説明

微粒子

【課題】微粒子及びそれらの形成方法及びそれらの治療における使用方法、特に無針注入システムを使用する皮膚を通して有効成分を送達する方法を提供する。
【解決手段】治療用薬剤を含んでなる微粒子、または治療用薬剤からなるそのような微粒子であって、粒子密度が固体薬剤の少なくとも80%であり、かつ形状関数が1〜5である微粒子を用いる。該微粒子は噴霧乾燥により製造されてよく、かつ無針注入に使用されてよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
発明の分野
本発明は微粒子、それらの形成方法およびそれらの治療における使用法、特に無針注入システムを使用する、皮膚を通しての有効成分の送達のための方法に関する。
【0002】
背景技術
無針注入器は、粒子を皮膚および粘膜バリアに浸透できる速度に加速するために圧縮ガスを使用する。そのような装置はWO−A−94/24263に記載されている。該粒子は機械的強度を有することが求められ、高密度であることが有利である。同一形状、好ましくは球形で、制御された粒径分布の粒子を用いるのも有益である。これらの因子は該粒子の空気力学的挙動および浸透に影響し、そのため有効成分の送達の効能にも影響する。有用な粒子の粒径は、典型的には10〜500μmの範囲である。
【0003】
固体または高密度の微粒子は、例えばより大きな粒子の微小化、結晶化、沈殿または他の溶液ベースの微粒子生成技術のような、ミリング(milling)により製造できる。しかし、典型的には、これらの技術により球状微粒子は製造されない。
【0004】
通常は固体微粒子を製造しない技術には、しばしば低密度微粒子および凝集塊を形成する噴霧乾燥がある。高密度の製品が重要となる主な産業は、スキムミルクパウダーを製造する乳製品産業である(Spray Drying Handbook, K. Masters, 5th Edition, 1991, Longman Scientific and Technical, Pages 330-336)。この節では、通常の噴霧乾燥により製造された生成物を顕微鏡写真で示し、それらは「空胞」を含み、「低密度」であり、壁が薄く、「機械的な取り扱いには耐えられず、容易に断片化し」、かつ多量および少量の空気を吸蔵すると述べられている。密度がいく分増加するのは、ゆがめられ、縮められた粒子を製造する、より複雑な2段階の噴霧乾燥工程が用いられるためである。Charlesworth and Marshall, J. Appl. Chem. Eng., 6 No. 1, 9(1960)には、崩壊、水泡、気泡または膨張の結果として、総ての粒子が多孔性、スポンジ様、または空気を吸蔵する構造となる、噴霧乾燥により製造された粒子の形態学について記載されている。噴霧乾燥工程において空気の吸蔵が最適化された工程の例がWO−A−92/18164、WO−A−96/09184およびWO−A−96/18388に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
驚くべきことに、慎重に制御された噴霧乾燥条件を用いれば、物質から固体または半固体の密度の高い小球を製造できることが見出された。これらの小球は特に、その密度と球状性のために、無針注入システムにおける使用に適している。より詳細には、相対性粒子密度が固体物質の少なくとも80%であってよく、しばしば少なくとも90%、また100%であってもよい。球状であるとは通常、形状関数が1〜5のものをいう。
【0006】
従って、本発明の第1の態様は、治療用薬剤を含んでなる、またはそのような治療用薬剤からなる微粒子であって、相対的粒子密度が固体薬剤の少なくとも80%であり、かつ、形状関数が1〜5である微粒子を包含する。
【0007】
本発明の第2の態様は、無針注入による投与用の、本発明の微粒子の形態の薬剤の製造のための、治療用薬剤の使用を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様は、本発明の微粒子を含んでなる無針注射器である。
【0009】
第4の態様において本発明は、無針注射器を使用する、本発明の微粒子の経皮、経粘膜または皮下送達を含んでなる治療処置法を提供する。
【0010】
本発明の第5の態様においては、治療用薬剤を含む溶液または懸濁液の噴霧乾燥を含んでなる、本発明の微粒子の製造法を提供する。
【発明の具体的説明】
【0011】
本明細書で微粒子とも称される、本発明により製造される固体または半固体の小球は、様々な形態をとることが可能で、その例を図1に示す。(a)の固形球体、半固形球体に加えて;それらは、(b)小さな空気ポケットが中心に吸蔵されている球体、(c)吸蔵体が中心をはずれている球体、または(d)吸蔵体が小球体を破り、はみ出ているものも形成できる。
【0012】
噴霧乾燥ハンドブックを含む多くの参照文献が、一般に、所与の占有質量である体積から計算されるかさ密度について言及している。本発明に関連して、粒子密度はより重要である;これは、閉じた構造の封入体のいずれかを含むが、開放構造を含まない粒子の体積に基づいている。従って、図1(a)および(d)に示された形態は同一の粒子密度を有するが(b)および(c)は低い(かつ同一の)粒子密度を有する。
【0013】
固体小球は形成材料と同一の粒子密度を有し、かつ相対的粒子密度は100%である。もし小さな空気封入体が存在する場合、相対的粒子密度は100%以下である。平均粒子密度は、液体またはガスピクノメトリーにより測定できるか、または光学顕微鏡による測定値を用いて個々の小球について計算できる。治療用薬剤の密度は25℃にて測定する、これらの測定値から、本発明の小球は少なくとも元の物質の80%の相対的粒子密度、かつ好ましくは90%、95%、99%または100%以上の相対的粒子密度を有する。無針注入システムに適用するためには、機械的強度を与えるために高い相対的粒子密度が要求されるが、与えられた相対的密度はこれに適する。特に該小球は、引用することにより本明細書の一部とされるWO−A−94/24263中に無針注射器に関して述べられている必要条件を満たし得る。
【0014】
本発明の該微粒子が含んでなるか、またはそれにより構成され、かつ無針注入により送達されてよい有効物質は、薬理学的有効物質を含有する治療用薬剤であり、一般に固体である。送達されてよい治療用薬剤には、例えばタンパク質をはじめとする、ペプチド、核酸、ならびに例えば局所麻酔薬(コカイン、プロカインおよびリドカイン)、催眠および鎮静薬(バルビツレート、ベンゾジアゼピン、およびクロラール誘導体)、精神薬(フェノチアジン、三環性抗うつ薬およびモノアミンオキシダーゼ阻害剤)、抗てんかん薬(ヒダントイン)、L−ドーパ、アヘンアルカロイド、鎮痛薬、抗炎症薬、アロプリノール、癌化学療法薬、抗コリンエステラーゼ薬、交感神経様作用薬(エピネフリン、サルブタモールおよびエフェドリン)、抗ムスカリン薬(アトロピン)、α−アドレナリン作用阻害薬(フェントールアミン)、β−アドレナリン作用阻害薬(プロプラノロール)、神経節刺激および阻害薬(ニコチン)、神経筋阻害薬、オータコイド(抗ヒスタミン薬および5−HT拮抗薬)、プロスタグランジン、血漿キニン(ブラジキニン)、心臓血管薬(ジギタリス)、抗不整脈薬、抗高血圧薬、血管拡張薬(硝酸アミルおよびニトログリセリン)、利尿薬、オキシトシン、抗生物質、駆虫薬、殺真菌薬、抗ウイルス化合物(アシクロビル)、抗トリパノソーマ薬、抗凝固薬、性ホルモン(例えば、HRTまたは避妊用)、インスリン、アルプロスチジル、血液凝固因子、カルシトニン、成長ホルモン、ワクチン、遺伝子療法のための構築体、およびステロイドのような小さな有機分子が挙げられる。そのレシピエントはヒトまたは他のいずれの脊椎動物であってもよく、例えば、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、イヌ、ネコ、もしくはサケなどの哺乳動物、鳥類または魚類、または特にDNA形質転換のための植物が好ましい。DNAは一般にプラスミドとして提示され、例えばそれは、Vanrompay et al(1999) Vaccine 17, 2628-2635で開示された抗クラミジア抗原をコードするDNAであってよい。ワクチンはタンパク質または他のポリペプチドもしくはオリゴペプチドの形態をとってよく、また、例えばHIVもしくはB型肝炎抗原をコードするDNAのように、抗原をコードするDNAであってよい。該小球は有効物質のみから形成されてよく、またはそれらはタンパク質、糖、防腐剤、保存剤および緩衝剤を含む1以上の賦形剤もしくは安定剤を含有してよい。炭水化物および他のガラス−形成物質を安定剤または賦形剤として用いてよい。賦形剤は非経口的に許容されるものが好ましい。賦形剤が存在する場合は、有効化合物は均一に分布するか、図1(e)に示したように基質中に捕らえられたより小さな粒子の形態であってよい。使用してよい好適な炭水化物はWO96/03978に開示されている。WO96/03978に開示されているような、疎水性となるよう誘導体化された炭水化物を用いて徐放型粒子を提供してもよい。
【0015】
本発明のさらなる実施形態は、有効物質よりも高密度の賦形剤もしくは添加剤、またはより高密度の小球を形成するための賦形剤の使用である。
【0016】
本発明の小球は典型的には定められた範囲の粒径で、95重量%またはそれ以上の粒子が10〜500μmの範囲の粒径、好ましくは20〜200μm、および最も好ましくは30〜100μmの粒径の範囲である。モード分布は10μmバンド、すなわち30、40、50、60、70、80、90、および100μmに集中してよい。好ましくは、単一モードサンプルにおいて、80重量%の粒子が、より小さい粒径の粒子は10μmから、より大きい粒径の粒子が25μmの粒径範囲であり、より好ましくは90%の粒子が15μm(より小さい粒子)〜30μm(より大きい粒子)の粒径範囲である。
【0017】
本発明の小球は、二方式の粒径分布で形成されてよい。典型的には、回転噴霧器を使用する際に少なくとも60重量%、75重量%以上の粒子が単一モード粒径の粒径分布を示し、残りの粒子はより小さいモード粒径の分布を示す。単一モード粒径分布が望まれる時には、より小さい粒子は、例えば篩い分けのような常法により、より大きい粒子から分離されてよい。他の粒径分布を持つ微粒子もまた、本発明により得ることができる。
【0018】
粒子の球状性もまた重要であり、真の表面積を粒子体積に対する等価の球状面積で割った形状関数により定義される。この粒子表面積は、窒素吸着の標準技術に続いてBET分析を行うことにより得られる。本発明の小球は典型的には、形状関数1〜5であり、好ましくは1〜2である。形状を評価する別法は、形状関数と類似した値を与える円形性および伸び率を測定するための画像分析により補助される光学顕微鏡検査により行える。
【0019】
該小球は一般に該物質の溶液または懸濁液の噴霧乾燥により作製される。ほとんどの薬理学的有効物質に関して好適な溶媒は公知である。水は好ましい溶媒である。所望の固体微粒子を製造するために該物質の濃度を変化させてもよいが、0.1〜70%溶液、好ましくは10〜30%溶液が好適であり得る。もし微粒子が有効物質を含まない場合は、比較的不活性なタンパク質(好ましくはrDNA技術により製造されたヒト血清アルブミン)、または糖(トレハロースのような)のような前記の担体から使用してよい。水がさらに好ましい溶媒である。
【0020】
噴霧された溶液または懸濁液中の有効成分の濃度および、有効成分の担体物質に対する比(存在する場合)は一般に、注入器により送達される粒子の量および所望の有効成分の用量に支配される。
【0021】
回転式噴霧器が好ましいが、例えば圧力ノズルまたは2つの液体の噴霧化のいずれかによる、液体供給溶液または懸濁液を噴霧するパイロットスケール噴霧乾燥器のような、通常の噴霧乾燥器を使用してよい。ある種の治療用薬剤または治療用薬剤と賦形剤の混合物に関しては、好適な固体または半固体小球の形成は乾燥工程における排出温度の低さに依存するであろう。いずれの所与の治療用薬剤または治療用薬剤と賦形剤の混合物に対しても好適な排出温度は、当業者ならば容易に決定できる。注入口の温度は、使用される噴霧化のタイプや、乾燥気流速度のような他の変数に基づき、所望の排出口温度を与えるように設定する;例えば50〜270℃であってよい。粒径は、所与の供給濃度で使用された噴霧器に関する標準パラメーターにより制御される。
【0022】
噴霧乾燥による形成に続いて、熱を用いておよび/または真空下で残っている水分または溶媒を除去して、該小球をさらに乾燥させる。このさらなる乾燥工程に関する好適な乾燥技術には、例えば、流動層乾燥法が含まれる。このさらなる乾燥工程での流動層の使用は、小球が二方式の粒子分布を示す場合に、小さい粒子はより大きな粒子から水により(洗って軽いものと重いものに分ける)分離されるので有益である。結晶の形成は避けるべきである。
【0023】
該小球はまた、例えば図1(e)に示したようなさらなる層または放出プロフィールを変化させるための層、もしくは有効化合物を保護するための層を付け加えるために、例えば、流動層被覆のような標準技術を用いて被覆してもよい。生成された粒径分布はまた、特定の粒径範囲を選択するために、篩い分けまたはさらに粒子分布を明らかにするための他の市販の分類技術を用いて改変されてよい。
【0024】
該小球はその適用により滅菌してよい。無菌製品は、無菌的製造または例えばγ線照射による最終滅菌のいずれかにより製造できる。
【0025】
本発明の微粒子を送達するために使用してよい無針注射器の例およびそれらの構成部分は、WO94/24263(米国特許第5,899,880号および同第5,630,796号として発行、引用することにより本明細書の一部とされる)に示されている。
【0026】
この注射器は典型的には、小さくても大きくてもよいが約18cmの長さで、親指を上端に添えたまま手のひらに持てるように調整されている。
【0027】
注入を行うために、該装置のスペーサーシュラウドの幅広い方の端を患者の皮膚に向けて押す。貯蔵部からチャンバー中に放出されたガスが2枚の膜を破るに十分な圧力をチャンバー内で発生させ、ガスがノズルを通って移動し、それにより粒子を患者の皮膚中に送達する。
【0028】
チャンバーにはヘリウムのようなガスを大気圧より高い気圧、例えば2〜4バールであらかじめ充填してよいが、あるいは10バールよりも高くてもよい。
本発明の粒子は、送達の際にはこのようにヘリウムのようなガスに乗せる(すなわち懸濁する)。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
例1
2回濾過した水性20%w/v(重量/体積)HSA溶液(薬理学的に有効なタンパク質のモデルとして、また薬理学的に有効な化合物の担体として)100mlを、以下の条件下においてNT2回転噴霧器(Newland Design, Lancaster)を用いるNiro Mobile Minor噴霧乾燥器で噴霧乾燥させる:
注入口の温度 245℃
排出口の温度 35℃
注入速度 10g/分
回転速度 30,000rpm
【0030】
乾燥チャンバー内に小滴を導くために追加の空気が供給されるので、排出口の温度は低い。
【0031】
得られた水溶性の生成物の顕微鏡写真を図2に示した。これらは、小球の65%以上が50μm付近の粒径の一様な固体であることを示している。少量の空気を含有している類似粒径の小球は厚い壁を持ち、計算された密度は小球を形成している元の物質の90%以上であった。この微粒子が球形であることは明らかである。
【0032】
さらなる粒径分析のために、噴霧乾燥されたマイクロカプセル5gを、176℃の熱空気オーブン中で55分間加熱することにより不溶解化した。Coulter Multisizer 2E(商標)および200μmの開口管を取り付けたTAIIサンプリングスタンドを用いて、小球の大きさの選別を行い、小球の体積メジアン径は71μmであり、モード粒径は61μmであった。この粒径分布を図3に示した。Colterカウンターにより計測された粒径がより大きかったのは、水性環境中で小球が膨張したためである。
【0033】
例2
2回濾過した31%w/vHSA溶液100mlを(再度モデルまたは担体として)、以下の条件下でNitro Mobile Minor噴霧乾燥器を用いて噴霧乾燥させた:
注入口の温度 80℃
排出口の温度 48℃
噴霧圧力 1.0barg
注入速度 13.3g/分
噴霧タイプ 2本の液体ノズル
【0034】
可溶性の噴霧乾燥生成物の顕微鏡写真を図4に示す。小球はほぼ全部固体であり、例1の生成物より小さい。空気を含有している少数の小球は高度な機械的強度を付与する厚い壁を有している。
【0035】
例3
39%w/vトレハロース溶液(64gのトレハロース二水和物(Sigma Aldrich Company Ltd, Poole, Dorset)水に溶解させて150mlとしたものと等価)150mlを、NT2回転噴霧器(Newland Design, Lancaster)を用いるNitro Mobile Minor噴霧乾燥器により以下の条件下で噴霧乾燥させた:
注入口の温度 200℃
排出口の温度 108℃
注入速度 6g/分
回転速度 13,500rpm
【0036】
この工程条件下では生成物の収率は81%であった。得られた生成物(バッチNT2TRE1)を野菜油に懸濁させて顕微鏡で検査したところ、99%以上の固体集団が空気を含まない固体で二方式の粒径分布を示した。強い剪断力、媒体注入速度および1.56g/cmの粒子密度を用いるエーロディスペンサー(Amherst Process Instruments Inc, Hadley, MA)を取り付けたAPIエーロサイザーによって幾何学的粒径分布を求めた。この分析の結果から、分布の主要大ピークはモード粒径56μmであり、より小さい分画のモード粒径は28μmであった。エーロサイザーを用いて得られた粒径分布を図5に示す。
【0037】
例4
同じ注入濃度で、NT2噴霧器は16,400rpm(バッチNT2TRE2)および19,000rpm(バッチNT2TRE3)の、より早い回転スピードを用いて、同様の噴霧乾燥条件下で例3を繰り返した。引き続いて行う顕微鏡検査およびエーロサイザーを用いる粒径分析により、以下の結果が得られた(表1)。この工程の収率はそれぞれ94および89%あった。
【0038】
【表1】

【0039】
例5
例3および4で得られた3つの生成物を篩い分けして二方式分布の2つのピークを分離した。バッチNT2TRE1の5gを直径200mm、開口径38μmのステンレス鋼製テスト篩(Endecotts, London)に入れた。この篩にはふたと受け皿が取り付けられており、手動で5分間揺するようになっている。残存した物質と、篩を通過した物質を評価のために回収した。同様に、バッチNT2TRE2およびNT2TER3の生成物の各5gを、それぞれ38および32μmの篩にかけた。篩上に残った多い分画からの収量は、総ての場合において60%よりも多かった。顕微鏡検査では、狭い粒径分布、および二方式粒径分布の2つのピークの効果的な分離が行われたことが示された。32μm篩上に残った分画の顕微鏡写真を図6に示す。3つのバッチから篩い分けによって得られた6つの分画を、エーロサイザーを用いて粒径選別し、その結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
粒径が大きくなる順番に、バッチNT2TRE3およびNT2TRE1に関して篩を通過した小球、引き続いてバッチNT2TRE3、NT2TRE2およびNT2TRE1に関して篩に残った小球のエーロサイザー粒径分布を図7に示す。
【0042】
幾何学的粒径分布のさらなる分析において、粒子固体集団の百分率を表3に示すように計算した。
【0043】
【表3】

【0044】
40μmの粒径の生成物も、75%の粒子が17μmの粒径範囲内であり、同様に80%の粒子が19μmの範囲内であった。
【0045】
例6
注入する溶液は、7gのオクタ酢酸トレハロース(Sigma Aldrich Company Ltd, Poole, Dorset)および3gのニフェジピン(Seloc France, Limay)をアセトンに溶解させて50mlとして調製した。得られた溶液の装填固体総量は20%w/vであった。この注入溶液を以下の条件下で、NT2回転式噴霧器を用いるNitro Mobile Minor噴霧乾燥器で噴霧乾燥させた:
注入口の温度 65℃
排出口の温度 46℃
注入速度 10g/分
回転速度 14,600rpm
【0046】
これらの工程条件下で得られた生成物の収率は78%であった。この生成物を光学顕微鏡で評価したところ、基準目盛りと比較して、固体小球はモード粒径が約44μmおよび20μmの二方式粒径分布を示した。
【0047】
例7
14%w/vのラフィノース5水和物溶液(14gのラフィノース5水和物(Pfanstiehl, Wankegan, IL)水に溶解させて100mlとする)100mlを、NT2回転噴霧器を用いるNitro Mobile Minor噴霧乾燥器で、以下の条件下で噴霧乾燥させた:
注入口の温度 170℃
排出口の温度 82℃
注入速度 10g/分
回転速度 13,500rpm
【0048】
工程収量が68%である、得られた生成物の顕微鏡検査において、固体小球は二方式粒径分布を示し、空気は吸蔵していなかった。例3の分析条件と同じ条件下でエーロサイザーを用いて粒径分布を測定し、粒子密度は1.47g/cmであった。この分析で得られた結果から、図8に示すような、モード粒径36μmの主要な大きい分布とモード粒径が18μmの非常に小さな分画が得られた。分布の分析において、小球の70%が26〜43μmの間の17μmの粒径範囲に存在することが認められた。このラフィノース5水和物は薬理学的に有効な化合物の担体である。
【0049】
例8
アセトン中31%w/vリドカイン溶液(リドカイン21.5g(Sigma))70mlをNT2回転噴霧器を用いるNitro Mobile Minor噴霧乾燥器で、以下の条件下で噴霧乾燥させた:
注入口の温度 65℃
排出口の温度 45℃
注入速度 10g/分
回転速度 13,500rpm
【0050】
光学顕微鏡による評価では、この生成物は球状であった。粒径分布はモード粒径41μmおよび20μmの、球状固体小球の二方式分布であった。
【0051】
例9
38gのトレハロース2水和物および2gの塩酸ジルチアゼム(Lusochimica spa, Milan, Italy)を水に溶解させて総量を100mlとし、溶液を調製した。この溶液を、NT2噴霧器およびNitro Mobile Minor噴霧乾燥器を用いて、以下の条件下で噴霧乾燥させた:
注入口の温度 200℃
排出口の温度 105℃
注入速度 11g/分
回転速度 13,500rpm
【0052】
この工程の収量は94%であった。顕微鏡検査では、生成された滑らかで球状の粒子が二方式の粒径分布を示し、2%以下の粒子が少量の空気を吸蔵していた。これは、例3に記載の条件および密度に従ってエーロサイザーを用いて粒径選別した際に確認された。このことより、より大きな小球を含む主要ピークはモード粒径43μmであり、より小さいピークのモード値は20μmであった。幾何学的粒径分布から、粒子集団の70%が36〜56μmの範囲、すなわち20μmの粒径範囲中にあることが示された。
【0053】
例10
38gのトレハロース2水和物および2gのヒト血清アルブミンの形態モデルタンパク質(Sigma)を水に溶解させて総量を100mlとし、溶液を調製した。この溶液を例9に記載した方法で噴霧乾燥させた。例9と同様に、類似の工程収量と粒子特性が得られた。噴霧乾燥がアルブミンを分解させるか、または重合させるかどうかを評価するために、基準凍結乾燥アルブミンおよび分子マーカーを用いて非還元条件下でゲル電気泳動を行った。これにより、アルブミンは噴霧乾燥工程により影響されないことが示された。このことはまた、付加的な二量体化または重合作用は起こらないことを示すゲル透過クロマトグラフィーにより確認された。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明の態様は、単に例示のためのものであるが、以下の図面を参照して説明される:
【図1】本発明の微粒子を模式的に示したものである。
【図2a】例1の生成物の顕微鏡写真である。
【図2b】例1の生成物の顕微鏡写真である。
【図3】例1の生成物の粒径分布を示す。
【図4a】例2の生成物の顕微鏡写真である。
【図4b】例2の生成物の顕微鏡写真である。
【図5】例3の生成物であるNT2TRE1の粒径分布を示す。
【図6】篩い分けのあとに篩上に残った例5の生成物NT2TRE3の光学顕微鏡写真である。
【図7】篩い分けされた例5の生成物の粒径分布を示す。
【図8】例7の生成物の粒径分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用薬剤からなる、または治療用薬剤と所望により賦形剤とを含んでなる物質の微粒子であって、賦形剤が存在する場合、該治療用薬剤が微粒子中で均一に分布するか、または賦形剤マトリックス中でより小さな粒子の形態で捕捉された形態をとり、相対的粒子密度が少なくとも物質の80%、形状関数が1〜5であり、かつ少なくとも95%の粒子が直径20〜200μmである物質の微粒子。
【請求項2】
溶液または懸濁液から噴霧乾燥により得ることができる、請求項1に記載の微粒子。
【請求項3】
相対的粒子密度が少なくとも90%である、請求項1または2に記載の微粒子。
【請求項4】
少なくとも95重量%の粒子が直径30〜100μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微粒子。
【請求項5】
形状関数が1〜2である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微粒子。
【請求項6】
相対的粒子密度が少なくとも物質の80%であり、かつ形状関数が1〜5である、治療用薬剤からなる微粒子。
【請求項7】
溶液または懸濁液から噴霧乾燥により得ることができる、請求項6に記載の微粒子。
【請求項8】
相対的粒子密度が少なくとも90%である、請求項6または7に記載の微粒子。
【請求項9】
少なくとも95重量%の粒子が直径10〜500μmである、請求項6〜8のいずれか一項に記載の微粒子。
【請求項10】
治療用薬剤がワクチンである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の微粒子。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−96755(P2006−96755A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−278375(P2005−278375)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【分割の表示】特願2000−568477(P2000−568477)の分割
【原出願日】平成11年9月3日(1999.9.3)
【出願人】(502409606)エラン・ドラッグ・デリバリー・リミテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】Elan Drug Delivery Limited
【Fターム(参考)】