説明

微粒子状金属酸化物とその用途

【課題】 より優れた紫外線吸収性を発揮するとともに、良好な透明性を有し、例えば基材に内添もしくはコーティングした場合にも基材の透明性を損なうことがない、微粒子状金属酸化物を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる微粒子状金属酸化物は、Zn、TiおよびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする酸化物からなる粒子内にCu、Ag、Mnに由来する成分が含有されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、より優れた紫外線吸収性を発揮するとともに、例えば、基材に内添もしくはコーティングした場合にも基材の透明性や色相を損なうことのない微粒子状金属酸化物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線遮蔽能を付与する目的で、例えば、繊維、板、フィルム等のプラスチック成形体、塗料、化粧料等に紫外線吸収性材料を内添したり、ガラス、プラスチックフィルム等に溶媒やバインダー樹脂とともに紫外線吸収性材料を含むコーティング剤をコーティングしたりすることが行われている。
例えば、化粧品、建材や自動車用あるいはディスプレイ用の窓ガラス、フラットパネルディスプレイなどの各種分野で用いられる紫外線吸収性材料には、近年、従来一般的に言われている380nm以下の紫外線(特に380nm付近の紫外線)に加え、より長波長領域の紫外線(短波長の可視光)に対しても優れた吸収性能を有することが求められるとともに、可視光を散乱させず高い可視光透過性を示し良好な透明性を有すること、黄色などの着色がなく基材の色相を変化させないこと、および、耐久性や耐熱性に優れること、が求められている。耐久性や耐熱性の点では無機系材料であることが望ましく、高い可視光透過性を示し良好な透明性を有するという可視光特性の点では、超微粒子であることが望ましい。そこで、これまでに、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物の超微粒子が開発されているが、これらは紫外線吸収性能が不充分であり、例えば、380nm以下の紫外線を完全に遮蔽するには単位面積あたり多量の超微粒子を用いなければならず、膜厚が厚くなりすぎるなど、実用性に欠けるという問題があった。
【0003】
そこで、前記酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の金属酸化物からなる超微粒子の紫外線吸収性能を改善する手法として、異種金属等との複合化が提案されている。例えば、酸化亜鉛については、i)FeやCoを酸化亜鉛に含有(ドープ)させたもの(特許文献1、非特許文献1参照)、ii)Ce、Ti、Al、Fe、CrおよびZrからなる少なくとも1種とZnとの複合酸化物(特許文献2参照)、iii)Ce、Ti、Al、Fe、Co、LaおよびNiからなる少なくとも1種を酸化亜鉛に含有させたもの(特許文献3参照)が提案されている。
ところで、紫外線吸収材料を目的としたものではないが、酸化亜鉛に異種金属を含有させる技術として、10の2乗ppmのCuを固溶させた酸化亜鉛が報告されており(非特許文献2参照)、このような酸化亜鉛についても紫外線吸収性能の改善が期待できるのではないかと考えられる。
【特許文献1】特開平9−188517号公報
【特許文献2】特開昭62−275182号公報
【特許文献3】特開平5−222317号公報
【非特許文献1】大塚淳,「ZnOを主要成分とする無機顔料」,セラミックス,社団法人窯業協会,1983年,18,No.11,p.958−964
【非特許文献2】坂上登,外1名,「Optical Properties of Impurities-doped Hydrothermally Grown Zinc Oxide(不純物ドープ水熱育成酸化亜鉛の光学的性質)」,窯業協会誌,社団法人窯業協会,1969年,77[9],p.309−312
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、より高い紫外線遮断能が要求される用途が増えつつあるなか、前記i)〜前記iii)のような金属酸化物超微粒子では、その紫外線吸収能は未だ充分とは言えず、特に、最も遮蔽要求が高い380nm付近の紫外線に対する吸収性能についてはさらなる向上が望まれているのが現状であった。しかも、前記i)のようにFeやCoを含有させた場合には、380nmより長波長の光に対する吸収性能は高められるものの、380nmでの吸収性能は逆に低下することになり、しかも、可視光領域に吸収帯が存在するために、Feは黄色に、Coは青色に、それぞれ強く着色することになり、紫外線吸収性材料として基材に内添あるいはコーティングすると基材の透明性や色相を損なうと言った問題が生じていた。さらに、従来の技術では、これらの金属をドープしてなるものであって単離、分散性に優れる微粒子を製造することは困難であった。
【0005】
前記非特許文献2に報告されているCu固溶の酸化亜鉛は、水熱法で合成されたものであり、その粒子の大きさは10〜25mmと非常に大きく、しかも、黄色に着色したものであった。したがって、このような酸化亜鉛を紫外線吸収材料とした場合、高い可視光透過性を示し良好な透明性を有するという可視特性は得られず、紫外線吸収性材料として基材に内添あるいはコーティングすると基材の透明性や色相を損なうといった問題が生じることになる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、より優れた紫外線吸収性を発揮するとともに、良好な透明性を有し、例えば基材に内添もしくはコーティングした場合にも基材の透明性や色相を損なうことがない、微粒子状金属酸化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、金属酸化物に異種金属元素を含有させて紫外線吸収性能を向上させるにあたり、含有させる異種金属元素としてはCu、Ag、Mnが極めて優れた向上効果を発現させうること、なおかつ、Cu、Ag、Mnを含有させる場合には、母体となる金属酸化物として酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムのいずれかを選択することが最適であること、を見出し、このようなCu、Ag、Mnを特定の金属酸化物に含有させてなる微粒子状金属酸化物であれば、前記課題を一挙に解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明にかかる微粒子状金属酸化物は、Zn、TiおよびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする酸化物からなる粒子内にCu、AgおよびMnからなる群より選ばれた1種以上に由来する成分が含有されてなる。
【0007】
なお、本発明において、「微粒子」とは、1次粒子径が0.1μm以下である粒子を意味するものである。詳しくは、前記1次粒子径は結晶子径または比表面積径を以って判断することができ、結晶子径または比表面積径のいずれかが0.1μm以下である粒子を「微粒子」とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より優れた紫外線吸収性能を発揮するとともに、良好な透明性を有し、例えば基材に内添もしくはコーティングした場合にも基材の透明性や色相を損なうことがない、微粒子状金属酸化物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
本発明の微粒子状金属酸化物は、Zn、TiおよびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする酸化物(以下単に「特定金属酸化物」と称することもある)からなる粒子内にCu、AgおよびMnからなる群より選ばれた1種以上(以下「異種金属元素」と称することもある)に由来する成分が含有されてなる。詳しくは、本発明において、Cu、AgおよびMnからなる群より選ばれた1種以上に由来する成分を含有するとは、前記特定金属酸化物がCu、AgおよびMnからなる群より選ばれた1種以上を含む金属酸化物であればよく、Cu、Ag、Mnがいかなる存在形態で含有されているかは問わない。
【0010】
本発明の微粒子状金属酸化物において、前記特定金属酸化物に含有される異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の存在形態の具体例としては、例えば、(I)異種金属元素が特定金属酸化物の結晶に固溶して存在している形態、(II)異種金属元素が特定金属酸化物の金属成分として含有された状態(好ましくは複合酸化物)で存在している形態、(III)異種金属元素が特定金属酸化物の結晶表面に吸着している形態、(IV)異種金属元素が金属として粒子状または膜状で特定金属酸化物の表面に付着している形態、などが例示される。なかでも、特定金属酸化物の結晶中に原子状(イオン状態を含む)で均一に分散されている固溶の形態が、紫外線吸収性に優れ、しかも良好な透明性を保持させうる点で、好ましい。
【0011】
本発明の微粒子状金属酸化物において、前記特定金属酸化物に含有される異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の分散状態としては、(i)特定金属酸化物からなる粒子中に均一に分散して含有されていてもよく、あるいは、(ii)部分的に含有(偏析という意味ではなく、1個の粒子についてみたときに、局部的に高濃度で含有されているということ。)されていてもよい。(i)の場合としては、例えば、前記(I)の形態において、特定金属酸化物の結晶中に、均一に(表面層から結晶子内部まで)固溶している場合が挙げられる。(ii)の場合としては、特定金属酸化物の結晶の表面に表面層として、異種金属元素(Cu、Ag、Mn)が固溶した酸化物固溶体相(前記(I)の形態)、あるいは、異種金属元素(Cu、Ag、Mn)と特定金属酸化物との複合酸化物相(前記(II)の形態)を形成している場合、が挙げられる。
【0012】
一般に、金属酸化物は、結晶性を示すもの(結晶体)と、結晶性を示さないもの(非結晶体)とに分類される。前記結晶体とは、規則的な原子配列が周期性をもって認められる結晶子からなる金属酸化物であると定義することができ、電子線回折学的および/またはX線回折学的に、格子定数および/または回折パターンから金属酸化物の同定ができるものを言い、そうでないものは非結晶体であると定義できる。一般に、紫外線吸収能などに優れる点では、結晶体であることが好ましく、本発明においては、特定金属酸化物は結晶体であることが好ましい。
前記結晶体は、単結晶体であっても多結晶体であってもよく、これらを構成する結晶子の形状としては、例えば、球状、楕円球状、立方体状、直方体状、多面体状、ピラミッド状、柱状、チューブ状、りん片状、(六角)板状等の薄片状や、過飽和度の高い条件下で結晶の稜や角が優先的に伸びて生成した樹枝状、骸晶状などが挙げられる。結晶子の配向性については、限定はされず、全ての結晶子の配向性が揃っていても、ランダムであっても、一部が同じ配向性で残りがランダムであってもよく、限定はされない。
【0013】
本発明の微粒子状金属酸化物の形状は、限定はされないが、例えば、球状(真球状)、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、(六角)板状等の薄片状などが挙げられる。
本発明の微粒子状金属酸化物は、微粒子、すなわち1次粒子径が0.1μm以下である粒子であり、言い換えれば、前記特定金属酸化物からなる粒子の1次粒子径は0.1μm以下である。特定金属酸化物からなる粒子の1次粒子径は3〜50nmであることが好ましい。より好ましくは、3〜30nm、さらに好ましくは5〜20nmである。1次粒子の平均粒子径が3nm未満であると、量子効果により紫外線吸収端が短波長側にシフトする傾向があり紫外線吸収材料として好ましくなくなり、一方、50nmを超えると、透明性が低下するおそれがある。なお、ここで、1次粒子の平均粒子径とは、結晶子径(Dw)または比表面積径(Ds)を意味するものであり、詳しくは、前記粒子が結晶体である場合には結晶子径(Dw)を、前記粒子が非結晶体である場合には比表面積径(Ds)を意味するものである。したがって、結晶子径(Dw)と比表面積径(Ds)のいずれか一方が前記範囲になることが好ましいのである。より詳しくは、結晶子径(Dw)とは、X線回折学的に結晶の場合に適用されるものであり、シェラー法により求められた結晶子の大きさのことである。該結晶子径(Dw)は、通常、金属酸化物粒子の粉末X線回折パターンを測定し、3強線(ピークが最も大きい回折線(1)、2番目に大きい回折線(2)、3番目に大きい回折線(3))について、それぞれの半値巾または積分巾よりシェラーの式から回折線(1)〜(3)に帰属される回折面に垂直方向の結晶子径D1、D2、D3を求め、これらの平均値((D1+D2+D3)/3)を結晶子径(Dw)として算出することができる。他方、比表面積径(Ds)は、微粒子状金属酸化物の粉末の真比重と比表面積を測定し、下記式により算出することができる。
【0014】
Ds(nm)=6000/(ρ×S)
但し、ρ:粒子の真比重(無次元)
S:B.E.T.法で測定される粒子の比表面積(m/g)
前記特定金属酸化物が酸化亜鉛結晶である場合、X線回折測定による結晶子径のうち、格子面(002)に垂直方向の結晶子径は30nm以下、格子面(110)に垂直方向の結晶子径が10nm以上であることが、透明性と紫外線吸収性能のいずれもが優れる点で、好ましい。より好ましくは、格子面(002)に垂直方向の結晶子径は20nm以下である。なお、各格子面に垂直方向の結晶子径は、前述したように、粉末X線回折測定を行い、シェラー解析を行うことにより求めることができる。
【0015】
本発明の微粒子状金属酸化物は、任意の溶媒や樹脂などに分散された状態での分散粒子径が、500nm以下となるものであることが、得られる塗膜や樹脂コンポジットの透明性を高めるうえで好ましい。より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下であり、特に、1次粒子が単分散もしくはそれに近い状態で分散されうることが望ましく、50nm以下が最も好ましい。なお、分散粒子径は、例えば、動的光散乱式粒径分布測定装置(例えば、堀場製作所製「LB−500」など)により測定することができる。
前記特定金属酸化物に含有させる銅(Cu)としては、Cu(0)、Cu(I)およびCu(II)が挙げられ、なかでも、固溶の場合にはCu(I)およびCu(II)が好ましく、特にCu(II)が紫外線吸収性に優れる点で好ましい。
【0016】
前記特定金属酸化物に含有させる銀(Ag)としてはAg(0)、Ag(I)が挙げられ、なかでも、固溶の場合にはAg(I)が紫外線吸収性に優れる点で好ましい。
前記特定金属酸化物に含有させるマンガン(Mn)としては、1〜7価のものが挙げられ、なかでも、2価または3価のものが好ましい。
なお、これら銅(Cu)、銀(Ag)およびマンガン(Mn)が固溶している場合における、それぞれの固溶形態としては、侵入型固溶体であってもよいし、置換型固溶体であってもよく、限定はされない。
本発明の微粒子状金属酸化物においては、前記特定金属酸化物に含有させる異種金属元素(Cu、Ag)の含有率が、該特定金属酸化物中のZn、Ti、Ceの総原子数に対して、0.01〜10原子%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10原子%、さらに好ましくは0.2〜10原子%、さらに好ましくは0.7〜10原子%である。これに対し、異種金属元素がMnの場合は0.01〜30原子%であることが好ましく、3〜10原子%が特に好ましい。異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の含有率が0.01原子%未満であると、本発明の効果が充分に発現されにくくなり、他方、それぞれの上限値を超えると、可視光透過率が低下する傾向がある。
【0017】
前記特定金属酸化物に含有させる異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の存在は、本発明の微粒子状金属酸化物の1次粒子およびその集合体について、FE−TEM(透過型電子顕微鏡)によりそれらの透過像を観察しながら、粒子のほかに金属の偏析物が認められないところを探し、高分解能XMAにより元素分析を行い、各金属元素のうち異種金属元素(Cu、Ag、Mn)に帰属するピークを検出することで確認できる。偏析物の確認は、FE−TEMで観察される透過像において、通常、TEMで確認できないレベルであれば偏析物は無いものとする。
前記特定金属酸化物に含有させる異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の含有率の測定は、蛍光X線分析、原子吸光分析およびIPC等の微量成分分析手法で行うこともできるが、前記高分解能XMAによる元素分析を所望の空間分解能(スポット径)で行い、各金属元素のうち異種金属元素(Cu、Ag、Mn)に帰属するピーク強度を測定し、その結果から算出するようにする手法で行うことが好ましい。前記スポット径は、プローブを絞ることにより下限を1nmφにまでできるとともに、任意に連続的に拡大することもできる。具体的には、FE−TEMによる透過像において、偏析物の認められない約10個の金属酸化物の粒子の集合体を選択し、これら約10個の粒子をすべて含むような空間分解能(スポット径)で元素分析を行うこととする。
【0018】
なお、各粒子が異種金属元素(Cu、Ag、Mn)を含有しているか、あるいは、個々の粒子において粒子中にCuが均一に分散しているかについては、ビーム径を絞って(例えば1nmφ)の局所元素分析を行うことにより確認することができる。
前記FE−TEMとしては、例えば、日立製作所製の電界放射型透過型電子顕微鏡(HF−2000型、加速電圧200kV)等を用いることができる。前記高分解能XMAとしては、例えば、ケヴェックス(Kevex)社製のX線マイクロアナライザー(Sigma型、エネルギー分散型、ビーム径:空間分解能10Åφ)等を用いることができる。
本発明の微粒子状金属酸化物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記特定金属酸化物に異種金属元素(Cu、Ag、Mn)以外の金属元素を含有させることもできる。異種金属元素(Cu、Ag、Mn)以外の金属元素としては、特に限定されないが、例えば、Al、In、Sn、Fe、Co、Bi、Ce等が好ましく挙げられる。
【0019】
本発明の微粒子状金属酸化物においては、前記特定金属酸化物からなる粒子内に、該特定金属酸化物中のZn、Ti、Ceの総原子数に対するモル比で0.1〜14モル%のアシル基が含有されていることが、分散性に優れ、透明性に優れる膜形成用組成物や膜が得られる点で、好ましい。Zn、Ti、Ceのうちの1種を金属元素とする前記特定金属酸化物においては、結晶の屈折率が高くなるため可視光の散乱が起こりやすく、樹脂等のバインダーに分散させたときにヘイズの高い膜となりやすいが、前述のようなアシル基を含有する粒子であると、ヘイズの低い透明性に優れる膜となるのである。前記アシル基としては、特に炭素数1〜3であることが好ましい。
【0020】
本発明の微粒子状金属酸化物は、前述したように、アシル基が含有されている粒子であることが好ましいのと同様の理由で、以下の金属化合物(1)〜(3)の少なくとも1種で表面処理されてなる粒子であることが好ましい。
金属化合物(1):テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等の、異種金属元素(Cu、Ag、Mn)以外の金属元素からなる金属アルコキシド類。
金属化合物(2):下記一般式(a)で表される有機基含有金属化合物。なお、該金属化合物中の金属元素の種類は、限定はされない。
(a)
(ただし、Yは有機官能基、Mは金属原子、Xは加水分解性基である。iおよびjは1〜(s−1)の整数であってi+j=s(sはMの原子価)を満足する。)
一般式(a)で表される有機基含有金属化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0021】
がアルミニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノメタクリレート、アルミニウムステアレートオキサイドトリマー、イソプロポキシアルミニウムアルキルアセトアセテートモノ(ジオクチルホスフェート)等の各種アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
がケイ素である有機基含有化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン等のアミノ系シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等のクロル系シランカップリング剤;アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアクリロキシ系シランカップリング剤;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシ系シランカップリング剤;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン等のケチミン系シランカップリング剤;N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩等のカチオン系シランカップリング剤;メチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン等のアルキル系シランカップリング剤;(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン等のフッ素含有有機基を有するシリコン化合物;イソシアン酸プロピルトリメトキシシラン等のイソシアナト基含有有機基を有するシランカップリング剤;下記一般式(b):
R’O(CO)Si(OR”) (b)
(だだし、R’は、水素、または、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種が置換されていてもよい基である。R”は、メチル基等のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アシル基およびアラルキル基から選ばれる少なくとも1種が置換されていてもよい基である。)
で表されるシランカップリング剤;γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランやヘキサメチルジシラザン等の各種シランカップリング剤などが挙げられる。
【0022】
がジルコニウムである有機基含有化合物としては、例えば、ジルコニウムジn−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムトリn−ブトキシドペンタンジオネート、ジルコニウムジメタクリレートジブトキシド等の各種ジルコニウム化合物等が挙げられる。
金属化合物(3):金属アルコキシド(金属は任意)の(部分)加水分解物または縮合物や上記(2)の(部分)加水分解物または縮合物であり、例えば、下記一般式(c)で表される。
−(O−M(−Rm1)(−Rm2))−R (c)
(ただし、R、Rは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基およびアシル基からなる群より選ばれるいずれか1種もしくは該1種が置換されていてもよい基であり、Rは加水分解性基(上記一般式(a)中のXと同じ)または水酸基であり、RはRまたはRであり、Mは金属原子である。m1、m2は0または1〜(Mの原子価−2)までの整数であり、m1+m2は(Mの原子価−2)であり、nは2から10000までの整数である。なお、金属原子Mに結合するRおよびRの種類やその数(m1およびm2)は、金属原子Mの相互間ですべて同じであってもよいし少なくとも一部が異なっていてもよい。)
例えば、上記金属化合物(2)の加水分解縮合物であれば、上記一般式(a)中の金属原子Mに結合している加水分解性基Xの一部あるいは全部が加水分解されて該XがOH基となった化合物や、さらにM−OH間での脱水縮合等の縮合反応によりM−O−M結合を形成してなる化合物等が挙げられ、具体的には、金属化合物(2)として列挙した有機基含有化合物を、加水分解縮合および/または部分加水分解縮合してなる、線状や環状の3量体をはじめとする、線状(分岐鎖を含むものを含む)や環状の加水分解縮合物が挙げられる。
【0023】
金属化合物(3)としては、例えば、チタン(IV)テトラ−n−ブトキシドテトラマー(C−〔Ti(OCO〕−C)、和光純薬社製)や、シリコン(IV)テトラメトキシドテトラマー、メチルトリメトキシシランテトラマー、テトラメトキシシラン−メチルトリメトキシシラン共加水分解縮合物、アルミニウム(III)トリブトキシドトリマー等が挙げられる。
本発明の微粒子状金属酸化物の製造方法については、限定はされず、公知の、金属酸化物に所望の異種金属元素を含有させた(ドープした)粒子を得ることのできる方法であれば、何れの方法も採用できる。例えば、Zn、TiおよびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物(以下「特定金属化合物」と称する。)および/またはその加水分解縮合物と、異種金属(Cu、Ag、Mn)の化合物(以下「異種金属元素化合物」と称することもある)と、アルコールとを出発原料とし、これらの混合系を高温状態にして、金属酸化物粒子を生成させる(析出させる)工程を備える製造方法(以下、製造方法(A)と称する。)が好ましい。詳しくは、製造方法(A)は、出発原料としての、前記特定金属化合物および/またはその加水分解縮合物と、異種金属元素化合物とアルコールとを、混合すると同時かまたはその後に、該混合系を高温状態にする工程を備える方法である。このように高温状態にすることにより、反応系中に金属酸化物粒子を生成させることができる。
【0024】
製造方法(A)において用い得る前記特定金属化合物としては、限定はされないが、特定金属元素(Zn、Ti、Ce)のカルボン酸塩(カルボン酸亜鉛、カルボン酸チタン、カルボン酸セリウム)が好ましい。なお、前記特定金属化合物の加水分解縮合物とは、該化合物を加水分解および/または縮合して得られる加水分解物および/または縮合物であり、モノマー化合物から高分子化合物までを含む(以下、「特定金属化合物」は、「特定金属化合物および/またはその加水分解縮合物」を意味することがある。)。
前記特定金属元素のカルボン酸塩としては、カルボキシル基の水素原子が亜鉛原子、チタン原子、セリウム原子のうちの少なくとも1種で置換された置換基を分子内に少なくとも1つ有する化合物が好ましい。具体的には、飽和モノカルボン酸、不飽和モノカルボン酸、飽和多価カルボン酸および不飽和多価カルボン酸などの鎖式カルボン酸;環式飽和カルボン酸;芳香族モノカルボン酸および芳香族不飽和多価カルボン酸などの芳香族カルボン酸;これらカルボン酸において、さらに分子内にヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、アルコキシ基、スルホン基、シアノ基およびハロゲン原子等の官能基または原子団を有する化合物;等のカルボン酸化合物中のカルボキシル基が、前記置換基となっている化合物が好ましく例示できる。
【0025】
これら特定金属元素のカルボン酸塩のなかでも、下記一般式(1):
M(O)(m−x−y−z)/2(OCOR(OH)(OR (1)
(但し、Mは亜鉛原子、チタン原子、セリウム原子から選ばれた少なくとも1種;mはMの原子価;Rは、水素原子、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;Rは、置換基があってもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基およびアラルキル基から選ばれた少なくとも1種;m、x、yおよびzは、x+y+z≦m、0<x≦m、0≦y<m、0≦z<mを満たす。)
で表される化合物(例えば、前記例示した特定金属元素のカルボン酸塩の一部が水酸基やアルコキシ基等で置換された化合物等)、特定金属元素の飽和カルボン酸塩、不飽和カルボン酸塩および塩基性酢酸塩がより好ましく、さらに好ましくは特定金属元素のギ酸塩、酢酸塩およびプロピオン酸塩ならびにこれらの塩基性塩である。なお、特定金属元素のカルボン酸塩は、結晶水を含むカルボン酸塩の水和物であってもよいが、無水物であることが好ましい。
【0026】
製造方法(A)において用い得る異種金属元素化合物としては、限定はされず、例えば、Cuの場合、銅の塩化物や硝酸塩などの無機塩等のほか、例えば、銅カルボン酸塩類や銅アルコキシド類等が好ましく挙げられる。
製造方法(A)において用い得るアルコールとしては、限定はされないが、例えば、例えば、脂肪族1価アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、ステアリルアルコール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(アリルアルコール、クロチルアルコール、プロパギルアルコール等)、脂環式1価アルコール(シクロペンタノール、シクロヘキサノール等)、芳香族1価アルコール(ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、メチルフェニルカルビノール等)、フェノール類(エチルフェノール、オクチルフェノール、カテコール、キシレノール、グアヤコール、p−クミルフェノール、クレゾール、m−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、ドデシルフェノール、ナフトール、ノニルフェノール、フェノール、ベンジルフェノール、p−メトキシエチルフェノール等)、複素環式1価アルコール(フルフリルアルコール等)等の1価アルコール類;アルキレングリコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等)、脂環式グリコール(シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール等)、および、ポリオキシアルキレングリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)等のグリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート等の上記グリコール類のモノエーテルまたはモノエステル等の誘導体;グリセリンやトリメチロールエタン等の3価アルコール、エリスリトールやペンタエリスリトール等の4価アルコール、リピトールやキシリトール等の5価アルコール、ソルビトール等の6価アルコール等の3価以上の多価アルコール、ヒドロベンゾイン、ベンズピナコール、フタリルアルコール等の多価芳香族アルコール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン等の2価フェノールや、ピロガロール、フロログルシン等の3価フェノール等の多価フェノール、および、これら多価アルコール類におけるOH基の一部(1〜(n−1)個(ただし、nは1分子当たりのOH基の数))がエステル結合またはエーテル結合となった誘導体;等を挙げることができる。前記アルコールとしては、水溶性の高いアルコールが好ましく、具体的には、水に対する溶解度1重量%以上のアルコールが好ましく、水に対する溶解度10重量%以上のアルコールがより好ましい。
【0027】
製造方法(A)において、特定金属化合物、異種金属元素化合物およびアルコールの相互の使用割合(配合割合)については、限定はされないが、特定金属化合物の金属換算原子数と異種金属元素化合物の金属換算原子数との総数に対する、アルコール中の(アルコール由来の)水酸基の数の比が、0.8〜1000であることが好ましく、より好ましくは0.8〜100、さらに好ましくは1〜50、特に好ましくは1〜20である。また、特定金属化合物と異種金属元素化合物との相互の使用割合(配合割合)については、限定はされないが、特定金属化合物の金属換算原子数と異種金属元素化合物の金属換算原子数との比が、前述した異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の含有率の範囲を満たすように、適宜調整すればよい。
【0028】
製造方法(A)において、前記出発原料の混合系は、ペースト状、乳濁液状、懸濁液状および溶液状などの流動性のある液状であることが好ましい。必要に応じて、反応溶媒をも混合することにより、上記液状となるようにしてもよい。通常、特定金属化合物および異種金属元素化合物は、該混合系においては、粒子状で分散した状態、溶解した状態、あるいは、一部が溶解した状態で残りが粒子状で分散している状態、などの状態で存在する。
製造方法(A)の製造方法において、必要に応じて用い得る反応溶媒としては、水以外の溶媒、すなわち、非水溶媒が好ましい。非水溶媒としては、例えば、炭化水素、各種ハロゲン化炭化水素、アルコール(フェノール類や、多価アルコールおよびその誘導体で水酸基を有する化合物なども含む)、エーテルおよびアセタール、ケトンおよびアルデヒド、カルボン酸エステルおよびリン酸エステル類等のエステル、アミド類、多価アルコール類のすべての水酸基の水素がアルキル基やアシル基で置換された誘導体化合物、カルボン酸およびその無水物、シリコーン油ならびに鉱物油などを挙げることができ、なかでも、親水性溶媒が特に好ましい。具体的には、常温(25℃)において、水を5重量%以上含み溶液状態になり得る溶媒が好ましく、任意の量の水を含み均一な溶液状態になり得る溶媒がより好ましい。反応溶媒としてのアルコールとしては、出発原料となるアルコールとして先に列挙したものと同様のものが好ましく挙げられる。反応溶媒の使用量については、限定はないが、前記出発原料と反応溶媒との合計使用量に対する、前記特定金属化合物および異種金属元素化合物の合計使用量の割合が、0.1〜50重量%であることが好ましく、金属酸化物粒子を経済的に得ることができる。
【0029】
製造方法(A)において、前記出発原料の混合系を高温状態にするとは、該混合系の温度を常温よりも高い温度であって金属酸化物粒子が生成し得る温度、またはそれ以上の温度に昇温させることである。前記混合系の高温状態は、前述したように、出発原料等を混合すると同時かまたは混合した後に得られていればよく、すなわち、上記混合系を得るための出発原料等の混合と、該混合系を高温状態にするための昇温とは、別々に行ってもよいし、同時(一部同時も含む)に行ってもよく、限定はされない。具体的には、得ようとする金属酸化物粒子の種類等によっても異なるが、一般には50℃以上であり、特に、異種金属元素(Cu、Ag、Mn)含有率が高く、異種金属元素(Cu、Ag、Mn)の偏析がなく、しかも結晶性の高い金属酸化物粒子を得るためには、80℃以上が好ましく、100〜300℃がより好ましく、100〜200℃がさらに好ましく、120〜170℃が特に好ましい。また、前記混合系の高温状態は、金属酸化物粒子の結晶性を高め、紫外線吸収性等の物性に優れたものが得られる点で、所定温度を30分以上保持することが好ましく、より好ましくは2時間以上である。なお、生成させた金属酸化物粒子について、残存有機基の除去や、より一層の結晶成長の促進等を目的とする場合、さらに必要に応じて、生成した金属酸化物粒子を300〜800℃で加熱してもよい。
【0030】
本発明の微粒子状金属酸化物は、例えば、化粧品、紫外線遮断を目的とする電子材料、包装材料用等の各種フィルムやビル、家等の建築物用窓、自動車窓、サンルーフ、鉄道や飛行機の窓等に用いられるガラスやポリカーボネート等の透明プラスチックシートに含有させる粒子としてあるいは成膜し得る紫外線吸収塗料用原料粒子として有用である。詳しくは、従来の酸化亜鉛、酸化チタンおよび酸化セリウムのような酸化物粒子もしくはこれらの酸化物にCu、Ag、Mn以外の単一の異種金属元素を含有させた粒子では得られなかった、優れた紫外線吸収性能や無色性や可視光透過性能を同時に満足させることができるため、例えば、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイ)、白色LEDなどの表示デバイスにおいて励起源や光源に由来する紫外線を遮断する紫外線カット材料として、また、建築物や自動車などの窓材用の紫外線吸収材料として、有用である。
【0031】
また、前記特定金属酸化物が酸化亜鉛の場合には、従来から化粧品用紫外線吸収剤として主に汎用されていた酸化チタンに比べて屈折率が低くなるため、より優れた透明感を与えうる化粧品用紫外線吸収剤として、有用である。他方、前記特定金属酸化物が酸化亜鉛、酸化チタンもしくは酸化セリウムの場合には、高屈折率である粒子となるため、バインダー成分となる樹脂やシリケートなどとの配合比を制御することにより、任意の屈折率を有する膜を得ることが可能となるため、反射防止性を兼ね備えた紫外線吸収膜の原料として、有用である。
さらに、本発明の微粒子状金属酸化物は、紫外線遮断を目的とした用途以外にも適用可能であり、例えば、前記特定金属酸化物が酸化亜鉛、酸化チタンもしくは酸化セリウムの場合には、高屈折率である粒子となるため、樹脂、フィルム、膜などの屈折率を高めるための高屈折率フィラーとして好適に用いることができ、特に、本発明の微粒子状金属酸化物は超微粒子であるので、反射防止膜として好適な透明で高屈折率を有する膜やフィルムを得ることができる。他方、前記特定金属酸化物が酸化亜鉛の場合には、熱伝導性に優れる粒子となるため、熱伝導性フィラーとして有用であり、例えば、放熱性が求められる白色LED用途や電子回路基板用途などにおいて、熱伝導性の高いシート、フィルム、膜を得る際に好適に用いることができる。また、前記特定金属酸化物が酸化亜鉛や酸化チタンの場合には、電子伝導性に優れる粒子となるため、半導体もしくは導電体として有用であり、特に、本発明の微粒子状金属酸化物は超微粒子であるので、塗料化することにより、フィルム等の透明帯電防止膜や透明導電膜として好ましく用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例および比較例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、特に断りのない限り、「重量部」を単に「部」と、「重量%」を単に「wt%」と記すものとする。
実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
なお、以下で用いる粉末試料の調製は、次のようにして行った。すなわち、微粒子状金属酸化物の生成反応により得られた反応液を遠心分離した後、沈降物の反応溶媒による洗浄(沈降物を反応溶媒に再分散させ、遠心分離すること)を3回繰り返し、その後、得られた沈降物を真空乾燥機により60℃で12時間真空乾燥することにより、微粒子状金属酸化物の粉末試料を得た。
【0033】
(1)微粒子状金属酸化物の結晶同定
上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、微粒子状金属酸化物の結晶性を評価した。以下に測定条件を示す。
X線:CuKα1線(波長:1.54056Å)/40kV/200mA
走査範囲:2θ=20〜80°
スキャンスピード:5°/min
なお、微粒子状金属酸化物がZnを主金属成分とする場合において、ZnO結晶性を有するか否かは、六方晶系ZnOに特有の3強線のピークが認められるか否かで判定した。具体的には、以下の3つの回折角(a)〜(c)の位置のすべてに回折ピークが存在する場合、ZnO結晶性を有すると判定した。
【0034】
(a) 2θ=31.65〜31.95°
(b) 2θ=34.30〜34.60°
(c) 2θ=36.10〜36.40°
なお、(a)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(100)面に対する回折線に基づくものと判定し、(b)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(002)面に対する回折線に基づくものと判定し、(c)の位置に存在する回折ピークは、ZnO結晶の(101)面に対する回折線に基づくものと判定する。
Zn以外の金属元素を主金属成分とする場合においても同様に、その金属元素の酸化物結晶に特有の3強線のピークが認められるか否かで判定した。
【0035】
(2)微粒子状金属酸化物の粒子径
(2−1)1次粒子径
微粒子状金属酸化物の結晶子径(Dw)を測定し、1次粒子径として評価した。
結晶子径(Dw)は、上記粉末試料に関し、粉末X線回折装置(理学電気株式会社製、製品名:RINT2400)を用いた粉末X線回折により、微粒子状金属酸化物の結晶子径(Dw)を評価した。具体的には、得られたX線回折パターンにおける各回折線の回折線幅より、シェラー法解析により結晶子径Dhkl(ここで、hklはミラー指数を表す。Dhklはミラー指数(hkl)の格子面に垂直な方向の結晶子の大きさである。)を求めた。
【0036】
特に断らない限り、結晶子径(Dw)は、通常、金属酸化物粒子の粉末X線回折パターンを測定し、3強線(ピークが最も大きい回折線(1)、2番目に大きい回折線(2)、3番目に大きい回折線(3)について、それぞれの半値巾または積分巾より、シェラーの式に基づき、回折線(1)〜(3)に帰属される回折面に垂直方向の結晶子径D1、D2、D3を求め、これらの平均値((D1+D2+D3)/3)を結晶子径(Dw)として算出する。
(2−2)分散粒子径
得られた反応液もしくは該反応液から溶媒変換して得られた溶媒分散体を試料とし、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製「LB−500」)にて測定したメジアン径を分散粒子径とした。測定に際し、希釈する場合は、反応で用いた溶媒を希釈溶媒として用いた。評価基準は以下の通りである。
【0037】
●:分散粒径<0.05μm
◎:0.05μm≦分散粒径<0.1μm
○:0.1μm≦分散粒径<1μm
×:0.1μm≦分散粒径
なお、塗料における微粒子の分散粒径についても、上記と同様、動的光散乱式粒径分布測定装置(堀場製作所製「LB−500」)にて測定したメジアン径を分散粒子径とした。
(2−3)分散・凝集状態
得られた反応液を反応溶媒で粒子濃度0.1wt%に希釈したものを試料とし、透過型電子顕微鏡にて分散状態を確認した。評価基準は以下の通りである。
【0038】
A:1次粒子が単分散または凝集していても1次元または2次元的な凝集である
B:1次粒子が3次元的に凝集し粒状物を形成している
(3)微粒子状金属酸化物の組成
(3−1)添加金属元素の含有量
微粒子状金属酸化物の生成反応で得られた反応液を試料とし、蛍光X線分析により各金属元素の定量分析を行い、主たる金属元素(例えばZn)に対する添加金属元素(例えばCuやAg)の含有率、および、粒子生成の際に金属化合物を添加剤として用いた場合は、主たる金属元素(例えばZn)に対する該金属化合物の金属元素(Ms)の含有率、を求めた。
【0039】
(3−2)アシル基結合量
上記粉末試料1gを0.1N水酸化ナトリウム水溶液に添加し、24時間攪拌したのち、イオンクロマトによりアシル基の同定と結合量の定量を行った。
(3−3)添加金属元素の価数の評価
必要に応じて、微粒子状金属酸化物における添加金属元素(例えばCuやAg)の価数を以下のようにして評価した。すなわち、上記粉末試料に関し、光電子分光装置(日本電子株式会社製、製品名:JPS−90型)を用いたX線光電子分光法(XPS)により、微粒子状金属酸化物に含有される添加金属元素(例えばCuやAg)の2p3/2スペクトルを測定し、そのピーク位置より結合エネルギー値を求め、添加金属元素(例えばCuやAg)の価数を判定した。
【0040】
なお、結合エネルギー値は、帯電性によるエネルギーシフト等による測定値の誤差を低減するために、表面炭化水素のC1sピークの位置を基準にして補正して求めた。
また、比較するための既知のデータとして、日本電子株式会社発行の「Handbook of X-ray Photoelectron Spectroscopy」(1991年)における各種金属元素の化合物の2p3/2スペクトルのピーク位置を参考とした。
(4)微粒子状金属酸化物の光学特性
(4−1)吸収特性
得られた反応液を希釈溶媒として1−ブタノールを用いて微粒子濃度0.1wt%となるように希釈したものを試料として用い、積分球付き自記分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、紫外および可視領域における分光透過率曲線を測定した。
【0041】
紫外線遮断性:380nm、400nm、420nmにおける透過率で評価した。
可視光透過性:600nmにおける透過率で評価した。
なお、成膜品における分光透過曲線についても、上記と同様、積分球付き自記分光光度計(島津製作所製「UV−3100」)を用いて、紫外および可視領域における分光透過率曲線を測定した。
(4−2)透明性、色相の評価
微粒子分散膜を形成して評価した。すなわち、微粒子状金属酸化物の生成反応により得られた反応液を、加熱溶媒置換することにより、微粒子状金属酸化物が粒子濃度20wt%で1−ブタノールに分散してなる分散体を得た。得られた分散体100部に、シリケートバインダー(SiO換算の固形分:51wt%)20部および触媒(n−ブチルアミン)0.5部を配合し、塗料を調製した。なお、上記粒子濃度に関しては、得られた分散体を、真空乾燥機により120℃で1時間真空乾燥したときの固形分を、粒子重量として計算した。
【0042】
得られた塗料を、アルカリガラスにバーコーターでウエット膜厚が24μmとなるように塗布した。その後、25℃で常乾することにより、表面に微粒子状金属酸化物が分散した分散膜の形成されたガラスを得た。
そして、上記分散膜付きガラスを試料として、透明性および色相を評価した。すなわち、透明性については、濁度計(日本電色工業社製「NDH−1001 DP」)を用いて測定したヘイズ値にて評価した。色相については、外観を目視にて観察した。なお、基材としたアルカリガラスにおけるヘイズ値は0%であった。
なお、成膜品における透明性および色相についても、上記と同様、透明性は、濁度計(日本電色工業社製「NDH−1001 DP」)を用いて測定したヘイズ値にて評価し、色相は、外観を目視にて観察した。
【0043】
(5)粉末試料の色相
粉末試料の外観を目視にて観察して、評価した。
(6)微粒子濃度
反応液または分散体における微粒子濃度は、反応液または分散体0.5gをるつぼに秤量し、120℃で1時間、真空乾燥した後の乾燥粉末重量を測定し、算出した。
(7)成膜品の屈折率
反射分光膜厚計(大塚電子(株)製「FE3000」)を用い、フィルム上に形成された膜について、230〜760nmの範囲で反射率を測定し、代表的な屈折率の波長分散の近似式としてnkCauchyの分散式を引用し、未知のパラメータを絶対反射率のスペクトルの実測値から非線形最小二乗法によって求めて、波長550nmにおける屈折率を求めた。
【0044】
〔実施例1−1〕
撹拌機、添加槽に直結した添加口、温度計、留出ガス出口および窒素ガス導入口を備えた、外部より加熱し得る耐圧ガラス製反応器と、上記添加口につながった添加槽と、上記留出ガス出口につながった冷却器(トラップに直結)と、を備えた反応装置を用意した。
上記反応器内に、酢酸亜鉛無水物粉末183部、酢酸銅(I)無水物粉末0.13部、および、1−ブタノール3885部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、撹拌しながら、20℃から昇温し、150℃±1℃で10時間加熱保持して、微粒子状金属酸化物の生成反応を行った後、冷却することにより、淡い灰色を帯びた色の微粒子(本発明の微粒子状金属酸化物)を2wt%の濃度で含む反応液(1−1)を得た。
【0045】
反応液(1−1)中の金属酸化物粒子について、前述の各種測定・評価を行い、その結果を表2に示した。
〔実施例1−2〜1−13および比較例1−1〜1−2〕
実施例1−1において、仕込み原料の種類や使用量および反応条件等を、表1に示したように変更した以外は、実施例1−1と同様にして、表2に示す微粒子(金属酸化物粒子)を表2に示す濃度で含む反応液(1−2)〜(1−13)、(c1−1)、(c1−2)を得た。
反応液(1−2)〜(1−13)、(c1−1)、(c1−2)中の各金属酸化物粒子について、前述の各種測定・評価を行い、その結果を表2に示した。
【0046】
なお、実施例1−2、実施例1−5、実施例1−9、実施例1−12において得られた粒子は、粒子表面に、表面処理金属化合物として添加したSi化合物またはTi化合物が結合していることが確認された。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

実施例1−2、実施例1−3、実施例1−5、実施例1−10、および比較例1−1で得られた各反応液(1−2)、(1−3)、(1−5)、(1−10)および(c1−1)について、粒子濃度を0.1wt%に希釈して、上記評価方法(4−1)に従って測定した分光透過率曲線を図1に示す。
実施例1−8〜実施例1−13における結果から、本発明では、添加するMn量を増やすと、紫外線遮蔽性が高まり、紫外線遮蔽性に優れた透明な膜が得られることが判る。これは、結晶子径が20nm以下であり、反応液の段階では2次凝集していてもその凝集力は弱く、バインダーの添加により容易に分散するためであると推測される。他方、Mn量を増やすと、紫外線遮蔽性は高まるが、可視光透過率が低下している。特に、10%を超えると(実施例1−13)、黄色の着色が強くなる傾向があり、可視光透過率が低くなっている。これを考慮すると、本発明において、より高い紫外線遮蔽性、より高い可視光透過率、着色の程度が低いこと、を達成するには、Mnの場合、その含有量は、実施例1−9および1−10のように、Mn/Zn=3〜10原子%の範囲が好ましいことが判る。しかし、実施例1−12のように、本発明においては、Mn量が10%を超える場合であっても、表面処理金属化合物としてのSi化合物またはTi化合物を粒子表面に結合させることによって、紫外線遮蔽性を高めると同時に、可視光透過率をも高めることができることも明らかである。
【0049】
〔実施例1−14〕
実施例1−1と同様の反応装置を用い、反応器内に、純水3000部、酢酸第一セリウム(III)1水和物50部、酢酸銅(II)無水物0.6部からなる混合物を仕込み、室温で攪拌しながら、30%過酸化水素水50部を添加した。撹拌しながら、室温から昇温し、90℃±2℃で5時間加熱保持したのち、30%過酸化水素水10部を添加した。さらに、1時間同温度で加熱保持して、微粒子状金属酸化物の生成反応を行った後、冷却することにより、微黄色を呈する透明感の高い微粒子(本発明の微粒子状金属酸化物)を0.8wt%の濃度で含む反応液(1−14)を得た。
【0050】
得られた反応液(1−14)を限外ろ過膜を用いたろ過に供することにより、不純物イオン類、残存過酸化水素の除去とともに濃縮を行い、微粒子濃度7wt%の水分散体(1−14)を得た。
水分散体(1−14)中の金属酸化物粒子について、X線回折測定を行ったところ、ピークはブロードであるが、CeOと同等のパターンを示す結果となった。また、結晶子径は、ピークがブロードであったために、1次粒子径をTEM像により求めた。紫外線吸収特性、可視光透過性は、上記評価方法(4−1)により評価した。なお、測定に際し、希釈溶媒はイオン交換水を用いた。以上の結果を表3に示す。
【0051】
〔比較例1−3〕
実施例1−14において、酢酸銅(II)無水物を用いないこと以外は、実施例1−13と同様にして、微粒子濃度7wt%の水分散体(c1−3)を得た。
水分散体(c1−3)中の金属酸化物粒子について、実施例1−14と同様に評価した結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

〔実施例1−15〕
実施例1と同様の反応装置を用い、反応器内に、反応溶媒としてのエチレングリコールジメチルエーテル2400部、チタニウムメトキシプロキシド303部、酢酸銀(I)2.8部、酢酸270部とからなる混合物を仕込み、気相部を窒素ガスでパージした後、撹拌しながら、20℃から昇温し、180℃±1℃で5時間加熱保持して、金属酸化物粒子の生成反応を行った後、冷却することにより、微粒子(本発明の微粒子状金属酸化物)を微粒子濃度2wt%で含む反応液(1−15)を得た。
【0053】
反応液(1−15)中の金属酸化物粒子について、X線回折測定を行ったところ、アナタース型酸化チタンと同等のパターンを示す結果となり、結晶子径は6nmであった。また、紫外線吸収特性、可視光透過性は、上記評価方法(4−1)により評価した。以上の結果を表4に示す。
〔実施例1−16〕
実施例1−15において、酢酸銀(I)の代わりに、酢酸マンガン(II)6.5部を用いたこと以外は、実施例1−15と同様にして、微粒子(本発明の微粒子状金属酸化物)を微粒子濃度2wt%で含む反応液(1−16)を得た。
【0054】
反応液(1−16)中の金属酸化物粒子について、X線回折測定を行ったところ、アナタース型酸化チタンと同等のパターンを示す結果となり、結晶子径は6nmであった。また、紫外線吸収特性、可視光透過性は、上記評価方法(4−1)により評価した。以上の結果を表4に示す。
〔比較例1−4〕
実施例1−15において、酢酸銀(I)を用いないこと以外は、実施例1−15と同様にして、微粒子を微粒子濃度2wt%で含む反応液(c1−4)を得た。
反応液(c1−4)中の金属酸化物粒子について、実施例1−15と同様に評価した結果を表4に示す。
【0055】
【表4】

〔実施例2−1〕
実施例1−1で得られた反応液(1−1)1000部をエバポレーターで加熱して100部になるまで濃縮したのち、置換溶媒としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテートを添加しながら同時に溶媒成分を留去し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートを溶媒成分とする分散体を得た。次いで、引き続き加熱濃縮して、冷却したのち、分散剤としてチタン(IV)テトラブトキシテトラマー(和光純薬工業株式会社製)0.2部を添加して、分散体(2−1)を得た。得られた分散体の粒子濃度と分散粒径を表5に示す。
【0056】
〔実施例2−2〜2−10〕
実施例2−1において、表5に示す反応液を用い、表5に示す置換溶媒および分散剤を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして、分散体(2−2)〜(2−10)を得た。得られた各分散体の粒子濃度と分散粒径を表5に示す。
【0057】
【表5】

〔実施例3−1〕
実施例2−1で得られた分散体(2−1)100部に、シリケートバインダー(三菱化学社製「MKCシリケートMS56」)36部、触媒としてのn−ブチルアミン1部を添加して攪拌することにより、塗料(3−1)を得た。該塗料における微粒子の分散粒径は0.04μmであった。
次に、アルカリガラスを基材とし、該基材上に塗料(3−1)をバーコーターにて塗布したのち常温乾燥し、その後200℃で60分間加熱する操作を複数回繰り返すことにより、乾燥膜厚2μmの微粒子分散膜を有する微粒子分散膜付き基材(3−1−A)と、乾燥膜厚4μmの微粒子分散膜を有する微粒子分散膜付き基材(3−1−B)とを得た。
【0058】
得られた微粒子分散膜付き基材(3−1−A)および(3−1−B)の分光透過率曲線を、基材であるアルカリガラスのそれとともに図2に示す。
また、得られた微粒子分散膜付き基材(3−1−A)および(3−1−B)の透明性と色相を評価した結果、いずれも、透明性はヘイズ0.3%、色相は無色であった。
〔実施例3−2〕
実施例2−3で得られた分散体(2−3)100部に、シリケートバインダー(三菱化学社製「MKCシリケートMS56」)36部、触媒としてのn−ブチルアミン1部を添加して攪拌することにより、塗料(3−2)を得た。該塗料における微粒子の分散粒径は0.05μmであった。
【0059】
次に、アルカリガラスを基材とし、該基材上に塗料(3−2)をバーコーターにて塗布したのち常温乾燥し、その後200℃で60分間加熱する操作を複数回繰り返すことにより、乾燥膜厚3μmの微粒子分散膜を有する微粒子分散膜付き基材(3−2)を得た。
得られた微粒子分散膜付き基材(3−2)の分光透過率曲線を基材であるアルカリガラスのそれとともに図3に示す。
また、得られた微粒子分散膜付き基材(3−2)の透明性と色相を評価した結果、透明性はヘイズ0.5%、色相は黄色であった。
〔実施例3−3〕
実施例2−9で得られた分散体(2−9)100部に、アクリル樹脂溶液(固形分濃度:50wt%)60部、希釈溶媒としてのトルエン/メチルエチルケトン=1/1(重量比)の混合溶媒20部を添加して攪拌することにより、塗料(3−3)を得た。該塗料における微粒子の分散粒径は0.06μmであった。
【0060】
次に、ポリエステルフィルムを基材とし、該基材上に塗料(3−3)をバーコーターにてウェット膜厚24μmとなるように塗布したのち、100℃で10分間加熱することにより、微粒子分散膜を有する微粒子分散膜付き基材(3−3)を得た。
得られた微粒子分散膜付き基材(3−3)の分光透過率曲線を図4に示す。
また、得られた微粒子分散膜付き基材(3−3)の透明性と色相を評価した結果、透明性はヘイズ0.5%、色相はわずかに黄色であった。
〔実施例3−4〕
実施例2−2で得られた分散体(2−2)100部に、紫外線硬化型コーティング剤(共栄化学社製「HIC2000」、固形分:50wt%、屈折率:1.58)20部を添加して攪拌することにより、塗料(3−4)を得た。
【0061】
次に、高透明ポリエチレンテレフタレートフィルムを基材とし、該基材上に塗料(3−4)をバーコーターにて塗布したのち、100℃で10分間加熱し、その後、高圧水銀ランプで10分間紫外線照射することにより、乾燥膜厚5μmの微粒子分散膜を有する微粒子分散膜付き基材(3−4)を得た。
得られた微粒子分散膜付き基材(3−4)は、実施例3−1と同様に紫外線を遮蔽し、高い可視光透過性を有するものであった。
また、得られた微粒子分散膜付き基材(3−4)の透明性と色相を評価した結果、透明性はヘイズ0.5%、色相は無色であり、膜の屈折率は1.7であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の微粒子状金属酸化物は、例えば、建物用窓ガラス、自動車および電車等の車両用窓ガラス、飛行機およびヘリコプター等の空輸機用窓ガラス、農業用フィルム、各種包装用フィルム、塗料、化粧料等の各種用途において、基材の透明性を損なうことなく紫外線遮蔽性を付与するための材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施例1シリーズと比較例1シリーズにおける吸収特性の評価(4−1)の結果を示すグラフである。
【図2】実施例3−1における吸収特性の評価の結果を示すグラフである。
【図3】実施例3−2における吸収特性の評価の結果を示すグラフである。
【図4】実施例3−3における吸収特性の評価の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Zn、TiおよびCeからなる群より選ばれる少なくとも1種を金属元素とする酸化物からなる粒子内にCu、AgおよびMnからなる群より選ばれた1種以上に由来する成分が含有されてなる、微粒子状金属酸化物。
【請求項2】
前記粒子の1次粒子径が3〜50nmである、請求項1に記載の微粒子状金属酸化物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の微粒子状金属酸化物からなる、紫外線吸収体。
【請求項4】
金属酸化物粒子が媒体中に分散してなり、分散粒径が1μm以下であり、前記金属酸化物粒子が請求項1または2に記載の微粒子状金属酸化物を必須とする、組成物。
【請求項5】
金属酸化物粒子と溶媒および/またはバインダーとを必須構成成分とし、前記金属酸化物粒子が請求項1または2に記載の微粒子状金属酸化物を必須とする、紫外線吸収材料。
【請求項6】
金属酸化物粒子と溶媒および/またはバインダーとを必須構成成分とし、前記金属酸化物粒子が請求項1または2に記載の微粒子状金属酸化物を必須とする、高屈折率膜形成材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−188386(P2006−188386A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1035(P2005−1035)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】