説明

微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法

【課題】モールドの微細凹凸構造を繰り返し転写しても、モールドと硬化樹脂層との離型性および転写された微細凹凸構造の形状や表面特性を維持でき、微細凹凸構造を表面に有する物品を安定的に生産性よく製造できる方法を提供する。
【解決手段】(I)モールド離型剤を含む離型処理溶液で、陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造を表面に有するロール状モールド20の表面を被覆する工程、(II)工程(I)の後、重合性化合物と重合開始剤と内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を、ロール状モールド20とフィルム42との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44をフィルム42の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品40を得る工程を有し、モールド離型剤と内部離型剤とのSP値の差が2.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法に関する。
本願は、2011年5月26日に、日本に出願された特願2011−118087号および2011年5月26日に、日本に出願された特願2011−118088号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、可視光の波長以下の周期の微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止効果、ロータス効果等を発現することが知られている。特に、略円錐形状の凸部を並べたモスアイ構造と呼ばれる凹凸構造は、空気の屈折率から物品の材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0003】
物品の表面に微細凹凸構造を形成する方法としては、微細凹凸構造を表面に有するモールドと基材との間に液状の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、基材の表面に微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を形成する方法が注目されている。
また、該モールドとしては、簡便に製造できることから、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナをアルミニウム基材の表面に有するモールドが注目されている(特許文献1)。
【0004】
ところで、該モールドには、下記の理由(i)〜(iii)から、モールドと活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との接触界面が大幅に増加するため、モールドを硬化樹脂層から離型しにくいという問題がある。
(i)陽極酸化アルミナにおける細孔の平均間隔が100nmから400nm程度であり、また細孔が最も接近する部分の細孔間距離は数nmから数十nmである。すなわち、構造が非常に微細である。
(ii)特許文献1に記載されているように、陽極酸化とエッチングとを繰り返して細孔を形成した場合、細孔の壁面の平滑性が低くなり、細孔の壁面がある程度粗くなる場合がある。
(iii)充分な反射防止効果等の機能を得ようとした場合には、細孔のアスペクト比を比較的大きくする必要がある。
【0005】
モールドと硬化樹脂層との離型性を向上させる方法としては、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面を、モールドの表面と反応する離型剤(モールド離型剤)によって処理する方法がある(特許文献2)。
しかし、該方法には、下記の問題(iv)〜(viii)がある。
【0006】
(iv)モールドの微細凹凸構造を繰り返し転写した場合、モールドの表面からモールド離型剤が脱落し、離型性がしだいに低下する。離型性が低下すると、物品の生産性が低下し、また、転写される微細凹凸構造の一部が破損し、転写精度も低下する。
(v)モールドの表面から脱落したモールド離型剤が、物品の表面に移行することで、物品表面が汚染され、転写初期から転写回数が増えるに連れて物品の表面特性が大きく変化していく現象が顕在化することがある。さらに、モールド離型剤が脱落していく状況では、転写される微細凹凸構造の凸部の高さも徐々に変化していくため、物品の表面物性だけではなく、光学特性も変化していく。そのため、製造を開始してから、表面特性と光学特性が変化している間に得られる微細凹凸構造を表面に有する物品は、製品として出荷することができず、物品の表面特性と光学特性が安定化するまでに費やされる原料や資材は無駄になってしまう。
【0007】
(vi)特許文献2に記載された含フッ素シラン化合物およびフッ素系溶媒を用いてモールドを離型処理する場合、含フッ素シラン化合物およびフッ素系溶媒が高価であることから、モールドの大面積化に伴って離型処理に要するコストが問題となる。特に、モールドがロール形状であり、大型のロール全体を処理液で浸漬する場合に、この問題が顕著となることが予見される。
(vii)含フッ素シラン化合物は、吸湿した場合にシラノール基同士の反応による凝集物が発生するため、モールドの表面の安定的な均一処理には課題がある。そのため、離型処理の際に離型処理液の液だまりが発生すると、その部分に含フッ素シラン化合物の凝集物が残り、モールドの欠陥となる場合がある。
(viii)モールドの表面に形成した含フッ素シラン化合物の単分子膜の上に残った不要な残渣等を、フッ素系溶媒でリンスする場合には、工程数とコストがさらに増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−156695号公報
【特許文献2】特開2007−326367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をモールドと基材との間に挟んだ状態で硬化させて、モールドの微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成するに際し、モールドの微細凹凸構造を繰り返し転写しても、モールドと硬化樹脂層との離型性および転写された微細凹凸構造の形状や表面特性を維持でき、微細凹凸構造を表面に有する物品を安定的に生産性よく製造できる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、下記の工程(I)および(II)を有し、下記モールド離型剤と下記内部離型剤とのSP値の差が2.0以下であることを特徴とする。
(I)モールド離型剤を含む離型処理溶液で、陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造を表面に有するモールド表面を被覆する工程。
(II)工程(I)の後、重合性化合物と重合開始剤と内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【発明の効果】
【0011】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法によれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物をモールドと基材との間に挟んだ状態で硬化させて、モールドの微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成するに際し、モールドの微細凹凸構造を繰り返し転写しても、モールドと硬化樹脂層との離型性および転写された微細凹凸構造の形状や表面特性を維持でき、微細凹凸構造を表面に有する物品を安定的に生産性よく製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】陽極酸化アルミナを表面に有するモールドの製造工程を示す断面図である。
【図2】微細凹凸構造を表面に有する物品の製造装置の一例を示す構成図である。
【図3】微細凹凸構造を表面に有する物品の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、微細凹凸構造は、凸部または凹部の平均間隔(周期)が可視光波長以下、つまり400nm以下の構造を意味する。また、活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等を意味する。また、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、オキシアルキレン基を1つ有するオキシアルキレンアルキルリン酸化合物またはオキシアルキレン基を2つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルリン酸化合物を意味する。また、(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0014】
<物品の製造方法>
本発明の第一の側面における微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、下記の工程(I)および(II)を有する方法である。
(I)モールド離型剤を含む離型処理溶液で、陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造を表面に有するモールド表面を被覆する工程であって、前記モールド離型剤は、リン酸エステル化合物を1種類以上含み、前記モールド離型剤1gを50mLの水で抽出したときの、水溶液のpHが3.0以上である。
(II)工程(I)の後、重合性化合物と重合開始剤と内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【0015】
本発明の第二の側面における微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、下記の工程(I’)および(II’)を有する方法である。
(I’)陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの表面を、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物で被覆する工程。
(II’)工程(I’)の後、重合性化合物と重合開始剤と内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【0016】
本発明の第三の側面における微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、下記の工程(I”)および(II”)を有する方法である。
(I”)陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造を表面に有するモールドの表面を、モールド離型剤で処理する工程。
(II”)工程(I”)の後、重合性化合物と、重合開始剤と、前記モールド離型剤と同じ内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。
【0017】
〔工程(I)、(I’)および(I”)〕
本発明の第一の側面における工程(I)は、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面を、モールド離型剤である(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物で被覆する。
本発明の第二の側面における工程(I’)は、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面を、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物で被覆する。
本発明の第三の側面における工程(I”)は工程(I)と同様である。
工程(I)、(I’)および(I”)は、モールドを均一、かつ十分に薄くモールド離型剤で被覆する点から、下記の工程(I−1)および(I−2)を有することが好ましい。
(I−1)(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を溶媒に溶かして離型処理溶液を調製する工程。
(I−2)モールドの表面に離型処理溶液を塗布し、乾燥させる工程。
【0018】
本発明に用いるリン酸エステル化合物を1種類以上含むモールド離型剤は、モールド離型剤1gを50mLの水で抽出したときの、水溶液のpHが3.0以上である。pHが3.0以上であればモールドの微細凹凸形状を良好に維持できる。pHが3.0以上であることがより好ましく、3.5以上であることが特に好ましい。また、モールド離型剤のpHが7.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが特に好ましい。すなわち、モールド離型剤のpHが3.0〜7.0であることが好ましく、3.5〜6.0であることがより好ましく、3.5〜5.0であることが特に好ましい。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物は、不純物として極少量のリン酸を含む。このリン酸濃度が大きすぎると、モールドにモールド離型剤が接触した状態で放置した場合にモールドが溶けて微細凹凸形状が変化したり消失したりする可能性がある。モールド離型剤がモールドを溶かしてしまう場合、モールドの離型処理から微細凹凸形状を転写するまでのモールドの保管条件や期間が限られてしまうため、好ましくない。
そこで、鋭意検討を進めた結果、(ポリ)アルキレンアルキルリン酸エステル化合物からなるモールド離型剤のpHが3.0以上であれば、モールド離型剤がモールドに接触した状態を保っても十分にモールドの溶解が抑えられることが分かった。pHが3.0以上である場合のモールド離型剤のリン酸濃度は10ppm以下であった。
すなわち、モールド離型剤のリン酸濃度は70ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、0ppmであってもよい。
【0019】
(モールド)
モールドは、例えば、下記の工程(a)〜(f)を有する方法によって作製できる。
(a)アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
(b)酸化皮膜の一部または全てを除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
(c)アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
(d)細孔の径を拡大させる工程。
(e)工程(d)の後、電解液中、再度陽極酸化する工程。
(f)工程(d)と工程(e)を繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化アルミナがアルミニウムの表面に形成されたモールドを得る工程。
【0020】
工程(a):
図1に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化すると、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
アルミニウム基材の形状としては、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。
また、アルミニウム基材は、表面状態を平滑化にするために、機械研磨、羽布研磨、化学的研磨、電解研磨処理(エッチング処理)等で研磨されることが好ましい。また、アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、陽極酸化の前にあらかじめ脱脂処理されることが好ましい。
【0021】
アルミニウムの純度は、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。アルミニウムの純度が低いと、陽極酸化した時に、不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されたり、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下したりすることがある。
電解液としては、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。
【0022】
シュウ酸を電解液として用いる場合:
シュウ酸の濃度は、0.7M以下が好ましい。シュウ酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて酸化皮膜の表面が粗くなることがある。
化成電圧が30〜60Vの時、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向にある。
電解液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。電解液の温度が60℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0023】
硫酸を電解液として用いる場合:
硫酸の濃度は0.7M以下が好ましい。硫酸の濃度が0.7Mを超えると、電流値が高くなりすぎて定電圧を維持できなくなることがある。
化成電圧が25〜30Vの時、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲より高くても低くても規則性が低下する傾向がある。
電解液の温度は、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。電解液の温度が30℃を超えると、いわゆる「ヤケ」といわれる現象がおこり、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることがある。
【0024】
工程(b):
図1に示すように、酸化皮膜14の一部または全てを一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで細孔の規則性を向上することができる。酸化皮膜14は全てを除去せずに一部が残るような状態でも、酸化皮膜14のうち、すでに規則性が十分に高められた部分が残っているのであれば、酸化皮膜除去の目的を果たすことができる。
【0025】
酸化皮膜を除去する方法としては、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が挙げられる。このような溶液としては、例えば、クロム酸/リン酸混合液等が挙げられる。
【0026】
工程(c):
図1に示すように、酸化皮膜を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。ただし、工程(b)の効果が失われない範囲であれば、工程(c)での陽極酸化の電圧、電解液の種類、温度等を適宜調整することが可能である。
【0027】
工程(d):
図1に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、細孔径拡大処理と記す。)
を行う。細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。このような溶液としては、例えば、5質量%程度のリン酸水溶液等が挙げられる。
細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0028】
工程(e):
図1に示すように、再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔12がさらに形成される。
陽極酸化は、工程(a)と同様な条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど深い細孔を得ることができる。
【0029】
工程(f):
図1に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と、工程(e)の陽極酸化を繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化アルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有するモールド18が得られる。最後は工程(d)で終わることが好ましい。
【0030】
繰り返し回数は、合計で3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。繰り返し回数が2回以下では、非連続的に細孔の直径が減少するため、このような細孔を有する陽極酸化アルミナを用いて形成されたモスアイ構造の反射率低減効果は不十分である。
【0031】
細孔12の形状としては、略円錐形状、角錐形状、円柱形状等が挙げられ、円錐形状、角錐形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましい。
【0032】
細孔12間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。細孔12間の平均間隔は、20nm以上が好ましい。
細孔12間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する細孔12間の間隔(細孔12の中心から隣接する細孔12の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0033】
細孔12の深さは、平均間隔が100nmの場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。
細孔12の深さは、電子顕微鏡観察によって倍率30000倍で観察したときにおける、細孔12の最底部と、細孔12間に存在する凸部の最頂部との間の距離を測定した値である。
細孔12のアスペクト比(細孔の深さ/細孔間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。
【0034】
(モールド離型剤)
本発明の第一の側面において、モールド離型剤は、リン酸エステル化合物を1種類以上含む。リン酸エステル化合物とは、有機リン化合物のうち、リン酸とアルコールが脱水縮合したエステルであり、リン酸が持つ3個の水素の全てまたは一部が有機基に置換された構造の化合物の総称である。リン酸エステルとしては、その置換の数が1,2,3個のものを順にリン酸モノエステル、リン酸ジエステル、リン酸トリエステルが挙げられる。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、リン酸とポリ(オキシアルキレン)アルキルエーテルが脱水縮合した化合物である。
モールド離型剤である(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、アルミナと相互作用してモールドの表面に吸着して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物およびその硬化物との界面で離型性を発揮する。さらに、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、含フッ素シラン化合物等と違って凝集物等を生じないため、モールド離型剤がモールドの表面の微細凹凸構造を埋めてしまうような場合でも、少ない転写回数でモールドの表面の余分なモールド離型剤が活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に移行し、モールドの表面の微細凹凸構造が回復する。
【0035】
モールド離型剤である(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、後述する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に添加する内部離型剤と同じ化合物であってもよく、異なる化合物であってもよい。
モールド離型剤と内部離型剤とが同じ化合物であれば、転写初期から安定した表面特性が得られる。
なお、例えば、内部離型剤として最適な(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物と、モールド離型剤として用いるための溶媒への希釈およびモールドの離型処理が容易な(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物とが異なる場合は、内部離型剤とモールド離型剤とを異なる化合物としてもよい。
【0036】
モールド離型剤である(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物としては、離型性の点から、下記式(1)で表わされる化合物が好ましい。
(HO)3−n(O=)P[−O−(RO)−R ・・・(1)
は、アルキル基であり、Rは、アルキレン基であり、mは1〜20の整数であり、nは1〜3の整数である。
【0037】
としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数3〜18のアルキル基がより好ましい。具体的には、炭素数4〜16が好ましく、炭素数6〜15がより好ましい。
としては、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。具体的には、エチレンまたはプロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。
mは、1〜10の整数がより好ましい。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、モノエステル体(n=1)、ジエステル体(n=2)、トリエステル体(n=3)のいずれであってもよい。また、ジエステル体またはトリエステル体の場合、1分子中の複数の(ポリ)オキシアルキレンアルキル基はそれぞれ異なっていてもよい。
【0038】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物の市販品としては、例えば、下記のものが挙げられる。
城北化学社製:JP−506H(n≒1〜2,m≒1,R=ブチル,R=エチレン)、
アクセル社製:モールドウイズINT−1856(構造非公開)、
日光ケミカルズ社製:TDP−10(n≒3,m≒10,R=C12〜15,R=エチレン)、TDP−8(n≒3,m≒8,R=C12〜15,R=エチレン)、TDP−6(n≒3,m≒6,R=C12〜15,R=エチレン)、TDP−2(n≒3,m≒2,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−10(n≒2,m≒10,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−8(n≒2,m≒8,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−6(n≒2,m≒6,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−4(n≒2,m≒4,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−2(n≒2,m≒2,R=C12〜15,R=エチレン)、TLP−4(n≒3,m≒4,R=ラウリル,R=エチレン)、TCP−5(n≒3,m≒5,R=セチル,R=エチレン)、DLP−10(n≒3,m≒10,R=ラウリル,R=エチレン)。
ここで、C12〜C15とは、炭素数12〜15のアルキル基を意味する。
これらの中でも、TDP−10,TDP−8,TDP−6,TDP−2が好ましく、TDP−10,TDP−8がより好ましい。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(溶媒)
溶媒は、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を均一に溶解させることができ、モールドの表面への濡れ性が良好で、かつ離型処理溶液の塗布後に乾燥させることができれば、特に制限無く選択し、用いることができる。
溶媒としては、例えば、水、アルコール類(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン等)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン等)等が挙げられる。なかでも水、アルコール類が好ましく、水がより好ましい。
溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記の溶媒のうち水を用いて離型処理溶液を調製することが好ましい。水を使用することで、揮発した溶剤の排気処理や爆発・火災といった可能性を大幅に低減させることが可能であり、コストの点でも有利になると考えられる。また、溶媒に水を使用した場合、一定量のアルコール等を併用することも有効である。
【0041】
(工程(I−1))
離型処理溶液は、モールド離型剤である(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を溶媒に溶かすことで得られる。モールド離型剤の濃度は、モールドへの塗布方法によって最適化され、離型処理溶液を乾燥させた後に(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物によって形成される層が、離型性を確保できる濃度であればよい。
【0042】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物によって形成される層の厚さは数Å程度あれば十分に離型性を確保できる。たとえ層の厚さが数μm以上となった場合でも、数回転写すれば必要十分な量の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物のみがモールドの表面に残り、過剰量の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は硬化樹脂層の側に移行する。よって、それ以降は安定で均一な突起形状と表面特性を有する物品を得ることができる。
【0043】
モールド離型剤の濃度は、離型処理溶液中、0.001〜10質量%が好ましく、0.01〜2質量%がより好ましく、0.01〜1質量%がさらに好ましく、0.05〜0.5質量%が特に好ましい。
また、離型処理溶液は、取り扱い性を改善する目的で、消泡剤等を含んでいてもよい。
【0044】
離型処理溶液は、均一な溶液であることが好ましく、浮遊物や濁りなどが無いことが好ましい。浮遊物や濁りは、離型処理時にそのままモールド表面の欠陥や外観不良となり得るためである。離型処理溶液の透明度は、濁度計などを利用して測定することが可能であり、粒子状物質や濁りが実質的に検出されないことが望ましい。例えば、濁度(JIS K0101)で表すと0度であることが好ましい。
【0045】
(工程(I−2))
モールドへの離型処理溶液の塗布方法は、モールドの表面に離型処理溶液を塗布できれば特に制限されるものではない。塗布方法としては、例えば、ディップコート、スプレー塗工、離型処理溶液を染み込ませたワイパー等による拭き上げ、等が挙げられる。
離型処理溶液の乾燥は、離型処理溶液に用いた溶媒が十分除去できればよい。溶媒が十分除去可能であれば乾燥方法は特に制限されないが、選択した溶媒に応じて乾燥させる環境を選択することが望ましい。
乾燥方法としては、例えば、クリーン環境での静置、高温乾燥機での乾燥、減圧乾燥、等が挙げられる。
【0046】
〔工程(II)、(II’)、および(II”)〕
工程(II)においては、重合性化合物と重合開始剤と内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る。
工程(II’)は、工程(II)と同様である。
工程(II”)においては、重合性化合物と、重合開始剤と、モールド離型剤と同じ内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る。
【0047】
(基材)
基材の形状としては、フィルム、シート、射出成形品、プレス成形品等が挙げられる。
基材の材質としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、ガラス等が挙げられる。
【0048】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、重合性化合物と、重合開始剤と、内部離型剤とを含む組成物である。
【0049】
組成物の25℃における粘度は、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がさらに好ましく、2000mPa・s以下がより好ましい。組成物の25℃における粘度が10000mPa・s以下であれば、微細凹凸構造への組成物の追随性が良好となり、微細凹凸構造を精度よく転写できる。組成物の粘度は、回転式E型粘度計を用い、25℃にて測定する。
【0050】
(内部離型剤)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が内部離型剤を含むことによって、連続転写性を高めることができる。
内部離型剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物と、モールド表面との離型性を向上するものであり、かつ活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との相溶性があれば、特にその組成は制限されない。
【0051】
内部離型剤としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、ポリアルキレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を主成分とするものが好ましい。
【0052】
内部離型剤としてモールド離型剤と同じ(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を含むことによって、その硬化物である硬化樹脂層とモールドとの離型性が特に良好となる。また、離型時の負荷が極めて低いため、微細凹凸構造の破損が少なく、その結果、モールドの微細凹凸構造を効率よく、かつ精度よく転写できる。
【0053】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物としては、離型性の点から、下記式(1)で表わされる化合物が好ましい。
(HO)3−n(O=)P[−O−(RO)−R ・・・(1)
は、アルキル基であり、Rは、アルキレン基であり、mは1〜20の整数であり、nは1〜3の整数である。
【0054】
としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数3〜18のアルキル基がより好ましい。具体的には、炭素数4〜16が好ましく、炭素数6〜15がより好ましい。
としては、炭素数1〜4のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基がより好ましい。具体的には、エチレン基かプロピレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
mは、1〜10の整数が好ましい。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、モノエステル体(n=1)、ジエステル体(n=2)、トリエステル体(n=3)のいずれであってもよい。また、ジエステル体またはトリエステル体の場合、1分子中の複数の(ポリ)オキシアルキレンアルキル基はそれぞれ異なっていてもよい。
【0055】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物の市販品としては、例えば、下記のものが挙げられる。
城北化学社製:JP−506H(n≒1〜2,m≒1,R=ブチル,R=エチレン)、アクセル社製:モールドウイズINT−1856(構造非公開)、日光ケミカルズ社製:TDP−10(n≒3,m≒10,R=C12〜15,R=エチレン)、TDP−8(n≒3,m≒8,R=C12〜15,R=エチレン)、TDP−6(n≒3,m≒6,R=C12〜15,R=エチレン)、TDP−2(n≒3,m≒2,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−10(n≒2,m≒10,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−8(n≒2,m≒8,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−6(n≒2,m≒6,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−4(n≒2,m≒4,R=C12〜15,R=エチレン)、DDP−2(n≒2,m≒2,R=C12〜15,R=エチレン)、TLP−4(n≒3,m≒4,R=ラウリル,R=エチレン)、TCP−5(n≒3,m≒5,R=セチル,R=エチレン)、DLP−10(n≒3,m≒10,R=ラウリル,R=エチレン)。
ここで、C12〜C15とは、炭素数12〜15のアルキル基を意味する。
これらの中でも、TDP−10、TDP−8、TDP−6、TDP−2が好ましく、TDP−6、TDP−2がより好ましい。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中、内部離型剤としての(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物の量は、重合性化合物の100質量%に対して、0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましく、0.05〜0.1質量%がさらに好ましい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物の量が1質量%以下であれば、硬化樹脂層の性能の低下が抑えられる。また、基材との密着性の低下が抑えられ、その結果、モールドへの樹脂残り(離型不良)や物品からの硬化樹脂層の剥がれが抑えられる。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物の量が0.01質量%以上であれば、モールドからの離型性が十分となり、モールドへの樹脂残り(離型不良)が抑えられる。
【0057】
内部離型剤は、アルミナからなるモールドの微細凹凸形状を維持するために、内部離型剤1gを50mLの水で抽出したときの、水溶液のpHは、3.0以上が好ましく、3.5以上であることがより好ましく、3.5以上であることが特に好ましい。また、内部離型剤のpHが7.0以下であることが好ましく、6.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることが特に好ましい。すなわち、内部離型剤のpHが3.0〜7.0であることが好ましく、3.5〜6.0であることがより好ましく、3.5〜5.0であることが特に好ましい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル化合物は、不純物として極少量のリン酸を含む。このリン酸濃度が大きすぎると、転写回数(ロール状金型の回転数)の増大と共にモールドが急速に溶けて微細凹凸形状が変化したり消失したりする可能性があるため、好ましくない。
そこで、鋭意検討を進めた結果、(ポリ)アルキレンアルキルリン酸エステル化合物からなる内部離型剤のpHが3.0以上であれば、転写回数の増大によっても微細凹凸形状がほとんど劣化することなく、物品を長期にわたって安定して生産可能であることが分かった。pHが3.0以上である場合の内部離型剤のリン酸濃度は10ppm以下であった。
すなわち、内部離型剤中のリン酸濃度は70ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、0ppmであってもよい。
【0058】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、離型性をさらに向上する目的で、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物以外の離型性を向上させる成分を含んでいてもよい。該成分としては、例えば、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物、リン酸エステル系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、固形ワックス(ポリアルキレンワックス、アミドワックス、テフロンパウダー(テフロンは登録商標)等)等を含む化合物、等が挙げられる。
【0059】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、分子中にラジカル重合性および/またはカチオン重合性を有するモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。
【0060】
ラジカル重合性を有するモノマーとしては、単官能モノマー、多官能モノマーが挙げられる。
単官能モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。なかでもアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレートがより好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
多官能モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4−ビス(3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートがより好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0062】
カチオン重合性を有するモノマーとしては、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマーが挙げられ、エポキシ基を有するモノマーが特に好ましい。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールA PO2モル付加物ジグリシジルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、2−エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、などが挙げられる。
【0063】
オリゴマーまたは反応性ポリマーとしては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性基を有する上述のモノマーの単独または共重合ポリマー等が挙げられる。なかでもエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0064】
重合性化合物としては、ラジカル重合性のモノマー同士の組み合わせ、もしくはラジカル重合性モノマーとカチオン重合性モノマーの組合せが好ましく、ラジカル重合性モノマー同士の組合せがより好ましい。
【0065】
(重合開始剤)
光硬化反応を利用する場合、光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類が挙げられる。なかでも2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドが好ましく、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
熱硬化反応を利用する場合、熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。なかでも有機過酸化物かアゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物がより好ましい。
【0067】
重合開始剤の量は、重合性化合物100質量%に対して、0.1〜10質量%が好ましい。重合開始剤の量が0.1質量%未満では、重合が進行しにくい。重合開始剤の量が10質量%を超えると、硬化膜が着色したり、機械強度が低下したりすることがある。
【0068】
(他の成分)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、帯電防止剤、防汚性を向上させるためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶媒を含んでいてもよい。
【0069】
非反応性のポリマーとしては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。
【0070】
アルコキシシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。
【0071】
アルキルシリケート化合物としては、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、n−ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。
【0072】
微細凹凸構造を表面に有する物品は、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。
【0073】
(疎水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を90°以上にするためには、疎水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、フッ素含有化合物またはシリ
コーン系化合物を含む組成物を用いることが好ましい。
【0074】
フッ素含有化合物:
フッ素含有化合物としては、含フッ素モノマー、含フッ素シラン化合物、含フッ素界面活性剤、含フッ素ポリマー等が挙げられる。
【0075】
含フッ素モノマーとしては、フルオロアルキル基置換ビニルモノマー、フルオロアルキル基置換開環重合性モノマー等が挙げられる。
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。
【0076】
フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーとしては、フルオロアルキル基置換エポキシ化合物、フルオロアルキル基置換オキセタン化合物、フルオロアルキル基置換オキサゾリン化合物等が挙げられる。
【0077】
含フッ素シラン化合物としては、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0078】
含フッ素界面活性剤としては、フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤、フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0079】
含フッ素ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有モノマーの重合体、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体、フルオロアルキル基含有モノマーと架橋反応性基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。含フッ素ポリマーは、共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0080】
シリコーン系化合物:
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられ、例えば、信越化学工業社製のシリコーンジアクリレート「X−22−164」「X−22−1602」等が好ましく用いられる。
【0081】
(親水性材料)
硬化樹脂層の微細凹凸構造の表面の水接触角を25°以下にするためには、親水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物として、少なくとも親水性モノマーを含む組成物を用いることが好ましい。また、耐擦傷性や耐水性付与の観点からは、架橋可能な多官能モノマーを含むものがより好ましい。なお、親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーは、同一(すなわち、親水性多官能モノマー)であってもよい。さらに、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、その他のモノマーを含んでいてもよい。
【0082】
親水性の材料を形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート、必要に応じて単官能モノマーを含む組成物を用いることがより好ましい。
【0083】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物、ウレタンアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL220、EBECRYL1290、EBECRYL1290K、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、KRM8200)、ポリエーテルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL81)、変性エポキシアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL3416)、ポリエステルアクリレート類(ダイセル・サイテック社製:EBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL800、EBECRYL810、EBECRYL811、EBECRYL812、EBECRYL1830、EBECRYL845、EBECRYL846、EBECRYL1870)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0084】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合は、重合性化合物100質量%中、40〜90質量%が好ましく、耐水性、耐薬品性の点から、50〜90質量%がより好ましく、60〜80質量%が特に好ましい。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が40質量%以上であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの割合が90質量%以下であれば、表面に小さな亀裂が入りにくく、外観不良となりにくい。
【0085】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートとしては、アロニックスM−240、アロニックスM−260(東亞合成社製)、NKエステルAT−20E、NKエステルATM−35E(新中村化学工業社製)等の長鎖ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートにおいて、一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6〜40が好ましく、9〜30がより好ましく、12〜20が特に好ましい。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が6以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。ポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位が40以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好となり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が分離しにくい。
【0086】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合は、重合性化合物100質量%中、20〜80質量%が好ましく、25〜70質量%がより好ましい。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が20質量%以上であれば、親水性が十分となり、防汚性が向上する。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの割合が80質量%以下であれば、弾性率が高くなって耐擦傷性が向上する。
【0087】
単官能モノマーとしては、親水性単官能モノマーが好ましい。
親水性単官能モノマーとしては、M−20G、M−90G、M−230G(新中村化学工業社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。
また、単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、物品本体への密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
【0088】
単官能モノマーの割合は、重合性化合物100質量%中、0〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。単官能モノマーを用いることにより、基材と硬化樹脂との密着性が向上する。単官能モノマーの割合が20質量%以下であれば、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートまたは2官能以上の親水性(メタ)アクリレートが不足することなく、防汚性または耐擦傷性が十分に発現する。
【0089】
単官能モノマーは、1種または2種以上を(共)重合した低重合度の重合体として活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に重合性化合物100質量%中、0〜35質量%配合してもよい。低重合度の重合体としては、M−230G(新中村化学工業社製)等のエステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート類と、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートとの40/60共重合オリゴマー(MRCユニテック社製、MGポリマー)等が挙げられる。
【0090】
(SP値)
SP値は、Fedors法によって計算される溶解度パラメータ〔単位:(J/cm1/2 〕であり、次式で表される値である。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2
式中、ΔHはモル蒸発熱[J]を表し、Vはモル体積[cm ]を表す。また、ΔH、Vとしては各々、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE, 1974, Vol.14, No.2, ROBERT F. FEDORS. (151〜153頁)」に記載の、原子団のモル蒸発熱(△ei)の合計ΣΔei(=ΔH)、モル体積(△vi)の合計ΣΔvi(V)を用いることができ、(ΣΔei/ΣΔvi)1/2 から求められる。
【0091】
内部離型剤とモールド離型剤のSP値の差は2.0以下が好ましく、より好ましくは1.5以下である。SP値は、差が大きいほど相溶性が低くなる。微細凹凸構造表面に有する物品を製造する際の初期にモールド表面は、離型剤がモールド離型剤リッチな状態から内部離型剤リッチな状態に徐々に入れ替わる。そのため、両者の相溶性が低すぎると表面の白化などの不具合を生じる可能性がある。
【0092】
(製造装置)
微細凹凸構造を表面に有する物品は、例えば、図2に示す製造装置を用いて、下記のようにして製造される。
微細凹凸構造(図示略)を表面に有するロール状モールド20と、ロール状モールド20の回転に同期してロール状モールド20の表面に沿って移動する帯状のフィルム42(基材)との間に、タンク22から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を供給する。
【0093】
ロール状モールド20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、フィルム42および活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38をニップし、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を、フィルム42とロール状モールド20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状モールド20の微細凹凸構造の凹部内に充填する。
【0094】
ロール状モールド20の下方に設置された活性エネルギー線照射装置28から、フィルム42を通して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状モールド20の表面の微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成されたフィルム42をロール状モールド20から剥離することによって、図3に示すような物品40を得る。
【0095】
活性エネルギー線照射装置28としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、フュージョンランプ等が好ましく、この場合の光照射エネルギー量は、100〜10000mJ/cmが好ましい。
【0096】
(物品)
図3は、微細凹凸構造を表面に有する物品40の一例を示す断面図である。
フィルム42は、光透過性フィルムである。フィルムの材料としては、ポリカーボネート、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系樹脂、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルケトン、セルロース系樹脂(トリアセチルセルロース等)、ポリオレフィン、脂環式ポリオレフィン等が挙げられる。
【0097】
硬化樹脂層44は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる膜であり、表面に微細凹凸構造を有する。
陽極酸化アルミナのモールドを用いた場合の物品40の表面の微細凹凸構造は、陽極酸化アルミナの表面の微細凹凸構造を転写して形成されたものであり、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる複数の凸部46を有する。
【0098】
微細凹凸構造としては、略円錐形状、角錐形状等の突起(凸部)が複数並んだ、いわゆるモスアイ構造が好ましい。突起間の間隔が可視光の波長以下であるモスアイ構造は、空気の屈折率から材料の屈折率へと連続的に屈折率が増大していくことで有効な反射防止の手段となることが知られている。
【0099】
凸部間の平均間隔は、可視光の波長以下、すなわち400nm以下である。陽極酸化アルミナのモールドを用いて凸部を形成した場合、凸部間の平均間隔は100から200nm程度となることから、250nm以下が特に好ましい。
【0100】
凸部間の平均間隔は、凸部の形成のしやすさの点から、20nm以上が好ましい。
凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察によって隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を50点測定し、これらの値を平均したものである。
【0101】
凸部の高さは、平均間隔が100nmの場合は、80〜500nmが好ましく、120〜400nmがより好ましく、150〜300nmが特に好ましい。凸部の高さが80nm以上であれば、反射率が十分低くなり、かつ反射率の波長依存性が少ない。凸部の高さが500nm以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
凸部の高さは、電子顕微鏡によって倍率30000倍で観察したときにおける、凸部の最頂部と、凸部間に存在する凹部の最底部との間の距離を測定した値である。
【0102】
凸部のアスペクト比(凸部の高さ/凸部間の平均間隔)は、0.8〜5.0が好ましく、1.2〜4.0がより好ましく、1.5〜3.0が特に好ましい。凸部のアスペクト比が1.0以上であれば、反射率が十分に低くなる。凸部のアスペクト比が5.0以下であれば、凸部の耐擦傷性が良好となる。
【0103】
凸部の形状は、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最表面から深さ方向に連続的に増加する形状、すなわち、凸部の高さ方向の断面形状が、三角形、台形、釣鐘型等の形状が好ましい。
【0104】
硬化樹脂層44の屈折率とフィルム42の屈折率との差は、0.2以下が好ましく、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。屈折率差が0.2以下であれば、硬化樹脂層44とフィルム42との界面における反射が抑えられる。
【0105】
表面に微細凹凸構造を有する場合、その表面が疎水性の材料から形成されていればロータス効果により超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られることが知られている。
【0106】
硬化樹脂層44の材料が疎水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、90°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、120°以上が特に好ましい。水接触角が90°以上であれば、水汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。また、水が付着しにくいため、着氷防止を期待できる。
【0107】
硬化樹脂層44の材料が親水性の場合の微細凹凸構造の表面の水接触角は、25°以下が好ましく、23°以下がより好ましく、21°以下が特に好ましい。水接触角が25°以下であれば、表面に付着した汚れが水で洗い流され、また油汚れが付着しにくくなるため、十分な防汚性が発揮される。該水接触角は、硬化樹脂層44の吸水による微細凹凸構造の変形、それに伴う反射率の上昇を抑える点から、3°以上が好ましい。
【0108】
(用途)
物品40の用途としては、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品、より具体的には、ディスプレー用反射防止、時計文字板、タッチパネル部材、汚れ吸着部材、調湿部材、抗菌部材、サニタリー部材、自動車メーターカバー、自動車ミラー、自動車窓、有機または無機エレクトロルミネッセンスの光取り出し効率向上部材、太陽電池部材等が挙げられる。
【0109】
(作用効果)
以上説明した本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法にあっては、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が内部離型剤を含んでいるため、転写回数が多数回になっても、モールドと硬化樹脂層との離型性を維持できる。また、モールドの微細凹凸構造が形成された側の表面をモールド離型剤である(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物で被覆しているため、モールドの微細凹凸構造を物品の表面に転写する場合に、初期の離型性が良好となるだけでなく、繰り返し転写した場合であっても、微細凹凸構造を表面に有する物品を安定的、かつ生産性よく製造できるようになる。
【実施例】
【0110】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
(リン酸濃度およびpHの測定)
モールド離型剤1gをクロロホルム50mLに溶解させ、これに水50mLを加えて、混合液を分液漏斗にて激しく攪拌した(水抽出試験)。
ついで、一晩静置した後、有機層と水層(水溶液)とに分離し、イオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス株式会社製、「DX−500」)を用いて水溶液中のリン酸濃度を測定した。
また、pH試験機(株式会社堀場製作所製、「カスタニーLAB」)を用い、25℃の条件にて水溶液のpHを測定した。
【0112】
(モールド溶解による減少率の測定)
50℃のモールド離型剤にモールドを22時間浸漬させて浸漬試験を行った。
浸漬試験後、モールドを取り出し、アセトン、クロロホルムを用いて洗浄した。浸漬試験前と洗浄後のモールドの質量を測定し、下記式より減少率を求めた。
減少率(%)={(浸漬前のモールドの質量−洗浄後のモールドの質量)/浸漬前のモールドの質量}×100
【0113】
(塗布乾燥後の外観確認)
離型処理溶液として、モールド離型剤の0.1質量%イソプロピルアルコール溶液を調製した。ついで、モールドに離型処理溶液をディップコートし、乾燥後のモールド表面を観察した。
○:液ダレ跡などが無く、表面が均一にコーティングされた。
×:液ダレ跡や白化などが認められる。
【0114】
(離型剤のSP値)
モールド離型剤として使用したリン酸エステル化合物のSP値の計算はFedors法によって実施した。
【0115】
以上の結果を表1に示す。
【0116】
(離型性)
1つのモールドで後述する転写試験を繰り返し行い、離型時の剥離力およびモールドの表面への樹脂付着を評価した。剥離力はJIS Z0237記載の90°引き剥がし法に準拠して測定し、剥離力が30N/mより大きい場合に離型性×とした。
○:剥離力が小さく容易に離型でき、かつ、モールドへの樹脂付着がない。
×:剥離力が大きい、または、モールドへの樹脂付着が認められる。
【0117】
(転写試験)
モールドの微細凹凸構造が形成された側に10μLの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を滴下し、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す。)フィルムを被せた後、50Nの荷重を印加するとともに、UV照射機(高圧水銀ランプ:積算光量1100mJ/cm)によって硬化を行った。ついで、PETフィルムごと硬化樹脂層をモールドから離型することによりPETフィルムの表面に微細凹凸構造を転写した物品を得た。
【0118】
(水接触角)
接触角測定装置(協和界面科学社製、DM301)を用い、物品の微細凹凸構造が形成された側の表面に、1μLの水を滴下した後、滴下の3秒後から1秒間隔で水接触角を5秒間測定し、平均値を求めた。さらに、水を滴下する位置を変えて同様の操作を3回行い、計3回の平均値を算出した。
【0119】
(反射率スペクトルの安定化回数)
物品の微細凹凸構造が形成されていない側の表面を粗面化した後、つや消し黒色に塗ったサンプルについて、分光光度計(日立製作所社製、U−4000)を用い、入射角5°、波長380〜780nmの範囲で硬化樹脂層の表面の反射率スペクトルを測定した。
微細凹凸構造の反射率スペクトルは、微細凹凸構造の凹凸高さや凹凸の断面形状が変化すると形が変化することが一般的に知られている。よって、転写回数による反射率スペクトルの変化が小さく、少ない転写回数で反射率スペクトルが安定することが好ましい。
物品について、測定点を変えながら3箇所の反射率スペクトルを測定し、その平均を算出した。転写回数によって反射率スペクトルが変化しなくなった回数を、反射率スペクトルの安定化回数とした。
【0120】
〔調製例〕
重合性化合物100質量%に対して以下に示す割合で各成分を混合し、ベース組成物Aを調製した。
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、NKエステル A−DPH);25質量%、
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート(第一工業製薬社製、ニューフロンティア PET−3);25質量%、
DPEA−12:EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬社製、カヤラッド DPEA−12);25質量%、
PEGDA−14EO:ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業社製、NKエステル A−600);25質量%、
IRGACURE 184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、IRGACURE 184);1.0質量%、
IRGACURE 819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、IRGACURE 819);0.5質量%。
【0121】
〔製造例〕
50mm×50mm×厚さ0.3mmのアルミニウム板(純度99.99%)を、過塩素酸/エタノール混合溶液(1/4体積比)中で電解研磨しものを用意した。
工程(a):
該アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で6時間陽極酸化を行った。
工程(b):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に3時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
工程(c):
該アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
【0122】
工程(d):
酸化皮膜が形成されたアルミニウム板を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った。
工程(e):
該アルミニウム板について、0.3Mシュウ酸水溶液中、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
【0123】
工程(f):
前記工程(d)および工程(e)を合計で5回繰り返し、細孔の平均間隔(周期):100nm、深さ:230nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成されたモールドaを得た。
【0124】
工程(g):
シャワーを用いてモールドaの表面のリン酸水溶液を軽く洗い流した後、モールドaを流水中に10分間浸漬した。
工程(h):
モールドaにエアーガンからエアーを吹き付け、モールドaの表面に付着した水滴を除去した。
【0125】
〔実施例1〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製、式(1)のR=炭素数12〜15のアルキル基、R=炭素数2のアルキレン基、n=2〜3、m=2)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.1質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成した。
モールド離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)をイソプロピルアルコールに溶解して、モールド離型剤の濃度が0.1質量%である離型処理溶液を調製した。
モールドaを離型処理溶液に10分間浸漬した後、ゆっくり引き上げ、6時間以上静置して離型処理溶液を乾燥させた。
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて前記転写試験を行い、離型性を評価した。また、得られた物品について、水接触角、反射率スペクトルの安定化回数を測定した。結果を表2に示す。
【0126】
〔実施例2〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.5質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)をイソプロピルアルコールに溶解して、モールド離型剤の濃度が0.02質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0127】
〔実施例3〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.02質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)をイソプロピルアルコールに溶解して、モールド離型剤の濃度が1.0質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0128】
〔実施例4〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.1質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製、式(1)のR=炭素数12〜15のアルキル基、R=炭素数2のアルキレン基、n=2〜3、m=8)を水に溶解して、モールド離型剤の濃度が0.1質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0129】
〔実施例5〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.02質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を水に溶解して、モールド離型剤の濃度が0.02質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0130】
〔実施例6〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−2(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.5質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を水に溶解して、モールド離型剤の濃度が1.0質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0131】
〔実施例7〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.1質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を水に溶解して、モールド離型剤の濃度が0.1質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0132】
〔実施例8〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.02質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を水に溶解して、モールド離型剤の濃度が0.02質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0133】
〔実施例9〕
ベース組成物Aに、内部離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を、重合性化合物の100質量%に対して内部離型剤が0.5質量%となるように添加して活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を完成させた。
モールド離型剤としてTDP−8(日光ケミカルズ社製)を水に溶解して、モールド離型剤の濃度が1.0質量%である離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0134】
〔比較例1〕
モールドの離型処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして評価を行った。1回目の転写で離型不良を生じてしまい、評価できる物品を得ることができなかった。評価結果を表3に示す。
【0135】
〔比較例2〕
ベース組成物Aに内部離型剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして評価を行った。1回目の転写は可能であったが、5回目の転写で離型不良を生じ、連続転写性が劣ることが分かった。評価結果を表3に示す。
【0136】
〔比較例3〕
モールド離型剤として含フッ素シラン化合物であるオプツールDSX(ダイキン工業社製)の0.1質量%を、パーフルオロポリエーテル系溶媒であるオプツールHD−ZV(ダイキン工業社製)に溶解して離型処理溶液を調製した。
以降、実施例1と同様にしてモールドの離型処理を行い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表3に示す。
離型性については問題なかったが、モールドの微細凹凸構造が転写されたフィルムの表面は、オプツールDSXの影響で接触角が高く、100回転写時点でも徐々に接触角が低下していく途中であった。また、反射率スペクトルについても徐々に変化し続け、100回転写時点でも変化は続いていた。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
このように、実施例1〜9では、内部離型剤として(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用い、かつモールド離型剤として(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物を含む離型処理溶液を用いて離型処理を行ったことで、良好な離型性を実現し、少ない転写回数から安定した表面特性および光学特性を有する物品を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法は、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品の効率的な量産にとって有用である。
【符号の説明】
【0142】
14 酸化皮膜(陽極酸化アルミナ)
18 モールド
20 ロール状モールド
38 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物
40 物品
42 フィルム(基材)
44 硬化樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程(I)および(II)を有し、下記モールド離型剤と下記内部離型剤とのSP値の差が2.0以下であることを特徴とする、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法。
(I)モールド離型剤を含む離型処理溶液で、陽極酸化アルミナからなる微細凹凸構造を表面に有するモールド表面を被覆する工程。
(II)工程(I)の後、重合性化合物と重合開始剤と内部離型剤とを含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を、前記モールドと基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させて、前記微細凹凸構造が転写された硬化樹脂層を前記基材の表面に形成し、微細凹凸構造を表面に有する物品を得る工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−33287(P2013−33287A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242773(P2012−242773)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2012−528965(P2012−528965)の分割
【原出願日】平成24年5月25日(2012.5.25)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】