微細凹凸パターンの欠陥判定方法、および、パターンドメディアの欠陥判定方法
【課題】
検査時間を増大させることなく、微細凹凸パターンが形成された、ハードディスク用のパターンドメディアなどの試料よりの欠陥種類の特定を容易に行うようにする。
【解決手段】
微細凹凸パターンの欠陥検査において、スキャッタロメトリー法にて検査対象物の特徴を検出する際に、検査対象物の検出対象領域の分光波形を検出し、検出対象領域が検査対象物のパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、選択した特徴量の演算式にしたがって、前記分光波形データに対し、特徴量演算を行い、算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行う。
検査時間を増大させることなく、微細凹凸パターンが形成された、ハードディスク用のパターンドメディアなどの試料よりの欠陥種類の特定を容易に行うようにする。
【解決手段】
微細凹凸パターンの欠陥検査において、スキャッタロメトリー法にて検査対象物の特徴を検出する際に、検査対象物の検出対象領域の分光波形を検出し、検出対象領域が検査対象物のパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、選択した特徴量の演算式にしたがって、前記分光波形データに対し、特徴量演算を行い、算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用メディアを始めとする凹凸パターン形状を製造する過程及び製造物の検査に係り、そのパターン形状の欠陥、変形、寸法計測を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータに用いられる記録媒体であるハードディスクは大容量化が進んでいる。記録情報の大容量化には1枚のディスク内に記録する密度の向上が不可欠である。従来のディスク媒体に比較して大幅に記録密度を向上可能な方式としてディスク表面にパターンを形成させた媒体であるパターンドメディアが有望視されている。パターンドメディアの形成には、低コストでナノオーダのパターンが形成可能な、ナノインプリント技術が用いられる。ナノインプリント技術は、予め作成した型(スタンプ)を材料に押し当て、型と同じパターンを複製する技術であり、ハードディスク用のパターンドメディアの他にも、光学素子の形成や、半導体の露光工程の代替としても検討されている。
通常パターンドメディアに使用されるパターン寸法は100nm以下であり、可視光の波長の数分の1以下のパターン寸法である。このため通常の顕微鏡などの光学系では解像限界を超えているため、直接パターン形状を捉えることは出来ない。このため、AFMによる形状計測や、SEMなどによる計測、又はSNOMなどによる近接場光検出が考えられるが、いずれもスループットの観点から高速に広い面積を観察することができない。
一方、半導体のパターン形成のプロセス管理には、スキャッタロメトリーの原理による光学式の検査装置が適用されている。これは、予め半導体ウェハ上に製品以外の領域に配置するTEGパターンと呼ばれる管理用のパターンを利用し、ラインアンドスペースなどの周期的なパターンの検出を行うものである。例えば、50μm□程度以上の領域内の周期的パターンに白色光を照射し、その反射光の分光特性を検出することにより、観察パターンの形状を計算する手法である。この手法によるパターンドメディアの検査方法に関し特許文献1が開示されている。これによれば、スキャッタロメトリー法により、検出した光反射強度を解析することで、周期的なパターンの形状を計測・評価可能であるとしている。また、試料上にサーボ情報部がある場合にも取得したデータを解析することで、同様に評価可能であるとしている。
また,特許文献2には、スキャッタロメトリー方式による検出ツールを半導体の欠陥分類に利用する方法を述べている。
光学的スキャッタロメトリーに関しては、非特許文献1や非特許文献2に詳細が記載されているが、簡単に言えば、1次元的な周期構造をもつ構造物に光を照射し、その反射光の強度分布を、入射角、波長、偏光方向、反射次数への依存性を調べ、それにより周期構造物の寸法、空間周期、断面形状や材質などの情報を求める手法である。この方法によれば、光の波長以下の周期構造における微少な差、或いは異物、欠陥を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−133985号公報
【特許文献2】米国特許第6639663号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE, Vol.4344, pp.716-725(2001)
【非特許文献2】Applied Optics, Vol.37, pp.5112-5115(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハードディスク用のパターンドメディアでは、ユーザ情報を記録するデータ領域のパターンとディスク上の読み書き位置を制御するサーボ領域は混在することが通常である。データ領域のパターンは、ラインアンドスペース或いは、円柱状のピットパターンなどの周期的なパターンであるが、サーボ領域のパターンはデータ領域のそれと周期性が異なるか、周期性が無い部分が存在する。サーボ領域は、一般に1枚のディスク上に数十から数百本程度であり、ヘッドアーム軌跡に対応した放射状の形状に配置される。
一方、製造工程でディスク上に生じる欠陥の種類は、パターンの変形、剥がれ、凹み、傷、異物など多様である。さらに、ディスク上で欠陥が生じた領域によっても製品としての良否判定が異なる。これは、例えばデータ領域に生じた微小な傷欠陥であれば、その領域を非使用領域として登録することにより、製品として利用可能であるが、一方、同様の欠陥がサーボ領域のアドレスを決定するパターン上で生じた場合は、そのアドレスパターンで決定されるデータ領域の全てが非使用領域となり得るので致命的な欠陥であり、製品としては不良となる。
このような欠陥判定を従来の方式である、検出した反射光強度のみで対象物の形状をスキャッタロメトリー法で検査するのは解析を複雑にさせるだけでなく、解析・或いはマッチング処理による検査時間を増大させ、検査・計測精度も低下させる要因となる。
さらには、欠陥の分類に対しても欠陥が発生した領域によってその致命性が異なることから、パターンドメディアの特性に対応した欠陥分類方法が必要であった。
【0006】
本発明は、検査時間を増大させることなく、微細凹凸パターンが形成された試料よりの欠陥種の特定などを容易に行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によれば、微細凹凸パターンの検査において、スキャッタロメトリー法にて検査対象物の特徴を検出する際に、検査対象物の検出対象領域の分光波形を検出し、検出対象領域が検査対象物のパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、選択した特徴量の演算式にしたがって、前記分光波形データに対し、特徴量演算を行い、算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法を提供する。
【0008】
また、本発明によれば、上記の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、検査対象物のパターン種類を周期的パターンと非周期的パターンに分けて領域判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法を提供する。
【0009】
また、本発明によれば、上記の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、対象物のパターン種類と、欠陥種類によって変化する光学信号を用い、無欠陥パターンによる光学信号ばらつきと欠陥によって生じる光学信号変化を比較し、有意な信号変化分を捉えることで欠陥判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法を提供する。この場合、有意な信号変化分を捉えるために、有意な変化のある波長を選択することが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、対象物のパターン種類と、欠陥種類と、パターンばらつきによって生じる光学信号ばらつきと、欠陥によって変化する光学信号変位をパラメータとして、パターン種類毎の判定指標値を決定する欠陥判定方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、上記の微細凹凸パターン欠陥判定方法をパターンドメディア上の欠陥の検出に用いたものである。
パターンドメディア上の欠陥の検出においては、欠陥種類が、例えば、抜け、異物、傷となる。また、パターンドメディア上の欠陥の検出においては、領域区分が、例えば、データ領域およびサーボ領域となり、さらには、データ領域が、内周領域、中間周領域および外周領域に分けられ、サーボ領域が、アドレス領域、クロック領域およびトラッキング領域に分けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターンドメディアを始めとする微細凹凸パターンが形成された試料上の欠陥種の特定が容易に行うことができ、プロセスの安定化,歩留まり向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の欠陥判定処理のフロー図。
【図2】本発明の光学系の一実施例を示す図。
【図3】検査試料であるパターンドメディアの全体図。
【図4】図3のパターンドメディアの一部を詳細に示した図。
【図5】各領域のパターンを詳細に示した図。
【図6】図5の各領域での分光波形を示した図。
【図7】データ領域の4箇所を検出した際の分光波形を示した図。
【図8】検出したデータ領域の4箇所の例を示した図。
【図9】サーボ領域中のアドレス領域での4箇所を検出した際の分光波形を示した図。
【図10】検出したサーボ領域中のアドレス領域での4箇所の例を示した図。
【図11】判定データベース表の例を示した図。
【図12】別の実施例による判定データベース表を示した図。
【図13】欠陥の生じた領域の分光波形とそのカメラ画像の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を適用した「微細凹凸パターンの欠陥判定方法」の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明をパターンドメディア検査に用いた処理フローを示す。
検査対象であるパターンドメディア・ディスクに対し、検出対象領域の分光反射率を分光検出器1にて検出し、分光波形データとして波形検出2する。次に検出位置4とメディア設計情報であるCADデータ3から検出波形がどの領域に属するかを領域判定6する。この場合の領域とはディスク上のパターン種類によって決まるデータ領域、サーボ領域などの領域区分のことである。ディスク上に位置決めに必要なアライメントマークなどがなく、検出位置4が定まらない場合は、予め検出しておいた領域区分と対応の取れている近傍波形5と比較することにより、領域判定6を行う。
領域判定6の結果により、判定データベース7から、判定領域に対応する演算式F9と判定指標値Th8を選択する。演算式9に従って、検出した分光波形データに対して特徴量演算10を行う。次に判定処理12にて、算出した特徴量の値と対応する判定指標値8とを比較し、判定処理を行う。判定処理の結果から最終的に欠陥モードの判定13を行う。
【0016】
このような処理が行われる検査装置は、例えば次のように構成される。
検査装置は、試料であるパターンドメディアディスクを保持、移動、走査するステージと、試料上に光を照射する照明光学系と、照射された光の反射光を検出する検出光学系と、検出光を電気信号に変換する光電子素子と、検出した電気信号を保存する手段と、電気信号から特徴量を検出する手段と、試料のパターン配置情報などの設計データを取得する手段と、検出した信号の試料上の位置を設計データと比較して特定する位置検知手段と、欠陥が生じたディスクでの反射光を保存する手段と、欠陥種類と欠陥発生箇所応じたデータ分類を行う手段と、得られたデータに基づき致命性判定を行う判定手段とを有する。
上記走査ステージは試料を回転走査しながら半径方向に走査するRθ型ステージでも、直交する方向に走査するXY型ステージでも良い。
また、上記照明光学系は、白色光を照射する光学系の他、紫外光や赤外光の非可視光を照射する光学系でも良く、特定の波長を有するレーザ光源を用いた光学系でも良い。さらには、照明光に偏光特性を持たせ、偏光光を照射する光学系でも良い。
また、上記検出光学系は、照明光学系に対応し、紫外光を含む白色光を波長毎に検出する分光光学系や、特定の単波長或いは複数波長の反射光を検出する光学系としても良い。さらには、検出光学系に偏光透過特性を持たせ、特定の偏光光のみを検出する光学系としても良い。
また、上記電気信号から特徴量を検出する手段は、検出した波長毎の分光データをそのまま特徴量としても良く、また特定の1つ以上の波長での信号を特徴量としても良い。さらに複数の偏光条件と波長との組み合わせによって決まる特徴量としても良い。
また、上記特徴量を比較する手段は、同一試料での近傍での比較、或いは対称位置での比較の他、設計情報による領域単位毎での比較でも良い。さらには、過去に検出し保存したデータとの比較であってももちろん良い。
また、上記位置検知手段は、設計データ(CADデータ)におけるパターン配置と検出した特徴量の分布配置を正規化相関などの画像処理手法によって比較し、位置ずれ量を検知する方法でもよい。
【0017】
図2に分光検出器1の一例を示す。検査対象であるパターンドメディア20に対して、光源26から照射する光を偏光子27を介してハーフミラー23にて反射させたのち、ハーフミラー22を透過させ、対物レンズ21にて集光したビームを照射する。照射された光はパターンドメディア20上で反射され、前記対物レンズ21を通り、集光レンズ24にて集光された後、検光子28にて所望の光成分をフィルタイングされ、光検出器25にて検出される。このとき、例えば、光源26に白色光源を、検光子28に偏光板を、光検出器25に分光器を用いると、パターンドメディア20のパターン形状および光学特性に対応した分光波形が得られる。このような検出を試料であるパターンドメディア20に対して全面で実施することにより、試料全面での分光波形を検出することができる。また,ハーフミラー22で反射した光を集光レンズ29で集光し、カメラ30で撮像することにより、光検出器25で取得した分光データと同位置でのカメラ画像を得ることができる。
【0018】
図3を用いてHDD用のパターンドメディア20をサンプルとした際の領域分割及びパターン分類の方法を説明する。まず、試料のうち、パターンが形成されている領域31を検査領域とする。HDDメディアではユーザの磁気データを記録するデータ領域33の他にヘッドを制御するためのサーボ領域32が放射状に形成される。HDD用パターンドメディアでは、このサーボ領域が予め物理的なパターンとして形成されるプリサーボ方式が採用される。このサーボ領域付近の拡大図を図4に示す。一般的なパターン配置の場合、データ領域36の間にサーボ領域35が配置され、サーボ領域は磁気信号用途に応じ、クロック領域37、アドレス領域38、トラッキング領域39などの異なるパターンにより構成される。本発明の光センサ検出による検出単位を分割領域40とすると、図中に示すように各領域を検出単位に分割する。
【0019】
図5に図4での各領域のパターン例を示す。例えば、データ領域36のパターン44は周期的なラインアンドスペースであり、トラッキング領域39のパターン43は周期的な千鳥パターンである。また、アドレス領域38のパターン42は非周期的なパターンであり、クロック領域37のパターン41は、周期的なラインアンドスペースである。図6にそれぞれの領域での光検出器25による分光波形を示す。それぞれ、分光波形51はデータ領域36(パターン44)、分光波形52はトラッキング領域39(パターン43)、分光波形53はアドレス領域38(パターン42)、分光波形54はクロック領域37(パターン41)での検出結果を示している。このようにパターン形状が異なると分光波形のプロファイルは大きく異なるため、検出領域毎にどのパターンを検出したかどうかは、位置情報によらずとも、区別は可能である。
【0020】
図7にデータ領域に属する4箇所を検出した場合の検出波形を示す。また、図8に4箇所のパターン例を示す。図7の検出波形60aは図8のパターン例61aに対応し、60b,60c,60dはそれぞれ、パターン例61b,61c,61dに対応する。このうち、パターン例61a,61bは無欠陥領域であり、波形60a,60bには変化が少ない。データ領域は周期的パターンであるので、場所によらず分光波形変化が少ないためである。これに対しパターン抜け欠陥62を含む領域61cや、異物欠陥63を含む領域61dを検出した60c,60dでは波形が大きく変化する。また、その変化の仕方(変化波長域)は欠陥モードによって異なる。
【0021】
次に図9にサーボ領域のうち非周期パターンであるアドレス領域に属する4箇所を検出した場合の検出波形を示す。図9の検出波形65aは図10のパターン例66aに対応し、65b,65c,65dはそれぞれ、パターン例66b,66c,66dに対応する。このうち、パターン例66a,66bは無欠陥領域であるが、アドレス領域は一様パターンでないため、必ずしも検出波形65a,65bは一致しない。一方,パターン抜け欠陥67を含む領域66cや、異物欠陥68を含む領域66dを検出した65c,65dでは波形は比較的大きく変化する。また、その変化の仕方(変化波長域)は欠陥モードによって異なる。
このように検出領域及び欠陥モードによって分光波形の変化の仕方が異なるため、検出領域毎の欠陥弁別が必要となる。
【0022】
図11に特徴量演算及び判定処理に必要な判定データベース表の例を示す。ここで、分光波形データを各波長に対する反射率データとして波長の関数f(λk)、 λkは波長、k=1,2,3,…とする。検出領域及び欠陥種類の表を作成し、それぞれに次の式(1)で示す特徴量関数Fi(i=1,2,3,…)と判定指標値Thi(i=1,2,3,…)を設定する。Fiは分光波形の各波長での反射光量f(λk)に係数α,β,γ,… を乗じた演算式とする。
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、α,β,γ・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
【0025】
予め、検出領域と欠陥種が分かっているサンプルを教師データとして集め、これらの分光波形データから、各関数Fiを決定する。Fiの決定は係数α,β,γ,…の決定となるが、例えば、その領域内の波形を比較して、欠陥種によって大きく変化する波長の係数を大きく、逆に良品でも変化の大きい波長の係数を小さくする。これらの処理は統計的に、例えば主成分分析やPLS解析手法などによって係数を決定する。さらに,決定された関数値に対して欠陥種を決定する判定指標値Thiを設定し、判定指標値以上の関数値となる検出波形をその欠陥種と判定する。
なお、式(1)では演算式を簡単のため1次式としたが、必ずしも1次式とする必要はなく、分光波形の反射率をパラメータとする演算式であれば良く、例えば次の式(2)のようにべき乗の演算式でも良い。
【0026】
【数2】
【0027】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、αk,βk,γk・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
さらに、判定指標値Thiも必ずしも、各領域の欠陥種に1つでなくても良く、複数の指標値の組合せ条件によって欠陥種を判定する処理としても良い。
ここで判定指標値Thiは、無欠陥パターンによる光学信号ばらつきと欠陥によって生じる光学信号変化とを比較して、有意な信号変化分を捉えることにより、設定される。
このように判定式とデータベースを構築することで、各領域での欠陥検出及び欠陥分類が可能となる。
また、欠陥種とは本例に示したパターン形状の物理的な変化以外にも、分光波形で検出できる欠陥であれば、磁気的な欠陥種、電気的な欠陥種としても良い。
【実施例2】
【0028】
図12に本発明による別の判定データベースの例を示す。実施例1において、領域設定を行う際に、データ領域を例えば、ディスクの半径方法に3分割し、内周、中間周、外周領域に分離する。これは、ハードディスクの性質上、内周の方が記録密度が高くなるため、パターン密度も半径位置によって異なる場合があるためである。この場合、演算式Fiの係数は全領域で独立に算出する必要は無く、隣接領域間で内挿補間しても良い。また、分割数も3分割に限定する必要はなく、これ以上としても良い。
【実施例3】
【0029】
図13に本発明のデータベースの別の例を示す。実施例1の分光検出器1で分光波形を検出する際に、光検出器25で検出した波形70とカメラ30で撮影した欠陥画像71を関連付けてデータベースに保存する。これにより判定後の欠陥画像例として画像71を参照してユーザに提示することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・分光検出器、2・・・波形検出、3・・・CADデータ、4・・・検出位置、5・・・近傍波形、6・・・領域判定、7・・・データベース、8・・・判定指標値、9・・・演算式、10・・・特徴量演算、12・・・判定処理、13・・・欠陥モード判定、
20・・・パターンドメディア、21・・・対物レンズ、22・・・ハーフミラー、23・・・ハーフミラー、24・・・集光レンズ、25・・・光検出器、26・・・白色光源、27・・・偏光子、28・・・検光子、29・・・集光レンズ、30・・・観察カメラ、
31・・・検査領域、32・・・サーボ領域、33・・・データ領域、34・・・拡大領域、
35・・・サーボ領域、36・・・データ領域、37・・・クロック領域、38・・・アドレス領域、39・・・トラッキング領域、40・・・分割領域、
41・・・クロック領域のパターン、42・・・アドレス領域のパターン、43・・・トラッキング領域のパターン、44・・・データ領域のパターン、
51・・・データ領域36の分光波形、52・・・トラッキング領域39の分光波形、53・・・アドレス領域38の分光波形、54・・・クロック領域37の分光波形、
60a・・・データ領域61aパターンでの分光波形、60b・・・データ領域61bパターンでの分光波形、60c・・・データ領域61cパターンでの分光波形、60d・・・データ領域61dパターンでの分光波形、
61a・・・正常パターンのデータ領域、61b・・・正常パターンのデータ領域、61c・・・パターン抜け欠陥のあるデータ領域、61d・・・異物欠陥のあるデータ領域、62・・・パターン抜け欠陥、63・・・異物欠陥、
65a・・・アドレス領域66aパターンでの分光波形、65b・・・アドレス領域66bパターンでの分光波形、65c・・・アドレス領域66cパターンでの分光波形、65d・・・アドレス領域66dパターンでの分光波形、66a・・・正常パターンのアドレス領域、66b・・・正常パターンのアドレス領域、66c・・・パターン抜け欠陥のあるアドレス領域、66d…異物欠陥のあるアドレス領域、67・・・パターン抜け欠陥、68・・・異物欠陥、
70・・・異物のある領域71の検出波形、71・・・異物のある領域のカメラ画像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク用メディアを始めとする凹凸パターン形状を製造する過程及び製造物の検査に係り、そのパターン形状の欠陥、変形、寸法計測を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータに用いられる記録媒体であるハードディスクは大容量化が進んでいる。記録情報の大容量化には1枚のディスク内に記録する密度の向上が不可欠である。従来のディスク媒体に比較して大幅に記録密度を向上可能な方式としてディスク表面にパターンを形成させた媒体であるパターンドメディアが有望視されている。パターンドメディアの形成には、低コストでナノオーダのパターンが形成可能な、ナノインプリント技術が用いられる。ナノインプリント技術は、予め作成した型(スタンプ)を材料に押し当て、型と同じパターンを複製する技術であり、ハードディスク用のパターンドメディアの他にも、光学素子の形成や、半導体の露光工程の代替としても検討されている。
通常パターンドメディアに使用されるパターン寸法は100nm以下であり、可視光の波長の数分の1以下のパターン寸法である。このため通常の顕微鏡などの光学系では解像限界を超えているため、直接パターン形状を捉えることは出来ない。このため、AFMによる形状計測や、SEMなどによる計測、又はSNOMなどによる近接場光検出が考えられるが、いずれもスループットの観点から高速に広い面積を観察することができない。
一方、半導体のパターン形成のプロセス管理には、スキャッタロメトリーの原理による光学式の検査装置が適用されている。これは、予め半導体ウェハ上に製品以外の領域に配置するTEGパターンと呼ばれる管理用のパターンを利用し、ラインアンドスペースなどの周期的なパターンの検出を行うものである。例えば、50μm□程度以上の領域内の周期的パターンに白色光を照射し、その反射光の分光特性を検出することにより、観察パターンの形状を計算する手法である。この手法によるパターンドメディアの検査方法に関し特許文献1が開示されている。これによれば、スキャッタロメトリー法により、検出した光反射強度を解析することで、周期的なパターンの形状を計測・評価可能であるとしている。また、試料上にサーボ情報部がある場合にも取得したデータを解析することで、同様に評価可能であるとしている。
また,特許文献2には、スキャッタロメトリー方式による検出ツールを半導体の欠陥分類に利用する方法を述べている。
光学的スキャッタロメトリーに関しては、非特許文献1や非特許文献2に詳細が記載されているが、簡単に言えば、1次元的な周期構造をもつ構造物に光を照射し、その反射光の強度分布を、入射角、波長、偏光方向、反射次数への依存性を調べ、それにより周期構造物の寸法、空間周期、断面形状や材質などの情報を求める手法である。この方法によれば、光の波長以下の周期構造における微少な差、或いは異物、欠陥を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−133985号公報
【特許文献2】米国特許第6639663号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Proceedings of SPIE, Vol.4344, pp.716-725(2001)
【非特許文献2】Applied Optics, Vol.37, pp.5112-5115(1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハードディスク用のパターンドメディアでは、ユーザ情報を記録するデータ領域のパターンとディスク上の読み書き位置を制御するサーボ領域は混在することが通常である。データ領域のパターンは、ラインアンドスペース或いは、円柱状のピットパターンなどの周期的なパターンであるが、サーボ領域のパターンはデータ領域のそれと周期性が異なるか、周期性が無い部分が存在する。サーボ領域は、一般に1枚のディスク上に数十から数百本程度であり、ヘッドアーム軌跡に対応した放射状の形状に配置される。
一方、製造工程でディスク上に生じる欠陥の種類は、パターンの変形、剥がれ、凹み、傷、異物など多様である。さらに、ディスク上で欠陥が生じた領域によっても製品としての良否判定が異なる。これは、例えばデータ領域に生じた微小な傷欠陥であれば、その領域を非使用領域として登録することにより、製品として利用可能であるが、一方、同様の欠陥がサーボ領域のアドレスを決定するパターン上で生じた場合は、そのアドレスパターンで決定されるデータ領域の全てが非使用領域となり得るので致命的な欠陥であり、製品としては不良となる。
このような欠陥判定を従来の方式である、検出した反射光強度のみで対象物の形状をスキャッタロメトリー法で検査するのは解析を複雑にさせるだけでなく、解析・或いはマッチング処理による検査時間を増大させ、検査・計測精度も低下させる要因となる。
さらには、欠陥の分類に対しても欠陥が発生した領域によってその致命性が異なることから、パターンドメディアの特性に対応した欠陥分類方法が必要であった。
【0006】
本発明は、検査時間を増大させることなく、微細凹凸パターンが形成された試料よりの欠陥種の特定などを容易に行うようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明によれば、微細凹凸パターンの検査において、スキャッタロメトリー法にて検査対象物の特徴を検出する際に、検査対象物の検出対象領域の分光波形を検出し、検出対象領域が検査対象物のパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、選択した特徴量の演算式にしたがって、前記分光波形データに対し、特徴量演算を行い、算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法を提供する。
【0008】
また、本発明によれば、上記の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、検査対象物のパターン種類を周期的パターンと非周期的パターンに分けて領域判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法を提供する。
【0009】
また、本発明によれば、上記の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、対象物のパターン種類と、欠陥種類によって変化する光学信号を用い、無欠陥パターンによる光学信号ばらつきと欠陥によって生じる光学信号変化を比較し、有意な信号変化分を捉えることで欠陥判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法を提供する。この場合、有意な信号変化分を捉えるために、有意な変化のある波長を選択することが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、対象物のパターン種類と、欠陥種類と、パターンばらつきによって生じる光学信号ばらつきと、欠陥によって変化する光学信号変位をパラメータとして、パターン種類毎の判定指標値を決定する欠陥判定方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明は、上記の微細凹凸パターン欠陥判定方法をパターンドメディア上の欠陥の検出に用いたものである。
パターンドメディア上の欠陥の検出においては、欠陥種類が、例えば、抜け、異物、傷となる。また、パターンドメディア上の欠陥の検出においては、領域区分が、例えば、データ領域およびサーボ領域となり、さらには、データ領域が、内周領域、中間周領域および外周領域に分けられ、サーボ領域が、アドレス領域、クロック領域およびトラッキング領域に分けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パターンドメディアを始めとする微細凹凸パターンが形成された試料上の欠陥種の特定が容易に行うことができ、プロセスの安定化,歩留まり向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例の欠陥判定処理のフロー図。
【図2】本発明の光学系の一実施例を示す図。
【図3】検査試料であるパターンドメディアの全体図。
【図4】図3のパターンドメディアの一部を詳細に示した図。
【図5】各領域のパターンを詳細に示した図。
【図6】図5の各領域での分光波形を示した図。
【図7】データ領域の4箇所を検出した際の分光波形を示した図。
【図8】検出したデータ領域の4箇所の例を示した図。
【図9】サーボ領域中のアドレス領域での4箇所を検出した際の分光波形を示した図。
【図10】検出したサーボ領域中のアドレス領域での4箇所の例を示した図。
【図11】判定データベース表の例を示した図。
【図12】別の実施例による判定データベース表を示した図。
【図13】欠陥の生じた領域の分光波形とそのカメラ画像の例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を適用した「微細凹凸パターンの欠陥判定方法」の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に本発明をパターンドメディア検査に用いた処理フローを示す。
検査対象であるパターンドメディア・ディスクに対し、検出対象領域の分光反射率を分光検出器1にて検出し、分光波形データとして波形検出2する。次に検出位置4とメディア設計情報であるCADデータ3から検出波形がどの領域に属するかを領域判定6する。この場合の領域とはディスク上のパターン種類によって決まるデータ領域、サーボ領域などの領域区分のことである。ディスク上に位置決めに必要なアライメントマークなどがなく、検出位置4が定まらない場合は、予め検出しておいた領域区分と対応の取れている近傍波形5と比較することにより、領域判定6を行う。
領域判定6の結果により、判定データベース7から、判定領域に対応する演算式F9と判定指標値Th8を選択する。演算式9に従って、検出した分光波形データに対して特徴量演算10を行う。次に判定処理12にて、算出した特徴量の値と対応する判定指標値8とを比較し、判定処理を行う。判定処理の結果から最終的に欠陥モードの判定13を行う。
【0016】
このような処理が行われる検査装置は、例えば次のように構成される。
検査装置は、試料であるパターンドメディアディスクを保持、移動、走査するステージと、試料上に光を照射する照明光学系と、照射された光の反射光を検出する検出光学系と、検出光を電気信号に変換する光電子素子と、検出した電気信号を保存する手段と、電気信号から特徴量を検出する手段と、試料のパターン配置情報などの設計データを取得する手段と、検出した信号の試料上の位置を設計データと比較して特定する位置検知手段と、欠陥が生じたディスクでの反射光を保存する手段と、欠陥種類と欠陥発生箇所応じたデータ分類を行う手段と、得られたデータに基づき致命性判定を行う判定手段とを有する。
上記走査ステージは試料を回転走査しながら半径方向に走査するRθ型ステージでも、直交する方向に走査するXY型ステージでも良い。
また、上記照明光学系は、白色光を照射する光学系の他、紫外光や赤外光の非可視光を照射する光学系でも良く、特定の波長を有するレーザ光源を用いた光学系でも良い。さらには、照明光に偏光特性を持たせ、偏光光を照射する光学系でも良い。
また、上記検出光学系は、照明光学系に対応し、紫外光を含む白色光を波長毎に検出する分光光学系や、特定の単波長或いは複数波長の反射光を検出する光学系としても良い。さらには、検出光学系に偏光透過特性を持たせ、特定の偏光光のみを検出する光学系としても良い。
また、上記電気信号から特徴量を検出する手段は、検出した波長毎の分光データをそのまま特徴量としても良く、また特定の1つ以上の波長での信号を特徴量としても良い。さらに複数の偏光条件と波長との組み合わせによって決まる特徴量としても良い。
また、上記特徴量を比較する手段は、同一試料での近傍での比較、或いは対称位置での比較の他、設計情報による領域単位毎での比較でも良い。さらには、過去に検出し保存したデータとの比較であってももちろん良い。
また、上記位置検知手段は、設計データ(CADデータ)におけるパターン配置と検出した特徴量の分布配置を正規化相関などの画像処理手法によって比較し、位置ずれ量を検知する方法でもよい。
【0017】
図2に分光検出器1の一例を示す。検査対象であるパターンドメディア20に対して、光源26から照射する光を偏光子27を介してハーフミラー23にて反射させたのち、ハーフミラー22を透過させ、対物レンズ21にて集光したビームを照射する。照射された光はパターンドメディア20上で反射され、前記対物レンズ21を通り、集光レンズ24にて集光された後、検光子28にて所望の光成分をフィルタイングされ、光検出器25にて検出される。このとき、例えば、光源26に白色光源を、検光子28に偏光板を、光検出器25に分光器を用いると、パターンドメディア20のパターン形状および光学特性に対応した分光波形が得られる。このような検出を試料であるパターンドメディア20に対して全面で実施することにより、試料全面での分光波形を検出することができる。また,ハーフミラー22で反射した光を集光レンズ29で集光し、カメラ30で撮像することにより、光検出器25で取得した分光データと同位置でのカメラ画像を得ることができる。
【0018】
図3を用いてHDD用のパターンドメディア20をサンプルとした際の領域分割及びパターン分類の方法を説明する。まず、試料のうち、パターンが形成されている領域31を検査領域とする。HDDメディアではユーザの磁気データを記録するデータ領域33の他にヘッドを制御するためのサーボ領域32が放射状に形成される。HDD用パターンドメディアでは、このサーボ領域が予め物理的なパターンとして形成されるプリサーボ方式が採用される。このサーボ領域付近の拡大図を図4に示す。一般的なパターン配置の場合、データ領域36の間にサーボ領域35が配置され、サーボ領域は磁気信号用途に応じ、クロック領域37、アドレス領域38、トラッキング領域39などの異なるパターンにより構成される。本発明の光センサ検出による検出単位を分割領域40とすると、図中に示すように各領域を検出単位に分割する。
【0019】
図5に図4での各領域のパターン例を示す。例えば、データ領域36のパターン44は周期的なラインアンドスペースであり、トラッキング領域39のパターン43は周期的な千鳥パターンである。また、アドレス領域38のパターン42は非周期的なパターンであり、クロック領域37のパターン41は、周期的なラインアンドスペースである。図6にそれぞれの領域での光検出器25による分光波形を示す。それぞれ、分光波形51はデータ領域36(パターン44)、分光波形52はトラッキング領域39(パターン43)、分光波形53はアドレス領域38(パターン42)、分光波形54はクロック領域37(パターン41)での検出結果を示している。このようにパターン形状が異なると分光波形のプロファイルは大きく異なるため、検出領域毎にどのパターンを検出したかどうかは、位置情報によらずとも、区別は可能である。
【0020】
図7にデータ領域に属する4箇所を検出した場合の検出波形を示す。また、図8に4箇所のパターン例を示す。図7の検出波形60aは図8のパターン例61aに対応し、60b,60c,60dはそれぞれ、パターン例61b,61c,61dに対応する。このうち、パターン例61a,61bは無欠陥領域であり、波形60a,60bには変化が少ない。データ領域は周期的パターンであるので、場所によらず分光波形変化が少ないためである。これに対しパターン抜け欠陥62を含む領域61cや、異物欠陥63を含む領域61dを検出した60c,60dでは波形が大きく変化する。また、その変化の仕方(変化波長域)は欠陥モードによって異なる。
【0021】
次に図9にサーボ領域のうち非周期パターンであるアドレス領域に属する4箇所を検出した場合の検出波形を示す。図9の検出波形65aは図10のパターン例66aに対応し、65b,65c,65dはそれぞれ、パターン例66b,66c,66dに対応する。このうち、パターン例66a,66bは無欠陥領域であるが、アドレス領域は一様パターンでないため、必ずしも検出波形65a,65bは一致しない。一方,パターン抜け欠陥67を含む領域66cや、異物欠陥68を含む領域66dを検出した65c,65dでは波形は比較的大きく変化する。また、その変化の仕方(変化波長域)は欠陥モードによって異なる。
このように検出領域及び欠陥モードによって分光波形の変化の仕方が異なるため、検出領域毎の欠陥弁別が必要となる。
【0022】
図11に特徴量演算及び判定処理に必要な判定データベース表の例を示す。ここで、分光波形データを各波長に対する反射率データとして波長の関数f(λk)、 λkは波長、k=1,2,3,…とする。検出領域及び欠陥種類の表を作成し、それぞれに次の式(1)で示す特徴量関数Fi(i=1,2,3,…)と判定指標値Thi(i=1,2,3,…)を設定する。Fiは分光波形の各波長での反射光量f(λk)に係数α,β,γ,… を乗じた演算式とする。
【0023】
【数1】
【0024】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、α,β,γ・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
【0025】
予め、検出領域と欠陥種が分かっているサンプルを教師データとして集め、これらの分光波形データから、各関数Fiを決定する。Fiの決定は係数α,β,γ,…の決定となるが、例えば、その領域内の波形を比較して、欠陥種によって大きく変化する波長の係数を大きく、逆に良品でも変化の大きい波長の係数を小さくする。これらの処理は統計的に、例えば主成分分析やPLS解析手法などによって係数を決定する。さらに,決定された関数値に対して欠陥種を決定する判定指標値Thiを設定し、判定指標値以上の関数値となる検出波形をその欠陥種と判定する。
なお、式(1)では演算式を簡単のため1次式としたが、必ずしも1次式とする必要はなく、分光波形の反射率をパラメータとする演算式であれば良く、例えば次の式(2)のようにべき乗の演算式でも良い。
【0026】
【数2】
【0027】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、αk,βk,γk・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
さらに、判定指標値Thiも必ずしも、各領域の欠陥種に1つでなくても良く、複数の指標値の組合せ条件によって欠陥種を判定する処理としても良い。
ここで判定指標値Thiは、無欠陥パターンによる光学信号ばらつきと欠陥によって生じる光学信号変化とを比較して、有意な信号変化分を捉えることにより、設定される。
このように判定式とデータベースを構築することで、各領域での欠陥検出及び欠陥分類が可能となる。
また、欠陥種とは本例に示したパターン形状の物理的な変化以外にも、分光波形で検出できる欠陥であれば、磁気的な欠陥種、電気的な欠陥種としても良い。
【実施例2】
【0028】
図12に本発明による別の判定データベースの例を示す。実施例1において、領域設定を行う際に、データ領域を例えば、ディスクの半径方法に3分割し、内周、中間周、外周領域に分離する。これは、ハードディスクの性質上、内周の方が記録密度が高くなるため、パターン密度も半径位置によって異なる場合があるためである。この場合、演算式Fiの係数は全領域で独立に算出する必要は無く、隣接領域間で内挿補間しても良い。また、分割数も3分割に限定する必要はなく、これ以上としても良い。
【実施例3】
【0029】
図13に本発明のデータベースの別の例を示す。実施例1の分光検出器1で分光波形を検出する際に、光検出器25で検出した波形70とカメラ30で撮影した欠陥画像71を関連付けてデータベースに保存する。これにより判定後の欠陥画像例として画像71を参照してユーザに提示することが可能となる。
【符号の説明】
【0030】
1・・・分光検出器、2・・・波形検出、3・・・CADデータ、4・・・検出位置、5・・・近傍波形、6・・・領域判定、7・・・データベース、8・・・判定指標値、9・・・演算式、10・・・特徴量演算、12・・・判定処理、13・・・欠陥モード判定、
20・・・パターンドメディア、21・・・対物レンズ、22・・・ハーフミラー、23・・・ハーフミラー、24・・・集光レンズ、25・・・光検出器、26・・・白色光源、27・・・偏光子、28・・・検光子、29・・・集光レンズ、30・・・観察カメラ、
31・・・検査領域、32・・・サーボ領域、33・・・データ領域、34・・・拡大領域、
35・・・サーボ領域、36・・・データ領域、37・・・クロック領域、38・・・アドレス領域、39・・・トラッキング領域、40・・・分割領域、
41・・・クロック領域のパターン、42・・・アドレス領域のパターン、43・・・トラッキング領域のパターン、44・・・データ領域のパターン、
51・・・データ領域36の分光波形、52・・・トラッキング領域39の分光波形、53・・・アドレス領域38の分光波形、54・・・クロック領域37の分光波形、
60a・・・データ領域61aパターンでの分光波形、60b・・・データ領域61bパターンでの分光波形、60c・・・データ領域61cパターンでの分光波形、60d・・・データ領域61dパターンでの分光波形、
61a・・・正常パターンのデータ領域、61b・・・正常パターンのデータ領域、61c・・・パターン抜け欠陥のあるデータ領域、61d・・・異物欠陥のあるデータ領域、62・・・パターン抜け欠陥、63・・・異物欠陥、
65a・・・アドレス領域66aパターンでの分光波形、65b・・・アドレス領域66bパターンでの分光波形、65c・・・アドレス領域66cパターンでの分光波形、65d・・・アドレス領域66dパターンでの分光波形、66a・・・正常パターンのアドレス領域、66b・・・正常パターンのアドレス領域、66c・・・パターン抜け欠陥のあるアドレス領域、66d…異物欠陥のあるアドレス領域、67・・・パターン抜け欠陥、68・・・異物欠陥、
70・・・異物のある領域71の検出波形、71・・・異物のある領域のカメラ画像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細凹凸パターンの検査において、スキャッタロメトリー法にて検査対象物の特徴を検出する際に、
検査対象物の検出対象領域の分光波形を検出し、
検出対象領域が検査対象物のパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、
領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、
選択した特徴量の演算式にしたがって、前記分光波形データに対し、特徴量演算を行い、
算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項2】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
検査対象物のパターン種類を周期的パターンと非周期的パターンに分けて領域判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項3】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
対象物のパターン種類と、欠陥種類によって変化する光学信号を用い、無欠陥パターンによる光学信号ばらつきと欠陥によって生じる光学信号変化を比較し、有意な信号変化分を捉えることで欠陥判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項4】
請求項3記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
有意な信号変化分を捉えるために、有意な変化のある波長を選択することを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項5】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
対象物のパターン種類と、欠陥種類と、パターンばらつきによって生じる光学信号ばらつきと、欠陥によって変化する光学信号変位をパラメータとして、パターン種類毎の判定指標値を決定することを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項6】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
前記欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式として、次の式(1)を用いることを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【数1】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、α,β,γ・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
【請求項7】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
前記欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式として、次の式(2)を用いることを特徴とすることを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【数2】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、αk,βk,γk・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
係数α,β,γ・・・、あるいは係数αk,βk,γk・・・は、欠陥種類によって大きく変化する波長の係数を大きく、良品でも変化の大きい波長の係数を小さくすることを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項9】
スキャッタロメトリー法にてパターンドメディア上の欠陥を検出する欠陥判定方法において、
パターンドメディアの検出対象領域の分光波形を検出し、
検出対象領域がパターンドメディアのパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、
領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、
選択した特徴量の演算式にしたがって、前記検出した分光波形データに対し、特徴量演算を行い、
算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行うことを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項10】
請求項9記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記欠陥種類が、抜け、異物、傷であることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項11】
請求項9記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記領域区分が、データ領域およびサーボ領域であることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項12】
請求項11記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記領域区分におけるデータ領域が、内周領域、中間周領域および外周領域に分けられていることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項13】
請求項11記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記領域区分におけるサーボ領域が、アドレス領域、クロック領域およびトラッキング領域に分けられていることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項1】
微細凹凸パターンの検査において、スキャッタロメトリー法にて検査対象物の特徴を検出する際に、
検査対象物の検出対象領域の分光波形を検出し、
検出対象領域が検査対象物のパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、
領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、
選択した特徴量の演算式にしたがって、前記分光波形データに対し、特徴量演算を行い、
算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項2】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
検査対象物のパターン種類を周期的パターンと非周期的パターンに分けて領域判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項3】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
対象物のパターン種類と、欠陥種類によって変化する光学信号を用い、無欠陥パターンによる光学信号ばらつきと欠陥によって生じる光学信号変化を比較し、有意な信号変化分を捉えることで欠陥判定を行うことを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項4】
請求項3記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
有意な信号変化分を捉えるために、有意な変化のある波長を選択することを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項5】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
対象物のパターン種類と、欠陥種類と、パターンばらつきによって生じる光学信号ばらつきと、欠陥によって変化する光学信号変位をパラメータとして、パターン種類毎の判定指標値を決定することを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項6】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
前記欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式として、次の式(1)を用いることを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【数1】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、α,β,γ・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
【請求項7】
請求項1記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
前記欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式として、次の式(2)を用いることを特徴とすることを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【数2】
ここで、Fi(λ)は特徴量の演算式、f(λk)は波長λkに対する分光波形の反射率の値、αk,βk,γk・・・は係数、i=1,2,3・・・、k=1,2,3・・・である。
【請求項8】
請求項6または請求項7記載の微細凹凸パターンの欠陥判定方法において、
係数α,β,γ・・・、あるいは係数αk,βk,γk・・・は、欠陥種類によって大きく変化する波長の係数を大きく、良品でも変化の大きい波長の係数を小さくすることを特徴とする微細凹凸パターンの欠陥判定方法。
【請求項9】
スキャッタロメトリー法にてパターンドメディア上の欠陥を検出する欠陥判定方法において、
パターンドメディアの検出対象領域の分光波形を検出し、
検出対象領域がパターンドメディアのパターン種類によって決まるどの領域区分に属するかの領域判定を行い、
領域判定の結果により、判定された領域区分に対応する、欠陥種類毎に異なる特徴量の演算式と判定指標値を選択し、
選択した特徴量の演算式にしたがって、前記検出した分光波形データに対し、特徴量演算を行い、
算出した特徴量の値と、前記選択した判定指標値とを比較して欠陥種類毎の判定処理を行うことを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項10】
請求項9記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記欠陥種類が、抜け、異物、傷であることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項11】
請求項9記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記領域区分が、データ領域およびサーボ領域であることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項12】
請求項11記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記領域区分におけるデータ領域が、内周領域、中間周領域および外周領域に分けられていることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【請求項13】
請求項11記載のパターンドメディアの欠陥判定方法において、
前記領域区分におけるサーボ領域が、アドレス領域、クロック領域およびトラッキング領域に分けられていることを特徴とするパターンドメディアの欠陥判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−276464(P2010−276464A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128996(P2009−128996)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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