説明

微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法

【課題】微粒子をそのまま成膜に用いることができ、成膜の際に物理的あるいは化学的損傷を与えない安全な成膜ができ、微粒子膜の成膜前あるいは後に必要なパターニングやエッチング工程を施さなくてもよく、広範囲にわたり短時間で所定の膜厚の分布を有する微粒子膜を形成することが可能な微粒子膜形成装置を提供する。
【解決手段】微粒子膜形成装置によれば、成膜基板の上方で広がり微粒子が通過する開口5aが所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体1と、マスク構造体1を囲む枠基板10と、枠基板10に重なりマスク構造体1に対応した所定の領域のみに微粒子が所定量分布するように微粒子を供給する窓が形成された蓋基板と、枠基板10からマスク構造体1を往復動可能にし、開口5aから微粒子をふるい落として成膜基板上に堆積させるアクチュエータ3とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜基板上に微粒子膜の薄膜を形成する薄膜の技術分野に関し、マイクロマシニング技術を用いて実現する微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシニングまたはMEMS(Micro−Electro−Mechanical−Systems)技術を用いた3次元デバイスが注目されている。本技術では、高アスペクトの3次元構造、中空構造、可変構造などが容易に製作可能なため、安価なシリコン基板上に低コストで高機能・高性能なセンサー、アクチュエータ、バイオメディカルデバイス、光デバイス、高周波デバイス、流体デバイスなどの様々な斬新なデバイスが提案され、実現されつつある。
【0003】
なお、近年ではマイクロあるいはナノスケールの微粒子の物理的、化学的性質を応用するデバイスに関する研究開発も盛んに行われている。そのマイクロあるいはナノスケールの微粒子を扱う手段としてMEMS技術の応用が期待されている。特に、可動部を持つアクチュエータ技術をマイクロあるいはナノスケールの微粒子のハンドリング、塗布、加工などに応用する高性能なマイクロツール分野における期待は大きい。また、そのアクチュエータ技術は高周波デバイス、発電デバイス、流体デバイスなどの他分野にも幅広く応用可能であり、各々のデバイスの高機能・高性能化、低コスト化、小型化につながると期待されている。
【0004】
上述の微粒子は成膜基板などに膜として均一に堆積された後、パターニングを行い、微粒子膜の形状を形成する。その微粒子膜は一般的に微粒子を基板上に吐出する形成方法を用いる。特に、均一な膜厚を持つ微粒子膜を得るための形成方法及び装置が提案されている。例えば、特許文献1には、均一な微粒子被膜を形成するため用いるエアロゾル吐出ノズル及び被膜形成装置(以下、第1従来例という)が開示されている。
【0005】
第1従来例に係る微粒子膜の形成方法は、原料液の微粒子をガス中に分散させ、エアロゾル状態にし、ノズルを用いてエアロゾルを基板に向けて吐出する。矩形形状の吐出開口部を有するエアロゾル吐出ノズルを用いるとノズルから吐出されるエアロゾル中の微粒子の速度は吐出開口部の中央付近に比べて吐出開口部長辺の両端部のほうが遅い。基板上において衝突する微粒子の速度が遅い部分では、堆積物である粒子の密度が上がらず、機械的強度が少なくなるため、被膜の均一性が損なわれるが、エアロゾルノズルの内において吐出開口部長辺の両端部を通過する微粒子が基板上の成膜部に向かない方向に変向して吐出させる逃がし穴を設けることで長期間にわたり安定して緻密で均一な被膜が可能になる。
【0006】
また、特許文献2も微粒子材料の薄膜の作成方法と作成装置(以下、第2従来例という)について開示している。第2従来例に係る微粒子膜の形成は、スプレー法を用いる。従来のスプレー法では、成膜レートが低いため成膜時間がかかる、成膜した表面の粗さが大きい、膜厚分布が均一ではないなどという問題がある。その問題を第2従来例では成膜する微粒子を含有した原料液をエアロゾル化し、エアロゾルを加熱して、基板上に堆積させて薄膜を形成することにより解決している。スプレーされたエアロゾルは基板方向に流すキャリアガスあるいはエアロゾルと基板との間に電位差を生じさせることにより基板まで搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−29977号公報
【特許文献2】特開2004−160388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の第1の従来例に係るスプレー式の微粒子膜の形成方法は成膜する微粒子をガス中に分散させ、エアロゾル状態にし、ノズルを用いてエアロゾルを基板に向けて吐出する。そのためアルゴン、窒素またはヘリウムなどの不活性ガスの使用が不可欠であり、ガスと微粒子との混合状態を作るための装置やエアロゾルを吐出するための加圧機構なども必要になり、微粒子膜の成膜コストが高くなる。また、ガスとの混合状態や加圧により微粒子は物理的あるいは化学的損傷を受ける可能性があった。
【0009】
また、エアロゾルノズルの内において吐出開口部長辺の両端部を通過する微粒子が基板上の成膜部に向かない方向に変向して吐出させるため設けた逃がし穴から吐出される微粒子の除外方法については不明であり、逃がし穴から吐出された微粒子が回収されない可能性もあるなど、さらなる成膜のコストアップや環境的な問題点もあった。
【0010】
また、エアロゾル状態を用いるため、吐出可能な微粒子の大きさが0.1μm〜2μmで限定され、それより大きい微粒子による微粒子膜の成膜や厚膜の微粒子膜の形成ができない問題があった。
【0011】
また、エアロゾルノズルを用いて微粒子膜を形成するため、大面積の微粒子膜を短時間で形成することが難しかった。
【0012】
また、デバイスの機能膜として必要な機能を持たせるため、広い範囲にわたり膜厚の分布を有する微粒子膜のパターンを形成する必要がある。その場合は膜厚が均一であるため、微粒子膜の成膜後、レジストによるパターニングとエッチング工程、レジストを除去する工程が必要になる。あるいは微粒子膜の成膜前にハードマスク材を成膜し、レジストを用いてハードマスク材のパターニングとエッチングを行い、レジストを除去する工程を施す必要があった。
【0013】
上述の第2の従来例に係るスプレー式の微粒子膜の形成方法は成膜する微粒子を含有した溶媒からなる原料液を用意し、その原料液をエアロゾル化し、エアロゾルを加熱して基板上に堆積する。そのため、原料液の用意や加熱機構などが必要になり、微粒子膜の成膜コストが高くなる。また、第1従来例と同様、溶媒や加熱処理などにより微粒子は物理的あるいは化学的損傷を受ける可能性があった。
【0014】
また、膜厚を均一にするため原料液をエアロゾル状態で吐出するノズルから成膜する基板までエアロゾルの搬送の際にキャリアガスあるいはエアロゾルと基板との間に電位差を生じさせるなどの手段を用いる。そのため、キャリアガスを流す手段や電圧を印加する手段などが必要になり、成膜コストがさらに高くなる問題があった。
【0015】
また、微粒子を溶媒に分散させる必要があるため、成膜可能な微粒子の粒子径は0.1μm以下の超微粒子に限定され、それより大きい微粒子による微粒子膜の成膜や厚膜の微粒子膜の形成ができない問題があった。
【0016】
また、ノズルを用いて超微粒子膜を吐出するため、大面積の微粒子膜を短時間で形成することが難しかった。
【0017】
また、デバイスの機能膜として必要な機能を持たせるため、広い範囲にわたり膜厚の分布を有する微粒子膜のパターンを形成する必要がある。その場合は第1従来例と同様、膜厚が均一であるため、微粒子膜の成膜後、レジストによるパターニングとエッチング工程、レジストを除去する工程が必要になる。あるいは微粒子膜の成膜前にハードマスク材を成膜し、レジストを用いてハードマスク材のパターニングとエッチングを行い、レジストを除去する工程を施す必要があった。
【0018】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、微粒子をそのまま成膜に用いることができ、成膜の際に物理的あるいは化学的損傷を与えない安全な成膜ができ、微粒子膜の成膜前あるいは後に必要なパターニングやエッチング工程を施さなくてもよく、広範囲にわたり短時間で所定の膜厚の分布を有する微粒子膜を形成することが可能な微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明に係る微粒子膜形成装置は、固体原材料の微粒子を成膜基板の上に所定の形状及び所定の厚さに堆積させて成膜基板上に微粒子膜を形成する微粒子膜形成装置であり、成膜基板の上方で広がり微粒子が通過する開口が所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体と、マスク構造体を囲む枠基板と、枠基板に重なりマスク構造体に対応した所定の領域のみに微粒子が所定量分布するように微粒子を供給する窓が形成された蓋基板と、枠基板からマスク構造体を往復動可能にし、開口から微粒子をふるい落として成膜基板上に堆積させるアクチュエータと、を備えたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る微粒子膜形成方法は、固体原材料の微粒子を成膜基板の上に所定の形状及び所定の厚さに堆積させて成膜基板上に微粒子膜を形成する微粒子膜形成方法であり、微粒子が通過する開口が所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体を成膜基板の上方に広がるように配置し、枠基板に重なる蓋基板に形成された窓からマスク構造体に対応した所定の領域のみに微粒子が所定量分布するよう微粒子を供給し、アクチュエータでマスク構造体を成膜基板に対して往復動させて微粒子をマスク構造体の開口からふるい落として成膜基板の上に堆積させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
従って、本発明に係る微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法によれば、微粒子が通過する開口が所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体を成膜基板の上方に広がるように配置し、枠基板に重なる蓋基板に形成された窓からマスク構造体に対応した所定の領域のみに微粒子が所定量分布するよう微粒子を供給し、アクチュエータでマスク構造体を成膜基板に対して往復動させて微粒子をマスク構造体の開口からふるい落として成膜基板の上に堆積させるので、微粒子をそのまま成膜に用いることができ、成膜の際に物理的あるいは化学的損傷を与えない安全な成膜ができるとともに、微粒子膜の成膜前あるいは後に必要なパターニングやエッチング工程を施さなくても広い範囲にわたり短時間で所定の膜厚の分布を有する微粒子膜の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る微粒子膜形成装置の模式的な断面図である。
【図2】図2は、実施の形態1の枠基板の要部斜視図である。
【図3】図3は、アクチュエータを駆動・制御するための制御回路及び配線を示す模式的な電機回路図である。
【図4】図4は、実施の形態1の基板重合体の詳細を示す図であり、図4の(a)は図5の(a)のA−A線に沿う矢視断面図である。図4の(b)は図2の枠基板に蓋基板を重ねた状態の図2のB−B線に沿う矢視断面図である。
【図5】図5は、マスク構造体に穿孔された開口とこの開口を通過することにより成膜基板上面に堆積した微粒子の分布を示す図であり、図5の(a)は、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。図5の(b)は、マスク構造体の開口群を通過した微粒子が成膜基板上に堆積した様子を示す側面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2に係る微粒子膜形成装置のマスク構造体を示す図であり、図6の(a)は、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。図6の(b)は、図6の(a)のB部分の1個のマスク構造体片の拡大図である。図6の(c)は、図6の(a)のC部分において蓋基板の下にある枠基板部分のみの様子を示す上面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態3に係る微粒子膜形成装置のマスク構造体を示す図であり、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態4に係る微粒子膜形成装置のマスク構造体に穿孔された開口とこの開口を通過することにより成膜基板上面に堆積した微粒子の分布を示す図であり、図8の(a)は、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。図8の(b)は、マスク構造体1の開口群を通過した微粒子が成膜基板上に堆積した様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明にかかる微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0024】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る微粒子膜形成装置の模式的な断面図である。図2は、実施の形態1の枠基板の要部斜視図である。図3は、アクチュエータを駆動・制御するための制御回路及び配線を示す模式的な電機回路図である。図4は、実施の形態1の基板重合体の詳細を示す図であり、図4の(a)は図5の(a)のA−A線に沿う矢視断面図である。図4の(b)は図2の枠基板10に蓋基板20を重ねた状態の図2のB−B線に沿う矢視断面図である。図2のB−B線は枠基板10に固定されているアンカー4の中央部を横切る。図5は、マスク構造体に穿孔された開口とこの開口を通過することにより成膜基板上面に堆積した微粒子の分布を示す図であり、図5の(a)は、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。図5の(b)は、マスク構造体1の開口群を通過した微粒子が成膜基板上に堆積した様子を示す側面図である。
【0025】
図1において、実施の形態1に係る微粒子膜形成装置100は、固体原材料の微粒子30を成膜基板40の上に所定の形状及び所定の厚さに堆積させて微粒子膜を形成する。微粒子膜形成装置100は、概略箱状の筐体90を有し、筐体90の内部に枠基板10とこれに重なる蓋基板20からなる基板重合体80を装備している。枠基板10と蓋基板20との接合は高分子による低温接合法を用いて接合されている。基板重合体80は、筐体90の高さ方向所定位置に基板固定用ホルダ95により支持されている。
【0026】
基板重合体80の上方には、容器35に蓄えられた固体原材料の微粒子30が配置されている。容器35は底に向かって幅を小さくする錐形状を成し、底部は左右に移動可能なシャッター60により開閉可能となっている。一方、基板重合体80の下方には、成膜基板支持構造70により支持された成膜基板40が配置されている。成膜基板支持構造70は、成膜基板40を基板重合体80に対して前後上下移動することができるようにされている。
【0027】
図2において、枠基板10及び蓋基板20は半導体工程装置を用いて加工可能な、例えばシリコン基板を用いて作製されている。枠基板10の中央部に形成された四角大口径の開口部のなかに中空構造のマスク構造体1が配置されている。マスク構造体1には、微粒子が通過する開口が所定の配列で複数穿孔され、メッシュ状の開口群5が形成されている。マスク構造体1は、枠基板10の四角大口径の開口部空間中にアンカー4で保持されて中空構造となっている。
【0028】
マスク構造体1は、枠基板10の中央部に形成された四角大口径の開口部の内部の4辺の内縁にそれぞれ設けられた静電式のアクチュエータ3により可動される。アクチュエータ3と、マスク構造体1との間は、両端部をアンカー4で連結支持された板バネ2により連結されている。アクチュエータ3は、アクチュエータ固定部3aとアクチュエータ可動部3bとから構成され、マスク構造体1を枠基板10から水平方向(成膜基板40の主面に沿った方向)に往復動可能にする。この構造により、マスク構造体1は、アクチュエータ3により往復動して、開口群5から微粒子30を成膜基板40上にふるい落とす。
【0029】
枠基板10及び蓋基板20は半導体工程装置を用いて加工可能な、例えばシリコン基板を用いて作製されている。また、枠基板10と蓋基板20の接合には、接合時、熱や応力などにより材料や構造体が変形されるなどの影響を与えない方法、例えば高分子による低温接合法を用いる。
【0030】
図3において、アクチュエータ3は、静電式アクチュエータであり、制御回路50と配線50a、50b、50c、50dで電気的に接続されており、制御回路50により各々のアクチュエータ3に印加する電圧の大きさ、電圧の印加順番などを制御することで各々のアクチュエータ3の動作速度、動作順番などの動作を、メッシュ状の開口群5を持つマスク構造体1の動作が最適化するよう調整でき、設計とおりの微粒子膜の分布を得ることができる。なお、制御回路50は枠基板10に集積化し、一体化して備えてもよいし、微粒子膜形成装置100の外側に備えてもよい。
【0031】
図4及び図5において、枠基板10は、マスク構造体1のメッシュ状の開口群5の外周輪郭形状に対応する部分のみが窓(開口)20aとなっている蓋基板20と重ねて接合されている。これにより、成膜される微粒子30が、アクチュエータ3や板バネ2の部分に落ちてマスク構造体1の動作を妨げることが無く、マスク構造体1の開口群5の上のみに載るように落下する。即ち、図5の(a)の上面図においては、枠基板10と蓋基板20との基板重合体80を上方(蓋基板20側)から見ると枠基板10は、メッシュ状の開口群5の部分だけが見えるように窓(開口)20aが開口されている。
【0032】
図5において、マスク構造体1の開口群5は、3列に並ぶ微細な開口5aが中央で交わり概略十字形を成すメッシュ状となっている。開口5aは先端に向かう程小さな開口となっており、そのため3列に並ぶ開口5aは、先端に向かう程幅が狭くしてならび、開口群5全体としては十字の星形のような形状を成している。開口5aは中央で最も大きく周囲に向かって徐々に小さくなるので、微粒子30はこれに対応して、中央部において大きな粒の微粒子30が堆積し、周辺部において小さな粒の微粒子30が堆積する。上述のように、蓋基板20に形成された窓20aは、マスク構造体1のメッシュ状の開口群5の輪郭に対応する部分のみが開口となる形状をしている。つまり、本実施の形態においては、蓋基板20に形成された窓20aは、開口群5全体の十字の星形の輪郭形状の穴となっている。
【0033】
本実施の形態の微粒子膜形成装置100によれば、容器35に入っている微粒子30はスライド移動するシャッター60の開閉により、メッシュ状の開口群5を持つマスク構造体1の上に敵量が落ちる。その後、制御回路50からの制御信号によりアクチュエータ3が最適化された往復動作を行い、微粒子30を成膜基板40上にふるい落とす。これにより微粒子30は成膜基板40の上に所定の粒大きさの分布でかつ所定の膜厚の分布を持つ微粒子膜を形成する。
【0034】
また、成膜基板支持構造70は、成膜基板40を基板重合体80に対して前後上下移動させて、マスク構造体1との距離を最適化したり、成膜基板40がマスク構造体1に対して最適な動作をするようにアクチュエータ3の動作とともに連動して制御される。
【0035】
本実施の形態の微粒子膜形成装置100によれば、成膜基板40の上方で広がり微粒子30が通過する開口5aが所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体1と、マスク構造体1を囲む枠基板10と、枠基板10に重なりマスク構造体1に対応した所定の領域のみに微粒子30が所定量分布するように微粒子30の供給領域を制限する窓20aが形成された蓋基板20と、枠基板10からマスク構造体1を往復動可能にし、開口5aから微粒子30をふるい落として成膜基板40上に堆積させるアクチュエータ3とを備えている。マスク構造体1の開口5aは、メッシュ状に複数穿孔されており開口群5を形成している。
【0036】
そして、本実施の形態の微粒子膜形成方法によれば、微粒子30が通過する開口5aが所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体1を成膜基板40の上方に広がるように配置し、枠基板10に重なる蓋基板20に形成された窓20aからマスク構造体1に対応した所定の領域のみに微粒子30が所定量分布するよう微粒子30を供給し、アクチュエータ3でマスク構造体1を成膜基板40に対して往復動させて微粒子30をマスク構造体1の開口5aからふるい落として成膜基板40の上に堆積させる。
【0037】
本実施の形態では、枠基板10は単一のシリコン基板であるが、複数のシリコン基板を接合して中空構造(枠構造)を作製してもよい。また、枠基板10と蓋基板20との間隔d(図4)は微粒子30が入り込んで誤動作の原因とないように成膜に用いる微粒子30の最小直径より小さくすることが望ましい。
【0038】
成膜できる微粒子の最大大きさはメッシュの開口5aの大きさにより決まり、成膜する微粒子膜の膜厚の分布に合わせて開口5aの大きさの分布を設計する。例えば、開口5a分布が図5(a)の場合、図5(b)に示すように、成膜基板40に成膜された微粒子30でなる微粒子膜は基板の中央部が厚く、基板の端のほうが薄くなる膜厚の分布を有するものとなる。即ち、同じ成膜時間に対して大きさが大きい開口5aからは多様な大きさを有する微粒子が通り抜けるが、大きさが小さい開口5aからは大きさが小さい微粒子のみが通り抜けるため、膜厚に分布が生じる。
【0039】
なお、メッシュ状の開口を持つマスク構造体1のメッシュの大きさ及び形状の分布がそれぞれ異なる複数の基板重合体80を用意して、基板重合体80を1枚ずつ入れ替えながら一枚の成膜基板40上に微粒子膜を複数回堆積させて形成することで複雑な膜厚の分布を有する微粒子膜を形成することもできる。
【0040】
また、本実施の形態に係わる微粒子膜形成装置100によれば、微粒子膜の形成だけではなく、例えば成膜基板40の代わりに微粒子30を溜める容器を置き、互いに大きさの分布が異なるメッシュ状の開口を持つマスク構造体1を有する基板重合体80を1枚ずつ入れ替えながら微粒子30を通過させることで微粒子の大きさを一定に揃える手段として使えることもできる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係わる微粒子膜形成装置100によれば、従来例に比較して、微粒子30をエアロゾル状態にする必要がなく、微粒子30をそのまま成膜に用いることができ、成膜の際に物理的あるいは化学的損傷を与えない安全な成膜ができるとともに、微粒子膜の成膜前あるいは後に必要なパターニングやエッチング工程を施さなくても広い範囲にわたり短時間で所定の膜厚の分布を有する微粒子膜の形成が可能な微粒子膜形成装置を提供することができる。
【0042】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る微粒子膜形成装置のマスク構造体を示す図であり、図6の(a)は、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。図6の(b)は、図6の(a)のB部分の1個のマスク構造体片の拡大図である。図6の(c)は、図6の(a)のC部分において蓋基板20の下にある枠基板部分のみの様子を示す上面図である。
【0043】
本実施の形態のマスク構造体1は、それぞれアクチュエータを持って独立的に動作可能な複数のマスク構造体片1Baの配列で構成されている。複数のマスク構造体片1Baは、開口5aの形状及び配列パターンが同じものが用いられている。蓋基板20に形成された窓は、上方から見たときに、それぞれのマスク構造体片1Baに形成された開口群5のみが見えるような形状となっている。つまり、蓋基板20には、各マスク構造体片1Baに形成された開口群5の外部輪郭形状(開口群5の外周に沿った形状)に対応した窓(開口)が形成されている。各マスク構造体片1Baは、それぞれアクチュエータ3を備えており、アクチュエータ3により各マスク構造体片1Baは独立で往復動可能である。その他の構成は実施の形態1と同様である。
【0044】
本実施の形態の微粒子膜形成装置によれば、マスク構造体1は、複数のマスク構造体片1Baが所定の配列で構成されたものであり、複数のマスク構造体片1Baには、開口5aのパターンが同じものが用いられている。そして、各マスク構造体片1Baに備えているアクチュエータ3は各マスク構造体片1Baを独立で往復動可能にする。そのため、微細なかつ周期的な微粒子膜の膜厚の分布を実現することができる。
【0045】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係る微粒子膜形成装置のマスク構造体を示す図であり、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。
【0046】
本実施の形態のマスク構造体1は、所定の配列を持つ複数のマスク構造体片1Caで構成されている。複数のマスク構造体片1Caは、開口5aの形状及び配列パターンが異なる4種類のものが用いられている。4類のマスク構造体片1Caは所定の順序で繰り返すように周期的に並べられている。蓋基板20に形成された窓は、各マスク構造体片1Caに形成された開口群5のみが見えるような形状となっている。すなわち、蓋基板20には、各マスク構造体片1Caに形成された開口群5の外部輪郭形状(開口群5の外周に沿った形状)に対応した窓(開口)が形成されている。その他の構成は実施の形態2と同様である。
【0047】
本実施の形態の微粒子膜形成装置によれば、マスク構造体1は、複数のマスク構造体片1Caの所定の配列で構成されたものであり、複数のマスク構造体片1Caの配列においては、開口5aのパターンが異なる4種類のマスク構造体片1Caが周期的に並べられている。各マスク構造体片1Caに備えているアクチュエータ3は各マスク構造体片1Caを独立に往復動可能にする。そのため、微細なかつ周期的な微粒子膜の膜厚の分布を実現することができる。
【0048】
実施の形態4.
図8は、本発明の実施の形態4に係る微粒子膜形成装置のマスク構造体に穿孔された開口とこの開口を通過することにより成膜基板上面に堆積した微粒子の分布を示す図であり、図8の(a)は、枠基板に重ねられた蓋基板に設けられた窓から見たマスク構造体の様子を示す上面図である。図8の(b)は、マスク構造体の開口群を通過した微粒子が成膜基板上に堆積した様子を示す側面図である。
【0049】
図8において、マスク構造体1の開口群5は、直線上に飛び石状に並んで形成された開口5aの2本の列が中央で交わり概略十字形を成している。十字形に並ぶ開口5aは先端に向かう程小さな開口となっている。マスク構造体1の開口群5は、本実施の形態のもののように、メッシュ状でなくともよい。蓋基板20に形成された窓20aは、マスク構造体1の開口群5に対応する部分のみが開口となる形状をしている。マスク構造体1の開口群5と蓋基板20に形成された窓20aが同じ形状となっており、本実施の形態においては、図8の(a)において、マスク構造体1は見えない。
【0050】
図8の(b)は、開口群5を容易に通過可能な粒の大きさがそろった比較的小さな微粒子30が成膜基板40上に堆積した様子を示す。微粒子30を大きさがそろった比較的小さなものとすることで、成膜基板40上に形成される膜の厚さ(高さ)を均一なものとすることができる。
【0051】
なお、以上の実施の形態において、マスク構造体1の開口5aの個々の大きさは、必要に応じて適宜決められて良い。すなわち、開口5aの個々の大きさにおいて特に限定はしない。
【0052】
さらに、以上の実施の形態において、微粒子30が通過する開口群5を持つマスク構造体1はシリコンで形成している。しかしながら、これに限らず、ガラス基板などの誘電体基板、アルミナ基板、樹脂基板、もしくはGaAs基板、SOI基板などの半導体基板などミクロンまたはナノスケールでの微細加工が可能な材料を用いて形成してもよい。
【0053】
また、以上の実施の形態において、成膜に用いる微粒子の材料は半導体、金属、誘電体、磁性体などの固体であり、アクチュエータ3の動作により微粒子間の粘着力が解消されるまたは微粒子の粘着力が解消できる前処理が可能な材料であればよい。
【0054】
さらにまた、以上の実施の形態において、アクチュエータ3は静電式アクチュエータを用いているが、これに限らず、圧電式、電磁式、熱電式などのアクチュエータでもよく、微粒子30を成膜基板40上にふるい落とすことができ、ミクロンまたはナノスケールでの微細加工により作製できるアクチュエータであればよい。
【0055】
また、以上の実施の形態において、アクチュエータ3はマスク構造体1を水平の平面上で往復動させるが、微粒子30を成膜基板40上に良好にふるい落とすものであれば、上下方向(成膜基板40に対して垂直方向)に往復動するものあってもよい。
【0056】
さらに、以上の実施の形態において、枠基板10と蓋基板20との接合は高分子による低温接合法を用いるが、本発明はこれに限らず、常温接合、ガラスフリット接合、陽極接合など材料や構造に損傷を与えない接合法であれば構わない。
【0057】
また、以上の実施の形態において、メッシュ状の開口群5を持つマスク構造体1と、メッシュ上の開口群5と、枠基板10と、蓋基板20、基板重合体80は四角の形状をしているが、これに限らず、円形など任意の形状にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかる微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法は、固体原材料の微粒子を成膜基板の上に所定の形状及び所定の厚さだけ堆積させて成膜基板上に微粒子膜を形成する微粒子膜形成装置及び微粒子膜形成方法に適用されて最適なものである。
【符号の説明】
【0059】
1 マスク構造体
1Ba,1Ca マスク構造体片
2 板バネ
3 アクチュエータ
3a アクチュエータ固定部
3b アクチュエータ可動部
4 アンカー
5 開口群
5a 開口
10 枠基板
20 蓋基板
20a 窓(開口)
30 微粒子
35 容器
40 成膜基板
50 制御回路
50a,50b,50c,50d 配線
60 シャッター
70 成膜基板支持構造
80 基板重合体
90 筐体
95 基板固定用ホルダ
100 微粒子膜形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体原材料の微粒子を成膜基板の上に所定の形状及び所定の厚さに堆積させて前記成膜基板上に微粒子膜を形成する微粒子膜形成装置であり、
前記成膜基板の上方で広がり前記微粒子が通過する開口が所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体と、
前記マスク構造体を囲む枠基板と、
前記枠基板に重なり前記マスク構造体に対応した所定の領域のみに前記微粒子が所定量分布するように前記微粒子を供給する窓が形成された蓋基板と、
前記枠基板から前記マスク構造体を往復動可能にし、前記開口から前記微粒子をふるい落として前記成膜基板上に堆積させるアクチュエータと、を備えた
ことを特徴とする微粒子膜形成装置。
【請求項2】
前記マスク構造体の前記開口は、メッシュ状に複数穿孔されている
ことを特徴とする請求項1に記載の微粒子膜形成装置。
【請求項3】
前記アクチュエータは、前記マスク構造体を前記成膜基板に対して面に沿う方向に或いは面に垂直な方向に往復動させる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の微粒子膜形成装置。
【請求項4】
前記マスク構造体は、複数のマスク構造体片の所定の配列により構成され、前記マスク構造体片は、それぞれに設けられた前記アクチュエータにより独立して動作可能とされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の微粒子膜形成装置。
【請求項5】
前記複数のマスク構造体片は、前記開口のパターンが同じ複数のもので構成されたものである
ことを特徴とする請求項4に記載の微粒子膜形成装置。
【請求項6】
前記複数のマスク構造体片は、前記開口のパターンがそれぞれ異なる複数種のもので構成れたものである
ことを特徴とする請求項4に記載の微粒子膜形成装置。
【請求項7】
前記アクチュエータの動作速度、動作順番などの動作モードを調整する制御回路をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の微粒子膜形成装置。
【請求項8】
固体原材料の微粒子を成膜基板の上に所定の形状及び所定の厚さに堆積させて前記成膜基板上に微粒子膜を形成する微粒子膜形成方法であり、
前記微粒子が通過する開口が所定の配列で複数穿孔されたマスク構造体を前記成膜基板の上方に広がるように配置し、
前記枠基板に重なる蓋基板に形成された窓から前記マスク構造体に対応した所定の領域のみに前記微粒子が所定量分布するよう前記微粒子を供給し、
前記マスク構造体をアクチュエータにより前記マスク構造体を前記成膜基板に対して往復動させて前記微粒子を前記マスク構造体の前記開口からふるい落として前記成膜基板の上に堆積させる
ことを特徴とする微粒子膜形成方法。
【請求項9】
前記マスク構造体の前記開口をメッシュ状に複数穿孔する
ことを特徴とする請求項8に記載の微粒子膜形成方法。
【請求項10】
前記マスク構造体を前記アクチュエータにて前記成膜基板に対して面に沿う方向に或いは面に垂直な方向に往復動させる
ことを特徴とする請求項8または9に記載の微粒子膜形成方法。
【請求項11】
前記マスク構造体として、複数のマスク構造体片の所定の配列により構成されたものを用い、それぞれの前記マスク構造体片に前記アクチュエータを設け独立して動作可能としたことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の微粒子膜形成方法。
【請求項12】
前記複数のマスク構造体片として、前記開口のパターンが同じものを用いる
ことを特徴とする請求項11に記載の微粒子膜形成方法。
【請求項13】
前記複数のマスク構造体片として、前記開口のパターンがそれぞれ異なるものを用いる ことを特徴とする請求項11に記載の微粒子膜形成方法。
【請求項14】
前記マスク構造体を複数用意し、1つの前記成膜基板に対して前記マスク構造体を取り替えながら前記微粒子を複数回堆積させる
ことを特徴とする請求項8から13のいずれか1項に記載の微粒子膜形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250161(P2012−250161A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123655(P2011−123655)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】