説明

微粒子混合物の製造方法

本発明により、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物を高収率で製造する製造方法、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する吸入用製剤を高品質で製造する製造方法等が提供される。また、有効成分の微粒子と、担体粒子および補助物質を含有する吸入用製剤を製造する際に、有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物の製造方法、該製造方法によって得られる微粒子混合物、およびこれを含有する吸入用製剤等に関する。
【背景技術】
従来、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩をホスホジエステラーゼIV阻害剤として用いることが知られている(国際公開第96/36624号パンフレット参照)。
一方、ドライパウダー吸入用製剤に含まれる有効成分は、肺や気管支等の疾患部位に到達させ吸収させるために、微細な粒子(微粒子)であることが必要とされている(インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(Int.J.Pharm.)、1994年、第101巻、1頁)。通常このような微粒子は、有効成分の粉砕によって得られる。しかし微粒子は凝集しやすい性質をもつため、微粒子を吸入用製剤に用いた場合、例えば吸入器からの十分な有効成分排出量が得られない、口腔内や上気道で有効成分が凝集してしまい肺や気管支への有効成分の到達率が低い等の問題がある。このため、吸入用製剤では、粉砕した有効成分と担体粒子を混合し、担体粒子表面に粉砕した有効成分を付着させることによってその凝集を防止し、肺や気管支等の疾患部位への有効成分の到達率を向上させる手法が知られている。しかしながら、有効成分の微粒子を担体粒子に付着させた場合、付着力が強すぎると有効成分は吸入操作中に担体粒子から分離せず、口腔、咽喉に沈着してしまい期待された薬効を発揮することができない。特に有効成分の含量が低いと、有効成分の微粒子が担体粒子から再分散されにくくなり、結果として疾患部位への有効成分の到達量が低下する等の問題が生じる。
そこで、かかる問題を解決するために、有効成分の微粒子を担体粒子に付着させた吸入用製剤であって、吸入器からの十分な有効成分排出量が得られ、かつ吸入後に有効成分が担体粒子から良好に分離する吸入用製剤について報告がされている(特表平8−501056公報、特開2001−151673号公報参照)。特表平8−501056公報では、有効成分の微粒子と、補助物質からなる吸入用製剤が報告され、特開2001−151673号公報は、有効成分と、担体粒子および補助物質からなる吸入用製剤の製造方法であって、有効成分と補助物質を混合して粉砕することにより、有効成分と補助物質の微粒子混合物を製造する工程を含む製造方法を報告している。
一方、有効成分の微粒子を製造する工程においては、該微粒子が粉砕装置に付着してしまいその損失を生じる等の問題が生じている。また、有効成分の微粒子を担体粒子に付着させる場合、有効成分の担体粒子への付着力が、有効成分の混合容器への付着力と比較して小さいと、有効成分の微粒子と担体粒子を混合する工程において、有効成分が混合容器に付着してしまいその損失を生じる等の問題が生じている。粉砕によって得られる微粒子では、粉砕していない粒子と比較して付着性、帯電性等が増大することが知られており(ファーマシューティカル・テクノロジー(Pharmaceutical Technology)、1994年、第18巻、58頁)、このことは、有効成分の微粒子を製造する際に、収率が低下する原因の1つとなっている。また、有効成分の微粒子を担体粒子に付着させた吸入用製剤を製造する際に、有効成分の担体粒子への付着率が低下し、品質が低下する原因の1つとなっている。
【発明の開示】
本発明の目的は、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物を高収率で製造する製造方法、7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含む吸入用製剤を高品質で製造する製造方法等を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(29)に関する。
(1)式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン](以下、式(I)で表される化合物を化合物(I)という)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕する工程を含むことを特徴とする化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物の製造方法。
(2)補助物質が糖類または糖アルコール類である前記(1)記載の製造方法。
(3)補助物質が乳糖である前記(1)記載の製造方法。
(4)微粒子混合物の平均粒子径が10μm以下である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)微粒子混合物の平均粒子径が1〜6μmである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(6)化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕する工程を含むことを特徴とする化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する吸入用製剤の製造方法。
(7)補助物質が糖類または糖アルコール類である前記(6)記載の製造方法。
(8)補助物質が乳糖である前記(6)記載の製造方法。
(9)微粒子混合物の平均粒子径が10μm以下である前記(6)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(10)微粒子混合物の平均粒子径が1〜6μmである前記(6)〜(8)のいずれかに記載の製造方法。
(11)化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質を含有する微粒子混合物。
(12)補助物質が糖類または糖アルコール類である前記(11)記載の微粒子混合物。
(13)補助物質が乳糖である(11)記載の微粒子混合物。
(14)微粒子混合物の平均粒子径が10μm以下である前記(11)〜(13)のいずれかに記載の微粒子混合物。
(15)微粒子混合物の平均粒子径が1〜6μmである前記(11)〜(13)のいずれかに記載の微粒子混合物。
(16)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法によって得られる化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物。
(17)前記(11)〜(16)のいずれかに記載の微粒子混合物を含有する吸入用製剤。
(18)前記(11)〜(16)のいずれかに記載の微粒子混合物と担体粒子を含有する吸入用製剤。
(19)担体粒子が糖類または糖アルコール類である前記(18)記載の吸入用製剤。
(20)担体粒子が乳糖である前記(18)記載の吸入用製剤。
(21)補助物質と担体粒子が同一物質である、前記(18)〜(20)のいずれかに記載の吸入用製剤。
(22)担体粒子の平均粒子径が40〜125μmである前記(18)〜(21)のいずれかに記載の吸入用製剤。
(23)微粒子混合物と担体粒子を重量比で1:1〜1:20の範囲で含有する前記(18)〜(22)のいずれかに記載の吸入用製剤。
(24)担体粒子に付着した有効成分の微粒子を含有する吸入用製剤の製造工程において、有効成分と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕して微粒子混合物とし、該微粒子混合物と担体粒子を混合することを特徴とする有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
(25)担体粒子が糖類または糖アルコール類である前記(24)記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
(26)担体粒子が乳糖である前記(24)記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
(27)担体粒子の平均粒子径が40〜125μmである前記(24)〜(26)のいずれかに記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
(28)微粒子混合物と担体粒子の重量比を1:1〜1:20の範囲とする前記(24)〜(27)のいずれかに記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
(29)有効成分が化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩である前記(24)〜(28)のいずれかに記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
化合物(I)の薬理学的に許容される塩は、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。
化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
補助物質としては、糖類、糖アルコール類等が好ましく、例えば乳糖、D−マンニトール等があげられる。
担体粒子としては、糖類、糖アルコール類等が好ましく、例えば乳糖、D−マンニトール等が挙げられる。担体粒子としては、上記の補助物質と同一の物質を用いることが好ましく、例えば担体、補助物質双方に乳糖を用いるのが好ましい。用いられる担体粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましくは40〜125μm、より好ましくは50〜80μmである。
次に、化合物(I)の製造方法について説明する。
化合物(I)は、国際公開第96/36624号パンフレットに記載の方法により製造することができる。
化合物(I)には、互変異性体等の立体異性体が存在し得るが、本発明の微粒子混合物および吸入用製剤には、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を使用することができる。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また、遊離の形で得られるときは、化合物(I)を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、化合物(I)およびその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も本発明の吸入用製剤に使用することができる。
本発明の微粒子混合物の製造方法および本発明の吸入用製剤の製造方法において、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕する際に用いられる粉砕方法は、当該分野において周知の方法であれば特に限定されないが、例えば乳鉢粉砕、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、流体エネルギー粉砕(例えばジェットミル粉砕)等があげられ、通常−30℃〜50℃の温度範囲で、好ましくは−20℃〜40℃の温度範囲で粉砕される。粉砕は、好ましくは−30〜10℃、より好ましくは−20℃〜5℃の低温下で、および/または例えば窒素、アルゴン等の不活性気体下で行うのが好ましい。これにより、有効成分の品質をよりよく保つことができる。
本発明により製造される微粒子混合物の平均粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは1〜6μmである。
本発明における化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質との混合比は、特に限定されないが、好ましくは重量比で1:1〜1:200、より好ましくは重量比で1:3〜1:100である。
本発明はまた、例えば上記微粒子混合物の製造方法によって得られる化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを含有する微粒子混合物をも包含する。
本発明の微粒子混合物は、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とから製造することができるが、その製造方法は、特に限定されず、例えば各成分を粉砕した後に混合し製造する方法、各成分を混合後粉砕し製造する方法等いずれの方法を用いてもよく、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質を未粉砕の状態で混合した後、混合粉砕する方法が好ましい。混合粉砕を行うことにより、粒子径が微細な、均一性の高い微粒子混合物が得られる。さらに、微粒子の粉砕装置への付着を低減し、回収率を向上させることができる。
用いられる粉砕方法は、当該分野において周知の方法であれば特に限定されないが、例えば乳鉢粉砕、ボールミル粉砕、ハンマーミル粉砕、流体エネルギー粉砕(例えばジェットミル粉砕)等があげられ、通常−30℃〜50℃の温度範囲で、好ましくは−20℃〜40℃の温度範囲で粉砕される。また、有効成分または有効成分と補助物質との混合物の粉砕は、好ましくは−30〜10℃、より好ましくは−20℃〜5℃の低温下で、および/または例えば窒素、アルゴン等の不活性気体下で行うのが好ましい。これにより、有効成分の品質をよりよく保つことができる。
本発明において製造される微粒子混合物および本発明の微粒子混合物の平均粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは1〜6μmである。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質との混合比は、特に限定されないが、好ましくは重量比で1:1〜1:200、より好ましくは重量比で1:3〜1:100である。
本発明の吸入用製剤は、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質を含有する微粒子混合物を含有する吸入用製剤であって、該微粒子混合物を、担体粒子と混合することにより製造される吸入用製剤を包含する。
化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを含有する微粒子混合物と上記担体粒子との混合比は特に限定されないが、好ましくは重量比で1:0.1〜1:50、より好ましくは重量比で1:0.5〜1:20である。
本発明の吸入用製剤は、活性成分として化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を単独で、または任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。
また、本発明の吸入用製剤は、例えばドライパウダー吸入器等の吸入器を用いて投与することが可能である。
本発明の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法は、本発明の吸入用製剤の製造方法において化合物(I)を有効成分に代えて吸入用製剤を製造することにより行うことができる。本発明の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法における有効成分としては、原則としては吸入用製剤として使用されるものであれば特に限定されないが、特に粒子同士が凝集しやすいものがあげられ、例えば脂溶性の高い薬物等があげられる。脂溶性の高い薬物としては例えば副腎皮質ホルモン類、性ホルモン類、活性型ビタミンD類、プロスタグランジン類等があげられる。副腎皮質ホルモン類としては、例えばプロピオン酸ベクロメタゾン、酢酸トリアムシノロン、フルニソリド、ブデソニド、プロピオン酸フルチカゾン等があげられ、性ホルモン類としては、例えばテストステロン、エストロジェン、エストラジオール等があげられ、活性型ビタミンD類としては、例えば1α,24−ジヒドロキシビタミンD、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(カルシフェロール)、カルシポトリオール、1α−ヒドロキシ−24−オキソビタミンD、1α,25−ジヒドロキシビタミンD3−26,23−ラクトン、1α,25−ジヒドロキシビタミンD−26,23−パーオキシラクトン、26,26,26,27,27,27−ヘキサフルオロ−1α,25−ジヒドロキシビタミンD等があげられ、プロスタグランジン類としては、例えばプロスタグランジンE(アルプロスタジル)、プロスタグランジンFα(ジノプロスト)、プロスタグランジンI(エポプロステノール)、ベラプロスト、クリンプロスト等があげられる。
以下に、本発明の様態を実施例、比較例、および試験例で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例1】
化合物(I)0.5gと乳糖2.5gを混合後、ジェットミル(A−O JET;セイシン企業、以下同じ)を用い、室温下、空気圧力500kPa、粉末送り速度1g/分で混合粉砕し、微粒子混合物(2.7g、収率90%)を得た。得られた微粒子混合物(0.1g)と乳糖(Pharmatose 325M;DMVジャパン、以下同じ)を重量比1:16の比率で混合し、吸入用製剤を得た。
【実施例2】
化合物(I)0.5gと乳糖25gを混合後、ジェットミルを用い、室温下、空気圧力500kPa、粉末送り速度1g/分で混合粉砕し、微粒子混合物(24.5g、収率96%)を得た。得られた微粒子混合物(1.0g)と乳糖を重量比1:1の比率で混合し、吸入用製剤を得た。
比較例1
化合物(I)0.5gを、単独でジェットミルを用い、室温下、空気圧力500kPa、粉末送り速度0.2g/分で粉砕し、微粒子状粉砕物(0.24g、収率48%)を得た。得られた微粒子状粉砕物(0.02g)と乳糖を重量比1:101の比率で混合し、吸入用製剤を得た。
試験例1
実施例1、2および比較例1で得られた、各微粒子混合物および微粒子状粉砕物に含まれる化合物(I)の平均粒子径を測定した。分散媒に0.1%ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)水溶液を用いることで微粒子混合物または微粒子状粉砕物中の乳糖を溶解させ、化合物(I)の平均粒子径を測定した。測定にはレーザー光散乱粒度分布測定装置(LDSA−1300A;東日アプリケーションズ)を用いた。結果を第1表に示す。

以上の実施例1、2、比較例1および試験例1により、化合物(I)と補助物質(乳糖)を混合して粉砕することにより、化合物(I)の収率が向上し、また化合物(I)の平均粒子径を小さくすることができることが示された。
試験例2
実施例1、2および比較例1で得られた各吸入用製剤中の化合物(I)の含量を測定した。各製剤102mg(理論上化合物(I)は1mg含有される)について秤量し、含量を測定した。例数はn=6とした。結果を第2表に示す。

本試験により、実施例1および2で得られた各製剤は、比較例1で得られた製剤と比較して有効成分である化合物(I)を理論量に近い量で含有し、高品質であることが示された。
【産業上の利用可能性】
本発明により、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物を高収率で製造する製造方法、化合物(I)またはその薬理学的に許容される塩を含有する吸入用製剤を高品質で製造する製造方法等が提供される。また、有効成分の微粒子と、担体粒子および補助物質を含有する吸入用製剤を製造する際に、有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕する工程を含むことを特徴とする該7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物の製造方法。
【請求項2】
補助物質が糖類または糖アルコール類である請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項3】
補助物質が乳糖である請求の範囲第1項記載の製造方法。
【請求項4】
微粒子混合物の平均粒子径が10μm以下である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
微粒子混合物の平均粒子径が1〜6μmである請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕する工程を含むことを特徴とする該7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する吸入用製剤の製造方法。
【請求項7】
補助物質が糖類または糖アルコール類である請求の範囲第6項記載の製造方法。
【請求項8】
補助物質が乳糖である請求の範囲第6項記載の製造方法。
【請求項9】
微粒子混合物の平均粒子径が10μm以下である請求の範囲第6項〜第8項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
微粒子混合物の平均粒子径が1〜6μmである請求の範囲第6項〜第8項のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩と補助物質を含有する微粒子混合物。
【請求項12】
補助物質が糖類または糖アルコール類である請求の範囲第11項記載の微粒子混合物。
【請求項13】
補助物質が乳糖である請求の範囲第11項記載の微粒子混合物。
【請求項14】
微粒子混合物の平均粒子径が10μm以下である請求の範囲第11項〜第13項のいずれかに記載の微粒子混合物。
【請求項15】
微粒子混合物の平均粒子径が1〜6μmである請求の範囲第11項〜第13項のいずれかに記載の微粒子混合物。
【請求項16】
請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の製造方法によって得られる式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩を含有する微粒子混合物。
【請求項17】
請求の範囲第11項〜第16項のいずれかに記載の微粒子混合物を含有する吸入用製剤。
【請求項18】
請求の範囲第11項〜第16項のいずれかに記載の微粒子混合物と担体粒子を含有する吸入用製剤。
【請求項19】
担体粒子が糖類または糖アルコール類である請求の範囲第18項記載の吸入用製剤。
【請求項20】
担体粒子が乳糖である請求の範囲第18項記載の吸入用製剤。
【請求項21】
補助物質と担体粒子が同一物質である、請求の範囲第18項〜第20項のいずれかに記載の吸入用製剤。
【請求項22】
担体粒子の平均粒子径が40〜125μmである請求の範囲第18項〜第21項のいずれかに記載の吸入用製剤。
【請求項23】
微粒子混合物と担体粒子を重量比で1:1〜1:20の範囲で含有する請求の範囲第18項〜第22項のいずれかに記載の吸入用製剤。
【請求項24】
担体粒子に付着した有効成分の微粒子を含有する吸入用製剤の製造工程において、有効成分と補助物質とを混合し、得られた混合物を混合粉砕して微粒子混合物とし、該微粒子混合物と担体粒子を混合することを特徴とする有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
【請求項25】
担体粒子が糖類または糖アルコール類である請求の範囲第24項記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
【請求項26】
担体粒子が乳糖である請求の範囲第24項記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
【請求項27】
担体粒子の平均粒子径が40〜125μmである請求の範囲第24項〜第26項のいずれかに記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
【請求項28】
微粒子混合物と担体粒子の重量比を1:1〜1:20の範囲とする請求の範囲第24項〜第27項のいずれかに記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。
【請求項29】
有効成分が式(I)

で表される7−[2−(3,5−ジクロロ−4−ピリジル)−1−オキソエチル]−4−メトキシ−スピロ[1,3−ベンゾジオキソール−2,1’−シクロペンタン]またはその薬理学的に許容される塩である請求の範囲第24項〜第28項のいずれかに記載の吸入用製剤の有効成分の微粒子の担体粒子への付着率を上昇させる方法。

【国際公開番号】WO2004/087146
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504255(P2005−504255)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004588
【国際出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】