説明

微粒子生成装置及びマイクロチャネル基板

【課題】簡易迅速に微粒子を生成することが可能な微粒子生成装置を提供する。
【解決手段】 微粒子を生成する微粒子生成装置100であって、複数の原料を少容量で逐次混合する混合部104と、混合後の混合液を所定時間、少容量で逐次反応させるマイクロ反応管106と、混合部104の温度を第1の温度範囲に調節して微粒子のシード粒子生成反応を優先的に進行させる温度調節槽A103と、マイクロ反応管106の温度を第2の温度範囲に調節して微粒子のシード粒子成長反応を優先的に進行させる温度調節槽B105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子及びエマルション生成装置に関し、特に、マイクロリアクタを利用した微粒子及びエマルション生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デイスプレー・フイルム視聴用の後方投影スクリーン・液晶表示用スペーサ・各種照明器具などの光拡散剤やカラムの充填剤、診断薬用の担体などに用いられる重合体微粒子としては、その粒子径が1〜10μmで、かつ均一なものが要求されるが、粒子径がある程度の大きさの微粒子を生成するためには、微粒子生成反応の前半に生成するシード粒子を所望の大きさの粒子に成長させることが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、上記大きさのシリカ微粒子を生成するため、アルコキシランの加水分解によりシリカのシード粒子をまず生成し、その後反応液をアルカリ性に保ちながらアルコキシランを添加し、その加水分解により、生成したシード粒子の表面にシリカを付着させ、シード粒子を成長させることにより、所望の大きさのシリカ微粒子を製造する方法が開示されている。
【0004】
これにより、シード粒子を成長させ、容易に所望の大きさのシリカ微粒子を製造することができるが、シード粒子を生成するシード粒子生成反応の反応温度が、35℃という高温であるため、シード粒子生成反応と、シード粒子成長反応とが同時に進行してしまうため、生成されたシード粒子の粒径にバラツキが生じやすく、粒度のそろったシリカ微粒子を得ることが困難である。
【0005】
上記の問題点を改良する製造方法として、特許文献2には、シード粒子生成反応の反応温度と、シード粒子成長反応の反応温度とをそれぞれの最適温度に制御してシリカ微粒子を製造する方法が開示されている。
具体的には、シード粒子生成反応が優勢的に進行する0〜10℃の低温で一定時間アルコキシランの加水分解を行わせて、シード粒子を生成させ、その後、シード粒子成長反応が優勢に進行する15〜20℃の温度で反応を継続させて所望の大きさのシリカ微粒子を製造する方法が開示されている。
【0006】
これにより、粒度のそろった、所望の大きさのシリカ微粒子を製造することができる。
又、食品、医薬品、化粧品等には、エマルションが広く利用されている。エマルションは、連続相中に分散相として分散される液滴の大きさが均一でないと、不安定となり、品質劣化の原因となる。
液滴の均一なエマルションの製造方法の1つとして、非特許文献1に、マイクロチャネル基板を利用した製造方法が開示されている。
【0007】
ここで、「マイクロチャネル基板」とは、半導体で利用されている微細加工技術(フォトリソグラフィー)により作製された、厚みが0.5mm程度のシリコン基板の主平面上に、μmオーダの大きさ(例えば、長辺が数μ〜数十μm、短辺が数μm程度の矩形)の多数の貫通孔をもつ構造体のことをいい、分散相の液体を、マイクロチャネル基板の貫通孔を介して連続相の液体中に圧入させることにより、サイズのそろった液滴を連続相中に生成させることができる。
【0008】
これにより、均一の大きさの液滴から構成される、安定性に優れたエマルションを作製することができる。
【特許文献1】特公平3−52047号公報
【特許文献2】特開平5−233418号公報
【非特許文献1】SCEJ 37th Autumn Meeting(化学工学会第37回秋季大会,岡山,2005)抄録1314
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示されているシリカ微粒子の製造方法では、反応後の原料液の濃度調整や反応中の昇温速度の制御を正確に行わないと、単分散性のシリカ微粒子を得ることが難しいため、工業規模の大スケールで行う場合に、原料の濃度調整や温度調整の難しさから、単分散性の微粒子が得られにくいという問題がある。
又、上記非特許文献1に開示されているエマルション作製方法では、孔の形状が横長(横の長さが縦の3倍以上)であるため、マイクロチャネル基板の加工精度の問題で、孔毎に寸法差が生じやすく、分散相が全ての孔を均一に通過せず、液滴の生成効率が悪くなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の第1の目的は、連続的に微粒子を生成することが可能な微粒子生成装置を提供することであり、本発明の第2の目的は、液滴の生成効率のよいマイクロチャネル基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の目的を達成するための第1の本発明は、微粒子を連続的に生成する微粒子生成装置であって、複数の原料を連続的に混合する混合部と、混合後の混合液を反応させる反応部と、前記混合部の温度を第1の温度範囲に調節する第1温度調節部と、前記反応部の温度を第2の温度範囲に調節する第2温度調節部とを備える。
本発明の微粒子生成装置は、複数の原料液を連続的に混合して反応を行わせることができるが、原料液の混合は、微少量(例えば、数百μl〜数ml)単位で連続的に行って反応させることが望ましい。
【0012】
これにより、混合部及び反応部における反応を微少量単位で連続的に行わせることができるので、特許文献2に開示されている、大容量単位で反応を行わせる必要のあるバッチ方式による微粒子製造方法に比べ、熱伝達効率が格段に向上し、反応温度を適切な温度に遷移させるのに要する時間を極短時間に制御することができ、最適温度に達しない状態で、反応が長時間進行するのを有効に防止することができる。
【0013】
従って、シリカ微粒子の製造法のように、単分散性の高い微粒子を製造するために、シード粒子生成反応とシード粒子成長反応とをそれぞれの反応の最適温度に正確に制御する必要のあるような微粒子生成工程において、本発明を適用することにより、単分散性にすぐれたシリカ微粒子を連続的に容易に生成することができる。
前記微粒子生成装置は、前記混合液を微少量単位に分割する分割剤を導入する分割剤導入部を備え、前記反応部は所定の長さの微細管から構成され、分割された微少量単位の混合液を、逐次、微細管中へ流通させながら所定時間反応させることとすることができる。
【0014】
これにより、反応液が微少量単位に分割され、管軸方向に流れが発生し、攪拌効率が高められるので、迅速に反応を進行させることができる。
又、第1の目的を達成するための第2の本発明は、微粒子を連続的に生成する微粒子生成装置であって、複数の原料を連続的に混合し、混合液を反応させる第1反応装置ユニットと、反応液に前記複数の原料の内、少なくとも1つを添加し、添加後の反応液を連続的に反応させる第2反応装置ユニットとを備える。
【0015】
第2の本発明は、複数の反応装置ユニットを連結させて、各反応装置ユニットにおいて原料添加を行うことにより、原料を多段階的に添加して、微粒子生成反応を連続的に進行させることを特徴とする。
この構成により、反応装置ユニット毎に、原料濃度を段階的に高めていくことが可能となり、微粒子生成におけるシード粒子生成反応とシード粒子成長反応の進行度合いを効果的に制御することが可能となる。
【0016】
例えば、シリカ微粒子生成においては、原料濃度が高くなるとシード粒子生成反応と成長反応とが複合的に進行しやすくなるが、初期反応の段階の原料濃度を低濃度に調整することにより、成長反応の進行を抑制し、シード粒子生成反応を優先的に進行させ、均一なシード粒子を生成させることができ、その後原料濃度を高めてシード粒子を成長させることにより、単分散性の高いシリカ微粒子を生成することができる。
【0017】
上記構成において、混合すべき原料の供給は、複数のポンプを用いて行うことができるが、ポンプとしては、例えば、脈流の少ないシリンジポンプを用いるのが望ましい。
又、原料の混合は、ミキサーを用いて行うことができるが、混合に用いるミキサーとしては、例えば、背圧の低いスタティックミキサーを用いるのが望ましい。
又、混合液を反応させる反応部としては、チューブを用いることができるが、チューブ内の攪拌効率を高めるため、例えば、コイル状に成形されたチューブを用いることが望ましい。
【0018】
又、前記第1反応装置ユニットは、混合液を微少量単位に分割する分割剤を導入する第1分割剤導入部を有し、前記第2反応装置ユニットは、原料添加後の反応液を微少量単位に分割する分割剤を導入する第2分割剤導入部を有することとしてもよい。
この場合、第1反応装置ユニットにおける反応後、第2反応装置ユニットへ送出する前に、反応液から導入された分割剤を分離除去しておくのが望ましい。
【0019】
これにより、反応液が微少量単位にセグメント化され、各セグメント内における攪拌性を高めることができ、各セグメント内における反応を均一に進行させることができ、結果的に単分散性の高い微粒子が得やすい。
上記第1及び第2の発明は、シード粒子生成工程及びシード粒子成長工程を経て生成される微粒子生成や、ゾルーゲル反応を用いた微粒子生成に適用できる。
【0020】
又、第2の目的を達成するための第3の本発明は、貫通型マイクロチャネル基板を用いた液滴形成において、基板に設けられた、液滴生成用の貫通孔における、液滴のくびれやすさを改善した点に特徴がある。
発明者は、分散相が圧入される貫通孔における、連続相側の開口部周縁の内壁に、くびれ促進面(開口部周縁の内壁の一部に凸部を形成したり、開口部周縁の内壁の一部に分散相に対する濡れ性を低下させる処理をしたりすることにより、形成された面)を形成することにより、横長の貫通孔よりも開口面積を大きくした状態でくびれ性を改善することに成功した。
【0021】
これにより、加工精度の誤差により生じる機能不良の貫通孔が形成される比率を減らすことができ、結果的に液滴の生成効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0022】
第1及び第2の構成の発明により、単分散性の高い微粒子を連続的に生成でき、又、第3の発明の構成により、マイクロチャネル基板を用いた液滴の生成効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
<構成>
(微粒子生成装置の構成)
図1は、本実施の形態1に係る微粒子生成装置100の構成を示す機能ブロック図である。微粒子生成装置100は、ポンプ(P1)101、ポンプ(P2)102、温度調節槽A103、混合部104、温度調節槽B105、マイクロ反応管106、ポンプ107(P3)、分離部108から構成される。
【0024】
(ポンプ101、ポンプ102)
原料A1又は原料A2を連続的に混合部104に送り込む。
ここで用いるポンプとしては、ほぼ一定の流量で連続的に送液することが可能なポンプであればよく、例えば、プランジャーポンプ、ローラポンプ、ダイヤフラムポンプを用いることができる。
【0025】
原料A1、A2は、微粒子生成に用いる原料であり、例えば、シリカ微粒子(ポリオルガノシロキサン微粒子)の生成の場合には、原料A1として、一般式RSi(OR4−nで表されるシリコンアルコキシド水溶液、原料A2として、塩基性触媒(アンモニア水とエタノールの混合溶液)をそれぞれ用い、A1及びA2を混合してシリコンアルコキシドを加水分解、銃縮合させてシリカ微粒子を生成する。
【0026】
上記一般式において、Rは炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0027】
(温度調節槽A103、温度調節槽B105)
槽内に設定温度に調整された熱媒体を流通させることにより、槽内の温度をそれぞれ設定温度に調節する。
例えば、上記のシリカ微粒子の生成の場合には、温度調節槽A103の温度は、槽内の温度を0℃〜10℃の温度範囲内の所定の低温度に調節し、温度調節槽B105は、槽内の温度を15℃〜35℃の温度範囲内の所定の高温度に調節する。
【0028】
これにより、温度調節槽A103内に配置された混合部104の温度を所定の低温度に調節することができるので、原料混合後、混合液が混合部104内を流通する所定時間の間、低温度でシード粒子生成反応を優先的に進行させて、均一な大きさのシード粒子を生成させることができる。
又、混合部104から送出された混合液は、後述するポンプ107から間欠的に流入される分割剤によって微少量単位に分割された後、温度調節槽B105内に配置されたマイクロ反応管106に順次送出されるので、生成されたシード粒子を含む微少量単位の混合液の温度を速やかに所定の高温度に上昇させて、シード粒子成長反応を優先的に進行させ、所望の大きさのシリカ微粒子を連続的に生成させることができる。
【0029】
(混合部104)
ポンプ101、102からそれぞれ送出された原料A1と原料A2を混合する。
例えば、上記のシリカ微粒子の生成の場合には、シリコンアルコキシド水溶液と塩基性触媒とを混合する。
混合部104は、例えば、T形、Y形の合流管とマイクロ反応管106と同様のマイクロ反応管とから構成することができる。合流管の管径は、例えば、後述するマイクロ反応管106の管径と同程度のものを用いることができる。
【0030】
この構成により、ポンプ101、102より送出された原料A1と原料A2を合流管内で混合し、マイクロ反応管の全長の長さを調節することにより、混合された、原料A1と原料A2との混合液を所定時間、マイクロ反応管中において流通させながら、所定の低温でシード粒子生成反応を優先的に進行させることができる。
又、混合部104をマイクロミキサーとマイクロ反応管とから構成することができる。
【0031】
この構成により、ポンプ101、102より送出された原料A1と原料A2をマイクロミキサーで混合し、混合された原料A1と原料A2との混合液をマイクロ反応管中に送出して、上記と同様にマイクロ反応管の全長の長さを調節することにより、混合液を所定時間、マイクロ反応管中において流通させながら、所定の低温でシード粒子生成反応を優先的に進行させることができる。
【0032】
又、混合部104の容量は、微少量(数百μl〜数ml)であるため、混合部104を流通する混合液の温度が、迅速に所望の温度に温度調節される。
ここで、マイクロミキサーとしては、原料を連続的に混合するスタティックミキサーを用いることが望ましい。
又、上記各構成において、マイクロ反応管を含めないこととしてもよい。
【0033】
(マイクロ反応管106)
混合部104で混合された混合液を、マイクロ反応管106の全長に応じた所定の時間、流通させる。
例えば、上記のシリカ微粒子の生成の場合には、所定時間流通させることにより、混合液を所定の高温で反応させ、シード粒子成長反応を優先的に進行させる。
【0034】
コイル状に成形されたチューブから構成され、チューブの材質としては、例えば、ステンレス、ハステロイ、ニッケル、チタンなどの金属製のものや、ポリプロピレン、フッ素などの樹脂製のものを用いることができるが、
反応の状態を視覚的に又は光学的に確認できるように、チューブは、透明性の高いものが望ましい。例えば、フッ素樹脂製チューブの場合には、PFA(パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂)製のものを用いるのが望ましい。
【0035】
マイクロ反応管106の管径は、数十μ〜数mmの範囲であればよいが、特に100μm〜500μmの範囲であることが望ましい。又、マイクロ反応管106の全長は、反応条件に応じて、数十cm〜数十mのものを用いることができる。
ここでは、マイクロ反応管106の形状をコイル状とすることにより、コイルの中心軸方向の長さを短くして、微粒子生成装置100の大きさをコンパクトなものとしているが、マイクロ反応管106の形状は、コイル状に限らず、直線状に延びた形状であってもよいし、波形状であってもよい。
【0036】
又、マイクロ反応管106の形状をコイル状とした場合には、管径方向の攪拌性が高められ、生成される微粒子の単分散性を良好にすることができる。
又、マイクロ反応管106を流通する混合液の容量は、微少量(数百μl〜数ml)であるため、流通する混合液の温度を温度調節槽B105を用いて迅速に所望の温度に温度調節することができる。
【0037】
(ポンプ107)
混合部104より送出された混合液に分割剤を導入することにより、混合液を微少量単位に分割する。
混合部104とマイクロ反応管106とポンプ107との間は、例えば、T字管を用いて接続させることができる。
【0038】
具体的には、混合液を混合部104からマイクロ反応管106へ送出するための主管に対し、分割剤を導入するための導入管をT字状に接続させた構成とすることができる。
又、分割剤は、混合液との混合性がないものであればよく、例えば、空気、窒素、水素や、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
又、混合液が親水性の場合には、へキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの疎水性溶媒を分割剤として用いることができ、混合液が疎水性の場合には、水、メチルアルコール、エチルアルコールなどの親水性溶媒を分割剤として用いることができる。
【0039】
ここで、微少量単位とは、例えば、数μ〜数千μl程度の容量をいう。
図2は、分割剤の導入後のマイクロ反応管106内における、混合液の具体例を示すイメージ図である。
(分離部108)
マイクロ反応管106を流通させた後の混合液から、生成された微粒子を分離する。
【0040】
分離部108として、例えば、ろ過装置、ロータリーエバポレータ、連続遠心機などの分離装置を用いることができる。
このように、実施の形態1に係る微粒子生成装置100では、微少量単位で反応が連続的に進行されるので、反応の過程において、複数の温度調節が必要な場合においても、所望の温度に調整するためのタイムラグを生ずることなく、極短時間で温度調整を行って微粒子生成反応を迅速に進行させることができる。
【0041】
その結果、シリカ微粒子のように、その微粒子製造工程においてシード粒子生成反応の反応温度とシード粒子成長反応の反応温度とを、それぞれの最適温度に厳格に制御する必要のあるような微粒子生成工程において、実施形態1に係る微粒子生成装置100を適用することにより、単分散性にすぐれた微粒子を容易に得ることができる。

(実施の形態2)
<構成>
(微粒子生成装置の構成)
図3は、本実施の形態2に係る微粒子生成装置200の構成を示す。微粒子生成装置200は、ポンプ(P1)301、ポンプ(P2)302、ポンプ(P3)303、混合部304、307、マイクロ反応管305、308、反応液抽出装置306から構成される。
【0042】
(ポンプ301、ポンプ302)
原料A1又は原料A2を連続的に混合部304に送り込む。
ここで用いるポンプとしては、ほぼ一定の流量で連続的に送液することが可能なポンプであればよく、例えば、プランジャーポンプ、ローラポンプ、ダイヤフラムポンプを用いることができる。
【0043】
原料A1、A2は、微粒子生成に用いる原料であり、例えば、シリカ微粒子(ポリオルガノシロキサン微粒子)の生成の場合には、原料A1として、一般式RSi(OR4−nで表されるシリコンアルコキシド水溶液、原料A2として、塩基性触媒(アンモニア水とエタノールの混合溶液)をそれぞれ用い、A1及びA2を混合してシリコンアルコキシドを加水分解、重縮合させて所望の大きさのシリカ微粒子を生成する。
【0044】
上記一般式(I)において、Rは炭素数1〜20のアルキル基、(メタ)アクリロイルオキシ基若しくはエポキシ基を有する炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、Rは炭素数1〜6のアルキル基であって、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0045】
(ポンプ303)
混合部304、307より送出された混合液に分割剤を導入することにより、混合液を微少量単位に分割する。
図3の混合部304とマイクロ反応管305とポンプ303との間、混合部307とマイクロ反応管308とポンプ303との間は、実施の形態1の場合と同様に、例えば、T字管を用いて接続させることができる。
【0046】
又、分割剤は、混合液との混合性がないものであればよく、例えば、空気、窒素、水素や、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
又、混合液が親水性の場合には、へキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの疎水性溶媒を分割剤として用いることができ、混合液が疎水性の場合には、水、メチルアルコール、エチルアルコールなどの親水性溶媒を分割剤として用いることができる。
【0047】
ここで、微少量単位とは、例えば、数μl〜数千μl程度の容量をいう。
(混合部304)
ポンプ101、102からそれぞれ送出された原料A1と原料A2を混合する。
例えば、上記のシリカ微粒子の生成の場合には、シリコンアルコキシド水溶液と塩基性触媒とを混合する。
【0048】
ここでのシリコンアルコキキシドの濃度を、後述する混合部307における濃度より低濃度に調整することにより、シード粒子を生成する段階では、シード粒子の成長反応が進行しないようにコントロールし、均一な大きさのシード粒子を生成させることができ、均一なシード粒子の生成後に、シリカ微粒子生成の原料物質であるシリコンアルコキシドの濃度を高めて、シード粒子の成長反応を優先的に進行させることができる。
【0049】
混合部304としては、例えば、T形、Y形の合流管を用いることとしてもよいし、マイクロミキサーを用いることとしてもよい。
マイクロミキサーとしては、原料を連続的に混合するスタティックミキサーを用いることが望ましい。
(マイクロ反応管305)
コイル状に成形されたチューブから構成され、混合部304で混合された混合液を所定時間反応させる。
【0050】
具体的には、上記所定時間、混合液がマイクロ反応管305中を流通しながら、マイクロ反応管305中に滞留できるようにマイクロ反応管305の全長を設定し、設定した長さのマイクロ反応管305中に混合液を流通させる。
又、実施の形態1と同様に、温度調節槽を用いて、混合部304及びマイクロ反応管305内の温度を0℃〜10℃の範囲の所定の低温に調節することとしてもよい。
【0051】
(分割剤除去部306)
マイクロ反応管305を流通させた後の混合液から、分割剤を除去して、混合部307に送出する。
分割剤除去部306は、例えば、分割剤が気体の場合には、流通後の混合液を貯留するための貯留槽と、分割剤を脱気により除去するための真空ポンプと、脱気後の混合液を混合部307に送出するための送出用ポンプから構成することができる。
【0052】
又、分割剤が疎水性溶媒又は親水性溶媒の場合には、例えば、流通後の混合液を貯留するための貯留槽と、貯留槽内の混合液を攪拌する攪拌装置と、攪拌後に生じる分離相(親水性溶媒相と疎水性溶媒相の分離相)から、分割剤を含まない方の相を抽出して混合部307に送出するための送出用ポンプから構成することができる。
ここで、貯留槽中には、貯留中の反応の進行を抑制するために、所定量の混合液希釈用の溶媒(例えば、原料を溶解させている溶媒)を加えておくものとする。
【0053】
(ポンプ309、ポンプ310)
原料A1又は原料A2を連続的に混合部307に送り込む。
ここで用いるポンプとしては、ほぼ一定の流量で連続的に送液することが可能なポンプであればよく、例えば、プランジャーポンプ、ローラポンプ、ダイヤフラムポンプを用いることができる。
【0054】
ここで、原料A1’は、原料A1と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。又、原料A2についても同様である。
(混合部307)
分割剤除去部306から送出された混合液と、原料A1’と原料A2’とを混合する。
さらに、混合される原料は、何れか1種類のみでもよい。例えば、シリカ微粒子のシード粒子成長反応では、シリコンアルコキシド水溶液のみが混合される。これは、塩基性触媒を原料A2として添加してシリカ微粒子成長反応の反応速度が増大し、不定形のシリカ微粒子の凝集体が生成しやすくなるからである。
【0055】
又、シード粒子成長反応の進行を促進するために、添加するシリコンアルコキシドの濃度は、混合部304におけるシリコンアルコキシドの濃度よりも高濃度とする。
混合部307としては、例えば、T形、Y形の合流管を用いることとしてもよいし、マイクロミキサーを用いることとしてもよい。
マイクロミキサーとしては、原料を連続的に混合するスタティックミキサーを用いることが望ましい。
【0056】
(マイクロ反応管308)
コイル状に成形されたチューブから構成され、混合部307で混合された混合液を所定時間反応させる。
具体的には、上記所定時間、混合液がマイクロ反応管308中を流通しながら、マイクロ反応管308中に滞留できるようにマイクロ反応管305の全長を設定し、設定した長さのマイクロ反応管308中に混合液を流通させる。
【0057】
又、実施の形態1と同様に、温度調節槽を用いて、混合部307及びマイクロ反応管308内の温度を15℃〜35℃の範囲の所定の高温に調節することとしてもよい。
以後、分割剤除去部306によって、分割剤を除去した後、同様の操作、すなわち、混合部307で混合液と原料A1’、原料A2’( シリカ微粒子の粒子成長反応では、原料A1(シリコンアルコキシド水溶液)のみ)を混合し、ポンプ303を介して分割剤を導入して、混合液を微少量単位に分割し、シリカ微粒子の粒子成長反応をマイクロ反応管308中において実行させる操作を繰り返し、生成されたシリカ微粒子を分離部309で分離する。
【0058】
分離部309として、例えば、ろ過装置、ロータリーエバポレータ、連続遠心機などの分離装置を用いることができる。
本実施の形態2では、上記操作の繰り返しを1回としたが、生成しようとする微粒子の大きさに応じて、上記操作の繰り返し回数を複数回数とすることとしてもよい。
このように、実施の形態2に係る微粒子生成装置200では、シード粒子生成のために最適な原料濃度条件とシード粒子成長のために最適な原料濃度条件とを切り替えながら、微少量単位で連続的に反応を進行させることができるので、均一な大きさのシード粒子をベースとした粒子成長反応を行わせることができ、単分散性の高い、均一な微粒子を生成することができる。
【0059】
(実施の形態3)
<構成>
図4は、本実施の形態3に係る液適生成装置400の構成を示す。液適生成装置400は、ポンプ401、分散相供給装置402、混合槽403、マイクロチャネル基板404、エマルション貯留槽405から構成される。
【0060】
(ポンプ401)
連続相を連続的に混合槽403に送り込む。
連続相としては、親油性成分又は親水性成分を用いることができる。
ここで用いるポンプとしては、ほぼ一定の流量で連続的に送液することが可能なポンプであればよく、例えば、プランジャーポンプ、ローラポンプ、ダイヤフラムポンプを用いることができる。
【0061】
(分散相供給装置402)
分散相を加圧して混合槽403に送り込み、マイクロチャネル基板404の貫通孔に圧入させる。
連続相が親油性成分である場合には、親水性成分を分散相として用い、連続相が親水性成分である場合には、親油性成分を分散相として用いる。
【0062】
分散相供給装置402として、例えばリザーバを用い、リザーバに分散相となる液を貯留し、所定の高さから分散相を送出することにより、分散相を加圧して混合槽403に送り込むことができる。
又、ポンプを用いて加圧して送出することとしてもよい。
(混合槽403)
マイクロチャネル基板404によって上下二層に仕切られ、上層には、連続相となる原料液が流され、下層には、分散相となる原料液が流される。
【0063】
分散相供給装置402から下層に圧入された分散相は、マイクロチャネル基板404に設けられた貫通孔を通って上層に流出され、連続相と混合されることにより、連続相内で液滴となり、エマルションが生成される。
生成されたエマルションは、混合槽403からエマルション貯留槽405に送出される。
【0064】
(マイクロチャネル基板404)
主平面間を貫通し、開口部が凹部を有する円形状の、複数のμmオーダの大きさの貫通孔を有する、厚みが数百μm〜数mm程度のシリコン基板から構成され、各貫通孔を介して分散相が連続相中に圧入されることにより、エマルションの液滴を生成する。
上記のように、開口部を、凹部を有する形状とするために、貫通孔の周縁の内壁には凸部が形成されている。
【0065】
図5(a)は、マイクロチャネル基板404の外観を示す斜視図であり、図5(b)は、マイクロチャネル基板404の主平面間を貫通する貫通孔501の全体形状を示す図である。
ここでは、貫通孔501の開口部の形状を、凹部を有する円形状としたが、凹部を有する形状であれば、円形状に限らず、例えば、矩形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0066】
又、凹部の数(すなわち、貫通孔の周縁の内壁における凸部の数)は、1つに限らず複数であってもよい。
又、上記凸部は、図5に示すように貫通孔501における分散相の入口側から出口側まで一定の形状であってもよいし、途中で変化する形状であってもよいし、出口側付近の内壁にのみ一定の形状の凸部を形成し、それ以外の領域の内壁には凸部を形成しないこととしてもよい。
【0067】
マイクロチャネル基板404は、以下のようにして作成する。
最初にフォトレジストグラフィにより、シリコン基板上に所望形状のフォトレジストパターンを形成する。
具体的には、シリコン基板にアルミを蒸着後、フォトレジストを塗布し、所望形状のマスクで覆い、紫外線露光し、現像後、シリコン基板上に所望形状のフォトレジストパターンを形成する。
【0068】
次に、プラズマエッチングにより所望形状の貫通孔を形成し、さらに貫通孔形成後のシリコン基板の各表面を熱酸化して酸化膜(SiO2)を形成して、マイクロチャネル基板404を作成する。
(エマルション貯留槽405)
混合槽403より送入されたエマルションを貯留する。
【0069】
(実施形態4)
本実施形態は、高速液体クロマトグラフィー用の充填剤製造に上記プラントを適用した例について説明する。
まず。現行のLCよりも更に高速分析を実現しようとすると、分離した情報が視覚化されるクロマトグラム上で分離した物質固有の情報を示すピークが、後端部分でテーリングを起こさないきれいな形状になることが極めて重要である。このテーリングは、エンドキャッピングが不十分もしくは粒子間で不均一的に行なわれている場合に発生する現象であり、逆相分離の場合、疎水性相互作用の相互作用とは異なるイオン的、親水的な相互作用に基づいて生じると言われている。
【0070】
このようなテーリングが発生すると、短い時間間隔の間に複数の物質が分離されるときには、更に、大きな問題となる。エンドキャッピングするシリカの表面には、オクタデシル基のような分子サイズの大きなリガンドが結合している。その根元付近にシラノール基が存在している。
このことから、反応時には、オクタデシル基が物理的に反応を阻害することになる。表面付近であれば、エンドキャッピング剤は比較的容易にシラノールと反応できることになるが、多孔部分になると分子の拡散がいっそうしにくくなり反応性は低下することになる。ましてや、オクタデシル基の反応方法がポリメリック反応であるとオクタデシルシランのネットワークがシリカ表面を覆うことになるので、いっそう物理的に反応を阻害することになる。
【0071】
これまで、この問題に対しては、いくつかの考え方、工夫があった。・オクタデシル基の導入率を下げて物理的な障害を少なくしてエンドキャッピングを施す工夫、・シラノールとエンドキャッピング剤との反応性を高める工夫、・残存シラノールを物理的に覆うという工夫などがあった。
次世代の超高速液体クロマトグラフィーへの適用を考えた場合、現在のエンドキャッピングの手法では、根本解決に至らない。残存シラノールが存在しピークがテーリングすると秒単位、分単位で物質を特定する分析の場合、分離した物質のピーク同士の間隔が小さいことから、ピークが重なり合う可能性が高くなり、定量性を損ない兼ねないからである。
【0072】
この一方、簡単にもっとも巧くエンドキャッピングできると考えられる、エンドキャッピング剤を気化させて気相反応させる手法も適用することも想定できるが、気相反応では、最適条件として250℃前後の高温下にて行うことから、初めに導入していたオクタデシル基が離脱してしまうという問題、ベースとなるシリカ自体をハイブリッドとした場合には、シリカ骨格の有機基が離脱して骨格が破壊するという問題など均質な信頼のある製品を造る上で大きな問題が残る。このようになると秒単位、分単位で物質を特定する分析において、やはり再現が得られない結果を招く。
【0073】
本実施形態によれば、残存シラノールを有する微粒子を分散した溶液と、エンドキャッピング剤とを常温制御のミキサにて混合し、これをセグメント化した後、所定温度(たとえば100度)に温度制御した反応チューブ内を流通させることで、セグメントという微小反応僧中で攪拌を行いつつ反応させうるので、高度なエンドキャッピングを実現することが可能となる。
<補足>
以上、本発明の実施形態1〜3について説明したが、本発明はこれら実施形態に限られないことは勿論である。
【0074】
(1)本実施の形態1及び2に係る微粒子生成装置は、使用する原料を選択することにより、シリカ微粒子に限らず種々の微粒子の生成に利用できる。
例えば、酸化チタン、酸化亜鉛などの各種酸化物の微粒子、金、銀、コバルトなどの金属の微粒子、ユウロピウムのような蛍光微粒子、有機化合物の微粒子の生成に利用できる。
【0075】
(2)本実施の形態1及び2において、反応の進行中における生成微粒子の凝集を防止するため、微粒子生成の原料に加え、凝集防止剤を加えて微粒子生成反応を進行させることとしてもよい。
(3)本実施の形態1におけるシリカ微粒子の生成の場合には、温度調節槽A103の温度を0℃〜10℃の温度範囲内の所定の低温度に調節し、温度調節槽B105の温度を15℃〜35℃の温度範囲内の所定の高温度に調節することとしたが、各温度調節槽における温度範囲は、上記の温度範囲に限定されず、生成する微粒子の種類に応じて変更することができる。例えば、生成する微粒子の種類によっては、温度調節槽A103における温度範囲を温度調節槽B105における温度範囲よりも高温に設定することとしてもよい。
【0076】
(4)本実施の形態1及び2においては、原料の混合液を反応させるための反応容器として、マイクロ反応管を用いたが、マイクロ反応管以外の反応容器、例えば、シリコン基板にY字形の溝(流路幅数十〜数百μm、深さ数百μmの溝)を有する、大きさが数mm〜数十mmオーダーのマイクロリアクターチップを用いることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本実施の形態1に係る微粒子生成装置100の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】分割剤の導入後のマイクロ反応管106内における、混合液の具体例を示すイメージ図である。
【図3】本実施の形態2に係る微粒子生成装置200の構成を示す。
【図4】本実施の形態3に係る液適生成装置400の構成を示す。
【図5】マイクロチャネル基板404の構成を示す。
【符号の説明】
【0078】
101、102、107、301、302、303、309、310、401 ポンプ
103 温度調節槽A
104、304、307 混合部
105 温度調節槽B
106、305、308 マイクロ反応管
108 分離部
306 分割剤除去部
402 分散相供給装置
403 混合槽
404 マイクロチャネル基板
405 エマルション貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子を連続的に生成する生成装置であって、
複数の原料を連続的に混合する混合部と、
混合後の混合液を反応させる反応部と、
前記混合部の温度を第1の温度範囲に調節する第1温度調節部と、
前記反応部の温度を第2の温度範囲に調節する第2温度調節部と
を備えることを特徴とする微粒子生成装置。
【請求項2】
微粒子を連続的に生成する微粒子生成装置であって、
複数の原料を連続的に混合し、混合液を反応させる第1反応装置ユニットと、
反応液に前記複数の原料の内、少なくとも1つを添加し、添加後の反応液を連続的に反応させる第2反応装置ユニットと、
を備えることを特徴とする微粒子生成装置。
【請求項3】
基板の両主平面間を貫通する複数の貫通孔を有し、前記各貫通孔を介して分散相を形成する原料となる流体を連続相中に圧入させることによりエマルションを生成することが可能な貫通型マイクロチャネル基板であって、
前記各貫通孔における、連続相側の開口部周縁の内壁に少なくとも1つの液滴くびれ促進面を有する
ことを特徴とする貫通型マイクロチャネル基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−204298(P2007−204298A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23610(P2006−23610)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390024442)株式会社ワイエムシィ (22)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】