説明

微粒径陰イオン交換樹脂及びその製造法、並びにそれを用いたジクロロブテンの製造方法

【課題】 汎用の材料金属により構成された装置により、ジクロロブテンを高収率で、後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む、ジクロロブテン濃度の高い反応液を得る方法を提供し、より高い選択性でクロロプレンモノマーの原料である3,4−ジクロロ−1−ブテンを製造する方法を提供し、さらに、これらの方法に用いられる微粒径陰イオン交換樹脂を提供する。
【解決手段】 溶媒中20〜70℃の反応温度で1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に使用する触媒としての微粒径陰イオン交換樹脂であって、平均粒径が0.5〜10μmであることを特徴とする微粒径陰イオン交換樹脂、その製造法、並びにそれを用いたジクロロブテンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒中20〜70℃の低温において1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に好適に使用できる、触媒としての微粒径陰イオン交換樹脂、その製造法、並びにそれを用いたジクロロブテンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業規模のプラントにおいて、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンは、220〜300℃の気相反応により、大過剰のブタジエンと塩素を接触させ製造されている。この方法では、収率が90%程度と低く、大量の廃棄物が発生する。また3,4−ジクロロ−1−ブテンは脱塩酸反応によりクロロプレンモノマーを製造する原料であるが、この気相反応により生成するジクロロブテン中の3,4−ジクロロ−1−ブテンの生成比率は35%程度と低く、主に(65%程度)生成する1,4−ジクロロ−2−ブテンは異性化により3,4−ジクロロ−1−ブテンに変換する必要がある。
【0003】
以上の問題点を解決するために従来より液相において低温下で1,3−ブタジエンを塩素化する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、反応溶媒として主に四塩化炭素を使用し、1,3−ブタジエンの液相塩素化反応について詳細な検討をしており、反応条件、触媒種、触媒濃度など反応の基礎的事項を解明している。
【0004】
また、特許文献2には、常圧における沸点が−15〜40℃の溶媒を用い、反応で発生する熱を溶媒および未反応1,3−ブタジエンの揮発により除去しつつ反応し、反応器底部より反応液を取出す方法が開示されている。この方法では、溶媒として、塩素ガスと実質的に反応しないフロン類、またはn−ブタン、ペンタンを使用し、ピリジン触媒の存在下において、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを高収率で製造することができる。またこの方法では生成するジクロロブテン中の3,4−ジクロロ−1−ブテンの生成比率が48乃至55%と高く、クロロプレンモノマーを製造するにあたり、1,4−ジクロロ−2−ブテンを異性化により3,4−ジクロロ−1−ブテンに変換する労力が軽減されるため有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許第1435826号公報
【特許文献2】米国特許第5077443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1では、溶媒として現在利用が困難な四塩化炭素が使用されている。また、特許文献2記載の方法で使用されているフロン類は、1,2−ジクロロテトラフルオロエタン(沸点4℃),1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン(沸点32℃)など、オゾン層破壊係数の大きい特定フロンであり、現在では使用することは困難である。一方、n−ブタンおよびペンタンなどの炭化水素類も使用されているが、これらは塩素化を受け易く溶媒のロスが多い。更に、この方法で反応器底部より得られる反応混合物中の総ジクロロブテンの濃度は、1,2−ジクロロテトラフルオロエタンを溶媒として使用した実施例1および実施例5〜15において、溶媒/総ジクロロブテン重量比で6〜10(モル比では4.4〜7.3)と希薄なため、溶媒分離工程での熱エネルギー消費量が多い。また特許文献1および特許文献2に記載の方法において使用される触媒を使用すると、金属材質が激しく腐食されるため、汎用の材料金属を使用するのは困難である。
【0007】
本発明の目的は、汎用の材料金属により構成された装置により、ジクロロブテンを高収率で、後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む、ジクロロブテン濃度の高い反応液を得る方法を提供することである。本発明のもう一つの目的は、より高い選択性でクロロプレンモノマーの原料である3,4−ジクロロ−1−ブテンを製造する方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、それらの方法に用いられる陰イオン交換樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以上の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の微粒径陰イオン交換樹脂を触媒として使用し、所定の条件下で1,3−ブタジエンの液相塩素化方法を行うと、汎用の材料金属により構成された装置により、ジクロロブテンが高収率、かつ後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む高濃度にて得られること、さらに、より高い選択性でクロロプレンモノマーの原料である3,4−ジクロロ−1−ブテンが得られることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明は、溶媒中20〜70℃の反応温度で1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に使用する触媒としての微粒径陰イオン交換樹脂であって、平均粒径が0.5〜10μmであることを特徴とする微粒径陰イオン交換樹脂、その製造法、並びにそれを使用したジクロロブテンの製造方法である。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の微粒径陰イオン交換樹脂は、溶媒中20〜70℃の反応温度で1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に使用する触媒であって、平均粒径が0.5〜10μmである。
【0011】
触媒を使用する1,3−ブタジエンの液相塩素化によるジクロロブテンの製造方法においては、触媒により塩素の分極が促され1,3−ブタジエンへの塩素付加反応がイオン機構により進行し、ラジカル機構で反応が進行する気相高温法に比較し、高収率および3,4−ジクロロ−1−ブテンの生成比率が高いなどの有利な効果が得られると考えられている。陰イオン交換樹脂を触媒として使用すると、反応がイオン機構により進行し、従来技術で問題となる装置の金属材質腐食が効果的に抑制できるため有利であるが、陰イオン交換樹脂の表面で触媒反応が起こるため、十分な触媒効果を得るためには、表面積がある一定以上反応系に存在する必要がある。市販の陰イオン交換樹脂は粒径が0.3〜1.25mmのビーズであるため、単位触媒量あたりの表面積が小さく、大量の触媒が必要となり非常に装置が大規模となるため実用的ではない。市販の樹脂を粉砕して使用すれば少量の触媒ですむが、触媒が破壊しやすく不定形の微細粒子が発生し、ケーク抵抗が大きくなり反応液との濾過分離が困難となる。これらの問題点は陰イオン交換樹脂を小粒径のビーズとすることで解決される。粒径は小さいほど単位触媒量あたりの表面積が大きくなり有利であるが小さすぎると、反応液との分離が困難となる。したがって、本発明の樹脂が有利な効果を得るためには平均粒径が0.5〜10μmであることが必要であり、好ましくは1〜5μmであり、さらに好ましくは1〜3μmである。平均粒径が0.5μm未満の場合は、反応液と濾過分離する際にケーク抵抗が大きく分離が難しくなり、一方、10μmを超えると粒子が破壊しやすく不定形の微細粒子が発生するため、ケーク抵抗が大きくなり反応液との濾過分離が困難となる。
【0012】
本発明の微粒径陰イオン交換樹脂は、乳化重合により生成する平均粒径0.3〜2μmのポリマー粒子をシードとし、それに架橋剤を含むモノマーを吸収させ重合する、いわゆるシード重合により得られるコポリマーを原料とする平均粒径0.5〜10μmの微粒径ビーズであり、粒子径のバラツキが小さく、ポリマー分子鎖が絡み合ったIPN(interpenetrating polymer network)構造である、という外見的および高分子構造的特長を有する。これらの特長により、触媒としての性能面で以下のような有利な効果が得られる。1)比表面積が大きく触媒使用量が少量でよい。2)イオン交換樹脂を有機反応触媒として使用すると、反応液の吸収又は化学修飾により粒子が膨潤しストレス破壊が問題となるが、本発明の樹脂は、物理的強度が大きく膨潤ストレスが小さいため攪拌翼又はポンプインペラー等の反応装置と衝突しても極めて破壊しにくい。3)本発明の樹脂を懸濁状態で使用すれば、フィルターで触媒を濾過分離し生成物を取り出す際に、ケーク抵抗が小さく濾過しやすく、フィルター目詰りもしにくいため、装置の運転操作性およびメンテナンス性に優れる。
【0013】
本発明の微粒径陰イオン交換樹脂を溶媒中20〜70℃の反応温度で1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に使用することにより、1)汎用の材料金属により構成された装置により、ジクロロブテンを高収率で、後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む、ジクロロブテン濃度の高い反応液を得ることができ、更により高い選択性でクロロプレンモノマーの原料である3,4−ジクロロ−1−ブテンを得ることができ、2)触媒が小粒径のビーズであるため破壊しにくく、反応液との分離が良好である。なお、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンの製造は、連続的に行っても、バッチ式でも良いが、生産効率、生産コスト等で有利なため、連続的に行うことが好ましい。
【0014】
本発明の微粒径陰イオン交換樹脂は、以下の方法により得られる。
【0015】
工程a)で調製されるシードは、架橋剤を含むモノマーを過硫酸塩などの水溶性の開始剤を使用して乳化重合することにより得られる平均粒径0.3〜2μmの球状微粒子(ビーズ)である。この乳化重合は、界面活性剤を使用しないソープフリー重合の他、界面活性剤を使用する通常の乳化重合でも良いが、ソープフリー重合の方が大粒径で粒子径のバラツキが少ないシードが得られるため好ましい。使用するモノマーはラジカル重合が可能なビニル化合物で、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等が例示され、好ましいモノマーはスチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルである。架橋剤は1分子あたりにラジカル重合可能な二重結合を2つ以上持つ化合物で、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジメタクリレート等が例示でき、好ましい架橋剤はジビニルベンゼンである。架橋剤の使用量は架橋度(架橋剤の重量/(モノマー+架橋剤の重量)により計算)と表現されるが、触媒能の低下防止と装置汚れの防止のため、0.1〜7%で調節することが好ましく、1〜5%がさらに好ましい。
【0016】
また、連鎖移動剤をシード調製において使用することができる。連鎖移動剤とは、例えば、2−メルカプト酢酸メチル、2−メルカプト酢酸エチル、2−メルカプト酢酸プロピル、2−メルカプト酢酸ブチル、2−メルカプト酢酸n−オクチル、2−メルカプト酢酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトプロピオン酢酸n−ドデシルなどのメルカプト酢酸エステル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸エチル、3−メルカプトプロピオン酸プロピル、3−メルカプトプロピオ ン酸ブチル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−ドデシル等の3− メルカプトプロピオン酸エステル、2−メルカプトプロピオン酸メチル、2−メルカプトプロピオン酸エチル、2−メルカプトプロピオン酸プロピル、2−メル カプトプロピオン酸ブチル、2−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、2−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、2−メルカプトプロピオン酸n−ドデシルなどのメルカプトプロピオン酸エステル、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィドなどのジアルキルキサントゲンジスルフィド等があげられる。連鎖移動剤の使用により低分子量のシードが調製でき次工程b)においてシードに芳香族ビニル化合物モノマー等を吸収させる際、膨潤しやすいシードを調製することができる。使用量は、低分子量のシードとしつつ、触媒能の低下防止と反応器壁への付着防止のため、モノマー中の濃度として5wt%以下の範囲で調節することが好ましい。
【0017】
次に、工程b)では、適当な緩衝液(例えば、燐酸緩衝液またはホウ酸緩衝液等)によりpH6〜9、最終的に得られるスラリー濃度が5〜15重量%となるよう調整した条件で、前工程a)で得られたシード(シードスラリー)に、芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤と重合開始剤を吸収させ、膨潤シードを調製する。シードへの吸収は、架橋剤と重合開始剤を含む芳香族ビニル化合物モノマーをシードに吸収させる他、芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤と重合開始剤を別々にシードに吸収させても良い。シードに吸収させるため、シードへの芳香族ビニル化合物モノマー等の添加は、シードが芳香族ビニル化合物モノマー等を吸収する速度に応じて徐々にフィードする方法でも良いし、芳香族ビニル化合物モノマー等を水中または緩衝液中に超音波等の手段により細かい液滴として分散させた液(分散液)を添加する方法でも良い。後者の方法において、芳香族ビニル化合物モノマー等の分散液を調製する際、適当な界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム等を使用することもできる。
【0018】
芳香族ビニル化合物モノマーは、例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン等から選択して使用するがスチレンが好ましい。架橋剤は前記工程a)で用いたものと同様なものが使用でき、ジビニルベンゼンが好ましく、架橋度(架橋剤の重量/(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量)により計算)は、触媒能の低下防止と装置汚れの防止のため、2〜7%で調節することが好ましく、3〜5%がさらに好ましい。
【0019】
重合開始剤は10時間半減期温度が40〜100℃のt−ブチルパーベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどのアルキルパーオキシエステル系、過酸化ベンゾイルなどのジアシルパーオキサイド系の有機過酸化物を単独または複数組み合わせて用いる。重合開始剤の使用量はモノマー中0.05〜2重量%である。
【0020】
この工程b)におけるシードの重量に対する芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤の使用量は、特に限定するものではないが、次工程c)〜d)を経て得られる陰イオン交換樹脂がコアシェル型の粒子構造となり物理的な衝撃により壊れやすくなるのを防止するため、芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤の合計重量がシード重量に対して好ましくは0.5〜3倍、さらに好ましくは0.8〜2倍となるように調整する。
【0021】
次の工程c)で膨潤シードに吸収した芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤を重合してコポリマービーズを調製する。温度と時間は使用する重合開始剤によるが、50〜110℃の範囲で、最初は低温で徐々に反応温度を上げるのが良い。得られたコポリマービーズが所望の平均粒径に到達していなければ、前記工程b)とc)を繰り返し、目的の平均粒径のビーズとなるまで繰り返すことができる。
【0022】
工程d)はクロロメチル化およびアミノ化によりイオン交換基を導入する工程である。クロロメチル化は塩化鉄、塩化亜鉛などのルイス酸を触媒としてクロロメチルエーテルにより、40〜60℃で3〜5時間反応する方法、また同触媒の存在下、メチラール等とクロロ硫酸により反応系内でクロロメチルエーテルを発生させる方法等があるが、どれを用いてもよい。所定の反応時間経過後に過剰のクロロメチルエーテルを除去し、メタノール洗浄、ついで水で洗浄してクロロメチル化樹脂が得られる。得られた湿潤状態のクロロメチル化樹脂に2級アミン又は3級アミンを加えクロロメチル基の塩素原子を置換反応して陰イオン交換基を導入する。なお、前記工程b)で、芳香族ビニル化合物モノマーとしてクロロメチルスチレンを使用する場合には、前記工程c)でクロロメチル化されており、湿潤状態のクロロメチル化樹脂となっているため、この工程d)ではクロロメチル化せずに、2級アミン又は3級アミンを加えクロロメチル基の塩素原子を置換反応して陰イオン交換基を導入すればよい。ここに、2級アミン又は3級アミンとは、例えば、炭素原子2〜5の直鎖アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルケニル基を有する2級アミン又は3級アミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等があげられる。アミンのアルキル置換基が大きいほど反応しにくく、より高い反応温度、より長い反応時間が必要となるが50〜90℃で5〜15時間反応すればよい。ジクロロブテンの製造方法用の触媒としてはイオン交換基窒素原子のアルキル置換基が大きいほど良好な反応結果が得られる。従って、好ましい2級アミン又は3級アミンは、炭素原子2〜5の直鎖アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルケニル基を有する2級アミン又は3級アミンであり、例えば、ジエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、ジn−プロピルアミン、トリn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジn−ペンチルアミン、トリn−ペンチルアミン等が好ましいアミンとして例示できるが、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミンがより好ましく、トリn−プロピルアミンが最も好ましい。交換基を導入した後に希塩酸で洗浄、次いで水洗し湿潤樹脂が得られる。ジクロロブテンの製造方法用の触媒として使用する際に、水分は反応装置の金属材質を腐食させる原因となるため前処理により10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下とする。除去方法としては、特に限定するものではなく、例えば、加熱蒸発またはアセトンなどの水と完全混和する溶媒で処理し樹脂内部の水分と置換し、その後ガス気流下又は減圧条件で溶媒を揮発除去するなどすればよい。
【0023】
次に、本発明の微粒径陰イオン交換樹脂を触媒として使用するジクロロブテンの製造方法について説明する。
【0024】
本発明のジクロロブテンの製造方法を実施する際の溶媒は炭素数が4〜7の飽和炭化水素、すなわちブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等より選択され、工業用ヘキサンのような各種成分の混合物でもかまわない。
【0025】
本発明のジクロロブテンの製造方法での反応温度は20〜70℃である。20℃未満の場合には、反応熱の除去が難しく、70℃を超えると副反応が多くジクロロブテン収率が著しく低下する。好ましくは30〜60℃である。
【0026】
本発明のジクロロブテンの製造方法での微粒径陰イオン交換樹脂の使用量は、無触媒反応を抑制して副反応生成物の増加を防止し、本発明の効果を発現させるためには、反応液中に十分な量の微粒径陰イオン交換樹脂の触媒が存在することが必要である。反応は触媒粒子表面で起こると考えられるため、反応液中の触媒粒子の総表面積として反応液1リットルあたり概ね100平方メートル以上あれば良く、例えば、平均粒径が1μmであれば17g/l、平均粒径が3μmであれば50g/l程度以上の触媒濃度とすればよい。
【0027】
3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンの製造は、連続的に行っても、バッチ式でも良いが、生産効率、生産コスト等で有利なため、連続的に行うことが好ましい。
【0028】
ジクロロブテンの製造方法の具体的実施態様について図1,図2により例示的に説明するが、あくまでも例であって、これらに限定されるものではなく、さらに記載する種々の条件もそれらに限定されるものではない。図1,図2は1,3−ブタジエンと塩素の反応部1、除熱部2、循環ポンプ3およびインラインフィルター4が配管により連結されたループリアクターを形成し、該ループ内を反応液が0.4〜4m/秒の液線速度で循環し、該反応液中には微粒径陰イオン交換樹脂が分散している。
【0029】
1,3−ブタジエンと溶媒は、溶媒1リットルあたり1,3−ブタジエンを100〜400gの比率でフィードする。これらはループリアクターのどの場所に入れてもかまわないが、1,3−ブタジエンの不均一な溶解状態は、塩素との反応において望ましくない副反応の増加を招く恐れがあるため、循環ポンプ3のインペラー部、またはスタティックミキサーなどの挿入物により生じるレイノルズ数10000以上の高乱流条件下にフィードし反応部1に至るまでに均一に混合溶解する。
【0030】
循環ポンプ3は、遠心ポンプまたは渦巻きポンプ等どのような形式を用いてもかまわないが、ガスによりキャビテーションし難い方式のものが好ましい。
【0031】
反応部1はSUS316など汎用の金属材質で作成されたチューブである。ここにおいて、フィードされた塩素は、反応温度20〜70℃、好ましくは30〜60℃において反応消費される。
【0032】
フィードされた塩素の不十分な分散状態は副反応生成物のみならず、溶媒の塩素化ロスをも増大させるため、ベンチュリノズルなどの高度分散が可能な吹きこみ手段の使用、またはスタティックミキサーなどの挿入物を配管内に設置するなどの手段により生じるレイノルズ数10000以上の高乱流条件下に塩素をフィードする。更に塩素のフィードは、以下の式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率により制御する。これは塩素フィード点における塩素に対する1,3−ブタジエンの過剰倍率を表すもので、特に限定するものではないが、塩素フィード点において塩素が高濃度となるのを防いで副生成物の増加を防止してジクロロブテン類の収率を向上させるため、好ましくは10〜150、さらに好ましくは20〜100である。
【0033】
【数1】

【0034】
塩素は分割してフィードすることが望ましい。このとき式1で規定される各塩素フィード点における1,3−ブタジエンのモル倍率は分割数で除した値となり、局所的な塩素の高濃度領域を効果的に抑制できるため、塩素分割フィードのメリットは大きい。分割数は多いほど有利ではあるが、設備は複雑になるため2〜10分割でよい。塩素の分割フィードは図1のループリアクターに示されるように、反応部の長さ方向に分割フィードしても良いし、また図2のように複数の反応管を並列に配置した反応部において、各反応管毎に分割フィードしても良い。反応部の長さ方向に分割フィードする図1の場合、循環する反応液に塩素がフィードされた時点から0.2〜1秒後に次の塩素フィード点に循環する反応液が到達するように塩素フィード部を配置する。各塩素フィード点間の距離は循環する反応液の線速度により決定される。循環する反応液の反応部における線速度を1m/秒と設定した場合、各塩素フィード点間は0.2〜1mの間隔で配置される。図2のように複数の反応管を並列に配置した反応部においては、各反応管の長さは、循環する反応液が反応管を通過するのに少なくとも1秒必要とする長さとすればよい。
【0035】
反応液中の1,3−ブタジエンの濃度範囲は特に限定するものではないが、生成物のジクロロブテン類に塩素が付加する副反応を防止して収率を維持しつつ、ブタジエンの重合ロスを防ぐため、好ましくは5〜50g/l、さらに好ましくは10〜30g/lである。
【0036】
反応液中のジクロロブテン(3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンの合計)濃度は特に限定するものではないが、生産性を向上させて、反応液から溶媒除去するのに必要なエネルギーを少なくしつつ、副反応を防止してジクロロブテン収率を向上させるため、好ましくは150〜400g/l、さらに好ましくは200〜300g/lである。
【0037】
反応熱は除熱部2において除去される。形式は特に限定しないが、溶媒を揮発させ蒸発潜熱として除熱し蒸気を再凝縮して循環する方法、または熱交換器を使用する方法があるが、シェルアンドチューブ(多管)式の熱交換器の使用が好適である。除熱の条件としては、循環する反応液中に分散している微粒径陰イオン交換樹脂が伝熱面に付着し、伝熱効率の低下が抑制できるように反応液の線速度は1m/秒以上とするのが好ましい。除熱部2はループリアクターのどの場所に設置しても良く、反応部1としてシェルアンドチューブ(多管)式の熱交換器を使用し除熱部2を兼ねることもできる。
【0038】
反応液の一部はクロスフロー方式のインラインフィルター4において微粒径陰イオン交換樹脂触媒と分離して抜出され、触媒が分散した反応液の大部分は反応液の循環ループ内にとどまる。抜き出された反応液は後工程の溶媒分離工程へ送られる。インラインフィルターは複数のユニットを直列または並列に設置し交代で使用するのが好ましい。インラインフィルターのエレメントは、循環する反応液中の触媒粒子を完全に捕捉できるように、充分小さい孔径であることが必要である。エレメントの形式は焼結金属または焼結セラミックのほか焼結金網など如何なる形式でも使用できる。焼結金網は目の細かい金網が積層され高温で互いに結合されたものであり、下層ほど目が粗い構造とすることで目詰まりしにくいという利点があり、本発明の方法に好適に使用できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明の微粒子陰イオン交換樹脂は、ジクロロブテンの製造方法に触媒として使用することができ、粒径のバラツキが小さくビーズ状であり、物理的強度が大きく極めて破壊しにくいため、少ない触媒量で装置の運転操作性およびメンテナンス性に優れたプロセスを提供できる。また、本発明のジクロロブテンの製造方法により、汎用の材料金属により構成された装置により、従来技術に比較して高収率かつ後工程での溶媒分離に要するエネルギーが少なくて済む高濃度でジクロロブテンを含む反応液が得られる。更にまた、より高い選択性でクロロプレンモノマーの原料である3,4−ジクロロ−1−ブテンを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明で用いられるループリアクターの例を示す図である。
【図2】本発明で用いられるループリアクターの他の例を示す図である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0042】
反応液の組成分析はガスクロマトグラフィー(キャピラリーカラム:J&W DB−5;0.25mmI.D.×30m)により行った。
【0043】
ジクロロブテン収率、3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率および溶媒塩素化率は以下の計算式により算出した。
【0044】
ジクロロブテン収率(塩素ベース)=生成ジクロロブテン(モル)/フィード塩素(モル)
ジクロロブテン収率(ブタジエンベース)=生成ジクロロブテン(モル)/(フィードブタジエン(モル)−未反応ブタジエン(モル))
3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率=3,4−ジクロロ−1−ブテン/(3,4−ジクロロ−1−ブテン+1,4−ジクロロ−2−ブテン)
溶媒塩素化物副生率=副生塩素化溶媒(モル)/フィード塩素(モル)
実施例中の陰イオン交換樹脂Cl含量はホルハルト法により次のように測定した。乾燥樹脂0.1gをコニカルビーカーに採り、純水20ml、試薬硝酸10mlおよびAgNO標準溶液(0.05モル/l)10ml加えて、2分間攪拌しAgClを沈殿させた。次に指示薬として鉄ミョウバンを加え、NHSCNの標準溶液(0.05モル/l)で過剰のAgNOを逆滴定し、樹脂中のCl含有量を求めた。
【0045】
平均粒径は、粒子径・粒度分布測定装置(マイクロトラックHRA3920,日機装社製)を用いて、水を分散媒として測定した。
【0046】
なお、実施例においてジクロロブテンの製造方法に使用した反応装置は以下のループリアクターである。
【0047】
<ループリアクター>
循環ポンプとしてのマグネット式遠心ポンプ(SUS316製、インバータによる回転数制御)、2本直列に連結されたインラインフィルターユニット(SUS316L焼結金網製、500メッシュ、3500メッシュ、200メッシュ、100メッシュ、60メッシュ、40メッシュのSUS316製の金網が積層焼結され、チューブ状に加工されたもの、フィルター部内径10mm×長さ100mm)、および除熱部を兼ねる反応管(SUS316製、内径10mm×長さ500mm×3本、各反応管入り口には塩素のフィード口が設置されている)が直列に接続され、内容積が0.5リットルのループリアクターを構成している。溶媒および1,3−ブタジエンは循環ポンプの吸込口手前にフィードし、塩素ガスは3本の反応管入り口に3等分に分割フィードした。ループリアクター内の液量を一定に制御するため、反応管直後に設置した液面センサーに連動した抜出しポンプによりインラインフィルターを介して反応液を抜き出すようにしている。
【0048】
実施例1
500mlガラス製反応容器に純水300ml、スチレン41.0gおよびジビニルベンゼン−55を1.0g、メルカプト酢酸−2−エチルヘキシル2.0gを仕込み250rpmで攪拌し窒素気流で内部を置換した。重合開始剤として過硫酸カリウムの2重量%水溶液を40g添加し、温度70℃に昇温し15Hr反応させた。この乳化重合液を20μmの金網でろ過し、塊状となったポリマーを取り除き固形物を10重量%含む平均粒径1.1μmのシードスラリーを得た。
【0049】
得られたシードスラリーを500mlガラス製反応容器に100gとり、ホウ酸緩衝液100mlと乳化重合防止剤として67%重クロム酸ナトリウム水溶液0.4gを加えpH6のシードスラリーとし、これに重合開始剤を含むモノマー混合物8.2g(スチレン7.4g、ジビニルベンゼン−55 0.74g(架橋度5.0%)、t−ブチルパーベンゾエート0.016g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.024g)を攪拌しながら30分かけてゆっくりとフィードし、シードにモノマーを吸収させ膨潤シードを得た(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:0.8倍)。
【0050】
この膨潤シードスラリーに1%メチルヒドロキシエチルセルロース水溶液を50ml加え、2Hr室温で攪拌を継続し、温度を70℃に上げ15時間反応し、更に95℃で2時間反応した。得られたスラリーをシードとして、更にもう一回モノマー混合物14.8g(スチレン13.4g、ジビニルベンゼン−55 1.33g(架橋度5.0%)、t−ブチルパーベンゾエート0.028g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.042g)を使用して最初と同様の操作条件で膨潤シード調製、重合を行い、得られたスラリーを20μmの篩で処理し、加圧濾過、水洗、60℃にて乾燥しコポリマービーズ19gを得た。平均粒径は1.4μmであった。
【0051】
得られたコポリマービーズにクロロメチルエーテル150mlと三塩化鉄を2.2g加え攪拌し50℃にて5時間反応させ、過剰のクロロメチルエーテルをフィルターで分離除去し、メタノールで洗浄濾過、ついで水洗濾過してクロロメチル化樹脂を得た。次に乾燥せずにトリn−プロピルアミンを100ml加え、70℃にて15時間処理し、過剰のアミンを濾過分離し、希塩酸で洗浄濾過、水洗濾過し、アセトン処理で脱水濾過した後で、窒素気流で乾燥させ平均粒径1.6μm、Cl含量1.8eq./kgの微粒径陰イオン交換樹脂28gを得た。
【0052】
実施例2
500mlガラス製反応容器に実施例1と同じ乳化重合シードスラリー100gと、ホウ酸緩衝液100mlと乳化重合防止剤として67%重クロム酸ナトリウム水溶液0.4gをとり、pH6のシードスラリーとし、これに重合開始剤を含むモノマー混合物(スチレン24.8g、ジビニルベンゼン−55 2.5g(架橋度5.0%)、t−ブチルパーベンゾエート0.023g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.034g)を加え、超音波ホモジナイザーでモノマーを分散させシードに吸収させ膨潤シードを得た(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:2.5倍)。
【0053】
この膨潤シードスラリーに1%メチルヒドロキシエチルセルロース水溶液を50ml加え、2Hr室温で攪拌を継続し、加圧反応器に移し、窒素ガス置換し、150rpmで攪拌しながら温度を70℃に上げ15時間反応し、更に110℃で2時間反応した。得られたスラリーを、20μmの篩で塊を除き、加圧濾過分離、水洗、乾燥(60℃)し、平均粒径1.3μmのコポリマービーズ33gを得た。このうちの20gを使用し、実施例1と同様にしてクロロメチル化し、トリn−プロピルアミンにより交換基を導入して平均粒径1.8μm、Cl含量1.5eq./kgの微粒径陰イオン交換樹脂30gを得た。
【0054】
実施例3
実施例1で得た微粒径陰イオン交換樹脂25gをヘキサンに分散させループリアクターに仕込み、反応液中の濃度を50g/lとし、液の循環流量を9リットル/分に調節した。溶媒ヘキサン(工業用1級)を毎分30.0ml、1,3−ブタジエンを毎分6.1g、塩素ガスを毎分7.0gフィードし反応した。反応温度は反応部出口50℃に制御した。反応液の1,3−ブタジエン濃度は12.4g/lで式1で計算される1,3−ブタジエンのモル倍率は63であった。反応液はインラインフィルターを介して触媒と分離し、33g/分で抜出し、滞留時間は12分であった。1,3−ブタジエン転化率は90.6%、反応液のジクロロブテン濃度は270g/l、溶媒/ジクロロブテン重量比は1.69(モル比2.46)で、ジクロロブテン収率は塩素ベースで92.1%、1,3−ブタジエンベースで96.0%であった。またジクロロブテン中の3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率は71.0%で、溶媒ヘキサン塩素化物の副生率は0.2%であった。更に反応液の循環を継続し、反応を断続的(5時間/日)に13日間行った。その間の平均粒径(MV)と反応成績について表1に示した。
【0055】
【表1】

【0056】
平均粒径は、スタート時の1.6μm(変動係数Cv23%)に対して13日経過後は1.5μm(変動係数Cv37%)と若干粒径分布が広くなり、0.5μm未満の粒子の比率が4.8%と増加したがほぼ元の平均粒径を維持した。また反応成績も良好であった。この連続試験におけるSUS316製反応管の平均減肉速度は0.03mm/Yであった。
【0057】
実施例4
実施例2で得た微粒径陰イオン交換樹脂25gをヘキサンに分散させループリアクターに仕込み、反応液中の濃度を50g/lとし、液の循環流量を9リットル/分に調節した。溶媒ヘキサン(工業用1級)を毎分30.0ml、1,3−ブタジエンを毎分6.1g、塩素ガスを毎分7.4gフィードし反応した。反応温度は反応部出口50℃に制御した。反応液の1,3−ブタジエン濃度は10.4g/lで式1で計算される1,3−ブタジエンのモル倍率は50であった。反応液はインラインフィルターを介して触媒と分離し、33g/分で抜出し、滞留時間は12分であった。1,3−ブタジエン転化率は92.2%、反応液のジクロロブテン濃度は280g/l、溶媒/ジクロロブテン重量比は1.62(モル比2.35)で、ジクロロブテン収率は塩素ベースで91.6%、1,3−ブタジエンベースで95.6%であった。またジクロロブテン中の3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率は71.1%で、溶媒ヘキサン塩素化物の副生率は0.2%であった。更に反応液の循環を継続し、反応を断続的(5時間/日)に15日間行った。その間の平均粒径(MV)と反応成績について表2に示した。
【0058】
【表2】

【0059】
平均粒径は、スタート時の1.8μm(変動係数Cv25%)に対して15日経過後は1.4μm(変動係数Cv43%)と粒径分布が広くなり、0.5μm未満の粒子の比率が5.1%と増加したが、平均粒径の変化は小さかった。また反応成績も良好であった。この連続試験におけるSUS316製反応管の平均減肉速度は0.05mm/Yであった。
【0060】
実施例5
1000mlガラス製反応容器に実施例1と同条件で調製した乳化重合シードスラリー380gと、ホウ酸緩衝液400mlと乳化重合防止剤として67%重クロム酸ナトリウム水溶液1.0gをとり、pH6のシードスラリーとし、これに重合開始剤を含むモノマー混合物(スチレン55.0g、ジビニルベンゼン−55 8.0g(架橋度7.0%)、t−ブチルパーベンゾエート0.080g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.112g)を加え、超音波ホモジナイザーでモノマーを分散させシードに吸収させ膨潤シードを得た(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:1.5倍)。
【0061】
この膨潤シードスラリーを加圧反応器に移し、1%メチルヒドロキシエチルセルロース水溶液を100ml加え窒素ガス置換し、6Hr室温において150rpmで攪拌した後に、温度を70℃に上げ15時間反応し、更に110℃で2時間反応した。得られたスラリーを、20μmの篩で塊を除き、加圧濾過分離、水洗、60℃で15Hr乾燥し、コポリマービーズ90gを得た。得られたコポリマービーズにクロロメチルエーテル350mlと三塩化鉄を5.4g加え攪拌し50℃にて5時間反応させ、過剰のクロロメチルエーテルをフィルターで分離除去し、メタノールで洗浄濾過、ついで水洗濾過してクロロメチル化樹脂を得た。次に、乾燥せずにそのうちの半分をとり分け、トリn−プロピルアミンを150ml加え、70℃にて15時間処理し、過剰のアミンを濾過分離し、希塩酸で洗浄濾過、水洗濾過し、アセトン処理で脱水濾過した後で、窒素気流で乾燥させ平均粒径1.5μm、Cl含量1.4eq./kgの微粒径陰イオン交換樹脂52gを得た。
【0062】
実施例6
実施例5で得られた微粒径陰イオン交換樹脂を使用し実施例3と同様にしてジクロロブテンの製造を行った。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】

【0064】
平均粒径は、スタート時の1.5μm(変動係数Cv19%)に対して15日経過後は1.7μm(変動係数Cv39%)と粒径分布が広くなり、0.5μm未満の粒子の比率が4.1%と増加したが、平均粒径の変化は小さかった。また反応成績も良好であった。
【0065】
実施例7
実施例1と同じ操作で得られた平均粒径1.2μmのシードスラリーを反応容器に50gとり、乳化重合防止剤として67%重クロム酸ナトリウム水溶液0.4gを加え、これに重合開始剤を含むモノマー混合物7.0g(スチレン6.8g、ジビニルベンゼン−55 0.16g(架橋度1.3%)、t−ブチルパーベンゾエート0.014g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.020g)をホウ酸緩衝液100mlに超音波で分散させて添加し、シードにモノマーを吸収させ膨潤シードを得た(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:1.4倍)。
【0066】
この膨潤シードスラリーに1%メチルヒドロキシエチルセルロース水溶液を100ml加え、1Hr室温で攪拌を継続し、温度を70℃に上げ15時間反応し、更に95℃で2時間反応した。得られたスラリーをシードとして、モノマー混合物10.7g(スチレン10.1g、ジビニルベンゼン−55 0.5g(架橋度2.6%)、t−ブチルパーベンゾエート0.020g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.031g)をホウ酸緩衝液100mlに超音波で分散させて添加し、シードにモノマーを吸収させ膨潤シードを得た(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:0.9倍)。
【0067】
更にもう2回、同組成のモノマー混合物(架橋度2.6%)および、同条件(ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:0.9倍)において膨潤シード調製、重合を行った。得られたスラリーを20μmの篩で処理し、加圧濾過、水洗、60℃にて乾燥しコポリマービーズを得た。平均粒径は3.1μmであった。
【0068】
得られたコポリマービーズを実施例1と同様にしてクロロメチル化し、トリエチルアミンでイオン交換基を導入し、平均粒径3.9μm、Cl含量2.1eq./kgの微粒径陰イオン交換樹脂を得た。
【0069】
この樹脂をヘキサンに分散させループリアクターに仕込み、液中の濃度を50g/lとし、流量を9リットル/分に調節し循環した。表4に循環日数と平均粒径の変化について示した。13日後平均粒径は3.7μmとなり平均粒子径は殆ど変化しなかった。
【0070】
【表4】

【0071】
比較例1
重合開始剤を含むモノマー混合物(スチレン60.0g、ジビニルベンゼン−55 6.0g(架橋度5.0%)、t−ブチルパーベンゾエート0.07g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.130g)を4wt%ポリビニルアルコール水溶液750gおよび重クロム酸ナトリウム1.0gとともに1Lオートクレーブに仕込み3000rpmで攪拌し、室温において0.5Hr、70℃で15時間、更に110℃で2時間反応した。スラリーを取出し、100μmの篩で塊を取り除き、濾過、水洗、乾燥により懸濁重合シードを得た。平均粒径は12μmであった。得られたシード50gを純水130gに分散し、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液3.3g、67%重クロム酸ナトリウム水溶液0.4gを加え攪拌した。このスラリーにモノマー混合物(スチレン45.5g、ジビニルベンゼン−55 4.5g(架橋度5%)、t−ブチルパーベンゾエート0.09g、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.06g)を15分かけて徐々に添加しシードに吸収させ、膨潤シードとした(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:1.0倍)。
【0072】
次にゼラチン液(温水42g、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液3.3g、ゼラチン0.5g)を加え、70℃で10時間、110℃で3時間重合させた。得られたコポリマーをシードとし、上記と同じモノマー混合物を吸収させ、膨潤シードとし(芳香族ビニル化合物モノマー+架橋剤の重量/シード重量:0.5倍)。同様の条件で重合させIPN構造のゲル型コポリマービーズ150gを得た。次に実施例1と同様にしてイオン交換基を導入し、平均粒径15μm、Cl含量1.1eq./kgの陰イオン交換樹脂を得た。
【0073】
この樹脂をヘキサンに分散させループリアクターに仕込み、液中の濃度を50g/lとし、流量を9リットル/分に調節し循環した。表5に循環日数と平均粒径の変化について示した。粒子破壊が著しく進行した。
【0074】
【表5】

【0075】
比較例2
循環ポンプとしてのマグネット式遠心ポンプ(接液部テフロン(登録商標))および除熱部を兼ねる反応管(SUS316製、内径10mm×長さ500mm×3本、各反応管入り口には塩素のフィード口が設置されている)および反応液の一部を圧力センサーに連動する開閉バルブにより系外に抜き出す機構、が直列に接続されループリアクターを構成している。触媒としてピリジンを溶媒ヘキサン中に0.2g/lの濃度で溶解して連続的にフィードして使用した以外は、実施例と同様の流量条件において反応を行った。
【0076】
ジクロロブテン収率は塩素ベースで93.0%、1,3−ブタジエンベースで94.5%、また3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率は51.2%と良好であったが、SUS316製反応管の平均減肉速度は3.2mm/Yと、激しい腐食が観測された。
【0077】
比較例3
実施例と同じループリアクターを使用し、無触媒で反応した。液の循環流量を6リットル/分に調節し、溶媒ヘキサン(工業用1級)を毎分30.0ml、1,3−ブタジエンを毎分4.8g、塩素ガスを毎分5.3gフィードし反応した。反応温度は反応部出口50℃に制御した。反応液はインラインフィルターを介して、30g/分で抜出した。1,3−ブタジエン転化率は77.8%、反応液のジクロロブテン濃度は170g/l、溶媒/ジクロロブテン重量比は4.7(モル比6.8)であった。ジクロロブテン収率は塩素ベースで77.7%、1,3−ブタジエンベースで83.2%、溶媒ヘキサン塩素化物の副生率は2.2%と副反応生成物が多く低収率であった。またジクロロブテン中の3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率は、イオン交換樹脂を触媒とした場合に比較し低く、45.1%であった。
【0078】
比較例4
陰イオン交換樹脂として平均粒径77μmの小粒径陰イオン交換樹脂ダウエックス1×8(母体樹脂スチレン系、ゲル型、イオン交換基窒素原子がメチル基で置換された4級アンモニウム型の強塩基性樹脂(Cl型))をアセトン処理で脱水濾過した後で、窒素気流で乾燥させた。得られた乾燥ビーズ50gをヘキサンに分散させ実施例と同じループリアクターに仕込み、反応液中の濃度を100g/lとし、液の循環流量を6リットル/分に調節した。溶媒ヘキサン(工業用1級)を毎分30.0ml、1,3−ブタジエンを毎分5.9g、塩素ガスを毎分6.1gフィードし反応した。反応温度は反応部出口50℃に制御した。反応液はインラインフィルターを介して触媒と分離し、32g/分で抜出した。1,3−ブタジエン転化率は98.2%、反応液のジクロロブテン濃度は210g/l、溶媒/ジクロロブテン重量比は2.18(モル比3.17)であった。ジクロロブテン収率は塩素ベースで88.1%、1,3−ブタジエンベースで72.0%、溶媒ヘキサン塩素化物の副生率は0.76%、またジクロロブテン中の3,4−ジクロロ−1−ブテン選択率は52.3%であった。
【符号の説明】
【0079】
1 反応部
2 除熱部
3 循環ポンプ
4 インラインフィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中20〜70℃の反応温度で1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造するジクロロブテンの製造方法に使用する触媒としての微粒径陰イオン交換樹脂であって、平均粒径が0.5〜10μmであることを特徴とする微粒径陰イオン交換樹脂。
【請求項2】
微粒径陰イオン交換樹脂が、
a)架橋剤を含むモノマーを乳化重合することにより、球状微粒子をシードとして調製し、
b)このシードに芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤と重合開始剤を吸収させて膨潤シードを調製し、
c)膨潤シードに吸収された芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤を重合してコポリマービーズを調製し、
d)得られたコポリマービーズを必要に応じクロロメチル化し、ついで2級アミン又は3級アミンにより陰イオン交換基を導入することにより得られることを特徴とする請求項1に記載の微粒径陰イオン交換樹脂。
【請求項3】
工程d)において、2級アミン又は3級アミンが、炭素原子2〜5の直鎖アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルケニル基を有する2級アミン又は3級アミンであることを特徴とする請求項2に記載の微粒径陰イオン交換樹脂。
【請求項4】
a)架橋剤を含むモノマーを乳化重合することにより、球状微粒子をシードとして調製し、
b)このシードに芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤と重合開始剤を吸収させて膨潤シードを調製し、
c)膨潤シードに吸収された芳香族ビニル化合物モノマーと架橋剤を重合してコポリマービーズを調製し、
d)得られたコポリマービーズを必要に応じクロロメチル化し、ついで2級アミン又は3級アミンにより陰イオン交換基を導入することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の微粒径陰イオン交換樹脂の製造法。
【請求項5】
工程d)において、2級アミン又は3級アミンが、炭素原子2〜5の直鎖アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルケニル基を有する2級アミン又は3級アミンであることを特徴とする請求項4に記載の微粒径陰イオン交換樹脂の製造法。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載の微粒径陰イオン交換樹脂の存在下、溶媒中20〜70℃の反応温度で1,3−ブタジエンに塩素を反応させ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを製造することを特徴とするジクロロブテンの製造方法。
【請求項7】
反応部、除熱部、循環ポンプおよびインラインフィルターが配管により連結されたループリアクターを形成し、該ループ内を微粒径陰イオン交換樹脂が分散した反応液が循環ポンプにより循環しているループリアクターを用いて、
1)循環する反応液に1,3−ブタジエンと溶媒をフィードし、十分混合せしめた後、
2)レイノルズ数10000以上の高乱流条件下、塩素をフィードし反応液中に混合分散し、1,3−ブタジエンと塩素を反応せしめ、3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンを生成し、
3)インラインフィルターにおいて反応液の一部とともに、生成した3,4−ジクロロ−1−ブテンおよび1,4−ジクロロ−2−ブテンをループリアクター外に抜き出し、微粒径陰イオン交換樹脂はループリアクター内にとどめ反応液の大部分とともに1,3−ブタジエンと溶媒のフィード領域に循環し、
4)除熱をループ内の任意の場所で除熱部により行う、
ことを特徴とする請求項6に記載のジクロロブテンの製造方法。
【請求項8】
溶媒が炭素数4〜7の飽和炭化水素であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のジクロロブテンの製造方法。
【請求項9】
微粒径陰イオン交換樹脂におけるイオン交換基窒素原子が炭素原子2〜5の直鎖アルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアルケニル基で置換された3級アミン型または4級アンモニウム型の微粒径陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかの項に記載のジクロロブテンの製造方法。
【請求項10】
インラインフィルターが焼結金網製であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかの項に記載のジクロロブテンの製造方法。
【請求項11】
以下の式1で規定される1,3−ブタジエンのモル倍率が10〜150、反応液中の1,3−ブタジエン濃度が5〜50g/l、反応液中のジクロロブテン濃度が150〜400g/lの条件において反応させることを特徴とする請求項6〜請求項10のいずれかの項に記載のジクロロブテンの製造方法。
【数1】


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−45812(P2011−45812A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195228(P2009−195228)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】