として使用された修飾微粒子の元素が4種類であることが分かる。
【0062】
図9(d)は観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面の標識として検出対象となる修飾微粒子の元素のマッピング像を模式的に示す図である。この元素のマッピング像はエネルギー分散型特性X線検出器40−10に得られる修飾元素に関する信号を図9(b)に示す2次電子線画像と同様にマッピングしたものであり、2次電子線画像と同様に修飾微粒子大きさと位置を示すのみならず、修飾元素に関する情報を持った画像として利用できる。ただし、2次電子線画像と比較すれば、相対的に空間分解能が低いこととともに、データの収集に要する時間がかかる。
【0063】
図9(a)−(d)では、4つの修飾微粒子でしか説明しなかったが、本発明では、例えば、直径10nmから150nmの微粒子を直径が5nm刻みで準備されるものとすれば、28段階の直径を異にする微粒子を作成できる。しかも、これらの微粒子について、それぞれ、前述した金属あるいは半導体による修飾について、同じ素材に対して異なる粒径の標識として使用できるので非常に多くの種類の標識を作成することが出来る。
【0064】
図10(a)−(d)は、修飾微粒子の表面に蒸着されている元素をAuおよびAgとし、これの最外層がSiO2によりカバーされている場合について、これらの層に入射した電子線の反射の態様の例を模式的に示す図である。ここでは、各層の構成元素の原子を小さい丸で表示した。図10(a)、(b)では、微粒子の表面からAg,Auの順に修飾金属層が構成され、最外層がSiO2によりカバーされている。図10(c)、(d)では、微粒子の表面からAu,Agの順に修飾金属層が構成されている。最外層がSiO2によりカバーされている。
【0065】
図10(a)と図10(b)とを対比すると、電子銃40−1から発せられた電子線40−4の電子がAu層で反射されるか、Ag層で反射されるかの違いがある。したがって、同じ標識用の微粒子であっても、電子線40−4のエネルギーの差異により、Au層での反射、あるいは、Ag層で反射と異なったものとなり、観察者に見える明るさが異なることになる。同様に、図10(c)と図10(d)とを対比すると、電子銃40−1から発せられた電子線40−4の電子がAg層で反射されるか、Au層で反射されるかの違いがある。したがって、同じ標識用の修飾微粒子であっても、電子線40−4のエネルギーの差異により、Ag層での反射、あるいは、Au層で反射と異なったものとなり、観察者に見える明るさが異なることになる。
【0066】
このように、標識用の修飾微粒子に照射される電子線40−4のエネルギーの差異により、観察結果が異なることを防ぐためには、観察の前に、例えば、比較用の既知の修飾微粒子の明るさを評価して、電子銃40−1から発せられた電子線40−4の電子のエネルギーを調整しておくのが良い。あるいは、事前のキャリブレーションを省略して、観察を、比較用の既知の修飾微粒子の明るさとの比較において行うものとしても良い。
【0067】
なお、図10(a)−(d)に示す例では、図10(a)、(b)と図10(c)、(d)とでは、修飾元素の積層の順番は異なっても、修飾元素はいずれもAuおよびAgでしかないから、図9を参照して説明した修飾微粒子の元素スペクトル像は同じとなるが、元素のマッピング像では、AuおよびAgの差異を反映したものとなる。
【0068】
本発明は、上述したように、任意の粒径の微粒子を、任意の遷移金属、金属、あるいは、半導体の薄膜で修飾し、最外層をSiO2で包み込んだ標識用の微粒子を提供できる。したがって、多種類の標識を容易に作成できるのみならず、微粒子最外層をSiO2で包み込むことで、任意の遷移金属、半導体、あるいは金属により修飾された微粒子の最外層に、アミノ基、あるいは、チオール基を統一された方法で導入可能とできる。その結果、修飾微粒子の最外層に生体機能分子を安定して固定化して生体機能分子修飾微粒子を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】(a)−(e)は本発明の修飾微粒子作成過程の最初の過程の基板上に微粒子を単層固定させる過程を説明する概念図である。
【図2】(a)は抵抗加熱式蒸着装置によって、微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾する方法を説明する概念図、(b)は蒸着源容器61の特異な構造の例を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)−(e)は微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により異なった厚さで修飾する方法と修飾結果を説明する概念図である。
【図4】(a)−(d)は微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾する方法と修飾結果を説明する概念図である。
【図5】図4(d)に示した微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定された微粒子3の表面を任意の金属あるいは半導体により修飾した修飾微粒子の最外層を、SiO2の層14で修飾した結果を説明する概念図である。
【図6】微粒子固定化35mmプラスチック製ペトリディッシュ1の底面の金2の層の上に単層固定され、蒸着を済ませた修飾微粒子3を、ペトリディッシュ1の底面の金2の層から剥離させる具体策について説明する概念図である。
【図7】本発明の生体機能分子修飾微粒子3を生体物質の検査のための標識として利用する一例の観察対象のチップ19の構成例を模式的に示す図である。
【図8】実施例の生体機能分子修飾微粒子3を標識として生体物質の検査に利用する具体例として、図7で説明した態様の観察対象のチップ19を走査型電子顕微鏡で観察する例を説明する概念図である。
【図9】(a)−(c)は、観察対象のチップ19のプローブ固定領域20の表面の反射電子線画像、2次電子線画像および元素スペクトル像から修飾微粒子の表面に蒸着されている元素の種類を識別する具体例を模式的に示す図である。
【図10】(a)−(d)は、修飾微粒子の表面に蒸着されている元素をAuおよびAgとし、これの最外層がSiO2によりカバーされている場合について、これらの層に入射した電子線の反射の態様の例を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1…35mmプラスチック製ペトリディッシュ、2…金の薄膜、3…ポリスチレン製微粒子、4…微粒子懸濁液、5…蓋付容器、6…蒸着源、61…蒸着源容器、62…加熱用抵抗器、63…仕切り板、7…シャッター、91,92,93,94…修飾元素の層、10,11,11,12,13,14…修飾元素の層、15…ガラス製セル、16…超音波洗浄槽、17…超音波振動子、18…水、19…観察対象のチップ、20…プローブ固定領域、21−24…固着されたプローブ、26−29…標的分子、301,302,303,304,305…修飾微粒子、31-34…生体機能分子、36−39…修飾微粒子、40−1…電子銃、40−2…集束レンズ、40−3…走査コイル、40−4…電子線、40−5…2次電子、40−6…反射電子、40−7…2次電子検出器、40−8…反射電子を検出器、40−9…修飾微粒子の構成元素に特異的な波長のX線元素に特異的な波長のX線、40−10…エネルギー分散型特性X線検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に金の薄膜を形成された基板、シリコン基板、または、ガラス基板を準備する工程、
所定の直径のポリスチレン製微粒子、SiO2製微粒子、または、TiO2製微粒子、適量の純水、および、前記微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を混合して、前記基板上で前記微粒子が高密度に分布できる濃度となるように懸濁した微粒子懸濁液を準備する工程、
前記微粒子懸濁液を前記基板の上に滴下して前記基板上に前記微粒子を高密度に分布させる工程、
基板上に吸着していない過剰量の微粒子を洗浄除去し、基板上に分布された微粒子を乾燥させる工程、
前記基板上に分布された前記微粒子に遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着させる工程、
前記遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着された前記微粒子に、蒸着または昇華によりSiO2を1層形成させる工程、
前記基板上に固定され、前記蒸着を済ませた前記微粒子上に、微量の純水、または、該純水にタンパク質として牛血清アルブミン(bovine serum albumin (BSA))、緩衝液としてクエン酸バッファー(standard sodium citrate (SSC))もしくはリン酸塩バッファー(phosphate buffer)、および界面活性剤として硫酸ドデシルナトリウム(sodium dodecyl sulfate (SDS))もしくはタンニン酸(tannic acid)を加えた微量の液体を滴下する工程、ならびに
前記基板の他面に超音波を作用させながら、前記微粒子が固定された前記一面側に平坦な底面を有する素材を該底面に若干加重が加わる様に載置して、該素材を任意の方向に移動させることにより前記微粒子を前記基板から剥離させる工程、
を含む、遷移金属、金属または半導体で修飾された微粒子の製作方法。
【請求項2】
前記微粒子間の静電反発力を抑制するための材料が1-ethyl-3(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide hydrochloride、NaCl、または、KClである請求項1記載の微粒子の製作方法。
【請求項3】
前記遷移金属、金属または半導体が、周期律表で原子番号43番を除く79番までの遷移金属、原子番号13,31,32,33,49,50,51,81,82,もしくは83番の金属、または原子番号14,34,もしくは52番の半導体のいずれかである請求項1記載の微粒子の製作方法。
【請求項4】
前記微粒子を基板から剥離させる工程によって得られた微粒子懸濁液に0.01%から10%以下の3-aminopropyl trimethoxy silane、3-aminopropyl triethoxy silane、または、3-aminopropyl diethoxy methyl silaneのシランカップリング剤を加えることにより、前記微粒子表面にアミノ基を導入する請求項1記載の微粒子の製作方法。
【請求項5】
前記微粒子を基板から剥離させる工程によって得られた微粒子懸濁液に0.01%から10%以下の3-mercaptopropyl trimethoxy silaneのシランカップリング剤を加えることにより、前記微粒子表面にチオール基を導入する請求項1記載の微粒子の製作方法。
【請求項6】
一面に金の薄膜を形成された基板、シリコン基板、または、ガラス基板を準備する工程、
所定の直径のポリスチレン製微粒子、SiO2製微粒子、または、TiO2製微粒子、適量の純水、および、前記微粒子間の静電反発力を抑制するための材料を混合して、前記基板上で前記微粒子が高密度に分布できる濃度となるように懸濁した微粒子懸濁液を準備する工程、
前記微粒子懸濁液を前記基板の上に滴下して前記基板上に前記微粒子を高密度に分布させる工程、
前記基板上に分布された前記微粒子に遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着させる工程、
前記遷移金属、金属または半導体を少なくとも1層蒸着された前記微粒子を有する前記基板の周辺に3-aminoprophyl trimethoxy silane、3-aminoprophyl triethoxy silane、または、3-aminoprophyl diethoxy methyl silaneのシランカップリング剤の液滴を滴下し、窒素またはアルゴン雰囲気容器内に密封し、気相中でシランカップリング剤分子を前記微粒子表面に吸着させることにより前記微粒子の表面にアミノ基を導入する工程、
前記基板上に単層固定され、蒸着を済ませた前記微粒子上に微量の純水を滴下した後、前記基板の他面に超音波を作用させながら、前記単層固定された前記微粒子の上の面に平坦な底面を有する素材を該底面に加重がかかる様に載置して任意の方向に移動させることにより前記微粒子を基板から剥離させる工程、
を含む、遷移金属、金属または半導体で修飾された微粒子の製作方法。
【請求項7】
前記3-aminoprophyl trimethoxy silane、3-aminoprophyl triethoxy silane、または、3-aminoprophyl diethoxy methyl silaneのシランカップリング剤に代えて3-mercaptopropyl trimethoxy silaneのシランカップリング剤の液滴を滴下し、窒素またはアルゴン雰囲気容器内に密封し、気相中でシランカップリング剤分子を微粒子表面に吸着させることにより前記微粒子表面にチオール基を導入する請求項6記載の微粒子の製作方法。
【請求項8】
前記微粒子の表面にアミノ基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のアミノ基とチオール基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にチオール基を導入したDNAもしくはRNA、チオール基を有する抗体等のタンパク質を反応させて前記微粒子表面に生体機能分子を固定化する請求項1記載の微粒子の製作方法。
【請求項9】
前記微粒子の表面にチオール基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のチオール基とアミノ基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にアミノ基を導入したDNAもしくはRNA、アミノ基を有する抗体等のタンパク質を反応させて微粒子表面に生体機能分子を固定化する請求項1記載の微粒子の製作方法。
【請求項10】
前記2架性架橋剤が先に生体機能分子と反応させた後に前記微粒子と反応させられる請求項8または9記載の微粒子の製作方法。
【請求項11】
前記微粒子の表面にアミノ基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のアミノ基とチオール基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にチオール基を導入したDNAもしくはRNA、チオール基を有する抗体等のタンパク質を反応させて前記微粒子表面に生体機能分子を固定化する請求項6記載の微粒子の製作方法。
【請求項12】
前記微粒子の表面にチオール基を導入した後、0.1mg〜1g/mLのSulfosuccinimidyl 6-(3'-[2-pyridyldithio]-propionamido) hexanoate (Sulfo-LC-SPDP)、あるいは、Sulfosuccinimidyl 4-[N-maleimidomethyl] cyclohexane-1-carboxylate (Sulfo-SMCC)等のチオール基とアミノ基を架橋させる2架性架橋剤を用いて活性化した後、3’もしくは5’いずれかの末端にアミノ基を導入したDNAもしくはRNA、アミノ基を有する抗体等のタンパク質を反応させて微粒子表面に生体機能分子を固定化する請求項7記載の微粒子の製作方法。
【請求項13】
前記2架性架橋剤が先に生体機能分子と反応させた後に前記微粒子と反応させられる請求項11または12記載の微粒子の製作方法。
【請求項14】
所定の直径のポリスチレン製微粒子、SiO2製微粒子、または、TiO2製微粒子の表面が遷移金属、金属または半導体で修飾される微粒子を利用するとともに、観察対象のチップ表面のプローブ固定領域に固着されている多数のプローブにDNA、mRNA、またはタンパク質を含む標的分子が結合し、該標的分子を前記微粒子表面の生体機能分子を介して標識している前記微粒子、および、前記観察対象のチップのプローブ固定領域の表面とは分離された位置に設けられた比較用の前記微粒子とを、同時に電子線で走査して得られる前記微粒子の電子線走査による反射電子線画像を得ること、
前記標識している前記微粒子の反射電子線画像の明るさから、前記微粒子表面を修飾している素材を決定して前記DNA、mRNA、またはタンパク質を含む標的分子を特定することを特徴とする生体物質の検査法。
【請求項15】
前記比較用の前記微粒子の反射電子線画像と前記標識している前記微粒子の反射電子線画像との対比によって前記微粒子表面を修飾している素材を決定して前記DNA、mRNA、またはタンパク質を含む標的分子を特定する請求項14記載の生体物質の検査法。
【請求項16】
前記電子線で走査して得られる前記微粒子の電子線走査による反射電子線画像に加えて、電子線で走査して得られる2次電子から2次電子線画像を得て、反射電子線画像の前記微粒子の位置を特定する請求項14記載の生体物質の検査法。
【請求項17】
前記電子線で走査して得られる前記微粒子の電子線走査による反射電子線画像、電子線で走査して得られる2次電子から2次電子線画像に加えて、電子線で走査して得られる前記微粒子の表面を修飾している素材の元素スペクトル像を得て、前記微粒子の組成元素を特定する請求項14記載の生体物質の検査法。
【請求項18】
前記電子線で走査して得られる前記微粒子の表面を修飾している素材の元素スペクトル像に代えて、前記微粒子の表面を修飾している素材の元素マッピング像を得て、前記微粒子の組成元素を特定する請求項14記載の生体物質の検査法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−128297(P2009−128297A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305841(P2007−305841)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】