説明

微細パターン形成方法および重合体

【課題】架橋性添加剤などの使用なしで効率よく微細パターンを形成する。
【解決手段】微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として、下記式(1)および/または下記式(2)で表される繰返し単位から選ばれる繰返し単位を含む重合体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトレジストを用いた微細加工技術における微細パターン形成方法および重合体に関し、特にパターニング後に熱処理によりパターンを収縮させる際に用いられる微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用できる新規重合体と、この新規重合体を用いた微細パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化が進むに伴い、その製造方法におけるリソグラフィー工程において、いっそうの微細化が要求されるようになってきている。すなわち、リソグラフィー工程では、現在100nm以下の微細加工が必要になってきており、ArFエキシマレーザー光、F2エキシマレーザー光などの短波長の照射光に対応したフォトレジスト材料を用いて、微細なパターンを形成させる方法が種々検討されている。
このようなリソグラフィー技術においては、露光波長の制約から、微細化に限界が生じるのを免れないので、これまで、この波長限界をこえる微細パターンの形成を可能にするための研究が行なわれてきた。すなわち、ポリメチルメタクリレートなどの電子線用レジストをパターン化し、該レジストパターン上にポジ型レジストを塗布したのち、加熱処理して該レジストパターンとポジレジスト層との境界に反応層を設け、ポジ型レジストの非反応部分を除去することにより、レジストパターンを微細化する方法(特許文献1)、下層レジストパターンと上層レジストとの間に酸発生剤や酸による熱架橋を利用して反応層を形成させる方法(特許文献2)、上層レジスト塗布液として、感光性成分を含まず、水溶性樹脂や水溶性架橋剤、あるいはこれらの混合物を水溶性溶媒に溶解した微細パターン形成材料を用いて半導体装置を製造する方法(特許文献3)、基板上に化学増幅型レジストからなる感光層を設け、画像形成露光後、現像処理してレジストパターンを形成させ、このレジストパターン上に、ポリビニルアセタールのような水溶性樹脂やテトラ(ヒドロキシメチル)グリコールウリルのような水溶性架橋剤とアミンのような水溶性含窒素有機化合物と、場合によりフッ素およびケイ素含有界面活性剤とを含む塗膜形成剤を塗布したのち、加熱処理してレジストパターンとレジストパターン微細化用塗膜との界面に水不溶性の反応層を形成させ、次いで純水により、レジストパターン微細化用塗膜の非反応部分を除去する方法(特許文献4)などが提案されている。
【0003】
これらの方法は、感光性レジスト(下層レジスト)の波長限界をこえ、微細パターン形成材料(上層レジスト)によるパターンの微細化を簡単に行なうことができるという点で好ましいものであるが、レジストパターンの底部分の不必要な部分まで微細パターン形成材料の架橋を生じたり、裾ひき形状となったり、微細パターン形成材料の断面形状の垂直性が不良になったり、あるいは上層レジストパターンサイズが架橋を起こすための加熱であるミキシングベークによりパターン形状が左右されるなどの問題があり、まだ十分に満足しうるものとはいえない。また、これらのプロセスは10数nm/℃と温度依存性が高く、基板の大型化、パターンの微細化に際し、ウェーハ面内での温度を均一に保つことは困難であるため、得られたパターンの寸法制御性が低下するという問題がある。さらに、上記の水溶性樹脂を用いた微細パターン形成材料は、水への溶解性の制限からドライエッチングに対する耐性が低いという問題がある。半導体デバイスを作製するに際し、レジストパターンをマスクにドライエッチングにより基板上にパターンを転写するが、ドライエッチング耐性が低いとレジストパターンが基板上に精度良く転写できないという問題がある。
【0004】
そのほか、基板上にフォトレジストパターンを形成したのち、それに熱または放射線照射を施し、フォトレジストパターンを流動化させ、パターン寸法を解像限界よりも小さくする、いわゆる熱フロープロセスが提案されている(特許文献5、特許文献6)。
しかしながら、この方法では、熱や放射線によるレジストの流動制御が困難であり、品質の一定した製品が得られないという問題がある。さらに、この熱フロープロセスを発展させた方法として、基板上にフォトレジストパターンを形成したのち、その上に水溶性樹脂膜を設け、フォトレジストの流動を制御する方法(特許文献7)が提案されているが、この方法で用いられるポリビニルアルコールのような水溶性樹脂は、水による除去時に必要とされる溶解性や経時安定性が不十分であり、残留分を生じるという問題がある。
【0005】
あるいは、フォトレジストを用いて形成されたレジストパターンを熱収縮させて、微細レジストパターンを形成する際に、レジストパターン上に被覆形成剤を設け、熱処理により、レジストパターンを熱収縮させ、水洗により除去し得るレジストパターン微細化用被覆形成剤、およびこのものを用いて効率よく微細レジストパターンを形成させる方法(特許文献8)が提案されているが、この方法ではレジストパターン微細化用被覆形成剤は水系であり、直径100nm以下のコンタクトホール等の微細なパターンへの被覆性が不十分であり、かつ水系であるため塗布時に専用のカップが必要になるためコストアップとなり、さらに、輸送などで低温となる場合、凍結・析出が生じるという問題がある。
【特許文献1】特許第2723260号公報
【特許文献2】特開平6−250379号公報
【特許文献3】特開平10−73927号公報
【特許文献4】特開2001−19860号公報
【特許文献5】特開平1−307228号公報
【特許文献6】特開平4−364021号公報
【特許文献7】特開平7−45510号公報
【特許文献8】特開2003−195527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、フォトレジストを用いて形成されたレジストパターンを熱処理することにより微細パターンを形成するに際し、該レジストパターン上に塗布され、熱処理により、架橋性添加剤などを併用しない場合でもレジストパターンを円滑に収縮させることができると共に、その後のアルカリ水溶液処理により容易に除去し得る樹脂組成物に使用することができる重合体、およびこれを用いて効率よく微細レジストパターンを形成できる新規な反応機構による微細パターン形成方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微細パターン形成方法は、レジストパターン上に微細パターン形成用樹脂組成物の被膜を設け、上記レジストパターンを熱処理することで微細パターンを形成させる微細パターン形成方法において、上記微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用される重合体の側鎖が酸の作用により、該側鎖自身の連鎖的架橋反応により上記微細パターンが形成されることを特徴する。
【0008】
また、上記微細パターン形成方法に用いられる微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用される重合体であって、該重合体は、下記式(1)および下記式(2)で表される繰返し単位から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定したポリスチレン換算質量平均分子量が500〜500,000であることを特徴とする。
【化2】

式(1)において、R1およびR2は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、アリール基を表し、R3は、炭素数1〜3のアルキル基、ビニル基、アリル基、置換されてもよいアリール基を表し、nは0または1、mは0、1または2を表す。特に、上記重合体において、R1およびR2が水素原子、nおよびmが0であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の微細パターン形成方法は、微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用される重合体の側鎖が酸の作用により、該側鎖自身の連鎖的架橋反応により上記パターン境界が架橋収縮するので、架橋性添加剤などを併用しないでも微細パターンが形成できる。また、架橋性添加剤などを併用しないと、未反応低分子物質を生成しないため、レジストパターンを形成する雰囲気を清浄に保つことができる。
【0010】
本発明の重合体は、レジスト中の酸の働きにより、側鎖自身の連鎖的架橋反応をする官能基、すなわち、架橋反応が化学的に増幅する官能基を有する式(1)および/または式(2)の繰返し単位を含むので、微細なレジストパターンへの塗布特性に優れ、また硬化膜の寸法制御性にも優れる微細パターン形成用樹脂組成物が得られる。本発明の重合体は、微細パターン形成用樹脂組成物の溶媒として、特にアルコール溶媒を用いることにより、上記効果が発現される。このため、基板の表面状態の如何にかかわらず、レジストパターンのパターン間隙を実効的に、精度よく微細化することができ、波長限界をこえるパターンを良好かつ経済的に低コストでパターン欠陥の少ない状態で形成することができる。
特に、本発明の重合体を樹脂成分として使用した微細パターン形成用樹脂組成物は、特にアルコール系溶媒と組み合わせることにより、該樹脂の収縮量が大きく、収縮時の温度依存性が低く、収縮後の形状に優れ、ピッチ依存性が低いため、プロセス変動に対するパターン形成マージンであるプロセスウィンドウ(Exposure Depth-Windowともいう)が広い。また、エッチング耐性に優れている。
さらに、このようにして形成された微細レジストパターンをマスクとしてドライエッチングすることにより、半導体基板上に精度よくトレンチパターンやホールを形成することができ、微細トレンチパターンやホールを有する半導体装置等を簡単にかつ歩留まりよく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明者らは、熱処理によりレジストパターンを円滑に収縮させることができると共に、その後のアルカリ水溶液処理により容易に除去し得る樹脂組成物に使用できる樹脂成分について、鋭意研究を重ねた結果、パターン形成後のレジスト膜に残存する酸により、特定の官能基を側鎖に有する重合体は、その官能基が連鎖的に架橋反応することを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
架橋反応の一例を以下の式(3)に示す。
【化3】

化学増幅型のレジストを用いる場合、露光により酸を発生させる酸発生剤が含まれている。このレジスト膜を露光することでパターンを形成させるが、パターン形成後のレジスト膜中には酸(H)が残存している。この酸(H)が、−CR2OH基と反応することにより、カチオンが生成すると共に、このカチオンが−CR2OH基と反応して架橋する。この架橋反応において、再び酸(H)が発生するので、上記反応を繰り返し、−CR2OH基が架橋すると同時に酸を発生する。架橋性添加剤などを併用することなく、この反応は重合体の側鎖の官能基同士の反応となるので、低分子物質が残存しない。さらに、連鎖反応的に反応が進むので、短時間で重合体同士が架橋される。そのため、レジストパターンの収縮量の温度、時間依存性を小さくできるので、効率よく精密な微細パターンを形成できる。
【0012】
本発明の微細パターン形成用樹脂組成物に樹脂成分として使用できる重合体は、上記式(1)で表されるアセナフチレン誘導体の繰返し単位、および/または、上記式(2)で表されるスチレン誘導体の繰返し単位を含む重合体である。この重合体を用いることにより、エッチング耐性に優れた微細パターン形成用樹脂組成物が得られる。
1、R2およびR3として表される炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が挙げられる。
1およびR2として表される置換されてもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基が挙げられる。
本発明においては、特に、R1およびR2が水素原子、nおよびmが0であることが好ましい。
【0013】
式(1)および式(2)で表される繰返し単位は、下記式(1−1)および式(2−1)で表される単量体を重合させて得られる。
【化4】

式(1−1)および(2−1)において、R1、R2およびR3は、上記式(1)および式(2)におけるそれと同一である。
式(1−1)または式(2−1)で表される単量体は、重合体を構成する全単量体に対して、通常20〜70モル%、好ましくは30〜60モル%配合される。20モル%未満であると、微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用した場合に、架橋反応を起こすヒドロキシメチル基含有量が少なすぎ、パターンの収縮を起こすことができず、70モル%をこえると、アルコール溶媒への溶解不良を起こし、パターン欠陥の原因となるおそれがある。
【0014】
本発明の重合体は、式(1)および/または式(2)で表される繰り返し単位を必須成分として得られる。なお、上記混合繰り返し単位の場合、重合体を構成する全繰り返し単位に対して、混合繰り返し単位として、通常20〜70モル%、好ましくは、30〜60モル%配合される。
【0015】
本発明の重合体は、上記繰り返し単位と共に、フェノール性水酸基を有する単量体由来の繰り返し単位を含むことができ、特にフェノール性水酸基を有する好適な単量体として、分子内にアミド基を有する下記式(4)で表される単量体が挙げられる。
【化5】

4およびR5は水素原子またはメチル基を表す。式(4)で表される単量体としては、p−ヒドロキシメタクリルアニリドが好ましい。式(4)で表されるフェノール性水酸基を有する単量体は、共重合体を構成する全単量体に対して、通常20〜80モル%、好ましくは30〜70モル%である。
【0016】
重合体は、例えば、各単量体の混合物を、ヒドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジアシルパーオキシド類、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤を使用し、必要に応じて連鎖移動剤の存在下、適当な溶媒中で重合することにより製造することができる。 上記重合に使用される溶媒としては、例えば、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の飽和カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン等のアルキルラクトン類;テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;2−ブタノン、2−ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のアルキルケトン類;シクロヘキサノン等のシクロアルキルケトン類;2−プロパノール、1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類等を挙げられる。これらの溶媒は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
また、上記重合における反応温度は、通常、40〜120℃、好ましくは50〜100℃であり、反応時間は、通常、1〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0018】
重合体は、純度が高いことが好ましく、ハロゲン、金属等の不純物の含有量が少ないだけでなく、残留する単量体やオリゴマー成分が既定値以下、例えばHPLCによる分析で0.1質量%以下等であることが好ましい。これによって、重合体を用いた微細パターン形成用樹脂組成物としてのプロセス安定性、パターン形状等をさらに改善することができるだけでなく、液中異物や感度等の経時変化がない微細パターン形成用樹脂組成物が得られる。
上記のような方法で得られた重合体の精製方法として、以下の方法が挙げられる。金属等の不純物を除去する方法としては、ゼータ電位フィルターを用いて重合溶液中の金属を吸着させる方法、蓚酸、スルホン酸等の酸性水溶液で重合溶液を洗浄することで金属をキレート状態にして除去する方法等が挙げられる。また、残留する単量体やオリゴマー成分を規定値以下に除去する方法としては、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留する単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する透析や限外濾過等の溶液状態での精製方法、重合溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留する単量体等を除去する再沈澱法、濾別した樹脂スラリー貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
【0019】
このようにして得られる重合体の質量平均分子量Mwはゲルパーミエーションクロマト法ポリスチレン換算で通常500〜500,000、好ましくは1,000〜50,000、特に好ましくは1,000〜20,000である。微細パターン形成用樹脂組成物に用いた場合、分子量が大きすぎると熱硬化後に現像液で除去することができなくなるおそれがあり、低すぎると塗布後に均一な塗膜を形成できないおそれがある。
【0020】
本発明の重合体を微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分とする場合、架橋剤を添加しない場合でも架橋反応が進行するが、架橋剤を添加しても樹脂成分の架橋反応を阻害することはないので、樹脂成分に架橋剤を配合してもなんら問題なく使用できる。
【0021】
使用できる架橋剤としては、下記式(5)で表される基を含む化合物(以下、「架橋剤I」という)、反応性基として2つ以上の環状エーテルを含む化合物(以下、「架橋剤II」という)、または、「架橋剤I」および「架橋剤II」との混合物が挙げられる。
【化6】

式(5)において、R6およびR7は、水素原子または下記式(6)で表され、R6およびR7の少なくとも1つは下記式(6)で表され;
【化7】

式(6)において、R8およびR10は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシアルキル基、またはR8およびR10が互いに連結した炭素数2〜10の環を表し、R9は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表す。
上記架橋剤は上述したアセナフチレン誘導体および/またはスチレン誘導体を単量体として得られる重合体および/または架橋剤が相互に酸の作用により反応する架橋剤(硬化成分)として作用するものである。
【0022】
式(5)で表される化合物(架橋剤I)は、分子内に官能基としてイミノ基、メチロール基およびメトキシメチル基等を有する化合物であり、(ポリ)メチロール化メラミン、(ポリ)メチロール化グリコールウリル、(ポリ)メチロール化ベンゾグアナミン、(ポリ)メチロール化ウレアなどの活性メチロール基の全部または一部をアルキルエーテル化した含窒素化合物を挙げることができる。ここで、アルキル基としてはメチル基、エチル基、ブチル基、またはこれらを混合したものを挙げることができ、一部自己縮合してなるオリゴマー成分を含有していてもよい。具体的にはヘキサメトキシメチル化メラミン、ヘキサブトキシメチル化メラミン、テトラメトキシメチル化グリコールウリル、テトラブトキシメチル化グリコールウリルなどを例示できる。
市販されている化合物としては、サイメル300、同301、同303、同350、同232、同235、同236、同238、同266、同267、同285、同1123、同1123−10、同1170、同370、同771、同272、同1172、同325、同327、同703、同712、同254、同253、同212、同1128、同701、同202、同207(以上、日本サイテックインダストリーズ社製)、ニカラックMW−30M、同30、同22、同24X、ニカラックMS−21、同11、同001、ニカラックMX−002、同730、同750、同708、同706、同042、同035、同45、同410、同302、同202、ニカラックSM−651、同652、同653、同551、同451、ニカラックSB−401、同355、同303、同301、同255、同203、同201、ニカラックBX−4000、同37、同55H、ニカラックBL−60(以上、三和ケミカル社製)などを挙げることができる。好ましくは、式1におけるR1、R2のどちらか一方が水素原子であり、すなわち、イミノ基を含有する架橋剤であるサイメル325、同327、同703、同712、同254、同253、同212、同1128、同701、同202、同207が好ましい。
【0023】
反応性基として2つ以上の環状エーテルを含む化合物(架橋剤II)は、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3',4'−エポキシ−6'−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ε−カプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチルカプロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、β−メチル−δ−バレロラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどのエポキシシクロヘキシル基含有化合物や、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3'−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチレンオキシド(EO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、プロピレンオキシド(PO)変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルなどの分子中にオキセタン環を2個以上有するオキセタン化合物を挙げることができる。
【0024】
これらのうち、架橋剤IIとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテルが好ましい。
上述した架橋剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
本発明の重合体と組み合わせて微細パターン形成用樹脂組成物とする場合、架橋剤の配合量は、上記本発明の重合体100質量部に対して、0〜100質量部、好ましくは0〜50質量部である。配合量が50質量部をこえると硬化が進みすぎ、パターンが埋まってしまうおそれがある。
【0026】
上記重合体は、微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用する場合、その組成物の溶媒はアルコール溶媒が好ましい。
上記重合体は、後述するアルコール溶媒を含めた樹脂組成物全体に対して、0.1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%である。上記重合体の合計量が、0.1質量%未満では塗膜が薄くなりすぎパターンエッチ部に膜切れを起こすおそれがあり、30質量%をこえると粘度が高くなりすぎ微細なパターンへ埋め込むことができないおそれがある。
【0027】
微細パターン形成用樹脂組成物に使用できるアルコール溶媒は、アセナフチレン誘導体および/またはスチレン誘導体を単量体として得られる重合体を十分に溶解し、かつフォトレジスト膜上に塗布するに際し、フォトレジスト膜とインターミキシングを起こさない溶媒であれば使用できる。
そのような溶媒としては、炭素数1〜8の1価アルコールであることが好ましい。例えば、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、2−メチル−2−ヘプタノール、2−メチル−3−ヘプタノールなどが挙げられ、1−ブタノール、2−ブタノール、4−メチルー2−ペンタノールが好ましい。これらのアルコール溶媒は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、アルコール溶媒は、全溶媒に対して10質量%以下、好ましくは1質量%以下の水を含むことができる。10質量%をこえると水酸基を有する樹脂の溶解性が低下する。より好ましくは、水を含有しない無水アルコール溶媒である。
【0028】
本発明の重合体を用いる微細パターン形成用樹脂組成物は、フォトレジスト膜上に塗布するに際し、塗布性を調整する目的で、他の溶媒を混合することもできる。他の溶媒は、フォトレジスト膜を浸食せずに、かつ微細パターン形成用樹脂組成物を均一に塗布する作用がある。
他の溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、ジアセトンアルコールなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、水が挙げられる。これらのうち、環状エーテル類、多価アルコールのアルキルエーテル類、多価アルコールのアルキルエーテルアセテート類、ケトン類、エステル類、水が好ましい。
【0029】
上記、他の溶媒の配合割合は、全溶媒中の30質量%以下であり、好ましくは20質量%以下である。30質量%をこえると、フォトレジスト膜を浸食し、微細パターン形成用樹脂組成物との間にインターミキシングを起こすなどの不具合を発生し、レジストパターンを埋めてしまうおそれがある。なお、水が混合される場合、10質量%以下である。
【0030】
本発明の重合体を用いる微細パターン形成用樹脂組成物には、塗布性、消泡性、レベリング性などを向上させる目的で界面活性剤を配合することもできる。
そのような界面活性剤としては、例えばBM−1000、BM−1100(以上、BMケミー社製)、メガファックF142D、同F172、同F173、同F183(以上、大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC−135、同FC−170C、同FC−430、同FC−431(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−112、同S−113、同S−131、同S−141、同S−145(以上、旭硝子(株)製)、SH−28PA、同−190、同−193、SZ−6032、SF−8428(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)などの商品名で市販されているフッ素系界面活性剤を使用することができる。
これらの界面活性剤の配合量は、本発明の重合体100質量部に対して好ましくは5質量部以下である。
【0031】
上記微細パターン形成用樹脂組成物を用いて、次の方法で微細パターンが形成できる。
(1)レジストパターンの形成
スピンコートなどの従来公知の方法により8インチあるいは12インチのシリコンウエハ基板上に反射防止膜(有機膜あるいは無機膜)を形成する。次いで、スピンコートなどの従来公知の方法によりフォトレジストを塗布し、例えば、80℃〜140℃程度、60〜120秒程度の条件でプリベーク(PB)を行なう。その後、g線、i線などの紫外線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、X線、電子線などで露光をし、例えば、80℃〜140℃程度の条件でポストイクスポージャーベーク(PEB)を行なった後、現像し、レジストパターンを形成する。
(2)微細パターンの形成
上記レジストパターンが形成された基板に、スピンコートなどの従来公知の方法により上記微細パターン形成用樹脂組成物を塗布する。スピンコートのみで溶媒が揮散し被覆膜を形成する場合がある。また、必要に応じて、例えば、80℃〜110℃程度、60〜120秒程度のプリベーク(PB)し、微細パターン形成用樹脂組成物の被覆膜を形成する。
次いで、このレジストパターンを微細パターン形成用樹脂組成物により被覆した基板を熱処理する。熱処理により、フォトレジスト由来の酸がフォトレジストとの界面から微細パターン形成用樹脂組成物層中に拡散し、微細パターン形成用樹脂組成物は架橋反応を起こす。フォトレジスト界面からの架橋反応状態は、微細パターン形成用樹脂組成物の材料、使用されるフォトレジスト、ベーク処理温度およびベーク処理時間により決定される。熱処理温度および熱処理時間は、通常90℃〜160℃程度の温度で、60〜120秒程度で行なわれる。
次いで、微細パターン形成用樹脂組成物の被覆膜を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などのアルカリ水溶液などにより現像処理(例えば、60〜120秒程度)して、未架橋の微細パターン形成用樹脂組成物の被覆膜を溶解させて除去する。最後に水で洗浄処理することにより、ホールパターンや楕円パターン、トレンチパターンなどを微細化することができる。
【実施例】
【0032】
実施例1
【化8】

5−ヒドロキシメチルアセナフチレン(P−1−1)6g、p−ヒドロキシフェニルメタクリルアニリド(P−1−2)9g、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート5gをプロピレングリコールモノメチルエーテル180gに溶解し、60℃にて4時間重合反応を行なった。重合液をヘプタンにて再沈精製し、5−ヒドロキシメチルアセナフチレン由来の繰り返し単位/p−ヒドロキシフェニルメタクリルアニリド由来の繰り返し単位=40/60(モル比)からなる重合体20gを得た。この重合体を樹脂P−1とする。
【0033】
実施例2
【化9】

出発原料として5−ヒドロキシメチルスチレンおよびp−ヒドロキシフェニルメタクリレートとする以外は、実施例1と同様にして、5−ヒドロキシメチルスチレン由来の繰り返し単位/p−ヒドロキシフェニルメタクリレート由来の繰り返し単位=40/60(モル比)からなる重合体を得た。この重合体を樹脂P−2とする。
【0034】
市販品の例
ポリビニルアルコールとして市販の平均重合度900〜1,100、けん化度96%以上を使用した。この重合体を樹脂P−3とする。
【0035】
比較用樹脂合成例
【化10】

ビニルピロリドン(P−4−1)58.5g、アクリル酸(P−4−2)70.5g、アゾビスイソブチロニトリル9.0gをプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、80℃にて9時間重合反応を行なった。重合液をヘキサンで再沈精製しMw5,600、Mw/Mn1.62のポリ(アクリル酸/ビニルピロリドン)共重合体110gを得た。この共重合体を樹脂P−4とする。
【0036】
実施例1および実施例2で得られた各重合体を微細パターン形成用樹脂として評価した。
実施例1および実施例2で得られた樹脂を1-ブタノールの5%溶液とした後、孔径200nmのフィルターを使用して濾過して、評価用の微細パターン形成用樹脂組成物No.1およびNo.2を得た。評価例1および評価例2として表1に示す。なお、表1には評価例1および2を実施例1および2として表す。また、比較評価例を比較例1〜比較例3として表1に示す。
各評価例および比較評価例に用いた架橋剤およびアルコール溶媒を以下に示す。
架橋剤
C−1:サイメル300(日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)
アルコール溶媒その他
S−1:1−ブタノール
S−2:水
【0037】
得られた微細パターン形成用樹脂組成物を評価するために、レジストパターン付きの評価用基板を以下の方法で作製した。
8インチシリコンウェハ上に下層反射防止膜ARC29A(ブルワーサイエンス社製)をCLEAN TRACK ACT8(東京エレクトロン(株))でスピンコートにより膜厚77nm(PB205℃、60秒)で塗膜を形成した後、JSR ArF AR1244J(JSR株式会社製、脂環族系感放射線性樹脂組成物)のパターニングを実施する。AR1244Jは、スピンコート(CLEAN TRACK ACT8)、PB(130℃、90秒)により膜厚210nmとして塗布し、ArF投影露光装置S306C(ニコン(株))で、NA:0.78、シグマ:0.85、2/3Annの光学条件にて露光(露光量30mJ/cm2)を行ない、同CLEAN TRACK ACT8ホットプレートにてPEB(130℃、90秒)を行ない、同CLEAN TRACK ACT8のLDノズルにてパドル現像(60秒間)、超純水にてリンス、次いで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライし、評価用基板を得た。この工程で得られた基板を評価用基板Aとする。同一条件で作製した評価用基板Aを複数枚準備した。
得られた評価用基板を走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−9360)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/70nmスペース)に該当するパターンを観察し、レジストパターンのホール径を測定した。
【0038】
レジストパターン付き評価基板を表1記載の各実施例および比較例において、微細パターン形成用樹脂組成物を以下の方法で評価した。各評価結果をそれぞれ表2に示す。
(1)埋め込み性評価
上記評価用基板A上に、表1記載の微細パターン形成用樹脂組成物をCLEAN TRACK ACT8にてスピンコートにより、膜厚300nmの塗膜を得た。ついで、走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−4800)を用いて100nm径パターン部の断面を20箇所観察し、パターン内に気泡などの空隙部がないものを埋め込み性良好と判断して「〇」、空隙部が観察されたものを埋め込み性不良をして「×」とした。
(2)収縮率評価
上記評価用基板A上に、表1記載の微細パターン形成用樹脂組成物をCLEAN TRACK ACT8にてスピンコートにより、膜厚300nm塗布した後、レジストパターンと微細パターン形成用樹脂組成物を反応させるため、表1記載の収縮率評価ベーク条件でベークを行なった。ついで、同CLEAN TRACK ACT8のLDノズルにて2.38質量%TMAH水溶液を現像液としてパドル現像(60秒間)、超純水にてリンス、次いで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。この工程で得られた基板を評価用基板Bとする。
ただし、比較例1〜3の現像は、超純水を現像液として用い同CLEAN TRACK ACT8のLDノズルにてパドル現像(60秒間)、次いで4000rpmで15秒間振り切りによりスピンドライした。
パターン寸法の収縮率は、走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−9360)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/70nmスペース)に該当するパターン、および100nm径ホールパターン、560nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/430nmスペース)に該当するパターンを観察し、パターンのホール径を測定し、下記式より収縮率を算出した。
収縮率(%)=[(φ1−φ2)/φ1]×100
φ1:評価用基板Aのレジストパターンホール径(nm)
φ2:評価用基板Bのレジストパターンホール径(nm)
このとき、収縮が確認されたとき「〇」、収縮が確認されないもしくはパターンがつぶれてしまっているとき「×」とした。なお、比較例1〜3は、埋め込み性が均一でなく、収縮率にばらつきが大きく、評価が不可であるため、表2において*印で示してある。
(3)残さ評価
評価用基板Bを走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−4800)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nm径パターン/70nmスペース)に該当するパターンの断面を観察し、開口部底部に残さがないとき「〇」、残さが観察されたとき「×」とした。
(4)パターン収縮後形状評価
評価用基板Aおよび評価用基板Bにおいて、走査型電子顕微鏡(日立計測器(株)製S−4800)で100nm径ホールパターン、100nmスペースのマスクパターン(バイアス+30nm/マスク上は130nmパターン/70nmスペース)に該当し、かつ同位置に存在するパターンの断面をそれぞれ観察する。断面形状を図1および図2に示す。基板1に対するホールパターン2の側壁2の角度がパターン収縮前の角度θ(図1(a))とパターン収縮後の角度θ'(図1(b))で3度以下の差であること(図1参照)、かつ評価用基板A(図2(a))におけるレジストの膜厚tを100として、基板1から80をこえる部分でのみ評価用基板B上のパターンに劣化t'が認められるものを良好とし(図2(b))、その他は不良とした(図2参照)。なお、比較例1〜3は埋め込み性が均一でなく、収縮率にばらつきが大きく、評価が不可であるため、表2において*印で示してある。
(5)パターン欠陥評価
実施例1,2および比較例3につき、パターン欠陥評価を行なった。フォトレジストにパターンを形成した後、欠陥測定を行ない、微細パターン形成用樹脂組成物を塗布、ベーク、現像処理後、更に同じ条件にて、欠陥測定装置(KLA-Tencor社製UV明視野パターン付ウェーハ欠陥検査装置2351)を用いて、欠陥測定を行なった。測定条件は、8インチウエハ上に150nmホール/300nmピッチのパターンを形成して37.590cm2の測定範囲の欠陥を測定した。欠陥の種類としては、パターンを微細化させる前後の座標が一致している欠陥と、パターンを微細化させた後の欠陥で、微細化前と座標が一致していない欠陥とを測定した。これらの欠陥数の合計が40個以下を「○」、40個をこえる場合を「×」とした。
(6)エッチング耐性評価
評価用基板Bに対して、PMT社製ドライエッチング装置(Pinnacle8000)を用い、エッチングガスをCF4とし、ガス流量75sccm、圧力2.5mTorr、出力2,500Wの条件でドライエッチングを行なって、主にホールパターンの断面およびホールパターン周辺の荒れを断面SEMから観察した。評価の指標として、観察時に断面および表面の凹凸がくっきりと観察される場合を不良、比較的凹凸の少ない場合を良好とした。
(7)ベーク温度依存性
上記収縮率評価と同様の評価を行ない(ただし温度は表1に示されるベーク温度依存性評価温度範囲)、収縮率のベーク温度依存性(%/℃)を測定した。評価結果を表2に示す。
【0039】
【表1】

【表2】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の重合体を樹脂成分として用いた微細パターン形成用樹脂組成物は、レジストパターンのパターン間隙を実効的に、精度よく微細化することができ、波長限界をこえるパターンを良好かつ経済的に形成できるので、今後ますます微細化が進行するとみられる集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野で極めて好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ホールパターンの断面形状
【図2】ホールパターンの断面形状
【符号の説明】
【0042】
1 基板
2 ホールパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストパターン上に微細パターン形成用樹脂組成物の被膜を設け、前記レジストパターンを熱処理することで微細パターンを形成させる微細パターン形成方法において、
前記微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用される重合体の側鎖が酸の作用により、該側鎖自身の連鎖的架橋反応により前記微細パターンが形成されることを特徴とする微細パターン形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の微細パターン形成方法に用いられる微細パターン形成用樹脂組成物の樹脂成分として使用される重合体であって、
該重合体は、下記式(1)および下記式(2)で表される繰返し単位から選ばれる少なくとも1つの繰返し単位を含み、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法により測定したポリスチレン換算質量平均分子量が500〜500,000であることを特徴とする重合体。
【化1】

(式(1)において、R1およびR2は、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基、アリール基を表し、R3は、炭素数1〜3のアルキル基、ビニル基、アリル基、置換されてもよいアリール基を表し、nは0または1、mは0、1または2を表す。)
【請求項3】
請求項2記載の重合体において、R1およびR2が水素原子、nおよびmが0であることを特徴とする重合体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−293294(P2007−293294A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74839(P2007−74839)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】