説明

微細セル軟質ポリウレタンフォーム

【課題】シリコーン系整泡剤を用いることなく、非常に微細なセル構造を有する微細セル軟質ポリウレタンフォームを提供する。
【解決手段】イソシアネート末端プレポリマーに、連通化剤、整泡剤及び発泡剤を添加混合してなる原料混合物を発泡硬化させて得られる微細セル構造ポリウレタンフォームにおいて、該整泡剤が、Siを含まない化合物であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。整泡剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物又はジエタノールアミド系化合物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細セル軟質ポリウレタンフォームに係り、特に、化学的発泡法による軟質ポリウレタンフォームであって、シリコーン系整泡剤を用いることなくセルを安定に微細化した微細セル軟質ポリウレタンフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート末端プレポリマーを原料とする軟質ポリウレタンフォームの製造方法は公知であり、この方法によれば、イソシアネート末端プレポリマーを用いて原料混合物の物理的粘度を上げることにより、得られるフォームの微細化と安定化を図ることができる。
【0003】
特に特許文献1には、高分子量のポリオールと低分子量のポリオールとを併用し、これらをポリイソシアネートと反応させてプレポリマー化してなるイソシアネート末端プレポリマーに、触媒や発泡剤、整泡剤を添加混合して発泡硬化させることにより微細なセル構造を持つ軟質ポリウレタンフォームを製造することが記載されている。
【0004】
この特許文献1では、分子量の異なる2種類以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート末端プレポリマーを用いることにより、低分子量ポリオール由来のイソシアネート末端プレポリマーと、高分子量ポリオール由来のイソシアネート末端プレポリマーとの反応性の差異を利用してセルの物理的会合を妨げ、非常に微細なセル構造の軟質ポリウレタンフォームを実現している。
【0005】
このような微細セル軟質ポリウレタンフォームは、その微細なセル構造を利用して、吸音材、電極材、プリンターローラ、シール材、化粧材等として用いられている。
【0006】
ところで、ポリウレタンフォームの製造方法として、一般的に(1)メカニカルフロス法と、(2)化学的発泡法との2種類が知られている。(1)メカニカルフロス法で製造したポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム原料に発泡剤を加えず、原料混合物を攪拌して充分に混合する際に、不活性ガス等の造泡用気体を混入することで気泡を形成し、そのままの状態で加熱・硬化させることによりポリウレタンフォームを成形する方法である。一方、(2)化学的発泡法は、ポリウレタンフォーム原料に、水等の化学的発泡剤を添加し、これにより気泡を形成しつつ、樹脂の硬化反応とのバランスを取りながらフォームを成形する方法である。
【0007】
(1)メカニカルフロス法では、原料混合物に不活性ガスを機械的に強制混入することで気泡を形成するため、微細なセル径を均質に備えるフォームを得ることができるが、(2)化学的発泡法では、原料混合物中に気泡の基となる各種発泡剤を混合することで気泡を発生させるため、該発泡剤によるガス発生の時間的制御は基本的に不可能であることから、セル径の制御や微細化が困難である。
【0008】
特許文献1では、イソシアネート末端プレポリマーの原料ポリオール成分として高分子量ポリオールと低分子量ポリオールを併用することで、セルの微細化を図っているが、セル径の安定制御のために整泡剤を用いることが必須であり、この整泡剤としては、ポリウレタンフォーム用整泡剤として一般的なシリコーン系整泡剤が用いられている。
【0009】
シリコーン系整泡剤は、均一なセルを安定に形成する上で非常に有効な整泡剤であるが、整泡剤は経時によるフォームからのブリードアウトの問題があり、シリコーン系成分(ジメチルポリシロキサン)や揮発性有機成分(VOC)の発生で適用部材の汚染や動作不良等の不具合の原因となるおそれがある。従って、特にハードディスクドライブ(HDD)等の精密機器や車輌用部品等の高い信頼性を要求される用途においては、シリコーン系整泡剤の使用は避けることが望まれる。
【0010】
しかしながら、従来、メカニカルフロス法による軟質ポリウレタンフォームにおいては、特許文献2に、イソシアネート末端プレポリマーの末端イソシアネート基量と粘度を調整することで、整泡剤不使用でセルを安定化させる技術が提案されているが、化学発泡法による軟質ポリウレタンフォームにおいては、シリコーン系整泡剤を用いることなく微細セル軟質ポリウレタンフォームを製造する方法は提案されていない。
【0011】
また、軟質ポリウレタンフォームの特性として、難燃性は非常に重要な特性であり、多くの用途において、難燃性に優れることが要求されるが、軟質ポリウレタンフォームに難燃性を付与するための難燃剤として一般的に用いられているハロゲン化系難燃剤やリン系難燃剤は、環境による影響が大きいため、これらの難燃剤を用いることなく、軟質ポリウレタンフォームに難燃性を付与することが望まれている。
【0012】
しかしながら、シリコーン系整泡剤を用いた従来の軟質ポリウレタンフォームでは、難燃剤を用いることなく、十分な難燃性を得ることはできなかった。
【特許文献1】特開2004−238611号公報
【特許文献2】特開2001−89547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、シリコーン系整泡剤を用いることなく、非常に微細なセル構造を有する微細セル軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【0014】
本発明はまた、難燃剤を用いることなく、優れた難燃性を有する微細セル軟質ポリウレタンフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、イソシアネート末端プレポリマーに、連通化剤、及び発泡成分を添加混合してなる原料混合物を発泡硬化させて得られる微細セル構造ポリウレタンフォームであって、該発泡成分が整泡剤、発泡剤及び連通化剤を含み、該整泡剤が、Siを含まない化合物であることを特徴とする。
【0016】
請求項2の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1において、前記整泡剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物であることを特徴とする。
【0017】
請求項3の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1において、前記整泡剤が、ジエタノールアミド系化合物であることを特徴とする。
【0018】
請求項4の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する前記整泡剤の添加量が1.0〜3.0重量部であることを特徴とする。
【0019】
請求項5の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし4のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマーは、数平均分子量が400〜1000の低分子量ポリオールの1種以上と数平均分子量が3000〜12000の高分子量ポリオールの1種以上とを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとを反応させてなるものであることを特徴とする。
【0020】
請求項6の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリオール成分中の低分子量ポリオールの割合が30〜50重量%であることを特徴とする。
【0021】
請求項7の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマーは、前記ポリオール成分とポリイソシアネートとを1:0.25〜0.45の重量比で反応させてなるものであることを特徴とする。
【0022】
請求項8の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし7のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する前記連通化剤の添加量が0.5〜2.0重量部であることを特徴とする。
【0023】
請求項9の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし8のいずれか1項において、前記発泡剤は水を主成分とし、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する該発泡剤の添加量が0.5〜3.0重量部であることを特徴とする。
【0024】
請求項10の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし9のいずれか1項において、前記原料混合物は触媒としてアミン触媒を含み、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する触媒の添加量が1.0〜2.0重量部であることを特徴とする。
【0025】
請求項11の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし10のいずれか1項において、前記ポリイソシアネートが2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする。
【0026】
請求項12の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし11のいずれか1項において、前記原料混合物が難燃剤を含まず、厚み13mm以下の該フォームがUL94燃焼試験でHF−1以上の難燃性を有することを特徴とする。
【0027】
請求項13の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、請求項1ないし12のいずれか1項において、フォームのセル数が100個/25mm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明においては、イソシアネート末端プレポリマーを用いることにより原料混合物の物理的粘度を上げることで、セルの微細化と安定化を図ると共に、整泡剤としてSiを含まない化合物を用いることで、従来のシリコン系整泡剤のような整泡剤のブリードアウトによる問題を解消する。
【0029】
特に、数平均分子量が400〜1000の低分子量ポリオールの1種以上と数平均分子量が3000〜12000の高分子量ポリオールの1種以上とを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート末端プレポリマー、即ち、分子量の異なる2種類以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート末端プレポリマーを用いることにより、低分子量ポリオール由来のイソシアネート末端プレポリマーと、高分子量ポリオール由来のイソシアネート末端プレポリマーとの反応性の差異を利用してセルの物理的会合を妨げ、非常に微細なセル構造の軟質ポリウレタンフォームとすることができる。
【0030】
また、特に、整泡剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物又はジエタノールアミド系化合物を用いた場合には、その優れた整泡作用で安定な微細セル構造を実現すると共に、原料混合物の配合を適切に調整することにより、難燃剤を用いることなく、UL94燃焼試験でHF−1以上の優れた難燃性を得ることができる。このため、ハロゲン化系難燃剤やリン系難燃剤を用いることによる環境負荷の問題も解消することができる。
【0031】
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、そのシリコーンフリーの微細セル構造、更には難燃性を利用して、精密機器や車輌等の吸音材等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームの実施の形態を詳細に説明する。
【0033】
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、イソシアネート末端プレポリマーに、連通化剤、整泡剤及び発泡剤を添加混合してなる原料混合物を発泡硬化させて得られる微細セル構造ポリウレタンフォームにおいて、該整泡剤が、Siを含まない化合物であることを特徴とするものである。
【0034】
本発明で用いる原料混合物は、イソシアネート末端プレポリマーと整泡剤、発泡剤、及び連通化剤と更に触媒を含むことが好ましい。
【0035】
<イソシアネート末端プレポリマー>
本発明で用いるイソシアネート末端プレポリマーは、好ましくは数平均分子量が400〜1000の低分子量ポリオールの1種以上と数平均分子量が3000〜12000の高分子量ポリオールの1種以上とを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとを反応させてなるものであり、本発明では、このように、分子量の異なる2種類以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート末端プレポリマーを用いることにより、低分子量ポリオール由来のイソシアネート末端プレポリマーと、高分子量ポリオール由来のイソシアネート末端プレポリマーとの反応性の差異を利用してセルの物理的会合を妨げ、非常に微細なセル構造の軟質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0036】
本発明において、プレポリマー化に用いるポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールのいずれであってもよく、これらの混合物であっても良い。
【0037】
ポリエーテルポリオールとしては、例えばプロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどを出発物質としてアルキレンオキシドを付加重合してなるものが好ましく、特にグリセリンにエチレンオキシド又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドを付加重合させたものが好適である。ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸とジオールやトリオールなどとの縮合により得られる縮合系ポリエステルポリオール、ジオールやトリオールをベースとしてラクトンの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールの末端をラクトンでエステル変性したエステル変性ポリオールなどのポリオールが好ましく用いられる。
【0038】
低分子量ポリオールとしては、数平均分子量400〜1000好ましくは700〜1000で、水酸基価150〜500のものが好ましく、高分子量ポリオールとしては、数平均分子量3000〜12000好ましくは3000〜9000で、水酸基価15〜60のものが好ましい。
【0039】
プレポリマー化に用いるポリオール成分中の低分子量ポリオールの割合は、30重量%以上、特に40〜50重量%であることが好ましい。ポリオール成分中の低分子量ポリオールの割合が30重量%未満では、低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとを併用することによる本発明の効果を十分に得ることができない。ポリオール中の低分子量ポリオールの割合が多過ぎても同様に低分子量ポリオールと高分子量ポリオールとを併用することによる本発明の効果を十分に得ることができない上にプレポリマーの粘度が高く、触媒等と均一に混ざらない等の問題が生じる。
【0040】
一方、プレポリマー化に用いるポリイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)よりなる群から選ばれる1種又は2種以上(例えば2,4−TDIと2,6−TDIとの混合物やTDIとMDIとの混合物)が好適である。
【0041】
ポリイソシアネートとして、TDIとMDIとの混合物を用いる場合、その混合重量比はTDI:MDI=4〜9:1とすることが連通化しやすい点で好ましい。
【0042】
上記ポリオール成分とポリイソシアネートとは、ポリオール成分:ポリイソシアネート=1:0.25〜0.45(重量比)で反応させることが好ましい。この範囲よりもポリイソシアネートが多いと得られるプレポリマー中のフリーのポリイソシアネート含有量が多くなり発泡剤との反応が速くなって得られるフォームのセル径が大きく、形状が不均一なものとなる。逆に、この範囲よりも少ないとプレポリマー生成時の液の粘度が上昇して作業性が低下する。
【0043】
<整泡剤>
整泡剤としてはSiを含まない化合物を用いる(なお、以下においてSiを含まない化合物よりなる整泡剤を「ノンシリコーン系整泡剤」と称す場合がある。
【0044】
本発明で用いるノンシリコーン系整泡剤としてはSiを含まないものであればよく、特に制限はないが、特に気泡力、気泡維持力が強いことから、例えばポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物、ジエタノールアミド系化合物などの界面活性剤を好適に用いることができる。これらのノンシリコーン系整泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
ノンシリコーン系整泡剤の使用量はイソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して1.0〜3.0重量部とすることが好ましい。この範囲よりも整泡剤量が少ないと十分な整泡効果を得ることができず、多いと独立気泡になりやすい。
【0046】
<連通化剤>
本発明で用いる連通化剤としては、2官能以上、特に3官能以上の低分子量ポリオールが好ましく、このような低分子量ポリオールをイソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して0.5〜2.0重量部用いることにより、フォームの不具合(シュリンク)を防ぐことができる。
【0047】
<発泡剤>
発泡剤は、水を主成分とするものが好ましく、その添加量は、イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して、0.5〜3.0重量部とすることが好ましい。この範囲よりも発泡剤量が少ないと十分な発泡を起こさせることができず、多いと微細なセルを維持することが難しくなる。
【0048】
<触媒>
触媒としては、軟質ポリウレタンフォームの製造に用いられている一般的なものを用いることができ、その添加量も、軟質ポリウレタンフォームの製造に通常採用される量で良いが、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等の第3級アミン触媒が好適に用いられ、その添加量は、通常イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対して1.0〜2.0重量部とすることが好ましい。
【0049】
<その他の成分>
本発明では、上記添加成分以外に、本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームの性能を損なわない範囲において、酸化防止剤、着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、その他の添加剤を添加しても良いが、難燃剤については、これを用いなくとも、十分な難燃性を得ることができる。ただし、難燃剤の使用を排除するものではない。
【0050】
<製造方法>
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、予め製造されたイソシアネート末端プレポリマーに、発泡剤、整泡剤、連通化剤、触媒等の添加剤の必要量を添加、混合して得られる原料混合物を発泡、硬化させて製造することができる。
【0051】
<セル数>
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、イソシアネート末端プレポリマー、好ましくは分子量の異なる2種類以上のポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート末端プレポリマーを用いることによるセルの微細化作用とノンシリコーン系整泡剤によるセルの安定化作用で、通常、セル数80個/25mm以上好ましくは100個/25mm以上、より好ましくは120個/25mm以上の非常に微細なセル構造を実現することができる。
【0052】
<難燃性>
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、特に、整泡剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物又はジエタノールアミド系化合物を用いた場合には、その優れた整泡作用で安定な微細セル構造を実現すると共に、原料混合物の配合を適切に調整することにより、難燃剤を用いることなく、UL94燃焼試験でHF−1以上の優れた難燃性を得ることができる。
【0053】
<密度>
本発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームの密度は特に制限はないが、密度0.05〜0.25g/cmであることがコスト、強度等の面で好適である。
【実施例】
【0054】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0055】
なお、以下の実施例及び比較例で用いた原料は次の通りである。
[ポリイソシアネート]
TDI:三井武田ケミカル社製 商品名「コスモネートT−80」(2,4−
TDI/2,6−TDIの比率80/20の混合物)
C−MDI:住化バイエル社製 商品名「44V20」(粗ジフェニルメタン−
4,4’−ジイソシアネート)
[低分子量ポリオール]
ポリプロピレンポリオール:三井武田ケミカル社製 商品名「アクトコール32−
160」(数平均分子量:1000,水酸基価:160)
[高分子量ポリオール]
ポリエーテルポリオール:ダウケミカル社製 商品名「VORANOL3010」
(数平均分子量:3000,水酸基価:56)
ポリオキシアルキレンポリオール:旭硝子社製 商品名「EL828」
(数平均分子量:4800,水酸基価:34)
[連通化剤]
特殊ポリエーテルポリオール:ダウポリウレタン社製 商品名「XQ82211.00」(水酸基価:18)
[発泡剤]

[触媒]
トリエチレンジアミン(主成分):東ソー社製 商品名「TOYOCAT TF」
[整泡剤]
ノンシリコーン系整泡剤;第一工業社製 「ダイヤノール300」
(ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド系)
ノンシリコーン系整泡剤;花王(株)製(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)
シリコーン系整泡剤;東レダウコーニングシリコーン(株)製「SZ1127」
(ポリジメチルシロキサン系)
【0056】
実施例1〜3、比較例1,2
表1に示す配合でポリエーテルポリオール成分とポリイソシアネートとを反応させてイソシアネート末端プレポリマーを製造し、このイソシアネート末端プレポリマーに対して、表1に示す割合で各種添加剤を添加し、混合攪拌して軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0057】
ただし、比較例1においては、プレポリマー法ではなく、ワンショット法にて表1に示す配合で軟質ポリウレタンフォームを製造した。
【0058】
得られた軟質ウレタンフォームについて、下記方法でフォーム状態を観察すると共に、密度、セル数を調べ、結果を表1に示した。
【0059】
[フォーム状態]
サンプルの切断面を観察し、セル径が安定し、フォーム形状を維持しているものを良好(○)とし、シュリンクしているものを不良(×)とした。
[密度]
50×300×300mmのサンプルの重量を体積で除した(JIS K 6401に準拠)。
[セル数]
ブロックの成長方向により水平裁断した試験片を実体顕微鏡により観察して測定し、25mmの長さの範囲にあるセル数をかぞえ、20点の測定値の最小値と最大値を求めた。
【0060】
また、得られた軟質ポリウレタンフォームの難燃性について、下記方法でUL94燃焼試験とMVSS燃焼試験を行い、結果を表2,表3に示した。
[UL94燃焼試験]
UL規格に準ずる。
[MVSS燃焼試験]
MVSS規格に準ずる。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
【表3】

【0064】
以上の結果から、本発明によれば、ノンシリコーン系整泡剤を用いて、非常に微細なセル構造を有し、かつ難燃性に優れた軟質ポリウレタンフォームを得ることができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
発明の微細セル軟質ポリウレタンフォームは、ハロゲン、リン、VOC等の環境負荷化学物質を嫌う部材、シリコーン系発泡剤のブリードアウトによる汚染が問題となる部材、もしくは、燃焼性に制限のある部材に有用である。例えば、精密機械、及び車輌用のシール材、パッキンやHDD、車輌用途の吸音材、フィルター部材、梱包材、衝撃吸収材、複写機などの各種ローラなどにも非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート末端プレポリマーに、連通化剤、整泡剤及び発泡剤を添加混合してなる原料混合物を発泡硬化させて得られる微細セル構造ポリウレタンフォームにおいて、
該整泡剤が、Siを含まない化合物であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
請求項1において、前記整泡剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系化合物であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
請求項1において、前記整泡剤が、ジエタノールアミド系化合物であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する前記整泡剤の添加量が1.0〜3.0重量部であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマーは、数平均分子量が400〜1000の低分子量ポリオールの1種以上と数平均分子量が3000〜12000の高分子量ポリオールの1種以上とを含むポリオール成分と、ポリイソシアネートとを反応させてなるものであることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリオール成分中の低分子量ポリオールの割合が30〜50重量%であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマーは、前記ポリオール成分とポリイソシアネートとを1:0.25〜0.45の重量比で反応させてなるものであることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する前記連通化剤の添加量が0.5〜2.0重量部であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、前記発泡剤は水を主成分とし、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する該発泡剤の添加量が0.5〜3.0重量部であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、前記原料混合物は触媒としてアミン触媒を含み、前記イソシアネート末端プレポリマー100重量部に対する触媒の添加量が1.0〜2.0重量部であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項において、前記ポリイソシアネートが2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートよりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項において、前記原料混合物が難燃剤を含まず、厚み13mm以下の該フォームがUL94燃焼試験でHF−1以上の難燃性を有することを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項において、フォームのセル数が100個/25mm以上であることを特徴とする微細セル軟質ポリウレタンフォーム。

【公開番号】特開2009−167273(P2009−167273A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5863(P2008−5863)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】