説明

微粒子状切粉の回収方法及び回収装置

【課題】ワークに切削加工を施す際に生じるスラッジに含まれるワークの微粒子状切粉を高純度で回収することが可能である微粒子状切粉の回収方法及び回収装置を提供する。
【解決手段】シリコンインゴットを切断加工して生じるシリコン微粒子状切粉を含むスラッジに、水,エタノール及び塩酸を加えてpH3〜7の懸濁液Lを生成して収容する洗浄槽2と、洗浄槽2内の懸濁液Lを送給する循環ポンプ3と、循環ポンプ3により送給された懸濁液Lを収容する水槽4と、水槽4内の懸濁液Lに超音波を照射してその表面から微細な液滴Dを生じさせる超音波振動子5と、水槽4内に不活性ガスを導入して浮遊する微細な液滴Dを不活性ガスに載せて水槽4外に送り出すコンプレッサ6と、不活性ガスとともに送給された微細な液滴Dからシリコン微粒子状切粉を回収する微粒子回収部7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して切断加工や研磨加工などの切削加工を施した際に生じるワークの微粒子状切粉を回収するのに用いられる微粒子状切粉の回収方法及び回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ワークであるシリコン単結晶又はシリコン多結晶のインゴットから、ウエハを切り出す場合には、図5に示すように、一対のローラ101,101間に複数本のワイヤ102を掛け渡して成るワイヤソー100を用いて切断するが、この際、プロピレングリコールやエチレングリコールなどの水溶性の有機溶媒及び大きさが数十μmの炭化珪素(SiC)などの砥粒を混合して成るスラリが切削油として用いられる。
【0003】
この切断加工において、シリコンインゴットSの3割以上が微粒子状切粉(数百nm〜数μmの微粒子)としてスラリとともに流されるので、切断加工後のスラリには、シリコンの微粒子状切粉が含まれているほか、ワイヤソー100のワイヤ102から削り落ちた鉄や銅などの金属が含まれている。
このような切断加工(切削加工)で使用したスラリは、これまで再利用されることはほとんどなかったが、最近において、遠心分離手段や蒸留手段などの固液分離手段によって有機溶媒及び砥粒を回収し、この回収した有機溶媒及び砥粒を未使用のスラリに混ぜ合わせて再利用する傾向にあり、資源を有効利用する点で成果を上げている。
【0004】
その一方で、使用済みスラリから有機溶媒及び砥粒を回収した後に残されるスラッジには、回収し切れなかった有機溶媒(約10%)や砥粒(約10%)やワイヤソーに係る鉄などの金属(5%強)とともにシリコンが全体の約70%を占める割合で含まれており、シリコン原料の不足が問題視されている最近の状況において、このスラッジに大量に含まれるシリコンをできるだけ多く回収して、原料として使用することが望まれている。
【0005】
しかし、スラッジ中のシリコンには不純物が多く含まれていることから、そのまま溶融処理をしたとしても歩留まりが悪いうえ、高純度のシリコンを得ることができない。
そこで、歩留まりの良い溶融処理が行える程度にまで純度を高めたシリコンを回収するべく、従来において、混合物スラリの状態で酸及び磁気を用いて金属を除去する方法(例えば、特許文献1参照)や、酸を用いて洗浄することで金属を溶解させる方法(例えば、特許文献2参照)や、シリコンの微粒子状切粉と炭化珪素砥粒との比重差を用いて両者を分離する方法(例えば、特許文献3参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平9-165212号公報
【特許文献2】特開2001-278612号公報
【特許文献3】特開平11-33361号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した酸及び磁気を用いて金属を除去してシリコンを回収する方法において、シリコンの微粒子状切粉と同程度の大きさにまで微細化された金属を回収するためには、強力な磁石を必要するうえ、例え、強力な磁石を用いたとしても、金属を完全に除去することができない。
また、酸を用いて洗浄することで金属を溶解させる方法では、酸洗浄後のスラッジを大量の水を用いてリンスするか、あるいはアルカリで中和する必要があり、環境面及びコスト面のいずれの面においても不利である。
【0007】
さらに、比重差を用いてシリコンの微粒子状切粉と炭化珪素砥粒とを分離する方法において、pHや溶媒の性質などの関係でシリコンの微粒子状切粉が凝集している場合には、シリコンの微粒子状切粉を炭化珪素砥粒から完全に分離させることができるとは言い難いという問題があり、これらの問題を解決することが従来の課題となっていた。
本発明は、上述した従来の課題に着目してなされたもので、ワークに切断加工や研磨加工などの切削加工を施すに際して、この加工で生じるスラッジに含まれるワークの微粒子状切粉を高純度で回収することが可能である微粒子状切粉の回収方法及び回収装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、まず、容器に収容した液体に対してメガヘルツ領域の超音波を液中から液面に向けて照射すると、図2に示すように、音圧によって液面に液柱FJが形成され、この液柱FJの表面から表面波の破断やキャビテーションによる衝撃波によって数μmの液滴Dが発生することに着目した。
次いで、液体が水及びアルコール(例えば、エタノール)の混合液体である場合において、この超音波を用いた手法で液滴を発生させると、図3の気液平衡線図(上記混合液体から発生した液滴及び混合液体の各エタノール濃度をプロットした図)に示すように、容器中の混合液体のアルコール濃度の方が液滴のアルコール濃度よりも高くなり、容器中の混合液体のアルコール濃度が40mol%以上の場合には、液滴のアルコール濃度が気液平衡よりも高くなることに着目した。
【0009】
そして、上記した水及びエタノールの混合液体に酸を加えて、ワークに対する切断や研磨などの切削加工で生じるワークの微粒子状切粉を含むスラッジを洗浄し、この洗浄後の酸を含んだ混合液体に超音波を照射して液滴を生じさせた場合に、この超音波によって発生した液滴のアルコール濃度が、容器内に残留する混合液体のアルコール濃度よりも高くなることを見出し、容器内に浮遊する微粒子状切粉を含む液滴を回収することで、鉄や銅などの金属を含まない微粒子状切粉だけを回収し得ることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、ワークに対する切断や研磨などの切削加工で生じるワークの微粒子状切粉を含むスラッジから該微粒子状切粉を高純度で回収する微粒子状切粉の回収方法であって、前記スラッジに、水,アルコール及び酸を加えて所定pHの懸濁液を生成し、この懸濁液に超音波を照射して微細な液滴を浮遊させ、この微細な液滴を固液分離することで、微粒子状切粉を回収する構成としたことを特徴としており、この微粒子状切粉の回収方法の構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0011】
この場合、スラッジに加えるアルコールとしては、メタノールやエタノールを使用することができるほか、プロパノールやn−プロパノールやイソプロパノールなどを使用することができ、一方、スラッジに加える酸としては、塩酸や硝酸を使用することができるほか、クエン酸や乳酸なども使用することが可能である。
また、懸濁液に照射する超音波の周波数は500〜2MHzであり、微細な液滴を安定して生じさせて浮遊させるために、超音波照射手段、例えば、直径20mmの円板状における一つの超音波振動子から、周波数1.6〜2.4MHz、出力18〜21Wの超音波を懸濁液の下方から照射する場合には、懸濁液の液面までの距離を20〜30mmに維持することが望ましい。
【0012】
この際、超音波を照射することで生じる液滴の径dは、以下の(式1)で表される(R.J. Lang, J. Acoust. Soc. Am. 34 (1962) 6.)。
d=k・(8πσ/ρf1/3 式(1)
但し、σは液滴の表面張力、ρは液滴の密度、fは超音波の周波数、kは係数である。
【0013】
液滴を発生させる超音波照射手段としては、上記した平板状の超音波振動子のほかに、ホーン形の超音波振動子(参考文献: R. Rajan, A. B. Pandit, Ultrasonics 39 (2001) 235-255)を用いることができ、いずれの場合も振動子の表面に形成した液膜に対して超音波を照射することで液滴を発生させることができる。このような場合には、振動子のサイズや液膜の厚みに応じて、周波数や出力を適宜調整する。
【0014】
本発明に係る微粒子状切粉の回収方法では、例えば、ワークがシリコンである場合、洗浄槽において、シリコンに対する切断加工で生じるシリコンの微粒子状切粉とスラリの炭化珪素砥粒とワイヤソーから削り落ちた鉄や銅などの金属を含むスラッジに、水,アルコール及び酸を加えて懸濁液を生成した後、この懸濁液を超音波の照射が成される水槽に供給する。
【0015】
そして、この水槽において、超音波照射手段により懸濁液に超音波を照射して微細な液滴を生じさせて浮遊させる。この際、微細な液滴のサイズは数μmなので、数十μmの炭化珪素砥粒は水槽内の懸濁液中に残留することとなって、液滴中には数百nm〜数μmのシリコンの微粒子状切粉のみが含まれることとなる。
加えて、スラッジに水,アルコール及び酸を加えて洗浄する段階では、スラッジ中の鉄や銅などの金属は水に溶出するが、超音波によって発生した液滴のアルコール濃度が、水の濃度が低い分だけ水槽内に残留する懸濁液のアルコール濃度よりも高くなるので、水槽内に浮遊する微粒子状切粉を含む液滴を回収すれば、鉄や銅などの金属を含まない微粒子状切粉だけを回収し得ることとなる。
【0016】
なお、洗浄前にスラッジに付着していた有機溶媒は、洗浄する段階でアルコールを含む洗浄液に分散し、超音波を使用して発生させた微細な液滴中にも有機溶媒は同伴するが、アルコールと一緒に容易に分離される。
また、超音波を使用して液滴を発生させると、僅かではあるが数μmの微細な液滴と一緒に大型の液滴が発生することがある。この大型の液滴のアルコール濃度は、超音波を照射する水槽中に供給された懸濁液中のアルコール濃度とほとんど同じであるため、回収する液滴に大型の液滴が混入すると、回収する液滴全体でのアルコール濃度が低下して、鉄や銅などの金属の除去が不十分になる。
【0017】
したがって、浮遊する微細な液滴を集めるにあたって、固液分離する微粒子回収部の前段にデミスタなどの液滴回収手段を配置し、この液滴回収手段で大型の液滴を捕集して、微粒子回収部では微細な液滴だけを回収するようになせば、回収するシリコンの微粒子状切粉に含まれる鉄や銅などの金属の量を格段に減らし得ることとなる。
さらに、スラッジに水,アルコール及び酸を加えて懸濁液を生成する場合には、この懸濁液のpHを3〜7程度にまで低下させることが望ましく、このように、pHを3〜7程度にまで下げることにより、不純物のうちの鉄や銅などの金属を洗浄液に確実に溶出させることができる。この際、懸濁液のpHが3よりも低くなると、シリコンの微粒子状切粉が持つ電位の絶対値が小さくなって凝集が起こってしまい、シリコンの微粒子状切粉表面に付着した不純物が洗浄され難くなるので好ましくない。
【0018】
そこで、本発明の請求項2に係る微粒子状切粉の回収方法において、前記懸濁液は、pH3〜7である構成としている。
一方、本発明の請求項3に係る発明は、上記した微粒子状切粉の回収方法に用いるのに好適な微粒子状切粉の回収装置であって、前記スラッジに、水,アルコール及び酸を加えて所定pHの懸濁液を生成して収容する洗浄槽と、この洗浄槽内の懸濁液の送給手段と、この送給手段により送給された懸濁液を収容する水槽と、この水槽内の懸濁液に対して超音波を照射して該懸濁液の表面から微細な液滴を生じさせる超音波照射手段と、前記水槽内で浮遊する微細な液滴をキャリアガス(空気、望ましくは不活性ガス)に載せて送給するガス送給手段と、このガス送給手段により送給された微細な液滴を固液分離することで、微粒子状切粉を回収する微粒子回収部を備えている構成としている。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る微粒子状切粉の回収装置では、前記洗浄槽に収容する懸濁液のpHを3〜7とした構成としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の請求項1に係る微粒子状切粉の回収方法及び請求項3に係る微粒子状切粉の回収装置では、上記した構成としているので、ワークに切断加工や研磨加工などの切削加工を施すに際して、この加工で生じるワークの微粒子状切粉を含むスラッジから、粒径の大きな炭化珪素などの砥粒は勿論のこと、鉄や銅などの金属をも同時に分離することができるので、スラッジに含まれるワークの微粒子状切粉を高純度で回収することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【0021】
また、本発明の請求項2に係る微粒子状切粉の回収方法及び請求項4に係る微粒子状切粉の回収装置では、上記した構成としているので、スラッジから、鉄や銅などの金属を確実に分離することができるという非常に優れた効果がもたらされる。
加えて、本発明に係る微粒子状切粉の回収方法及び微粒子状切粉の回収装置では、ワークに対する切削加工の際に用いるスラリ中の有機溶媒をも炭化珪素などの砥粒とともに除去することが可能であるという非常に優れた効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る微粒子状切粉の回収方法及び回収装置を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る微粒子状切粉の回収装置の一実施形態を示しており、この実施形態では、ワークであるシリコン単結晶又はシリコン多結晶のインゴットからウエハを切り出す際に生じるスラッジから、シリコンの微粒子状切粉を回収する場合を例に挙げて説明する。
【0023】
図1に示すように、この微粒子状切粉の回収装置1は、シリコンインゴットに対する切断加工で生じるシリコンの微粒子状切粉を含むスラッジに、水,アルコール(例えばエタノール)及び酸(例えば塩酸)を加えてpH3〜7の懸濁液Lを生成して収容する攪拌機2aを具備した洗浄槽2と、この洗浄槽2内の懸濁液Lの送給手段である循環ポンプ3と、この循環ポンプ3により送給された懸濁液Lを収容する水槽4と、この水槽4の底面に装着されて水槽4内の懸濁液Lに超音波を照射して懸濁液Lの表面から微細な液滴Dを生じさせる超音波照射手段としての平板状の超音波振動子5と、水槽4に不活性ガス(キャリアガス)を導入してこの水槽4内で浮遊する微細な液滴Dを不活性ガスに載せて水槽4外に送り出すガス送給手段としてのコンプレッサ6と、このコンプレッサ6の作動により不活性ガスとともに送給された微細な液滴Dからシリコン微粒子状切粉を回収する微粒子回収部7を備えている。
【0024】
この場合、水槽4内において微細な液滴Dを安定して発生させ且つ浮遊させるために、平板状の超音波振動子5から懸濁液Lの液面までの距離を20〜30mmに維持するべく、循環ポンプ3による懸濁液Lの送給量を制御するようにしている。
また、微粒子回収部7では、不活性ガスとともに送給された微細な液滴Dをコンデンサ8によってガスG及び微粒子状切粉Siを含むエタノールEに分離したうえで、この微粒子状切粉Siを含むエタノールEをさらに固液分離して、シリコン微粒子状切粉を回収するようになっている。
【0025】
なお、微粒子状切粉Siを含むエタノールEを固液分離するに際して、エタノールEや上記スラッジに含まれる有機溶媒を回収する場合には、微粒子状切粉Siを含むエタノールEを冷却することで固液分離し、一方、エタノールEや有機溶媒を回収しない場合には、エタノールEや有機溶媒を蒸発させることでシリコン微粒子状切粉のみを回収するようになっている。
【0026】
上記した微粒子状切粉の回収装置1では、まず、洗浄槽2において、シリコンに対する切断加工で生じたシリコンの微粒子状切粉とスラリの炭化珪素砥粒とワイヤソーから削り落ちた鉄や銅などの金属を含むスラッジKに、水W,エタノールE及び塩酸Cを加えて懸濁液Lを生成する。
次いで、循環ポンプ3を作動させて懸濁液Lを平板状の超音波振動子5を装備した水槽4に供給するのに続いて、超音波振動子5により懸濁液Lに超音波を照射して水槽4内において微細な液滴Dを生じさせて浮遊させる。
【0027】
このとき、水槽4内で微細な液滴Dを安定して発生させ且つ浮遊させるために、平板状の超音波振動子5から懸濁液Lの液面までの距離を20〜30mmに維持するように、ポンプ3による懸濁液Lの送給量を制御する。
水槽4内において浮遊する微細な液滴Dのサイズは数μmになっているので、大きさが数十μmの炭化珪素砥粒は水槽4内の懸濁液L中に残留することとなって、液滴D中には大きさが数百nm〜数μmのシリコンの微粒子状切粉のみが含まれることとなる。
【0028】
また、スラッジKに水W,エタノールE及び塩酸Cを加えて洗浄する段階において、スラッジK中の鉄や銅などの金属は懸濁液L中に溶出し、超音波により発生した液滴Dのエタノール濃度が、水槽4内に残留する懸濁液Lのアルコール濃度よりも高くなるため、液滴D中には鉄や銅などの金属イオンはほとんど含まれない。
そこで、コンプレッサ6によって水槽4に不活性ガスを導入して、この水槽4内で浮遊する微細な液滴Dを不活性ガスに載せて水槽4外に送り出し、続いて、微粒子回収部7において、コンプレッサ6の作動により不活性ガスとともに送給された微細な液滴Dをコンデンサ8によってガスG及び微粒子状切粉Siを含むエタノールEに分離したうえで、この微粒子状切粉Siを含むエタノールEをさらに固液分離して、シリコン微粒子状切粉を回収すると、鉄や銅などの金属を含まない微粒子状切粉だけを回収し得ることとなる。
【0029】
つまり、シリコンインゴットに切断加工を施すに際して、この加工で生じるシリコン微粒子状切粉を含むスラッジKから、粒径の大きな炭化珪素などの砥粒は言うまでもなく、鉄や銅などの金属をも同時に分離することができ、スラッジKに含まれるシリコン微粒子状切粉を高純度で回収し得ることとなる。
なお、水槽4内において浮遊する微細な液滴Dを不活性ガスに載せて水槽4外の微粒子回収部7に送給するにあたって、この微粒子回収部7のコンデンサ8の前段にデミスタなどの液滴回収手段を配置し、この液滴回収手段で大型の液滴Dを捕集して、微粒子回収部7のコンデンサ8では微細な液滴Dだけを回収するようになせば、回収するシリコンの微粒子状切粉に含まれる鉄や銅などの金属の量を格段に減らし得ることとなる。
【0030】
上記した実施形態では、ワークであるシリコン単結晶又はシリコン多結晶のインゴットからウエハを切り出す際に生じるスラッジから、シリコンの微粒子状切粉を回収する場合を例に挙げて説明したが、他の種類、例えば、タングステンなどのレアメタルに対して切断加工などの切削加工を施した際に生じるスラッジから、レアメタルの数μm以下の微粒子状切粉を回収する場合に適用することが可能である。
【0031】
また、切削加工時に生じる廃液から回収されるスラッジだけでなく、切削加工により生じる廃液そのものを原料として目的とする微粒子を回収するようにしてもよい。
さらに、上記した実施形態では、液滴Dを発生させる超音波照射手段を平板状の超音波振動子5としているが、これに限定されるものではなく、超音波照射手段を、例えば、ホーン形の超音波振動子としてもよい。
【0032】
さらにまた、液滴Dを発生させる超音波照射手段は、必ずしも1個である必要はなく、複数であっても構わない。例えば、図4に示すように、超音波照射手段としての平板状の超音波振動子5を水槽4において懸濁液Lの流れ(図示矢印方向)に沿って上流から下流にかけて複数配置し、これらの超音波振動子4の上方で次々と液柱FJを生じさせて微細な液滴Dを発生させるようにしてもよい。
【0033】
さらにまた、上記した実施形態に係る微粒子状切粉の回収装置1では、ワイヤソーから削り落ちた鉄や銅などの金属の微粒子を溶解させることで、金属を含まないシリコンの微粒子状切粉を回収するようにしているので、回収する切粉の微粒子に金属微粒子が混ざっている場合や、回収する切粉の微粒子が金属又は金属酸化物などの金属化合物でコーティングされている場合にも、上記微粒子状切粉の回収装置1を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る微粒子状切粉の回収装置の簡略構成説明図である。
【図2】本発明に係る微粒子状切粉の回収装置における液滴発生状況を示す超音波照射手段部分の側面説明図である。
【図3】水とエタノールとの混合液体及びこの混合液体から発生した液滴の各エタノール濃度をプロットした気液平衡線図である。
【図4】本発明に係る微粒子状切粉の回収装置の他の実施形態を示す超音波照射手段を配置した部分における断面説明図である。
【図5】ワークであるシリコンインゴットを切断するのに用いられるワイヤソーの簡略斜視説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 微粒子状切粉の回収装置
2 洗浄槽
3 循環ポンプ(送給手段)
4 水槽
5 平板状の超音波振動子(超音波照射手段)
6 コンプレッサ(ガス送給手段)
7 微粒子回収部
C 塩酸(酸)
D 微細な液滴
E エタノール(アルコール)
L 懸濁液
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対する切断や研磨などの切削加工で生じるワークの微粒子状切粉を含むスラッジから該微粒子状切粉を高純度で回収する微粒子状切粉の回収方法であって、
前記スラッジに、水,アルコール及び酸を加えて所定pHの懸濁液を生成し、
この懸濁液に超音波を照射して微細な液滴を浮遊させ、
この微細な液滴を固液分離することで、微粒子状切粉を回収する
ことを特徴とする微粒子状切粉の回収方法。
【請求項2】
前記懸濁液は、pH3〜7である請求項1に記載の微粒子状切粉の回収方法。
【請求項3】
ワークに対する切断や研磨などの切削加工で生じるワークの微粒子状切粉を含むスラッジから該微粒子状切粉を高純度で回収する微粒子状切粉の回収装置であって、
前記スラッジに、水,アルコール及び酸を加えて所定pHの懸濁液を生成して収容する洗浄槽と、
この洗浄槽内の懸濁液の送給手段と、
この送給手段により送給された懸濁液を収容する水槽と、
この水槽内の懸濁液に対して超音波を照射して該懸濁液の表面から微細な液滴を生じさせる超音波照射手段と、
前記水槽内で浮遊する微細な液滴をキャリアガスに載せて送給するガス送給手段と、
このガス送給手段により送給された微細な液滴を固液分離することで、微粒子状切粉を回収する微粒子回収部を備えている
ことを特徴とする微粒子状切粉の回収装置。
【請求項4】
前記洗浄槽に収容する懸濁液のpHを3〜7とした請求項3に記載の微粒子状切粉の回収装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−297618(P2009−297618A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152870(P2008−152870)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】