説明

微粒状農薬組成物

【課題】本発明は、動力散布機が装着された多口ホースで散布した場合でも薬剤散布時の飛散(ドリフト)が少なく、また、作物への付着性が良好な微粒状農薬組成物を得るにある。
【解決手段】農薬活性成分、結合剤および微粒状担体を含有する微粒状農薬組成物であって、a)90重量%以上の粒子の粒度分布が粒径300μm〜63μmの範囲内にあり、かつ粒径300μmを超える粒子を含むことがなく、b)見掛け比重が1.0〜1.8であり、c)硬度が95〜100%であることを特徴とする構成要件とで、微粒状農薬組成物を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水などで希釈することなく、散布機などを用いてそのまま散布する固型製剤であり、薬剤散布時の飛散(ドリフト)が改良された微粒状農薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薬剤散布時の飛散が少なく、植物体への薬剤の付着性が良好である製剤として、微粒剤(粒度分布が300μm〜106μm)および微粒剤F(粒度分布が212μm〜63μm)のような微粒状農薬組成物が知られており、これまで、以下に例示されるような多くの報告がなされている。例えば、
(1)固型担体79〜99重量%、補助剤0.5〜20重量%及び除草活性成分0.5〜3.5重量%を含有する粒度48〜150メッシュの微粒型除草剤において、除草活性成分が固型担体の表面層に固着し、水分の存在下に溶出度1%以上で溶出することを特徴とする微粒型除草剤(特許文献1)
(2)粒状担体に農薬活性成分を被覆せしめるのに、有機イソシアネート及び非イオン界面活性剤を含有する水乳化型イソシアネート化合物を使用することを特徴とする被覆型農園芸用粒剤の製造法(特許文献2)
(3)平均粒径が100〜200メッシュで、65メッシュ以上のものを含まない粒度構成を有する無吸油性鉱物質担体60〜80%に、粉末状農薬と水溶性結合剤とを加え、水で混練後、破砕と乾燥を行うことを特徴とし、その90%以上が65〜250メッシュの粒度で、かつ300メッシュ以下の粒度を含まず、安息角が45度以下である微粒状農園芸用組成物の製造法(特許文献3)
(4)コーティング時の助剤としてトリクロルエチレン、トリクロルエタンまたはパークロルエチレンあるいはこれらの2種以上の混合物を添加することを特徴とするコーティング型微粒状農薬製剤の製造法(特許文献4)
(5)粒度分布が粒径44μm以下60〜80%および粒径210μm〜44μmが40〜20%からなり、かつ実質的に210μm以上の区分を含まない担体を用いて農薬有効成分とともに造粒することを特徴とする210μm〜62μmの粒径範囲内にある微粒状農薬の製造方法(特許文献5)
(6)粒径100μm以下の非吸収性、非孔質粉体を担体として農薬有効成分とともに造粒し実質的に300μm〜40μmの粒径を有することを特徴とする農園芸用茎葉散布剤(特許文献6)
(7)非吸収性担体を基剤とし、有効成分1重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム0.05〜2.0重量部を用いて被覆することによりなる有効成分の剥離防止効果を有する微粒状または粗粉状製剤(特許文献7)
(8)非吸収性もしくは比較的非吸収性の鉱物質粒状物と、その上に展着している有効成分および酢酸ビニル重合体ないし共重合体を含む展着層とからなることを特徴とする農園芸用粒状組成物(特許文献8)
(9)鉱物質担体、補助剤および農薬有効成分を適量の水の存在下で造粒して微粒状農薬を製造する方法において、鉱物質担体として実質的に粒径250μm以上の粒状物を含まず、粒径250μm〜44μmの粗粉及至微粒状物40〜85%と粒径44μm以下の粉状物60〜15%とからなる担体を使用することを特徴とする粒径297μm〜105μmの微粒状農薬の製造方法(特許文献9)
(10)48メッシュ篩を通過する鉱物質粒状担体に、農薬活性成分と撥水性物質またはこれらと拡展造膜性物質とを担持させてなることを特徴とする改良された微粒状農薬製剤(特許文献10)
(11)農薬活性成分を300メッシュ以上の微粉状鉱物質と補助剤とより造粒した粒径0.1〜0.3mmの微粒状担体に直接又は希釈して吸着させるか、又は付着剤と共に被覆させたことを特徴とする水の存在下で崩壊し、かつ散布中飛散のない微粒状農薬組成物(特許文献11)
(12)製剤中に単糖類、二糖類またはその糖アルコール類を含有することを特徴とする実質的に粒径300μm〜40μmの農園芸用固体散布剤(特許文献12)
(13)製剤表面をポリアクリル酸アルカリ塩、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸アマイド、ポリアクリル酸アマイドの部分加水分解物及びポリエチレンオキサイドから選ばれた微粉末状固着剤の1種又は2種以上で被覆することを特徴とする改良された農園芸用固体散布剤(特許文献13)
(14)分子量200〜25000のポリオキシアルキレンポリオールあるいはこれらのエーテルまたはエステルの一種または二種以上の混合物を製剤に対して0.5〜7.0%含有してなる粒径297μm〜105μmの付着性良好な微粒状農薬組成物(特許文献14)などが知られている。
【0003】
上記した発明は、粒度分布を300μm〜63μm程度の範囲にすることで、粉剤(粒度が45μm以下)に比べ薬剤散布時の飛散を少なくするものであり、また、補助剤の効果により微粒表面に存在する農薬有効成分の剥離を少なくすることで更に飛散を改良しようとしたものなどである。しかし、微粒表面に有効成分を強固に付着させたとしても、微粒状農薬組成物の散布に通常使用される多口ホースによる散布などでは、散布時の衝撃により微粒表面の有効成分のみが剥離されるだけではなく、場合によっては微粒自体が破壊されることで微粉化されてしまい飛散が発生するなどの問題があり、また、散布時に微粉化されなくても粒度分布300μm〜63μmの範囲に粒度分布を調整しただけでは、粉剤よりは改良されてはいるものの、薬剤散布時の風の影響などで微粒自体が飛散してしまうなどの問題があった。
したがって、上記のいずれの発明においても、薬剤散布時の飛散という観点からは決して満足できるものではなく、更なる改良が求められている。
【0004】
【特許文献1】特開昭62-175407号公報
【特許文献2】特開昭59-206302号公報
【特許文献3】特開昭50-154432号公報
【特許文献4】特開昭50-77546号公報
【特許文献5】特開昭50-63143号公報
【特許文献6】特開昭49-54546号公報
【特許文献7】特開昭49-47540号公報
【特許文献8】特開昭49-13338号公報
【特許文献9】特開昭48-92537号公報
【特許文献10】特開昭48-56831号公報
【特許文献11】特開昭48-52943号公報
【特許文献12】特開昭49-47538号公報
【特許文献13】特開昭48-72338号公報
【特許文献14】特公昭48-21494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、薬剤散布時の飛散(ドリフト)が少なく、また、作物への付着性が良好な微粒状農薬組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、a)微粒状農薬組成物粒子の90重量%以上が粒径300μm〜63μmの範囲内にあり、かつ粒径300μmを超える粒子を含むことがなく、b)微粒状農薬組成物の見掛け比重が1.0〜1.8であり、c)微粒状農薬組成物の硬度が95〜100%であるという三つの必須構成要件を同時に満たすことにより、従来の微粒状農薬組成物よりも薬剤散布時の飛散(ドリフト)が少なく、また、作物への付着性が良好な微粒状農薬組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は以下の内容をその要旨とするものである。
1)農薬活性成分、結合剤および微粒状担体を含有する微粒状農薬組成物であって、a)90重量%以上の粒子の粒度分布が粒径300μm〜63μmの範囲内にあり、かつ粒径300μmを超える粒子を含むことがなく、b)見掛け比重が1.0〜1.8であり、c)硬度が95〜100%であることを特徴とする微粒状農薬組成物。
2)結合剤が、デキストリンであることを特徴とする1)に記載の微粒状農薬組成物。
3)結合剤が、ブドウ糖当量2〜15のデキストリンであることを特徴とする1)に記載の微粒状農薬組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の微粒状農薬組成物は、動力散布機が装着された多口ホースで散布した場合でも、微粒表面の有効成分が剥離することがなく、微粒自体の破壊による微粉化もなく、また、微粒自体の飛散も少ないことから、薬剤散布時の飛散面で非常に優れる。さらに、作物への付着性も優れるため、高い防除効果がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明の微粒状農薬組成物についてより詳細に説明する。
<農薬活性成分について>
本発明で用いる農薬活性成分は、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調節剤などの一般に農薬の活性成分として使用されるものであればよい。また、農薬活性成分を2種以上併用しても何らかまわない。このような農薬活性成分としては次のものが挙げられる。
例えば、殺虫剤として、有機リン系(MEPなど)、カーバメート系、ネオニコチノイド系、ピレスロイド系、クロロニコチニル系、ピリジンアゾメチン系、チオウレア系、オキサダイアジン系、フェニルピラゾール系、ネライストキシン系、ベンゾイルヒドラジド系およびベンゾイルフェニル尿素系の殺虫剤、天然殺虫剤、殺ダニ剤、生物農薬などが挙げられる。
殺菌剤としては、無機銅類、有機銅類、無機硫黄剤、有機硫黄剤、有機リン系、フタリド系、ベンゾイミダゾール系、ジカルボキシイミド系、酸アミド系(フルトラニルなど)、トリアゾール系、イミダゾール系、メトキシアクリレート系、ストロビルリン系、アニリノピリミジン系、ジチオラン系、キノキサリン系、アミノピリミジン系、フェニルピロール系、トリアジン系、シアノアセトアミド系、グアニジン系、ヒドロキシアニリド系の殺菌剤、抗生物質系殺菌剤(カスガマイシンなど)、天然物殺菌剤、生物農薬などが挙げられる。
除草剤としては、フェノキシ酸系、カーバメート系、酸アミド系、尿素系、スルホニルウレア系、ピリミジルオキシ安息香酸系、トリアジン系、ダイアジン系、ダイアゾール系、ピピリジリウム系、ジニトロアニリン系、芳香族カルボン酸系、脂肪酸系、アミノ酸系、ニトリル系、シクロヘキサンジオン系、フェニルフタルイミド系、有機リン系、シネオール系、インダンジオン系、ベンゾフラン系、トリアゾロピリミジン系、オキサジノン系、アリルトリアゾリノン系、イソウラゾール系、ピリミジニルチオフタリド系、無機除草剤、生物農薬などが挙げられる。
なお、これらに含まれる個々の具体的な農薬活性成分は、例えば「農薬ハンドブック2005年版」(社団法人 日本植物防疫協会、平成17年10月11日発行)、「SHIBUYA INDEX 9th Edition」(平成13年12月15日発行)、「The Pesticide Manual Eleventh Edition」(British Crop Protection Council 発行)などに記載されている。
上記農薬活性成分は、微粒状農薬組成物中に、通常0.01〜50重量%、好ましくは0.05〜20重量%である。
【0009】
<結合剤について>
本発明で使用できる結合剤は、天然系、半合成系および合成系の水溶性高分子類である。
例えば、天然系の水溶性高分子としては、デンプン、アラビアガム、トラガントガム、グアーガム、マンナン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ソルビトール、ローカストビーンガム、キサンタンガム、デキストラン、カードラン、プルラン、ゼラチンおよびカゼインなどが挙げられる。
半合成系の水溶性高分子としては、デキストリン、可溶性デンプン、α化デンプン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。
合成系の水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシドなどが挙げられる。
なお、本発明では、微粒状農薬組成物の飛散性(微粒から有効成分が剥離することに起因)および作物への付着性の面からデキストリンが好ましい。また、デキストリンとしては、下記式(1)で示されるブドウ糖当量(DE(Dextrose Equivalent))が2〜15のデキストリンが、飛散性および作物への付着性の面から特に好ましい。
【0010】
【数1】

本発明で使用できる結合剤の添加量は、微粒状農薬組成物中に通常0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%である。添加量が0.1重量%未満になると微粒状農薬組成物の表面に付着している有効成分が剥離しやすくなることより生ずる飛散性が問題となり、また、10重量%を超えると奏される効果が頭打ちになることや製造収率が悪くなるなどの問題が生じやすくなるためである。
【0011】
<微粒状担体について>
本発明で使用できる微粒状担体としては、クレー、炭酸カルシウム、タルク、珪砂、ベントナイト、軽石、ゼオライト、セピオライト、珪藻土およびアタパルジャイトなどが挙げられる。微粒状農薬組成物の見掛け比重を1.0〜1.8、硬度を95〜100%とするためには、微粒状担体としては特に珪砂が好ましい。
添加量は、微粒状農薬組成物中に通常40〜99.8重量%、好ましくは70〜99.8重量%である。
【0012】
<その他の成分について>
本発明の微粒状農薬組成物には、補助剤として、上記の必須成分のほかに、必要に応じて、界面活性剤、粉状担体(ホワイトカーボン、珪藻土、タルク、ガラス質粉末、酸性白土、ベントナイト、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、尿素、乳糖およびグラニュー糖など)、流動性改良剤(イソプロピルアシッドホスフェートなど)、高沸点溶剤(植物油、鉱物油など)、pH調整剤、有効成分の安定化剤(酸化防止剤および紫外線防止剤など)などを、本発明が有する効果を失わない範囲内で添加することができる。
なお、本発明において使用できる補助剤は、上記の例に限定されるものではない。
【0013】
<微粒状農薬組成物の粒度について>
本発明では、微粒状農薬組成物の90重量%以上の粒子が、粒度分布300μm〜63μmの範囲にあり、かつ300μmを超える粒子を含まないように調整することが重要である。微粒状農薬組成物の粒子の大きさが300μmを超えると作物への付着性が極度に低減するため、300μmを超える粒子は好ましくない。また、63μm未満の粒子は飛散しやすくなるため、微粒状農薬組成物中に10重量%以下の含有率とするのが好ましいためである。
なお、微粒状農薬組成物の粒度分布は、以下の方法で測定した。
(粒度分布測定方法)
受け皿の上に、内径200mm、深さ45mmの目開き63μmの篩を積み、更に目開き300μmの篩を積み重ねる。その後、目開き300μmの篩上に微粒状農薬組成物50gを入れ蓋をし、ロータップ型篩分け器に装着する。振とう回数290r.p.m.、打数105t.p.mの条件で10分間篩分けを行い、目開き300μm、63μmの各篩上、あるいは63μm篩の下に置いた受け皿の上に残った試料の重量(g)を各々測定し、下記式(2)より300μmを超える粒子、300μm〜63μmの粒子、63μm未満の粒子の割合(重量%)を求める。
【0014】
【数2】

【0015】
<微粒状農薬組成物の見掛け比重について>
本発明では、微粒状農薬組成物の見掛け比重を1.0〜1.8とすることが重要である。微粒状農薬組成物の見掛け比重が1.0未満となると、仮に粒度分布を300μm〜63μmの範囲に調整したとしても、微粒状農薬組成物自体が風などの影響で飛散しやすくなるためである。なお、飛散性の面からは、見掛け比重を1.2以上とすると更に好ましい。
一方、見掛け比重が重くなると、微粒状農薬組成物の体積が小さくなるために、動力散布機を装着した多口ホースなどの散布器具からの薬剤の吐出時間が短くなり、薬剤が均一散布しにくくなるなどの問題が生じる。よって、均一な散布性の面からは、見掛け比重を1.8以下とするのが好ましい。
なお、微粒状農薬組成物の見掛け比重は、以下の方法で測定した。
(見掛け比重測定方法)
内径50mmの100ml容の金属製円筒容器の20cm上に、内径200mm、深さ45mmの目開き300μmの篩をおき、篩上に微粒状農薬組成物を適当量入れ、ハケで軽くはき落としながら金属製円筒容器内を満たす。その後、スライドガラスを用いて、金属製円筒容器上部を水平にならし、余剰分の微粒状農薬組成物を除き、金属製円筒容器内の内容物の重量(Ag)を測定し、下記式(3)より微粒状農薬組成物の見掛け比重を求める。
【0016】
【数3】

【0017】
<微粒状農薬組成物の硬度について>
本発明では、微粒状農薬組成物の硬度を95〜100%とすることが重要である。微粒状農薬組成物の硬度が95%未満となると、動力散布機を装着した多口ホースなどの散布器具で散布した場合、薬剤散布時の衝撃で微粒状農薬組成物自体が破壊され微粉化されてしまい、飛散性が悪くなるという問題が生じるためである。
なお、微粒状農薬組成物の硬度は、以下の方法で測定した。
(硬度測定方法)
内径100mm、内深100mmの磁性ポットに、微粒状農薬組成物100gを入れ、磁性玉(直径30mm、重量35g)3個を入れた後、磁性ポットの蓋をする。回転ローラー上に、磁性ポットを横向きに倒して設置し、75r.p.m.の条件で15分間回転させる。その後、磁性ポットから、内径200mm、深さ45mmの目開き45μmの篩上に微粒状農薬組成物をすべて移し、目開き45μmを通過したものの重量(Ag)を測定し、下記式(4)より微粒状農薬組成物の硬度(%)を求める。
【0018】
【数4】

【0019】
<微粒状農薬組成物の調製方法について>
本発明の微粒状農薬組成物の調製方法は特に限定されないが、例えば次のような方法によって調製できる。
農薬活性成分、結合剤、微粒状担体、必要があればその他の成分を混合機内でよく混合し、適当量の水を添加し更に混練、混合する。その後、必要があれば乾燥、篩分けし微粒状農薬組成物を得ることができる。なお、農薬活性成分は、予めジェット粉砕や湿式粉砕などで微粒子化したものを用いても良く、結合剤は粉体のまま添加しても、予め水に溶解したものを添加してもかまわない。また、流動層内で微粒状担体を流動させながら、農薬活性成分、結合剤、必要があればその他の成分を混合したスラリーを吹きつけて調製しても良く、農薬活性成分、結合剤、微粒状担体、必要があればその他の成分をよく混合し加水後、スクリーン径0.3〜3.0mm程度のバスケット型押し出し造粒機にて造粒し乾燥したものを、ハンマーミルなどで破砕して微粒状農薬組成物を得る方法などもある。
【0020】
<微粒状農薬組成物の使用態様について>
上記により調製した微粒状農薬組成物の使用方法は、例えば、動力散布機を装着した多口ホースや直噴管などを用いて作物に散布したり、航空機や有人ヘリコプター、ラジコンヘリコプターなどを用いて空中から作物に散布したり、手や人力散布機で作物に散布したりすることができる他、作物の植え穴や株元に処理したり、土壌混和や土壌表面に処理したり、育苗箱に処理したりすることができる。また、2種以上の微粒状農薬組成物を予め混合した後、散布してもなんら問題ない。なお、本発明の微粒状農薬組成物は、薬剤散布時、散布機による強い衝撃を受けても飛散性に特に大きな影響を受けないことから、衝撃が比較的強い動力散布機を装着した多口ホースや直噴管による散布方法が特に適する。また、多口ホースや直噴管を用いて水田に散布する場合の微粒状農薬組成物の10アール当たりの施用量は、通常0.5〜5kgであり、好ましくは1〜4kgである。
【実施例】
【0021】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例において「部」は、「重量部」の意味である。
[実施例1]
MEP(有機リン系殺虫剤) 3部をホワイトカーボン3部に吸油させ、よく混合した後、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂91部、ブドウ糖当量8のデキストリン3部をニーダー内に添加し混合する。この混合物に水6部を添加して更に混合した後、取り出し、流動層乾燥機に添加して乾燥する。その後、目開き300μmと63μmの篩を用いて篩分けして、本発明の微粒状農薬組成物を得た。なお、得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに99重量%、63μm以下に1重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.3、硬度は98%であった。
【0022】
[実施例2]
実施例1の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂91部を、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の炭酸カルシウム91部におきかえて、実施例1に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに98重量%、63μm以下に2重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.2、硬度は95.5%であった。
[実施例3]
実施例1のホワイトカーボン3部を珪藻土2部にし、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂91部を粒度分布300μm〜45μmの微粒状のゼオライト93部にし、ブドウ糖当量8のデキストリン3部をブドウ糖当量5のデキストリン2部におきかえて、実施例1に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに99重量%、63μm以下に1重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.1、硬度は97%であった。
[実施例4]
実施例1の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂91部を89部にし、ブドウ糖当量8のデキストリン3部をブドウ糖当量18のデキストリン5部におきかえて、実施例1に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに98重量%、63μm以下に2重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.3、硬度は97%であった。
【0023】
[実施例5]
カスガマイシン(抗生物質系殺菌剤) 0.1部、PAP(イソプロピルアシッドホスフェート)0.1部、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部、ブドウ糖当量14のデキストリン0.5部をレーディゲミキサー内に添加する。この混合物に水1部を添加してよく混合した後、取り出し、流動層乾燥機に添加して乾燥する。その後、目開き300μmと63μmの篩を用いて篩分けして、本発明の微粒状組成物を得た。なお、得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに99.5重量%、63μm以下に0.5重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.5、硬度は99%であった。
【0024】
[実施例6]
実施例5の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部を99.6部にし、ブドウ糖当量14のデキストリン0.5部を0.2部におきかえて、実施例5に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに92重量%、63μm以下に8重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.5、硬度は98%であった。
[実施例7]
実施例5の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部を99.7部にし、ブドウ糖当量14のデキストリン0.5部をポリエチレンオキシド0.1部におきかえて、実施例5に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに97重量%、63μm以下に3重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.5、硬度は98%であった。
[実施例8]
実施例5のPAP0.1部をリン酸0.1部にし、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部を粒度分布300μm〜45μmの微粒状の軽石99.6部にし、ブドウ糖当量14のデキストリン0.5部をアラビアガム0.2部におきかえて、実施例5に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに99重量%、63μm以下に1重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.1、硬度は96%であった。
【0025】
[実施例9]
フルトラニル(酸アミド系殺菌剤)2部、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂97部、ブドウ糖当量18のデキストリン1部をニーダー内に添加する。この混合物に水1.5部を添加してよく混合した後、取り出し、流動層乾燥機に添加して乾燥する。その後、目開き300μmと63μmの篩を用いて篩分けして、本発明の微粒状農薬組成物を得た。なお、得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに98.5重量%、63μm以下に1.5重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.4、硬度は99%であった。
[実施例10]
実施例9の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂97部を97.2部にし、ブドウ糖当量18のデキストリン1部をブドウ糖当量9のデキストリン0.8部におきかえて、実施例9に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに99重量%、63μm以下に1重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.4、硬度は99%であった。
【0026】
[比較例1]
実施例1の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂91部を93.5部にし、ブドウ糖当量8のデキストリン3部を0.5部におきかえて、目開き300μmと45μmの篩を用いて篩分けした以外は、実施例1に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに88重量%、63μm以下に12重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.3、硬度は95%であった。
[比較例2]
実施例2の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の炭酸カルシウム91部を93部にし、ブドウ糖当量8のデキストリン3部を1部におきかえて、実施例2に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに91重量%、63μm以下に9重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.2、硬度は93%であった。
[比較例3]
実施例1のホワイトカーボン3部を7部にし、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂91部を86部にし、ブドウ糖当量8のデキストリン3部を4部におきかえて、実施例1に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに97重量%、63μm以下に3重量%の粒度分布で、見掛け比重は0.9、硬度は96%であった。
[比較例4]
実施例3の珪藻土2部をホワイトカーボン2部におきかえて、実施例3に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに98重量%、63μm以下に2重量%の粒度分布で、見掛け比重は0.9、硬度は97%であった。
【0027】
[比較例5]
実施例5のブドウ糖当量14のデキストリンを除き、粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部を99.8部におきかえて、実施例5に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに99重量%、63μm以下に1重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.5、硬度は99%であった。
[比較例6]
実施例5の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部を粒度分布150μm〜45μmの微粒状の珪砂99.7部にし、ブドウ糖当量14のデキストリン0.5部を0.1部におきかえて、目開き300μmと45μm の篩を用いて篩分けした以外は、実施例5に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに86重量%、63μm以下に14重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.5、硬度は98%であった。
[比較例7]
実施例5の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂99.3部を粒度分布425μm〜300μmの微粒状の珪砂99.3部におきかえて、目開き500μmと300μmの篩を用いて篩分けした以外は、実施例5に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm以上に100重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.6、硬度は99%であった。
【0028】
[比較例8]
実施例9の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂97部を粒度分布150μm〜45μmmの微粒状の珪砂97.2部にし、ブドウ糖当量18のデキストリン1部をリグニンスルホン酸ナトリウム0.8部におきかえて、目開き300μmと45μmの篩を用いて篩分けした以外は、実施例9に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は、300μm〜63μmに88重量%、63μm以下に12重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.4、硬度は98%であった。
[比較例9]
実施例10の粒度分布300μm〜45μmの微粒状の珪砂97.2部を粒度分布150μm〜45μmの微粒状の珪砂97.2部におきかえて、目開き300μmと45μmの篩を用いて篩分けした以外は、実施例10に準じて調製した。得られた微粒状農薬組成物は300μm〜63μmに85重量%、63μm以下に15重量%の粒度分布で、見掛け比重は1.4、硬度は97%であった。
【0029】
[比較例10]
MEP3部をホワイトカーボン3部に吸油させ、その後、粒度分布45μm以下の粉状のクレー94部を加え、ハンマーミルにて混合し、MEP粉剤を得た。
[比較例11]
カスガマイシン0.1部、PAP0.1部、粒度分布45μm以下の粉状のクレー99.8部をハンマーミルにて混合し、カスガマイシン粉剤を得た。
[比較例12]
フルトラニル2部、ホワイトカーボン1部、粒度分布45μm以下の粉状のクレー97部をハンマーミルにて混合し、フルトラニル粉剤を得た。
【0030】
次に、試験例により、本発明の微粒状農薬組成物の有用性を示す。
[試験例1]飛散性試験
ビニールハウス内に、動力散布機を装着した20mの多口ホースを設置する(地上からの高さが1mとなるようにホースを設置)。次に、多口ホースの中心部(動力散布機から10mの位置)の後方2mに工場扇を設置し、多口ホース中心部の風速が2m/秒となるように工場扇を稼動させる。また、多口ホース中心部の前方10mの位置にポールを立て、ポールの高さ1.5m位置にシャーレ(直径9cm)を設置する。その後、多口ホースから実施例および比較例に準じて調製した微粒状農薬組成物を1kg散布し、シャーレに回収された農薬有効成分量を測定した。なお、実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例4については、比較例10(MEP(3%)粉剤)のMEP回収量との比較(MEP(3%)粉剤のシャーレに回収されたMEP量を100とした時の割合)から飛散率(%)を求めた。また、同様に、実施例5〜実施例8および比較例5〜比較例7については、比較例11のカスガマイシン(0.1%)粉剤を散布した場合との比較で飛散率(%)を求めた。また、実施例9、実施例10、比較例8および比較例9については、比較例12のフルトラニル(2%)粉剤を散布した場合との比較で飛散率(%)を求めた。
その試験結果を表1(実施例)および表2(比較例)に示す。
【0031】
[試験例2]有効成分の剥離試験
ビニールハウス内に、動力散布機を装着した20mの多口ホースを設置する(地上からの高さが1mとなるようにホースを設置)。多口ホースの下(動力散布機から1、4、7、10、13、16、19mの位置)にプラスチック製容器(縦1m×
横0.5m × 高さ0.4m)を設置し、多口ホースから実施例および比較例に準じて調製した微粒状農薬組成物を1kg散布した。散布後、プラスチック製容器内の微粒状農薬組成物を回収し全量を均一に混合し、下記式(5)から有効成分の剥離率(%)を求めた。その試験結果を表1(実施例)および表2(比較例)に示す。
なお、散布の衝撃によって剥離した有効成分、あるいは微粒状農薬組成物の硬度が弱いために発生した微粉などは粉立ちし、プラスチック容器内にほとんど回収されていないことが肉眼で観察された。
【0032】
【数5】

【0033】
[試験例3]付着性試験
ビニールで作成した囲い(3m×3m)の中に、8葉期の水稲8株が移植されているプラスチック製容器(0.5m×2m)を設置し、その上部1mの高さから、囲いの中に均一に手動式散布機(ミゼットダスター)を用いて、実施例および比較例に準じて調製した微粒状農薬組成物を27g(3kg/10アール相当)散布する。5分経過後、水稲8株の地上部を切り取り、地上部に付着していた有効成分量を測定した。なお、実施例1〜実施例4および比較例1〜比較例4については、比較例10(MEP(3%)粉剤)のMEP量との比較(MEP(3%)粉剤のMEP付着量を100とした時の割合)から付着率(%)を求めた。また、同様に、実施例5〜実施例8および比較例5〜比較例7については、比較例11のカスガマイシン(0.1%)粉剤を散布した場合との比較で付着率(%)を求めた。また、実施例9、実施例10、比較例8および比較例9については、比較例12のフルトラニル(2%)粉剤を散布した場合との比較で付着率(%)を求めた。
その試験結果を表1(実施例)および表2(比較例)に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
表1に記載された試験結果から明らかなように、実施例1〜実施例10の飛散率は0.3〜6.9%であり、付着率は77〜91%であった。一方、表2に示された試験結果から明らかなように、90重量%以上の粒子が粒度分布300μm〜63μmの範囲以外にあり、63μm以下の粒子が10%より多く含む比較例1、比較例6、比較例8および比較例9の飛散率は10.9〜16.6%と高い値となり、300μm以上の粒子からなる比較例7の付着率は26%と低い値となった。また、硬度が95%未満である比較例2の飛散率は13.8%と高い値となり、見掛け比重が1.0未満である比較例3および比較例4の飛散率は10.7〜11.7%と高い値となった。そして、結合剤を含有しない比較例5の飛散率は38.2%と高い値となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬活性成分、結合剤および微粒状担体を含有する微粒状農薬組成物であって、a)90重量%以上の粒子の粒度分布が粒径300μm〜63μmの範囲内にあり、かつ粒径300μmを超える粒子を含むことがなく、b)見掛け比重が1.0〜1.8であり、c)硬度が95〜100%であることを特徴とする微粒状農薬組成物。
【請求項2】
結合剤が、デキストリンであることを特徴とする請求項1に記載の微粒状農薬組成物。
【請求項3】
結合剤が、ブドウ糖当量2〜15のデキストリンであることを特徴とする請求項1に記載の微粒状農薬組成物。

【公開番号】特開2010−47544(P2010−47544A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−214761(P2008−214761)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】