説明

微粒蛍光体の製造方法

【課題】初期の紫外線照射による発光輝度の低下が少ない、ナノサイズのY(V,P)O:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)で表される微粒蛍光体を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】工程として、(1)水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、(2)水中に、バナジウム化合物及びリン化合物を含有する組成物(II)を調製する工程、及び(3)前記組成物(I)と組成物(II)とを混合して、反応させる工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線により高輝度に蛍光発光するナノサイズ蛍光体を効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アート・装飾分野や、セキュリティ等の分野において、紫外線などの光エネルギーを照射することにより蛍光発光する無機蛍光体が種々使用されてきた。通常、蛍光体粉末を塗料又はインキに配合し、目的物に塗装や、シルクスクリーン印刷が行なわれている。具体的には、アート・装飾分野では、テーマパークや、ホテル、地下道、列車などの壁や、天井に芸術家や、工芸塗装技術者などが、前記蛍光体含有塗料で装飾画等を描き、ブラックライト等で紫外線を照射することにより鮮やかな蛍光発色画を浮かび上がらせるものである。また、セキュリティ分野では、特殊使用法としてシルクスクリーン印刷が行われている。
【0003】
最近、インクジェット印刷技術の飛躍的進歩により、色鮮やかで高精細の屋内、屋外の広告看板、電飾看板が多く見られるようになっている。上記アート・装飾画、セキュリティの分野においても、このようなインクジェットを始めとする印刷技術を利用した、高精細で耐久性のあるインビジブル印刷製品への期待が強まっている。
しかしながら、このような用途には装置の構造上、1000nm以下、場合によっては、400nm以下の極微細な無機蛍光体粒子が必要となるが、これまで、そのような用途に適する無機蛍光体は知られていなかった。通常、無機蛍光体は、乾式法(粉末冶金法)、即ち、原料の無機化合物粉末を混合した後、数百℃〜千数百℃において焼成した後、物理的に粉砕することによって作られているが、このような乾式法においては、一定以下の粒度に粉砕を行うことが困難であるとともに、たとえ微細粉砕できても、蛍光体の発光輝度が著しく低下するため、このような用途に使用することが出来なかった。
一方、希土類燐酸塩蛍光体の製造方法として、Yなどの希土類元素及びP、Ce、Tbを溶解して蛍光体原料の水溶液を液滴にして、キャリヤガスとともに熱分解反応炉に導入して800〜1900℃で加熱する方法(特許文献1)や、有機溶剤の存在下において、アルカリ土類金属化合物などを加熱する方法(特許文献2)などが提案されている。
また、液相でナノサイズの蛍光体粒子を作製する方法が提案されている(特許文献3)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−155276号公報
【特許文献2】特開2006−213822号公報
【特許文献3】特開2008−189761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気相中で原料となる無機化合物を反応させる特許文献1に開示の方法では、微粒蛍光体を工業的に生産する場合においては、製造設備が大規模にならざるを得ず、製造コストが過大となるなどの問題がある。また、液相中で原料となる無機化合物を反応させる特許文献2に開示の方法では、有機溶剤を使用するため、有機溶剤の除去や環境に対して問題が懸念される。また、特許文献3に開示の方法で作製された式YVO4:Eu、あるいは式YVO4:Bi、Euで表される蛍光体はナノサイズの蛍光体粒子として得られるものの、初期段階における紫外線照射により輝度の低下が現れるなど問題となっていた。そのため、初期段階における紫外線照射による輝度の低下の少ない、高い発光輝度が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、従来の技術について鋭意検討の結果、蛍光体を形成するための原料を、水中で反応させることにより、発光輝度の高い微粒蛍光体が調製できること、また、リン化合物を配合することにより、初期段階における紫外線照射による発光輝度低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させたものである。
即ち、本発明は、以下の方法に関するものである。
【0007】
1.紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物及びリン化合物を含有する組成物(II)を調製する工程、及び
(3) 前記組成物(I)と組成物(II)とを混合して、反応させる工程、からなる微粒蛍光体の製造方法;
【0008】
2.紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物を含有する組成物(III)を調製する工程、
(3) 前記組成物(I)と組成物(III)とを混合して、反応させ、YVO4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)の微粒蛍光体の分散液を調製する工程、
(4) 前記YVO4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)の微粒蛍光体の分散液に、リン化合物又は水中に溶解若しくは分散させたリン化合物を混合して、反応させる工程、からなる微粒蛍光体の製造方法;及び
【0009】
3.紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物及びリン化合物を含有する組成物(II)を調製する工程、及び
(3) 前記組成物(I)と組成物(II)とを混合して、反応させる工程、
からなり、かつ前記組成物(I)と組成物(II)の少なくともいずれか一方に周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素化合物を加えて反応させたことを特徴とする微粒蛍光体の製造方法、更に
【0010】
4.紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物を含有する組成物(III)を調製する工程、
(3) 前記組成物(I)と組成物(III)とを混合して、反応させ、YVO4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)の微粒蛍光体の分散液を調製する工程、
(4) 前記YVO4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)の微粒蛍光体の分散液に、リン化合物又は水中に溶解若しくは分散させたリン化合物を混合して、反応させる工程、
を有し、かつ前記組成物(I)及び組成物(III)の少なくともいずれか一方に、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素化合物を加えて反応させたことを特徴とする微粒蛍光体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特殊な装置を用いることなく、かつ焼成することなく、原料の無機化合物を水中で反応させることにより、高輝度蛍光体を効率よく製造することができる。また、本発明により製造した蛍光体は、平均一次粒子径30〜400nmの均一な粒子径を有する微粒子であり、紫外線励起により蛍光発光する。更に、蛍光体に紫外線照射した際の初期の発光輝度低下が少ない、蛍光体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用されるイットリウム化合物としては、例えば、イットリウムの水酸化物や、キレート化物(例えば、キレート化剤としては、アミノカルボン酸系キレート剤や、ホスホン酸系キレート剤等が好適に挙げられる)、酸素酸塩(例えば、硝酸塩や、硫酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩など)、有機酸塩(例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノール塩、スルフィン酸塩、1,3−ジケトン形化合物の塩、チオフェノール塩、オキシム塩、芳香族スルホンアミドの塩、第一級及び第二級ニトロ化合物の塩など)、ハロゲン化物(例えば、ハロゲンとしては、フッ素や、塩素、臭素など)、アルコキシド(例えば、炭素数が1〜15の、直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適に挙げられる)等を好適に使用することができる。
【0013】
これらの代表例として、硝酸塩や、硫酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩(例えば、カルボン酸としては、シュウ酸や、酢酸、安息香酸など)、ハロゲン化物(例えば、ハロゲンとしては、フッ素や、塩素、臭素など)、アルコキシド(例えば、炭素数が1〜15の、直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適に挙げられる)等を好適に挙げることができる。その中でも、硝酸塩や、カルボン酸塩、アルコキシドが特に好適に使用することができ、これらの代表的なものとしては、硝酸イットリウムや、シュウ酸イットリウム、イットリウムイソプロポオキシド等が挙げられる。
【0014】
本発明で使用されるイットリウム以外の希土類金属元素としては、具体的には、Scや、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu等が好適に挙げられ、希土類化合物としては、希土類金属元素それ自体や、その水素化物、ハロゲン化物(例えば、ハロゲンとしては、フッ素や、塩素、臭素など)、水酸化物、硫化物、酸素酸塩(例えば、硝酸塩や、硫酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩など)、有機酸塩(例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノール塩、スルフィン酸塩、1,3−ジケトン形化合物の塩、チオフェノール塩、オキシム塩、芳香族スルホンアミドの塩、第一級及び第二級ニトロ化合物の塩など)、アルコキシド(例えば、炭素数が1〜15の、直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適に挙げられる)等が好適に挙げられる。代表的なものとしては、硝酸ユウロピウムや、硝酸エルビウム、酢酸サマリウム、硝酸セリウム等が好適に挙げられ、その中でも特にEuの化合物が特に好適に使用することができる。
【0015】
本発明で使用されるバナジウム化合物としては、例えば、バナジウムの水酸化物や、キレート物(例えば、キレート化剤としては、アミノカルボン酸系キレート剤や、ホスホン酸系キレート剤等が好適に挙げられる)、酸化物、酸素酸塩(例えば、硝酸塩や、硫酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩など)、有機酸塩(例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノール塩、スルフィン酸塩、1,3−ジケトン形化合物の塩、チオフェノール塩、オキシム塩、芳香族スルホンアミドの塩、第一級及び第二級ニトロ化合物の塩など)、ハロゲン化物(例えば、ハロゲンとしては、フッ素や、塩素、臭素など)、アルコキシド(例えば、炭素数が1〜15の、直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適に挙げられる)等を好適に使用することができる。
【0016】
これらの代表例として、硝酸塩や、硫酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩(例えば、カルボン酸としては、シュウ酸や、酢酸、安息香酸など)、ハロゲン化物(例えば、ハロゲンとしては、フッ素や、塩素、臭素など)、アルコキシド(例えば、炭素数が1〜15の、直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適に挙げられる)等を好適に挙げることができる。その中でも、硝酸塩、バナジン酸塩、カルボン酸塩、アルコキシドが特に好適に使用することができ、これらの代表的なものとしては、トリイソプロポキシ酸化バナジウムや、バナジン酸カリウム等が挙げられる。
【0017】
また、リン化合物としては、例えば、リンの酸化物、ハロゲン化物、水素化物、硫化物、金属リン化物(リン化物)、ホスホニウム塩、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、ジアルキルホスフィン、ジアリールホスフィン、トリアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、例えば、メチルホスホン酸、ジフェニルホスホン酸、例えば、ジメチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステルやそれらの誘導体を好適に挙げることができる。特に好適に使用できるものとしてリン酸水素二ナトリウムや、リン酸等が挙げられる。
【0018】
式、Y(V,P)O4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属元素)で示される蛍光体には、更に、補助付活剤Bを添加してもよい。この場合、式、Y(V,P)O4:A,B(Aは、イットリウム以外の希土類金属元素であり、Bは、元素の周期表(長周期型)の第13から17族に属する元素(以下、単に、「Pブロック元素」と言う))で表される蛍光体となる。ただし、Pブロック元素の具体例としては、例えば、Alや、Zn、Ga、Ge、Cd、In、Sn、Sb、Hg、Tl、Pb、Bi、Poである。その中でも、Bi、Ga、Geを好適に使用することができ、特に好ましくは、Biである。
【0019】
これらPブロック元素を蛍光体合成反応に用いる場合は、水素化物や、ハロゲン化物(例えば、ハロゲンとしては、フッ素や、塩素、臭素など)、水酸化物、硫化物、酸素酸塩(例えば、硝酸塩や、硫酸塩、燐酸塩、硼酸塩、ケイ酸塩、バナジン酸塩など)、有機酸塩(例えば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、フェノール塩、スルフィン酸塩、1,3−ジケトン形化合物の塩、チオフェノール塩、オキシム塩、芳香族スルホンアミドの塩、第一級及び第二級ニトロ化合物の塩など)、アルコキシド(例えば、炭素数が1〜15の、直鎖又は分岐を有するアルコキシ基、例えば、メトキシ基や、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が好適に挙げられる)等のPブロック元素化合物が好適に使用される。
【0020】
錯形成化合物は、イットリウムや希土類金属元素及びPブロック元素と錯体を形成する物質であり、金属イオンに配位する酸素や、窒素、硫黄等の3種類の原子を2個以上含み、キレート環を形成する化合物であって、O−O配位、N−N配位、S−S配位、O−N配位、S−N配位、O−S配位、及びこれらを複数個有する多座配位化合物である。具体的には、シュウ酸や、アセチルアセトン、クエン酸、エチレングリコール、エチレンジアミン、1,10−フェナントロリン、ジチオール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオオキシン3−メルカプト−p−クレゾール及びこれらの誘導体などである。本発明において特に好適に使用されるのは、クエン酸や、シュウ酸、エチレングリコールなどであるが、特にこれらに限定されるものではない。この錯形成化合物を添加することにより、混晶を析出と粒子成長の制御に効果があり、また生成した微粒子蛍光体の分散安定がよくなる。
【0021】
本発明の蛍光物質は、イットリウム酸化物の結晶内に発光中心(付活剤)である希土類金属元素や、付活剤の発光を補助する補助付活剤が含有されることで紫外線などの励起源により発光する。なお、微粒蛍光体の粒径は、動的光散乱法により、例えば、Malvern HPPS(マルバーン社製)を使用して測定した粒度分布に基づくものである。
なお、理論により束縛されるものではないが、実験の観察によれば、本発明においては、イットリウム化合物と、付活剤原料化合物や、補助付活剤原料化合物が、水中で溶解又は分散し、錯形成化合物の存在下で混晶を形成し、更にバナジウム化合物及びリン化合物を添加することにより、微粒蛍光体が合成されると思われる。
従って、イットリウム化合物と、付活剤原料化合物(A成分化合物)や、補助付活剤原料化合物(Pブロック元素化合物)が、十分に水に溶解又は安定に分散する量とすることが必要である。
【0022】
組成物(I)において、イットリウム化合物は、一般に、水1容量部に対して、0.0001〜0.6質量部、好ましくは0.001〜0.5質量部の範囲とすることが好ましい。例えば、水1mlに対して、0.0001〜0.6g、好ましくは0.001〜0.5gとすることが適当である。
この範囲での使用により、平均一次粒子径が、30〜400nmの微粒蛍光体の水分散液を得ることができる。なお、微粒蛍光体の粒径は、動的光散乱法により、例えば、Malvern HPPS(マルバーン社製)を使用して測定した粒度分布に基づくものである。
前記添加量が0.0001質量部より少ないと、微粒蛍光体の製造効率が低下する傾向にある。また、0.6質量部より多いと、微粒蛍光体が凝集し、目的とする微粒蛍光体の均一な分散体を得にくい。
【0023】
イットリウム以外の希土類金属化合物の量は、同様に、水に対する溶解性又は分散性に基づくが、発光輝度の高い微粒蛍光体を製造効率よく製造するためには、前記イットリウム化合物1モルに対して、40モル%以下、好ましくは、0.005〜30モル%の範囲にとどめることが好ましい。
錯形成化合物の量は、水1mlに対して、0.0001〜0.7g、好ましくは0.001〜0.6gであり、錯体を形成させるため、イットリウム元素、イットリウム以外の希土類金属元素及びビスマス元素等の添加量を考慮し、添加する必要性がある。また、錯形成化合物は粒子の分散安定に寄与するため、添加量が少ないと、分散剤として機能しないため、好ましくない。
【0024】
組成物(II)において、バナジウム化合物及びリン化合物の量は、水1mlに対して、0.0001〜0.6g、好ましくは0.001〜0.5gの範囲の量であることが好適である。
また、バナジウム化合物とリン化合物の比率は、バナジウム化合物1モルに対し、リン化合物は0.005〜100モル、好ましくは0.01〜50モルの比率であることが好ましい。リン化合物の割合が0.01モルより少ないと、得られた蛍光体の初期の紫外線照射による輝度に対する低下の抑制に効果がなく、また100モルより多いと、初期の紫外線照射による輝度に対する低下の抑制の更なる向上が認められない。
また、組成物(III)において、バナジウム化合物の量は、水1mlに対して、0.0001〜0.6g、好ましくは0.001〜0.5gの範囲の量であることが好適である。
【0025】
また、(4)の工程で配合するリン化合物の量は、組成物(III)中のバナジウム化合物1モルに対して、0.01〜50モルの比率であることが好ましい。なお、リン化合物は、安定に分散混合されるよう、予め水に溶解若しくは分散させたものを使用してもよい。
Pブロック元素(B)の化合物の量は、水に対する溶解性又は分散性に基づくが、発光輝度の高い微粒蛍光体を製造効率よく製造するためには、前記イットリウム化合物1モルに対して、60モル%以下、好ましくは、0.005〜50モル%の範囲にとどめることが好ましい。Pブロック元素(B)の化合物は、任意の時期に、組成物(I)又は、組成物(II)若しくは(III)に添加することができる。
【0026】
なお、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属化合物、バナジウム化合物及び任意にPブロック元素化合物を複数併用する場合においては、得られる微粒蛍光体の組成や、粒径等によりその配合比率を適宜変化させることが可能である。
本発明の方法においては、組成物(I)と、組成物(II)若しくは組成物(III)とを混合する工程3において、pHを調整することが好ましく、蛍光体の生成を促進することができる。pHは、例えば、4〜11程度であり、好ましくは、pH6〜10である。pHが4より低いとポリバナジン酸塩が生成しやすく、pHが11より高いと、水酸化物が生成してしまうため、目的の蛍光体を生成することが難しい。
【0027】
本発明において、工程3、工程4における反応は、大気圧下、又は水の沸点以上の圧力のどちらでも可能である。大気圧で反応を行う場合には、製造設備を過大にする必要が無く、より簡便に製造効率よく微粒蛍光体を製造することが可能となる。
加熱温度は、大気圧下であれば、例えば、20℃〜100℃の範囲で行うことが好ましい。加熱温度が20℃より低いと、微粒蛍光体の反応が著しく遅くなり易く、製造効率が低下する傾向にある。大気圧下での反応時間は、例えば、1分〜72時間であり、好ましくは、10分〜10時間で十分である。
また、加圧下では、100〜400℃程度の高温下で反応することも出来る。この場合、原料の溶解性が高まり、また反応時間も短くできる長所がある。
【0028】
加圧するオートクレーブ処理に関しては、100〜400℃程度の高温下で、1分から500時間で反応するのが好ましい。特に、工程4においては、オートクレーブ処理をすることで得られた蛍光体の紫外線照射による初期の輝度の低下の抑制に効果的である。
本発明において、バナジン酸イットリウムにリンを導入しているが、請求項1、請求項3のようにバナジウム化合物及びリン化合物の混合溶液の組成物(II)として反応させることで得られた蛍光体の紫外線照射による初期の輝度の低下を抑制することができるが、請求項2、請求項4のように予め、イットリウム化合物と付活剤原料化合物や、補助付活剤原料化合物とバナジウム化合物で反応させ、その後、リン化合物を加え、反応をさせたほうが、得られた蛍光体の紫外線照射による初期の輝度の低下の抑制に更なる効果が認められる。
【0029】
本発明においては、反応の際、分散安定性の向上のため、界面活性剤などの有機分散剤や、無機分散剤、高分子分散剤、分散安定に寄与するイオン(例えば、酢酸イオン)などを加えてもよい。また、必要に応じて酸化防止剤や、還元剤などの添加剤を加えることも可能である。
また、反応の際には、窒素ガス又はアルゴンガス雰囲気下で反応を行うことも可能である。反応系に対する酸素の混入を防止し、蛍光体の蛍光強度の低下、生成物の着色等、蛍光体の性能低下を防止することが可能である。
本発明は、攪拌装置を用いて水を攪拌しながら行うことが好ましい。このような攪拌装置を用いることで、反応系を均一とし、反応効率を上昇させることができ、微粒蛍光体の安定的な製造が可能となる。
【0030】
<微粒蛍光体の特性>
本発明により製造された微粒蛍光体は、例えば、平均一次粒径が30〜400nmという、これまでの蛍光体よりも非常に小さな粒径を有する。従って、微粒蛍光体を塗料や、インクジェットプリンター用インクの用途等、幅広い用途で使用することが可能となる。より高い分散安定性や可視光下透明性が要求される用途においては、100nm以下の微粒蛍光体とすることで使用可能となる。
また、前記微粒蛍光体は、紫外線を照射することにより、蛍光発色するが、特に波長領域300〜400nmの近紫外線においても励起するため、ブラックライトや紫外線LEDなどの光源でも蛍光発光させることが可能である。そのため、近紫外線発光の望ましいアート・装飾の分野や各種有価証券、ブランド品等の偽造防止に適している。
更に、当然のことではあるが、本発明の蛍光体は上記の用途に限定されることなく、蛍光灯やLEDなどの照明やPDP、液晶、FEDなどのフラットパネル・ディスプレイ分野などに使用することも可能である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により、本発明について更に詳細に説明するが、これらの実施例及び比較例によって、本発明の範囲は、何ら限定されるものではない。
粒度分布の測定に際しては、マルバーン社製のMalvern HPPSを使用した。この測定機械は、動的光散乱法にて粒度分布を測定する装置である。
【0032】
<実施例1>
200mlの3口フラスコに、還流装置として冷却管、温度計、攪拌装置を取り付け、当該フラスコをウォーターバス中に設置した。当該フラスコに水40.0ml、硝酸イットリウム六水和物1.00g(2.6mmol)と、硝酸ユウロピウム六水和物0.09g(0.2mmol)、クエン酸三ナトリウム二水和物0.62gを加え、60℃で2時間攪拌を行ない、組成物(I)を調製した。
別途、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した水40.0mlをはかりとり、その中にオルトバナジン酸ナトリウム0.13g(0.7mmol)を加え、溶解させ、組成物(III)を調製し、組成物(III)を、組成物(I)の入っている上記3口フラスコに滴下した。
【0033】
滴下終了後、60℃で3時間撹拌を行った。滴下終了後、水10mlに溶かしたリン酸水素二ナトリウム12水和物0.50g(1.4mmol)を加え、60℃で1時間撹拌を行なった。その後、オートクレーブで210℃、3時間で処理を行ない、やや黄みの白濁水分散液を得た。得られた分散液中の微粒物質をMalvern HPPS(マルバーン社製)で測定したところ、平均一次粒径48nmの均一な粒子であった(図1参照)。
この分散液に対し、302nmを主波長とする紫外線ランプを照射したところ、赤色の蛍光発色が確認できた。また、PL−250(日本分光社製)にて発光波長を確認したところ、615nmに発光波長のピークを確認できた。また、微粒子をX線回折装置(XRD-6100、島津製作所製)にて定性を行った結果、バナジン酸イットリウムの回折データと一致した。また、ICP発光分光分析装置(ICPS−7510、島津製作所製)にて確認したところ、バナジウム、リン、イットリウム、ユウロピウムの元素からなる物質であることが確認できた。
【0034】
<実施例2>
200mlの3口フラスコに、還流装置として冷却管、温度計、攪拌装置を取り付け、当該フラスコをウォーターバス中に設置した。当該フラスコに水40.0ml、硝酸イットリウム六水和物0.10g(0.3mmol)と、硝酸テルビウム六水和物0.09g(0.2mmol)を加え、80℃で1時間撹拌後、シュウ酸0.19gを加え、80℃で2時間攪拌を行ない、組成物(I)を調製した。
別途、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した水40.0mlを100mlのビーカーにはかりとり、その中にオルトバナジン酸ナトリウム0.03g(0.2mmol) 、リン酸水素二ナトリウム12水和物0.05g(0.2mmol)を加え、溶解させ、組成物(II)を調製した。得られた組成物(II)を、組成物(I)の入っている3口フラスコに滴下した。
【0035】
滴下終了後、オートクレーブで180℃、4時間処理を行い、やや黄みの白濁水分散液を得た。得られた分散液中の微粒物質をMalvern HPPS(マルバーン社製)で測定したところ、平均一次粒径38nmの均一な粒子であった(図2参照)。
この分散液に対し、302nmを主波長とする紫外線ランプを照射したところ緑色の蛍光発色が確認できた。また、PL−250(日本分光社製)にて発光波長を確認したところ、544nmに発光波長のピークを確認できた。また、微粒子をX線回折装置(XRD-6100、島津製作所製)にて定性を行った結果、バナジン酸イットリウムの回折データと一致した。また、ICP発光分光分析装置(ICPS−7510、島津製作所製)にて確認したところ、バナジウム、リン、イットリウム、テルビウムの元素からなる物質であることが確認できた。
【0036】
<実施例3>
200mlの3口フラスコに、還流装置として冷却管、温度計、攪拌装置を取り付け、当該フラスコをウォーターバス中に設置した。当該フラスコに水40.0ml、硝酸イットリウム六水和物1.00g(2.6mmol)と、硝酸ユウロピウム六水和物0.09g(0.2mmol)を加え、70℃で1時間撹拌した後、クエン酸三ナトリウム二水和物0.62gを加え、更に30分後にクエン酸ビスマス0.48g(1.2mmol)を加え、70℃で2時間攪拌を行ない、組成物(I)を調製した。
別途、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した水40.0mlを100mlのビーカーにはかりとり、その中にオルトバナジン酸ナトリウム0.37g(2.0mmol)を加えて、組成物(II)を調製し、この組成物(II)を、組成物(I)の含まれている3口フラスコに滴下した。滴下終了後、水20mlに溶かしたリン酸水素二ナトリウム12水和物0.04g(0.1mmol)を加え、70℃で30分攪拌を行い、オートクレーブで200℃、5時間処理を行なった。反応得られた分散体はやや黄みの白濁水分散液を得た。得られた分散液中の微粒物質をMalvern HPPS(マルバーン社製)で測定したところ、平均一次粒径55nmの均一な粒子であった(図3参照)。
【0037】
この分散液に対し、365nmを主波長とする紫外線ランプを照射したところ、赤色の蛍光発色が確認できた。また、PL−250(日本分光社製)にて発光波長を確認したところ、615nmに発光波長のピークを確認できた。また、微粒子をX線回折装置(XRD-6100、島津製作所製)にて定性を行った結果、バナジン酸イットリウムの回折データと一致した。また、ICP発光分光分析装置(ICPS−7510、島津製作所製)にて確認したところ、バナジウム、リン、イットリウム、ユウロピウム、ビスマスの元素からなる物質であることが確認できた。
【0038】
<比較例1>
200mlの3口フラスコに、還流装置として冷却管、温度計、攪拌装置を取り付け、当該フラスコをウォーターバス中に設置した。当該フラスコに水40.0ml、硝酸イットリウム六水和物1.00g(2.6mmol)と、硝酸ユウロピウム六水和物0.09g(0.2mmol)、クエン酸三ナトリウム二水和物0.62gを加え、60℃で2時間攪拌を行ない、組成物(I)を調製した。
別途、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した水40.0mlをはかりとり、その中にオルトバナジン酸ナトリウム0.39g(2.1mmol)を加え、溶解させ、組成物(III)を調製し、組成物(III)を、組成物(I)の入っている上記3口フラスコに滴下した。
【0039】
滴下終了後、60℃で3時間撹拌を行った。滴下終了後、オートクレーブで210℃、3時間で処理を行ない、やや黄みの白濁水分散液を得た。得られた分散液中の微粒物質をMalvern HPPS(マルバーン社製)で測定したところ、平均一次粒径49nmの均一な粒子であった(図4参照)。
この分散液に対し、302nmを主波長とする紫外線ランプを照射したところ、赤色の蛍光発色が確認できた。また、PL−250(日本分光社製)にて発光波長を確認したところ、615nmに発光波長のピークを確認できた。また、微粒子をX線回折装置(XRD-6100、島津製作所製)にて定性を行った結果、バナジン酸イットリウムの回折データと一致した。また、ICP発光分光分析装置(ICPS−7510、島津製作所製)にて確認したところ、バナジウム、イットリウム、ユウロピウムの元素からなる物質であることが確認できた。
【0040】
<比較例2>
200mlの3口フラスコに、還流装置として冷却管、温度計、攪拌装置を取り付け、当該フラスコをウォーターバス中に設置した。当該フラスコに水40.0ml、硝酸イットリウム六水和物0.10g(0.3mmol)と、硝酸テルビウム六水和物0.09g(0.2mmol)を加え、80℃で1時間撹拌後、シュウ酸0.19gを加え、80℃で2時間攪拌を行ない、組成物(I)を調製した。
別途、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した水45.0mlを100mlのビーカーにはかりとり、その中にオルトバナジン酸ナトリウム0.09g(0.5mmol)を加え、溶解させ、組成物(III)を調製した。得られた組成物(III)を、組成物(I)の入っている3口フラスコに滴下した。
【0041】
滴下終了後、オートクレーブで180℃、4時間処理を行い、やや黄みの白濁水分散液を得た。得られた分散液中の微粒物質をMalvern HPPS(マルバーン社製)で測定したところ、平均一次粒径40nmの均一な粒子であった(図5参照)。
この分散液に対し、302nmを主波長とする紫外線ランプを照射したところ緑色の蛍光発色が確認できた。また、PL−250(日本分光社製)にて発光波長を確認したところ、544nmに発光波長のピークを確認できた。また、微粒子をX線回折装置(XRD-6100、島津製作所製)にて定性を行った結果、バナジン酸イットリウムの回折データと一致した。また、ICP発光分光分析装置(ICPS−7510、島津製作所製)にて確認したところ、バナジウム、イットリウム、テルビウムの元素からなる物質であることが確認できた。
【0042】
<比較例3>
200mlの3口フラスコに、還流装置として冷却管、温度計、攪拌装置を取り付け、当該フラスコをウォーターバス中に設置した。当該フラスコに水40.0ml、硝酸イットリウム六水和物1.00g(2.6mmol)と、硝酸ユウロピウム六水和物0.09g(0.2mmol)を加え、70℃で1時間撹拌した後、クエン酸三ナトリウム二水和物0.62gを加え、更に30分後にクエン酸ビスマス0.48g(1.2mmol)を加え、70℃で2時間攪拌を行ない、組成物(I)を調製した。
別途、水酸化ナトリウムでpH12.5に調整した水40.0mlを100mlのビーカーにはかりとり、その中にオルトバナジン酸ナトリウム0.55g(3.0mmol)を加えて、組成物(III)を調製し、この組成物(III)を、組成物(I)の含まれている3口フラスコに滴下した。滴下終了後、オートクレーブで200℃、5時間処理を行なった。反応で得られた分散体はやや黄みの白濁水分散液を得た。得られた分散液中の微粒物質をMalvern HPPS(マルバーン社製)で測定したところ、平均一次粒径54nmの均一な粒子であった(図6参照)。
この分散液に対し、365nmを主波長とする紫外線ランプを照射したところ、赤色の蛍光発色が確認できた。また、PL−250(日本分光社製)にて発光波長を確認したところ、615nmに発光波長のピークを確認できた。また、微粒子をX線回折装置(XRD-6100、島津製作所製)にて定性を行った結果、バナジン酸イットリウムの回折データと一致した。また、ICP発光分光分析装置(ICPS−7510、島津製作所製)にて確認したところ、バナジウム、イットリウム、ユウロピウム、ビスマスの元素からなる物質であることが確認できた。
【0043】
<輝度測定>
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた分散体を遠心分離機で10000rpm、1時間で処理を行い、水などで調整し、不揮発分40%の水含有ペーストを得た。このペーストを石英セルに詰め、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2に関しては、302nmを主波長とするブラックライト、実施例3、比較例3に関しては、365nmを主波長とするブラックライト下で、輝度計(BM−5A、トプコン社製)を用いて、初期輝度の測定を行った。その後、カーボンアークフェードメーター(スガ試験機)で耐光性促進を行い、輝度低下の最小値になった時点の輝度を上記方法にて測定を行なった。また、その後、更にカーボンアークフェードメーターにて紫外線照射し、累計1000時間の時点の輝度を測定した。
【0044】
その結果を表1に示した。表1より明らかな通り、本発明の方法で得られた実施例1〜3で得られた微粒蛍光体は、紫外線照射による輝度低下が少なかった。一方、リン化合物を反応に使用しなかった比較例1〜3で得られた微粒蛍光体は、いずれも紫外線照射による輝度低下が大きかった。
表1

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、紫外線により高輝度に蛍光発光するナノサイズ蛍光体を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1で得られた微粒蛍光体の粒径分布の測定データを示す図である。
【図2】実施例2で得られた微粒蛍光体の粒径分布の測定データを示す図である。
【図3】実施例3で得られた微粒蛍光体の粒径分布の測定データを示す図である。
【図4】比較例1で得られた微粒蛍光体の粒径分布の測定データを示す図である。
【図5】比較例2で得られた微粒蛍光体の粒径分布の測定データを示す図である。
【図6】比較例3で得られた微粒蛍光体の粒径分布の測定データを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物及びリン化合物を含有する組成物(II)を調製する工程、及び
(3) 前記組成物(I)と組成物(II)とを混合して、反応させる工程、
を有することを特徴とする微粒蛍光体の製造方法。
【請求項2】
紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物を含有する組成物(III)を調製する工程、
(3) 前記組成物(I)と組成物(III)とを混合して、反応させ、YVO4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)の微粒蛍光体の分散液を調製する工程、
(4) 前記YVO4:A(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示す。)の微粒蛍光体の分散液に、リン化合物又は水中に溶解若しくは分散させたリン化合物を混合して、反応させる工程、
を有することを特徴とする微粒蛍光体の製造方法。
【請求項3】
紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物及びリン化合物を含有する組成物(II)を調製する工程、及び
(3) 前記組成物(I)と組成物(II)とを混合して、反応させる工程、
を有し、かつ前記組成物(I)及び前記組成物(II)の少なくともいずれか一方に、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素化合物を加えて反応させたことを特徴とする微粒蛍光体の製造方法。
【請求項4】
紫外線励起により蛍光発光する、式、Y(V,P)O4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)で表される微粒蛍光体の製造方法であって、
(1) 水中に、イットリウム化合物、イットリウム以外の希土類金属の化合物及び錯形成化合物を含有する組成物(I)を調製する工程、
(2) 水中に、バナジウム化合物を含有する組成物(III)を調製する工程、
(3) 前記組成物(I)と組成物(III)とを混合して、反応させ、YVO4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)の微粒蛍光体の分散液を調製する工程、
(4) 前記YVO4:A、B(Aは、イットリウム以外の希土類金属を示し、Bは、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素を示す。)の微粒蛍光体の分散液に、リン化合物又は水中に溶解若しくは分散させたリン化合物を混合して、反応させる工程、
を有し、かつ前記組成物(I)及び組成物(III)の少なくともいずれか一方に、周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素化合物を加えて反応さることを特徴とする微粒蛍光体の製造方法。
【請求項5】
前記リン化合物又は水中に溶解若しくは分散させたリン化合物を混合して、反応させる工程(4)をオートクレーブ中で加圧下で行う請求項2又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記蛍光体の平均一次粒子径が、30〜400nmである、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記イットリウム化合物、前記バナジウム化合物、前記イットリウム以外の希土類金属の化合物、及び/又は前記周期律表(長周期型)第13〜第17族に属する元素の化合物が、水酸化物、キレート化物、無機酸塩、有機酸塩、酸素酸塩、ハロゲン化物及びアルコキシドからなる群から選択される、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記錯形成化合物が、クエン酸、シュウ酸及びエチレングリコールからなる群から選択される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−90346(P2010−90346A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264331(P2008−264331)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【出願人】(000107158)シンロイヒ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】