説明

微粒子捕集装置及び微粒子捕集方法

【課題】微粒子捕集装置において微粒子を帯電させて計測容易な数の微粒子を捕集板に捕集すること。
【解決手段】微粒子の入口側に微粒子カウンタ(LPC)13を設ける。そしてLPC13で微粒子数を計数しつつ気体に微粒子を帯電させ、スライドガラス20上に捕集する。そして微粒子カウンタ13で計数している微粒子の計数値が閾値となれば、吸引ポンプ23を停止して、吸引を停止する。こうすれば適切な数の微粒子をスライドガラス20上に捕集することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微粒子捕集装置及び微粒子捕集方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中の微粒子を分析するために、従来より空気中に浮遊する微粒子をガラス捕集板に捕集して微粒子の観察、分析をするサンプリング装置が知られている。(特許文献1)この装置では円筒形のホッパを設けてキャリアガスに対してコロナ放電させ、微粒子を帯電させ、円筒形ホッパに帯電した微粒子を捕集している。
【特許文献1】特開平7−47299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年アスベストによる被害が問題となり、種々の環境下でアスベストの個数濃度を測定することが求められている。しかし種々の微粒子に混在するアスベスト数を正確に計測するため、アスベストを捕集板に捕集した後でなければ計数が難しいという欠点があった。
【0004】
特許文献1に示された捕集装置では、捕集後に微粒子の観察、分析をする場合において、多数の微粒子が捕集されてしまうと形状分析が難しくなる。従って適当な数の微粒子を捕集した後に捕集を停止する必要があるが、この停止のタイミングを決定することが難しいという欠点があった。
【0005】
本発明はこのような従来の問題点に着目してなされたものであって、種々の環境下において適当な数の微粒子を容易に捕集することができる微粒子捕集装置及び微粒子捕集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の微粒子捕集装置は、気体に浮遊する微粒子を捕集する微粒子捕集装置であって、気体の取入口より取入れられた気体中の微粒子数を計数する微粒子カウンタと、ダクトを介して前記微粒子カウンタの出口側に設けられ、気体中の微粒子を帯電させるコロナ放電部と、前記コロナ放電部によって帯電した微粒子を導電性のガラス上に捕集する微粒子捕集部と、前記微粒子カウンタ、前記コロナ放電部及び前記微粒子捕集部を気体が通過するように、前記微粒子カウンタの入口側より気体を吸引して前記微粒子捕集部を通過した気体を排出する吸引ポンプと、動作開始後に前記微粒子カウンタの計数値が閾値に達したときに、前記吸引ポンプを停止するポンプ制御部と、具備することを特徴とするものである。
【0007】
ここで前記ポンプ制御部に接続され、測定対象となる微粒子と他の微粒子との濃度比を設定する設定部を更に有し、前記ポンプ制御部は、前記設定部によって設定された濃度比が大きければ閾値を小さく、濃度比が小さければ閾値を大きくするように前記閾値を設定するようにしてもよい。
【0008】
この課題を解決するために、本発明の微粒子捕集方法は、気体に浮遊する微粒子を捕集する微粒子捕集方法であって、微粒子カウンタによって気体の取入口より取入れられた気体中の微粒子数を計数し、微粒子数を計数した後の気体中の微粒子をコロナ放電部によって帯電させ、前記コロナ放電によって帯電した微粒子を導電性のガラス上に捕集し、前記微粒子カウンタ、前記コロナ放電部及び微粒子捕集部を気体が通過するように、前記微粒子カウンタの入口側より気体を吸引して前記微粒子捕集部を通過した気体を排出し、動作開始後に前記微粒子カウンタの計数値が閾値に達したときに、気体の吸引を停止することを特徴とするものである。
【0009】
ここで測定対象となる微粒子と他の微粒子との濃度比を設定し、設定された濃度比が大きければ閾値を小さく、濃度比が小さければ閾値を大きくするように前記閾値を設定するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明によれば、取入口より取り入れられた微粒子数を計数しつつ帯電させ、これを捕集することができる。従って適当な数の微粒子が通過した後に吸引を停止することによって、捕集する微粒子数を適正な数に設定することができる。又測定対象となる微粒子の濃度比とその他の微粒子との濃度比を設定することによって、閾値を適宜設定することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は実施の形態による微粒子捕集装置の構成を示すブロック図である。図1において微粒子入口11には図示のように断面T字形のインパクタ12が設けられる。インパクタ12は微粒子の粒径を分級するものであり、その微粒子入口11に沿ってレーザ微粒子カウンタ(LPC)13が設けられる。LPC13は後述するように、微粒子の流路にレーザ光源からのレーザ光を照射し、その散乱光に基づいて所定粒径以上の粒子数を計数するものである。
【0012】
そしてLPC13の出口側に、コロナ放電部14が設けられる。コロナ放電部14は、図示のようにシリンダ15内に絶縁体で構成されたスペーサ16を有しており、その中央部に電極17が保持される。この放電部の電極17の下方先端はニードル18として形成されている。LPC13の出口側から導かれたダクトは、電極17及びその先端のニードル18の近傍を通過するように構成されている。ニードル18の周囲は細く、流路が狭められており、これによってニードル18の近傍でコロナ放電が生じ、ダクトを通過する微粒子が帯電するようになっている。このコロナ放電によってダクトを通過した微粒子が帯電する。そしてこの流出口に対向する位置にスライドガラス20を設ける。スライドガラス20は蒸着等によって形成された導電性のコーティングを一面に有し、帯電した微粒子をその表面に捕集するものである。このスライドガラス20とその上部の空間とは帯電した微粒子を導電性ガラス上に捕集する微粒子捕集部21を構成している。
【0013】
又高圧電源部19は電極部17とスライドガラス20の両端に高圧電源を与えることによってコロナ放電を発生させるものである。ここでスライドガラス20は着脱自在とし、微粒子の捕集を行った後、交換できるように構成されている。
【0014】
そして微粒子捕集部21の出口側に、シリンダ部の外部に向けてダクト22が設けられ、更に吸引ポンプ23が設けられる。吸引ポンプ23は外部から微粒子を含む気体を微粒子入口11より導き、LPC13及びコロナ放電部14を通過させて排出するものである。吸引ポンプ23の開始及び停止はポンプ制御部24によって制御される。又設定部25は測定領域の微粒子の状態に合わせてポンプ制御部24への信号を入力するものである。ポンプ制御部24は、動作を開始してからLPC13より得られる計数値が閾値となったときに、吸引ポンプ23の動作を停止するものである。
【0015】
次に微粒子カウンタ(LPC)13の構成について図2を用いて説明する。図2のシリンダ31には前述したインパクタ12からのダクト32が流入部として接続されており、ダクト32の先端が狭くノズルとして構成される。又排出用ダクト33はこれに対向する位置に設けられている。そして図示のように垂直方向の上部にレーザダイオード34を配置し、レンズ35を介してレーザ光の光を測定領域であるノズルの先端側に集束する。ここで測定領域をそのまま通過した光はプレート36によって遮断される。シリンダ31の下方には、レンズ37,38が設けられる。レンズ37,38は測定領域を微粒子が通過した場合、散乱した光を集束するレンズである。この集束位置にフォトダイオード39を配置する。フォトダイオード39の出力はアンプ40を介して波形整形部41に導かれる。波形整形部41では、所定の閾値で入力信号を波形整形するものであり、その出力は計数部42に入力される。計数部42はパルス数を計数することによって、ダクト32,33を通過する粒子数を計数するものである。計数部42にはポンプ制御部24からのリセット信号が与えられ、リセット信号が入力される毎に計数値がリセットされる。
【0016】
ここで設定部25とポンプ制御部24について更に説明する。設定部25は測定対象となる周囲の微粒子の濃度比、例えばアスベストの濃度を測定したい場合に、測定対象となるアスベストの濃度と他の微粒子の濃度の比を設定するものとする。測定対象となるアスベストは、例えば長さが5μm以上、直径3μm未満、長さと幅との比が3以上のものとする。濃度は単位体積当たりの本数で表される。アスベストの濃度は法令によりスライドガラス20に付着した数を顕微鏡で計測することによって測定する必要がある。又アスベストのみの抽出としては、プラズマを用いてフィルターを灰下しアスベストのみを残して染色によってアスベストの種類毎に特有の色を付けて抽出する方法が知られている。このような方法を用いず、スライドガラス上に付着した線状の微粒子をアスベストとみなして計測する場合もある。いずれの場合もアスベストの個数計測は、スライドガラス上に微粒子が適当な数だけ付着している場合に最も容易となり、少なすぎても多すぎても計測が難しくなる。従って本発明では、微粒子カウンタによって吸引ポンプの停止のタイミングを決定する。この場合に測定対象となる気体の微粒子、ここではアスベストと、その他の微粒子との濃度比の概略の推定値をあらかじめ設定部25で設定するものとする。
【0017】
次にこの実施の形態の動作について説明する。図1に示す微粒子捕集装置を測定現場に配置する。ここで対象となる微粒子、例えばアスベストの微粒子とその他の微粒子との濃度比をあらかじめ設定しておく。例えば濃度比を1:10とすると、その濃度比を設定部25に設定する。ポンプ制御部24はこれに応じた閾値を設定する。ここで濃度比が1:10より小さく、例えば1:100となれば閾値を大きく、濃度比が大きくなれば閾値を小さく設定するものとする。そして計数部42にリセット信号を送って計数値をリセットし、吸引ポンプ23の動作を開始する。測定対象の気体、ここでは大気は、微粒子入口11よりインパクタ12を介してダクトを通過し、図2に示すLPC13に流入する。LPC13では前述したように、微粒子数が計数部42によって計数される。そして微粒子は排出ダクト33を介してコロナ放電部14に導かれ、放電され、微粒子が測定用のスライドガラス20の捕集領域に捕集される。
【0018】
さて計数部42からの計数値が所定の閾値に達すると、ポンプ制御部24は吸引ポンプ23の動作を停止する。この吸引ポンプ23の動作時間によって大気の吸引量が決定される。そしてスライドガラス20を取り出し、そのまま又は前述した手段でアスベストを抽出し、その数を顕微鏡によって計測する。そして得られた個数を吸引量(m)で除算したものが、単位体積当たりのアスベストの個数濃度となる。
【0019】
ここでスライドガラス20上には設定部で設定された濃度によって閾値が設定されるため、アスベストを含む微粒子数が少なすぎたり多すぎて計測が困難になることがなく、容易に計測することができる。
【0020】
尚ここではレーザ微粒子カウンタとして図2の構成のものを用い、前方散乱光を集束するようにしているが、微粒子数を計数できるものであれば種々の微粒子カウンタを用いることができる。
【0021】
又前述した実施の形態では、微粒子入口側にインパクタを設けて分級しているが、インパクタを必ずしも用いる必要はない。
【0022】
更に前述した実施の形態では測定対象となる微粒子としてアスベストについて説明しているが、他の微粒子についても本発明を適用することができる。
【0023】
又気体に含まれる微粒子が単一であったり、特定の微粒子を選択して計数する必要がなければ、設定部によって濃度比を設定しそれに応じた閾値を設定する必要がなく、1つの閾値を用いて適当な数の微粒子が捕集されたときにポンプの吸引を停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による微粒子捕集装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施の形態の微粒子計数装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
11 微粒子入口
12 インパクタ
13 レーザ微粒子カウンタ
14 コロナ放電部
15 シリンダ
16 スペーサ
17 電極
18 ニードル
19 高圧電源部
20 スライドガラス
21 微粒子捕集部
22 ダクト
23 吸引ポンプ
24 ポンプ制御部
25 設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に浮遊する微粒子を捕集する微粒子捕集装置であって、
気体の取入口より取入れられた気体中の微粒子数を計数する微粒子カウンタと、
ダクトを介して前記微粒子カウンタの出口側に設けられ、気体中の微粒子を帯電させるコロナ放電部と、
前記コロナ放電部によって帯電した微粒子を導電性のガラス上に捕集する微粒子捕集部と、
前記微粒子カウンタ、前記コロナ放電部及び前記微粒子捕集部を気体が通過するように、前記微粒子カウンタの入口側より気体を吸引して前記微粒子捕集部を通過した気体を排出する吸引ポンプと、
動作開始後に前記微粒子カウンタの計数値が閾値に達したときに、前記吸引ポンプを停止するポンプ制御部と、具備することを特徴とする微粒子捕集装置。
【請求項2】
前記ポンプ制御部に接続され、測定対象となる微粒子と他の微粒子との濃度比を設定する設定部を更に有し、
前記ポンプ制御部は、前記設定部によって設定された濃度比が大きければ閾値を小さく、濃度比が小さければ閾値を大きくするように前記閾値を設定することを特徴とする請求項1記載の微粒子捕集装置。
【請求項3】
気体に浮遊する微粒子を捕集する微粒子捕集方法であって、
微粒子カウンタによって気体の取入口より取入れられた気体中の微粒子数を計数し、
微粒子数を計数した後の気体中の微粒子をコロナ放電部によって帯電させ、
前記コロナ放電によって帯電した微粒子を導電性のガラス上に捕集し、
前記微粒子カウンタ、前記コロナ放電部及び微粒子捕集部を気体が通過するように、前記微粒子カウンタの入口側より気体を吸引して前記微粒子捕集部を通過した気体を排出し、
動作開始後に前記微粒子カウンタの計数値が閾値に達したときに、気体の吸引を停止することを特徴とする微粒子捕集方法。
【請求項4】
測定対象となる微粒子と他の微粒子との濃度比を設定し、
設定された濃度比が大きければ閾値を小さく、濃度比が小さければ閾値を大きくするように前記閾値を設定することを特徴とする請求項3記載の微粒子捕集方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−127427(P2007−127427A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318098(P2005−318098)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000230685)日本カノマックス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】