説明

微粒状填料の水性懸濁液、その製造法および填料含有紙を製造するための該水性懸濁液の使用

少なくとも部分的にアニオン性ラテックスで被覆されている微粒状填料の水性スラリー、この場合このスラリーは、−5〜−50℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのアニオン性ラテックスで微粒状填料の水性スラリーを処理することによって得られたものであり、水性スラリーの製造ならびに填料を含有する紙、填料を含有する厚紙または填料を含有するボール紙を紙料の脱水によって製造する際の紙料への添加剤としての前記水性スラリーの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒状填料の水性懸濁液、その製造法ならびに高い乾燥強度を有する填料含有紙、填料含有厚紙および填料含有ボール紙を製造する際の紙料への添加剤としての前記水性懸濁液の使用に関する。
【0002】
填料含有紙を製造する場合、填料スラリーは、繊維懸濁液に添加され、その後にこの繊維懸濁液は、抄紙機のフォーマーに通過される。歩留まり向上剤または歩留まり向上剤系は、一般に填料/繊維材料懸濁液に添加され、可能な限り大量に填料は、枚葉紙中に保留されうる。前記紙に填料を添加することは、枚葉紙特性の数多くの改善を達成させる可能性を抄紙機に与える。この枚葉紙特性には、不透明度、白色度、触覚性および印刷可能性が属する。
【0003】
更に、填料が繊維材料よりも安価である場合には、填料の添加量または増加された添加量は、繊維材料の割合の減少、ひいては紙の製造費の減少を生じる。填料含有紙または特に高い填料含量を有する紙は、填料不含紙または僅かな填料含量を有する紙よりも簡単に乾燥させることができる。この結果として、抄紙機は、より高速により低い蒸気消費量で運転させることができ、このことは、生産性を高め、ならびに費用を低下させる。
【0004】
しかし、繊維懸濁液への填料の添加は、欠点も必然的に伴い、この欠点は、部分的にさらなる紙助剤の添加によって補償されうる。所定の基本重量に対して、使用可能な填料量に関連する限度が存在する。紙の強度特性は、通常、紙中の填料量を制限する最も重要なパラメーターである。また、この場合には、別のファクター、例えば填料の保留、紙料懸濁液の脱水ならびに保留およびサイジングの際の場合により高められた化学薬品需要量が1つの役を演じる。
【0005】
紙の強度特性の損失は、多くの場合に全体的または部分的に乾燥補強剤および湿潤補強剤の使用によって補償されうる。この場合、通常の方法は、カチオン性澱粉を乾燥補強剤として紙料中に添加することである。同様に、例えばカチオン性またはアニオン性ポリアクリルアミドを基礎とする合成乾燥補強剤および湿潤補強剤が使用される。しかし、添加量および補強作用は、多くの場合に制限されている。また、填料の増加による強度損失に関連する補償効果、ひいてはそもそも実現可能な填料の増加は、同程度に制限されている。更に、全ての強度特性は、同程度に高められず、多くの場合には、そもそも不十分にのみ乾燥補強剤の使用によって高められる。そのための1つの重要な例は、引裂強さであり、この引裂強さは、別の強度パラメーターと比較して澱粉または合成乾燥補強剤の使用によって僅かにのみ影響を及ぼされる。他面、紙中での填料含量の上昇は、一般に引裂強さに対して極めて強い不利な影響を及ぼす。
【0006】
更に、重要な性質は、紙の厚さおよび剛度である。填料含量の上昇は、同じ基本重量の際に紙密度の増加および枚葉紙の厚さの減少を生じる。この枚葉紙の厚さの減少は、紙剛度の著しい減少を生じる。この紙剛度の減少は、多くの場合に乾燥補強剤の使用だけで補償されうるものではない。しばしば、付加的な手段、例えばポリシングスタック中での加圧セクション、カレンダーまたは抄紙機のドライエンドにおける機械的加圧の減少が必要とされる。この抄紙機のドライエンドにおける機械的加圧の減少は、填料の増加によって完全または部分的に厚さの損失を補償する。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公告第2516097号明細書の記載から、正のζ電位を有する無機粒子の水性懸濁液を樹脂の無機ラテックスと混合することは、公知であり、この場合この懸濁液中の無機物質の粒子およびラテックス中の樹脂の負電荷と正電荷との平衡は、本質的に全ての樹脂粒子が無機物質の粒子の表面上に結合され、こうして得られた被覆された粒子が本質的に0のζ電位を有するように調節される。しかし、ラテックスでの無機粒子の処理は、無機粒子が正のζ電位を有するように、無機粒子がカチオン性薬剤、例えばカチオン性澱粉で前処理されることを必要とする。この水性懸濁液は、填料を含有する紙の製造の際に紙料に添加される。
【0008】
欧州特許出願公告第0573458号明細書の記載から、填料含有紙の製造のために、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒状填料の水性懸濁液を製造する方法は、公知である。前記方法の場合には、最初に填料の水性懸濁液に紙用カチオン性補強剤が添加され、その後に紙用非イオン性補強剤および/またはアニオン性補強剤が添加されるか、または紙用非イオン性またはアニオン性サイジング剤が添加される。しかし、カチオン性出発材料は、常に微粒状填料が陽イオンの電荷を有するような量で使用される。
【0009】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19821089号明細書の記載から、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒状填料の水性懸濁液を製造するための別の方法は、公知である。この方法の場合には、填料の水性懸濁液は、紙用カチオン性補強剤の不在下で水性分散液の形の少なくとも1つのポリマーサイジング剤で処理される。しかし、このような分散液は、常にポリマー乳化剤、例えば分解澱粉または合成ポリマーを含有する。
【0010】
出願番号07111863.2を有する未公開の欧州出願の記載から、微粒状填料の水性スラリーの処理方法が公知であり、この場合この処理は、少なくとも1つの微粒状填料の水性スラリーを加熱し、引続きラテックスの水性分散液を添加することによって行なわれる。それによって、高い填料含量を有する紙が製造され、この紙は、同様に高い乾燥強度を示す。この方法の欠点は、微粒状填料の水性スラリーの昇温が実際に劣悪な取扱いのために殆んど実施不可能であることである。
【0011】
WO−A−03/074786には、少なくとも部分的にポリマーで被覆されている微粒状填料の水性懸濁液が開示されている。このポリマーは、紙塗被スリップ剤用結合剤であり、この紙塗被スリップ剤のガラス転移温度は、−40〜+50℃の範囲内、特に6℃未満である。実施例で使用される結合材は、5℃のガラス転移温度を有する。結合剤での微粒状填料の水性スラリーの処理は、室温で行なわれる。
【0012】
本発明は、製紙の際に公知のスラリーと比較して改善された裂断長および印刷可能性を生じる微粒状填料のさらなる水性スラリーを提供するという課題に基づくものである。更に、本発明方法により製造される紙は、高い填料含量および高い乾燥強度を有するはずである。
【0013】
この課題は、本発明によれば、少なくとも部分的にアニオン性ラテックスで被覆されている微粒状填料の水性スラリーで解決され、この場合このスラリーは、−5〜−50℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つの無機ラテックスで微粒状填料の水性スラリーを処理することによって得ることができる。
【0014】
本発明による水性スラリーは、例えば少なくとも1つの微粒状填料を1〜70質量%、特に5〜50質量%、特に有利に10〜40質量%含有する。ラテックスの量は、例えば填料に対して0.01〜10質量%、特に0.1〜5質量%、特に有利に0.2〜3質量%である。
【0015】
更に、本発明の対象は、水性スラリーの製造法であり、この場合少なくとも1つの微粒状填料の水性スラリーには、填料に対して少なくとも1つのアニオン性ラテックス0.01〜10質量%が添加されるか、または少なくとも1つの微粒状填料の水性スラリーは、無機ラテックスの水性分散液中に導入され、これらの成分は、そのつど混合される。
【0016】
更に、本発明の対象は、紙料の脱水によって高い乾燥強度を有する、填料含有紙、填料含有厚紙または填料含有ボール紙の製造の際に、紙料への添加剤としての上記水性スラリーの使用である。
【0017】
ラテックスの概念は、本発明の範囲内で特に分散液または乳濁液の形で使用される水不溶性ホモポリマーおよび水不溶性コポリマーである。
【0018】
本発明によれば、ガラス転移温度(DSCにより測定した)が−5〜−50℃の範囲内にある無機ラテックスが使用される。有利には、微粒状填料の本発明による水性スラリー中の−10〜−40℃、特に有利に−10〜−30℃のガラス転移温度を有するアニオン性ラテックスが使用される。
【0019】
ガラス転移温度Tgは、当業者に一般に公知である。このガラス転移温度は、G.カニッヒ(G.Kanig)(コロイドマガジン&ポリマーマガジン第190巻1頁、方程式1(Kolloid-Zeitschrift & Zeitschrift fuer Polymer, Bd.190, Seite1, Gleichung 1))によると、このガラス転移温度は分子量の増大とともに限界値に向かう傾向にあるガラス転移温度の限界値を意味する。このガラス転移温度は、DSC法(示差走査熱量測定、20K/分、中点値、DIN53765)により測定される。
【0020】
フォックス(Fox)(T.G. Fox, Bull. Am. Phys. Soc. 1956[Ser. II]1,第123頁およびUllmann's Encyclopaedie der technischen Chemie, 第19巻, 第18頁, 第4版, Verlag Chemie, Weinheim, 1980)により、次の良好な近似式が最大で弱く架橋されたコポリマーのガラス転移温度に適用される:
1/Tg=x1/Tg1 + x2/Tg2 + xn/Tgn
上記式中、x1,x2,....xnは、モノマー1,2,....nの質量分数を表わし、Tg1,Tg2,....Tgnは、それぞれモノマー1,2,...nの1つから形成されたポリマーのケルビン度でのガラス転移温度を表わす。大抵のモノマーのホモポリマーのためのTg値は、公知であり、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第5版, 第A21卷,第169頁、VCH Weinheim,1992中に記載されている。更に、ホモポリマーのガラス転移温度の出所は、例えばB.J. Brandrup,E.H.Immergut,Polymer Handbook,第1版、J.Wiley,New York,1966、第2版,J.Wiley,New York,1975および第3版,J.Wiley,New York,1989である。
【0021】
前記ラテックスは、特に、少なくとも40質量%、有利に少なくとも60質量%、特に有利に少なくとも80質量%がいわゆる主要モノマー(a)からなる。
【0022】
主要モノマー(a)は、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレート、C原子20個までを有するカルボン酸のビニルエステル、C原子20個までを有するビニル芳香族化合物、エチレン系不飽和ニトリル、ビニルハロゲン化物、C原子1〜10個を有するアルコールのビニルエーテル、C原子2〜8個および1個または2個の二重結合を有する脂肪族炭化水素、またはこれらのモノマーの混合物から選択されている。
【0023】
例えば、C1〜C10−アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、メチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートを挙げることができる。
【0024】
(メタ)殊に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの混合物も適している。
【0025】
炭素原子1〜20個を有するカルボン酸のビニルエステルは、たとえばラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステル(Versaticsaeurevinylester)および酢酸ビニルである。
【0026】
20個までのC原子を有するビニル芳香族化合物として、ビニルトルエン、α−およびp−メチルスチレン、α−ブチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレンおよび特にスチレンが考慮に入れられる。エチレン系不飽和ニトリルの例は、アクリルニトリルおよびメタクリルニトリルである。
【0027】
ビニルハロゲン化物は、塩素、フッ素または臭素で置換されたエチレン性不飽和化合物、好ましくは塩化ビニルおよび塩化ビニリデンである。
【0028】
1〜10個のC原子を含有するアルコールのビニルエーテルとして、例えばビニルメチルエーテルまたはビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。好ましいのは、1〜4個のC原子を含有するアルコールのビニルエーテルである。
【0029】
2〜8個のC原子および1個または2個のオレフィン系二重結合を有する脂肪族炭化水素として、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレンおよびクロロプレンを挙げることができる。
【0030】
有利な主要モノマー(a)は、C1〜C20−アルキル(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートとビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物(概括的にポリアクリレートラテックスとも呼称される)または2個の二重結合を有する炭化水素、特にブタジエン、またはこの種の炭化水素とビニル芳香族化合物、特にスチレンとの混合物(概括的にポリブタジエンラテックスとも呼称される)である。
【0031】
ラテックスは、主要モノマー(a)と共に他のモノマー(b)、例えばヒドロキシル基含有モノマー、殊にC1〜C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、およびアルコキシ基を有するモノマー、例えばヒドロキシ基含有モノマーをアルコキシド、殊にエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドでアルコキシル化することによって得られるモノマーを含有することができる。
【0032】
更に、モノマー(b)は、少なくとも2個、有利に2〜6個、特に有利に2〜4個、殊に有利に2〜3個、殊に2個のラジカル重合可能な二重結合を有している。この種の化合物は、架橋剤とも呼称される。
【0033】
この場合、架橋剤(b)の少なくとも2個のラジカル重合可能な二重結合は、(メタ)アクリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基、アリルエーテル基およびアリルエステル基からなる群から選択されてよい。架橋剤(b)の例は、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、アリルアクリレート、アリルメタクリレート、メタリルアクリレート、メタリルメタクリレート、(メタ)アクリル酸ブト−3−エン−2−イルエステル、(メタ)アクリル酸ブト−2−エン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸3−メチル−ブト−2−エン−1−イルエステル、(メタ)アクリル酸とゲラニオールとのエステル、シトロネロール、桂皮アルコール、グリセリンモノ−または−ジアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノ−または−ジアリルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,3−プロパンジオールモノアリルエーテル、1,4−ブタンジオールモノアリルエーテルならびにさらにイタコン酸ジアリルエステルである。好ましいのは、アリルアクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジアクリレートおよび1,6−ヘキサンジオールジアクリレートである。
【0034】
更に、アニオン性ラテックスは、他のモノマー(c)、例えばカルボン酸基を有するモノマー、その塩または無水物を含有することができる。例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸またはフマル酸およびアコニット酸を挙げることができる。ラテックス中のエチレン系不飽和酸の含量は、一般に10質量%未満である。前記モノマー(c)の含量は、例えば少なくとも1質量%、有利に少なくとも2質量%、特に有利に少なくとも3質量%である。ラテックスの酸基は、場合によっては後の使用前に少なくとも部分的に中和されていてよい。特に、酸基の少なくとも30モル%、特に有利に50〜100モル%が中和される。塩基として、揮発性塩基、例えばアンモニアまたは非揮発性塩基、例えばアルカリ金属水酸化物、殊に苛性ソーダ液が適している。
【0035】
アニオン性ラテックスの組成の場合に、ラテックスのガラス転移温度(DSCにより測定した)が−5〜−50℃の範囲内、有利に−10〜−40℃の範囲内、特に有利に−10〜−30℃の範囲内にあることは、決定的なことである。当業者には、先に記載された刊行物により、如何にモノマーを選択することによって相応するガラス転移温度を有するアニオン性ラテックスが得られるのかは、公知である。
【0036】
有利に使用されるアニオン性ラテックスは、例えば(1)スチレンおよび/またはアクリルニトリルまたはメタクリルニトリル、(2)C1〜C10アルコールのアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルおよび場合によっては(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸からなる水性分散液である。
【0037】
特に好ましいのは、(1)スチレンおよび/またはアクリルニトリル、(2)C1〜C4アルコールのアクリル酸エステルおよび場合によっては(3)アクリル酸からなる水性分散液である。
【0038】
例えば、この種の特に好ましいポリアクリレートラテックスは、スチレン2〜15質量%、アクリルニトリル2〜15質量%、C1〜C4アルキルアクリレート、有利にC4アクリレート、例えばn−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレートおよび/または第三ブチルアクリレート75〜95質量%、およびアクリル酸0〜5質量%を含有する。
【0039】
前記ラテックスの製造は、一般に乳化重合によって行われ、したがってエマルションポリマーが得られる。ラジカル乳化重合法による水性ポリマー分散液の製造は、自体公知である(Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第XIV, Makromolekulare Stoffe, 上記引用文中、第133頁以降)。
【0040】
乳化重合の場合、ラテックスの製造のために、イオン性および/または非イオン性の乳化剤および/または保護コロイドもしくは安定剤が界面活性化合物として使用される。界面活性剤は、通常、重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、殊に0.2〜3質量%の量で使用される。
【0041】
常用の乳化剤は、例えば高級脂肪アルコールスルフェートのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩、例えばNa−n−ラウリルスルフェート、脂肪アルコールホスフェート、3〜30のエトキシル化度を有するエトキシル化C8〜C10アルキルフェノールならびに5〜50のエトキシル化度を有するエトキシル化C8〜C25脂肪アルコールである。非イオン性乳化剤とイオン性乳化剤との混合物も考えられうる。更に、ホスフェート基含有および/またはスルフェート基含有のエトキシル化および/またはプロポキシル化アルキルフェノールおよび/または脂肪アルコールは、適している。更に、適切な乳化剤は、Houben−Weyl,Methoden der organischen Chemie、第XIV巻、Makromolekulare Stoffe,Georg Thieme Verlag,Stuttgart 1961年、第192〜209頁にも記載されている。
【0042】
乳化重合のための水溶性開始剤は、ラテックスを製造するために、例えばペルオキシ二硫酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属塩、例えばペルオキソ二硫酸ナトリウム、過酸化水素または有機過酸化物、例えば第三ブチルヒドロペルオキシドである。いわゆる還元−酸化(レドックス)開始剤系もまた適している。
【0043】
開始剤の量は、一般に重合すべきモノマーに対して0.1〜10質量%、有利に0.5〜5質量%である。乳化重合の際に、複数の異なる開始剤を使用することもできる。
【0044】
乳化重合の場合には、例えば分子量を減少させる、重合すべきモノマー100質量部に対して0〜3質量部の量で調節剤を使用することができる。例えば、チオール基を有する化合物、例えば第三ブチルメルカプタン、チオグリコール酸エチルアクリルエステル、メルカプトエチノール、メルカプトプロピルトリメトキシシランまたは第三ドデシルメルカプタン、またはチオール基なしの調節剤、殊に例えばテルピノールが適している。
【0045】
乳化重合は、ラテックスの製造のために、一般に30〜130℃、特に50〜100℃で行なわれる。重合媒体は、水のみからなっていても、水および水と混合可能な液体、例えばメタノールからなる混合物からなってもよい。有利には、水のみが使用される。エマルジョン重合は、バッチプロセスのみならず、段階方式または勾配方式を含めた供給法の形でも実施することができる。重合バッチの一部を装入し、重合温度に加熱し、部分的に重合し、引続き重合バッチの残部を、通常、その1つもしくは複数がモノマーを純粋な形でまたは乳化された形で含有する、複数の空間的に分離された供給流により、連続的に、段階的にまたは濃度勾配の重ね合わせ下で重合を維持しながら重合帯域に供給する供給法が有利である。重合の際に、例えば粒径をより良好に調整するために、ポリマーシードを装入してもよい。
【0046】
開始剤をラジカル水性乳化重合の過程で重合容器に添加する方法は、平均的な当業者に公知である。前記開始剤は、完全に重合容器中に装入してもよいし、ラジカル水性乳化重合の過程におけるその消費に応じて連続的にまたは段階的に使用してもよい。これは具体的には開始剤系の化学的性質ならびに重合温度に依存する。有利には、一部を装入し、残部は重合帯域の消費の度合いに応じて供給する。
【0047】
残留モノマーを除去するために、通常、実際のエマルジョン重合の終了後に、すなわち、少なくとも95%のモノマーの変換後に開始剤を添加してもよい。
【0048】
個々の成分は、供給法の場合には、上部から、側方で、または反応器の底部を通って下部から反応器に添加することができる。
【0049】
(共)重合に引き続いて、ラテックス中に含有されている酸基は、なお少なくとも部分的に中和されてよい。これは、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩を用いて、有利に1個の任意の対イオンまたは複数の対イオンが付随されていてよい水酸化物、例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+またはBa2+を用いて行なうことができる。更に、中和のために、アンモニアまたはアミンは、適している。好ましいのは、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液である。
【0050】
乳化重合の際に、ラテックスの水性分散液は、一般に15〜75質量%、有利には40〜75質量%の固体含量で得られる。
【0051】
ラテックスの粒度は、特に10〜1000nmの範囲内、特に有利に50〜300nmの範囲内にある(Malvern(登録商標)Autosizer 2Cで測定した)。
【0052】
少なくとも1つのラテックスの水性分散液は、本発明によれば、微粒状填料の処理のために使用される。填料として、製紙工業において通常使用可能な、無機材料からなる全ての顔料、例えば粉砕された形の石灰(GCC)、白亜、大理石または沈降炭酸カルシウム(PCC)の形で使用されうる炭酸カルシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、サチン白、硫酸カルシウム、硫酸バリウムまたは二酸化チタンがこれに該当する。2つまたはそれ以上の顔料からなる混合物が使用されてもよいが、しかし、好ましくは、1つの顔料が使用される。平均粒径は、例えば0.5〜30μmの範囲内、特に1〜10μmの間にある。
【0053】
本発明の別の対象は、微粒状填料の水性スラリーの製造法である。
【0054】
この填料は、例えば水中に導入することにより水性スラリーに加工される。沈降炭酸カルシウムは、通常では分散剤不在で水中に懸濁される。他の填料の水性スラリーを製造するために、一般に無機分散剤、例えば1000〜40000の分子量Mwを有するポリアクリル酸が使用される。無機分散剤を使用する場合には、水性填料スラリーの製造のために、例えば無機分散剤の0.01〜0.5質量%、特に0.2〜0.3質量%が使用される。アニオン性分散剤の存在で水中に微細に分散された微粒状填料はアニオン性である。水性スラリーは、特に有利に少なくとも1つの填料10〜40質量%を含有する。
【0055】
微粒状填料の本発明による水性スラリーを製造するために、場合によりアニオン性で分散された微粒状填料の水性スラリーは、少なくとも1つのアニオン性ラテックスで処理される。例えば、少なくとも1つの微粒状填料1〜70質量%を含有する水性スラリーには、填料に対して0.01〜10質量%の無機ラテックスが添加されてよいか、または微粒状填料の水性スラリーは、アニオン性ラテックスの水性分散液中に導入され、これらの成分はそれぞれ混合されてよい。同様に、微粒状填料を固体でアニオン性ラテックスの水性分散液中に導入することもできる。微粒状填料の水性スラリーをアニオン性ラテックスで処理することは、連続的にまたは不連続的に実施することができる。微粒状填料をアニオン性ラテックスと合わせた場合には、この填料は、少なくとも部分的にアニオン性ラテックスで被覆されるかまたは含浸される。前記成分の混合は、例えば剪断場(shear field)で行なわれる。多くの場合には、これらの成分は合わせた後に撹拌されるかまたはウルトラターラックス装置(Ultraturraxgereat)の剪断場中で処理されることで十分である。水性スラリーの成分を合わせかつ混合することは、例えば0℃〜95℃、有利に10〜70℃の温度範囲内で行なうことができる。多くの場合には、前記成分は、それぞれ室温ないし40℃までの温度で混合される。アニオン性ラテックスで処理された、填料の水性スラリーのpH値は、例えば5〜11、特に6〜9であり、この場合炭酸カルシウムを含有するスラリーのpH値は、特に6.5を上廻る。
【0056】
特に好ましいのは、沈降炭酸カルシウムの水性スラリーであり、この沈降炭酸カルシウムは、分散剤を含有せず、および粉砕された炭酸カルシウムから製造され、この粉砕された炭酸カルシウムは、炭酸カルシウム片または大理石片を粉砕することによってアニオン性ポリマーの分散剤、例えば1000〜15000の分子量を有するポリアクリル酸の存在で粉砕することによって得ることができる。
【0057】
更に、本発明の対象は、紙料の脱水によって填料含有紙、填料含有厚紙または填料含有ボール紙を製造する際に、紙料への添加剤として上記水性スラリーを使用することである。
【0058】
本発明によりアニオン性ラテックスで処理された水性顔料スラリーは、填料含有紙の全ての品質の紙、例えば新聞紙、SC紙(スーパーカレンダー処理された紙)、木材不含または木材含有の筆記用紙および印刷用紙の製造に使用されることができる。このような紙の製造のために、例えば主要原料成分として砕木パルプ、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、加圧砕木パルプ(PGW)ならびに亜硫酸パルプおよび硫酸パルプが使用される。本発明による水性スラリーを使用することによって、紙の填料含量は、強度特性が殆んど不変の際に明らかに上昇させることができる。このような紙は、低い固体含量を有する従来の紙と比較可能である強度特性を有する。
【0059】
微粒状填料の本発明による水性スラリーは、製紙の際に繊維材料に混合され、こうして全ての紙料が形成される。処理された填料および繊維材料と共に、全ての紙料は、なお別の紙用添加剤を含有することができる。これには、例えばサイジング剤、例えばアルキルケテン二量体(AKD)、アルケニルコハク酸無水物(ASA)、ロジンサイズ、湿潤紙力増強剤、合成ポリマーを基礎とするカチオン性またはアニオン性歩留まり向上剤が属する。歩留まり向上剤としては、例えばアニオン性超微粒子(コロイド状珪酸、ベントナイト)、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、カチオン性澱粉、カチオン性ポリエチレンイミンまたはカチオン性ポリビニルアミンがこれに該当する。更に、前記歩留まり向上剤の任意の組合せ、例えばカチオン性ポリマーとアニオン性超微粒子とからなるかまたはアニオン性ポリマーとカチオン性超微粒子とからなる二重系を考えることができる。高度な填料保留性を達成させるために、高い粘稠度の紙料または低い粘稠度の紙料に添加することができるような歩留まり向上剤を添加することが推奨される。
【0060】
次に、本発明を、限定するものでない実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0061】
実施例中の百分率の記載は、文脈から特に明らかでない限り質量%を意味する。
【0062】
ポリマー1
馬蹄形攪拌機を装備した、平面すり合わせ継目(Planschliff)を有する4 lの容器中に、完全脱塩水411.7g、ポリスチレンシード14.5g(固体含量33%、平均粒度29nm)およびドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩の45質量%の溶液1.4g(Dowfax(登録商標)2A1, Dow Chemicals)ならびにナトリウムペルオキシドジスルフェートの7質量%の溶液15.4gを装入した。制御された外部油浴により、反応容器を撹拌下に93℃に加熱した。前記温度の達成後、完全脱塩水534.2g、ナトリウムラウリルスルフェートの15質量%の溶液22.4g(Disponil(登録商標)SDS 15, Cognis)、ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム塩の45質量%の溶液8g(Dowfax(登録商標)2A1, Dow Chemicals)、水酸化ナトリウムの10質量%の溶液12g、アクリル酸36g、スチレン108g、n−ブチルアクリレート948gおよびアクリルニトリル108gからなる先に製造されたモノマーエマルジョンを均一に2時間で供給した。これと同時に、ナトリウムペルオキシドジスルフェートの7質量%の溶液49.7gを供給した。このバッチ量を温度を一定に維持しながらさらに45分間攪拌した。引続き、水酸化ナトリウムの10質量%の溶液93.6gを添加し、この反応内容物を60℃に冷却した。引続き、a)第三ブチルヒドロペルオキシドの10質量%の溶液24gとb)ナトリウムジスルフィット2.67gおよびアセトン1.62gからなる付加生成物を含有する13質量%の溶液33gとからなる2つの供給原料を同時に30分間で供給した。この反応器内容物を室温に冷却した。
【0063】
50.2質量%の固体含量、7.3のpH値および動的光散乱(Malvern HPPS)によって測定された、184nmの粒度を有する実際に凝結物不含のポリマー分散液が得られた。このポリマーは、DSC(Mettler DSC 820)により測定された、−11℃のガラス転移温度を有していた。
【0064】
ポリマー2
ポリマー2をポリマー1と同様に製造したが、しかし、モノマーエマルジョンの製造の際にアクリル酸36g、スチレン60g、n−ブチルアクリレート1044gおよびアクリルニトリル60gからなるモノマー混合物を使用した。
【0065】
50.2質量%の固体含量、7.5のpH値および動的光散乱(Malvern HPPS)によって測定された、172nmの粒度を有する実際に凝結物不含のポリマー分散液が得られた。このポリマーは、DSCにより測定された、−25℃のガラス転移温度を有していた。
【0066】
実施例1
沈降炭酸カルシウム(PCC)の20質量%の水性スラリー150gに弱く攪拌しながら室温でアニオン性ラテックスの50質量%の分散液1.8g(ポリマー1)を混合した。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0067】
実施例2
沈降炭酸カルシウム(PCC)の20質量%の水性スラリー150gに弱く攪拌しながら室温でアニオン性ラテックスの50質量%の分散液1.8g(ポリマー2)を混合した。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0068】
比較例(VB)1(WO−A−03/074786の記載による)
沈降炭酸カルシウム(PCC)の20質量%の水性スラリー150gに弱く攪拌しながら室温で、5℃のガラス転移温度を有する、紙塗被スリップ剤用結合剤の50質量%の分散液1.8g(Acronal(登録商標)S 504, BASF SE)を混合した。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0069】
実施例3
市販のカオリンクレーの30質量%の水性スラリー150gに弱く攪拌しながら室温でアニオン性ラテックスの50質量%の分散液2.7g(ポリマー1)を混合した。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0070】
実施例4
市販のカオリンクレーの30質量%の水性スラリー150gに弱く攪拌しながら室温でアニオン性ラテックスの50質量%の分散液2.7g(ポリマー2)を混合した。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0071】
実施例5
アニオン性ラテックスの50質量%の分散液2.7g(ポリマー2)を水150mlで希釈した。引続き、強く希釈された分散液に室温で粉末の形の市販のカオリンクレーを添加した。このスラリーの固体濃度は、カオリンクレーの添加後に30%であった。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0072】
比較例(VB)2(WO−A−03/074786の記載による)
市販のカオリンクレーの30質量%の水性スラリー150gに弱く攪拌しながら室温で、5℃のガラス転移温度を有する、紙塗被スリップ剤用結合剤の50質量%の分散液2.7g(Acronal(登録商標)S 504, BASF SE)を混合した。前記分散液の添加の間およびその後、この混合物をHeiltof撹拌機で1000rpmで撹拌した。引続き、この混合物のpH値を8.5に調節した。
【0073】
填料を含有する紙の製造
タイプAの紙
実施例6〜11
比較例3〜8
漂白されたカンバ属硫酸パルプ(Birkensulfat)と漂白されたマツ属亜硫酸パルプ(Kiefernsulfit)とからなる混合物とを70/30の比で、4%の固体濃度で実験室用パルパー中で斑点がなくなり、30〜35の叩解度が達成されるまで叩解した。引続き、この叩解された材料に、蛍光増白剤(Bayer AG社のBlankophor(登録商標) PSG)並びにカチオン性澱粉(HiCat(登録商標) 5163 A)を添加した。カチオン性澱粉の溶解は10%の澱粉スラリーとして130℃で1分間の滞留時間でジェットダイジェスタ中で行った。蛍光増白剤の計量供給量は、紙料懸濁液の固体含量に対して製品0.5質量%であった。カチオン澱粉の計量供給量は、紙料懸濁液の固体含量に対して澱粉0.5質量%であった。この場合、紙料のpH値は、7〜8の範囲内にあった。引続き、叩解された紙料を水の添加によって0.35質量%の固体濃度に希釈した。
【0074】
填料を含有する紙の製造の際の上記の水性填料スラリーの挙動を測定するために、それぞれ500mlの紙料懸濁液を装入し、それぞれこのパルプ中に実施例の記載により処理されたスラリーならびに歩留まり向上剤としてのカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin(登録商標) KE 440, BASF SE)を計量供給した。この歩留まり向上剤の計量供給量は、全ての場合に紙料懸濁液の固体含量に対して、それぞれポリマー0.01質量%であった。
【0075】
引続き、上記の前処理された填料を有する枚葉紙を形成させた(実施例6〜11および比較例3〜5)。そのために使用される填料の量を、填料含量が約20%、30%または40%であるように適合させた。前処理された填料の場合、使用されなければならない、使用されるスラリー量は、一定の目標値を達成させるために、常に未処理の填料の場合よりも少ない。
【0076】
更に、前処理された填料タイプのために、比較例を未処理の填料を用いて実施した(比較例6〜8)。そのために、最初に、約20%、30%または40%の填料含量に調節するために必要とされる未処理の填料スラリーの量を前試験で算出した。引続き、未処理の填料を有する枚葉紙を形成させた。
【0077】
この枚葉紙をそれぞれISO 5269/2によるRapid−Kethen枚葉紙製造装置で、70g/m2のシート重量で製造し、引続き7分間90℃で乾燥した。
【0078】
タイプBの紙
実施例12〜20
比較例9〜14
TMP(Thermo-mechanical pulp)と砕木パルプとからなる混合物とを70/30の比で、4%の固体濃度で実験室用パルパー中で斑点がなくなり、35の叩解度が達成されるまで叩解した。この場合、紙料のpH値は、7〜8の範囲内にあった。引続き、叩解された紙料を水の添加によって0.35質量%の固体濃度に希釈した。
【0079】
填料を含有する紙の製造の際の上記の水性填料スラリーの挙動を測定するために、それぞれ500mlの紙料懸濁液を装入し、それぞれこのパルプ中に実施例の記載により処理されたスラリーならびに歩留まり向上剤としてのカチオン性ポリアクリルアミド(Polymin(登録商標) KE 440, BASF SE)を計量供給した。この歩留まり向上剤の計量供給量は、全ての場合に紙料懸濁液の固体含量に対して、それぞれポリマー0.01質量%であった。
【0080】
引続き、上記の前処理された填料を有する枚葉紙を形成させた(実施例12〜20および比較例9〜11)。そのために使用される填料の量を、填料含量が約20%、30%または40%であるように適合させた。前処理された填料の場合、使用されなければならない、使用されるスラリー量は、一定の目標値を達成させるために、常に未処理の填料の場合よりも少ない。
【0081】
更に、前処理された填料タイプのために、比較例を未処理の填料を用いて実施した(比較例12〜14)。そのために、最初に、約20%、30%または40%の填料含量に調節するために必要とされる未処理の填料スラリーの量を前試験で算出した。引続き、未処理の填料を有する枚葉紙を形成させた。
【0082】
この枚葉紙をそれぞれISO 5269/2によるRapid−Kethen枚葉紙製造装置で、80g/m2のシート重量で製造し、引続き7分間90℃で乾燥し、その後200N/cmのニップ圧でカレンダー処理した。
【0083】
タイプAの枚葉紙の試験
一定の23℃で、50%の空気湿度の空調室中で12時間の貯蔵期間の後に、枚葉紙の乾燥裂断長をDIN 54540により、内部結合強度をDIN 54516により、および曲げ剛性をDIN 53121により測定した。結果は、第1表に記載されている。比較例に相当するスラリーまたはこれから製造された枚葉紙を有する比較例は、添加剤(VB)で特徴付けられる。他の例は、本発明による実施例である。
【0084】
タイプBの枚葉紙の試験
一定の23℃で、50%の空気湿度の空調室中で12時間の貯蔵期間の後に、枚葉紙の乾燥裂断長をDIN 54540により、内部結合強度をDIN 54516により測定した。乾燥紙むけ強度をIGT−印刷適性試験(ISO 3783)試験を用いて算出した。この結果を表2に示す。比較例に相当するスラリーまたはこれから製造された枚葉紙を有する比較例は、添加剤(VB)で特徴付けられる。他の例は、本発明による実施例である。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的にアニオン性ラテックスで被覆されている微粒状填料の水性スラリーにおいて、このスラリーは、−5〜−50℃のガラス転移温度を有する少なくとも1つのアニオン性ラテックスで微粒状填料の水性スラリーを処理することによって得られたものであることを特徴とする、微粒状填料の水性スラリー。
【請求項2】
アニオン性ラテックスのガラス転移温度が−10〜−40℃の範囲内にある、請求項1記載の水性スラリー。
【請求項3】
アニオン性ラテックスのガラス転移温度が−10〜−30℃の範囲内にある、請求項1または2に記載の水性スラリー。
【請求項4】
アニオン性ラテックスが、a)スチレンおよび/またはアクリルニトリルまたはメタクリルニトリル、b)C1〜C10アルコールのアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルおよび場合によってはc)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸および/またはイタコン酸からなる、請求項1から3までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項5】
アニオン性ラテックスがスチレン2〜15質量%、アクリルニトリル2〜15質量%、C1〜C4アルキルアクリレート75〜95質量%およびアクリル酸0〜5質量%からなる、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項6】
当該水性スラリーが少なくとも1つの微粒状填料1〜70質量%および少なくとも1つのアニオン性ラテックスを填料に対して0.01〜10質量%含有する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性スラリー。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性スラリーの製造法において、
少なくとも1つの微粒状填料の水性スラリーに、填料に対して少なくとも1つのアニオン性ラテックス0.01〜10質量%を添加するか、または微粒状填料の水性スラリーを、アニオン性ラテックスの水性分散液中に導入し、これらの成分を、そのつど混合するか、または微粒状填料を固体でアニオン性ラテックスの水性分散液中に導入することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の水性スラリーの製造法。
【請求項8】
填料を含有する紙、填料を含有する厚紙または填料を含有するボール紙を紙料の脱水によって製造する際の紙料への添加剤としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の水性スラリーの使用。

【公表番号】特表2011−526657(P2011−526657A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515426(P2011−515426)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/058160
【国際公開番号】WO2010/000726
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】