説明

微粒子生成物を製造するための印刷プロセス

本発明は微粒子生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属微粒子の液体前駆体を収集基材の上あるいは中に印刷する工程(i)および非金属微粒子を回収する工程(ii)により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子生成物を製造するためのプロセスを提供し、より詳細にはシャープな粒径分布を有する微粒子生成物を製造するためのプロセスを提供する。同プロセスで製造された微粒子生成物は、エステティックおよび機能的な分野に、特に顔料として有用である。
【背景技術】
【0002】
微粒子生成物は、それの意図する適用分野によって様々な形状を有する。例えば、顔料の分野では、EP0651777に開示される表面が研磨された生成物のように実質的に球状である場合もあるし、また光線をよりよく反射するためにフレーク形状の場合もある。
【0003】
市販されているフレーク状微粒子生成物は金属および非金属という2種類の主要なタイプに分類される。これらの直径は5〜1000μmあるいはそれ以上といった広範囲にわたっており、またそれらのアスペクト比(最大径/最小径比、実質的に直径/厚さ比)は5:1以上、例えば約15:1〜150:1、あるいは250:1まで、あるいはそれ以上にわたっている。このような微粒子生成物は、インク、塗料、プラスチックおよび粉体状被覆材のための着色剤として使用されており、フレーク状ではない有機あるいは無機着色剤では得られない外観を与える。化学組成によっては、これらは多くの機能的な適用先にも使用できる可能性がある。これらの適用先の例として導電率、熱あるいは光の反射、湿気のバリア、難燃性が要求される分野が挙げられる。
【0004】
多くの適用分野において、均一なサイズを有するフレーク状粒子が有利であり、顔料として使用される場合には特にこのことが言える。例えば、グラビア印刷に適用される場合、過度に大きなフレークは印刷セルを閉塞して印刷物の品質を落とす可能性がある。逆に過度に小さなフレークはそれらを含有する被覆材の色調のクリーンさを損なう可能性がある。実際、最も輝かしい効果は通常は狭い(シャープな)粒径分布によってもたらされる。換言すれば、このような効果は過度に大きな粒子や過度に小さな粒子を含まない生成物によってもたらされる。
【0005】
例えば顔料に使用される金属フレーク状粒子の製造は特許文献に多く開示されている。これらは溶剤がまったく存在しない乾式ボールミリングのプロセスにより金属粒子から製造できるが、アルミニウムのような反応性金属を使用する場合には、ドライなフレーク生成物の汚染性、爆発性の性状により有害な結果をもたらす可能性がある。この種の金属に対しては、鉱物性アルコールのような有機液体と少量の潤滑剤の存在下で金属粒子をミリングにより微粉砕する湿式ボールミリングのプロセスに多くの場合取って代わられている。ボールミル内の微粉砕媒体のカスケード効果により、実質的に球状の金属粒子が上記のアスペクト比を有するフレークに平坦化される。
【0006】
どのようなミリング方法を採用するにせよ、最も通常の出発物質は噴霧処理された金属粒子である。この出発物質は、塊状の金属を溶融し、次いでこれを圧縮ガスにより強制的にノズルを通過させることによって得られる。これにより塊状の金属は粒子状となり、これは次いでボールミル内で機械的な処理を受けてフレーク状になる。
【0007】
旧式の製造プロセスは、業界では「コーンフレーク」という名前で知られている角のある端部と不均一な表面を有するフレークを製造していた。アルミニウムを取り扱うより最近の技術はいわゆる「シルバーダラー」フレークを製造する。これらは、より丸みを帯びた端部、より平滑な表面、そしてよりシャープな粒径分布によって従来品と区別される。その結果、これらはより輝度が高く、より白色であり、より望ましい外観を有する。
【0008】
キラキラ輝くグリターフレークは他の種類の市販顔料である。これらは、非常に薄い金属シートあるいは表面が金属化処理を受けたポリマー膜から製造され、機械処理を受けて規則的な幾何学形状に切断される。この技術の不利な点は比較的大形のフレークしか与えられないという点である(フレークの最小サイズは50μm程度)。
【0009】
金属フレークを製造する他の方法は、真空蒸着技術を用いて剥離塗布処理を受けたポリマー膜を金属で被覆することである。剥離塗布により形成された被覆材は溶解されて金属膜を放出し、同金属膜は次いでフレークに崩される。
【0010】
顔料として使用される市販非金属粒子の中には真珠光沢のフレーク(雲母フレーク)がある。これらは、伝統的に、天然の板状のケイ酸鉱物埋蔵物から得られていた(ただし、より近代的な形式は合成物かもしれない)。
【0011】
グリターフレークを別にすれば、通常型の金属および非金属のフレーク状粒子、特に真珠光沢のフレーク粒子、の共通の特性は粒径分布が広いという点である。典型的な通常型の金属フレーク粒子および真珠光沢のフレーク状粒子の粒径分布を各々表1および表2に示している。顔料として使用する場合には、より大形のフレークはキラキラ輝いてはいるが隠蔽力(不透明性)は殆どない。それに対して、より細かいフレークは不透明性を増すが、外観はより暗くなる。実際問題として、フレーク状顔料の製造業者は粒径分布をよりシャープにするように勤めており、これによってエステティックな効果を最大化しようとしている。
【0012】
上記の2種類のフレーク状顔料を製造する上記通常型の方法では、実質的に単分散の生成物を得ることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上述の背景技術における問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の開示)
本発明の第1の態様は、微粒子生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属微粒子の液体前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)および非金属微粒子を回収する工程(ii)により構成される。
【0015】
本発明の第2の態様は、フレーク生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属フレークの液体前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)および非金属フレークを回収する工程(ii)により構成される。
【0016】
本発明の第3の態様は、フレーク生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属フレークの液体前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)、同非金属フレークの前駆体に固化処理を施して非金属フレークを製造する工程(ii)、および同非金属フレークを回収する工程(iii)により構成される。
【0017】
本発明の他の態様は、100μm以下の平均粒径を有するフレーク生成物でその粒径分布が同フレーク生成物の少なくとも90質量%が平均粒径の±25%以内に収まっており、同粒子で構成される顔料組成物を提供する。
【0018】
本発明の更に他の態様は、例えば金属、金属酸化物あるいは金属硫化物により被覆されて追加的な視覚上あるいは機能上の効果を発揮するフレーク生成物を提供する。
【0019】
本発明の更に他の態様は、本発明のプロセスにより製造されたフレーク生成物を導電性の顔料、電磁波障害(EMI)の遮蔽、あるいは表面被覆材あるいは食品の包装物に対してガスおよび/あるいは液体のバリア性状を与えるための顔料として使用法を提供する。
【0020】
(発明の詳細な説明)
プロセス
上述したように、本発明の第1の態様は、微粒子生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属フレークの液体前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)および非金属フレークを回収する工程(ii)により構成される。
【0021】
微粒子生成物の好ましい種類はフレーク生成物である。従って、本発明の第2の態様は、フレーク生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属フレークの液体前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)および非金属フレークを回収する工程(ii)により構成される。
【0022】
本発明の第3の態様は、フレーク生成物を製造するプロセスを提供し、同プロセスは非金属フレークの液体前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)、同非金属フレークの前駆体に固化処理を施して非金属フレークを製造する工程(ii)、および同非金属フレークを回収する工程(iii)により構成される。
【0023】
本明細書で使用される「フレーク生成物」という用語は、最終物質を指し示す総称であり、非金属フレーク、並びに金属および/あるいは金属化合物で被覆された非金属フレークを包含する。これらのフレークはそれまでに随意的にミリング処理により微粒子化されていてもよい。従って、「フレーク生成物」という用語は、非金属フレーク、ミリング処理された非金属フレーク、金属で被覆された非金属フレークおよび金属で被覆されミリング処理された非金属フレークを包含する。
【0024】
同フレーク生成物の平均粒径は典型的には1000μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更により好ましくは30μm以下(例えば10〜30μm、あるいは10μm以下でさえも)。
【0025】
本明細書で使用される「非金属フレーク」という用語は、少なくとも3:1のアスペクト比を有する。ここで、アスペクト比とは最大径/最小径比として定義される。好ましい一態様では、同非金属フレークは少なくとも5:1のアスペクト比を有する。本発明の好ましい一態様では、同非金属フレークは実質的に円形の形状を有し、この場合のアスペクト比は円形表面直径の厚さに対する比である。
【0026】
印刷
本発明によれば、上記非金属フレークの前駆体は、どのような適切な印刷方法によってでも印刷されてよい。適切な印刷方法によって、十分に少量の非金属フレーク前駆体を非連続形状に印刷し、その結果、平均粒径が1000μm以下、好ましくは100μm以下の非金属フレークが製造できる。同印刷方法は、好ましくは沈み彫り印刷、凸版印刷(例えばフレキソ印刷)あるいはインクジェット印刷である。他の印刷方法は、リソグラフィ(例えばオフセット・リソグラフィ)およびスクリーン印刷を包含する。
【0027】
好ましい一実施態様は、印刷法として沈み彫り印刷を採用する。沈み彫り印刷は、「画像」を画像キャリア上に彫る技術を包含する印刷方法である。同画像は、画像キャリアをダイアモンド端部を有する器具によりカッティングするかあるいはレーザーエッチング装置によりエッチングすることにより彫られる。同画像キャリアとして銅あるいは鋼製の板あるいは円筒物が使用できる。次いで、彫り込み操作により形成されたくぼみにインクを擦り込む。通常の方法では、画像キャリアが板状の場合には、それを平坦な台と重いローラの間のプレス内を移動させる。湿らせた1葉の紙を同板とローラの間に置き、それによりローラは板に圧力を加えインクは板から紙に搾り出される。
【0028】
本発明によれば、上記非金属フレーク前駆体はインクを使用しなくてもよく、また収集基材を上記紙の代わりに用いてもよい。彫り込まれた画像は、典型的には小さな壁として働く小さな陥凹セル(すなわちドット)により構成される。これらの深さおよびサイズは収集基材に運ばれる非金属フレーク前駆体の量、従って製造される非金属フレーク前駆体のサイズを制御するために変更してよい。
【0029】
輪転グラビア印刷すなわちグラビア印刷は沈み彫り印刷の一種である。グラビア印刷での画像キャリアは円筒形状であり、回転式印刷機が使用される。
【0030】
本発明に使用される輪転グラビア印刷機は、典型的には、画像が彫り込まれた円筒、非金属フレーク前駆体の受け器、ドクターブレード、インプレッションローラー、そして随意的に乾燥機を包含する。印刷機が運転されている間、画像が彫り込まれた円筒は部分的に前駆体受け器に浸され、陥凹セルを満たす。円筒は回転しつつ前駆体を受け器から引き出す。スキージーとして働くドクターブレードは円筒をこすり、その後収集基材と接触して非印刷場所(陥凹部以外)から前駆体を取り除く。次いで、収集基材はインプレッションローラーとグラビア円筒の間に挟み込まれる。この時点で、前駆体は陥凹セルから収集基材に運ばれる。インプレッションローラーの目的は、前駆体を最大限塗布するたに収集基材をグラビア円筒に押し付けることである。通常型の印刷法とは異なり、印刷された前駆体は収集基材に入り込んだり強く付着されることはない。収集基材は次いで乾燥機に送られてそこで非金属フレーク前駆体を固化して非金属フレークにしてもよい。
【0031】
一態様では、凸版印刷(好ましくはフレキソ印刷)が採用される。フレキソ印刷は、ゴム製あるいは感光性ポリマー製の柔軟性のある印刷版を用いてインクを直接的に紙あるいはその他の収集基材に送る印刷法である。同印刷法は、段ボール箱用の物質あるいはプラスチックに印刷するために包装業界で広く用いられている。フレキソ印刷法は、典型的は、粘度が100cPss以上のアルコール溶媒系のインクを用いる。
【0032】
他の好ましい実施態様では、インクジェットによる印刷法が採用される。
【0033】
従って、本発明の他の態様は、インクジェット印刷プロセスを提供する。同プロセスは、液体の非金属フレーク前駆体をジェットヘッドから噴射する工程(i)、同非金属フレーク前駆体の液滴を収集基材の中あるいは上に収集する工程(ii)、同液滴に固化処理を施して非金属フレークを得る工程(iii)、および非金属フレークを回収する工程(iv)で構成される。
【0034】
本発明の更に他の態様は、フレーク生成物を製造するプロセスを提供する。同プロセスは、液体の非金属フレーク前駆体をジェットヘッドから噴射する工程(i)、同非金属フレーク前駆体の液滴を収集基材の中あるいは好ましくは上に収集する工程(ii)、同液滴に固化処理を施して非金属フレークを得る工程(iii)、および非金属フレークを回収する工程(iv)で構成される。
【0035】
本明細書で使用される「非金属フレーク前駆体の液滴」という用語は、固体ではなく、特に容易に物理的な変形を受ける一定量の非金属フレーク前駆体を指し示す。
【0036】
ジェットヘッドとしては、通常のインクの代わりに液体の非金属フレーク前駆体を受け器中に保持するように変更されたインクジェット印刷機のヘッドを使用してよい。ジェットヘッドがどのような機構により非金属フレーク前駆体の液滴を送り出すかは、十分に小径の液滴を高速で生成し、使用中の前駆体の化学的な性質によって機械の材質が影響を受けない限り重要ではない。連続式のインクジェット(CIJ)および必要に応じて液滴を供給するドロップ・オン・デマンド(DOD)型のインクジェット印刷機は本発明のプロセスに特に受け入れやすい。
【0037】
更に他の好ましい実施態様では、ジェットヘッドと収集基材は差動運動をする。このような差動運動により、非金属フレーク前駆体液滴の意図しない重なりを避けられる。実際に、ジェットヘッドは一般的に固定されており、また収集基材はその下側で一定速度で動く。一実施態様では、液体の非金属フレーク前駆体は下方に向かって垂直に噴射される。好ましい一実施態様では、収集基材は連続的なベルトであるかあるいは連続的なベルトの上にある(連続的なベルトにより運ばれる)。同収集基材はジェットヘッドの下側で好ましくは0.1〜1.0メートル/秒、例えば少なくとも0.2あるいは0.3メートル/秒の速度で水平方向に運ばれる。好ましい一態様では、収集基材は約0.45メートル/秒の速度で運ばれる。インクジェット印刷技術の進展につれて、ベルト速度の上昇が期待できる。
【0038】
一実施態様では、ジェットヘッドと収集基材の間の距離は0.25メートル未満、例えば0.10メートル未満あるいは0.05メートル未満である。同距離は好ましくは0.01メートル未満、例えば0.005メートル未満あるいは0.001メートル未満である。
【0039】
非金属フレーク前駆体
好ましい非金属フレーク前駆体の例として、ガラスのフレーク前駆体(例えばゾルゲル)、低融点ガラスその他のセラミック組成物、有機ケイ酸塩(例えばオルトケイ酸テトラエチル)、無機ケイ酸塩(例えば、アルカリ金属ケイ酸塩、その他の成膜可能な無機化合物)固体および液体の樹脂およびポリマー、溶液(例えば樹脂およびポリマー溶液)、および合成酸塩化ビスマス前駆体(例えば硝酸ビスマス)が挙げられる。
【0040】
好ましくは、非金属フレーク前駆体はゾルゲル、樹脂、ポリマー液体、溶液(例えば樹脂およびポリマー溶液)および硝酸ビスマス溶液である。同フレーク前駆体は良好な熱的および化学的に安定していることが更に好ましい。
【0041】
樹脂は電子線あるいは紫外線/赤外線(UV/IR)で硬化可能なものが有利である。この種の樹脂の例としてアクリル樹脂、熱硬化性樹脂(例えばエポキシ樹脂)、風乾性樹脂(例えばポリシロキサン樹脂、例えばTego Chemie GmbhのSilikophen)が挙げられる。液体の熱硬化性フェノール樹脂の例としてTipco Industries Ltd.のTPF/S/1517およびTPF/F/151が挙げられる。UV硬化性樹脂の例として、アクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、その他の官能性モノマーおよびオリゴマーが挙げられる。市販のUV硬化性樹脂の例としてUCB(Chem) Ltd.のEbecryl、BASF AGのLaromerおよびSartomer Company IncのSarboxが挙げられる。更に、同樹脂はUV非硬化性の硬質樹脂および/あるいはポリマーであってもよい。
【0042】
一実施態様では、非金属フレーク前駆体は有機あるいは無機の着色剤が細かく分散した分散体により構成される。同実施態様はフレーク生成物が顔料(例えば顔料キャリアー中への分散による)に使用される場合に特に好ましい。同実施態様では、フレーク生成物の色彩は適切な着色剤の選定により制御可能であるので、同生成物の被覆は必要ではない。有機あるいは無機の着色剤はフレーク生成物の脆さを制御するためにも用いてよい。
【0043】
非金属フレーク前駆体液滴のサイズおよび収集基材上の空間的な分布は、採用される印刷プロセス特有の多くの因子によって制御可能である。フレーク生成物の脆性を制御する手段として有機あるいは無機の着色剤も使用できる。例えば、印刷プロセスとして沈み彫り法が採用される場合には、画像キャリアー上の陥凹セルのサイズおよび空間的な分布によって制御可能である。印刷プロセスとしてインクジェット法が採用される場合には、ジェットヘッドを駆動する電子機器およびヘッドと収集基材の間の相対的な運動によって制御可能である。
【0044】
前駆体液滴径が小さい場合には、液滴に与えられる運動エネルギーが不十分となるので目的とする場所に安定して噴射されなくなり、その結果、インクジェットにより形成される画像の輪郭が不明瞭となる。これは、そのような小径の液滴の噴射方向が空気流によって曲げられる傾向があるためである。本プロセスの主な利点は液滴を収集基材上で正確に配置する必要がないという点である。意図しない液滴の重なりは、ジェットヘッドでの複数のノズルの適切な配置とヘッドと収集基材の間の相対的な運動の調整により避けることが可能である。
【0045】
液滴径とフレーク生成物の表面特性は、前駆体液滴の粘度の調整により制御可能である。もしそうすることが適切であるのであれば、収集基材に対する液滴の飛行経路および前駆体と収集基材の材料の間の表面張力関係を調整する。各形式の印刷プロセス(例えばインクジェット印刷法)において、前駆体と収集基材の所与の組み合わせでの最適運転条件は日常試験により決定できる。
【0046】
一実施態様によれば、非金属フレーク前駆体の粘度は100cPs以下、例えば80cPs以下あるいは50cPs以下である。噴射の観点からの好ましい粘度は2〜20cPsである。より高粘度の液体を使用する場合には、希釈あるいは加熱(前駆体が熱耐性の場合)により調整すべきである。例えば、噴射される液体の粘度を全般的に低下するために、インクジェット印刷ヘッドを加熱してよい。
【0047】
印刷プロセスの円滑化(例えば粘度の調整)のために望ましい印刷法に適した添加剤を非金属フレーク前駆体に添加してよい。例えば、インクジェット印刷法が採用される場合には、湿潤剤あるいは保湿剤といった添加剤を使用してよい。
【0048】
収集基材
収集基材は典型的には固体である。適切な固体収集基材の例としてポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、柔軟性のポリエステル膜、ポリイミド膜(例えばDupontのKapton(R))、シリコンゴム、および剥離層(例えば有機質の剥離層)で被覆された金属、ガラスあるいはセラミックの表面および基材が挙げられる。金属、ガラスおよびセラミックの表面は剥離性状の向上のために随意的に研磨してよい。
【0049】
非金属フレークは収集基材の表面外形と同様な外形を有することが期待される場合がある。従って、収集基材は平滑な表面と低摩擦係数を有することが好ましい。これによって、非金属フレーク前駆体液滴の同基材への付着が予防でき、またそれからの除去が容易になる。この観点からは、PTFEおよびシリコンゴムが収集基材のための特に好ましい材質である。シリコンゴムは、濡れ性がよく低粘着性であるのでフレーク除去を容易化し、また非常に平滑な表面を有しているのでフレーク表面を平滑化しかつ非常に高反射性にするので、特に有利な材質である。柔軟性の収集基材は連続プロセスでのベルトコンベヤーとして容易に使用できるので好ましい。同じ理由により、シリコンゴムも有利である。堅い収集基材も、ベルトの動きの横断方向に向いたストリップ形状にして前駆体液滴の噴射点でしっかりと固定されるのであれば、ベルトで運ばれてよい。
【0050】
特定の実施態様では、収集基材と前駆体液体は、収集基材は前駆体液体に濡れないような組み合わせで選択される。前駆体液体を収集基材上にいくらかの広さに連続するように印刷して、次いで表面張力によりそれを小径の前駆体液滴に分裂させる。フレークを製造するために同液滴に固化処理を施してよい。このような方法により製造したフレークは収集基材とは反対側に凸面を有する傾向にある。このようなフレークは金属により被覆されると小さな凸面鏡、あるいはフレーク本体が透明である場合にはそれを通して見たならば凹面鏡となり、一風変わった視覚効果を発揮する。
【0051】
他の実施態様では、収集基材は剥離層であってもよく、あるいはそれを有していてもよい。本明細書で使用される「剥離層」という用語は、予め塗布された剥離層であり、これは次いで液体中に分散あるいは溶解されて非金属フレークを分離するように設計されている。剥離層は典型的には揮発性液体溶液あるいは分散体から沈殿する樹脂あるいはポリマーでできており、これは同じあるいは異なる液体中に再分散あるいは再溶解できる。紙は適切な固体収集基材のひとつであり、それは例えば水溶液から沈殿するBritish Traders & Shippers Ltd.の乾燥したポリビニルアルコール(Hi−Selon C−200)の剥離層で予め被覆されている。他の例がPVP(ポリビニルピロリドン)K15溶液であり、これはMelinex膜上に塗布された後に乾燥処理を受ける。剥離層は通常の接触型の印刷法(例えばグラビア印刷)が使用される場合に有利に採用可能である。
【0052】
好ましい一実施態様では、収集基材は耐熱性である。耐熱性収集基材の一例として銅膜あるいはアルミニウム箔といった金属表面が挙げられる。固化処理が加熱を包含する場合には耐熱性収集基材の使用が好ましい。
【0053】
好ましい一実施態様では、収集基材は連続的なベルトあるいはローラーであるかあるいはそれにより運ばれる。連続的なベルトにより、非金属フレークは印刷装置(例えばジェットヘッド)の下流側で機械的な力あるいは適切な回収用液体での洗浄のいずれかで分離できる。実際、プロセス全体は連続運転に適しており、これにより製造経済性は向上する。
【0054】
一実施態様では、印刷装置(例えばインクジェット印刷機でのジェットヘッド)と収集基材はチャンバー内で不活性雰囲気下に置かれる。このような実施態様は非金属フレークが化学的に反応性の場合に特に適している。他の実施態様では、印刷装置と収集基材はチャンバー内で少なくとも部分的な減圧下に置かれる。このような実施態様は、同印刷装置がインクジェット印刷機でのジェットヘッドの場合に特に有利である。なぜならば、これによって非金属フレークのジェットノズルからの放出が促進できるからである。
【0055】
更に他の実施態様では、収集基材は液体である。このような実施態様はインクジェットヘッドから噴出される液滴の回収のためには有利である。このような液滴は、例えば実質的に球形の微粒子を製造するために、収集基材に接触する以前あるいはその期間中あるいはそれ以降に固化処理を受ける。
【0056】
ミリング
一態様では、同プロセスはミリング工程を包含する。ミリングは、非金属フレーク前駆体が収集基材上に印刷された以降のどのような段階でも実施できる。
【0057】
このようにして、非金属フレーク前駆体は最初に固化処理を受け、次いでミリング処理を受けてよい。このような処理は、非金属フレーク前駆体が収集基材上に存在する段階あるいはそれから分離された後で実施してよい。もし非金属フレーク前駆体が被覆されている場合には、ミリング処理は被覆以前あるいは以降の段階で実施してよい。非金属フレーク前駆体がうまくミリング処理を受けられるか否かは、言うまでもなく、それの脆さにかかっていることになろう。同前駆体はミリング処理を受けている間に物理的変形を受けるに十分な性状を有していなければならない。
【0058】
一実施態様によれば、非金属フレーク前駆体は収集基材上に印刷された以降であって固化処理を受ける以前の段階でミリング処理を受ける。このような実施態様は、収集基材が、移動中のロールあるいはロールミルであるかあるいはそれの上に置かれている場合に有利である。
【0059】
好ましい一実施態様では、インクジェット印刷法が採用され、また非金属フレーク前駆体がミリング処理を受ける。前述したように、非金属フレーク前駆体液滴は物理的変形を受けるに十分な性状を有している。このような実施態様は、収集基材が移動中のロールあるいはロールミルの上に置かれている場合に有利である。
【0060】
本明細書で使用される「ミリング」という用語は、例えば通常型のボールミリングあるいはロールミリング(例えばニップロールを使用する)でミリング媒体を移動させることにより、フレークあるいは前駆体液滴を変形するための機械的操作のことであり、その形式は問わない。
【0061】
非金属フレーク前駆体液滴が印刷(特にインクジェット印刷)により生成する場合、同液体は2−あるいは3−ロール型ロールミルでの移動中のローラーに衝突させてよい。ローラー間のニップは液滴に圧力を加えるようにセットされてそれを平坦化し、液滴にローラ表面の外形を反映させる。例えば、これによってフレークの片面あるいは両面の表面にローラーの表面パターンを移してよい。非金属フレークの表面品質、従ってそれを内包する顔料組成物の反射率は、ローラーの表面研磨の度合いによって決まる。
【0062】
ついでに言えば、ミリングにより当然のことながらフレークの粒径は変化し、これにより粒径分布も影響を受ける。
【0063】
固化処理
前述したように、非金属フレーク前駆体(例えば、インクジェット印刷により製造された液滴状の前駆体)は固化処理を受けて非金属フレークとなる。
【0064】
固化処理のためには、適切な物理的、化学的およびそれらの両方のどのような手段でも採用してよい。適切な物理的手段の例は、加熱あるいは冷却を包含してよい。適切な化学的手段の例として、UV硬化、加熱、水蒸気処理、アンモニア蒸気処理、塩化水素ガス処理あるいはこれらの組み合わせに起因する化学反応を内包する手段が挙げられる。
【0065】
特に、固化処理には熱処理、化学的処理、照射処理あるいはこれらの組み合わせが採用できる。適切な熱処理として加熱および冷却(例えば空冷)が挙げられる。適切な化学的処理の例として、水蒸気処理、アンモニア蒸気処理、塩化水素ガス処理あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。適切な照射処理の例として、電磁波あるいは粒子照射(例えば紫外線(UV)、電子線(EB)、レーザー光線の照射による硬化が挙げられる。他の固化処理の例が減圧処理である。
【0066】
どのような固化処理を採用するかは、非金属フレーク前駆体の性質によって決まる。例えば、非金属フレーク前駆体がUVあるいはIRにより硬化可能であれば、UVあるいはIRによる硬化が固化処理として有利に採用できる。UVランプあるいはIRランプが固化処理の実施のために使用してよい。非金属フレーク前駆体の材質がオルトケイ酸テトラエチルの場合、固化処理は水蒸気およびアンモニア蒸気の雰囲気下で実施して、オルトケイ酸テトラエチルを溶融してシリカに転化してよく、更にその後に随意的に熱処理を追加してガラスを製造してよい。硝酸ビスマスが非金属フレーク前駆体として使用される場合、生じた液滴は約400°Cに加熱し、塩化水素ガスと空気の混合物で処理してよい。
【0067】
固化処理が加熱を包含する場合には耐熱性収集基材の使用が好ましい。
【0068】
回収
一実施態様では、非金属フレークは機械的な手段により収集基材(特に個体の収集基材)から回収される。好ましい機械的な手段としては超音波を使用するか、あるいはドクターブレード等の器具で収集基材からこすり取る。
【0069】
他の実施態様では、非金属フレークは高圧の液体あるいは気体の噴射により収集基材(特に個体の収集基材)から回収される。好ましい実施態様では、非金属フレークは高圧水の噴射により回収される。このような実施態様は連続プロセスでの使用が特に好ましい。
【0070】
他の実施態様では、非金属フレークは回収用液体で洗浄することにより収集基材(特に個体の収集基材)から回収される。
【0071】
溶剤として使用される水あるいはどのような有機化合物でも、それらが非金属フレークと望ましくない反応をしないとの前提下で、回収用液体として使用できる。好ましい一実施態様では、同回収用液体は水である。
【0072】
薄膜状の回収用液体を固体収集基材(それ自体移動可能かあるいは固定されている)表面上を流してよい。これにより、非金属フレークは直接的に回収用液体表面上に形成され、回収が容易になる。
【0073】
他の実施態様では、収集基材が剥離層としても働く場合、同剥離層を回収用液体中に分散あるいは溶解してよい。剥離層用の物質としては最終的な使用に適したものから選ぶのが有利である。このような例として、製造された表面被覆材中に存在し、同被覆材の恒久的な成膜成分となる樹脂が挙げられる。回収用液体の材質としては最終的な使用に適したものから選ぶのが有利である。このような例として、後処理において追加的な有用な役割を果たすあるいは微粒子の後処理を容易化する物質が挙げられる。回収用液体は微粒子との化学的な反応性によって選択されるかもしれない。これらの二態様は、回収用液体と剥離層の両方が最終適用を利するように組み合わせてもよい。
【0074】
広義の一態様では、固体収集基材の代わりに、液体単独で収集基材として使用してよい。このような場合には、同収集基材はそれに衝突させた時点での非金属フレーク前駆体液滴よりも高粘度であることが好ましい。そのような粘度を有する液体はフレークあるいはその他の生成物に対してより満足できる表面性状を与えそうである。
【0075】
一実施態様では、液体の収集基材は上述の回収用液体として使用されるものであってよい。この目的のための回収用液体の使用によるひとつの利点は非金属フレークをそれが回収用液体内に存在している期間中に処理できることである。これは、各種の目的のために有用である。
【0076】
一態様では、液体収集基材は販売あるいは更な処理にとって便利な形式のものであってよい。このことは、想定される適用と両立する回収用液体の使用によって達成できる。ある種の適用では、例えば、取り扱いがより容易な通常型のフレーク・ペーストを製造するために回収用液体中の非金属フレークの濃縮が必要とされるかもしれない。このような場合には、フィルター・プレスその他の固体微粒子を液体から分離するためのよく知られた手段を採用してよい。
【0077】
回収用液体の使用は、作業場でのほこりによる汚染問題をなくす点から有利である。
【0078】
本発明によるフレーク生成物に対してプラスチックあるいはある種の印刷インキとの相溶性を与えるために、随意的に被覆された非金属フレークを乾式回収手段で処理するか、それを顆粒のような液が存在しない形に転化する(例えば欧州特許0134676Bに開示される方法)のいずれかによって高沸点の回収用液体の使用を避ける必要がある。そうすることが望ましいのであれば、非金属フレークを個体の有機キャリアー材によって固定してよい。
【0079】
被覆
一態様では、本発明のプロセスは金属および/あるいは金属化合物により非金属フレークを被覆する工程を更に包含してよい。本発明での使用が好ましい金属化合物は金属酸化物および金属硫化物である。
【0080】
好ましい一態様では、非金属フレークは金属で被覆される。
【0081】
好ましくは、同金属はアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、金、鉄あるいはそれらの合金である。より好ましくは、同金属はアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、金あるいはそれらの合金である。好ましい一態様では、同金属はアルミニウムあるいは真鍮である。
【0082】
一態様では、同金属はアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、金および/あるいは鉄から選ばれる2種以上の金属の合金により構成される。
【0083】
他の好ましい一態様では、非金属フレークは金属化合物で被覆される。
【0084】
好ましくは、同金属化合物は金属酸化物である。より好ましい一態様では、同金属酸化物はアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、マンガン、モリブデンおよびケイ素からなる群から選ばれる金属の酸化物である。
【0085】
他の好ましい一態様では、同金属化合物は金属硫化物である。このような金属硫化物の例として、硫化セリウム、硫化カドミウムあるいは硫化クロムが挙げられる。更に、使用可能な金属化合物の例として、不活性剤として使用可能な無機のリン酸塩およびクロム酸塩が挙げられる。好ましい一態様では、同金属化合物は銅および亜鉛の化合物の混合物である。
【0086】
被覆工程は本発明のプロセスのどの段階でも実施可能である(ただし、そうすることが採用された他の工程と両立するとの前提下で)。例えば、非金属フレークの被覆は、収集基材からそれを分離する以前の段階あるいは以降の段階で実施することが可能である。フレークの最終生成物の両面を被覆することが望ましいのであれば、フレークの被覆は収集基材からそれを分離する以降の段階で実施することが一般的には好ましい。しかし、各フレークの最終生成物の片面のみを被覆する場合には(これは顔料フレークに望ましい金属的外観を与えるためにはしばしば十分である)、フレークの被覆は収集基材からそれを分離する以前の段階で実施することが可能である。フレークの最終生成物の片面のみの被覆は、同フレークが透明である場合には特に適用可能であり有利である。なぜならば。金属および/あるいは金属化合物の必要量を減少できるので経済性の向上につながるからである。
【0087】
従って、一態様では、本発明はフレーク生成物を製造するためのプロセスを提供する。同プロセスは、液体の非金属フレーク前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)、同非金属フレーク前駆体に固化処理を施して非金属フレークを製造する工程(ii)、非金属フレークを回収する工程(iii)、および非金属フレークを金属および/あるいは金属化合物で被覆する工程(iv)で構成される。
【0088】
他の態様では、本発明はフレーク生成物を製造するための他のプロセスを提供する。同プロセスは、液体の非金属フレーク前駆体を収集基材上に印刷する工程(i)、同非金属フレーク前駆体に固化処理を施して非金属フレークを製造する工程(ii)、非金属フレークを金属および/あるいは金属化合物で被覆する工程(iii)、および非金属フレークを回収する工程(iv)で構成される。
【0089】
本明細書で使用される「被覆された(非金属)フレーク」という用語は、金属および/あるいは金属化合物で被覆されたフレークを指し示すことは容易に理解されよう。被覆されたフレークは全面的に金属および/あるいは金属化合物で被覆されているかもしれないし(すなわち非金属フレークの全表面が金属および/あるいは金属化合物で被覆されているかもしれないし)、あるいは部分的に被覆されているかもしれない(例えば、非金属フレーク表面の一部のみが被覆されているかもしれない)。部分的に被覆されたフレークは、被覆工程をフレークが収集基材から分離される以前の段階で実施することによって得られる。
【0090】
非金属フレーク前駆体は被覆工程期間中に350°Cまでの温度に耐えられることが好ましい。何故ならば、これによって本発明の生成物の熱安定性を全ての予想される用途に対して確保できるからである。
【0091】
フレークがミリング処理を受ける場合には、被覆工程はミリング処理以前あるいは以降の段階で実施してよい。
【0092】
前述したように、回収用液体の使用によるひとつの利点は非金属フレークをそれが回収用液体内に存在している期間中に処理できることである。例えば、非金属フレークはそれが回収用液体内に存在している期間中によく知られた湿式化学処理技術により金属および/あるいは金属化合物で被覆できる。
【0093】
他の態様では、非金属フレークは乾燥した状態で回収された後によく知られた真空蒸着技術(例えば流動層を使用する)により金属および/あるいは金属化合物で被覆してよい。更に他の態様では、非金属フレークを収集基材から分離する以前の段階で金属および/あるいは金属化合物を高真空下で蒸発してフレーク上に蒸着してよい。この種の処理はGeneral Vacuum Equipment Ltd.の真空蒸着装置により有利に実施できる。
【0094】
デジタル金属蒸着技術も非金属フレークの被覆に使用してよい。ひとつの知られたプロセスは、銀のナノ微粒子を含有するインクを物質上(この場合はフレーク)に向けて噴射し、次いで同微粒子を溶融するための高温下での焼結工程を包含する。
【0095】
他の被覆技術は、金属および/あるいは金属化合物がその中に堆積される半多孔質の「スポンジ」に加工可能な特別な非金属フレークを使用する。このようなフレークは、水溶性のUV硬化性成分、水不溶性のUV硬化性成分および遷移金属触媒の三成分からなる前駆体から製造される。上記2種類のUV硬化性成分は、硬化後に分離されて不連続相を形成する。同水溶性成分を溶解除去すると半多孔質の「スポンジ」が生成し、その中に無電解メッキ(例えば無電解銅浴を使用する)により金属および/あるいは金属化合物を堆積させる。同技術はWO−A−04068389に開示されている。
【0096】
非金属フレークは被覆工程以前の段階でその表面がより容易に被覆されるように活性化処理を受けてよい。この活性化処理は酸性SnClによる処理であり、浴を使用するプロセスにより達成できる。フレークは次いでPd2+溶液により処理されると触媒的に活性な表面を有するようになる。この処理も通常は浴を使用するプロセスにより達成できる。表面の生成/活性化工程の後に通常は低圧の水ジェットで達成できる洗浄工程が続く。
【0097】
好ましい一実施態様では、被覆工程は無電解浴を使用して実施される。この点からは、銅無電解浴およびニッケル無電解浴の使用が特に好ましい。これらの浴は、例えばRohm & Haas and Technic Inc等によって広く市販されているものが特に適している。導電性のフレークが形成されたならば、次いで被覆工程は電解による金属被覆により実施できる。
【0098】
非金属フレークは複数層の金属および/あるいは金属化合物で被覆されてよい。各々の層に用いられる被覆材は、これらの層が同じ金属あるいは金属化合物により構成される、あるいは異なる金属および/あるいは金属化合物の組み合わせとなるように、金属および/あるいは金属化合物から独立して選択される。非金属フレークの片面の被覆は、インクジェット液滴を重ね合わせることによって実施してよい。インクジェット印刷法は、高度な技術的精緻でもって一つの液滴上に他の液滴を正確に重ね合わせることができる。一般的に、固化処理は液滴回収の以前あるいは以降の段階で実施でき、また重ね刷りは、固化処理の以前あるいは以降の段階で実施できる。各々の層の厚さおよび屈折率も変化し得る。フレーク生成物の性状(例えば光学性状)は、被覆層数、各層に用いられる被覆材および/あるいは各層の厚さによって調整できる。このようにして、異なった色彩効果(例えば色彩が変化する効果を発揮する顔料、見る角度によって変化する有彩色の表示等)が得られる。
【0099】
好ましい一態様では、上述の重ね刷りプロセスは以下の工程を包含するインクジェット印刷プロセスによって実施される:液体の非金属フレーク前駆体をジェットヘッドから噴射する工程(i)、同非金属フレーク前駆体の液滴を収集基材上に収集する工程(ii)、異なった第二の液体をジェットヘッドから収集された液滴に重ね刷りするために噴射し、それによって複合フレークを製造する工程(iii)、及び同複合フレークを回収する工程(iv)。
【0100】
同被覆されたフレークは、それの製造期間中に、防食剤による処理で不活性化されてよい。この場合、例えば1種あるいは複数種の防食剤を同被覆されたフレークを含有する回収用液体に添加する。このような処理は、フレークがアルミニウム、亜鉛、銅、銀あるいは鉄といった金属で被覆されている場合には特に望ましい可能性がある。
【0101】
金属および/あるいは金属化合物と水との反応を抑制する能力があるどのような化合物でも防食剤として使用可能である。このような化合物の例として、リン、クロム、バナジウム、チタンあるいはケイ素を含有する化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし組み合わせて使用してもよい。
【0102】
金属および/あるいは金属化合物で被覆されたある種の非金属フレークは、水性の適用媒体の安定性向上のために、重クロム酸アンモニウム、シリカあるいはアルミナで処理されてよい。他の処理(例えばアンモニアあるいは過マンガン酸カリの使用)もフレーク表面を例えば金色に着色するために採用してよい。更に、適用媒体中のフレークの硬度、従ってそれの耐せん断応力性の向上のために他の処理を採用してよい。
【0103】
フレーク生成物
本発明の一態様は、本発明のプロセスにより製造された、あるいは製造され得るフレーク生成物を提供する。同生成物は好ましくは被覆された非金属フレークである。
【0104】
本発明のプロセスは、小さな平均粒径および/あるいはシャープな粒径分布を有する、好ましくは小さな平均粒径およびシャープな粒径分布の両方を有するフレーク生成物の製造に有利に採用できる。
【0105】
望ましくない粒径を有する粒子部分から望ましい粒径を有する粒子部分を分離するための通常型の方法(例えば、溶剤によって希釈後に湿式スクリーニングを実施する)は一般的には必要とされない。更に、本発明のプロセスは均一な平均粒径を有するフレーク生成物を実質的に製造する。
【0106】
本発明のプロセスによって得られるフレーク生成物の物理形状は良好であり、一般的には更に処理を受けなくても各種の使用に適している。しかしながら、顔料に適用する場合に際して輝度を最大化するためには、フレーク生成物の表面を温和な条件下でミリングあるいは研磨して表面反射性(例えば光線の反射)を向上するのが有利である(ただし、同フレーク生成物がそのような処理が可能な場合)。
【0107】
好ましい一実施態様では、フレーク生成物は、少なくともそれの95質量%の粒径が平均粒径の±25%以内、例えば±10%以内、あるいは±5%以内(あるいは更に±3%以内でさえも)であるような粒径分布を有する。
【0108】
他の一実施態様では、本発明は以下の平均粒径および粒径分布を有するフレーク生成物を提供する。平均粒径:100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、粒径分布:全フレーク生成物の少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95%質量の粒径が平均粒径の±25%以内、好ましくは±5%以内。
【0109】
フレーク生成物は随意的に被覆された非金属フレークであり、好ましくは被覆された非金属フレークである。
【0110】
本明細書で使用される「平均粒径」という用語は、質量基準の平均粒径を指し示す。フレーク生成物が実質的に円形表面を有する場合には、粒径は円形表面の直径のことである。それ以外の場合には、粒径はフレーク生成物の最大径のことである。
【0111】
粒径分布は、質量あるいは容量%基準の粒径分布を測定するための標準的な分析器である「Malven Master Sizer 2000」よる測定値を採用してよい。密度が均一の粒子の場合には容量%基準の粒径分布は質量%基準の粒径分布と同等であることが容易に理解されよう。このようにして、多くの場合、質量基準の平均粒径と容量%基準の粒径分布は互いに交換できる。
【0112】
フレーク生成物の平均粒径は好ましくは5〜1000μm、例えば5〜500μm、5〜250μm、5〜150μm、5〜100μm、5〜50μmあるいは5〜30μmである。
【0113】
フレーク生成物の平均粒径は好ましくは10〜500μm、例えば10〜250μm、10〜100μm、10〜50μmあるいは10〜30μmである。
【0114】
他の一態様では、フレーク生成物の平均粒径は好ましくは80〜1000μm、例えば80〜500μm、80〜250μm、80〜150μmあるいは80〜100μmである。
【0115】
更に他の一態様では、フレーク生成物の平均粒径は100μm以下、例えば50μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下あるいは50μm以下である。
【0116】
前述したように、「フレーク」という用語は、少なくとも3:1のアスペクト比を有する粒子を指し示す。フレーク生成物のアスペクト比は好ましくは少なくとも5:1、より好ましくは少なくとも15:1である。一般的にはアスペクト比は高い方が好ましく、アスペクト比が100:1以上、例えば150:1以上あるいは250:1以上が意図されている。
【0117】
一態様では、非金属フレーク生成物は実質的に円形の表面を有している。同態様では、非金属フレーク前駆体を密接に隣接する一連の液滴として収集基材に収集することが好ましい。
【0118】
非金属フレークは意図される適用によっては異なった形状を有してよい。例えば、非金属フレークは実質的に三角形、四角形あるいは長方形の表面を有してよいし、あるいは棒状、バー状あるいは繊維状の形を有してよい。実際、同フレークは、典型的には一定の厚さを有しているものの、採用された特定の印刷プロセスによって製造され得るどのような表面形状を有してよい。非金属フレーク表面は完全には平坦である必要はなく、凸面あるいは凹面を有してよい。ある種の適用(特に導電性が要求されるような顔料以外の適用)では、フレークは管状あるいはフィラメント状が有利である。
【0119】
インクジェット印刷法が採用される場合、実質的に円形の表面を有する非金属フレークは1種類の液滴によって得ることができ、それ以外の表面を有する非金属フレークは、インクジェットのためのノズルの設計を変更するか、あるいは複数種の液滴を第一の液滴に部分的に衝突するように第二およびそれ以降の液滴を収集基材に向けて噴射してこれらを溶融することによって得られる。
【0120】
非金属フレークは、既存の真珠光沢顔料の代わりに使用できる。このような態様では、随意的にミリング処理を受けた非金属フレークがフレーク生成物となる。特定の一態様では、同フレーク生成物は表面被覆用およびポリマーの大量着色用にガラスフレーク顔料の代わりに使用してよい。同非金属フレークは機能的な性状をも有してよく、また例えば防食性状を与えるものでもよい。
【0121】
他の一態様では、非金属フレークは金属および/あるいは金属化合物で被覆されて、市販されている金属フレーク顔料の経済的な代替物として使用されてよい。このような態様では、随意的にミリング処理を受けた後に金属および/あるいは金属化合物で被覆された非金属フレークがフレーク生成物となる。
【0122】
被覆された非金属フレークは通常型の金属フレークに比べて多くの利点を有する。例えば、同非金属物質は比較的低コストの物質である可能性があり、製造コストの低下につながる。被覆された非金属フレークは金属フレークに比べて典型的には相当低い密度も有しており、その結果、例えばインクあるいは塗料のような流体に適用された場合には沈殿の傾向が遥かに低くなる。更に、同非金属フレークは通常型のフレークに比べてよりシャープな粒径分布を有しているので、その金属的な輝度は上昇する。
【0123】
顔料組成物
本発明の一態様は、本発明のプロセスにより製造された、あるいは製造され得るフレーク生成物、あるいはそれ以外に本明細書内で別記されるフレーク生成物を含有する顔料組成物を提供する。
【0124】
このようにして、本発明はフレーク生成物を含有する顔料組成物を提供し、同フレーク生成物は100μm以下の粒径を有し、また少なくともそれの90質量%の粒径が平均粒径の±25%以内、例えば±10%以内、あるいは±5%以内あるいは±3%以内であるような粒径分布を有する。
【0125】
同顔料組成物はフレーク生成物と顔料キャリアーにより構成される。
【0126】
表面被覆
一態様では、本発明は本明細書で規定される顔料組成物あるいは同じく本明細書で規定されるフレーク生成物を含有する表面被覆材を提供する。
【0127】
同顔料組成物は、表面被覆材(例えばインクあるいは塗料)を製造するために、水、溶剤およびこれらの混合物に溶解あるいは分散された表面被覆バインダーに添加してよい。
【0128】
しかしながら、同表面被覆材中に存在するある種の被覆されたフレークの反応は予想できない場合がある(このことは、フレークがアルミニウムで被覆された場合に特に顕著である)。このような表面被覆材がある程度の濃度で水を含有する場合、貯蔵期間中に反応が起こる可能性があり、その結果、水素ガスが発生しそれによる災害が起こる可能性がある。従って、このような金属および/あるいは金属化合物を上述の方法で不活性化することが望ましい。
【0129】
使用方法
本発明のフレーク生成物は機能的および/あるいはエステティックな目的に適用可能である。一態様では、本発明は本発明のプロセスにより製造された、あるいは製造され得るフレーク生成物、あるいはそれ以外に本明細書内で別記に顔料として規定されるもの(例えば表面被覆用およびポリマーの大量着色用)の使用方法を提供する。後者の目的の場合、フレーク生成物は良好な熱安定性を有することが必要である。
【0130】
フレーク生成物は顔料以外の用途の例として、導電性が要求される用途(例えばEMIの遮蔽)および食品の包装物に有用なガスおよび/あるいは液体の移動に対するバリア性状を与えるための表面被覆材が挙げられる。EMIの遮蔽とは、電気機器の効果的な運転を妨害する可能性がある不要電磁波を遮蔽するための材料(EMI遮蔽剤)としての使用を意味する。典型例は、携帯電話やコンピューターのケースの内側に塗布される被覆材に含有されるニッケル被覆フレークの使用である。
【0131】
従って、本発明は本発明のプロセスにより製造された、あるいは製造され得るフレーク生成物、あるいはそれ以外に本明細書内で別記に規定されるEMIの遮蔽用、あるいは表面被覆材あるいは食品の包装物に対してガスおよび/あるいは液体のバリア性状を与えるフレーク生成物の使用方法をも提供する。
【0132】
微粒子生成物
本発明はフレーク生成物の製造のために使用できると同時に、実質的に球形で非フレーク形状の微粒子の製造にも使用してよい。従って、本発明の更に他の一態様は、以下の工程を包含するインクジェット印刷プロセスも提供する:液体の非金属微粒子前駆体をジェットヘッドから噴射し、生じた液滴を固化処理する工程(i)、同液滴を、固化処理の以前あるいは以降のいずれかの段階で、同前駆体液滴を収集基材の中あるいは上に収集する工程(ii)、および非金属粒子を回収する工程(iii)。
【0133】
非金属フレークおよびフレーク生成物に関するこれまでの開示事項の実質的に全ては非金属で非フレーク形状の微粒子に対しても当てはまる(ただし、インクジェット印刷法が使用されること、および言うまでもないことであるが微粒子生成物はフレーク生成物とはアスペクト比が異なることは別として)。好ましい一実施態様では非フレーク形状の微粒子は球状でありそのアスペクト比は実質的に1である。この実施態様は、ジェットヘッドを用いた印刷法を用いて、粒子が硬質の収集基材に衝突する前に、あるいは粒子を相当に変形させない程度に軟質な収集基材に衝突させる期間中あるいはその後に、あるいは液体中に収集する期間中あるいはその後に、それを固化することによって達成される。液滴を収集基材に接触させる前に固化する場合には、同液滴の飛行経路は比較的長いので(例えば1m以上)、同液滴は表面張力により球状となり、冷却あるいはその他の飛行中に実施される処理により固化する。
【0134】
非金属粒子は印刷された後に本発明に従って非金属フレークを製造するためにミリング処理を受けてよい。このようなフレークは表面被覆プロセスにより処理されてよいし、また前述したように顔料としてあるいは非顔料用途へ適用してよい。
【0135】
他の一態様では、印刷後の非金属粒子はそれの実質的に球形の形状を保持してよい。これらは、知られている全ての球形で非フレーク形状の微粒子生成物と同様な方法により、更には上述の顔料としてあるいは非顔料用途のためと同様な方法により、処理され、被覆され、使用されてよい。
【0136】
本発明は以下の実施例によりより詳細に説明する。これらの実施例において別段の記載がない限り全ての部およびパーセンテージは質量基準である。
【実施例】
【0137】
実施例1
TES40(オルトケイ酸テトラエチルの誘導体(Wacker Chemicals))を3.1μmのナイロンフィルターでろ過した後126個のノズルを装備したインクジェットヘッド(Xaar Inc.のXJ126−200)のインク受け器に入れる。TES液滴は2mmの高さから平坦な研磨されたガラス上に落下させる。同ガラスを約0.3メートル/秒の速度で水平方向に移動させる。液滴生成速度はノズル当たり5kHzまで(すなわち、630,000個/秒まで)であり、またノズルのピッチは137μmである。次いで生成した液滴を水蒸気/アンモニア蒸気の雰囲気にさらしてオルトケイ酸テトラエチル誘導体を溶融しシリカに転化する。これらのシリカフレークを水洗によりガラス基材から分離する(随意的に連続的に)。このようにして収集したフレークをろ過により濃縮して固形分を80質量%含有するペーストを製造する。
【0138】
耐性向上のために、同フレーク粒子を耐熱性の収集基材(例えば研磨された銅膜)上に印刷により生成し、シリカを1000°C超の温度で溶融してガラスを生成してよい。同膜からの分離は機械的操作(随意的に液体の存在下で)で超音波エネルギーの使用あるいは不使用により達成してよい。同フレークを使用して製造した溶剤系塗料は橋梁の被覆において優れたバリア性状を発揮する。
【0139】
同フレークは、よく知られた真空蒸着あるいは無電解メッキによって金属あるいは金属化合物で被覆されて100%金属外観を得てよい。
【0140】
実施例2
黒色のUV硬化性の組成物(Sericol Ltd.のUvispeed Systemに基づく)を3.1μmのナイロンフィルターでろ過した後126個のノズルを装備したインクジェットヘッド(Xaar Inc.のXJ126−200)により乾燥したポリビニルアルコール(British Traders&Shippers Ltd.のHi Selon C200)の剥離層上に印刷する。同剥離層は水溶液から紙上に形成される。次いで、同組成物をUV硬化装置(American UV Company Inc.のLC062T3)により3m/分の移動速度および300ワット/インチの電力の条件下で処理する。得られた平均粒径が約75μmの均一な黒色フレークを水洗により剥離層から分離し、次いでろ過により回収する。これを半透明性で白色の被覆システムに含有させれば、一風変わった魅力的な視覚効果を発揮する。
【0141】
実施例3
蒸留水中に溶解した2%の硝酸ビスマスを硝酸で酸性化した後、5μmのセラミック製フィルターでろ過し、次いで実施例1記載の印刷ヘッドを用いて研磨されたアルミニウム箔上に印刷する。印刷された同液滴を、塩化水素ガスと空気の混合物が吹き込まれている炉内で室温〜400°Cの間の温度勾配にさらす。硝酸ビスマスの酸性化反応により、各液滴内に合成の真珠光沢を有する顔料としての酸塩化ビスマスが生成する。乾燥した同粒子をプロセスから抜き出した後、炭化水素溶剤の存在下で機械的にアルミニウム箔から分離し、ブフナー・フィルター内で収集し濃縮する。このようにして得られた薄膜状のフレークは工業的な塗料としてフォーミュレートされると白色で真珠光沢の効果を発揮する。
【0142】
実施例4
ケイ酸ナトリウム水溶液(シリカとしての濃度:20g/dm)に25%のアンモニア溶液を添加してpHを11に調整した後、5μmのセラミック製フィルターでろ過し、次いで実施例1記載の印刷ヘッドを用いて研磨されたガラス上に印刷する。印刷された同液滴を、塩化水素蒸気が吹き込まれている環状炉内で室温〜200°Cの間の温度勾配にさらす。同ケイ酸ナトリウム水溶液を酸性化することにより、各液滴内にシリカが沈殿し、次いで水を徐々に除去する。その結果得られた個体粒子を水洗により研磨されたガラス基材から分離し、ろ過により回収する。
【0143】
同固体粒子を実施例1記載の方法により金属で被覆してよい。
【0144】
実施例5
以下の混合物をろ過して80μmのノズルを装備したMicrofab社製の印刷ヘッドに添加し、得られた液滴をPTFEの剥離層上に印刷する。
イソプロパノール 45.2質量部
ケイ酸テトラエチル 3.2質量部
40.4質量%の硝酸銅(II)溶液 26.5質量部
同じMicrofab社製の印刷ヘッドにより、25%のアンモニア溶液を用いて最初に形成された液滴上に重ね刷りを実施する。このようにして得られた塩基性触媒の使用により、青色の固体粒子が得られる。
【0145】
実施例6
イソプロパノール、ケイ酸テトラエチルおよび硝酸銅(II)溶液の混合物の液滴を実施例5で使用したMicrofab社製の印刷ヘッドにより生成する。同生成液滴を25%アンモニア水溶液から得られるアンモニア蒸気と水蒸気にさらす。その結果、青色のディスク状固体粒子が得られる。
【0146】
実施例7
UV硬化性エポキシ−アクリル酸塩のインクジェット用インク(粘度:7cPs、UCB Ltd.のアクリル酸塩モノマーEbecrylに基づく)を印刷ヘッド(Xaar Jet 128)に供給して、インクジェットのヘッドに対して1メートル/秒の相対速度で移動するPTFEの収集基材に対して噴射する。ハロゲン電球(H−bulb)装備のランプ(Fusion LightHammer 6)からの紫外線により硬化した液滴(直径:70μm±8μm)を水あるいはアセトン中で超音波の照射により剥離シートから分離する。その結果得られたフレークは随意的にニッケルのフレークであり、水性メッキ溶液によりスズでメッキすることにより140nm厚さの銀色の被覆材でフレーク全表面を被覆する。他の態様では、各フレークをPTFEの収集基材から分離する前にそれの上面および側面をニッケル/スズの被覆材で被覆してよい。
【0147】
実施例8
メチルフェニルポリシロキサンのポリマー溶液(Silicophen 300)をキシレンにより3:1に希釈して粘度を約8cPsにまで低下した後、PTFEの収集基材に対して噴射して50μm厚さ(湿式基準)の膜を形成する。同液滴を230°Cで40分間処理して硬化する。60μm径のフレーク形状に固化した液滴を水あるいはアセトン中で超音波の照射により収集基材から分離する。その結果得られた生成物は非常に高い熱安定性を有しており350°C超の温度に耐えられる。その結果、同生成物を金属化処理すればプラスチックに混合できる。
【0148】
実施例9
固形分を50%含有するUV硬化性触媒(CIT Ltd.)を印刷ヘッド(Xaar Jet 500、180dpi)によりPTFEの剥離層に対して噴射し、ハロゲン電球装備のランプ(Fusion LH6ランプ)により硬化する。固化したブロックを180×180dpiのピッチで印刷し、これらはPTFE基材上で湿分が除去されるので個々の液滴となる。これらの硬化液滴は標準的な銅による金属化条件下で処理を受ける。この工程期間中にこれらの剥離シートからの分離は観察されない。最後に、金属化処理を受けた液滴をアセトン中での超音波の照射により分離する。フレークはPTFE剥離層に付着している間に金属化処理を受けるので、片面のみが反射性となる。更に、基材は濡れ性が無いので上面は液滴側に湾曲する。
【0149】
実施例10
実施例7でUV硬化処理を受けた組成物を印刷ヘッド(Xaar Jet 500、180dpi)により平滑なシリコン基材に対して噴射し、LightHammer 6UV)ランプにより硬化する。生成した硬化液滴は、実施例7でのPTFE剥離層から分離したフレークに比べて湾曲度合いは相当低い。短期間の超音波処理によりシリコン基材から分離された液滴は金属化処理により全面的に銅で被覆されたフレークが得られる。他の態様では、ディスク状のフレークは高輝度の銀色の外観を呈するために銅で被覆された後に全面的にスズで被覆されてよい。このようなフレークは特に被覆材に適している。
【0150】
【表1】

【0151】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程で構成される微粒子生成物を製造するプロセス:
(i) 非金属微粒子の液体前駆体を収集基材の上あるいは中に印刷する工程および
(ii) 同非金属微粒子を回収する工程。
【請求項2】
以下の工程で構成されるフレーク生成物を製造するプロセス:
(i) 非金属フレークの液体前駆体を収集基材の上あるいは中に印刷する工程および
(ii) 同非金属フレークを回収する工程。
【請求項3】
以下の工程で構成されるフレーク生成物を製造するプロセス:
(i) 非金属フレークの液体前駆体を収集基材の上あるいは中に印刷する工程
(ii) 同非金属フレークの前駆体に固化処理を施して非金属フレークを製造する工程および
(iii) 同非金属フレークを回収する工程。
【請求項4】
該印刷工程が沈み彫り印刷、凸版印刷あるいはインクジェット印刷で実施されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
該印刷工程が凸版印刷で実施されることを特徴とする請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
該印刷工程がインクジェット印刷で実施されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
以下の工程で構成されることを特徴とする請求項6に記載のプロセス:
(i) 液体の非金属フレーク前駆体をジェットヘッドから噴射する工程、
(ii) 同非金属フレーク前駆体の液滴を収集基材の中あるいは上に収集する工程および
(iii) 同非金属フレークを回収する工程。
【請求項8】
該非金属フレーク前駆体が固化処理を受けた後に基材の中あるいは上に収集されることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
該非金属フレーク前駆体が基材の中あるいは上に収集された後に固化処理を受けることを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
以下の工程で構成されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載のプロセス:
(i) 液体の非金属フレーク前駆体をジェットヘッドから噴射する工程、
(ii) 同非金属フレーク前駆体の液滴を収集基材上に収集する工程および
(iii) 異なった第二の液体をジェットヘッドから収集された液滴に重ね刷りするために噴射し、それによって複合フレークを製造する工程および
(iv) 同複合フレークを回収する工程。
【請求項11】
以下の工程で構成されることを特徴とする請求項6に記載のプロセス:
(i) 液体の非金属フレーク前駆体をジェットヘッドから噴射する工程、
(ii) 同非金属フレーク前駆体の液滴を収集基材上に収集する工程、
(iii) 同液滴に固化処理を施して非金属フレークを製造する工程および
(iv) 同非金属フレークを回収する工程。
【請求項12】
該非金属フレーク前駆体がゾルゲル、樹脂、ポリマー、樹脂あるいはポリマーの溶液、あるいは硝酸ビスマスであることを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
該非金属フレーク前駆体が有機あるいは無機の着色剤が細かく分散した分散体であることを特徴とする請求項2〜12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
該収集基材が低摩擦係数を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
該収集基材がPTFE、シリコンゴム、金属、ガラスあるいはセラミックの表面、あるいは剥離層を有する基材であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
該収集基材が連続的なベルトあるいはローラーにより運ばれることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
ミリング工程を更に包含することを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
該固化処理が冷却、加熱、UV硬化、水蒸気処理、アンモニア蒸気処理、塩化水素ガス処理あるいはこれらの組み合わせ、あるいはIR硬化、レーザー光線硬化あるいは真空処理であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
該非金属フレークが収集基材から機械的手段により回収されることを特徴とする請求項2〜18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
該非金属フレークが収集基材から回収用液体での洗浄により回収されることを特徴とする請求項2〜18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
該回収用液体が水であることを特徴とする請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
該非金属フレークが実質的に円形の表面を有することを特徴とする請求項2〜21のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
該非金属フレークを金属および/あるいは金属化合物で被覆する工程を更に包含することを特徴とする請求項2〜22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
該金属がアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、金、鉄あるいはそれらの合金であることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
該金属化合物がアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、マンガン、モリブデン、ケイ素およびこれらの2種以上で構成される混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項26】
該金属化合物が酸化物か硫化物であることを特徴とする請求項23あるいは25に記載のプロセス。
【請求項27】
該非金属フレークが被覆工程以前の段階で収集基材から分離されることを特徴とする請求項23〜26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項28】
請求項2〜27のいずれかに記載のプロセスにより製造されたあるいは製造可能なフレーク生成物。
【請求項29】
平均粒径が100μm以下であり、粒径分布が全体の少なくとも90質量%が平均粒径の±25%以内に収まっていることを特徴とするフレーク生成物。
【請求項30】
平均粒径が50μm以下であることを特徴とする請求項29に記載のフレーク生成物。
【請求項31】
平均粒径が10〜30μmであることを特徴とする請求項29あるいは30に記載のフレーク生成物。
【請求項32】
粒径分布が全体の少なくとも95質量%が平均粒径の±25%以内に収まっていることを特徴とする請求項29〜31のいずれかに記載のフレーク生成物。
【請求項33】
粒径分布が全体の少なくとも95質量%が平均粒径の±3%以内に収まっていることを特徴とする請求項29〜32のいずれかに記載のフレーク生成物。
【請求項34】
被覆された非金属フレークであることを特徴とする請求項29〜33のいずれかに記載のフレーク生成物。
【請求項35】
請求項28〜34のいずれかで規定されるフレーク生成物を含有する顔料組成物。
【請求項36】
請求項28〜34のいずれかで規定されるフレーク生成物を含有する表面被覆材。
【請求項37】
請求項28〜34のいずれかで規定されるフレーク生成物を顔料として使用する方法。
【請求項38】
請求項28〜34のいずれかで規定されるフレーク生成物をEMIの遮蔽のために使用する方法。
【請求項39】
請求項28〜34のいずれかで規定されるフレーク生成物を表面被覆材あるいは食品の包装物に対してガスおよび/あるいは液体のバリア性状を与えるために使用する方法。
【請求項40】
以下の工程で構成されることを特徴とする請求項6に記載のプロセス:
(i) 液体の非金属微粒子前駆体をジェットヘッドから噴射し、生じた液滴に固化処理を施す工程、
(ii) 同前駆体液滴を、同固化処理以前あるいは以降の段階で、収集基材の中あるいは上に収集して非金属で非フレーク形状の微粒子を製造する工程および
(iii) 同非金属で非フレーク形状の微粒子を回収する工程。
【請求項41】
該非金属微粒子前駆体がゾルゲル、樹脂、ポリマー、樹脂あるいはポリマーの溶液、あるいは硝酸ビスマスであることを特徴とする請求項40に記載のプロセス。
【請求項42】
該非金属微粒子前駆体が有機あるいは無機の着色剤が細かく分散した分散体であることを特徴とする請求項40あるいは41に記載のプロセス。
【請求項43】
該収集基材が低摩擦係数を有することを特徴とする請求項40〜42のいずれかに記載のプロセス。
【請求項44】
該収集基材がPTFE、シリコンゴム、金属、ガラスあるいはセラミックの表面、あるいは剥離層を有する基材であることを特徴とする請求項40〜43のいずれかに記載のプロセス。
【請求項45】
該収集基材が連続的なベルトあるいはローラーにより運ばれることを特徴とする請求項40〜44のいずれかに記載のプロセス。
【請求項46】
ミリング工程を更に包含することを特徴とする請求項40〜45のいずれかに記載のプロセス。
【請求項47】
該固化処理が冷却、加熱、UV硬化、水蒸気処理、アンモニア蒸気処理、塩化水素ガス処理あるいはこれらの組み合わせ、あるいはIR硬化、レーザー光線硬化あるいは真空処理であることを特徴とする請求項40〜46のいずれかに記載のプロセス。
【請求項48】
該非金属で非フレーク形状の微粒子が収集基材から機械的手段により回収されることを特徴とする請求項40〜47のいずれかに記載のプロセス。
【請求項49】
該非金属で非フレーク形状の微粒子が収集基材から回収用液体での洗浄により回収されることを特徴とする請求項40〜47のいずれかに記載のプロセス。
【請求項50】
該回収用液体が水であることを特徴とする請求項49に記載のプロセス。
【請求項51】
該非金属で非フレーク形状の微粒子を金属および/あるいは金属化合物で被覆する工程を更に包含することを特徴とする請求項40〜50のいずれかに記載のプロセス。
【請求項52】
該金属がアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、金、鉄あるいはそれらの合金であることを特徴とする請求項51に記載のプロセス。
【請求項53】
該金属化合物がアルミニウム、亜鉛、銅、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、マンガン、モリブデン、ケイ素およびこれらの2種以上で構成される混合物からなる群から選ばれることを特徴とする請求項51に記載のプロセス。
【請求項54】
該金属化合物が酸化物か硫化物であることを特徴とする請求項51あるいは53に記載のプロセス。
【請求項55】
該非金属で非フレーク形状の微粒子が被覆工程以前の段階で収集基材から分離されることを特徴とする請求項51〜54のいずれかに記載のプロセス。
【請求項56】
請求項40〜55のいずれかに記載のプロセスにより製造されたあるいは製造可能な非金属で非フレーク形状の微粒子生成物。
【請求項57】
平均粒径が100μm以下であり、粒径分布が全体の少なくとも90質量%が平均粒径の±25%以内に収まっていることを特徴とする請求項56に記載の微粒子生成物。
【請求項58】
平均粒径が50μm以下であることを特徴とする請求項57に記載の微粒子生成物。
【請求項59】
平均粒径が10〜30μmであることを特徴とする請求項57あるいは58に記載の微粒子生成物。
【請求項60】
粒径分布が全体の少なくとも95質量%が平均粒径の±25%以内に収まっていることを特徴とする請求項57〜59のいずれかに記載の微粒子生成物。
【請求項61】
粒径分布が全体の少なくとも95質量%が平均粒径の±3%以内に収まっていることを特徴とする請求項57〜60のいずれかに記載の微粒子生成物。
【請求項62】
被覆された非金属で非フレーク形状の微粒子であることを特徴とする請求項57〜61のいずれかに記載の微粒子生成物。
【請求項63】
請求項56〜62のいずれかで規定される微粒子生成物を含有する顔料組成物。
【請求項64】
請求項56〜62のいずれかで規定される微粒子生成物を含有する表面被覆材。
【請求項65】
請求項56〜62のいずれかで規定される微粒子生成物を顔料として使用する方法。
【請求項66】
請求項56〜62のいずれかで規定される微粒子生成物をEMIの遮蔽のために使用する方法。
【請求項67】
請求項56〜62のいずれかで規定される微粒子生成物を表面被覆材あるいは食品の包装物に対してガスおよび/あるいは液体のバリア性状を与えるために使用する方法。

【公表番号】特表2008−531242(P2008−531242A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553697(P2007−553697)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000365
【国際公開番号】WO2006/082415
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(507259039)ダンウィルコ(1198)リミテッド (3)
【Fターム(参考)】