微細孔検査装置及び微細孔検査方法

【課題】短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができる微細孔検査装置を提供する。
【解決手段】筐体110と、筐体110の一端面の側に設置され、低周波音を出力するスピーカー120と、低周波音に反応して振動板132が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホン130と、筐体110の一端面とは反対側に設けられ、マイクロホン取り付け面150aを有するとともに部品載置面150bを有し、かつ、振動板132が振動することにより生じる空気振動を通過させる空気通過孔151を有する仕切り部材150とを有し、微細孔141が空気通過孔151に連通するように部品140を部品載置面150bに載置した状態でスピーカー120から低周波音を出力させることによりマイクロホン130から空気通過孔151を通過した空気が微細孔141を通過する際の空気の流量に依存した信号を電気信号として出力する。
【解決手段】筐体110と、筐体110の一端面の側に設置され、低周波音を出力するスピーカー120と、低周波音に反応して振動板132が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホン130と、筐体110の一端面とは反対側に設けられ、マイクロホン取り付け面150aを有するとともに部品載置面150bを有し、かつ、振動板132が振動することにより生じる空気振動を通過させる空気通過孔151を有する仕切り部材150とを有し、微細孔141が空気通過孔151に連通するように部品140を部品載置面150bに載置した状態でスピーカー120から低周波音を出力させることによりマイクロホン130から空気通過孔151を通過した空気が微細孔141を通過する際の空気の流量に依存した信号を電気信号として出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細孔を検査するための微細孔検査装置及び微細孔検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細孔が形成された部品は幅広い分野で使用されている。例えば、COガスセンサーのように特定のガスを検知するガスセンサーにおいても、微細孔が形成された部品が使用されている。
【0003】
図11は、COガスセンサー900を説明するために示す図である。なお、図11(a)は、COガスセンサー900の内部構造を模式的に示す断面図であり、図11(b)はCOガスセンサー900に用いられている拡散制御板923を取り出して示す拡大斜視図である。
【0004】
COガスセンサー900は、図11に示すように、導電性部材でなる円筒形状の筐体910と、筐体910の一端側(上端側とする。)に設けられたガス感知部920とを有している。
【0005】
筐体910は内部に空間部を有しており、当該空間部には蒸留水930が所定量だけ貯留されている。ガス感知部920は、活性炭フィルター921が内部に充填されているセンサーキャップ922と、ステンレスなど所定の剛性を有する部材でなる拡散制御板923と、2枚のパッキングレイヤー924の間に挟み込まれた膜−電極接合体と925と、ステンレスなどでなるワッシャー926とを有し、これらが積層された状態となっている。活性炭フィルター921は、検知対象となるCOガス以外の雑ガスに対する感度を軽減させるためのものである。
【0006】
センサーキャップ922には、気体を取り込む気体取り込み孔922aが形成され、何らかの原因で例えば大気中にCOガスが存在した場合、当該COガスは気体取り込み孔922aからCOガスセンサー900内に侵入するようになっている。また、センサーキャップ922の下端側には流体流通孔927が設けられ、ワッシャー926にも流体流通孔928が設けられている。
【0007】
拡散制御板923は、外径が8.5mm程度で、厚みが100μm程度の円盤状をなし、中心部には微細孔929が設けられている。このような構成の拡散制御板923は、大気中からのCOガスを膜−電極接合体925に送り込むための機能と、筐体910内に貯留されている蒸留水930によって発生する水蒸気の拡散を制御する機能とを有するものである。このため、拡散制御板923に形成されている微細孔929は高い精度が要求され、その精度はCOガスセンサーとしての性能に大きな影響を与える。
【0008】
このように構成されたCOガスセンサー900は、膜−電極接合体925が蒸留水から発生する水蒸気によって常に湿った状態あり、この状態で、COガスがガス取り込み孔922aからセンサーキャップ922内に入ってくると、当該COガスは、センサーキャップ922の下端面に設けられた流体流通孔927を通過し、さらに、拡散制御板923に形成された微細孔929を通過して膜−電極接合体925に達する。そして、膜−電極接合体925に含まれる水とCOとが化学反応を起こすことにより微細な電流が流れ、その電流を出力する。
【0009】
なお、このようなCOガスセンサー900は、図示しないCOガス検知装置に搭載されることによって、当該COガス検知装置はCOガス検知機能を有するものとなる。すなわち、図11に示すようなCOガスセンサー900をCOガス検知装置に搭載することにより、COガスセンサー900から出力される電流が所定の値となった場合には、一定濃度のCOガスを検知したとして、警報音を発したり、ガスの供給を自動停止したりといった動作を行うことが可能となる。
【0010】
このようなCOガスセンサー900を搭載したCOガス検知装置は、測定対象となるCOガスが人体に重大な悪影響を及ぼすことから、高精度なガス検知動作を行う必要がある。このため、COガスセンサー900の拡散制御板923に形成されている微細孔929は高い精度が要求される。例えば、微細孔929として適正とされる孔径が仮に100μmであったとすると、微細孔929の孔径の許容範囲は「100μm±5μm」というような高い精度が要求される。そこで、このような高精度な微細孔929が形成されている拡散制御板923を製造する際には、プレス加工などによって穿孔された微細孔929の適否、すなわち微細孔929の孔径が上記した許容範囲に収まるか否かを検査する必要がある。
【0011】
微細孔929の適否を検査するには、孔径を測定して、その測定結果に基づいて、当該微細孔929の適否を判定することが一般的に行われている。微細孔929の孔径を測定する装置は従来から種々存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
特許文献1に開示されている孔径測定装置(以下、従来の孔径測定装置という。)は、微細孔を有するダイスの孔径を測定する装置であるが、微細孔の孔径を測定するという観点では、上記した拡散制御板923に形成されている微細孔929の孔径を測定するということと共通する。従来の孔径測定装置は、ダイスの孔を顕微鏡の拡大画像として取得し、取得した拡大画像を画像処理することによって孔径を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−294619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の孔径測定装置は、顕微鏡の拡大画像を取得して、取得した拡大画像を画像処理して孔径を測定するといった工程を行う必要があるため、測定に時間がかかるといった課題がある。特に、COガスセンサー900に用いられる拡散制御板923においては、拡散制御板923を全数検査する必要があるため、個々の拡散制御板を短時間で測定可能であることが要求され、可能であれば、拡散制御板の製造工程の流れの中で孔径の測定を行って適否の判定を行うことが要求される。
【0015】
一方、上記した従来の孔径測定装置によって、仮に、高精度な孔径が測定できたとしても、COガスセンサー900に用いられる拡散制御板923として使用するには、さらなる課題がある。すなわち、微細孔が例えばプレス加工によって形成された場合、打ち抜き方向にバリが生じることが多い。このため、部品の表側と裏側とでは微細孔の孔径が異なったものとなる場合も多く、また、バリは打ち抜き方向だけではなく、微細孔内に存在する場合もある。
【0016】
打ち抜き方向にバリが存在することによって、拡散制御板923の表側と裏側とでは微細孔929の孔径が異なったものとなると、表側の孔径(表孔径という。)と裏側の孔径(裏孔径という。)とをそれぞれ測定する必要があり、測定に多くの時間を要する。なお、この場合、表孔径及び裏孔径のいずれかが許容範囲から外れていれば、その段階で当該微細孔は不適合であると判定せざるをえず、当該拡散制御板923は不適合品(NG品)として扱われてしまう。このため、拡散制御板923の製造工程における歩留まりが悪く、生産効率が低くなってしまうといった課題もある。
【0017】
しかしながら、表孔径及び裏孔径のいずれかがわずかに外れていても、当該拡散制御板を上記したCOガスセンサーの拡散制御板として用いて、実際にCOガス検知試験を行うと、適正なCOガス検知動作を行う場合もある。このような拡散制御板についても孔径のみの検査では上記したようにNG品と判定される。
【0018】
また、バリが微細孔内に存在していると、拡散制御板の表孔径及び裏孔径を測定しただけでは、当該微細孔929が本当に適正なものであるか否かは判定できない場合もある。例えば、拡散制御板の表孔径及び裏孔径を測定した結果、適合品と判定された場合であっても、当該拡散制御板を実際に上記したようなCOガスセンサーに組み込んでCOガス検知試験を行ったところ、適正な検査が行えなかったということもあり得る。
【0019】
このように、従来の孔径測定装置を用いて微細孔929の孔径を測定し、その測定結果に基づいて微細孔929の検査を行った場合、個々の部品(例えば、拡散制御板)に形成されている微細孔929を短時間で検査することができず、また、孔径のみによる検査となってしまうため、実情に即した検査結果が得られないといった課題がある。
【0020】
なお、このような課題は、COガスセンサーなどのガスセンサーに用いられる部品の微細孔を検査する場合のみに存在する課題ではなく、微細孔が形成されている部品(例えば、車載用の燃料噴射ノズル、マイクロホンフィルターなどの各種の部品)の微細孔を検査する場合の殆ど全てに存在する課題である。
【0021】
そこで本発明は、短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができる微細孔検査装置及び微細孔検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記した目的を達成するためには、どのような検査を行えばよいかを精査した。その結果、微細孔929の適否は、微細孔929の孔径で判断するよりも微細孔929の容積によって判断する方が好結果を得ることができるという知見を得た。一例として、微細孔が形成されている部品が上記したようなCOガスセンサーの拡散制御板である場合には、上記したように、微細孔の表孔径及び裏孔径のいずれかが許容範囲からわずかに外れていても、当該拡散制御板をCOガスセンサーに組み込んでCOガスの検知試験を行うと、適正な検知動作を行う場合もある。これは、微細孔の容積が適正な容積となっていれば、適正な検知動作を行うからである。
【0023】
このことから、微細孔の適否は、微細孔の孔径で判断するよりも微細孔の容積によって判断する方が好結果を得ることができる。なお、微細孔の容積は微細孔に流体を流したときの流量で表すことができる。このため、微細孔を流れる流体の流量に基づくパラメーターを取得して、取得したパラメーターに基づいて当該微細孔の適否を判断することができる。ただし、流体として例えば液体や気体などを流してその流量を測定するといった方法では、大掛かりな設備や測定に多くの時間を費やすといった課題がある。そこで、本発明者は種々の実験を行った結果、音響技術を用いることによって流体の流量を表すパラメーターを得られることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0024】
[1]すなわち、本発明の微細孔検査装置は、部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査装置であって、内部に空間部を有するほぼ密閉型の筐体と、前記筐体の内部における一端面の側に設置され、低周波信号によって低周波音を出力するスピーカーと、前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンと、前記筐体の内部における前記一端面とは反対側に設けられ、前記マイクロホンを前記スピーカーと対向するように取り付けるマイクロホン取り付け面を有するとともに、前記マイクロホン取り付け面とは反対側の面に前記部品を載置する部品載置面を有し、かつ、前記振動板が振動することによって生じる空気振動を前記部品載置面の側に通過させる空気通過孔を有する仕切り部材とを有し、前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする。
【0025】
本発明の微細孔検査装置によれば、微細孔の適否の判定を孔径で行うのではなく、微細孔の容積すなわち流体の流量を表すパラメーターを電気信号として取得して、取得した電気信号によって、微細孔の適否を判定するようにしている。また、本発明の微細孔検査装置においては、スピーカーとマイクロホンとによる音響技術を用いて、微細孔の容積すなわち流体の流量を表すパラメーターを電気信号として取得している。このため、大掛かりな装置を必要することなく、かつ、短時間での検査が可能となる。なお、電気信号は例えば電圧値である。
【0026】
このように、本発明の微細孔検査装置によれば、微細孔の容積すなわち流体の流量を表すパラメーターによって、微細孔の適否の判定を行っているため、例えば、微細孔の断面がテーパー状となっていたり、バリが生じていたりしても、実情に即した検査結果を得ることができる。
【0027】
なお、この明細書において、低周波音というのは、1Hz〜100KHzの範囲の音を指すものとするが、本発明において使用する低周波は、1Hz〜150Hzに設定することが好ましく、より好ましくは、1Hz〜20Hzである。
【0028】
[2]本発明の微細孔検査装置においては、前記スピーカーは、当該スピーカーの背面側と前記筐体の内部における一端面との間に第2空間部が形成されるように設置され、かつ、前記第2空間部の一部を前記筐体の外部に連通させる連通孔が前記筐体に形成されていることが好ましい。
【0029】
このような構造とすることにより、スピーカーのダイヤフラムの動きがより活発となり、より大きな音を発生することができるようになる。これによって、電気信号を高い分解能で出力することができるため、微細孔の適否の判定をより高精度に行うことができる。
【0030】
[3]本発明の微細孔検査装置においては、前記マイクロホンから出力される電気信号の値を表示する電気信号表示部をさらに有することが好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、微細孔の適否の判定を電気信号表示部に表示される数値により判定することがき、容易かつ適切に微細孔の適否を判定することができる。
【0032】
[4]本発明の微細孔検査装置においては、前記部品は、特定の気体を検知するための気体センサーにおいて用いられる部品であって、当該部品に形成されている微細孔は、気体の流量を一定に保持するため気体通過孔として用いられることが好ましい。
【0033】
これは、当該部品を例えば気体センサーの拡散制御板として用いる場合を想定したものであり、気体センサーにおいては、拡散制御板に形成されている微細孔を通過する気体の流通量が適正であるか否かということが当該気体センサーの性能に大きな影響を与える。このため、本発明の微細孔検査装置は、このような拡散制御板に形成されている微細孔の検査を行う際の検査装置として最適なものとなる。
【0034】
[5]本発明の微細孔検査装置においては、異なった流体流量を有する微細孔が形成されている複数種類の部品をそれぞれサンプルとし、当該サンプルを個々のサンプルごとに前記気体センサーに取り付けて、当該気体センサーによって特定の気体を検知する気体検知試験を行い、当該気体センサーが適正な気体検知動作を行ったときのサンプルによって得られる電気信号の値を予め取得しておくことが好ましい。
【0035】
このように、気体センサーが適切な気体検知動作と、マイクロホンから出力される電気信号の値(電気信号値)とを対応付けておくことにより、マイクロホンから得られる電気信号値から容易に当該微細孔の適否を判定することができる。なお、適正な検知動作を行ったときの電気信号値に許容範囲があれば、その許容範囲を設定しておくことも可能であり、この場合、マイクロホンから出力された電気信号値が許容範囲であれば、当該微細孔は適合品であると判定することができる。
【0036】
[6]本発明の微細孔検査装置においては、前記気体は一酸化炭素ガスであって、前記気体センサーは一酸化炭素ガスセンサーであることが好ましい。
【0037】
このように一酸化炭素ガスを検知する一酸化炭素ガスセンサーで(COガスセンサーという。)においては、一酸化炭素(CO)ガスが人体に悪影響を及ぼすことから、当該COガスセンサーに用いられる部品は精度が要求される、特に、気体の流量を一定量に保持するための拡散制御板に形成される微細孔は精度が要求される。このような拡散制御板に形成されている微細孔の検査を本発明の微細孔検査装置で行うことにより、微細孔の検査を適切に行うことができる。しかも、発明の微細孔検査装置は個々の微細孔を高速に検査できることから、微細孔が形成されている部品を全数検査することも可能となる。
【0038】
[7]本発明の微細孔検査方法は、部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査方法であって、ほぼ密閉された筐体の内部における一端面の側に低周波音を出力するスピーカーを設置するとともに、空気通過孔を有する仕切り部材を前記筐体の他端面の側に設け、前記仕切り部材の前記スピーカーと対向する側の面をマイクロホン取り付け面とし、当該マイクロホン取り付け面とは反対側の面を部品載置面として、前記マイクロホン取り付け面には、前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンを設置し、前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記仕切り部材の前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする。
【0039】
本発明の微細孔検査方法においても上記した本発明の微細孔検査装置と同様の効果を得ることができる。なお、本発明の微細孔検査方法においても、上記した本発明の微細孔検査装置が有する各特徴を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを説明するために示す図である。
【図2】試験に用いた複数のサンプルの一覧を示す図である。
【図3】プレス加工品の2つのサンプルの微細孔をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。
【図4】放電加工品の9種類のサンプルのうちの2つのサンプルの微細孔をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。
【図5】図4において示した各サンプルにおいて得られた電圧値を示す図である。
【図6】電圧値が微細孔141の容積(流体の流量)に依存することを説明するために示す図である。
【図7】微細孔141の表孔径と裏孔径とが異なる場合における部品140の載置の仕方によって得られる電圧値を示す図である。
【図8】実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて測定可能な電圧値の分解能について説明するために示す図である。
【図9】実施形態2に係る微細孔検査装置100Bを説明するために示す図である。
【図10】放電加工品の各サンプルにおける表裏平均孔径に対する電圧値を実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと実施形態2に係る微細孔検査装置100Bとを比較して示す図である。
【図11】COガスセンサー900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0042】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの構成
図1は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを説明するために示す図である。なお、図1(a)は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの内部構成を模式的に示す断面図であり、図1(b)は実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおけるマイクロホン130とその周辺部を拡大して示す図である。
【0043】
実施形態1に係る微細孔検査装置100Aは、図1に示すように、内部に2つの空間部(後述する。)を有するほぼ密閉された円筒形状の筐体110と、筐体110の内部における一方の端面の側(底面112の側とする。)に設置され、低周波音を筐体110内部の上方側に向けて発生するスピーカー120と、筐体110の内部で、かつ、スピーカー120と対向する位置に設けられているマイクロホン130と、マイクロホン130を取り付けるためのマイクロホン取り付け面150aを有するとともに、微細孔141が形成されている部品140を載せる部品載置面150bを有する仕切り部材150と、仕切り部材150の部品載置面150bに部品140を載せたときに当該部品140を押さえる役目と筐体110の蓋の役目とをなす蓋体160と、スピーカー120に低周波信号を与える低周波発振器170と、マイクロホン130から出力される電気信号の値(電圧値とする。)を表示する電気信号表示部(電子電圧計180とする。)とを有している。なお、部品140は、図11に示すようなCOガスセンサー900に用いられる拡散制御板923と同様の部品であるとする。
【0044】
スピーカー120は、筐体110内において底面112の側に取り付けられているが、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、底面112に接触させた状態で取り付けるのではなく、底面112から所定の間隔を置いた位置にダイヤフラム120aが上向きとなるように取りつける。
【0045】
スピーカー120をこのような位置に取り付けるために、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、筐体110の底面112よりも少し上方に鍔部113が筐体110の内部側壁114の全周に渡って突設されており、当該鍔部113の中央部にスピーカー120を取り付けるようにしている。
【0046】
これにより、筐体110の内部には、2つの空間部(第1空間部111a及び第2空間部111b)が形成される。第1空間部111aは、スピーカー120と仕切り部材150との間に形成される空間部である。また、第2空間部111bはスピーカー120と筐体110の底面112との間に形成される空間部である。なお、筐体110には、第2空間部111bを筐体110の外部に連通させるための連通孔115が形成されている。このような第2空間部111bが形成されていることにより、スピーカー120の背面側が開放された状態となる。なお、スピーカー120の取り付け位置は、筐体110の底面112からわずかに上方であるため、第2空間部111bは第1空間部111aに比べて、容積は小さいものとなっている。
【0047】
マイクロホン130は、例えば、ダイナミック型のマイクロホンを用いることができ、マイクロホン筐体131の内部には振動板132、コイル133、磁石134などが設けられている。また、マイクロホン筐体131には、スピーカー120が発する低周波音を取り入れるための音入力孔131aが複数箇所に設けられている。
【0048】
このように構成されたマイクロホン130は、仕切り部材150の下端面(マイクロホン取り付け面150a)にスピーカー120と対向するように取り付けられている。また、マイクロホン130は、部品140を仕切り部材150の上端面(部品載置面150b)に載置した場合には、マイクロホン130の振動板132が仕切り部材150を介して部品140と対向するような配置となる。
【0049】
なお、部品140は図11(b)に示されている拡散制御板923と同様の構成を有しているものであるとする。すなわち、ステンレスなどからなり、外径が8.5mm程度で、厚みが100μm程度の円盤状をなし、その中央部に微細孔(実施形態1においては微細孔141)が形成されている。
【0050】
また、仕切り部材150には、部品140に形成されている微細孔141よりもわずかに大きい径を有する空気通過孔151が形成されている。そして、仕切り部材150の部品載置面150bの所定位置に部品140を載置した場合、当該部品140に形成されている微細孔141と仕切り部材150に形成されている空気通過孔151とが連通するようになっている。なお、仕切り部材150には、部品140を所定位置に置くことができるように位置決め部152が設けられている。この位置決め部152は、例えば、部品140の形状に合わせた凹状の窪みなどでよい。このような位置決め部152を設けることにより、当該位置決め部152に部品140を載置すれば、部品140に形成されている微細孔141と仕切り部材150に形成されている空気通過孔151とが自動的に適正な位置関係となる。
【0051】
蓋体160は、その中央部に部品140の外径(8.5mm程度)よりもわずかに小さい径を有する円形孔161が形成されている。これにより、蓋体160が部品140を抑える際には、部品140の周縁部のみを押さえる状態となる。
【0052】
低周波発振器170は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、11Hzの低周波信号を発振するものであるとする。それによって、スピーカー120は11Hzの低周波音を発する。なお、スピーカー120からは、可能な限り低い周波数の音を発するようにすることが好ましい。実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて、11Hzの低周波音としたのは、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて使用したスピーカー120及びマイクロホン130の特性上の下限値であったからである。
【0053】
また、マイクロホン130は高分解能型のものであることが好ましい。具体的には、オーディオ用イヤホンに使用されている軽量で高感度な部品(振動板、コイル、磁石など)を用いてマイクロホン130を構成した。これにより、マイクロホン130は、スピーカー120から出力される11Hzの低周波音を捉えることができた。
【0054】
電子電圧計180は、スピーカー120が発する低周波音をマイクロホンで捉えた際に、当該マイクロホンか130ら出力される電圧値(mV)を表示するものである。
【0055】
2.実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いた微細孔141の検査方法
次に、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いて微細孔141を検査する微細孔141の検査方法について説明する。まず、微細孔141が形成されている部品140を部品載置面150bの位置決め部152に載置する。このように、部品140を部品載置面150bの位置決め部152に載置することによって、仕切り部材150の空気通過孔151と微細孔141とが連通する状態となる。
【0056】
この状態で、スピーカー120から11Hzの低周波音を発振させると、その低周波音は、空気振動としてマイクロホン130に伝達され、マイクロホン130内に設けられている振動板132が振動し、コイル133と磁石134による電磁誘導が生じ、その電磁誘導によって発生する電圧値が電圧計180に表示される。
【0057】
このとき、マイクロホン130の振動板132が振動することによる空気の振動は、仕切り部材150の空気通過孔151から微細孔141を通過して筐体110の外部に抜けて行く。このとき、微細孔141を通過する空気の量は、マイクロホン130から出力される電圧に影響を与えて、マイクロホン130から出力される電圧値に微小な変化が生じる。換言すれば、マイクロホン130から出力される電圧値は、微細孔141を通過する空気の量に影響を受けて微小な変化が生じる。
【0058】
すなわち、微細孔141の容積すなわち流体の流量に依存して、微細孔141を通過する空気の量が変化し、それによって、マイクロホン130から出力される電圧に微小な変化が生じて、電圧計180に表示される電圧値が変化することとなる。換言すれば、電圧計180に表示される電圧値の変化は、微細孔141の容積すなわち流体の流量の変化を表すものとなる。
【0059】
このことから電圧計180に表示される電圧値に基づいて微細孔141の容積すなわち流体の流量を求めることができる。したがって、当該部品140を搭載する装置の種類に応じて、電圧計180に表示される電圧値と、当該部品140を搭載する装置が行う動作との相関をとっておくことにより、電圧計180に表示される電圧値から当該部品140に形成されている微細孔141の適否を判定することができる。
【0060】
例えば、部品140が上記したようなCOガスセンサー900(図11参照。)の拡散制御板923である場合には、電圧計180に表示される電圧値と、COガスセンサー900のCOガス検知動作との相関をとるための試験を繰り返し行い、適正なCOガス検知動作を行ったときの電圧値を求めておく。なお、この場合、適正なCOガス検知動作を行ったときの電圧値に許容範囲があれば、その許容範囲を設定しておく。これにより、個々の部品140に形成されている微細孔141を検査する場合、電圧計180に表示される電圧値から当該微細孔141の適否を判定することができる。この場合、電圧値は、微細孔141の容積すなわち流体の流量に依存した値となっているため、微細孔141の表孔径及び裏孔径に差が生じている場合であっても、適合品とされる場合もある。このため、孔径によって適否を判定する場合に比べて、部品の製造工程における歩留まりを向上させることができる。
【0061】
また、バリが微細孔141の内部に存在しているような場合においては、部品の表側孔径及び裏側孔径を測定しただけでは、当該微細孔929が本当に適正なものであるか否かは判定できない場合もあるが、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aによれば、微細孔141の容積すなわち流体の流量によって判定するため、実情に即した適正な検査結果が得られる。
【0062】
なお、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、スピーカー120からは常に低周波音を発振させた状態で、部品を順次、部品載置面150bに載置して当該部品を検査することも可能であり、これにより、部品製造工程の流れの中で、部品を次々と検査することができる。
【0063】
3.実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いた試験例
次に、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いた試験例について説明する。ここでは、微細孔141が形成された部品140を複数枚用意し、当該複数枚の部品をサンプルとして各サンプルに形成されている微細孔141を検査するといった試験を行った。
【0064】
図2は、試験に用いた複数枚のサンプルの一覧を示す図である。ここでは、プレス加工によって実際に製造された2つの部品をサンプルとして用いるとともに、様々な孔径を有する部品を試験用のサンプルとして用意するために、放電加工によって9種類の孔径を有する部品をそれぞれ製造して、これら9種類の孔径を有するそれぞれの部品をサンプルとして用いた。
【0065】
図2において、プレス加工品によって実際に製造された2つの部品は、微細孔141の孔径の目標値を105μmとして製造したものであり、当該2つの部品に形成された各微細孔141の孔径に基づいて適否を判定した結果、適合品とされた部品をOKサンプルとし、微細孔141の孔径に基づいて適否を判定した結果、不適合品とされた部品をNGサンプルとしている。図2においては、OKサンプル及びNGサンプルそれぞれに形成されている微細孔141の表孔径d1と、裏孔径d2と、表孔径d1と、表裏平均孔径とが示されている。なお、表裏平均孔径は、表孔径d1と裏孔径d2との平均をとったものである。
【0066】
一方、放電加工品の9種類の孔径を有するサンプルは、微細孔141の孔径の目標値を50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、95μm、100μm、105μm、110μmとして製造したものであり、図2においては、各サンプ品に形成されている各微細孔141の表孔径d1と、裏孔径d2と、表裏平均孔径とが示されている。なお、これら9種類のサンプルを、「50μmサンプル」、「60μmサンプル」、「70μmサンプル」、・・・、「110μmサンプル」と呼ぶことにする。
【0067】
図3は、プレス加工品の2つの部品の微細孔141をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。なお、図3(a)はOKサンプルの微細孔141を示し、図3(b)はNGサンプルの微細孔を示している。図3において、黒く塗りつぶした部分が微細孔141である。また、図3(a)において右側に示す図は、微細孔141とその周辺部を断面として表わしたものであり、プレス加工による打ち抜き方向の下側にバリBが生じているため、表孔径d1と裏孔径d2は異なったものとなっている。このようなバリBは図3(b)においても生じるものである。
【0068】
また、図4は、放電加工品の9種類のサンプルのうちの2つのサンプルの微細孔141をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。図4(a)は50μmサンプルの微細孔141を示す図であり、図4(b)は110μmサンプルの微細孔141を示す図である。図4において、黒く塗りつぶした部分が微細孔141である。また、図4(a)において右側に示す図は、微細孔141とその周辺を断面として表わしたものであり、この場合、バリは生じていないが、テーパーが形成されているため、表孔径d1と裏孔径d2は異なったものとなっている。
【0069】
ここで、プレス加工品の2つのサンプル(OKサンプル、NGサンプル)について、微細孔141を孔径に基づいて適否を判断すると、例えば、105μmの目標値に対する許容範囲を±5μmとした場合、OKサンプルは、表孔径(104.47μm)及び裏孔径(109.758μm)のいずれもが、「105μm±5μm」をクリアしている。一方、NGサンプルは、表孔径(104.368μm)は「105μm±5μm」をクリアしているが、裏孔径(111.424μm)は「105μm±5μm」から外れている。このため、NGサンプルは不適合品(NG品)とされている。
【0070】
図5は、図2に示されている各サンプルにおいて得られた電圧値を示す図である。なお、図5は図2に示されている各サンプルごとの表孔径、裏孔径、表裏平均径に加えて、さらに、電圧値(mV)を各サンプルごとに付け加えたものである。
【0071】
図5によれば、プレス加工品のOKサンプルにおいて得られた電圧値は「1.41mV」であり、NGサンプルにおいて得られた電圧値も同じく「1.41mV」であった。ここで、「1.41mV」という電圧値を出力したサンプルをCOガスセンサーの拡散制御板として用いた場合に、適正なCOガス検知動作を行うことが、繰り返しのCOガス検知試験によって確かめられている場合には、OKサンプル及びNGサンプルの両方が、適合品であると判定されることとなる。これは、微細孔141の適否を孔径によって判定するのではなく、微細孔141の容積(流体の流量)によって判定したためである。すなわち、微細孔141の容積(流体の流量)が適正な値となっていれば、当該微細孔141は適切なCOガス検知動作を行うということである。
【0072】
このように、微細孔141の容積(流体の流量)によって判定することによって、孔径による検査で不適合品とされた部品であっても、実際には、適合品であると判定できるため、部品140の製造工程における歩留まりを向上させることができる。なお、この場合のNGサンプルは、孔径に基づいて不適合品とされたものであるが、適切なCOガス検知動作を行うことが確かめられているため、適合品であると判定して何ら差し支えのない部品である。
【0073】
図6は、電圧値が微細孔141の容積(流体の流量)に依存することを説明するために示す図である。図6において、横軸は図5示した各サンプルにおける微細孔141の孔径を表し、左側の縦軸は図5における表裏平均孔径を表し、右側の縦軸は電圧値を表している。
【0074】
図6において、プレス加工品は、OKサンプルとNGサンプルについて、それぞれの表裏平均孔径と当該表裏平均孔径における電圧値との関係している。一方、放電加工品は、110μmサンプル、105μmサンプル、100μmサンプルの3つのサンプルについて、それぞれの表裏平均孔径と当該表裏平均孔径における電圧値との関係している。
【0075】
ここで、プレス加工品の2つのサンプル(OKサンプル及びNGサンプル)の表裏平均孔径に近い表裏平均孔径を有する放電加工品の105μmサンプルについて考えると、プレス加工品のOKサンプル及びNGサンプルの電圧値はともに1.41mであり、放電加工品の105μmサンプルの電圧値は1.39mVである。このように表裏平均孔径が近い値であると、電圧値も同じか極めて近い値となる。微細孔141の表裏平均孔径は、当該微細孔141の容積の大きさを反映するものであるとも言えるため、電圧値は、微細孔の容積に依存していることがわかる。
【0076】
このことから、微細孔141の表孔径と裏孔径とを計測して、その平均孔径(表裏平均孔径)を求めて、求められた表裏平均孔径に基づいて微細孔の適否を判断すればよいということも言えるが、そうすると、個々の微細孔について表孔径と裏孔径とを求めたのちに、表裏平均孔径を求めるといった多くの手順を行う必要があり、また、プレス加工品の場合、バリが生じている場合もあるため、孔径(裏孔径)を正確に求めることが困難である。また、バリは微細孔141内にも生じている場合もある。このため、単に表裏平均孔径に基づいて微細孔141の適否を判断するというのは現実的な方法とは言えない。
【0077】
図7は、微細孔141の表孔径と裏孔径とが異なる場合における部品140の載置の仕方によって得られる電圧値を示す図である。図7において、横軸はプレス加工品の2つのサンプル(OKサンプル及びNGサンプル)と、放電加工品の9種類の各サンプルを表し、左側の縦軸はテーパー量を表している。なお、「テーパー量」というのは、この場合、「裏孔径(μm)−表孔径(μm)」によって得られた値であるとする。また、右側の縦軸は電圧値の差、すなわち、部品の表側を上向きとして部品載置面150bに載置した場合に得られた電圧値と部品の裏側を上向きとして部品載置面150bに載置した場合に得られた電圧値との差を表している。
【0078】
例えば、プレス加工品のNGサンプルにおいては、テーパー量(裏孔径から表孔径を差し引いた値)は、図2又は図5から、「111.424−104.368≒7」であり、表裏で大きな孔径差が存在している。このように、表裏で大きな孔径差が存在している場合、当該NGサンプルの表側が上向きとなるようにして、仕切り部材150の部品載置面150bに載置したときに得られた電圧値と、当該NGサンプルの裏側が上向きとなるようして、仕切り部材150の部品載置面150bに載置したときに得られた電圧値との差をとると、その差は、絶対値で表せば0.01mV程度である。
【0079】
また、放電加工品の各サンプルにおいても同様であり、この場合、テーパー量(裏孔径−表孔径)は各サンプルごとに所定の値が存在するが、どのサンプルにおいても、部品の向きによる電圧値の差は殆どゼロであった。
【0080】
このことから、部品140を表側が上向きとなるように部品載置面150bに載置しても、裏面が上向きとなるように部品載置面150bに載置しても、得られる電圧値に大きな差はないということが言える。これは、実際に部品を検査する場合、個々の部品を仕切り部材150の部品載置面150bに載置する際には、部品140の表裏を意識する必要がないことを意味している。このため、検査の高速化が図れる。
【0081】
図8は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて測定可能な電圧値の分解能について説明するために示す図である。なお、図8においては、放電加工品の各サンプルにおける表裏平均孔径に対する電圧値を示している。例えば、95μmサンプルの表裏平均孔径は98.56μm(図2又は図5参照。)であり、当該サンプルによって得られた電圧値は1.28mVであることを示し、また、100μmサンプルの表裏平均孔径は102.27μm(図2又は図5参照。)であり、当該サンプルによって得られた電圧値は1.34mVであるというように、各サンプルの表裏平均孔径に対する電圧値が示されている。
【0082】
図8からわかるように、表裏平均孔径が90μmを超えると電圧値の変化の度合いが特に大きくなる。例えば、表裏平均孔径が98.56μmのときの電圧値は1.28mVである。また、表裏平均孔径が102.27μmのときの電圧値は1.34mVである。また、表裏平均孔径が106.466μmのときの電圧値は1.39mVである。このように、微細孔の径が90μmを超えると、電圧値の変化の度合い大きくなるため、電圧値の分解能が大きいものとなる。この場合、サンプルの表裏平均孔径が90μm以上においては、表裏平均孔径が5μm異なると、電圧値がほぼ0.1mV変化する。これにより、例えば、100μmの孔径に対して誤差の許容範囲が±5μmの孔径についても高精度に測定可能となる。
【0083】
実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、各種の目標孔径に対応して用意された各サンプルにおいて、それぞれに対応する電圧値を出力することができるため、その電圧値に基づいて当該サンプルの適否を判定することができる。特に、目標孔径が90μm以上である場合には、電圧値を高い分解能で出力することができるため、より高精度な検査が可能となる。特に、部品140がCOガスセンサーの拡散制御板である場合には、100μmまたはその前後の孔径を有する微細孔を検査する場合が多いため、より高精度な検査が可能となる。なお、90μm未満の目標孔径に対応して用意された各サンプルにおいても、図8に示すように、一定以上の分解能で電圧値を出力することができる。このため、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、種々の孔径を有する微細孔の検査装置として用いることができる。
【0084】
実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて図8に示すような結果が得られたのは、筐体110の構造が図1に示すような構造となっていることによるものである。すなわち、図1に示すように、スピーカー120の背面側に空間部(第2空間部111b)を設けることにより、スピーカー120のダイヤフラム120aの動きがより活発となり、より大きな音を発生することができるようになったためである。また、スピーカー120を駆動する周波数を11Hzというような低い周波数に設定するとともに、マイクロホン130を高分解としたことによって図8に示すような好結果が得られた。
【0085】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bを説明するために示す図である。なお、図9は実施形態2に係る微細孔検査装置100Bの内部構成を模式的に示す断面図である。実施形態2に係る微細孔検査装置100Bの構成が実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの構成と異なるのは、スピーカー120の取り付け位置である。すなわち、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、スピーカー120は、筐体110の底面112に接触した状態で設置されている。なお、図9において図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0086】
なお、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおける検査手順は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様であるので、ここでは説明は省略する。
【0087】
実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、スピーカー120が筐体110の底面112に接触した状態で設置されているため、構造は実施形態1に係る微細孔検査装置100Aより単純なものとすることができるが、マイクロホン130から出力される電圧値の分解能は実施形態1に係る微細孔検査装置100Aに比べるとやや劣るものとなる。しかし、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、微細孔141の容積(流体の流量)を電圧値として出力することができ、当該電圧値に基づいて微細孔141の適否を判定することができる。これにより、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができるという目的は達成することができる。
【0088】
図10は、放電加工品の各サンプルにおける表裏平均孔径に対する電圧値を実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと実施形態2に係る微細孔検査装置100Bとを比較して示す図である。図10(a),(b)において、実線で示す電圧値の変化は図8において示した電圧値の変化と同じものであり、破線で示す電圧値の変化は実施形態2に係る微細孔検査装置100Bによって得られた電圧値の変化を示している。
【0089】
また、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、放電加工品のサンプルを95μmサンプル、100μmサンプル、105μmサンプル、110μmサンプルの5種類のサンプルを用い、かつ、スピーカー120からは11Hzと、110Hzの2種類の低周波音をそれぞれ発生させて試験を行った。図10(a)の破線で示す電圧値の変化はスピーカー120から11Hzの低周波音を発生させた場合を示し、図10(b)の破線で示す電圧値の変化はスピーカー120から110Hzの低周波音を発生させた場合を示している。
【0090】
また、図10(a),(b)いずれの場合も、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおける電圧値の表示範囲(図10(a)、(b)にける右側の縦軸)は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの場合における電圧値の表示範囲に合わせて0.7mVとして表示している。
【0091】
実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、100μmサンプル、105μmサンプル、110μmサンプルの5種類のサンプルによる試験を行ったが、図10(a)、(b)に示すように、マイクロホン130から出力される電圧値の分解能は、これら5種類のサンプルで比較すると、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bは、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aに比べるとやや劣るものの、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、微細孔141の容積(流体の流量)を電圧値として出力することができ、当該電圧値に基づいて微細孔141の適否を判定することができる。これにより、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができるという目的は達成することができる。
【0092】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0093】
(1)上記各実施形態においては、COガスセンサーに用いられる部品としての拡散制御板の微細孔を検査する場合を例示したが、本発明の微細孔検査装置は、例えば、車載用の燃料噴射ノズル、マイクロホンフィルターなど、種々の部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査装置として用いることができる。
【0094】
(2)上記実施形態1においては、スピーカー120を11Hzの低周波信号で駆動する場合を例示したが、スピーカー120を駆動する低周波信号は11Hzに限られるものではなく、スピーカー120及びマイクロホン130の性能が許せば、スピーカーからは、より低周波の音を発生させるようにしてもよく、また、マイクロホンから所定の分解能を有する電圧を取り出すことができれば、11Hzよりも高い周波数であってもよい。
【0095】
(3)上記各実施形態においては、マイクロホン130から出力する電気信号値は電圧値としたが、電圧値に限られるものではなく、他の電気信号値としてもよい。
【0096】
(4)上記各実施形態において用いた微細孔検査装置100A,100Bの形状や構造も図1及び図9に示すものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0097】
(5)上記各実施形態においては、1つの部品に形成されている微細孔は1つである場合を例示したが、1つの部品に微細孔が複数個存在する場合にも適用することができる。また、微細孔の断面形状は円形(真円)である場合を例示したが、円形に限られるものではなく、例えば、楕円などであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
100A,100B・・・微細孔検査装置、110・・・筐体、111a・・・第1空間部、111b・・・第2空間部、112・・・底面、113・・・鍔部、114・・・内部側壁、115・・・連通孔、120・・・スピーカー、120a・・・ダイヤフラム、130・・・マイクロホン、131・・・マイクロホン筐体、132・・・ダイヤフラム、133…コイル、134・・・磁石、140・・・部品、141・・・微細孔、150・・・仕切り部材、150a・・・マイクロホン取り付け面、150b・・・部品載置面、151・・・空気通過孔、152・・・位置決め部、160・・・蓋体、170・・・低周波発振器、180・・・電子電圧計
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細孔を検査するための微細孔検査装置及び微細孔検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細孔が形成された部品は幅広い分野で使用されている。例えば、COガスセンサーのように特定のガスを検知するガスセンサーにおいても、微細孔が形成された部品が使用されている。
【0003】
図11は、COガスセンサー900を説明するために示す図である。なお、図11(a)は、COガスセンサー900の内部構造を模式的に示す断面図であり、図11(b)はCOガスセンサー900に用いられている拡散制御板923を取り出して示す拡大斜視図である。
【0004】
COガスセンサー900は、図11に示すように、導電性部材でなる円筒形状の筐体910と、筐体910の一端側(上端側とする。)に設けられたガス感知部920とを有している。
【0005】
筐体910は内部に空間部を有しており、当該空間部には蒸留水930が所定量だけ貯留されている。ガス感知部920は、活性炭フィルター921が内部に充填されているセンサーキャップ922と、ステンレスなど所定の剛性を有する部材でなる拡散制御板923と、2枚のパッキングレイヤー924の間に挟み込まれた膜−電極接合体と925と、ステンレスなどでなるワッシャー926とを有し、これらが積層された状態となっている。活性炭フィルター921は、検知対象となるCOガス以外の雑ガスに対する感度を軽減させるためのものである。
【0006】
センサーキャップ922には、気体を取り込む気体取り込み孔922aが形成され、何らかの原因で例えば大気中にCOガスが存在した場合、当該COガスは気体取り込み孔922aからCOガスセンサー900内に侵入するようになっている。また、センサーキャップ922の下端側には流体流通孔927が設けられ、ワッシャー926にも流体流通孔928が設けられている。
【0007】
拡散制御板923は、外径が8.5mm程度で、厚みが100μm程度の円盤状をなし、中心部には微細孔929が設けられている。このような構成の拡散制御板923は、大気中からのCOガスを膜−電極接合体925に送り込むための機能と、筐体910内に貯留されている蒸留水930によって発生する水蒸気の拡散を制御する機能とを有するものである。このため、拡散制御板923に形成されている微細孔929は高い精度が要求され、その精度はCOガスセンサーとしての性能に大きな影響を与える。
【0008】
このように構成されたCOガスセンサー900は、膜−電極接合体925が蒸留水から発生する水蒸気によって常に湿った状態あり、この状態で、COガスがガス取り込み孔922aからセンサーキャップ922内に入ってくると、当該COガスは、センサーキャップ922の下端面に設けられた流体流通孔927を通過し、さらに、拡散制御板923に形成された微細孔929を通過して膜−電極接合体925に達する。そして、膜−電極接合体925に含まれる水とCOとが化学反応を起こすことにより微細な電流が流れ、その電流を出力する。
【0009】
なお、このようなCOガスセンサー900は、図示しないCOガス検知装置に搭載されることによって、当該COガス検知装置はCOガス検知機能を有するものとなる。すなわち、図11に示すようなCOガスセンサー900をCOガス検知装置に搭載することにより、COガスセンサー900から出力される電流が所定の値となった場合には、一定濃度のCOガスを検知したとして、警報音を発したり、ガスの供給を自動停止したりといった動作を行うことが可能となる。
【0010】
このようなCOガスセンサー900を搭載したCOガス検知装置は、測定対象となるCOガスが人体に重大な悪影響を及ぼすことから、高精度なガス検知動作を行う必要がある。このため、COガスセンサー900の拡散制御板923に形成されている微細孔929は高い精度が要求される。例えば、微細孔929として適正とされる孔径が仮に100μmであったとすると、微細孔929の孔径の許容範囲は「100μm±5μm」というような高い精度が要求される。そこで、このような高精度な微細孔929が形成されている拡散制御板923を製造する際には、プレス加工などによって穿孔された微細孔929の適否、すなわち微細孔929の孔径が上記した許容範囲に収まるか否かを検査する必要がある。
【0011】
微細孔929の適否を検査するには、孔径を測定して、その測定結果に基づいて、当該微細孔929の適否を判定することが一般的に行われている。微細孔929の孔径を測定する装置は従来から種々存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【0012】
特許文献1に開示されている孔径測定装置(以下、従来の孔径測定装置という。)は、微細孔を有するダイスの孔径を測定する装置であるが、微細孔の孔径を測定するという観点では、上記した拡散制御板923に形成されている微細孔929の孔径を測定するということと共通する。従来の孔径測定装置は、ダイスの孔を顕微鏡の拡大画像として取得し、取得した拡大画像を画像処理することによって孔径を測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−294619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来の孔径測定装置は、顕微鏡の拡大画像を取得して、取得した拡大画像を画像処理して孔径を測定するといった工程を行う必要があるため、測定に時間がかかるといった課題がある。特に、COガスセンサー900に用いられる拡散制御板923においては、拡散制御板923を全数検査する必要があるため、個々の拡散制御板を短時間で測定可能であることが要求され、可能であれば、拡散制御板の製造工程の流れの中で孔径の測定を行って適否の判定を行うことが要求される。
【0015】
一方、上記した従来の孔径測定装置によって、仮に、高精度な孔径が測定できたとしても、COガスセンサー900に用いられる拡散制御板923として使用するには、さらなる課題がある。すなわち、微細孔が例えばプレス加工によって形成された場合、打ち抜き方向にバリが生じることが多い。このため、部品の表側と裏側とでは微細孔の孔径が異なったものとなる場合も多く、また、バリは打ち抜き方向だけではなく、微細孔内に存在する場合もある。
【0016】
打ち抜き方向にバリが存在することによって、拡散制御板923の表側と裏側とでは微細孔929の孔径が異なったものとなると、表側の孔径(表孔径という。)と裏側の孔径(裏孔径という。)とをそれぞれ測定する必要があり、測定に多くの時間を要する。なお、この場合、表孔径及び裏孔径のいずれかが許容範囲から外れていれば、その段階で当該微細孔は不適合であると判定せざるをえず、当該拡散制御板923は不適合品(NG品)として扱われてしまう。このため、拡散制御板923の製造工程における歩留まりが悪く、生産効率が低くなってしまうといった課題もある。
【0017】
しかしながら、表孔径及び裏孔径のいずれかがわずかに外れていても、当該拡散制御板を上記したCOガスセンサーの拡散制御板として用いて、実際にCOガス検知試験を行うと、適正なCOガス検知動作を行う場合もある。このような拡散制御板についても孔径のみの検査では上記したようにNG品と判定される。
【0018】
また、バリが微細孔内に存在していると、拡散制御板の表孔径及び裏孔径を測定しただけでは、当該微細孔929が本当に適正なものであるか否かは判定できない場合もある。例えば、拡散制御板の表孔径及び裏孔径を測定した結果、適合品と判定された場合であっても、当該拡散制御板を実際に上記したようなCOガスセンサーに組み込んでCOガス検知試験を行ったところ、適正な検査が行えなかったということもあり得る。
【0019】
このように、従来の孔径測定装置を用いて微細孔929の孔径を測定し、その測定結果に基づいて微細孔929の検査を行った場合、個々の部品(例えば、拡散制御板)に形成されている微細孔929を短時間で検査することができず、また、孔径のみによる検査となってしまうため、実情に即した検査結果が得られないといった課題がある。
【0020】
なお、このような課題は、COガスセンサーなどのガスセンサーに用いられる部品の微細孔を検査する場合のみに存在する課題ではなく、微細孔が形成されている部品(例えば、車載用の燃料噴射ノズル、マイクロホンフィルターなどの各種の部品)の微細孔を検査する場合の殆ど全てに存在する課題である。
【0021】
そこで本発明は、短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができる微細孔検査装置及び微細孔検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者は、上記した目的を達成するためには、どのような検査を行えばよいかを精査した。その結果、微細孔929の適否は、微細孔929の孔径で判断するよりも微細孔929の容積によって判断する方が好結果を得ることができるという知見を得た。一例として、微細孔が形成されている部品が上記したようなCOガスセンサーの拡散制御板である場合には、上記したように、微細孔の表孔径及び裏孔径のいずれかが許容範囲からわずかに外れていても、当該拡散制御板をCOガスセンサーに組み込んでCOガスの検知試験を行うと、適正な検知動作を行う場合もある。これは、微細孔の容積が適正な容積となっていれば、適正な検知動作を行うからである。
【0023】
このことから、微細孔の適否は、微細孔の孔径で判断するよりも微細孔の容積によって判断する方が好結果を得ることができる。なお、微細孔の容積は微細孔に流体を流したときの流量で表すことができる。このため、微細孔を流れる流体の流量に基づくパラメーターを取得して、取得したパラメーターに基づいて当該微細孔の適否を判断することができる。ただし、流体として例えば液体や気体などを流してその流量を測定するといった方法では、大掛かりな設備や測定に多くの時間を費やすといった課題がある。そこで、本発明者は種々の実験を行った結果、音響技術を用いることによって流体の流量を表すパラメーターを得られることを確認し、本発明を完成させるに至った。
【0024】
[1]すなわち、本発明の微細孔検査装置は、部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査装置であって、内部に空間部を有するほぼ密閉型の筐体と、前記筐体の内部における一端面の側に設置され、低周波信号によって低周波音を出力するスピーカーと、前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンと、前記筐体の内部における前記一端面とは反対側に設けられ、前記マイクロホンを前記スピーカーと対向するように取り付けるマイクロホン取り付け面を有するとともに、前記マイクロホン取り付け面とは反対側の面に前記部品を載置する部品載置面を有し、かつ、前記振動板が振動することによって生じる空気振動を前記部品載置面の側に通過させる空気通過孔を有する仕切り部材とを有し、前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする。
【0025】
本発明の微細孔検査装置によれば、微細孔の適否の判定を孔径で行うのではなく、微細孔の容積すなわち流体の流量を表すパラメーターを電気信号として取得して、取得した電気信号によって、微細孔の適否を判定するようにしている。また、本発明の微細孔検査装置においては、スピーカーとマイクロホンとによる音響技術を用いて、微細孔の容積すなわち流体の流量を表すパラメーターを電気信号として取得している。このため、大掛かりな装置を必要することなく、かつ、短時間での検査が可能となる。なお、電気信号は例えば電圧値である。
【0026】
このように、本発明の微細孔検査装置によれば、微細孔の容積すなわち流体の流量を表すパラメーターによって、微細孔の適否の判定を行っているため、例えば、微細孔の断面がテーパー状となっていたり、バリが生じていたりしても、実情に即した検査結果を得ることができる。
【0027】
なお、この明細書において、低周波音というのは、1Hz〜100KHzの範囲の音を指すものとするが、本発明において使用する低周波は、1Hz〜150Hzに設定することが好ましく、より好ましくは、1Hz〜20Hzである。
【0028】
[2]本発明の微細孔検査装置においては、前記スピーカーは、当該スピーカーの背面側と前記筐体の内部における一端面との間に第2空間部が形成されるように設置され、かつ、前記第2空間部の一部を前記筐体の外部に連通させる連通孔が前記筐体に形成されていることが好ましい。
【0029】
このような構造とすることにより、スピーカーのダイヤフラムの動きがより活発となり、より大きな音を発生することができるようになる。これによって、電気信号を高い分解能で出力することができるため、微細孔の適否の判定をより高精度に行うことができる。
【0030】
[3]本発明の微細孔検査装置においては、前記マイクロホンから出力される電気信号の値を表示する電気信号表示部をさらに有することが好ましい。
【0031】
このような構成とすることにより、微細孔の適否の判定を電気信号表示部に表示される数値により判定することがき、容易かつ適切に微細孔の適否を判定することができる。
【0032】
[4]本発明の微細孔検査装置においては、前記部品は、特定の気体を検知するための気体センサーにおいて用いられる部品であって、当該部品に形成されている微細孔は、気体の流量を一定に保持するため気体通過孔として用いられることが好ましい。
【0033】
これは、当該部品を例えば気体センサーの拡散制御板として用いる場合を想定したものであり、気体センサーにおいては、拡散制御板に形成されている微細孔を通過する気体の流通量が適正であるか否かということが当該気体センサーの性能に大きな影響を与える。このため、本発明の微細孔検査装置は、このような拡散制御板に形成されている微細孔の検査を行う際の検査装置として最適なものとなる。
【0034】
[5]本発明の微細孔検査装置においては、異なった流体流量を有する微細孔が形成されている複数種類の部品をそれぞれサンプルとし、当該サンプルを個々のサンプルごとに前記気体センサーに取り付けて、当該気体センサーによって特定の気体を検知する気体検知試験を行い、当該気体センサーが適正な気体検知動作を行ったときのサンプルによって得られる電気信号の値を予め取得しておくことが好ましい。
【0035】
このように、気体センサーが適切な気体検知動作と、マイクロホンから出力される電気信号の値(電気信号値)とを対応付けておくことにより、マイクロホンから得られる電気信号値から容易に当該微細孔の適否を判定することができる。なお、適正な検知動作を行ったときの電気信号値に許容範囲があれば、その許容範囲を設定しておくことも可能であり、この場合、マイクロホンから出力された電気信号値が許容範囲であれば、当該微細孔は適合品であると判定することができる。
【0036】
[6]本発明の微細孔検査装置においては、前記気体は一酸化炭素ガスであって、前記気体センサーは一酸化炭素ガスセンサーであることが好ましい。
【0037】
このように一酸化炭素ガスを検知する一酸化炭素ガスセンサーで(COガスセンサーという。)においては、一酸化炭素(CO)ガスが人体に悪影響を及ぼすことから、当該COガスセンサーに用いられる部品は精度が要求される、特に、気体の流量を一定量に保持するための拡散制御板に形成される微細孔は精度が要求される。このような拡散制御板に形成されている微細孔の検査を本発明の微細孔検査装置で行うことにより、微細孔の検査を適切に行うことができる。しかも、発明の微細孔検査装置は個々の微細孔を高速に検査できることから、微細孔が形成されている部品を全数検査することも可能となる。
【0038】
[7]本発明の微細孔検査方法は、部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査方法であって、ほぼ密閉された筐体の内部における一端面の側に低周波音を出力するスピーカーを設置するとともに、空気通過孔を有する仕切り部材を前記筐体の他端面の側に設け、前記仕切り部材の前記スピーカーと対向する側の面をマイクロホン取り付け面とし、当該マイクロホン取り付け面とは反対側の面を部品載置面として、前記マイクロホン取り付け面には、前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンを設置し、前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記仕切り部材の前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする。
【0039】
本発明の微細孔検査方法においても上記した本発明の微細孔検査装置と同様の効果を得ることができる。なお、本発明の微細孔検査方法においても、上記した本発明の微細孔検査装置が有する各特徴を有することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを説明するために示す図である。
【図2】試験に用いた複数のサンプルの一覧を示す図である。
【図3】プレス加工品の2つのサンプルの微細孔をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。
【図4】放電加工品の9種類のサンプルのうちの2つのサンプルの微細孔をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。
【図5】図4において示した各サンプルにおいて得られた電圧値を示す図である。
【図6】電圧値が微細孔141の容積(流体の流量)に依存することを説明するために示す図である。
【図7】微細孔141の表孔径と裏孔径とが異なる場合における部品140の載置の仕方によって得られる電圧値を示す図である。
【図8】実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて測定可能な電圧値の分解能について説明するために示す図である。
【図9】実施形態2に係る微細孔検査装置100Bを説明するために示す図である。
【図10】放電加工品の各サンプルにおける表裏平均孔径に対する電圧値を実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと実施形態2に係る微細孔検査装置100Bとを比較して示す図である。
【図11】COガスセンサー900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0042】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの構成
図1は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを説明するために示す図である。なお、図1(a)は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの内部構成を模式的に示す断面図であり、図1(b)は実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおけるマイクロホン130とその周辺部を拡大して示す図である。
【0043】
実施形態1に係る微細孔検査装置100Aは、図1に示すように、内部に2つの空間部(後述する。)を有するほぼ密閉された円筒形状の筐体110と、筐体110の内部における一方の端面の側(底面112の側とする。)に設置され、低周波音を筐体110内部の上方側に向けて発生するスピーカー120と、筐体110の内部で、かつ、スピーカー120と対向する位置に設けられているマイクロホン130と、マイクロホン130を取り付けるためのマイクロホン取り付け面150aを有するとともに、微細孔141が形成されている部品140を載せる部品載置面150bを有する仕切り部材150と、仕切り部材150の部品載置面150bに部品140を載せたときに当該部品140を押さえる役目と筐体110の蓋の役目とをなす蓋体160と、スピーカー120に低周波信号を与える低周波発振器170と、マイクロホン130から出力される電気信号の値(電圧値とする。)を表示する電気信号表示部(電子電圧計180とする。)とを有している。なお、部品140は、図11に示すようなCOガスセンサー900に用いられる拡散制御板923と同様の部品であるとする。
【0044】
スピーカー120は、筐体110内において底面112の側に取り付けられているが、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、底面112に接触させた状態で取り付けるのではなく、底面112から所定の間隔を置いた位置にダイヤフラム120aが上向きとなるように取りつける。
【0045】
スピーカー120をこのような位置に取り付けるために、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、筐体110の底面112よりも少し上方に鍔部113が筐体110の内部側壁114の全周に渡って突設されており、当該鍔部113の中央部にスピーカー120を取り付けるようにしている。
【0046】
これにより、筐体110の内部には、2つの空間部(第1空間部111a及び第2空間部111b)が形成される。第1空間部111aは、スピーカー120と仕切り部材150との間に形成される空間部である。また、第2空間部111bはスピーカー120と筐体110の底面112との間に形成される空間部である。なお、筐体110には、第2空間部111bを筐体110の外部に連通させるための連通孔115が形成されている。このような第2空間部111bが形成されていることにより、スピーカー120の背面側が開放された状態となる。なお、スピーカー120の取り付け位置は、筐体110の底面112からわずかに上方であるため、第2空間部111bは第1空間部111aに比べて、容積は小さいものとなっている。
【0047】
マイクロホン130は、例えば、ダイナミック型のマイクロホンを用いることができ、マイクロホン筐体131の内部には振動板132、コイル133、磁石134などが設けられている。また、マイクロホン筐体131には、スピーカー120が発する低周波音を取り入れるための音入力孔131aが複数箇所に設けられている。
【0048】
このように構成されたマイクロホン130は、仕切り部材150の下端面(マイクロホン取り付け面150a)にスピーカー120と対向するように取り付けられている。また、マイクロホン130は、部品140を仕切り部材150の上端面(部品載置面150b)に載置した場合には、マイクロホン130の振動板132が仕切り部材150を介して部品140と対向するような配置となる。
【0049】
なお、部品140は図11(b)に示されている拡散制御板923と同様の構成を有しているものであるとする。すなわち、ステンレスなどからなり、外径が8.5mm程度で、厚みが100μm程度の円盤状をなし、その中央部に微細孔(実施形態1においては微細孔141)が形成されている。
【0050】
また、仕切り部材150には、部品140に形成されている微細孔141よりもわずかに大きい径を有する空気通過孔151が形成されている。そして、仕切り部材150の部品載置面150bの所定位置に部品140を載置した場合、当該部品140に形成されている微細孔141と仕切り部材150に形成されている空気通過孔151とが連通するようになっている。なお、仕切り部材150には、部品140を所定位置に置くことができるように位置決め部152が設けられている。この位置決め部152は、例えば、部品140の形状に合わせた凹状の窪みなどでよい。このような位置決め部152を設けることにより、当該位置決め部152に部品140を載置すれば、部品140に形成されている微細孔141と仕切り部材150に形成されている空気通過孔151とが自動的に適正な位置関係となる。
【0051】
蓋体160は、その中央部に部品140の外径(8.5mm程度)よりもわずかに小さい径を有する円形孔161が形成されている。これにより、蓋体160が部品140を抑える際には、部品140の周縁部のみを押さえる状態となる。
【0052】
低周波発振器170は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、11Hzの低周波信号を発振するものであるとする。それによって、スピーカー120は11Hzの低周波音を発する。なお、スピーカー120からは、可能な限り低い周波数の音を発するようにすることが好ましい。実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて、11Hzの低周波音としたのは、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて使用したスピーカー120及びマイクロホン130の特性上の下限値であったからである。
【0053】
また、マイクロホン130は高分解能型のものであることが好ましい。具体的には、オーディオ用イヤホンに使用されている軽量で高感度な部品(振動板、コイル、磁石など)を用いてマイクロホン130を構成した。これにより、マイクロホン130は、スピーカー120から出力される11Hzの低周波音を捉えることができた。
【0054】
電子電圧計180は、スピーカー120が発する低周波音をマイクロホンで捉えた際に、当該マイクロホンか130ら出力される電圧値(mV)を表示するものである。
【0055】
2.実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いた微細孔141の検査方法
次に、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いて微細孔141を検査する微細孔141の検査方法について説明する。まず、微細孔141が形成されている部品140を部品載置面150bの位置決め部152に載置する。このように、部品140を部品載置面150bの位置決め部152に載置することによって、仕切り部材150の空気通過孔151と微細孔141とが連通する状態となる。
【0056】
この状態で、スピーカー120から11Hzの低周波音を発振させると、その低周波音は、空気振動としてマイクロホン130に伝達され、マイクロホン130内に設けられている振動板132が振動し、コイル133と磁石134による電磁誘導が生じ、その電磁誘導によって発生する電圧値が電圧計180に表示される。
【0057】
このとき、マイクロホン130の振動板132が振動することによる空気の振動は、仕切り部材150の空気通過孔151から微細孔141を通過して筐体110の外部に抜けて行く。このとき、微細孔141を通過する空気の量は、マイクロホン130から出力される電圧に影響を与えて、マイクロホン130から出力される電圧値に微小な変化が生じる。換言すれば、マイクロホン130から出力される電圧値は、微細孔141を通過する空気の量に影響を受けて微小な変化が生じる。
【0058】
すなわち、微細孔141の容積すなわち流体の流量に依存して、微細孔141を通過する空気の量が変化し、それによって、マイクロホン130から出力される電圧に微小な変化が生じて、電圧計180に表示される電圧値が変化することとなる。換言すれば、電圧計180に表示される電圧値の変化は、微細孔141の容積すなわち流体の流量の変化を表すものとなる。
【0059】
このことから電圧計180に表示される電圧値に基づいて微細孔141の容積すなわち流体の流量を求めることができる。したがって、当該部品140を搭載する装置の種類に応じて、電圧計180に表示される電圧値と、当該部品140を搭載する装置が行う動作との相関をとっておくことにより、電圧計180に表示される電圧値から当該部品140に形成されている微細孔141の適否を判定することができる。
【0060】
例えば、部品140が上記したようなCOガスセンサー900(図11参照。)の拡散制御板923である場合には、電圧計180に表示される電圧値と、COガスセンサー900のCOガス検知動作との相関をとるための試験を繰り返し行い、適正なCOガス検知動作を行ったときの電圧値を求めておく。なお、この場合、適正なCOガス検知動作を行ったときの電圧値に許容範囲があれば、その許容範囲を設定しておく。これにより、個々の部品140に形成されている微細孔141を検査する場合、電圧計180に表示される電圧値から当該微細孔141の適否を判定することができる。この場合、電圧値は、微細孔141の容積すなわち流体の流量に依存した値となっているため、微細孔141の表孔径及び裏孔径に差が生じている場合であっても、適合品とされる場合もある。このため、孔径によって適否を判定する場合に比べて、部品の製造工程における歩留まりを向上させることができる。
【0061】
また、バリが微細孔141の内部に存在しているような場合においては、部品の表側孔径及び裏側孔径を測定しただけでは、当該微細孔929が本当に適正なものであるか否かは判定できない場合もあるが、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aによれば、微細孔141の容積すなわち流体の流量によって判定するため、実情に即した適正な検査結果が得られる。
【0062】
なお、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、スピーカー120からは常に低周波音を発振させた状態で、部品を順次、部品載置面150bに載置して当該部品を検査することも可能であり、これにより、部品製造工程の流れの中で、部品を次々と検査することができる。
【0063】
3.実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いた試験例
次に、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aを用いた試験例について説明する。ここでは、微細孔141が形成された部品140を複数枚用意し、当該複数枚の部品をサンプルとして各サンプルに形成されている微細孔141を検査するといった試験を行った。
【0064】
図2は、試験に用いた複数枚のサンプルの一覧を示す図である。ここでは、プレス加工によって実際に製造された2つの部品をサンプルとして用いるとともに、様々な孔径を有する部品を試験用のサンプルとして用意するために、放電加工によって9種類の孔径を有する部品をそれぞれ製造して、これら9種類の孔径を有するそれぞれの部品をサンプルとして用いた。
【0065】
図2において、プレス加工品によって実際に製造された2つの部品は、微細孔141の孔径の目標値を105μmとして製造したものであり、当該2つの部品に形成された各微細孔141の孔径に基づいて適否を判定した結果、適合品とされた部品をOKサンプルとし、微細孔141の孔径に基づいて適否を判定した結果、不適合品とされた部品をNGサンプルとしている。図2においては、OKサンプル及びNGサンプルそれぞれに形成されている微細孔141の表孔径d1と、裏孔径d2と、表孔径d1と、表裏平均孔径とが示されている。なお、表裏平均孔径は、表孔径d1と裏孔径d2との平均をとったものである。
【0066】
一方、放電加工品の9種類の孔径を有するサンプルは、微細孔141の孔径の目標値を50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、95μm、100μm、105μm、110μmとして製造したものであり、図2においては、各サンプ品に形成されている各微細孔141の表孔径d1と、裏孔径d2と、表裏平均孔径とが示されている。なお、これら9種類のサンプルを、「50μmサンプル」、「60μmサンプル」、「70μmサンプル」、・・・、「110μmサンプル」と呼ぶことにする。
【0067】
図3は、プレス加工品の2つの部品の微細孔141をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。なお、図3(a)はOKサンプルの微細孔141を示し、図3(b)はNGサンプルの微細孔を示している。図3において、黒く塗りつぶした部分が微細孔141である。また、図3(a)において右側に示す図は、微細孔141とその周辺部を断面として表わしたものであり、プレス加工による打ち抜き方向の下側にバリBが生じているため、表孔径d1と裏孔径d2は異なったものとなっている。このようなバリBは図3(b)においても生じるものである。
【0068】
また、図4は、放電加工品の9種類のサンプルのうちの2つのサンプルの微細孔141をレーザー顕微鏡によって拡大して示す図である。図4(a)は50μmサンプルの微細孔141を示す図であり、図4(b)は110μmサンプルの微細孔141を示す図である。図4において、黒く塗りつぶした部分が微細孔141である。また、図4(a)において右側に示す図は、微細孔141とその周辺を断面として表わしたものであり、この場合、バリは生じていないが、テーパーが形成されているため、表孔径d1と裏孔径d2は異なったものとなっている。
【0069】
ここで、プレス加工品の2つのサンプル(OKサンプル、NGサンプル)について、微細孔141を孔径に基づいて適否を判断すると、例えば、105μmの目標値に対する許容範囲を±5μmとした場合、OKサンプルは、表孔径(104.47μm)及び裏孔径(109.758μm)のいずれもが、「105μm±5μm」をクリアしている。一方、NGサンプルは、表孔径(104.368μm)は「105μm±5μm」をクリアしているが、裏孔径(111.424μm)は「105μm±5μm」から外れている。このため、NGサンプルは不適合品(NG品)とされている。
【0070】
図5は、図2に示されている各サンプルにおいて得られた電圧値を示す図である。なお、図5は図2に示されている各サンプルごとの表孔径、裏孔径、表裏平均径に加えて、さらに、電圧値(mV)を各サンプルごとに付け加えたものである。
【0071】
図5によれば、プレス加工品のOKサンプルにおいて得られた電圧値は「1.41mV」であり、NGサンプルにおいて得られた電圧値も同じく「1.41mV」であった。ここで、「1.41mV」という電圧値を出力したサンプルをCOガスセンサーの拡散制御板として用いた場合に、適正なCOガス検知動作を行うことが、繰り返しのCOガス検知試験によって確かめられている場合には、OKサンプル及びNGサンプルの両方が、適合品であると判定されることとなる。これは、微細孔141の適否を孔径によって判定するのではなく、微細孔141の容積(流体の流量)によって判定したためである。すなわち、微細孔141の容積(流体の流量)が適正な値となっていれば、当該微細孔141は適切なCOガス検知動作を行うということである。
【0072】
このように、微細孔141の容積(流体の流量)によって判定することによって、孔径による検査で不適合品とされた部品であっても、実際には、適合品であると判定できるため、部品140の製造工程における歩留まりを向上させることができる。なお、この場合のNGサンプルは、孔径に基づいて不適合品とされたものであるが、適切なCOガス検知動作を行うことが確かめられているため、適合品であると判定して何ら差し支えのない部品である。
【0073】
図6は、電圧値が微細孔141の容積(流体の流量)に依存することを説明するために示す図である。図6において、横軸は図5示した各サンプルにおける微細孔141の孔径を表し、左側の縦軸は図5における表裏平均孔径を表し、右側の縦軸は電圧値を表している。
【0074】
図6において、プレス加工品は、OKサンプルとNGサンプルについて、それぞれの表裏平均孔径と当該表裏平均孔径における電圧値との関係している。一方、放電加工品は、110μmサンプル、105μmサンプル、100μmサンプルの3つのサンプルについて、それぞれの表裏平均孔径と当該表裏平均孔径における電圧値との関係している。
【0075】
ここで、プレス加工品の2つのサンプル(OKサンプル及びNGサンプル)の表裏平均孔径に近い表裏平均孔径を有する放電加工品の105μmサンプルについて考えると、プレス加工品のOKサンプル及びNGサンプルの電圧値はともに1.41mであり、放電加工品の105μmサンプルの電圧値は1.39mVである。このように表裏平均孔径が近い値であると、電圧値も同じか極めて近い値となる。微細孔141の表裏平均孔径は、当該微細孔141の容積の大きさを反映するものであるとも言えるため、電圧値は、微細孔の容積に依存していることがわかる。
【0076】
このことから、微細孔141の表孔径と裏孔径とを計測して、その平均孔径(表裏平均孔径)を求めて、求められた表裏平均孔径に基づいて微細孔の適否を判断すればよいということも言えるが、そうすると、個々の微細孔について表孔径と裏孔径とを求めたのちに、表裏平均孔径を求めるといった多くの手順を行う必要があり、また、プレス加工品の場合、バリが生じている場合もあるため、孔径(裏孔径)を正確に求めることが困難である。また、バリは微細孔141内にも生じている場合もある。このため、単に表裏平均孔径に基づいて微細孔141の適否を判断するというのは現実的な方法とは言えない。
【0077】
図7は、微細孔141の表孔径と裏孔径とが異なる場合における部品140の載置の仕方によって得られる電圧値を示す図である。図7において、横軸はプレス加工品の2つのサンプル(OKサンプル及びNGサンプル)と、放電加工品の9種類の各サンプルを表し、左側の縦軸はテーパー量を表している。なお、「テーパー量」というのは、この場合、「裏孔径(μm)−表孔径(μm)」によって得られた値であるとする。また、右側の縦軸は電圧値の差、すなわち、部品の表側を上向きとして部品載置面150bに載置した場合に得られた電圧値と部品の裏側を上向きとして部品載置面150bに載置した場合に得られた電圧値との差を表している。
【0078】
例えば、プレス加工品のNGサンプルにおいては、テーパー量(裏孔径から表孔径を差し引いた値)は、図2又は図5から、「111.424−104.368≒7」であり、表裏で大きな孔径差が存在している。このように、表裏で大きな孔径差が存在している場合、当該NGサンプルの表側が上向きとなるようにして、仕切り部材150の部品載置面150bに載置したときに得られた電圧値と、当該NGサンプルの裏側が上向きとなるようして、仕切り部材150の部品載置面150bに載置したときに得られた電圧値との差をとると、その差は、絶対値で表せば0.01mV程度である。
【0079】
また、放電加工品の各サンプルにおいても同様であり、この場合、テーパー量(裏孔径−表孔径)は各サンプルごとに所定の値が存在するが、どのサンプルにおいても、部品の向きによる電圧値の差は殆どゼロであった。
【0080】
このことから、部品140を表側が上向きとなるように部品載置面150bに載置しても、裏面が上向きとなるように部品載置面150bに載置しても、得られる電圧値に大きな差はないということが言える。これは、実際に部品を検査する場合、個々の部品を仕切り部材150の部品載置面150bに載置する際には、部品140の表裏を意識する必要がないことを意味している。このため、検査の高速化が図れる。
【0081】
図8は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて測定可能な電圧値の分解能について説明するために示す図である。なお、図8においては、放電加工品の各サンプルにおける表裏平均孔径に対する電圧値を示している。例えば、95μmサンプルの表裏平均孔径は98.56μm(図2又は図5参照。)であり、当該サンプルによって得られた電圧値は1.28mVであることを示し、また、100μmサンプルの表裏平均孔径は102.27μm(図2又は図5参照。)であり、当該サンプルによって得られた電圧値は1.34mVであるというように、各サンプルの表裏平均孔径に対する電圧値が示されている。
【0082】
図8からわかるように、表裏平均孔径が90μmを超えると電圧値の変化の度合いが特に大きくなる。例えば、表裏平均孔径が98.56μmのときの電圧値は1.28mVである。また、表裏平均孔径が102.27μmのときの電圧値は1.34mVである。また、表裏平均孔径が106.466μmのときの電圧値は1.39mVである。このように、微細孔の径が90μmを超えると、電圧値の変化の度合い大きくなるため、電圧値の分解能が大きいものとなる。この場合、サンプルの表裏平均孔径が90μm以上においては、表裏平均孔径が5μm異なると、電圧値がほぼ0.1mV変化する。これにより、例えば、100μmの孔径に対して誤差の許容範囲が±5μmの孔径についても高精度に測定可能となる。
【0083】
実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、各種の目標孔径に対応して用意された各サンプルにおいて、それぞれに対応する電圧値を出力することができるため、その電圧値に基づいて当該サンプルの適否を判定することができる。特に、目標孔径が90μm以上である場合には、電圧値を高い分解能で出力することができるため、より高精度な検査が可能となる。特に、部品140がCOガスセンサーの拡散制御板である場合には、100μmまたはその前後の孔径を有する微細孔を検査する場合が多いため、より高精度な検査が可能となる。なお、90μm未満の目標孔径に対応して用意された各サンプルにおいても、図8に示すように、一定以上の分解能で電圧値を出力することができる。このため、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいては、種々の孔径を有する微細孔の検査装置として用いることができる。
【0084】
実施形態1に係る微細孔検査装置100Aにおいて図8に示すような結果が得られたのは、筐体110の構造が図1に示すような構造となっていることによるものである。すなわち、図1に示すように、スピーカー120の背面側に空間部(第2空間部111b)を設けることにより、スピーカー120のダイヤフラム120aの動きがより活発となり、より大きな音を発生することができるようになったためである。また、スピーカー120を駆動する周波数を11Hzというような低い周波数に設定するとともに、マイクロホン130を高分解としたことによって図8に示すような好結果が得られた。
【0085】
[実施形態2]
図9は、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bを説明するために示す図である。なお、図9は実施形態2に係る微細孔検査装置100Bの内部構成を模式的に示す断面図である。実施形態2に係る微細孔検査装置100Bの構成が実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの構成と異なるのは、スピーカー120の取り付け位置である。すなわち、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、スピーカー120は、筐体110の底面112に接触した状態で設置されている。なお、図9において図1と同一構成要素には同一符号が付されている。
【0086】
なお、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおける検査手順は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様であるので、ここでは説明は省略する。
【0087】
実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、スピーカー120が筐体110の底面112に接触した状態で設置されているため、構造は実施形態1に係る微細孔検査装置100Aより単純なものとすることができるが、マイクロホン130から出力される電圧値の分解能は実施形態1に係る微細孔検査装置100Aに比べるとやや劣るものとなる。しかし、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、微細孔141の容積(流体の流量)を電圧値として出力することができ、当該電圧値に基づいて微細孔141の適否を判定することができる。これにより、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができるという目的は達成することができる。
【0088】
図10は、放電加工品の各サンプルにおける表裏平均孔径に対する電圧値を実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと実施形態2に係る微細孔検査装置100Bとを比較して示す図である。図10(a),(b)において、実線で示す電圧値の変化は図8において示した電圧値の変化と同じものであり、破線で示す電圧値の変化は実施形態2に係る微細孔検査装置100Bによって得られた電圧値の変化を示している。
【0089】
また、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、放電加工品のサンプルを95μmサンプル、100μmサンプル、105μmサンプル、110μmサンプルの5種類のサンプルを用い、かつ、スピーカー120からは11Hzと、110Hzの2種類の低周波音をそれぞれ発生させて試験を行った。図10(a)の破線で示す電圧値の変化はスピーカー120から11Hzの低周波音を発生させた場合を示し、図10(b)の破線で示す電圧値の変化はスピーカー120から110Hzの低周波音を発生させた場合を示している。
【0090】
また、図10(a),(b)いずれの場合も、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおける電圧値の表示範囲(図10(a)、(b)にける右側の縦軸)は、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aの場合における電圧値の表示範囲に合わせて0.7mVとして表示している。
【0091】
実施形態2に係る微細孔検査装置100Bにおいては、100μmサンプル、105μmサンプル、110μmサンプルの5種類のサンプルによる試験を行ったが、図10(a)、(b)に示すように、マイクロホン130から出力される電圧値の分解能は、これら5種類のサンプルで比較すると、実施形態2に係る微細孔検査装置100Bは、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aに比べるとやや劣るものの、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、微細孔141の容積(流体の流量)を電圧値として出力することができ、当該電圧値に基づいて微細孔141の適否を判定することができる。これにより、実施形態1に係る微細孔検査装置100Aと同様、短時間での検査が可能で、かつ、実情に即した検査結果を得ることができるという目的は達成することができる。
【0092】
なお、本発明は上記各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0093】
(1)上記各実施形態においては、COガスセンサーに用いられる部品としての拡散制御板の微細孔を検査する場合を例示したが、本発明の微細孔検査装置は、例えば、車載用の燃料噴射ノズル、マイクロホンフィルターなど、種々の部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査装置として用いることができる。
【0094】
(2)上記実施形態1においては、スピーカー120を11Hzの低周波信号で駆動する場合を例示したが、スピーカー120を駆動する低周波信号は11Hzに限られるものではなく、スピーカー120及びマイクロホン130の性能が許せば、スピーカーからは、より低周波の音を発生させるようにしてもよく、また、マイクロホンから所定の分解能を有する電圧を取り出すことができれば、11Hzよりも高い周波数であってもよい。
【0095】
(3)上記各実施形態においては、マイクロホン130から出力する電気信号値は電圧値としたが、電圧値に限られるものではなく、他の電気信号値としてもよい。
【0096】
(4)上記各実施形態において用いた微細孔検査装置100A,100Bの形状や構造も図1及び図9に示すものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【0097】
(5)上記各実施形態においては、1つの部品に形成されている微細孔は1つである場合を例示したが、1つの部品に微細孔が複数個存在する場合にも適用することができる。また、微細孔の断面形状は円形(真円)である場合を例示したが、円形に限られるものではなく、例えば、楕円などであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
100A,100B・・・微細孔検査装置、110・・・筐体、111a・・・第1空間部、111b・・・第2空間部、112・・・底面、113・・・鍔部、114・・・内部側壁、115・・・連通孔、120・・・スピーカー、120a・・・ダイヤフラム、130・・・マイクロホン、131・・・マイクロホン筐体、132・・・ダイヤフラム、133…コイル、134・・・磁石、140・・・部品、141・・・微細孔、150・・・仕切り部材、150a・・・マイクロホン取り付け面、150b・・・部品載置面、151・・・空気通過孔、152・・・位置決め部、160・・・蓋体、170・・・低周波発振器、180・・・電子電圧計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査装置であって、
内部に空間部を有するほぼ密閉型の筐体と、
前記筐体の内部における一端面の側に設置され、低周波信号によって低周波音を出力するスピーカーと、
前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンと、
前記筐体の内部における前記一端面とは反対側に設けられ、前記マイクロホンを前記スピーカーと対向するように取り付けるマイクロホン取り付け面を有するとともに、前記マイクロホン取り付け面とは反対側の面に前記部品を載置する部品載置面を有し、かつ、前記振動板が振動することによって生じる空気振動を前記部品載置面の側に通過させる空気通過孔を有する仕切り部材と、
を有し、
前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細孔検査装置において、
前記スピーカーは、当該スピーカーの背面側と前記筐体の内部における一端面との間に第2空間部が形成されるように設置され、かつ、前記第2空間部の一部を前記筐体の外部に連通させる連通孔が前記筐体に形成されていることを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細孔検査装置において、
前記マイクロホンから出力される電気信号の値を表示する電気信号表示部をさらに有することを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の微細孔検査装置において、
前記部品は、特定の気体を検知するための気体センサーにおいて用いられる部品であって、当該部品に形成されている微細孔は、気体の流量を一定に保持するため気体通過孔として用いられることを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の微細孔検査装置において、
異なった流体流量を有する微細孔が形成されている複数種類の部品をそれぞれサンプルとし、当該サンプルを個々のサンプルごとに前記気体センサーに取り付けて、当該気体センサーによって特定の気体を検知する気体検知試験を行い、当該気体センサーが適正な気体検知動作を行ったときのサンプルによって得られる電気信号の値を予め取得しておくことを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の微細孔検査装置において、
前記気体は一酸化炭素ガスであって、前記気体センサーは一酸化炭素ガスセンサーであることを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項7】
部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査方法であって、
ほぼ密閉された筐体の内部における一端面の側に低周波音を出力するスピーカーを設置するとともに、空気通過孔を有する仕切り部材を前記筐体の他端面の側に設け、
前記仕切り部材の前記スピーカーと対向する側の面をマイクロホン取り付け面とし、当該マイクロホン取り付け面とは反対側の面を部品載置面として、前記マイクロホン取り付け面には、前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンを設置し、
前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記仕切り部材の前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする微細孔検査方法。
【請求項1】
部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査装置であって、
内部に空間部を有するほぼ密閉型の筐体と、
前記筐体の内部における一端面の側に設置され、低周波信号によって低周波音を出力するスピーカーと、
前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンと、
前記筐体の内部における前記一端面とは反対側に設けられ、前記マイクロホンを前記スピーカーと対向するように取り付けるマイクロホン取り付け面を有するとともに、前記マイクロホン取り付け面とは反対側の面に前記部品を載置する部品載置面を有し、かつ、前記振動板が振動することによって生じる空気振動を前記部品載置面の側に通過させる空気通過孔を有する仕切り部材と、
を有し、
前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の微細孔検査装置において、
前記スピーカーは、当該スピーカーの背面側と前記筐体の内部における一端面との間に第2空間部が形成されるように設置され、かつ、前記第2空間部の一部を前記筐体の外部に連通させる連通孔が前記筐体に形成されていることを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の微細孔検査装置において、
前記マイクロホンから出力される電気信号の値を表示する電気信号表示部をさらに有することを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の微細孔検査装置において、
前記部品は、特定の気体を検知するための気体センサーにおいて用いられる部品であって、当該部品に形成されている微細孔は、気体の流量を一定に保持するため気体通過孔として用いられることを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項5】
請求項4に記載の微細孔検査装置において、
異なった流体流量を有する微細孔が形成されている複数種類の部品をそれぞれサンプルとし、当該サンプルを個々のサンプルごとに前記気体センサーに取り付けて、当該気体センサーによって特定の気体を検知する気体検知試験を行い、当該気体センサーが適正な気体検知動作を行ったときのサンプルによって得られる電気信号の値を予め取得しておくことを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の微細孔検査装置において、
前記気体は一酸化炭素ガスであって、前記気体センサーは一酸化炭素ガスセンサーであることを特徴とする微細孔検査装置。
【請求項7】
部品に形成されている微細孔を検査する微細孔検査方法であって、
ほぼ密閉された筐体の内部における一端面の側に低周波音を出力するスピーカーを設置するとともに、空気通過孔を有する仕切り部材を前記筐体の他端面の側に設け、
前記仕切り部材の前記スピーカーと対向する側の面をマイクロホン取り付け面とし、当該マイクロホン取り付け面とは反対側の面を部品載置面として、前記マイクロホン取り付け面には、前記スピーカーが出力する低周波音に反応して振動板が振動することにより所定の電気信号を出力するマイクロホンを設置し、
前記部品に形成されている微細孔が前記空気通過孔に連通するように当該部品を前記仕切り部材の前記部品載置面に載置した状態で、前記スピーカーから低周波音を出力させることにより、前記マイクロホンから前記空気通過孔を通過した空気が前記微細孔を通過する際の空気の流量に依存した信号を前記電気信号として出力するようにしたことを特徴とする微細孔検査方法。
【図1】


【図2】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図3】


【図4】




【図2】


【図5】


【図6】


【図7】


【図8】


【図9】


【図10】


【図11】


【図3】


【図4】


【公開番号】特開2013−19817(P2013−19817A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154361(P2011−154361)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(591093494)株式会社ミスズ工業 (58)
【出願人】(391001619)長野県 (64)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]