説明

微細パターン形成方法

【課題】現在マイクロチップなどを作製する簡便な方法として、PDMSを用いた方法が一般的である。しかしPDMSは有機溶媒に膨潤しやすいため、有機溶媒を流すことが出来ない点や、PDMSは柔軟性が高いため、圧力に対して弱い点や、ガス透過性が高いため、気体を溶質とする液体を流すことが出来ない点などの問題点がある。
【解決手段】本件発明では、熱収縮ポリスチレンシートに溶解剤でパターンを描くぬらしステップと、ぬらしステップでぬれた熱収縮性ポリスチレンシートを静置して、パターンに応じた凹パターンを転写する転写ステップと、熱収縮ポリスチレンシートから溶解剤と、溶解剤により溶解した熱収縮性ポリスチレンシートを除去する除去ステップと、加熱し収縮させることで微細パターンを形成する微細化ステップと、を有する微細パターン形成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、バイオテクノロジーや分析化学の分野で用いられる、細胞診断用チップや微量分析用の流路を作成する微細パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微量分析用のマイクロチップの作成法として、半導体製造技術を応用し、単結晶シリコンウエハーを異方性エッチングする方法が一般的である。この単結晶シリコンウエハーを異方性エッチングしてマイクロチップを作成する方法は、精密な微細加工が可能である点が優れている。しかし、単結晶シリコンウエハーを異方性エッチングする手法は、クリーンルームや化学蒸着装置(CVD)などの高価な設備や大型の装置が必要となる欠点を有している。
【0003】
また、マイクロチップの作成方法として、フォトレジストを用いてガラス表面にパターンを形成し、パターンが形成されてガラス表面をフッ化水素酸にて腐蝕させ、等方性エッチングする方法もある。しかしこのガラス表面を腐蝕させる手法は、ガラスを腐蝕させるために猛毒のフッ素水素酸を用いるため、フッ化水素酸の管理や廃棄にかかるコストや設備などが必要となってしまう。
【0004】
また、ポリスチレンやアクリル樹脂からなる板に、予めパターンが形成された金属製の鋳型を加熱して押しつけ、流路を形成させる方法もある。しかし、この手法では、微細加工された鋳型を予め作成する必要がある。
【0005】
そこで、もっとも簡便な方法として、特許文献1に記載されたような、PDMS(polydimethylsiloxane)を利用した手法が提案されている。この方法は、流路を象った鋳型の存在下で、柔軟性に富むシリコーン樹脂の一種であるPDMSを固化させ成型する方法である。PDMSを利用した手法において、鋳型はフォトリソグラフィーにて作成が可能である。またこの方法は、通常の化学実験室程度の設備で行うことが可能であり、また製造コストも低く、作成に要する時間も短いため、流路パターンの試行などに頻繁に利用されている。
【特許文献1】特表2007−527784
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このように簡便な方法として利用されるPDMSを利用したマイクロチップの作成は、次のような問題点を有している。まず、PDMSは有機溶媒に膨潤しやすい性質を有している。このため、PDMSを成形して作られたマイクロチップなどの流路は、有機溶媒を含む流体を流すことが困難である。また、PDMSは柔軟性が高いため、成形には有利である。しかしその反面、圧力に対しては弱く、変形する恐れがあるため、流体を高速で流したり、高粘性の流体を流すことが出来ない。またPDMSは、ガス透過性が高いため、気体を溶質とする液体を流すことが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本件発明ではPDMSによる鋳型成型法に匹敵する簡便さを有しながら、PDMSの欠点を補った新たな微細パターン形成方法を提供する。すなわち第一の発明としては、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬれたパターンを描くぬらしステップと、ぬらしステップでぬれた熱収縮性ポリスチレンシートを静置して、熱収縮ポリスチレンシートにパターンに応じた凹パターンを転写する転写ステップと、熱収縮ポリスチレンシートから熱収縮性ポリスチレン用溶解剤と、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤により溶解した熱収縮性ポリスチレンシートを除去する除去ステップと、凹パターンが転写された熱収縮性ポリスチレンシートを加熱し収縮させることで微細パターンを形成する微細化ステップと、を有する微細パターン形成方法を提供する。
【0008】
第二の発明としては、ぬらしステップは、鋳型に形成された凸パターン面を熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬらし、前記鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置する鋳型利用サブステップを含む第一の発明に記載の微細パターン形成方法を提供する。
【0009】
第三の発明としては、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤はリモネンであることを特徴とする第一の発明に記載の微細パターン形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本件発明により、簡便な方法にて、PDMSの欠点を補った微細パターンが提供可能となる。すなわち、特に高価な設備、高度な技術、危険な試薬を必要とせず、微細パターンを形成することが可能である。また、PDMSによる方法と同様に、操作時間は鋳型やシルクスクリーン、マスキングの作成を除いた場合、5分程度で行うことが可能で、作成コストも低く抑えることが可能である。また、素材がポリスチレンであるため、完成した微細パターンには有機溶剤を使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0012】
実施形態1は、主に請求項1などに関する。
【0013】
実施形態2は、主に請求項2などに関する。
【0014】
実施形態3は、主に請求項3などに関する。
【0015】
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0016】
本実施形態は、熱収縮性ポリスチレンシートを用いて微細パターンを形成することを特徴とした微細パターン形成方法である。
<実施形態1 構成>
【0017】
図1に本実施形態の微細パターン形成方法を説明するためのフローチャートを示した。本実施形態の微細パターン形成方法は、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬれたパターンを描くぬらしステップ(S0101)と、ぬらしステップでぬれた熱収縮性ポリスチレンシートを静置して、熱収縮ポリスチレンシートにパターンに応じた凹パターンを転写する転写ステップ(S0102)と、熱収縮ポリスチレンシートから熱収縮性ポリスチレン用溶解剤と、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤により溶解した熱収縮性ポリスチレンシートを除去する除去ステップ(S0103)と、凹パターンが転写された熱収縮性ポリスチレンシートを加熱し収縮させることで微細パターンを形成する微細化ステップ(S0104)と、を有する。
【0018】
「ぬらしステップ」は、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬれたパターンを描く工程である。
【0019】
ぬらしステップで用いられる熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤は、熱収縮ポリスチレンシートを溶解させる性質を有する溶解剤である。具体的な熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤としては、ベンゼン、トルエン、エチルメチルケトン、酢酸エステル、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、リモネン等である。
【0020】
具体的に熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤でぬれたパターンを描く方法としては、例えば、鋳型やマスキング、スクリーン印刷、インクジェット方式などを利用することが可能である。
【0021】
鋳型を用いたぬらしステップは、図2に示したように、まず鋳型(0201)の予め微細パターンが描かれた一面(0202)に熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0203)を塗布する。次に熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を塗布された鋳型の一面を、熱収縮ポリスチレンシート(0204)のパターンを形成する面に密着させる。このとき、鋳型の凸部分(0205)のみが熱収縮ポリスチレンシートに密着し、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤がパターン形状となって塗られ、ぬらしステップは完了する。熱収縮ポリスチレンシートに密着させた鋳型は、ぬらしステップ完了後に、熱収縮ポリスチレンシートから取り外しても良いし、転写ステップ完了後に取り外しても良い。
【0022】
マスキングを用いたぬらしステップは、図3に示したように、まず熱収縮ポリスチレンシート(0301)の熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を塗布しない部分にマスキングテープ(0302)などを用いてマスキングを行う。次にマスキングされた熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0303)を塗布する。このときマスキングが行われていない部分にのみ熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が塗布される。これにより、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤がパターン形状となって塗られ、ぬらしステップが完了する。マスキングを行ったマスキング用材料(マスキングテープなど)は、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を塗布した直後に熱収縮ポリスチレンシートから取り除いても良いし、転写ステップが完了した後や、除去ステップが完了した後であっても良い。
【0023】
スクリーン印刷を用いたぬらしステップは、図4に示したように、まず熱収縮ポリスチレンシート(0401)上に予めパターンが形成されたスクリーン(0402)を乗せる。このときスクリーンには、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を塗布する部分のみ、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が透過可能になるようなパターンが形成されている。熱収縮ポリスチレンシート上にスクリーンを設置した後、スクリーン上から熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0403)を塗布する。塗布された熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤は、その一部がスクリーンを透過し、熱収縮ポリスチレンシートをぬらす。これにより、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤がパターン形状となって塗られ、ぬらしステップが完了する。熱収縮ポリスチレンシート上に設置されたスクリーンは、ぬらしステップが完了した直後に取り外しても良いし、転写ステップまたは除去ステップが完了した後に取り外しても良い。
【0024】
インクジェット方式を用いたぬらしステップは、図5に示したように、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0501)を微滴化(0502)し、熱収縮ポリスチレンシート(0503)に対して直接吹き付ける。この際、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤をパターン形状となるように吹き付ける。熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を吹き付ける装置(0504)は、コンピュータによって制御され、予めパターンをコンピュータ上で作成しておく。またコンピュータ上から熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を吹き付ける装置を制御し、熱収縮ポリスチレンシート上に熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤のパターンを形成する。これにより、熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤がパターン形状となって塗られ、ぬらしステップが完了する。インクジェット方式によるぬらしステップでは、前述の鋳型やマスキング、スクリーンなどが不要である。また熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を吹き付ける装置は、インクジェット方式のプリンタと同様の方式で熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤を熱収縮ポリスチレンシートに吹き付ければよい。
【0025】
「転写ステップ」は、前述のぬらしステップで熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤によってぬれた熱収縮ポリスチレンシートを静置して、熱収縮ポリスチレンシートパターンに応じた凹パターンを転写する。図6の(a)に示したように、ぬらしステップ完了直後は、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0601)がパターン形状となって熱収縮ポリスチレンシート(0602)上に塗られている。この状態で、熱収縮ポリスチレンシートを静置すると、(b)のように、熱収縮ポリスチレンシートは熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が接触する部分のみ溶解し、(c)のような凹パターン(0603)が形成される。この際、ぬらしステップでも述べたように、ぬらしステップで用いた鋳型やマスキング用材料、スクリーンなどは、取り外さずに熱収縮ポリスチレンシート上に設置された状態であっても良い。また、鋳型を用いたぬらしステップの場合、転写ステップにおける熱収縮ポリスチレンシートの静置時間は、ぬらしステップにおいて塗布される熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤の種類や量、熱収縮ポリスチレンシートに形成させる凹パターンの深さに応じて適時変化させる。
【0026】
図7に熱収縮ポリスチレンシート(0701)上に熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0702)を塗布したときの拡大概念図を示した。転写ステップにおいて熱収縮ポリスチレンシートに凹パターンを形成する場合、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤に接触した部分が溶解することで凹パターンが形成される。このとき、(a)に示したように熱収縮ポリスチレンシートの熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が接触した部分のみが溶解し、(b)のような凹部を形成する。(b)の状態になると、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤は、凹部の側面にも接触するため、(b)に示した矢印の方向にも溶解が進行し、(c)のように溶解が進行する。熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤により溶解が進行すると、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が接触した部分よりも若干大きくなったり、凹部の角が丸くなる可能性もある。しかし、本実施形態の微細パターン形成方法では、後述する微細化ステップにおいて、熱収縮ポリスチレンシートは熱により収縮するため、転写ステップにおける溶解によるサイズの誤差や角の丸みは、極めて小さくなる。
【0027】
「除去ステップ」は、転写ステップによって凹パターンの形成が完了した熱収縮ポリスチレンシートから、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤と、溶解した熱収縮ポリスチレンシートを除去する。熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤と、溶解した熱収縮ポリスチレンシートの除去は、高圧の水流やブラシなどによって除去する。高圧の水流によっても十分に熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤と溶解または軟化した熱収縮ポリスチレンシートを除去することは可能であるが、一般的に熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤は、疎水性であるものが多いので、界面活性剤などを用いて除去したり、親水性の有機溶解剤を用いて除去したり、研磨剤を使って除去しても良い。
【0028】
「微細化ステップ」は、凹パターンが転写された熱収縮ポリスチレンシートを加熱し収縮させることで微細パターンを形成する。図8に微細化ステップの概念図を示した。具体的には、除去ステップ完了後、除去に用いた水などを乾燥し、凹パターンが転写された熱収縮ポリスチレンシートを略150℃に加熱し、収縮させる。
【0029】
微細化ステップにおいて、熱収縮ポリスチレンシートは、その大きさが1/6となり、微細なパターンが熱収縮ポリスチレンシート上に形成される。また、熱収縮ポリスチレンシートの厚さは、略8倍程度となり、形成された凹パターンの深さも略8倍となる。従って、先に述べたぬらしステップにおいて、熱収縮ポリスチレンシート上にパターン形状に塗られる熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤は、目的パターンの6倍のスケールで作成することになる。また、ぬらしステップで用いられる、鋳型やスクリーン、マスキング、インクジェットのパターンなども、目的スケールの6倍で作成する。
【0030】
また、本実施形態において、図9に示したように、ぬらしステップから除去ステップまでを繰り返し行い、多段の凹パターンを形成してもよい。まず、(a)のように、一旦凹パターン(0901)の形成が完了した熱収縮ポリスチレンシート(0902)に、(b)のように、先に示した方法によって改めてぬらしステップを行い、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤(0903)を塗布し、微細パターンを形成する。ぬらしステップ完了後、前述と同様に、転写ステップ、除去ステップを経て、(c)のような多段階の凹パターン(0904)を形成することが可能となる。この際、ぬらしパターンで用いられる手法は、鋳型、マスキング、スクリーン、インクジェットのいずれの方法を用いて行うことが可能である。
<実施形態1 効果>
【0031】
本実施形態により、PMDSによる微細パターンの作成方法と同様に簡便な微細パターンの形成方法が提供可能となる。また、本実施形態の微細パターン作成方法では、熱収縮性ポリスチレンシートに微細パターンを形成することで、有機溶剤を流すことが可能であり、また圧力に強い流路を得ることが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0032】
本実施形態は、実施形態1のぬらしステップにおいて、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤を塗布した鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置することを特徴とした微細パターンの形成方法である。
<実施形態2 構成>
【0033】
本実施形態の微細パターン形成方法は、実施形態1にて述べたぬらしステップにおいて、鋳型に形成された凸パターン面を熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬらし、前記鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置する鋳型利用サブステップを含む。
【0034】
図10に本実施形態の微細パターン形成方法の流れを説明するためのフローチャートを示した。本実施形態の微細パターン形成方法では、実施形態1で述べた、ぬらしステップ(S1001)、転写ステップ(S1002)、除去ステップ(S1003)、微細化ステップ(S1004)にさらに、ぬらしステップにおいて、鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置する鋳型利用サブステップ(S1005)を有している。
【0035】
実施形態1で述べた鋳型を用いたぬらしステップでは、図2に示したように、熱収縮性ポリエチレンシート上に、微細パターンが形成され、熱収縮ポリエチレンシート用溶解剤が塗布された鋳型を配置していた。しかし、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤の粘度が低くい場合、鋳型を反転させ、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が塗布された面を下にすると、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が垂れてしまう恐れがある。そこで、本実施形態では、図11に示したように、あらかじめ微細パターンが描かれた鋳型(1101)に、熱収縮性ポリエチレンシート用溶解剤(1102)を塗布し、この鋳型の微細パターンが描かれた面上に、熱収縮性ポリスチレンシート(1103)を配置する。このように、鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置することで、自重により熱収縮性ポリスチレンシートは、鋳型に密着し、微細パターンが熱収縮性ポリスチレンシートに転写される。
<実施形態2 効果>
【0036】
本実施形態のように、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤を塗布した鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置することで、鋳型に塗布された熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤が垂れることがなくなり、正確に熱収縮ポリスチレンシートに微細パターンを描くことが可能となる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0037】
本実施形態は、実施形態1および実施形態2を基本とし、さらに、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤として、リモネンを用いたことを特徴とする微細パターンの形成方法である。
<実施形態3 構成>
【0038】
本実施形態の微細パターン形成方法は、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤はリモネンであることを特徴とする。
【0039】
リモネンは、みかんやレモン、オレンジといった柑橘類の皮に含まれる油分である。したがって天然に由来する油分であり、毒性が低く、環境負荷が小さい特徴を有している。実施形態1に例示した熱収縮ポリスチレン用溶解剤の中で、ベンゼン、トルエン、エチルメチルケトン、酢酸エステル、テトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素などは、環境負荷が大きい。特にベンゼンやトルエン、テトラクロロエタンなどは発癌性が疑われる物質であるため、外部に漏れた場合の環境への影響は多大である。一方でリモネンは前述のように、天然に由来する油分であるため、たとえ外部に漏れたとしても環境負荷はきわめて小さい。したがって、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤をリモネンとすることで、ベンゼンやトルエンなどに比べて扱いを簡便化することが可能である。
<実施形態3 効果>
【0040】
本実施形態の微細パターン形成方法のように、熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤としてリモネンを用いることで、環境に負荷をかけることなく、微細パターンを形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態1の微細パターン形成方法を説明するためのフローチャート
【図2】実施形態1の鋳型によるぬれステップを説明するための概念図
【図3】実施形態1のマスキングによるぬれステップを説明するための概念図
【図4】実施形態1のスクリーン印刷によるぬれステップを説明するための概念図
【図5】実施形態1のインクジェット方式によるぬれステップを説明するための概念図
【図6】実施形態1の転写ステップを説明するための概念図
【図7】実施形態1の転写ステップを説明するための拡大概念図
【図8】実施形態1の微細化ステップを説明するための概念図
【図9】実施形態1の一例を説明するための概念図
【図10】実施形態2の微細パターン形成方法を説明するためのフローチャート
【図11】実施形態2の鋳型利用サブステップを説明するための概念図
【符号の説明】
【0042】
0201 鋳型
0202 微細パターンが描かれた一面
0203 熱収縮ポリスチレンシート用溶解剤
0204 熱収縮ポリスチレンシート
0205 凸部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱収縮ポリスチレンシートに熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬれたパターンを描くぬらしステップと、
ぬらしステップでぬれた熱収縮性ポリスチレンシートを静置して、熱収縮ポリスチレンシートにパターンに応じた凹パターンを転写する転写ステップと、
熱収縮ポリスチレンシートから熱収縮性ポリスチレン用溶解剤と、熱収縮性ポリスチレン用溶解剤により溶解した熱収縮性ポリスチレンシートを除去する除去ステップと、
凹パターンが転写された熱収縮性ポリスチレンシートを加熱し収縮させることで微細パターンを形成する微細化ステップと、
を有する微細パターン形成方法。
【請求項2】
ぬらしステップは、鋳型に形成された凸パターン面を熱収縮性ポリスチレン用溶解剤でぬらし、前記鋳型上に熱収縮性ポリスチレンシートを配置する鋳型利用サブステップを含む請求項1に記載の微細パターン形成方法。
【請求項3】
前記熱収縮性ポリスチレン用溶解剤はリモネンであることを特徴とする請求項1に記載の微細パターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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