説明

微粒子混合物、活物質凝集体、正極活物質材料、正極、2次電池及びこれらの製造方法

【課題】小粒径・低結晶性のリチウム遷移金属シリケート系化合物の前駆体とすることができる微粒子混合物などを提供する。また、リチウム遷移金属シリケート系化合物を含み、室温環境で充放電反応ができる正極活物質材料を提供する。
【解決手段】シリコン酸化物微粒子、遷移金属酸化物微粒子及びリチウム遷移金属シリケート微粒子の混合物であって、粉末X線回折測定において2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークを有し前記シリコン酸化物微粒子および前記遷移金属酸化物微粒子が非晶質であり、前記リチウム遷移金属シリケート微粒子が、微結晶状態または非晶質であることを特徴とする微粒子混合物である。また、この微粒子混合物を熱処理して得られる活物質凝集体を粉砕して得られる正極活物質材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質か低結晶性のリチウム遷移金属シリケートを含み、非水電解質2次電池の正極に用いられる活物質材料の前駆体となる微粒子混合物などに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のモバイル化と高機能化に伴い、駆動電源である2次電池は最重要部品のひとつになっている。特に、Liイオン2次電池は、用いられる正極活物質材料と負極活物質材料の高い電圧から得られるエネルギー密度の高さから、従来のNiCd電池やNi水素電池に替わり、2次電池の主流の位置を占めるに至っている。しかしながら、現在のLiイオン電池に用いられ、標準となっているコバルト酸リチウム(LiCoO)系正極活物質材料と黒鉛主体のカーボン系負極活物質材料の組み合わせによるLiイオン2次電池は、昨今の高機能高負荷電子部品の消費電力量を充分に供給することができず、携帯電源としては要求性能を満たすことができなくなっている。
【0003】
正極活物質材料の理論電気化学比容量は、一般に小さく、コバルト酸系リチウム以外で使用されているマンガン酸系リチウムやニッケル酸系リチウム、或いは次の実用化を目指し検討されるリン酸鉄系リチウムにしても、現在のカーボン系負極活物質材料の理論比容量よりも小さい値に止まる。しかし、年々性能を少しずつ向上させてきたカーボン系負極活物質材料も理論比容量に近付きつつあり、現用の正極と負極の活物質系統の組み合わせでは、もはや大きな電源容量の向上は見込めなくなってきており、今後の更なる電子機器の高機能化と長時間モバイル駆動化の要求や、採用が拡がる電動工具、無停電電源、蓄電装置などの産業用途、並びに電気自動車用途への搭載には限界が出ている。
【0004】
このような状況で、現状より飛躍的に電気容量を増加させ得る方法として、カーボン(C)系負極活物質材料にかわる金属系負極活物質材料の適用検討が行われている。これは現行のカーボン系負極の数倍から十倍の理論比容量を有する、ゲルマニウム(Ge)やスズ(Sn)、シリコン(Si)系物質を負極活物質材料に用いるものであり、特にSiは、実用化が難しいとされる金属Liに匹敵する比容量を有するので、検討の中心となっている。
【0005】
しかしながら、組み合わされる他方の正極活物質材料側の比容量が低いために、Siの大きな理論比容量を、実際には実用電池で実現することはできないのが現状である。当面正極活物質材料に実用を検討されているLiのインターカレーションホストとなり得る、層状またはトンネル状の複合酸化物の単位質量あたりの理論比容量は、せいぜい150mAh/gを超える程度であり、現行のカーボン系負極活物質材料の比容量の2分の1以下であり、Si理論比容量に対しては実に20分の1以下である。このため、正極活物質材料の高容量化を目指した物質系統の検討も必要である。新たな正極活物質材料の候補として、成分によっては従来の2倍の300mAh/gを超えると見込まれているリチウム遷移金属シリケート系化合物の検討が始められている(例えば、特許文献1、非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−266882号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】安富実希、外4名、「リチウムイオン電池用Li2−xM(SiO4)1−x(PO4)x (M=Fe,Mn)正極活物質の水熱反応による合成とその電気化学特性」、GS Yuasa Technical Report、株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション、平成21年6月26日、第6巻、第1号、p21〜26
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、リチウム遷移金属シリケート系化合物に関する従来の検討では、高い電気化学比容量が得られるどころか、通常使用される室温環境で電池充放電反応ができず、非特許文献1において昇温環境にして初めて充放電反応を達成するにとどまっている。
【0009】
本発明者らは、従来用いられてきた正極活物質材料と従来のリチウム遷移金属シリケート系化合物とを鋭意比較検討したところ、従来のリチウム遷移金属シリケート系化合物は、結晶性が高く、結晶サイズが大きいため、絶縁性に近いリチウム遷移金属シリケート系化合物を、導電性を付与するために導電材と共存させたり、導電性物質を担持やコーティングしたりしても、Liイオンのインターカレーションホストに用いるには不利であることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、小粒径・低結晶性のリチウム遷移金属シリケート系化合物の前駆体とすることができる微粒子混合物などを提供することである。また、本発明はリチウム遷移金属シリケート系化合物を含み、室温環境で充放電反応ができる正極活物質材料を提供することを目的とする。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)シリコン酸化物微粒子、遷移金属酸化物微粒子及びリチウム遷移金属シリケート微粒子の混合物であって、粉末X線回折測定において2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークを有し、前記シリコン酸化物微粒子および前記遷移金属酸化物微粒子が非晶質であり、前記リチウム遷移金属シリケート微粒子が、微結晶状態または非晶質であることを特徴とする微粒子混合物
(2)2θ=33.1°付近の回折ピークの半値幅が0.35°以上であり、2θ=35.7°付近の回折ピークの半値幅が0.35°以上であることを特徴とする(1)に記載の微粒子混合物
(3)前記遷移金属酸化物微粒子と前記リチウム遷移金属シリケート微粒子の遷移金属が、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Ni、Co、Cu、Zn、Al、Ge、Zr、Mo、W、のうち少なくとも2つの元素を含むことを特徴とする(1)または(2)に記載の微粒子混合物
(4)前記リチウム遷移金属シリケート微粒子のシリケートの一部を、酸素を放出しない金属酸、リン酸源またはホウ酸源により置換することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の微粒子混合物
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の微粒子混合物を熱処理して得られる活物質凝集体であって、前記活物質凝集体が多孔質であり、前記活物質凝集体の表面から観察できる空隙の大きさが0.01〜0.6μmであることを特徴とする活物質凝集体
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の微粒子混合物を熱処理して得られる活物質凝集体を粉砕して得られる正極活物質材料であって、粉末X線回折測定において2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークを有し、2θ=18〜20°、2θ=26〜28°、2θ=30〜32°、2θ=38〜40°、2θ=42〜44°の範囲のうち、少なくともいずれか一つの範囲に回折ピークを有することを特徴とする正極活物質材料
(7)透過型電子顕微鏡写真像の観察測定による粒度分布が5〜150nmに存在し、粒度平均値が10〜70nmに存在することを特徴とする(6)に記載の正極活物質材料
(8)少なくとも一部がカーボンコートされるか、表面の少なくとも一部にカーボンが担持されることを特徴とする(6)または(7)に記載の正極活物質材料
(9)微細結晶と非晶質成分とが共に存在する微結晶状態であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれかに記載の正極活物質材料
(10)集電体と、前記集電体の少なくとも片面に、(6)〜(9)のいずれかに記載の正極活物質材料を含む正極活物質層と、を有することを特徴とする非水電解質2次電池用正極
(11)(10)に記載の非水電解質2次電池用正極を用いたことを特徴とする非水電解質2次電池
(12)リチウム源、遷移金属源およびシリコン源を火炎に供給する火炎法により合成することを特徴とする微粒子混合物の製造方法
(13)前記火炎法が、火炎加水分解法であり、前記火炎が酸水素火炎であり、反応容器内が不活性ガス充填雰囲気であることを特徴とする(12)に記載の微粒子混合物の製造方法
(14)前記火炎法が、熱酸化法であり、前記火炎が酸素を含む炭化水素の火炎であり、反応容器内が不活性ガス充填雰囲気であることを特徴とする(12)に記載の微粒子混合物の製造方法
(15)前記火炎へ供給される前記リチウム源、前記遷移金属源および前記シリコン源が塩化物であり、前記火炎の原料が少なくとも水素ガスと酸素ガスを含むことを特徴とする(12)に記載の微粒子混合物の製造方法
(16)前記火炎へ、前記リチウム源、前記遷移金属源および前記シリコン源が、気体で供給される、または液体を気化器に通して供給されることを特徴とする(12)〜(15)のいずれかに記載の微粒子混合物の製造方法
(17)(12)〜(16)のいずれかに記載の微粒子混合物の製造方法により製造された微粒子混合物を、300〜900℃、0.5〜10時間で熱処理を行うことを特徴とする活物質凝集体の製造方法
(18)前記熱処理を炭素源と共に行うことを特徴とする(17)に記載の活物質凝集体の製造方法
(19)(17)または(18)に記載の活物質凝集体の製造方法により製造された活物質凝集体を粉砕処理して正極活物質材料を製造することを特徴とする正極活物質材料の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、小粒径・低結晶性のリチウム遷移金属シリケート系化合物の前駆体とすることができる微粒子混合物などを提供することができる。また、本発明はリチウム遷移金属シリケート系化合物を含み、室温環境で充放電反応ができる正極活物質材料を提供することができる。
【0013】
また、本発明に係る微粒子混合物を正極活物質材料の前駆体とすることで、後の正極活物質合成工程の合成条件を制御することで、用いられる2次電池や対極負極に対応した正極活物質材料として、最適な結晶形態を得られる。そして、それら結晶化正極活物質材料を用いると、活物質材料の粒子自体のLiイオン拡散性や電子伝導性が向上する結果、Liイオンのデインターカレートおよびインターカレートを容易にし、通常の室温環境でも充放電可能なリチウム遷移金属シリケート系化合物を得ることができることを見出した。本発明は、リチウム遷移金属シリケート系化合物が本来有する高い充放電容量を将来実現する基礎となるものである。
【0014】
また、本発明に係る正極活物質材料は、従来の材料に比べて、X線回折測定による回折ピーク半値幅が大きく、結晶子の大きさが小さいので、或いは粒子の大きさや、粒度が小さいので、Liイオンまたは電子の、単結晶や多結晶粒子中の導電パスが短く、イオン導電性と電子伝導性が優れるので、充放電反応の障壁を低下させることができる。さらに、導電助剤や導電性カーボンをコーティングしたり担持したりすると、電気伝導性と導電パス網による集電体までのマクロの集電性が向上し、通常使用の室温などの低温環境でも充放電できるリチウム遷移金属シリケート系化合物を提供することができる。
【0015】
また、本発明に係る正極活物質材料は、従来の正極活物質材料に比較して、非晶質成分が周囲の一部に存在する結晶を有する微結晶状態であることも特徴である。これらは、従来一般に用いられてきた固相法による製造法では得られず、正極活物質材料の材料源となる原料を同一反応系に供給して火炎中で反応させる方法などにより、主に非晶質な微粒子混合物を生成させた後に、熱処理を行うことで得られる。このような製造法によれば、多孔質な活物質凝集体が容易に得られるので、これをミクロに粉砕することで、粒径が小さく、略球形状微粒子など均質な正極活物質材料を得ることができる。これにより、集電体上に塗工し易い大きさの2次粒子へ造粒することも可能になり、集電体と活物質材料との密着性に優れる、集電体成分が拡散した正極活物質材料層を得ることができる。本発明の正極活物質材料に含まれるリチウム遷移金属シリケート系化合物の成分には、充放電反応において2電子反応が得られる複数の遷移金属を含む場合にはさらに高容量を得ることができる。また、酸素を放出しないシリケート系化合物であるので、高温環境においても発火燃焼することがなく、安全な2次電池を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る微粒子混合物を合成する火炎法装置反応容器を示す図。
【図2】本発明に係る活物質凝集体a’のSEM写真。
【図3】本発明に係る活物質凝集体a’の他のSEM写真。
【図4】本発明に係る正極活物質材料AのTEM写真。
【図5】本発明に係る正極活物質材料Aの他のTEM写真。
【図6】本発明に係る微粒子混合物a,bと比較例に係る活物質sのXRDパターン。
【図7】本発明に係る正極活物質材料A,Bと、比較例に係る正極活物質材料SのXRDパターン。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明に係る微粒子混合物や正極活物質材料などの好ましい実施態様を説明する。なお、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。
【0018】
本発明の微粒子混合物と正極活物質材料は、粉体材料として得られ、提供される。さらに、正極活物質材料は、そのままの状態で、または造粒処理してサイズを大きくした2次粒子に、分散剤や増粘剤または導電材等を所定割合加えた水系溶媒または有機溶剤のスラリーとしても提供される。また、集電体基材上にこれらスラリーを塗布して正極活物質材料を皮膜状形成した正極電極形態としても提供される。そして、本発明における2次電池は、本発明の2次電池用正極を用い、公知の負極やセパレータ、電解液など他の構成材料と共に2次電池として組み立て、提供される。
【0019】
本発明の正極活物質材料は、活物質前駆体である微粒子混合物の焼成によって生成される。本発明の微粒子混合物はシリコンの酸化物(シリカ)の微粒子、遷移金属の酸化物の微粒子、およびリチウム遷移金属シリケートの微粒子からなる。本発明の微粒子混合物におけるシリコン酸化物は非晶質であり、遷移金属酸化物も多くは非晶質として存在し、X線回折によって一部の酸化物の回折ピークが検出される微結晶性酸化物が一部に存在する程度である。また、本発明の微粒子混合物におけるリチウム遷移金属シリケートの微粒子は、一部が結晶化しており、X線による回折が少なくとも2つ認められる微結晶性として存在するものが多い。なお、本発明では、微結晶または微結晶性とは、一般的な微細な結晶を示す意味に代えて、単結晶または多結晶微粒子の周囲に非晶質成分を有する形態を意味する。
【0020】
(微粒子混合物の製造方法)
微粒子混合物は同一反応系へ構成原料を供給することにより合成される。微粒子混合物の同一反応系装置内へ構成原料を供給して合成する方法のうち、特には、火炎加水分解法や熱酸化法などの火炎法が用いられる。火炎法は、塩化物などの原料気体を供給する方法や、気化器を通して原料液体を供給する方法により、構成原料を火炎中へ供給し、構成原料を反応させ、目的物質を得る方法である。火炎法として、VAD(Vapor−phase Axial Deposition)法などが好適な例として挙げられる。
【0021】
また、火炎加水分解法は、火炎中で構成原料が加水分解される方法である。火炎加水分解法では、火炎として酸水素火炎が一般に用いられる。水素ガスと酸素ガスが供給された火炎の元に正極活物質材料の構成原料の気体を供給するか、正極活物質材料の構成原料の気体と、火炎原料(酸素ガスと水素ガス)を同時にノズルから供給して目的物質を合成する。火炎加水分解法では、不活性ガス充填雰囲気中、ナノスケールの極微小な、主として非晶質からなる目的物質の微粒子を得ることができる。
【0022】
また、熱酸化法とは、火炎中で構成原料が熱酸化される方法である。熱酸化法では、火炎として炭化水素火炎が一般に用いられ、炭化水素ガス(例えばプロパンガス)と酸素ガス供給火炎の元に構成原料の気体を、または構成原料の気体と火炎原料(例えば、プロパンガスと酸素ガス)を同時にノズルから供給しながら目的物質を合成する。
【0023】
本発明の微粒子混合物を得るための構成原料は、リチウム源、遷移金属源、シリコン源である。例えば、リチウム源として塩化リチウム、遷移金属源としての遷移金属の塩化物、シリコン源として四塩化ケイ素、などの気体または液体が用いられる。原料が固体の場合は、溶媒に溶かして溶液とし、気化器を通じて、火炎に供給する。原料が溶液の場合には、気化器を通じるほかに、供給ノズル前に加熱または減圧およびバブリングによって蒸気圧を高めて気化供給することもできる。
【0024】
リチウム源としては、塩化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム、酢酸リチウム、硝酸リチウム、臭化リチウム、リン酸リチウム、硫酸リチウムなどのリチウム無機酸塩、シュウ酸リチウム、酢酸リチウム、ナフテン酸リチウムなどのリチウム有機酸塩、リチウムエトキシドなどのリチウムアルコキシド、リチウムのβ―ジケトナト化合物などの有機リチウム化合物、酸化リチウム、過酸化リチウム、などを用いることができる。なお、ナフテン酸とは、主に石油中の複数の酸性物質が混合した異なるカルボン酸の混合物で、主成分はシクロペンタンとシクロヘキサンのカルボン酸化合物である。
【0025】
遷移金属源としては、塩化第二鉄、塩化マンガン、四塩化チタン、塩化バナジウムなどの各種遷移金属の塩化物、シュウ酸鉄、シュウ酸マンガンなど遷移金属のシュウ酸塩、酢酸マンガンなどの酢酸遷移金属塩、硫酸第一鉄や硫酸マンガンなどの遷移金属の硫酸塩、硝酸マンガンなどの遷移金属の硝酸塩、オキシ水酸化マンガンや水酸化ニッケルなど遷移金属の水酸化物、2−エチルヘキサン酸第二鉄、2−エチルヘキサン酸第二マンガンなどの遷移金属のエチルヘキサン酸塩、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ナフテン酸鉄、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸クロム、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸ジルコニウム、ナフテン酸コバルトなどのナフテン酸遷移金属塩、ヘキソエートマンガンなどのヘキソエートの遷移金属塩、遷移金属のシクロペンタジエニル化合物、チタンテトライソプロポキシド(TTIP)、チタンアルコキシドなどの遷移金属アルコキシド等を用いることができる。さらに、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、アセチルアセトネート、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの遷移金属の有機金属塩、酸化鉄や酸化マンガンほか各種遷移金属の酸化物なども条件により使用される。
後述のように、2種以上の遷移金属をリチウム遷移金属シリケート化合物に用いる場合は、2種以上の遷移金属の原料を火炎中に供給するようにする。
【0026】
シリコン源としては、四塩化ケイ素、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、二酸化ケイ素や一酸化ケイ素またはこれら酸化ケイ素の水和物、オルトケイ酸やメタケイ酸、メタ二ケイ酸等の縮合ケイ酸、テトラエチルオルトシリケート(テトラエトキシシラン、TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(テトラメトキシシラン、TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、オクタメチルトリシロキサン(OMTSO)、テトラ−n−ブトキシシラン、等を用いることができる。
【0027】
また、リチウム遷移金属シリケート化合物のシリケートの一部を他のアニオンにより置換する場合は、アニオン源として、遷移金属の酸化物、リン酸の原料、ホウ酸の原料を加える。例えば、酸化チタン、亜チタン酸鉄や亜チタン酸マンガンなどの亜チタン酸金属塩、チタン酸亜鉛やチタン酸マグネシウム、チタン酸バリウムなどのチタン酸塩、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム、酸化クロム、クロム酸塩や二クロム酸塩、酸化マンガン、過マンガン酸塩やマンガン酸塩、コバルト酸塩、酸化ジルコニウム、ジルコン酸塩、酸化モリブデン、モリブデン酸塩、酸化タングステン、タングステン酸塩、オルトリン酸やメタリン酸などのリン酸、ピロリン酸、リン酸水素2アンモニウムやリン酸2水素アンモニウムなどのリン酸水素アンモニウム塩、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウムなどの各種リン酸塩またはピロリン酸塩、およびリン酸第一鉄など導入遷移金属のリン酸塩、ホウ酸や三酸化二ホウ素、メタホウ酸ナトリウムや四ホウ酸ナトリウム、ホウ砂などの各種ホウ酸塩を、それぞれ所望のアニオン源と合成条件に応じて用いることができる。
【0028】
これらの原料を同一反応系に火炎原料と共に供給して微粒子混合物を合成する。反応器の中にシリカやシリコン系の芯棒(種棒とも呼ばれる)を設置し、これに吹き付けている酸水素火炎中や空気などの酸素源を含むプロパン火炎中で火炎原料と共にリチウム源、遷移金属源、シリコン源を供給し、加水分解または酸化反応させると、芯棒表面に主にナノオーダーの微粒子が生成付着する。これらの生成微粒子を回収し、場合によってはフィルタやふるいに掛けて、不純物や凝集粗大分を除く。このようにして得られた微粒子混合物は、ナノスケールの極微小な粒径を持ち、主として非晶質である微粒子からなる。
【0029】
本発明に係る微粒子混合物の製造方法である火炎法は、製造できる微粒子混合物は、非晶質であり、粒子の大きさも小さい。さらに、火炎法では、従来の水熱合成法や固相法に比べて、短時間で大量の合成が可能であり、低コストで均質な微粒子混合物を得ることができる。
【0030】
(微粒子混合物の特徴)
微粒子混合物は、主にリチウム、遷移金属、シリコンの酸化物や、リチウム遷移金属シリケートの非晶質な微粒子からなるが、遷移金属の結晶性酸化物も混合生成している場合が多い。さらに、一部にはリチウム遷移金属シリケート系化合物の結晶成分も含まれる。これら微粒子混合物を2θ=10〜50°の範囲の粉末法X線回折を測定すると、少なくとも2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークが得られる。多くの場合には、回折ピークが小さく幅の広い回折角を示し、これらは結晶子の小さい微粒子、または小さな単結晶の集まった多結晶微粒子、並びにこれら微粒子の周囲に非晶質成分が存在する微結晶形態である、それぞれのリチウム遷移金属シリケート系化合物結晶面に由来する回折を示すと思われる。また、2θ=33.1°付近の回折ピークの半値幅が0.35°以上であり、2θ=35.7°付近の回折ピークの半値幅が0.35°以上であることが好ましい。さらに、また、2θ=33.1°付近の回折ピークの半値幅が0.47°以上であり、2θ=35.7°付近の回折ピークの半値幅が0.47°以上であることがより好ましい。なお、ピークの位置は、結晶のゆがみや測定の誤差などの影響で、±0.1°〜±0.2°程度シフトする可能性がある。
【0031】
さらには、前記の微粒子混合物のX線回折においては、2θ=18〜20°、同26〜28°、同30〜32°、同38〜40°、同42〜44°、の各範囲の少なくともいずれかに低回折ピークが得られる。これらは、シリコン酸化物、遷移金属酸化物、リチウム遷移金属シリケートに由来するピークである。すなわち本発明に係る微粒子混合物は、非晶質のシリコン酸化物の微粒子と、非晶質の遷移金属酸化物と、微結晶状態または非晶質のリチウム遷移金属シリケートの微粒子を含む、微粒子の混合物である。なお、本発明において、非晶質とは、結晶子サイズが約100nm以下であることを意味する。非晶質であるかどうかの判定は、X線回折パターン中のピークの半値幅をシェラーの式に適用することによって得られる。
【0032】
得られた微粒子混合物に含まれるリチウム遷移金属シリケート微粒子は、LiMSiOで表されるリチウム遷移金属シリケート系化合物を含む。Mは、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Ni、Co、Cu、Zn、Al、Ge、Zr、Mo、Wからなる群より選ばれる少なくとも1種の遷移金属である。また、後述する理由により、遷移金属を2種以上用いることが好ましい。
【0033】
他方、アニオンまたはポリアニオンのSiOや(SiOについても、(SiOの一部を他のアニオンにより置換させることもできる。例えば、遷移金属Mとして列挙した元素の遷移金属酸(例えば、チタン酸(TiO)やクロム酸(CrO)、バナジン酸(VO、V)、ジルコン酸(ZrO)、モリブデン酸(MoO、Mo24)、タングステン酸(WO)等)による置換や、リン酸(PO)やホウ酸(BO)による置換を行うことができる。
【0034】
(活物質凝集体の製造)
微粒子混合物を熱処理することにより、活物質凝集体が得られる。また、熱処理により非晶質の微粒子混合物が、主にリチウム遷移金属シリケート系の結晶形態に化合する。次いで、熱処理後の生成物の導電性を高めるために、ポリビニルアルコールやショ糖、カーボンブラックなどの導電性カーボン源である有機化合物を熱処理後得られた活物質凝集体に加えて再度焼成する。なお、微粒子混合物の最初の熱処理時に導電性カーボン源を加えて加熱処理し、結晶化と共にカーボンによるコーティングや担持処理を同一焼成工程で行うこともできる。焼成条件は温度300〜900℃と処理時間0.5〜10時間の組み合わせで適宜所望の結晶性と粒径の焼成物を得ることができる。高温や長時間の熱処理による過大な熱負荷は粗大な単結晶を生成させ得るので回避すべきであり、所望の結晶性または微結晶性のリチウム遷移金属シリケート化合物が得られる程度の加熱条件で、結晶子の大きさを極力小さく抑制できる熱処理条件が望ましい。
【0035】
このようにして、例えば、図2〜図3に示す、本発明の多孔質な活物質凝集体が得られる。多孔質な活物質凝集体のポーラス性や空洞の占める空隙率は、用いる原料、特には遷移金属元素の種類とその含有割合により相違する。例えば、鉄系では比較的大きな空隙サイズと空隙率が見られ3次元的な空隙と生成凝集体による形状と空間を示し、マンガン系ではこれらは比較的小さな値を示し、小さな孔形状が多数偏在する生成状態を示す。本発明の活物質凝集体を表面から電子顕微鏡で観察できる空隙孔の大きさは、概略0.01〜0.6μmである場合が多い。
【0036】
(正極活物質材料の製造)
得られた活物質凝集体は、次いで乳鉢やボールミルほか粉砕手段に掛けることにより、再び微粒子とすることができ、例えば、図4〜図5に示す、Liイオンのインターカレーションホスト足り得る本発明の正極活物質材料が得られる。
【0037】
正極活物質材料を2θ=10〜50°の範囲の粉末法X線回折を測定すると、少なくとも2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークが得られる。これは、結晶性リチウム遷移金属シリケート化合物に由来する回折であると考えられる。ただし、本発明の正極活物質材料に含まれる結晶化リチウム遷移金属シリケート系化合物の大部分は微細結晶であるが、一部には非晶質成分を含む「微結晶」状態も存在する。例えば、結晶子が複数集まって構成される微粒子が非晶質成分で覆われている状態、或いは非晶質成分マトリクス中に微細な結晶が存在する状態、また微粒子周囲と微粒子間に非晶質成分が存在する状態をいう。これらは図4〜図5に示されるTEM像に観察される状態に該当する。
【0038】
さらに、正極活物質材料を2θ=10〜50°の範囲の粉末法X線回折を測定すると、2θ=18〜20°、同26〜28°、同30〜32°、同38〜40°、同42〜44°、の各範囲の少なくともいずれか一つに回折ピークが得られる。これらは、非晶質または結晶性のシリコン酸化物、非晶質または結晶性の遷移金属酸化物、微結晶性、結晶性または非晶質のリチウム遷移金属シリケートに由来するピークである。
【0039】
正極活物質材料は、主にナノスケールの微粒子として生成され、透過型電子顕微鏡像(TEM像)による観察と粒度分布測定と統計解析によれば、その粒度は5〜150nmの範囲に存在し、その平均粒径は10〜70nmの範囲に存在するナノサイズ微粒子である。さらに、粒度は5〜120nmの範囲に存在し、平均粒径が20〜50nmの範囲に存在することがより好ましい。ここで、微粒子とは、複数の結晶子によって構成される多結晶体を示し、結晶子とは単結晶とみなせる最大の集まりである。なお、粒度分布が5〜150nmの範囲に存在するとは、得られた粒度分布が5〜150nmの全範囲にわたる必要はなく、得られた粒度分布の下限が5nm以上であり、上限が150nm以下であることを意味する。つまり、得られた粒度分布が5〜45nmであってもよいし、20〜120nmであってもよい。
【0040】
得られた正極活物質材料は、用いる遷移金属とその種類によって、充放電の容量等の特性が変わってくる。例えば、遷移金属源としてFe原料を用いると低コストで合成も容易であるが、Fe1種類だけでは容量は従来レベルに止まる。Mn原料の場合も低コストで合成も容易であるが、リチウムマンガンシリケートはLiのインターカレートとデインターカレートにより結晶構造が崩壊し易い欠点があり、充放電サイクル寿命が短い傾向にある。そこで、FeとMnの2原料を用いたリチウム鉄マンガンシリケート(LiFe1−xMnSiO)のように遷移金属を2元素用いると、前記の低容量と結晶構造崩壊の問題は解決する。Feなど元素によっては高次酸化状態が得られ難いので、2元素を用いることにより、Liとの2電子反応となり、充放電容量が倍増する。他方、Feは結晶構造の安定化に寄与する。Fe、Mn以外のTi、Cr、V、Ni、Co、Cu、Zn、Al、Ge、Zr、Mo、W、についても同様のことが云える。
【0041】
他方、アニオンまたはポリアニオンの(SiOシリケートも同様であり、(SiOの一部を他のアニオンにより置換させることもできる。例えば、前記の遷移金属酸であり、チタン酸(TiO)やクロム酸(CrO)、バナジン酸(VO、V)、ジルコン酸(ZrO)、モリブデン酸(MoO、Mo24)、タングステン酸(WO)、等々であり、或いはリン酸(PO)やホウ酸(BO)による置換である。ポリケイ酸イオンの一部をこれらのアニオン種により置換することにより、Liイオンの脱離と復帰の繰り返しによる結晶構造変化の抑制と安定化に寄与し、サイクル寿命を向上させる。また、これらのアニオン種は、高温においても酸素を放出し難いので、発火につながることもなく安全に用いることができる。
【0042】
(非水電解質2次電池用正極)
微粒子混合物を熱処理した活物質凝集体を粉砕することにより得られた、正極活物質材料を用いて正極電極を形成するには、カーボンをコーティングしたり担持したりした正極活物質材料の粉末に、必要に応じてさらにカーボンブラックなどの導電材料を加えると共に、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン、ポリイミドなどの結着剤、またはブタジエンゴムなどの分散剤、またはカルボキシメチルセルロースほかセルロース誘導体などの増粘剤を加えた混合物を、水系溶媒か有機溶媒マトリクス中に加えてスラリーとしたものを、アルミニウムを95重量%以上含むアルミニウム合金箔などの集電体上に、片面ないしは両面に塗布し、焼成して溶媒を揮発乾固する。これにより、本発明の正極が得られる。
【0043】
この際に、スラリーの塗布性や集電体と活物質材料との密着性、集電性を上げるために、前記正極活物質材料とカーボン源等を用いてスプレードライ法により造粒して焼成した2次粒子を、前記の活物質材料に替えてスラリー中に含有させて用いることができる。造粒した2次粒子の塊は概略0.5〜20μm程度の大きな塊になるが、これによりスラリー塗布性が飛躍的に向上して、電池電極の特性と寿命もさらに良好となる。スプレードライ法に用いるスラリーは水系溶媒または非水系溶媒のいずれも用いることができる。
【0044】
さらに、前記の活物質材料を含むスラリーをアルミニウム合金箔等の集電体上に塗工形成した正極において、活物質層形成面の集電体表面粗さとして日本工業規格(JIS B 0601−1994)に規定される十点平均粗さRzが0.5μm以上であることが望ましい。形成した活物質層と集電体との密着性に優れ、Liイオンの挿入脱離に伴う電子伝導性および集電体までのマクロ集電性が増し、充放電のサイクル寿命が向上する。
【0045】
また、前記の集電体と集電体上形成した活物質層の界面において、集電体の主成分が少なくとも活物質層へ拡散した混成状態を示すと、集電体と活物質層との界面接合性が向上し、充放電サイクルにおける体積や結晶構造の変化に対して耐性が増すので、サイクル寿命が向上する。前記の集電体表面粗さ条件も満たす場合さらに良好である。溶媒を揮発させ得る充分な焼成条件によれば、集電体成分が活物質膜に拡散するなど相互成分を有する界面状態となり密着性に優れ、充放電を重ねてもLiイオンの出入りによる体積変化にも耐え、サイクル寿命が向上する。
【0046】
(非水電解質2次電池)
本発明の正極を用いた高容量な2次電池を得るには、従来公知の負極活物質材料を用いた負極や電解液、セパレータ、電池ケース等の各種材料を、特に制限なく使用することができる。
【0047】
本発明に係る正極を用いた2次電池は、容量が高く、良好な電極特性が得られるが、2次電池を構成する非水溶媒を用いる電解液に、フッ素を含有する非水溶媒を用いるか、または添加すると、充放電による繰り返しを経ても容量が低下し難く長寿命となる。例えば、特にはシリコン系の高容量な負極活物質材料を含む負極を用いる場合には、Liイオンのドープ・脱ドープによる大きな膨張収縮を抑制するために、電解液にフッ素を含有するか、フッ素を置換基として有する非水溶媒を含む電解液を用いることが望ましい。フッ素含有溶媒は充電時、特に初めての充電処理の際のLiイオンとの合金化によるシリコン系皮膜の体積膨張を緩和するので、充放電による容量低下を抑制することができる。フッ素含有非水溶媒にはフッ素化エチレンカーボネートやフッ素化鎖状カーボネートなどを用いることができる。フッ素化エチレンカーボネートにはモノ−テトラ−フルオロエチレンカーボネート(4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、FEC)が、フッ素化鎖状カーボネートにはメチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネート、エチル2,2,2−トリフルオロエチルカーボネートなどがあり、これらを単一または複数併用して電解液に添加して用いることができる。フッ素基はシリコンと結合し易く強固でもあるので、Liイオンとの充電合金化による膨張の際にも皮膜を安定化させ膨張の抑制に寄与することができるとみられる。
【0048】
(本発明の効果)
本発明によれば、従来にないナノスケールの粒径を持ち、非晶質または低結晶性のリチウム遷移金属シリケートの微粒子混合物を得ることができる。また、微粒子混合物を後の熱処理工程で結晶化することができるため、熱処理工程の温度や時間などの熱処理条件を変化させることで、所望の結晶性を持つリチウム遷移金属シリケートを得ることができる。
【0049】
本発明の2次電池用正極活物質材料は、従来にないナノスケールの小さな結晶や1次粒子を有しており、さらに結晶性が低いためにLiイオンや電子が移動する距離が小さいために、イオン導電性や電子伝導性が優れるので、本来シリケート系リチウム遷移金属化合物が有する高い容量を充放電に際して得ることができる。
【0050】
以上に示した、本発明による微粒子混合物を焼成して最終的に得られる結晶化リチウム遷移金属シリケート系化合物を含む正極活物質材料を用いた正極を用いた2次電池は、本来有する比容量が大きなリチウム遷移金属シリケート系化合物を使用して、従来達成されなかった室温条件で充放電を果たすことができ、良好な電極特性を得ることができる。このように、本発明に係る正極活物質材料を用いた非水電解質2次電池は、将来、従来にない高容量が期待されるリチウム遷移金属シリケート系化合物を用いた2次電池を実現することができ、そのような高容量な2次電池はモバイル電子機器や電動工具、電気自動車などの駆動電源に用いることができるものである。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本実施例に本発明が何ら限定されることはない。
なお、以下の実施例では、リチウム鉄マンガンシリケート化合物の合成を行ったが、その他の遷移金属を用いる場合や、その他のアニオンを組成材料に加える場合でも同様に、合成、提供できる。
【0052】
(1)微粒子混合物の合成
まず、試験評価用のリチウム遷移金属シリケート系正極活物質材料を製造するための微粒子混合物を以下のように作製した。
(1−1)合成実施例1
火炎法により微粒子混合物を製造する製造装置を図1に示す。図1に示す装置の反応容器は、容器の中央部に微粒子混合物1を生成堆積させるシリカ製の芯棒2と、芯棒2の周囲に配置され、芯棒2表面に火炎原料の酸素と水素ガス、および原料気体を供給する複数のバーナー3〜6を有し、他方に、堆積されなかった生成微粒子や塩酸等の反応生成物を排気する排気管を有する。バーナーから供給する原料の種類と供給流量条件は、以下とした。(組成LiMn1−xFeSiO、X=0.9目標)
:5dm/min、
:5dm/min、
LiCl(4M水溶液):0.2dm/min、
FeCl・4HO(1M水溶液):0.09dm/min、
MnCl・4HO(1M水溶液):0.01dm/min、
SiCl:0.1dm/min、
別途、Nガスを所定量供給し、反応容器中を不活性ガス雰囲気とした。このような条件下で、バーナーからの火炎中で合成した正極活物質前駆体である、シリカ微粒子、酸化鉄や酸化マンガン等の遷移金属酸化物微粒子、リチウム鉄マンガンシリケート化合物の微粒子などの微粒子混合物が芯棒に堆積した。回転させながら引き上げる芯棒の操作により、均質に均一厚さに微粒子混合物を堆積させた。芯棒に堆積した微粒子混合物を剥離して収集した。念のため、不純物除去と微粒子サイズを揃えるために、フィルタに通した。得られた微粒子混合物が微粒子混合物aである。
【0053】
(1−2)合成実施例2
また、同じく火炎法として、空気とプロパンガスによるプロパン燃焼火炎中へ下記の所定濃度の原料液体を供給し、熱酸化させることにより微粒子混合物bを合成して収集した。(組成LiMn1−xFeSiO、X=0.1目標)
ナフテン酸リチウム(4M溶液):0.2dm/min
1630FeO(2−エチルヘキサン鉄II)(1M溶液):0.01dm/min
1630MnO(2−エチルヘキサンMnII)(1M溶液):0.09dm/min
24Si(オクタメチルシクロテトラシロキサン)(1M溶液):0.1dm/min
【0054】
(1−3)合成比較例1
次いで、合成比較例1の活物質の作製を実施した。ポリテトラフルオロエチレン内筒製の耐圧容器に、下記の原料を投入して、オートクレーブ中で170℃、18時間の水熱合成を行った。(組成LiMn1−xFeSiO、X=0.5目標)
LiOH・HO:0.2mol、
FeCl・4HO:0.05mol、
MnCl・4HO:0.05mol、
SiO微粒粉末:0.1mol、
別途、微量(0.01mol程)のL−アスコルビン酸を溶かしたイオン交換水を加えて、計0.5dmとした。
室温まで冷却後、沈殿している反応生成物を回収し、充分に純水洗浄後に、これを70℃2時間真空乾燥させて、活物質rを得た。
【0055】
(1−4)合成比較例2
さらに、合成比較例2として、活物質sの作製を行った。電気炉に下記の原料を混合投入後、焼成して固相法による合成を行った。(組成LiMn1−xFeSiO、X=0.9目標)
LiCO:0.2mol、
FeC・2HO:0.09mol、
MnC・2HO:0.01mol、
SiO微粒粉末:0.1mol、
700℃12時間の仮焼成後、1000℃24時間の本焼成を2回繰り返して、固相法合成の活物質sを得た。
【0056】
(2)活物質凝集体、活物質材料の合成
(2−1)実施例1、3、4、比較例4
次に、Nガス充填の密閉容器に、微粒子混合物aとポリビニルアルコールを所定量加えて、表2に記載の熱処理の温度と時間を変えた複数条件の加熱処理を行って、カーボンコートまたはカーボン担持を実施し、活物質凝集体a’、a1’、a2’、q’を得た。これらの活物質凝集体に粉砕処理を行い、実施例または比較例となる火炎法によるリチウム鉄マンガンシリケート系化合物正極活物質材料A、A1、A2およびQを得た。
(2−2)実施例2
また、微粒子混合物bについて、実施例1と同様の条件にて熱処理とカーボンコートを行い、活物質凝集体を得た後、粉砕処理を行い、正極活物質材料Bを得た。
(2−3)比較例1,2
また、実施例1と同様に、活物質rにポリビニルアルコールを混合した後に、650℃4時間で熱処理を行い、カーボンコート又はカーボン担持処理を行って、正極活物質材料P、Rを得た。
(2−4)比較例3
また、実施例1と同様に、活物質sにポリビニルアルコールを加えた混合物を650℃4時間で熱処理を行い、カーボンコート又はカーボン担持処理を行って正極活物質材料Sを得た。
【0057】
(3)試料の測定観察確認
(3−1)粉末X線回折測定
前記の本発明実施例と比較例の微粒子混合物及び正極活物質材料の粉末X線回折測定(2θ=10〜50°)を以下の測定条件で行い、合成した微粒子の結晶性や回折性と回折角2θ、正極活物質材料の結晶性と、結晶の大きさを調べた。
X線:CuKα線、出力1.2kW、測定装置:RINT2000(株式会社リガク製)
【0058】
(3−2)走査型電子顕微鏡(SEM)観察
得られた活物質凝集体について、SEMにより観察した。また、微粒子混合物の熱処理後の活物質凝集体の空隙の大きさをSEM像観察により調べた。
【0059】
(3−3)透過型電子顕微鏡(TEM)観察
同様に、得られた正極活物質材料について、TEMによる観察とTEM像の画像解析を行い、粒子の粒度分布と平均粒径、粒子形状を調べた。
【0060】
(4)活物質試料を用いた試験評価用正極電極と2次電池の作製
実施例及び比較例で得た正極活物質材料粉末A、B、A1、A2、P、Q、R、Sに対して、導電助剤(カーボンブラック)を10重量%となるように混合し、内部を窒素で置換したボールミルを用いて更に5時間混合した。混合粉末と結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVdF)を、重量比95:5の割合で混合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を加えて十分混練し、正極スラリーを得た。
【0061】
正極スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔集電体に50g/mの塗工量で塗布し、120℃で30分間乾燥した。その後、ロールプレスで2.0g/cmの密度になるように圧延加工し、2cmの円盤状に打抜いて正極とした。
【0062】
これらの正極と、負極に金属リチウム、電解液にエチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比1:1の割合で混合した混合溶媒にLiPFを1Mの濃度で溶解したものを用い、リチウム2次電池を作製した。また、実施例5では、電解液にモノ−テトラ−フルオロエチレンカーボネートを、エチレンカーボネートに代えて混合した混合溶媒を用いて作製した同様の電池を用いて行った。なお、作製雰囲気は露点が−50℃以下とした。各極は集電体の付いた電槽缶に圧着して用いた。上記正極、負極、電解質及びセパレータを用いて直径25mm、厚さ1.6mmのコイン型リチウム2次電池とした。
【0063】
(5)試料の試験評価
次に、前記のコイン型リチウム2次電池により、本発明の正極活物質材料の試験評価を、次のように実施した。
0.01Cの電流レートにて、CC−CV法により、4.5V(対Li/Li)まで充電を行い、その後、0.01Cレートにて、CC法により1.5V(前記に同じ)まで放電を行って、初期の充放電容量を測定した。実施例1〜5、比較例3,4は試験温度25℃で、比較例1,2は試験温度60℃で試験を行った。
【0064】
微粒子混合物・活物質の合成条件と結果を表1に、供試正極活物質材料の仕様と試験結果を表2、表3に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
また、活物質凝集体a’のSEM像を図2、図3に示す。また、正極活物質材料AのTEM像を図4、図5に示す。また、微粒子混合物b、aと活物質sについてのXRD測定結果を図6に示す。また、正極活物質材料B、A、SについてのXRD測定結果を図7に示す。
【0069】
以上の試料作製仕様と試験測定、並びに評価結果から以下のことがわかる。火炎法で微粒子混合物を合成した実施例1〜4では、初回充放電試験において、従来リチウム遷移金属シリケート系材料では得られていない大きな容量の充放電が、室温域においてはじめて得られた結果であった。
【0070】
次に、水熱合成法による比較例1〜2の活物質材料では、比較例1では正極活物質材料Pの結晶性が非常に高く、比較例2では正極活物質材料Rの結晶性が高いうえに、粒子の凝集による塊が生成していると見られ、実施例1〜4とは異なる結果であった。このため、25℃の試験温度では充電ができず、60℃の試験温度では充放電容量は取れたものの、小さな容量にとどまったものとみられる。
【0071】
さらに、固相による合成材料の比較例3では、高温長時間による焼成条件のために、大きな結晶成長を示す性状となっており、室温での充電処理自体ができない結果に終わっている。
【0072】
火炎法による実施例1〜4と比較例4における、カーボンコートアニール条件の比較では、規定の温度と時間の範囲内であれば、規定の活物質材料性状が得られるが、比較例4の強いアニール条件では、せっかくの非晶質または結晶性、微結晶性の微粒子混合物を得ても、結晶が大きく成長してしまい、充放電容量が不充分な電極と電池となってしまうことが判る。
【0073】
電解液溶媒にフッ素を含有する非水溶媒を用いた実施例5は、その他条件が同じ実施例1と比較して、高い容量が得られている。フッ素含有溶媒や正極の集電体表面粗さ、並びに活物質形成層界面の集電体成分拡散による混成界面状態の効果については、充放電の繰り返しサイクルをある程度長期間実施する必要があるが、現在のところそれによる問題は示されていない結果になっている。
【0074】
図2、図3によれば、活物質凝集体a’は、直径50〜200nm程度の粒子が空隙を有しながら多数凝集している様子が確認される。また、それぞれの粒子間の空隙は0.1〜0.5μm程度であることがわかる。
【0075】
図4、図5によれば、正極活物質材料Aは、主に直径50〜100nm程度の粒子が凝集している様子が確認される。特に、図5においては、黒で観察されるリチウム遷移金属シリケートの周囲に、非晶質炭素がコーティングされている様子が確認される。
【0076】
図6に示す粉末X線回折分析の結果によれば、微粒子混合物b、aと活物質sは、2θ=33.1°と35.7°に回折ピークを有する。これらのピークの半値幅は、微粒子混合物b、aのほうが活物質sよりも大きい。活物質sのピークは全体的に鋭く、活物質sは高い結晶性を有することがわかる。一方、微粒子混合物b,aのピークは半値幅が大きく、微粒子混合物b、aは非晶質または結晶が微細な成分よりなることがわかる。
【0077】
図7に示す火炎法で合成した正極活物質材料A、BのX線回折ピークは、半値幅が広いなど回折幅が広い傾向を示し、これは結晶子が小さいこと、そして結晶子の集合した個々の粒子が小さな結晶子の集まりであることによる。これに対して、固相合成による正極活物質材料Sの回折ピークは、鋭くしかも回折強度も大きな値を示し、典型的な大きな結晶子の集まり、または単結晶であることがわかり、正極活物質材料A、Bとの相違は明らかである。
【0078】
更に、実施例6〜17として、遷移金属の種類を変更した正極活物質材料や、シリケートの一部を他のアニオンに置換した正極活物質材料を、合成実施例1および実施例1と同様の方法で合成した。正極活物質材料の遷移金属やアニオンの組成について、火炎法による合成直後の微粒子混合物をICP−AESにより測定して決定した。また、得られた正極活物質材料を用いた試験評価用正極電極と二次電池を、実施例1と同様の方法で作製した。また、初回放電容量の測定を、実施例1と同様の方法で、つまり試験温度25℃、0.01Cの電流レートにて、CC−CV法で実施した。表4に実施例6〜17の測定結果および試験結果を示す。
【0079】
【表4】

【0080】
実施例6〜15に示すように、本発明に係る正極活物質材料は、実施例1〜5のような遷移金属が鉄とマンガンの場合だけでなく、様々な遷移金属などの金属元素を用いる場合でも、常温で高い初回放電容量を有する。また、実施例16と17が示すように、本発明では、リチウム遷移金属シリケートを構成するシリケートの一部をリン酸やホウ酸といったシリケート以外のアニオンに置換してもよい。
【0081】
以上に説明したように、本発明の微粒子混合物は優れた活物質前駆体となり得る材料であり、その後に所定の熱処理などを施すことで、これまでにない小粒径で低結晶性のリチウム遷移金属シリケート系化合物を生成することができる。本発明の微粒子混合物を用いて製造した正極活物質材料を、所定の集電体に塗工した正極は、非水電解質を用いるリチウムイオン2次電池をはじめとする充放電可能な2次電池において、優れた充放電特性を示す正極として用いることができる。今後、更なる改良によって、本発明の化合物系統が本来有するさらに高い理論比容量を目標に充放電容量を向上させる基礎となる。これにより、従来の電子機器用途をはじめ、実用化が始まった産業用途や自動車用途の2次電池に、従来にない高エネルギーや高出力を示す特性を付与することができる。しかも、本発明の微粒子混合物の製造法である火炎法は量産性に優れ、低コストで製品を提供できることが可能になる。
【符号の説明】
【0082】
1………微粒子混合物堆積体
2………シリカ製芯棒
3………第1バーナー
4………第2バーナー
5………第3バーナー
6………第4バーナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン酸化物微粒子、遷移金属酸化物微粒子及びリチウム遷移金属シリケート微粒子の混合物であって、
粉末X線回折測定において2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークを有し、
前記シリコン酸化物微粒子および前記遷移金属酸化物微粒子が非晶質であり、
前記リチウム遷移金属シリケート微粒子が、微結晶状態または非晶質である
ことを特徴とする微粒子混合物。
【請求項2】
2θ=33.1°付近の回折ピークの半値幅が0.35°以上であり、
2θ=35.7°付近の回折ピークの半値幅が0.35°以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の微粒子混合物。
【請求項3】
前記遷移金属酸化物微粒子と前記リチウム遷移金属シリケート微粒子の遷移金属が、Fe、Mn、Ti、Cr、V、Ni、Co、Cu、Zn、Al、Ge、Zr、Mo、W、のうち少なくとも2つの元素を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微粒子混合物。
【請求項4】
前記リチウム遷移金属シリケート微粒子のシリケートの一部を、酸素を放出しない金属酸、リン酸源またはホウ酸源により置換することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微粒子混合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子混合物を熱処理して得られる活物質凝集体であって、
前記活物質凝集体が多孔質であり、
前記活物質凝集体の表面から観察できる空隙の大きさが0.01〜0.6μmであることを特徴とする活物質凝集体。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の微粒子混合物を熱処理して得られる活物質凝集体を粉砕して得られる正極活物質材料であって、
粉末X線回折測定において2θ=33.1°付近と2θ=35.7°付近に回折ピークを有し、
2θ=18〜20°、2θ=26〜28°、2θ=30〜32°、2θ=38〜40°、2θ=42〜44°の範囲のうち、少なくともいずれか一つの範囲に回折ピークを有することを特徴とする正極活物質材料。
【請求項7】
透過型電子顕微鏡写真像の観察測定による粒度分布が5〜150nmに存在し、粒度平均値が10〜70nmに存在することを特徴とする請求項6に記載の正極活物質材料。
【請求項8】
少なくとも一部がカーボンコートされるか、表面の少なくとも一部にカーボンが担持されることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の正極活物質材料。
【請求項9】
微細結晶と非晶質成分とが共に存在する微結晶状態であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の正極活物質材料。
【請求項10】
集電体と、
前記集電体の少なくとも片面に、請求項6〜9のいずれか1項に記載の正極活物質材料を含む正極活物質層と、
を有することを特徴とする非水電解質2次電池用正極。
【請求項11】
請求項10に記載の非水電解質2次電池用正極を用いたことを特徴とする非水電解質2次電池。
【請求項12】
リチウム源、遷移金属源およびシリコン源を火炎に供給する火炎法により合成することを特徴とする微粒子混合物の製造方法。
【請求項13】
前記火炎法が、火炎加水分解法であり、
前記火炎が酸水素火炎であり、
反応容器内が不活性ガス充填雰囲気であることを特徴とする請求項12に記載の微粒子混合物の製造方法。
【請求項14】
前記火炎法が、熱酸化法であり、
前記火炎が酸素を含む炭化水素の火炎であり、
反応容器内が不活性ガス充填雰囲気であることを特徴とする請求項12に記載の微粒子混合物の製造方法。
【請求項15】
前記火炎へ供給される前記リチウム源、前記遷移金属源および前記シリコン源が塩化物であり、
前記火炎の原料が少なくとも水素ガスと酸素ガスを含むことを特徴とする請求項12に記載の微粒子混合物の製造方法。
【請求項16】
前記火炎へ、前記リチウム源、前記遷移金属源および前記シリコン源が、気体で供給される、または液体を気化器に通して供給されることを特徴とする請求項12〜15のいずれか1項に記載の微粒子混合物の製造方法。
【請求項17】
請求項12〜16のいずれか1項に記載の微粒子混合物の製造方法により製造された微粒子混合物を、300〜900℃、0.5〜10時間で熱処理を行うことを特徴とする活物質凝集体の製造方法。
【請求項18】
前記熱処理を炭素源と共に行うことを特徴とする請求項17に記載の活物質凝集体の製造方法。
【請求項19】
請求項17または請求項18に記載の活物質凝集体の製造方法により製造された活物質凝集体を粉砕処理して正極活物質材料を製造することを特徴とする正極活物質材料の製造方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−178601(P2011−178601A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44202(P2010−44202)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】