説明

微粒子採取装置

【課題】下方からの斜め上向きの速度成分を有するガス流に含まれる微粒子を確実に採取し、その粒径、量及び分布の正確な把握を可能にする微粒子採取装置を提供する。
【解決手段】下方からの斜め上向きの速度成分を含むガス流に採取部を挿入し、該採取部の採取面を所定時間だけガス流に露出させて付着した微粒子を採取して観察するための微粒子採取装置10が、ガス流に挿入される長尺管の下端部に側壁面から先端封鎖底面部に至るスリット12を形成したガイド管11と、採取部が先端部に取り付けられ、ガイド管11の内部所定位置に挿入された状態でスリット12を介して採取面をガス流に露出させるシャッター機構を備えたプローブ40と、シャッター機構を操作するシャッター駆動機構と、を具備して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば蒸気タービン低圧段の湿り蒸気中にある水滴径の計測時等に適用される水滴を含む微粒子の採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に示す蒸気タービンSTにおいて、低圧段を流れる流体(図中の矢印F)は湿り蒸気となっており、従って、その蒸気中には凝縮した水滴Mが多数存在している。このような水滴Mは、蒸気流とともにタービン内を通過する際、タービン翼の静翼1や動翼2に衝突する。水滴Mの衝突は、動翼2に対するブレーキとして作用するので、蒸気タービンSTの性能上好ましいことではない。また、水滴Mの衝突は、静翼1や動翼2を浸食するので、信頼性にも悪影響を与えることとなる。
このような水滴Mの影響を小さくするためには、湿り蒸気の流れに含まれている水滴Mについて、その大きさ(径)、量及び分布を把握する必要がある。
【0003】
そして、下記の特許文献1には、蒸気タービン、地熱発電設備、脱硝装置、冷却塔及び加湿装置等の内部を飛翔する水滴の粒径を測定するために用いられる水滴採取装置が開示されている。この装置は、水滴を採取する基台の表面にシリコン油等の水滴採取材と微粒子との混練材を塗布し、さらにその表面に水滴採取材のみを塗布して水滴の採取面を形成したものであり、この採取面に微小粒径及び粗大粒径の水滴を付着させて採取するものである。この場合、蒸気の流れ方向に正対して開口するスリットが外管に設けられ、このスリットを通り抜けた水滴のみが採取面に到達して採取される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−174628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の水滴採取装置は、外管に設けたスリットを通って流入した蒸気中の水滴を直接採取する方式であるが、このスリットは蒸気の流れ方向と直交する面に開口するものである。このため、たとえば蒸気タービン低圧段のように、下方(ハブ側)から斜め上向きに流入するような蒸気流(本願の図1の矢印Fuを参照)に水滴が存在するような場合、この水滴はスリットの下方及び底面を形成する外管の壁面(特許文献1の第1図を参照)に衝突して採取面まで到達できないこととなる。
実際の蒸気等のガス流には、本願の図1に示される水平方向の流れFのみではなく、このような下方から斜め上向きの流れFuが多く存在しているという知見が得られているため、上述した従来の水滴採取装置では、蒸気流(ガス流)に存在する水滴(微粒子)を確実に採取することができず、この結果、採取した水滴から把握できる大きさ(径)、量及び分布の精度(正確性)には問題があった。
【0006】
特に、蒸気タービンの低圧段における蒸気流は、下方からの斜め上向きの速度成分を有する高速の流れとなるため、このような蒸気等のガス流に含まれている水滴等の微粒子を確実に採取し、その粒径、量及び分布を正確に把握できるようにした微粒子採取装置の開発が望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、下方からの斜め上向きの速度成分を有するガス流に含まれる微粒子を確実に採取し、その粒径、量及び分布の正確な把握を可能にする微粒子採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る微粒子採取装置は、下方からの斜め上向きの速度成分を含むガス流に採取部を挿入し、該採取部の採取面を所定時間だけ前記ガス流に露出させて付着した微粒子を採取して観察するための微粒子採取装置であって、前記ガス流に挿入される長尺管の下端部に側壁面から先端封鎖底面部に至るスリットを形成したガイド管と、前記採取部が先端部に取り付けられ、前記ガイド管の内部所定位置に挿入された状態で前記スリットを介して前記採取面を前記ガス流に露出させるシャッター機構を備えたプローブと、前記シャッター機構を操作するシャッター駆動機構と、を具備して構成したことを特徴とするものである。
【0008】
このような本発明の微粒子採取装置によれば、ガス流に挿入される長尺管の下端部に側壁面から先端封鎖底面部に至るスリットを形成したガイド管としたので、シャッター機構を操作して採取面をガス流に露出させると、下方からの斜め上向きの速度成分を含むガス流に含まれる微粒子も確実に採取することができる。すなわち、水平方向のガス流に含まれる微粒子は勿論のこと、斜め上向きに流れるガス流に含まれる微粒子についても、ガイド管の先端封鎖底面部に開口するスリットを介して確実に採取することができる。
【0009】
上記の発明において、前記シャッター機構は、ガス圧を受けて動作するトリガーと、該トリガーの動作により前記プローブを前記ガイド管の内部で回転させるばね部材とを具備して構成されることが好ましく、これにより、ガス流の外部から確実にシャッター機構を動作させることができる。なお、ここで使用するガス圧を与えるためのガスとしては、たとえば窒素ガスを用いることができる。
【0010】
また、上記の発明において、前記プローブを回転させる前記ばね部材にばね力可変手段を設けることが望ましく、これにより、微粒子を採取するガス流の流速等に応じたシャッター機構の動作を適宜調整し、採取面の露出時間を容易に最適化することができる。
また、上記の発明において、前記プローブの先端に設けた位置決め部材と、前記ガイド管の先端部内面に設けたテーパー部とを具備し、前記採取面が前記スリットの方向を向いて挿入されるよう前記テーパー部により前記位置決め部材を導くプローブ位置決め手段を備えているので、プローブの方向が見えない状態での作業となるプローブ挿入時に、採取面及びスリットの位置や方向を容易かつ確実に合わせることができる。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によれば、たとえば蒸気タービン低圧段を流れる湿り蒸気中に含まれる水滴のように、下方からの斜め上向きの速度成分を含むガス流に含まれる微粒子を採取部の採取面に確実に採取することができる。そして、採取面に採取した微粒子は、顕微鏡を介したカメラで撮影するなどして、その径や量を正確に把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る微粒子採取装置の一実施形態として、蒸気タービン低速段における水滴(微粒子)の採取状況を示す図である。
【図2】本発明に係る微粒子採取装置について、(a)はガイド管の所定位置にプローブを挿入した状態を示す要部の断面図、(b)はプローブ位置決め手段のテーパー部をスリットと反対側から見た図、(c)は(a)のB−B断面図、(d)は位置決め部材がテーパー部と干渉した状態を示す図である。
【図3】採取部の構成例を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】プローブに採取部を取り付ける手順を示す説明図である。
【図6】シャッター機構のセット手順に関する説明図であり、(a)はセット前の状態、(b)はセット完了後の状態を示している。
【図7】シャッター機構の動作に関する説明図であり、(a)はセット完了後の状態を示す断面図、(b)はシャッター機構が動作して採取面をガス流に露出させた状態を示す断面図、(c)はシャッター機構の動作が完了した状態を示す断面図である。
【図8】蒸気タービンの低速段における蒸気流を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る微粒子採取装置の一実施形態を図1から図7に基づいて説明する。
本実施形態の微粒子採取装置10は、たとえば図1に示すように、蒸気タービンSTの低圧段を流れている蒸気(ガス流)に含まれる水滴(微粒子)を採取し、顕微鏡付きカメラ等を用いて観察するための装置である。この微粒子採取装置10は、蒸気タービンSTのケーシング外部上方から静翼1と動翼2との間に長尺のガイド管11を挿入し、たとえば図2(a)〜(d)に示すように、ガイド管11の先端部に位置する採取部20の採取面21を所定時間だけ蒸気の流れに露出させて、採取面21に付着した水滴を採取する。
すなわち、微粒子採取装置10は、蒸気タービンSTの低圧段において、たとえば図1に矢印Fuで示すように、下方(ハブ側)から斜め上向きの速度成分を含む蒸気流に含まれる水滴についても、略軸方向に流れる通常の蒸気流(図中の矢印F参照)と同様の採取を可能にしたものである。
【0014】
微粒子採取装置10は、図2(a)に示すように、蒸気流に挿入される長尺管の下端部に側壁面11aから先端封鎖底面部11bに至るスリット12を形成したガイド管11と、先端部に採取部20が取り付けられ、ガイド管11の内部所定位置に挿入された状態でスリット12を介して採取面21を蒸気流に露出させるシャッター機構30を備えたプローブ40と、シャッター機構30を操作するシャッター駆動機構(不図示)とを具備して構成される。
【0015】
ガイド管11は、管材13の先端部にキャップ14を溶接して先端封止底面部を形成した長尺管であり、管材13には、たとえば3〜4m程度の長さを有する外径20mm/内径15mm程度のものが使用される。ガイド管11の下端部(先端部)には、管材13の側面部となる側壁面11aからキャップ14を溶接した先端封鎖底面部11bに至るスリット12が形成されている。図示のスリット12は、キャップ14の頂点位置まで、すなわち、管材13の先端部から管材13の軸中心位置まで略90度の範囲にわたって形成されている。なお、スリット12の範囲については、上述した略90度に限定されることはなく、従来は困難であった下方から斜め上向きとなる流れの水滴等をも確実に採取するという課題を解決できるのであれば、たとえば45度程度の範囲としてもよく、ガイド管11等の内部構造により従来と比較したスリット12の延長範囲を適宜選択できる。
【0016】
ガイド管11の他端側には、開閉弁15を介してシールボックス16が取り付けられている。このシールボックス16は、後述するプローブ40やシャッター駆動機構等の挿入/引き抜きを行う際に使用され、採取時以外には、開閉弁15を閉じることにより、蒸気タービンSTの内部がスリット12及びガイド管11を介して外気と連通しないように遮断する。なお、図中の符号16aは、シールボックス16に設けたのぞき窓である。
【0017】
プローブ40は、固定側の保持部41に対して回転可能に支持されたシャッター筒42を具備して構成され、水滴採取時にガイド管11の先端部となる所定位置に挿入して使用される。なお、シャッター筒42は、後述するシャッター機構30の構成部材となる。
プローブ40の先端には、水滴等の微粒子を採取面21に付着させて採取する採取部20が取り付けられている。
【0018】
採取部20は、ベース金具22の開口部22aを塞ぐようにして矩形断面のアクリル材23を固定し、さらに、開口部22aと反対側となるアクリル材23の面に対し、表面が採取面21となるシリコンオイル層24を形成したものである。また、アクリル材23の両側面には、塗布したシリコンオイルの側方流出を防止するため、セロハン25が設置されている。このように構成された採取部20は、シリコンオイル塗布後に余分なシリコンオイルが取り除かれ、さらに所定時間(1日程度)ぶら下げておくことにより、アクリル材23の表面に採取面21となる薄膜のシリコンオイル層24が形成される。なお、図中の符号26は、プローブ40に固定設置するためのビス穴である。
【0019】
上述した採取部20は、たとえば図5に示すような手順により、プローブ40の先端部に設けた保持部41の凹部41a内に取り付けられる。
最初の工程では、採取部20を斜め後方から矢印S1で示すようにスライドさせて凹部41aに挿入する。この後、採取部20の後端部を矢印S2で示すように押し下げると、採取部20は凹部41aの所定位置に格納される。最後に、ビス穴26からビス44をねじ込むことにより、採取部20はプローブ40の所定位置に固定設置される。
【0020】
上述したプローブ40は、固定側となる保持部41の外周において、シャッター機構30及びシャッター駆動機構により、シャッター筒42が非採取位置(図7(a)を参照)から採取位置(図7(b)を参照)を通過して停止位置(図7(c)を参照)まで回転可能となっている。このシャッター筒42には、シャッタースリット43が設けられている。
シャッタースリット43は、採取位置において上述したガイド管11のスリット12と周方向の位置が一致し、シャッター筒42内の採取部20に設けられた採取面21を蒸気流に露出させるための開口部である。このシャッタースリット43も、上述したスリット12が先端封鎖底面部11bまで形成されているのと同様に、採取面21側の先端部側底面中央付近まで開口している。
【0021】
シャッター機構30は、採取時に保持部41の外側でシャッター筒42を回転させるための機構であり、たとえば図6に示すようなコイルばね45が使用される。このコイルばね45は、一端を保持部41の上部適所に固定するとともに、他端をシャッター筒42側のばね固定部46に係止することにより、シャッター筒42に対して回転方向の付勢(回転トルク)を付与している。なお、シャッター筒42は、保持部41の外周に図示しないベアリング等を介在させることにより、固定側となる保持部41に対して回転可能となっている。
【0022】
シャッター筒42のコイルばね固定部46については、たとえば図6に示すように、周方向に複数の凹凸部等を設けて選択可能とすることが望ましい。従って、コイルばね44の係止位置を適宜選択切替することにより、コイルばね44の回転トルクを変化させてシャッター速度を最適に調整することが可能になる。すなわち、コイルばね固定部46は、ばね力可変手段を備えたものとなる。
【0023】
上述したシャッター筒42には、図6に示すように、内側にある保持部41の外周面から突出する凸部のストッパー47を係止するガイド溝48が設けられている。このガイド溝48は、軸方向部分48aと周方向部分48bとが連結された略L字状とされる。従って、シャッター機構30においては、ストッパー47が、図6(a)に示す動作完了後の位置から図6(b)に示す動作前のセット位置まで移動可能となっている。
このようなストッパー47を移動させる操作は、たとえばドライバーD等の工具を用いて実施される。すなわち、シャッター筒42は、コイルばね44の付勢と、図示しないばねによる軸方向後端部側へ引き上げる方向の付勢に抗して、回転させた後に軸方向前端部側へ移動させると、ストッパー47がガイド溝48の軸方向部分48aに係止された状態に保持されるので、シャッター機構30は、シャッター駆動機構により動作が可能な待機状態(セット完了後の状態)となる。
【0024】
プローブ40の先端部には、保持部41に固定された位置決め部材49が設けられている。この位置決め部材49は、保持部41との間を連結する軸部49aがシャッター筒42の回転を妨げないように貫通している。そして、プローブ40をガイド管11内に挿入する際、位置決め部材49を所定の挿入位置に導くため、ガイド管11の先端部内面にはテーパー部11cが形成されている。この場合のテーパー部11cは、図2(b)に示すような形状を有する別部材のテーパー形成部材11dをキャップ14の内部に固定することにより、ガイド管11の先端部内面にテーパー部11cを形成している。このテーパー部11cは、位置決め部材49を所定位置の凹部11eまで導くように形成した傾斜面である。
【0025】
そして、プローブ40の先端に設けた位置決め部材49と、ガイド管11の先端部内面に設けたテーパー部11cとは、プローブ40の方向が外部から見えない状態での作業となるプローブ挿入時において、採取面21がスリット12の方向を向いて挿入されるように、テーパー部11cにより位置決め部材49を所望の方向へ導くプローブ位置決め手段として機能する。このとき、プローブ40の向きがスリット12と不一致であれば、たとえば図2(d)に示すように、位置決め部材49のハッチング部11fがテーパー部11cと干渉するので、位置決め部材49はテーパー部11cに導かれて向きを変え、凹部11eまでスムーズに導かれる。
すなわち、上述した微粒子採取装置10は、プローブ40の先端に設けた位置決め部材49と、ガイド管11の先端部内面に設けたテーパー部11cとを具備し、採取面21がスリット12の方向を向いて挿入されるようテーパー部11cにより位置決め部材49を導くプローブ位置決め手段を備えているので、プローブ40とともに軸方向に挿入された位置決め部材49は、テーパー面11cに沿って最も先端部となる凹部11eまでスムーズに導かれる。この結果、プローブ挿入時には、採取面21及びスリット12の位置や方向を容易かつ確実に合わせることができる。
【0026】
シャッター駆動機構は、待機状態にあるシャッター機構30を動作させるためのトリガーであり、たとえばガイド管11の外部から供給される窒素ガスの圧力により、ガイド溝48の軸方向部分48aに係止された状態にあるシャッター筒42を前端部側へ移動させるものである。すなわち、シャッター駆動機構は、シャッター筒42がストッパー47によって回転を阻止された状態を解除し、コイルばね45の付勢によりガイド溝48の周方向部分48bに沿った回転を可能にするものである。
【0027】
このように構成された微粒子採取装置10は、プローブ40の所定位置に採取部20を取り付けた後、蒸気タービンST内に予め設置されているガイド管11の内部に向けて、開閉弁15を開いて上端部側から挿入される。このとき、シャッター機構30は、ストッパー47がガイド溝48の軸方向部分48aに係止されて動作可能な待機状態にある。
ガイド管11内に挿入されたプローブ40は、ガイド管11の先端部近傍まで挿入されると、位置決め部材49がテーパー部11cによって所定の挿入位置まで導かれる。この結果、採取部20の採取面21は、図7(a)に示すように、ガイド管11のスリット12と適切に位置合わせがなされたセット完了後の状態となるが、採取面21はシャッター筒42により塞がれている。
【0028】
こうして採取準備が完了した後には、適宜シャッター駆動機構を操作してシャッター機構30を動作させる。
すなわち、窒素ガスを供給してシャッター駆動機構に圧力を与えると、シャッター筒42が押圧されて先端部側へ移動する。このとき、シャッター筒42は、固定側のストッパー47に係止されているので、ガイド溝48の軸方向部分48aに沿って前端部側へ移動することとなる。この結果、シャッター筒42は、ストッパー47と周方向部分48bとが一致する位置まで移動することにより、ストッパー47による回転方向の係止が解除され、周方向部分48bに沿って回転可能となる。従って、シャッター筒42は、コイルばね45の付勢により、周方向部分48bの範囲を回転する。
そして、図7(b)に示すように、シャッター筒42の回転途中では、シャッタースリット43とガイド管11のスリット12とが一致する時間があり、短時間だけ採取面21を蒸気流に露出させることができる。なお、採取面21が蒸気流に露出するシャッター時間は、スリット12やシャッタースリット43の溝幅、及びコイルばね45の付勢力により変化するので、これらを適宜調整することにより所望の値に設定することができる。
【0029】
このようなシャッター筒42の回転は、ガイド溝48に形成された周方向部分48bの範囲で可能となるので、ストッパー47が周方向部分48bの端部まで到達した時点で停止する。この停止位置では、図7(c)に示すように、採取面21はシャッター筒42により完全に塞がれている。
そして、上述した採取面21の露出時間においては、矢印Fで示す蒸気流に含まれる水滴を採取するとともに、上向きの速度成分を含む蒸気流(矢印Fu)に含まれる水滴についても、底面部側までスリット12やシャッタースリット43が形成されているため、ガイド管11やシャッター筒42に衝突することなく確実に採取できる。
【0030】
こうして水滴の採取が終了した後には、プローブ40をガイド管11から引き抜き、開閉弁15を閉じて蒸気タービンST内を外気から遮断する。
そして、プローブ40から採取部20を取り外し、この採取部20を顕微鏡の観察位置にセットする。この結果、採取面21に付着した水滴等の微粒子について、顕微鏡を介したカメラ撮影が可能となる。すなわち、カメラ撮影した画像から、付着した水滴及び微粒子の数量や径等を観察し、シャッター機構30による採取面21の露出時間から、時間当たりの微粒子量(水滴量)を計測できる。
【0031】
このように、上述した本発明によれば、たとえば蒸気タービン低圧段を流れる湿り蒸気中に含まれる水滴のように、下方からの斜め上向きの速度成分を含むガス流に含まれる微粒子を採取部20の採取面21に確実に採取することができる。そして、採取面21に採取した微粒子は、顕微鏡を介したカメラで撮影するなどして、その径や量を正確に把握することが可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、蒸気タービンST内の蒸気流に含まれる水滴は勿論のこと、他のガス流等に含まれる微粒子の採取にも適用可能になるなど、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
10 微粒子採取装置
11 ガイド管
12 スリット
20 採取部
21 採取面
30 シャッター機構
40 プローブ
41 保持部
42 シャッター筒
43 シャッタースリット
45 コイルばね
46 ばね固定部
47 ストッパー
48 ガイド溝
49 位置決め部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方からの斜め上向きの速度成分を含むガス流に採取部を挿入し、該採取部の採取面を所定時間だけ前記ガス流に露出させて付着した微粒子を採取して観察するための微粒子採取装置であって、
前記ガス流に挿入される長尺管の下端部に側壁面から先端封鎖底面部に至るスリットを形成したガイド管と、
前記採取部が先端部に取り付けられ、前記ガイド管の内部所定位置に挿入された状態で前記スリットを介して前記採取面を前記ガス流に露出させるシャッター機構を備えたプローブと、
前記シャッター機構を操作するシャッター駆動機構と、
を具備して構成したことを特徴とする微粒子採取装置。
【請求項2】
前記シャッター機構は、ガス圧を受けて動作するトリガーと、該トリガーの動作により前記プローブを前記ガイド管の内部で回転させるばね部材とを具備して構成されることを特徴とする請求項1に記載の微粒子採取装置。
【請求項3】
前記プローブを回転させる前記ばね部材にばね力可変手段を設けたことを特徴とする請求項2に記載の微粒子採取装置。
【請求項4】
前記プローブの先端に設けた位置決め部材と、前記ガイド管の先端部内面に設けたテーパー部とを具備し、前記採取面が前記スリットの方向を向いて挿入されるよう前記テーパー部により前記位置決め部材を導くプローブ位置決め手段を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の微粒子採取装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−203815(P2010−203815A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−47363(P2009−47363)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】