説明

微粒子充填剤の水性懸濁液、その製造方法、並びに高充填材含有量及び高乾燥強度を有する紙を製造するためのその使用

本発明は、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとの組成物が少なくとも部分的に被覆された微粒子充填剤の水性懸濁液に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとを含む組成物が少なくとも部分的に被覆された微粒化充填剤の水性スラリーと、その製造方法と、高充填材含有量と高乾燥強度とを有する紙の製造における製紙原料への添加剤としてのその使用と、に関する。
【0002】
充填剤含有紙の製造において、充填剤スラリーは、抄紙機のフォーマ上を通過する前に繊維懸濁液に添加される。概して、歩留向上剤又は歩留向上剤系は、紙シート中にできるだけ多くの充填剤を保持するために充填剤/繊維懸濁液に添加される。紙に充填剤を添加することにより、製紙機は、シート特性の向上を数多く達成することが可能になる。これらの特性としては、不透過性、白色性、触感、印刷適性等の特性が挙げられる。
【0003】
更に、充填剤が繊維よりも安価である場合、充填剤の添加又はその添加の増加により、繊維の比率を低下させることができ、それにより紙の製造費を低下させることができる。充填剤を含有する紙又は特に高充填材含有量を有する紙は、充填剤を含まない紙や低充填材含有量を有する紙よりも容易に乾燥させることができる。この結果として、抄紙機は、より速やかに、且つ、より少ない蒸気消費量で操作を行うことが可能であり、その両方により、生産性が上昇し、費用が減少する。
【0004】
しかしながら、繊維懸濁液に充填剤を添加することには短所もあり、それらの短所は、更なる紙の助剤の添加によって部分的に補償され得るだけである。ある坪量に対して、使用され得る充填剤の量に限界値がある。通常、紙の強度特性は、紙の充填剤の量を限定する最も重要なパラメータである。他の要素(例えば、充填剤保持性、製紙原料懸濁液の脱水、保持及びサイジングの間に増大する任意の化学物質の必要性)もまた、ここでは役割を果たし得る。
【0005】
紙の強度特性の低下は、場合によっては乾燥紙力増強剤及び湿潤紙力増強剤の使用によって完全に又は部分的に補償され得る。通例の手順は、製紙原料に乾燥紙力増強剤としてカチオンデンプンを添加することである。例えばカチオン性又はアニオン性のポリアクリルアミドに基づいた合成乾燥紙力増強剤及び合成湿潤紙力増強剤もまた使用される。しかしながら、ほとんどの場合、添加量及び補強効果は限定される。同様に、充填剤を増加させることによる強度の低下と、更にそれによる本当に実現可能な充填剤の増加とに対する補償効果もまた限定される。更に、全ての強度特性が同程度に高められるというわけではなく、場合によっては、乾燥紙力増強剤を使用しても十分に高められない。この重要な例としては引裂強度があり、引裂強度は、他の強度パラメータと比較して、デンプン又は合成乾燥紙力増強剤の使用による影響がごくわずかである。一方、紙の充填材含有量の増加は、一般に、引裂強度に対して非常に強い悪影響を有する。
【0006】
更に重要な性質は、紙の厚み及び剛性である。紙の坪量が同じである場合、充填材含有量の増加は、紙密度の増加と、紙シートの厚みの減少とにつながる。後者により、紙剛性は、かなり低下する。多くの場合、この紙剛性の低下は、乾燥紙力増強剤の単独使用では補償することができない。例えば、抄紙機のカレンダリングユニット、カレンダ又はドライエンドにおける押圧部の機械圧力の低下等、更なる対策がしばしば必要である。後者は、充填剤の増加による厚さの減少を、完全に、又は、部分的に補償する。
【0007】
幾つかの充填剤系は、文献に記載されている。WO01/86067A1には、疎水ポリマーによる充填剤の修飾、即ち疎水ポリマーで被覆した充填剤粒子が開示されている。WO01/86067A1による疎水ポリマーは、デンプンを含有する。それにより製造された紙は、湿潤強度等の特性が向上する。
【0008】
JP−A08059740には、無機粒子の水性懸濁液に両性水溶性ポリマーを添加し、前記ポリマーの少なくとも一部が充填剤表面上に吸着されることが開示されている。両性ポリマーは、好ましくは、酸の存在下でN−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル及びアクリル酸のコポリマーの加水分解により製造される。両性ポリマーは、構造
【化1】

[式中、R1及びR2は各々H又はメチル基であり、X-はアニオンである]の20〜90モル%のアミジン単位を含む。かかるポリマーで処理された充填剤スラリーは、充填剤含有紙の製造において製紙原料に添加される。充填剤処理によって、製紙原料の脱水が向上し、また、乾燥紙の種々の強度特性も向上し、充填剤保持性も向上する。
【0009】
US2002/0088579A1には、カチオン性、アニオン性及び両性(双性イオン性)ポリマーによる無機充填剤の前処理について記載されている。あらゆる場合において、前記処理は、少なくとも2つの段階から成る。最初にカチオン性ポリマーによる処理、次いでアニオン性ポリマーによる処理が推奨される。更なるステップにおいて、更なるカチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーは、再度交替して吸着され得る。前処理充填剤粒子を有する水性懸濁液は、充填剤含有紙の製造における製紙原料に添加される。充填剤処理は、乾燥紙の各種強度特性の向上につながる。
【0010】
WO04/087818A1には、ポリマーで少なくとも部分的に被覆され、且つ、
a)式
【化2】

[式中、R1及びR2は、H又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミドと、
b)分子中に3〜8個の炭素原子を有する少なくとも1つのモノエチレン性不飽和カルボン酸及び/又はそのアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアンモニウム塩と、場合により、
c)ニトリル基を含まない他のモノエチレン性不飽和モノマーと、場合により、
d)分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と、を共重合し、
続いてコポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(I)から基−CO−R1を部分的又は完全に除去することにより得ることが可能な少なくとも1種の水溶性両性コポリマーで微粒化充填剤の水性スラリーを処理することにより得ることが可能な微粒化充填剤の水性スラリーについて記載されている。
【0011】
WO05/012637A1には、少なくとも1種の微粒化充填剤と、
a)一般式
【化3】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
b)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種のモノマー、
c)場合により、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物から選択される少なくとも1種のモノマー、
d)場合により、成分a)〜c)とは異なり、且つ、ニトリル基を含まない少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、及び
e)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、を含むモノマー混合物(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマーb)又はc)を含む)を共重合し、
続いてコポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(I)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより得ることが可能な少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと、を含む水性組成物が開示されている。
【0012】
従って、該公告においては、繊維に充填剤スラリーを添加し、続いて紙シートを形成する前の両性合成ポリマーによる充填剤の処理を記載する方法が開示されている。特に、WO04/087818A1及びWO05/012637A1は、充填剤の前処理によって、紙シートは、裂断長や内部結合強度等の各種乾燥強度パラメータがかなり増大することを示した。
【0013】
WO03/087472A1には、膨化デンプン粒子及びラテックスから成る組成物による充填剤の処理を記載する方法が開示されている。この公告において使用されたラテックスは、水不溶性で、分散液の形態で存在する。この組成物を別々に製造した後、充填剤スラリーに添加し;最後に、繊維への添加及びシート形成を行う。WO03/087472A1の教示によれば、デンプン粒子は膨化デンプン粒子である。更に前記組成物はまた、アニオン性共添加剤やカチオン性共添加剤等の他の共添加剤を含むこともできる。水溶性両性コポリマーは、WO03/087472A1に開示されていない。
【0014】
故に、本発明の目的は高充填材含有量を有する紙の製造に使用され得る微粒化充填剤の更なる代替の水性スラリーを提供することであった。それにより製造される紙は、低充填材含有量を有する従来の紙と同等の強度特性を有さなければならない。これらの強度特性としては、特に、紙の乾燥裂断長、内部結合強度、剛性が挙げられる。
【0015】
本発明によれば、前記目的は、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとを含む組成物が少なくとも部分的に被覆された微粒化充填剤の水性スラリーにより達成される。
【0016】
本発明の文脈において、ラテックスという用語は、好ましくは分散液又はエマルジョンの形態で使用される水不溶性ホモポリマー及び水不溶性コポリマーを意味するものと理解される。
【0017】
第1の好ましい実施態様(実施態様A)において、本発明による水性スラリーは、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(a)一般式
【化4】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c)場合により、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、を含むモノマー混合物(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマー(b)を含む)を共重合し、
続いて前記コポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(a)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより得られる。
【0018】
一方、第2の好ましい実施態様(実施態様B)において、本発明による水性スラリーは、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(e)カチオン性基及び/又はプロトン化によりカチオン性電荷を付与することができる基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
(f)場合により、成分(b)及び(e)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、を含むモノマー混合物を共重合することにより得られる。
【0019】
前記水性スラリーは、例えば、1〜70質量%、好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%の少なくとも1種の微粒化充填剤を含む。水溶性両性コポリマーの量は、例えば、充填剤に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2.5質量%、特に好ましくは0.05〜1質量%である。ラテックスの測定量は、例えば、充填剤に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜7.5質量%、特に好ましくは0.2〜5質量%である。
【0020】
更に、本発明は、水性スラリーの製造のための方法に関するものであって、少なくとも1種の微粒化充填剤の水性スラリーが、充填剤に対して0.01〜5質量%の少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと、充填剤に対して0.1〜10質量%の少なくとも1種のラテックスとにより処理される方法に関する。
【0021】
本発明による方法の第1の好ましい実施態様において、実施態様Aの水性スラリーは、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(a)一般式
【化5】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c)場合により、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、を含むモノマー混合物(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマー(b)を含む)を共重合し、
続いて前記コポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(a)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより得られる。
【0022】
一方、本発明による方法の第2の好ましい実施態様において、実施態様Bの水性スラリーは、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(e)カチオン性基及び/又はプロトン化によりカチオン性電荷を付与することができる基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
(f)場合により、成分(b)及び(e)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、を含むモノマー混合物を共重合することにより得られる。
【0023】
本発明の文脈において、アルキルという表現は、直鎖状又は分枝状アルキル基を含む。適切なアルキル基としては、C1〜C6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、2−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル)がある。
【0024】
実施態様Aの水性スラリーは、各場合において群(a)及び(b)の内の少なくとも1種のモノマーと、場合により、群(c)の内の少なくとも1種のモノマーと、場合により、群(d)の内の少なくとも1種のモノマーとを含む。以下、実施態様Aの水性スラリー用水溶性両性コポリマーについて、更に詳細に説明する。
【0025】
群(a)のモノマーの例としては、式(I)の開鎖N−ビニルアミド化合物(例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニルブチルアミド)がある。群(a)のモノマーは、単独で、又は、他の群のモノマーとの共重合における混合物として使用され得る。
【0026】
本発明による水性スラリーは、群(b)の内の少なくとも1種のモノマーを含むものであって、前記モノマーは、
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される。
【0027】
群(b1)の適切なモノマーは、1分子につき1個の重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合と1個のスルホ基又はホスホン酸基とを有する有機基を有する化合物である。上述した化合物の塩及びエステルは、更に適切である。ホスホン酸のエステルは、モノエステル又はジエステルであってよい。適切なモノマー(b1)は、更に、重合性α,β−エチレン性不飽和二重結合を有するアルコールとのリン酸のエステルである。リン酸基の1個のプロトン又は2個の残りのプロトンは、適切な塩基で中和され得るか、又は、重合性二重結合を有さないアルコールでエステル化され得る。
【0028】
モノマー(b1)の酸基の部分的又は完全な中和に適切な塩基は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩基(アンモニア、アミン及び/又はアルカノールアミン)である。これらの例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ソーダ、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、トリエタノールアミン、エタノールアミン、モルホリン、ジエチレントリアミン又はテトラエチレンペンタミンがある。リン酸をエステル化するために適切なアルコールは、例えば、C1〜C6アルカノール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、それらの異性体)である。
【0029】
モノマー(b1)としては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スルホエタクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アクリルアミドメチレンホスホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、CH2=CH−NH−CH2−PO3H、モノメチルビニルホスホネート、ジメチルビニルホスホネート、アリルホスホン酸、モノメチルアリルホスホネート、ジメチルアリルホスホネート、アクリルアミドメチルプロピルホスホン酸、(メタ)アクリロイルエチレングリコールホスフェート、モノアリルホスフェートが挙げられる。
【0030】
酸基の全てのプロトンがエステル化されたモノマー(例えば、ジメチルビニルホスホネートやジメチルアリルホスホネート)だけが成分(b1)として使用される場合、成分(b2)として以下に記載されるように、少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノカルボン酸及び/又はモノエチレン性不飽和ジカルボン酸或いはその塩が重合のために使用される。従って、本発明により使用されるコポリマーは、イオノゲン基/アニオン基を有することが確保される。或いは、エステル基の一部が除去されるように加水分解の条件を選択することも可能である。
【0031】
上述したモノマー(b1)は、個別に、又は、任意の所望の混合物の形態で使用され得る。
【0032】
群(b2)の適切なモノマーは、3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸並びにこれらのカルボン酸及びモノエチレン性不飽和カルボン酸無水物の水溶性塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)である。モノマーのこの群としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ジメタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、アコニット酸、メチレンマロン酸、アリル酢酸、ビニル酢酸、クロトン酸が挙げられる。この群(b2)のモノマーは、共重合において、部分的に、又は、完全に中和された形態で、単独で、又は、互いの混合物として使用され得る。中和に適切な塩基は、成分(b1)の場合に記載されたものである。
【0033】
本発明によれば、水溶性両性コポリマーは、サブ群(b1)及び(b2)から選択される群(b)からの少なくとも1種のモノマーを含む。もちろん、水溶性両性コポリマーは、サブ群(b1)及び(b2)からのモノマーの混合物を含むこともできる。
【0034】
前記コポリマーは、場合により、修飾用重合単位の形態で組み込まれる群(c)の内の少なくとも1種の更なるモノマーを含むことができる。これらのモノマーは、C1〜C30アルカノール、C2〜C30アルカンジオール及びC2〜C30アミノアルコールとのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のアミド並びにそのN−アルキル誘導体及びN,N−ジアルキル誘導体、C1〜C30モノカルボン酸とのビニルアルコール及びアリルアルコールのエステル、N−ビニルラクタム、α,β−エチレン性不飽和二重結合を有する窒素含有ヘテロ環、芳香族ビニル化合物、ビニルハライド、ビニリデンハライド、C2〜C8モノオレフィン及びそれらの混合物から好ましくは選択される。
【0035】
この群(c)の適切な要素としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、メチルエタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルエタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルエタクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物がある。
【0036】
適切な更なるモノマー(c)は、更に、アミノアルコール、好ましくはC2〜C12アミノアルコールとのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のエステルである。これらは、アミン窒素上でC1〜C8モノアルキル化又はC1〜C8ジアルキル化されてもよい。これらのエステルの適切な酸成分は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチル及びそれらの混合物である。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの混合物が使用される。これらとしては、例えば、N−メチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0037】
適切な更なるモノマー(c)としては、更に、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、n−オクチル(メタ)アクリルアミド、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド、エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、及びそれらの混合物がある。
【0038】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物は、更にモノマー(c)として適切である。
【0039】
更に、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタアクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]メタアクリルアミド、及びそれらの混合物は、更にモノマー(c)として適切である。
【0040】
群(c)の更なる適切なモノマーは、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のニトリル(例えばアクリロニトリルやメタクリロニトリル)である。
【0041】
適切なモノマー(c)は、更に、(上記の通り)例えば1個以上のC1〜C6アルキル置換基を有してよいN−ビニルラクタム及びその誘導体である。これらとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0042】
更に、N−ビニルイミダゾール及びアルキルビニルイミダゾール、特にメチルビニルイミダゾール(例えば、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、3−ビニルイミダゾールN−オキシド、2−及び4−ビニルピリジンN−オキシド、ベタイン誘導体、それらのモノマーの四級化生成物)は、モノマー(c)として適切である。
【0043】
適切な更なるモノマーとしては、更に、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド、及びそれらの混合物がある。
【0044】
上述のモノマー(c)が、個別に、又は、任意の所望の混合物の形態で使用され得る。
【0045】
コポリマーの更なる修飾は、共重合において、分子中に少なくとも2個の二重結合を含むモノマー(d)、例えば、少なくともアクリル酸及び/又はメタクリル酸でジエステル化されたメチレンビスアクリルアミド、グリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、グリセリルトリアクリレート、ペンタエリスリチルトリアリルエーテル、ポリアルキレングリコール又はポリオール(例えばペンタエリスリトール、ソルビトール、グルコース)を使用することにより可能である。共重合において群(d)の内の少なくとも1種のモノマーを使用する場合、使用量は、最高で2モル%、例えば0.001〜1モル%である。
【0046】
好ましい一実施態様においては、モノマー混合物、即ちモノマー(b1)のみ又はサブ群(b2)のモノマーのみのいずれかから成る成分(b)が重合に使用される(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマー(b)を含む)。
【0047】
特に好ましい一実施態様においては、サブ群(b2)のモノマーのみが、式(I)のモノマー(a)による重合に使用される。
【0048】
実施態様Aの水性スラリーのための本発明により使用される水溶性両性コポリマーは、例えば、
(a)重合のために使用されるモノマーの全質量に対して1〜99質量%、好ましくは5〜95質量%、特に20〜90質量%の一般式
【化6】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される、重合のために使用されるモノマーの全質量に対して1〜99質量%、好ましくは5〜95質量%、特に10〜80質量%の少なくとも1種のモノマーであって、好ましくは、重合のために使用されるモノマーの全質量に対して1〜99質量%、特に好ましくは5〜95質量%、とりわけ好ましくは10〜80質量%の、サブ群(b2)から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c)重合のために使用されるモノマーの全質量に対して0〜30質量%、好ましくは0.1〜25質量%、特に1〜15質量%の、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)重合のために使用されるモノマーの全質量に対して0〜5質量%、好ましくは0.0001〜3質量%の、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマー(b)を含む)のフリーラジカル共重合を行い、
続いて前記コポリマーにおける重合単位の形態のモノマー(a)を部分的又は完全に加水分解することにより得られる。
【0049】
例えば、実施態様Aの水性スラリーのための好ましい水溶性両性コポリマーは、
(a)一般式
【化7】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミドと、
(b)3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸及びこれらのカルボン酸の水溶性塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)から選択される群(b2)からの少なくとも1種のモノマーと、
(c)場合により、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマーと、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物と、を共重合し、
続いて前記コポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(a)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより製造されるものである。
【0050】
実施態様Aの水性スラリーのための特に好ましい水溶性両性コポリマーは、
(a)N−ビニルホルムアミドと、
(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩と、
(c)場合により、他のモノエチレン性不飽和モノマーと、を共重合し、
続いて前記コポリマーに含まれるビニルホルムアミド単位を部分的又は完全に加水分解することにより得ることが可能なものである。
【0051】
実施態様Aの水性スラリーのための水溶性両性コポリマー(前記コポリマーは上記の方法によって得られる)の加水分解は、酸、塩基又は酵素(例えば塩酸、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液)の作用により、公知の方法により行われる。ここで、式(II)のビニルアミン単位及び/又は式(III)及び/又は(IV)
【化8】

[式中、アミジン単位(III)及び(IV)において、X-は、各場合においてアニオンである]のアミジン単位を含むコポリマーは、−CO−R1基の除去により、重合単位の形態で組み込まれた上述の式(I)のモノマー(a)から形成する。
【0052】
本来アニオン性のコポリマーは、これによりカチオン性基を得て、しかるに両性になる。
【0053】
アミジン単位(III)及び(IV)は、ビニルホルムアミド単位との式(II)の隣接するビニルアミン単位の反応により、又は、(メタ)アクリロニトリル基との式(II)の隣接するビニルアミン単位の反応により形成する。重合単位の形で組み込まれるN−ビニルカルボン酸アミドの単位から形成されるビニルアミン及びアミジン単位の合計は、下記の水溶性両性コポリマーについて常に示される。
【0054】
モノマーの加水分解は、例えばEP0672212B1の4頁38〜58行目及び5頁1〜25行目に開示されている。加水分解が塩基の存在下で、好ましくは水酸化ナトリウム溶液の存在下で行われる加水分解コポリマーが、好ましくは使用される。重合単位の形態で組み込まれるビニルカルボン酸アミド基の加水分解の程度は、例えば、0.1〜100モル%、一般に1〜98モル%、好ましくは10〜80モル%である。特に好ましくは、加水分解の程度は、水溶性両性コポリマーにおけるカチオン性電荷及びアニオン性電荷がほとんど補償されるように、即ち電荷が等しい状態からの偏差が概して20%以下となるように選択されなければならない。
【0055】
加水分解コポリマーは、例えば、
(i)1〜98モル%、好ましくは1〜75モル%のビニルカルボン酸アミド単位と、
(ii)1〜98モル%、好ましくは1〜55モル%のモノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル又はそれらの誘導体の単位又はモノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物の単位、好ましくは1〜98モル%、好ましくは1〜55モル%の3〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノエチレン性不飽和カルボン酸の単位と、
(iii)1〜98モル%、好ましくは1〜55モル%の式(II)のビニルアミン単位及び/又は式(III)及び/又は(IV)のアミジン単位と、
(iv)最高30モル%の他のモノエチレン性不飽和化合物の単位と、を含む。
【0056】
特に好ましい加水分解コポリマーは、
(i)5〜70モル%のビニルカルボン酸アミド単位と、
(ii)3〜30モル%のモノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸及びそれらの塩の単位、又は、5〜45モル%のアクリル酸、メタクリル酸、それらの塩及び混合物の単位、好ましくは15〜45モル%のアクリル酸及び/又はメタクリル酸の単位と、
(iii)10〜50モル%の塩形態のビニルアミン単位及び/又は式(III)及び/又は(IV)のアミジン単位と、を含むものである。
【0057】
上述の通り、実施態様Bの水性スラリーもまた好ましい。実施態様Bの水性スラリーは、各場合において、群(b)及び(e)の内の少なくとも1種のモノマーと、場合により、群(f)の内の少なくとも1種のモノマーと、場合により、群(d)の内の少なくとも1種のモノマーとを含む。以下、実施態様Bの水性スラリーのための水溶性両性コポリマーについて、更に詳細に記載する。
【0058】
群(b)のモノマーは、実施態様Aの水性スラリーのための水溶性両性コポリマーの群(b)と同一である。同様に、実施態様A及びBの両方において、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物である群(d)のモノマーは同一である。
【0059】
故に、好ましい実施態様を含む上記で与えられたリストは、群(b)及び(d)のモノマーに当てはまる。
【0060】
群(e)の適切なモノマーは、アミノアルコール、好ましくはC2〜C12アミノアルコールとのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のエステルである。これらは、アミン窒素上にC1〜C8モノアルキル化又はC1〜C8ジアルキル化されてよい。これらのエステルの適切な酸成分は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチル及びそれらの混合物である。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの混合物が使用される。これらとしては、例えば、N−メチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
1〜C8塩化アルキル、C1〜C8硫酸ジアルキル、C1〜C16エポキシド又は塩化ベンジルとの上記化合物の四級化生成物もまた適切である。
【0062】
更に、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]メタクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]アクリルアミド、N−[4−(ジメチルアミノ)ブチル]メタクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]アクリルアミド、N−[2−(ジエチルアミノ)エチル]メタクリルアミド及びそれらの混合物は、更なるモノマー(e)として適切である。
【0063】
1〜C8塩化アルキル、C1〜C8硫酸ジアルキル、C1〜C16エポキシド又は塩化ベンジルとの上記化合物の四級化生成物もまた適切である。
【0064】
適切なモノマー(e)は、更に、N−ビニルイミダゾール、アルキルビニルイミダゾール、特に、メチルビニルイミダゾール(例えば、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、3−ビニルイミダゾール−N−オキシド、2−ビニルピリジン及び4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン−N−オキシド及び4−ビニルピリジン−N−オキシド、並びにこれらのモノマーのベタイン誘導体及び四級化生成物である。
【0065】
ジアルキルジアリルアンモニウムクロリドは、群(e)のモノマーとして更に適切である。
【0066】
上述のモノマー(e)は、個別に、又は、任意の所望の混合物の形態で使用され得る。
【0067】
適切なモノマー(f)は、一般式(I)
【化9】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]のN−ビニルカルボン酸アミドである。式(I)の適切な開鎖N−ビニルアミド化合物は、例えば、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニルプロピオンアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、N−ビニルブチルアミド、それらの混合物である。
【0068】
1〜C30アルカノール、C2〜C30アルカンジオールとのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のアミド並びにそのN−アルキル誘導体及びN,N−ジアルキル誘導体、C1〜C30モノカルボン酸とのビニルアルコール及びアリルアルコールのエステル、芳香族ビニル化合物、ビニルハライド、ビニリデンハライド、C2〜C8モノオレフィン及びそれらの混合物は、モノマー(f)として更に適切である。
【0069】
適切な更なるモノマー(f)は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、メチルエタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルエタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチルエタクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物である。
【0070】
適切な更なるモノマー(f)としては、更に、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリル(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、tert−ブチル(メタ)アクリルアミド、n−オクチル(メタ)アクリルアミド、1,1,3,3−テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド、エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、それらの混合物)がある。
【0071】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルエタクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等、及びそれらの混合物は、更にモノマー(f)として適切である。
【0072】
適切なモノマー(f)は、更に、例えば1個以上のC1〜C6アルキル置換基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル)を有してよいN−ビニルラクタム及びその誘導体である。これらとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタムが挙げられる。
【0073】
適切な更なるモノマー(f)としては、更に、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルクロリド、ビニリデンクロリド、ビニルフルオリド、ビニリデンフルオリド、及びそれらの混合物がある。
【0074】
実施態様Bの水性スラリーのための本発明により使用される水溶性両性コポリマーは、例えば、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される、重合のために使用されるモノマーの全質量に対して1〜99質量%、好ましくは5〜95質量%、特に10〜80質量%の少なくとも1種のモノマーであって、重合のために使用されるモノマーの全質量に対して1〜99質量%、好ましくは5〜95質量%、特に10〜80質量%の、サブ群(b2)から選択される少なくとも1種のモノマーと、
(e)重合のために使用されるモノマーの全質量に対して1〜99質量%、好ましくは5〜95質量%、特に20〜90質量%の、カチオン性基及び/又はプロトン化によりカチオン性電荷を得ることができる基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(f)重合のために使用されるモノマーの全質量に対して0〜30質量%、好ましくは0.1〜25質量%、特に1〜15質量%の、成分(b)及び(e)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマーと、
(d)重合のために使用されるモノマーの全質量に対して0〜5質量%、好ましくは0.0001〜3質量%の、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物と、のフリーラジカル重合により得られる。
【0075】
例えば、実施態様Bの水性スラリーのための好ましい水溶性両性コポリマーは、
(b)3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸及びこれらのカルボン酸の水溶性塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)から選択される群(b2)からの少なくとも1種のモノマーと、
(e)アミン窒素上にC1〜C8モノアルキル化又はC1〜C8ジアルキル化されてよいC2〜C12アミノアルコールとのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル並びにC1〜C8塩化アルキル、C1〜C8硫酸ジアルキル、C1〜C16エポキシド又は塩化ベンジルとのこれらのエステルの四級化生成物から成る群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(f)場合により、成分(b)及び(e)とは異なり、且つ、一般式(I)
【化10】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキル、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリルである]のN−ビニルカルボン酸アミドからなる群から選択される少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマーと、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物と、を共重合することによって得ることが可能なものである。
【0076】
実施態様Bの水性スラリーのための特に好ましい水溶性両性コポリマーは、
(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩と、
(e)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメトクロリドと、
(f)N−ビニルホルムアミド、アクリルアミド及び/又はアクリロニトリルと、を共重合することにより得ることが可能なものである。
【0077】
当然、2つの実施態様A及びBの任意の所望の組成物における混合物は、微粒化充填剤の本発明による水性スラリーの製造にも可能である。しかしながら、好ましくは、一実施態様の水溶性両性コポリマーのみが使用される。
【0078】
更に、2つの実施態様A及びBからの前記モノマーの群の任意の所望の混合物を含む水溶性両性コポリマーの実施態様もまた可能である。
【0079】
実施態様A又はBの水性スラリーにおいて使用されるかに関係なく、水溶性両性コポリマーは、当業者に公知の通例の方法によって製造される。適切な方法は、例えばEP0251182A1、WO94/13882及びEP0672212B1に記載されており、それらは参考として本明細書で援用される。更に、WO04/087818A1及びWO05/012637に記載される水溶性両性コポリマーの製造が参照される。
【0080】
水溶性両性コポリマーは、溶液重合、沈殿重合、懸濁重合又はエマルジョン重合により製造され得る。水性媒体中の溶液重合が好ましい。適切な水性媒体としては、水及び水と少なくとも1種の水混和性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール)との混合物がある。
【0081】
重合温度は、好ましくは約30〜200℃、特に好ましくは40〜110℃の範囲である。重合は、通常は大気圧下で行われるが、減圧下又は超大気圧下で行うこともできる。適切な圧力範囲は、0.1〜5バールである。
【0082】
酸基を含有するモノマー(b)は、好ましくは塩の形態で使用される。共重合のために、pHは、好ましくは6〜9の範囲の値に調整される。通例の緩衝液を使用することにより、又は、pHの測定と、それに対応する酸又は塩基の添加とにより、pHは、重合中に一定に維持され得る。
【0083】
ポリマーの製造のために、モノマーは、フリーラジカル反応開始剤の助力により重合され得る。
【0084】
フリーラジカル重合のために使用され得る開始剤としては、この目的のために通例のペルオキソ化合物及び/又はアゾ化合物、例えば、アルカリ性ペルオキソ二硫酸金属又はペルオキソ二硫酸アンモニウム、過酸化アセチル、過酸化ジベンゾイル、過酸化スクシニル、ジ−tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルピバレート、tert−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルペルマレエート、クミルヒドロペルオキシド、ジイソプロピルペルオキソジカルバメート、ビス(o−トルオイル)ペルオキシド、ジデカノイルペルオキシド、ジオクタノイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペルアセテート、ジ−tert−アミルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド又は2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)がある。開始剤混合物又はレドックス開始剤系(例えば、アスコルビン酸/硫酸鉄(II)/ペルオキソ二硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド/二亜硫酸ナトリウム、tert−ブチルヒドロペルオキシド/ナトリウム−ヒドロキシメタンスルフィナート、H22/CuI)もまた適切である。
【0085】
分子量を調整するために、重合は、少なくとも1種の調節剤の存在下で行うことが可能である。使用され得る調節剤は、当業者に公知の通例の化合物、例えば、硫黄化合物、例えばメルカプトエタノール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、チオグリコール酸、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸又はドデシルメルカプタン、トリブロモクロロメタン又は得られたポリマーの分子量に対する調節効果を有する他の化合物である。
【0086】
水溶性両性コポリマーのモル質量は、例えば、少なくとも10000、好ましくは少なくとも100000ダルトン、特に少なくとも500000ダルトンである。従って、コポリマーのモル質量は、例えば、10000〜10000000、好ましくは100000〜5000000(例えば光散乱により決定される)である。このモル質量の範囲は、例えば、5〜300、好ましくは10〜250のK値(25℃、0.1質量%のポリマー濃度での5%濃度の塩化ナトリウム水溶液においてH.Fikentscherにより決定される)に相当する。
【0087】
水溶性両性コポリマーは、過剰なアニオン性電荷又は過剰なカチオン性電荷を有することができるか、或いは、等しい数のアニオン基とカチオン基とが前記コポリマー中に含まれる場合に電気的に中性であり得る。水溶性両性コポリマーの荷電状態に応じて、それにより製造される充填剤の水性スラリーは、アニオン性、カチオン性、又は前記水溶性両性コポリマーが等量のカチオン性及びアニオン性電荷を有する場合に電気的に中性である。
【0088】
好ましく使用される水溶性両性コポリマーは、好ましくは、アニオン性とカチオン性の両方の範囲でpH7で1meq/g以下の電荷密度を有するものである。
【0089】
本発明によれば、水溶性両性コポリマーは、微粒化充填剤の処理のために使用される。適切な充填剤は、製紙工業において使用され得る全ての顔料であり、無機材料、例えば、粉砕石灰(GCC)の形態で使用され得る炭酸カルシウム、白亜、大理石又は沈降炭酸カルシウム(PCC)、タルク、カオリン、ベントナイト、サチンホワイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム及び二酸化チタンを含む。二個以上の顔料の混合物にも使用可能である。中央粒径は、例えば、0.5〜30μm、好ましくは1〜10μmの範囲である。
【0090】
本発明による水性スラリーは、更に、少なくとも1種のラテックス、即ち少なくとも1種の水不溶性ホモポリマー又はコポリマーを含み、それは、同様に微粒化充填剤の処理に使用される。
【0091】
ラテックスは、好ましくは、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも60質量%、特に好ましくは少なくとも80質量%のいわゆるメインモノマー(g)を含む。
【0092】
メインモノマー(g)は、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレート、最高20個の炭素原子を含むカルボン酸のビニルエステル、最高20個の炭素原子を有する芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハライド、1〜10個の炭素原子を含むアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子と1個又は2個の二重結合とを有する脂肪族炭化水素、及びこれらのモノマーの混合物から選択される。
【0093】
例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のC1〜C10アルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが言及され得る。
【0094】
特に、アルキル(メタ)アクリレートの混合物も適切である。
【0095】
1〜20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルとしては、例えば、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート、ビニルバーサテート、ビニルアセテートがある。
【0096】
適切な芳香族ビニル化合物は、ビニルトルエン、α−メチルスチレン及びp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、好ましくはスチレンである。ニトリルの例としては、アクリロニトリルやメタクリロニトリルがある。
【0097】
ビニルハライドは、塩素、フッ素又は臭素で置換したエチレン性不飽和化合物であり、好ましくはビニルクロリド及びビニリデンクロリドである。
【0098】
ビニルエーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテル又はビニルイソブチルエーテルが言及され得る。1〜4個の炭素原子を含むアルコールのビニルエーテルが好ましい。
【0099】
2〜8個の炭素原子と1個又は2個のオレフィン二重結合とを有する脂肪族炭化水素としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレンが言及され得る。
【0100】
好ましいメインモノマー(g)としては、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレート、芳香族ビニル化合物とのアルキル(メタ)アクリレートの混合物、特にスチレン(ポリアクリレートラテックスとしてもまとめられる)又は2個の二重結合を有する炭化水素、特にブタジエン、又は芳香族ビニル化合物とのかかる炭化水素の混合物、特にスチレン(ポリブタジエンラテックスとしてもまとめられる)がある。
【0101】
ポリアクリレートラテックスの場合、芳香族ビニル化合物(特にスチレン)に対するアルキル(メタ)アクリレートの質量比は、例えば、10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20であり得る。
【0102】
ポリブタジエンラテックスの場合、芳香族ビニル化合物(特にスチレン)に対するブタジエンの質量比は、例えば、10:90〜90:10、好ましくは20:80〜80:20であり得る。
【0103】
メインモノマー(g)に加えて、前記ラテックスは、更なるモノマー(h)、例えばカルボキシル基、スルホ基又はホスホン酸基を有するモノマーを含むことができる。カルボキシル基が好ましい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸又はフマル酸及びアコニット酸が言及され得る。ラテックスにおけるエチレン性不飽和酸の含有量は、一般に10質量%未満である。
【0104】
更なるモノマー(h)は、例えば、ヒドロキシル基を含むモノマー、特にC1〜C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート又はアミド(例えば(メタ)アクリルアミド)である。
【0105】
更なるモノマー(h)は、フリーラジカル重合が可能な少なくとも2個、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜4個、非常に特に好ましくは2又は3個、特に2個の二重結合を有する化合物である。かかる化合物は、架橋剤とも呼ばれる。
【0106】
フリーラジカル重合が可能な架橋剤(h)の少なくとも2個の二重結合は、(メタ)アクリロイル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基及びアリルエステル基からなる群から選択され得る。架橋剤(h)の例としては、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリチルテトラ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、メタリルアクリレート、メタリルメタクリレート、ブタ−3−エン−2−イル(メタ)アクリレート、ブタ−2−エン−1−イル(メタ)アクリレート、3−メチルブタ−2−エン−1−イル(メタ)アクリレート、ゲラニオールとの(メタ)アクリル酸のエステル、シトロネロール、シンナミルアルコール、グリセリルモノアリルエーテル又はグリセリルジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル又はトリメチロールプロパンジアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,3−プロパンジオールモノアリルエーテル、1、4−ブタンジオールモノアリルエーテル、更にジアリルイタコネートがある。アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
【0107】
好ましく使用されるポリアクリレートラテックスは、芳香族ビニル化合物、アルキル(メタ)アクリレート、更に親水性モノマー(例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸)から構成されるものである。例えば、かかる好ましいポリアクリレートラテックスは、20〜50質量%のスチレンと、30〜80質量%のアルキル(メタ)アクリレートと、0〜30質量%の更なる親水性モノマー(例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸)とを含む。
【0108】
ラテックスは、概してエマルジョン重合によって製造されるため、ポリマーはエマルジョンポリマーである。フリーラジカルエマルジョン重合方法による水性ポリマー分散液の製造は、それ自体公知である(Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV,Makromolekulare Stoffe,loc.cit.,page133 et seq.参照)。
【0109】
ラテックスの製造のためのエマルジョン重合において、イオン乳化剤及び/又は非イオン乳化剤及び/又は保護コロイド又は安定剤が、表面活性化合物として使用される。表面活性物質は、通常、重合されるモノマーに対して0.1〜10質量%、特に0.2〜3質量%の量で使用される。
【0110】
通例の乳化剤は、例えば、ナトリウムn−ラウリルサルフェート等のより高級の脂肪アルコール硫酸エステル塩のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩、脂肪アルコールホスフェート、3〜30のエトキシル化度を有するエトキシ化C8〜C10アルキルフェノール、5〜50のエトキシル化度を有するエトキシ化C8〜C25脂肪アルコールである。非イオン乳化剤及びイオン乳化剤の混合物もまた考えられる。リン酸基又は硫酸基を含有するエトキシ化及び/又はプロポキシル化アルキルフェノール及び/又は脂肪アルコールは、更に適切である。更に適切な乳化剤は、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie,volume XIV,Makromolekulare Stoffe,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1961,pages192 to 209に言及されている。
【0111】
ラテックスの製造のためのエマルジョン重合のための水溶性開始剤は、例えば、ペルオキソ二硫酸のアンモニウム塩及びアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素、又は有機過酸化物、例えばtert−ブチルヒドロペルオキシドである。
【0112】
いわゆる酸化還元(レドックス)開始剤系もまた適切である。
【0113】
開始剤の量は、一般に、重合するモノマーに対して0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。エマルジョン重合においては、複数の異なる開始剤を使用することも可能である。
【0114】
エマルジョン重合においては、例えば、モル質量を減少させる手段により重合するモノマー100質量部に対して0〜3質量部の量の調節剤を使用することができる。例えば、チオール基を有する化合物(例えばtert−ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリレート、メルカプトエタノール、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、tert−ドデシルメルカプタン)又はチオール基を有さない調節剤(特に例えばテルピノレン)が適切である。
【0115】
ラテックスの製造のためのエマルジョン重合は、概して30〜130℃、好ましくは50〜100℃で行われる。重合媒体は、水のみから、或いは、水とそれと混和性の液体(例えばメタノール)との混合物から成ることができる。好ましくは、水のみが使用される。エマルジョン重合は、バッチ方法として、並びに、段階方式又は勾配方式を含むフィード方法の形態の両方で行うことが可能である。最初に重合バッチの一部が取られ、重合温度まで加熱され、前重合され、次いで重合バッチの残りを、通常、重合を維持しつつその1つ以上が純粋形態又は乳化形態のモノマーを含む複数の空間的に別個のフィードで、連続的に、段階的に、又は濃度勾配を重ね合わせて重合領域にフィードするフィード方法が好ましい。前記重合においては、例えば粒径のより良好な調整のために、ポリマーシードもまた最初に取ることができる。
【0116】
フリーラジカル水性エマルジョン重合中に開始剤を重合器に添加する方法は、平均的な当業者に公知である。それは、フリーラジカル水性エマルジョン重合中に、最初に重合器に完全に取るか、或いは、その消費率で連続的に又は段階的に使用され得る。具体的には、これは、開始剤系の化学的性質に依存すると共に、重合温度に依存する。好ましくは、一部を最初に取り、残りは、消費率に従って重合領域にフィードされる。
【0117】
残存モノマーを除去するために、開始剤は、通常、実際のエマルジョン重合の終了後、即ち少なくとも95%のモノマーが転化した後に添加される。
【0118】
フィード方法において、個々の成分は、上部から、側部で、又は反応器の底部を通して下部から反応器に添加され得る。
【0119】
(共)重合の後、ラテックスに含まれる酸基はまた、少なくとも部分的に中和される。これは、例えば、任意の所望の対イオン又は複数の対イオンが会合する(例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、又はBa2+)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩又は重炭酸塩、好ましくは水酸化物により行うことが可能である。アンモニア又はアミンは、更に中和のために適切である。水酸化アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液又は水酸化カリウム水溶液が好ましい。
【0120】
エマルジョン重合においては、概して15〜75質量%、好ましくは40質量%〜75質量%の固形分を有するラテックスの水性分散液が得られる。
【0121】
ラテックスのガラス転移温度Tgは、例えば、−30〜100℃の範囲、好ましくは−5〜70℃の範囲、特に好ましくは0〜40℃の範囲である(DIN EN ISO 11357によるDSC方法で測定)。
【0122】
ラテックスの粒径は、好ましくは10〜1000nmの範囲、特に好ましくは50〜300nmの範囲である(Malvern(登録商標)Autosizer2Cを使用して測定)。
【0123】
更に、微粒化充填剤の本発明による水性スラリーはまた、水溶性両性コポリマー及びラテックスに加えて、微粒化充填剤の処理に同様に使用される更なる成分を含むことができる。微粒化充填剤の処理のための第3の成分として、好ましくは膨化デンプンが使用される。
【0124】
使用するデンプンの種類に関係なく、この膨化デンプンは、製紙工業において通常使用される完全消化デンプンとは明らかに区別可能である。通常使用される完全消化デンプンの場合、デンプン粒は完全に破裂しており、デンプンは分子分散の形態で存在する。それに対して、本発明による水性スラリーにおけるデンプンは膨化し、即ちデンプン粒子は、膨化するが、実質的に非断片的なデンプン粒子となる。デンプンは膨化するが、その粒状組織を維持している。このように膨化するデンプン粒子は、使用するデンプンの種類に応じて、概して5〜90μm、好ましくは30〜70μmの範囲のサイズを有する。
【0125】
膨化デンプンは、熱水によって非膨化デンプンを含む水性組成物を処理することにより得られる。この処理は、それぞれの種類のデンプンに関連した糊化温度未満で行われ、その結果デンプン粒子が膨化するだけで破裂しないことが確保される。添加される熱水の温度及び熱環境中のデンプン粒の滞留時間は、使用するデンプンの種類に依存しており;しかしながら、概して、熱水は、50〜85℃の範囲、好ましくは60〜80℃の範囲、特に好ましくは70〜75℃の範囲の温度を有する。
【0126】
膨化方法は、好ましくは温かい水性デンプン混合物に冷水を添加することにより、特定の時間の後に停止されるが、その時間は、使用するデンプンの種類と熱水の温度とに応じて決定されなければならない。
【0127】
デンプンの膨化については、WO03/087472A1に記載されており、それは参考として本明細書で援用される。
【0128】
デンプンの適切な種類は、製紙工業において通例の全てのデンプンであり、アニオン性、カチオン性又は両性であってよい。デンプンの平均モル質量Mwは、例えば、50000〜150000000の範囲、好ましくは100000〜100000000の範囲、特に好ましくは200000〜50000000の範囲である。デンプンの平均分子量Mwは、当業者に公知の方法により、例えば、多角レーザ光散乱検出器を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィにより決定することが可能である。
【0129】
適切な種類のデンプンは、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン、タピオカデンプン等の天然デンプンであり、ジャガイモデンプンが好ましい。化工デンプン(例えばヒドロキシエチルデンプンやヒドロキシプロピルデンプン)、アニオン基を含むデンプン(例えばホスフェートデンプン)、又は第四級アンモニウム基を含むカチオンデンプンを使用することも可能であり、置換度DS=0.01〜0.2が好ましい。置換度DSは、デンプンにおいてグルコース1単位当たりの平均で存在するカチオン基の数を示す。第四アンモニウム基及びアニオン基(例えばカルボキシレート基及び/又はリン酸基)の両方を含み、且つ、場合により、化学修飾(例えばヒドロキシアルキル化又はアルキルエステル化)してもよい両性デンプンは、特に好ましい。デンプンは、個別に使用され得るが、互いに任意の所望の混合物で使用することもできる。
【0130】
膨化デンプンの量は、各場合において充填剤に対して、一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%の範囲、特に好ましくは0.5〜2.5質量%の範囲である。
【0131】
上記の通り、本発明はまた、水性スラリーの製造のための方法に関する。水性スラリーは、充填剤に対して0.01〜5質量%の少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと、充填剤に対して0.1〜10質量%の少なくとも1種のラテックスとで少なくとも1種の微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られる。
【0132】
水溶性両性コポリマーとラテックスとによる微粒化充填剤の処理は、各種方法で行うことができる。原則として、3成分(水溶性両性コポリマー、ラテックス、充填剤)の考えられるいかなる化合も可能である。
【0133】
例えば、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとによる少なくとも1種の微粒化充填剤の水性スラリーの処理は、以下のように行うことができる:
(A)少なくとも1種の微粒化充填剤を含む水性スラリーの製造、少なくとも1種のラテックスの水性分散液の添加、続いてこの充填剤−ラテックス組成物への少なくとも1種の水溶性両性コポリマーの水溶液の添加、
(B)少なくとも1種の微粒化充填剤を含む水性スラリーの製造、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーの水溶液の添加、この充填剤−コポリマー組成物への少なくとも1種のラテックスの水性分散液の添加。
【0134】
全ての変形例において、まず、微粒化充填剤の水性スラリーの製造を行い、そのスラリー内に、他の2種の成分(水溶性両性コポリマー及びラテックス)を連続して計量しながら供給する。充填剤を、例えば水中に導入することにより処理して、水性スラリーが得られる。沈降炭酸カルシウムは、通常、分散物が存在しない水中で懸濁される。他の充填剤の水性スラリーを製造するために、概して、例えば1000〜40000ダルトンの平均モル質量Mwを有するポリアクリル酸等のアニオン系分散剤が使用される。アニオン系分散剤を使用する場合、水性充填剤スラリーの製造のために、例えば0.01〜0.5質量%、好ましくは0.2〜0.3質量%のアニオン系分散剤が用いられる。アニオン系分散剤の存在下で水中に分散した微粒化充填剤は、アニオン性である。水性スラリーは、例えば、10〜30質量%、一般に15〜25質量%の少なくとも1種の充填剤を含む。
【0135】
本発明による方法の好ましい実施態様においては、個々の成分の連続した添加とは独立して、まずラテックス分散液の安定性が低下する。一般に、ラテックス分散液の安定性の低下は、顔料表面へのラテックスの親和性の改善が達成される結果により、有利である可能性がある。例えば、ラテックス分散液の安定性の低下は、
a)添加前に少なくとも1種のラテックスの水性分散液を70℃に加熱すること、
b)pHを変化させること、
c)ラテックス分散液に、反対電荷を有する無機イオンを添加すること、特にCa2+やAl3+等のイオンを添加すること、
d)ラテックス分散液に、反対電荷を有する多重荷電有機化合物を添加すること、
e)ラテックス分散液に、反対電荷を有する多価電解質を添加すること、
f)有機溶媒、例えばアセトンを添加すること、又は、
g)疎水性対イオン、例えばテトラアルキルアンモニウムイオンを添加すること、により達成され得る。
【0136】
上記の通り、微粒化充填剤の水性スラリーは、更なる成分で処理することが可能であり、少なくとも1種の膨化デンプンが好ましい。一般に、膨化デンプンの量は、充填剤に対して0.1〜10質量%である。原則として、全ての成分(充填剤、水溶性両性コポリマー、ラテックス、デンプン)の考えられるいかなる化合も可能である。非膨化状態のデンプンを他の成分の内の少なくとも1種と混合し、次いで少なくとも1種の成分の存在下で膨化を行うことと、他の成分とは独立してデンプンの膨化を行い、次いで膨化デンプンを他の成分の内の少なくとも1種と混合することとの両方が可能である。
【0137】
水溶性両性コポリマー、ラテックス及び場合により膨化デンプンによる微粒化充填剤の水性スラリーの処理は、成分(充填剤、水溶性両性コポリマー、ラテックス、場合によりデンプン)の水性スラリー又は水溶液の連続的な添加とは独立して、連続的に又はバッチ式で行うことができる。水性スラリー及び微粒化充填剤、ラテックスの水性分散液、水溶性両性コポリマーの水溶液、及び場合により膨化デンプンの水性スラリーを化合させる際には、水溶性両性コポリマー、ラテックス及び場合により膨化デンプンを充填剤粒子に少なくとも部分的に被覆又は含浸させる。
【0138】
成分の混合は、例えば剪断場で行われる。一般にそれは、化合後にUltraturrax装置の剪断場において成分を撹拌又は処理する場合、十分である。水性スラリーの成分の化合及び混合は、例えば0℃〜60℃、好ましくは10〜50℃の温度範囲で行うことができる。一般に、成分は、40℃の温度までのそれぞれの室温で混合される。微粒化充填剤の水性スラリー(そのスラリーは、水溶性両性コポリマー及び膨化デンプンで処理されたものである)のpHは、例えば5〜11、好ましくは6〜9であり、炭酸カルシウムを含むスラリーのpHは、好ましくは6.5超である。
【0139】
水溶性両性コポリマーにおいて、ポリマー鎖に結合する反対電荷可能性/電荷のイオン解離可能/解離基は、相対的にかなりの数である。微粒化充填剤の水性スラリーと接触すると、クーロン相互作用が生じる可能性がある。接触すると、それにより、一般に、ポリマー粒子の表面が少なくとも部分的に占有される。これは、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)によって示すことが可能である。表面電荷は、ゼータ電位測定により更に測定することが可能であり、それによって、電荷が外側にあることが示される。電気泳動移動度及びゼータ電位は、レーザ光学法により決定され得る。測定機器としては、例えばMalvern Instruments Ltd.のZetasizer3000HSが使用される。
【0140】
更に、本発明は、製紙原料の脱水による充填剤含有紙、充填剤含有厚紙又は充填剤含有板紙の製造における製紙原料への添加剤としての上述の水性スラリーの使用に関する。
【0141】
これらとしては、具体的には、充填剤含有紙(例えば、木材を含まず、コーティングしていない印刷用紙、筆記用紙、複写用紙)や、木材を含有する、コーティングしていない紙(例えば、再生新聞用紙やオフセット又はグラビア印刷セクター用SC紙)がある。少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと共に少なくとも1種のラテックスで、紙に添加された充填剤を処理することにより、紙の充填材含有量は、ほとんど変化しない強度特性と共に実質的に増大し得る。本発明による水性スラリーを使用して得られる、充填剤含有紙、厚紙及び板は、低固体含有量を有する従来の紙と同様の強度特性を有する。
【0142】
上記の方法により前処理された充填剤は、しかるに全製紙原料を形成するために繊維と混合される。前記全原料は、処理された充填剤及び繊維に加えて、他の従来紙添加剤を含むこともできる。これらとしては、例えば、アルキルケテンダイマ(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジンサイズ剤、湿潤紙力増強剤、合成ポリマー系のカチオン性歩留向上剤又はアニオン性歩留向上剤等のサイズ剤が挙げられる。適切な歩留向上剤は、例えば、アニオン性微小粒子(コロイダルシリカ、ベントナイト)、アニオンポリアクリルアミド、カチオンポリアクリルアミド、カチオンデンプン、カチオンポリエチレンイミン又はカチオンポリビニルアミンである。更に、任意の所望のそれらの化合物(例えば、アニオン性微小粒子とのカチオン性ポリマーから成る二重系又はカチオン性微小粒子とのアニオン性ポリマーから成る二重系)が考えられる。
【0143】
本発明について、以下の非限定的な実施例を参照して更に詳細に説明する。
【0144】
実施例において示されるパーセンテージは、特に文脈から明らかでない限り質量パーセントである。
【0145】
実施例において、以下の水溶性両性コポリマーが使用される:
コポリマー1:約2000000g/モルの分子量Mwを有し;35モル%のビニルホルムアミド単位、30モル%のアクリル酸単位並びに35モル%のビニルアミン及びアミド単位の含有量を有する水溶性両性コポリマー
コポリマー2:WO04/087818A1の実施例1に対応する約500000g/モルの分子量Mwを有し;40モル%のビニルホルムアミド単位、30モル%のアクリル酸単位並びに30モル%のビニルアミン及びアミジン単位の含有量を有する水溶性両性コポリマー。
【0146】
実施例1
沈降炭酸カルシウム(PCC)の水性スラリー20質量%濃度を穏やかに撹拌しながら45℃に加熱した。50質量%濃度の1.8gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を、穏やかに撹拌しながら、この水性PCCスラリー150gと混合した。10質量%濃度の0.6gの両性コポリマー1の水溶液を、同様に穏やかに撹拌しながら、この混合物と混合した。その後、全混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000回転数/分(rpm)で撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0147】
実施例2
沈降炭酸カルシウム(PCC)の水性スラリー20質量%濃度を穏やかに撹拌しながら45℃に加熱した。10質量%濃度の0.6gの両性コポリマー1の水溶液を、穏やかに撹拌しながら、この水性PCCスラリー150gと混合した。50質量%濃度の1.8gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を、同様に穏やかに撹拌しながら、この混合物と混合した。その後、全混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0148】
実施例3
最初に10質量%濃度の0.6gの両性コポリマー1の水溶液をビーカーに取り、次いで30gの水で希釈した。次いで、50質量%濃度の1.8gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を穏やかに撹拌しながら添加した。その後、水における150gの沈降炭酸カルシウム(PCC)のスラリー20質量%濃度を、そのスラリーを事前に45℃に加熱した上で、添加した。PCCスラリーの添加の間及びその後において、混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0149】
実施例4
市販のカオリン粘土の水性スラリー30質量%濃度を穏やかに撹拌しながら55℃に加熱した。50質量%濃度の2.7gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を、穏やかに撹拌しながら、この水性カオリン粘土スラリー150gと混合した。10質量%濃度の0.9gの両性コポリマー1の水溶液を、同様に穏やかに撹拌しながら、この混合物と混合した。その後、全混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0150】
実施例5
市販のカオリン粘土の水性スラリー30質量%濃度を穏やかに撹拌しながら55℃に加熱した。10質量%濃度の0.9gの両性コポリマー1の水溶液を、穏やかに撹拌しながら、この水性カオリン粘土スラリー150gと混合した。50質量%濃度の2.7gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を、同様に穏やかに撹拌しながら、この混合物と混合した。その後、全混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0151】
実施例6
最初に10質量%濃度の0.9gの両性コポリマー1の水溶液をビーカーに取り、次いで30gの水で希釈した。次いで、50質量%濃度の2.7gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を穏やかに撹拌しながら添加した。その後、水における150gの市販のカオリン粘土のスラリー30質量%濃度を、そのスラリーを事前に55℃に加熱した上で、添加した。カオリン粘土スラリーの添加の間及びその後において、混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0152】
比較例1(WO04/087818A1(実施例1)による比較)
最初に12質量%濃度の1gの両性コポリマー2の水溶液をビーカーに取り、次いで30gの水で希釈した。その後、水における150gの沈降炭酸カルシウム(PCC)のスラリー20質量%濃度を、そのスラリーを事前に45℃に加熱した上で、添加した。PCCスラリーの添加の間及びその後において、混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0153】
比較例2(WO04/087818A1(実施例7)による比較)
最初に12質量%濃度の1.5gの両性コポリマー2の水溶液をビーカーに取り、次いで30gの水で希釈した。その後、水における150gの市販のカオリン粘土のスラリー30質量%濃度を、そのスラリーを事前に45℃に加熱した上で、添加した。カオリン粘土スラリーの添加の間及びその後において、混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0154】
比較例3(WO03/087472A1による比較)
0.035の置換度を有するカチオン性蝋状トウモロコシデンプンを25℃の水に懸濁して20質量%濃度のスラリーを得た。次いで、50質量%濃度の1.8gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を混合した。次いで、この混合物を400mLの熱水(75℃)で希釈し、穏やかに90秒間撹拌した。その後、25mLの希釈スラリーを取り、ビーカー内に入れた。その後、150gの沈降炭酸カルシウム(PCC)の水性スラリー20質量%濃度を、そのスラリーを室温(約25℃)で静置した上で、穏やかに撹拌しながら添加した。PCCスラリーの添加の間及びその後において、混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0155】
比較例4(WO03/087472A1による比較)
0.035の置換度を有するカチオン性蝋状トウモロコシデンプンを25℃の水に懸濁して30質量%濃度のスラリーを得た。次いで、50質量%濃度の2.7gのアニオン性ラテックスの分散液(Catiofast(登録商標)PR5335X、BASF Aktiengesellschaft)を混合した。次いで、この混合物を400mLの熱水(75℃)で希釈し、穏やかに90秒間撹拌した。その後、25mLの希釈スラリーを取り、ビーカー内に入れた。その後、150gの市販のカオリン粘土の水性スラリー30質量%濃度を、そのスラリーを室温(約25℃)で静置した上で、穏やかに撹拌しながら添加した。カオリン粘土スラリーの添加の間及びその後において、混合物を、Heiltof撹拌機を用いて、1000rpmで撹拌した。次いで、混合物のpHを8.5に調整した。
【0156】
充填剤含有紙の製造
種類Aの紙
実施例7〜15
比較例5〜13
実験室のパルパーにおいて、漂白樺サルフェートと漂白松サルファイトとの混合物を、30〜35の濾水度に達するまで、70/30の比で4%の固体濃度でゲルフリーで強く撹拌した。次いで、強く撹拌した原料に、蛍光増白剤(Blankophor(登録商標)PSG,Bayer AG)及びカチオンデンプン(HiCat(登録商標)5163A)を添加した。カチオンデンプンの消化を、130℃のジェット消化槽内で1分間の滞留時間で10質量%濃度のデンプンスラリーとして行った。蛍光増白剤の測定量は、製紙原料懸濁液の固体含有量に対して、商品の0.5質量%であった。カチオンデンプンの測定量は、製紙原料懸濁液の固体含有量に対して、デンプンの0.5質量%であった。前記原料のpHは、7〜8の範囲内であった。次いで、強く撹拌した原料を、水の添加により0.35質量%の固体濃度に希釈した。
【0157】
充填剤含有紙の製造において上述の水性充填剤スラリーの作用を決定するために、各場合において500mLの製紙原料懸濁液を最初に取り、各場合において、実施例により処理されたスラリー、歩留向上剤としてのカチオンポリアクリルアミド(Polymin(登録商標)KE440,BASF Aktiengesellschaft)をこのパルプ内に計り入れた。歩留向上剤の測定量は、各場合において、製紙原料懸濁液の固体含有量に対して0.01質量%のポリマーであった。
【0158】
次いで、上記の前処理された充填剤を有するシートを形成した(実施例7〜15及び比較例5〜10)。この目的のために使用された充填剤の量を、充填材含有量が約20%、30%及び40%になるように適合させた。前処理された充填剤の場合、特定の目標値を達成するために使用しなければならないスラリーの量は、未処理の充填剤の場合よりも常に小さい。
【0159】
更に、前処理された充填剤の種類の各々のために、未処理の充填剤による比較例を実施した(比較例11〜13)。この目的のために、約20%、30%及び40%の充填材含有量を確立するために必要とされる未処理の充填剤スラリーの量を最初に予備的実験において決定した。次いで、未処理の充填剤を有するシートを形成した。
【0160】
紙シートを、各場合においてISO5269/2によるRapid−Koethenシートフォーマで70g/m2のシート質量で製造し、次いで90℃で7分間乾燥した。
【0161】
種類Bの紙
実施例16〜24
比較例14〜22
実験室のパルパーにおいて、TMP(サーモメカニカルパルプ)と砕木パルプとの混合物を、45SRの濾水度に達するまで、70/30の比で4%の固体濃度でゲルフリーで強く撹拌した。前記原料のpHは、7〜8の範囲内であった。強く撹拌した原料を、水の添加により0.35質量%の固体濃度に希釈した。
【0162】
充填剤含有紙の製造において上述の水性充填剤スラリーの作用を決定するために、各場合において500mLの製紙原料懸濁液を最初に取り、各場合において、実施例及び比較例により処理されたスラリー、歩留向上剤としてのカチオンポリアクリルアミド(Polymin(登録商標)KE440,BASF Aktiengesellschaft)をこのパルプ内に計り入れた。歩留向上剤の測定量は、各場合において、製紙原料懸濁液の固体含有量に対して0.01質量%のポリマーであった。
【0163】
次いで、上記の前処理された充填剤を有するシートを形成した(実施例16〜24及び比較例14〜19)。この目的のために使用された充填剤の量を、充填材含有量が約20%、30%及び40%になるように適合させた。前処理された充填剤の場合、特定の目標値を達成するために使用しなければならないスラリーの量は、未処理の充填剤の場合よりも常に小さい。
【0164】
更に、前処理された充填剤の種類の各々のために、未処理の充填剤による比較例を実施した(比較例20〜22)。この目的のために、約20%、30%及び40%の充填材含有量を確立するために必要とされる未処理の充填剤スラリーの量を最初に予備的実験において決定した。次いで、未処理の充填剤を有するシートを形成した。
【0165】
紙シートを、各場合においてISO5269/2によるRapid−Koethenシートフォーマで80g/m2のシート質量で製造し、次いで90℃で7分間乾燥し、次いで200N/cmのニップ圧でカレンダ仕上げを行った。
【0166】
種類Aの紙シートの試験
一定の23℃及び50%の相対湿度で調整されたチャンバ内で12時間の保存時間後、シートの乾燥裂断長をDIN54540により決定し、内部結合強度をDIN54516により決定し、剛性をDIN53121により決定した。結果を第1表に示す。比較例に対応するスラリー又はそれから製造された紙シートによる比較例は、添加(VB)を特徴とする。他の実施例は、本発明による実施例である。
【0167】
種類Bの紙シートの試験
一定の23℃及び50%の相対湿度で調整されたチャンバ内で12時間の保存時間後、シートの乾燥裂断長をDIN54540により決定し、内部結合強度をDIN54516により決定した。紙の乾式紙剥け耐性を、IGT印刷適性試験機(ISO3783)を使用して決定した。結果を第2表に示す。比較例に対応するスラリー又はそれから製造された紙シートによる比較例は、添加(VB)を特徴とする。他の実施例は、本発明による実施例である。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとを含む組成物で少なくとも部分的に被覆されている微粒化充填剤の水性スラリー。
【請求項2】
前記水性スラリーが、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(a)一般式
【化1】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c)場合により、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、のモノマー混合物(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマー(b)を含む)を共重合し、
続いて前記コポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(a)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより得られる、請求項1に記載の水性スラリー。
【請求項3】
前記水性スラリーが、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(a)一般式
【化2】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸並びにこれらのカルボン酸の水溶性塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)から選択される群(b2)からの少なくとも1種のモノマー、
(c)場合により、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、のモノマー混合物を共重合し、
続いて前記コポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(a)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより得られる、請求項1又は2に記載の水性スラリー。
【請求項4】
前記水性スラリーが、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(a)N−ビニルホルムアミドと、
(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそれらのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩と、
(c)場合により、他のモノエチレン性不飽和モノマーと、のモノマー混合物を共重合し、
続いて前記コポリマーに含まれるビニルホルムアミド単位を部分的又は完全に加水分解することにより得られる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項5】
前記コポリマーに含まれるビニルホルムアミド単位の加水分解が、酸、塩基又は酵素の作用により行われる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項6】
重合単位の形態で組み込まれるビニルカルボン酸アミド基の加水分解の程度が、0.1〜100モル%である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項7】
前記加水分解コポリマーが、
(i)1〜98モル%、好ましくは1〜75モル%のビニルカルボン酸アミド単位と、
(ii)1〜98モル%、好ましくは1〜55モル%のモノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル又はそれらの誘導体の単位又はモノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物の単位、好ましくは1〜98モル%、好ましくは1〜55モル%の3〜8個の炭素原子を有する少なくとも1種のモノエチレン性不飽和カルボン酸の単位と、
(iii)1〜98モル%、好ましくは1〜55モル%の式(II)のビニルアミン単位及び/又は式(III)及び/又は(IV)のアミジン単位と、
【化3】

[式中、アミジン単位(III)及び(IV)において、X-は、各場合においてアニオンである]
(iv)最高30モル%の他のモノエチレン性不飽和化合物の単位と、を含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項8】
前記加水分解コポリマーが、
(i)5〜70モル%のビニルカルボン酸アミド単位と、
(ii)3〜30モル%のモノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸及びそれらの塩の単位、又は、5〜45モル%のアクリル酸、メタクリル酸、それらの塩及び混合物の単位、好ましくは15〜45モル%のアクリル酸及び/又はメタクリル酸の単位と
(iii)10〜50モル%の塩形態のビニルアミン単位及び/又は式(III)及び/又は(IV)のアミジン単位と、を含む、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項9】
前記水性スラリーが、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(e)カチオン性基及び/又はプロトン化によりカチオン性電荷を付与することができる基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
(f)場合により、成分(b)及び(e)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、を含むモノマー混合物を共重合することにより得られる、請求項1に記載の水性スラリー。
【請求項10】
前記水性スラリーが、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(b)3〜8個の炭素原子を有するモノエチレン性不飽和カルボン酸及びこれらのカルボン酸の水溶性塩(例えばアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩)から選択される群(b2)からの少なくとも1種のモノマーと、
(e)アミン窒素上にC1〜C8モノアルキル化又はC1〜C8ジアルキル化されてよいC2〜C12アミノアルコールとのα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸のエステル並びにC1〜C8塩化アルキル、C1〜C8硫酸ジアルキル、C1〜C16エポキシド又は塩化ベンジルとのこれらのエステルの四級化生成物から成る群から選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーと、
(f)場合により、成分(b)及び(e)とは異なり、且つ、一般式(I)
【化4】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキル、(メタ)アクリルアミド及び(メタ)アクリロニトリルである]のN−ビニルカルボン酸アミドからなる群から選択される少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマーと、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物と、のモノマー混合物を共重合することによって得られる、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項11】
前記水性スラリーが、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとにより微粒化充填剤の水性スラリーを処理することによって得られ、前記水溶性両性コポリマーは、
(b)アクリル酸、メタクリル酸及び/又はそのアルカリ金属塩若しくはアンモニウム塩と、
(e)ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートメトクロリドと、
(f)N−ビニルホルムアミド、アクリルアミド及び/又はアクリロニトリルと、のモノマー混合物を共重合することにより得られる、請求項1、9又は10に記載の水性スラリー。
【請求項12】
前記水性スラリーが、1〜70質量%の少なくとも1種の微粒化充填剤を含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項13】
水溶性両性コポリマーの量が、前記充填剤に対して0.01〜5質量%である、請求項1から12までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項14】
前記ラテックスの少なくとも40質量%が、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレート、最高20個の炭素原子を含むカルボン酸のビニルエステル、最高20個の炭素原子を有する芳香族ビニル化合物、エチレン性不飽和ニトリル、ビニルハライド、1〜10個の炭素原子を含むアルコールのビニルエーテル、2〜8個の炭素原子と1個又は2個の二重結合とを有する脂肪族炭化水素、及びこれらのモノマーの混合物から成る群から選択されるいわゆるメインモノマー(g)からなる、請求項1から13までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項15】
前記ラテックスの少なくとも60質量%が、ブタジエン又はブタジエンとスチレンとの混合物から構成されるか、或いは、その少なくとも60質量%が、C1〜C20アルキル(メタ)アクリレート又はスチレンとのC1〜C20アルキル(メタ)アクリレートの混合物から構成される、請求項14に記載の水性スラリー。
【請求項16】
前記水性スラリーが、更に膨化デンプンを含む、請求項1から15までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項17】
前記デンプンが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン又はタピオカデンプンから成る群から選択される天然デンプンであるか、或いは、化工デンプンである、請求項1から16までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項18】
膨化デンプンの量が、前記充填剤に対して0.1〜10質量%である、請求項1から17までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項19】
少なくとも1種の微粒化充填剤の水性スラリーが、前記充填剤に対して0.01〜5質量%の少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと、前記充填剤に対して0.1〜10質量%の少なくとも1種のラテックスとにより処理される、請求項1に記載の水性スラリーの製造のための方法。
【請求項20】
前記水溶性両性コポリマーが、
(a)一般式
【化5】

[式中、R1及びR2は、互いに独立してH又はC1〜C6アルキルである]の少なくとも1つのN−ビニルカルボン酸アミド、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(c)場合により、成分(a)及び(b)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、のモノマー混合物(但し、前記モノマー混合物は、少なくとも1個の遊離酸基及び/又は塩形態の酸基を有する少なくとも1種のモノマー(b)を含む)を共重合し、
続いて前記コポリマーに重合単位の形で組み込まれたモノマー(a)から基−CO−R1を部分的又は完全に加水分解することにより得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記水溶性両性コポリマーが、
(b)
(b1)モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸、リン酸エステル及びそれらの誘導体と、
(b2)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、それらの塩、及びジカルボン酸無水物と、から成る群から選択される少なくとも1種のモノマー、
(e)カチオン性基及び/又はプロトン化によりカチオン性電荷を付与することができる基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー、
(f)場合により、成分(b)及び(e)とは異なる少なくとも1種のモノエチレン性不飽和モノマー、
(d)場合により、分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和二重結合を有する少なくとも1種の化合物、のモノマー混合物を共重合することにより得られる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の水溶性両性コポリマーと少なくとも1種のラテックスとによる少なくとも1種の微粒化充填剤の水性スラリーの処理が、以下:
(A)少なくとも1種の微粒化充填剤を含む水性スラリーの製造、少なくとも1種のラテックスの水性分散液の添加、続いてこの充填剤−ラテックス組成物への少なくとも1種の水溶性両性コポリマーの水溶液の添加、又は、
(B)少なくとも1種の微粒化充填剤を含む水性スラリーの製造、少なくとも1種の水溶性両性コポリマーの水溶液の添加、この充填剤−コポリマー組成物への少なくとも1種のラテックスの水性分散液の添加、
のように行われる、請求項19から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
製紙原料の脱水による充填剤含有紙、充填剤含有厚紙又は充填剤含有板紙の製造における製紙原料への添加剤としての、請求項1から18までのいずれか1項に記載の水性スラリーの使用。
【請求項24】
請求項1から18までのいずれか1項に記載の水性スラリーを使用して製造された紙。

【公表番号】特表2010−532403(P2010−532403A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513995(P2010−513995)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/058642
【国際公開番号】WO2009/004077
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】