説明

微細孔結晶及びそのコンジュゲートの調製方法

色素標識された微細孔結晶、ストップコック部分、及びそれらに共有結合する親和結合剤を含むコンジュゲートを開示する。前記色素標識された微細孔結晶は、L型ゼオライト結晶のような、その内部に色素を搭載した多数のチャネルを有するゼオライト結晶である。前記ストップコック部分は、カルボキシエステル基を取り付けることができるアミノ基で官能基化することができる。親和結合剤は、生物学的部分との結合を可能にする。当該部分のコンジュゲートは、インビボ及び/又はインビトロ画像応用で使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本願は、2006年11月2日に出願された英国特許出願No.0627816.8の優先権を主張するものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、生体細胞又はウイルスの画像化、並びに細胞又はウイルスの画像化で使用するための及びインビトロ(in vitro)診断で使用するための修飾されたL型ゼオライト結晶に関する。
【背景技術】
【0003】
細胞及びウイルスの機能及び調節メカニズムの理解が深まることによって、新規治療アプローチ及び新規治療剤がもたらされることが予想される。したがって、細胞及びウイルスの機能及びメカニズムの特徴を研究する手段として細胞及びウイルスのナノツールには非常に関心が払われている。Dahmら(非特許文献1)は、細胞内化学反応のツールとして超安定的ゼオライト粒子の使用を記載している。特に、Dahmらは、ファゴサイトーシス(貪食作用)によってTHP-1細胞内に吸収させた標識化Y型ゼオライト粒子の使用を記載しており、これらのゼオライトを、低分子量分子を細胞内に送達するのに効果的な担体として用いることができると結論付けている。ゼオライト粒子は、天然構造体を脱アルミン酸化することによって超安定的な状態になる。
【0004】
天然ゼオライトは、極低度な変成作用の結果生じる鉱物で、通常、火山岩の晶洞又は気孔内に見られる。それらは、SiO4及びAlO4の四面体を連結してなるアルミノシリケートのフレームワーク(骨組み)を有する。ここで、結晶性アルミノシリケートの角部を共有するSiO4及びAlO4の四面体は、六面構造中に配置される一次元チャネルを生み出す。フレームワーク中の各アルミニウム構成要素は、負に帯電しており、前記構造内の巨大な空間及びケージ中に存在するナトリウム、カルシウム等のような陽イオンの交換によって補正される(非特許文献2及び3参照)。化学量論的には、(K)9[Al9Si27O72]・nH2Oであり、式中、nは完全水和物では21、約22%の相対湿度では16である。単位格子あたり9個のカリウム陽イオンから、3.6個を他の1価の陽イオン、又は相当量の2価若しくは3価の陽イオンで交換することができる。
【0005】
多数のゼオライトの型が知られており、それぞれの型は異なる幾何学的及び化学的性質を示す。例えば、L型ゼオライトは、結晶全体にわたって、0.71nmの開口部、1.26nmの最大空間直径及び0.75nmの単位格子長を有する一次元チャネルを示す(図1a参照)。2つのチャネル間の中心から中心までの距離は、1.84nmである。一例として、550nmの直径を有する結晶は、約80,000個の平行するチャネルからなる。L型ゼオライトチャネルは、適当な有機ゲスト分子で満たすことができる。ただし、チャネルに入ることができるのは、開口部を通過できるゲスト分子のみである。チャネル口により、円柱結晶のベース及び外被の化学的及び物理的性質が異なる。典型的なゲスト分子は、所望の放出特性を有するある種の色素を含む(非特許文献4参照)。L型ゼオライト結晶は、異なるサイズ(直径及び長さ)で調製することもできる。例えば、L型ゼオライト結晶の長さは、30nm〜数千nmに及び得る(非特許文献5参照)。30〜7000nmの長さを有する純粋なL型ゼオライト結晶が以前に合成されている(非特許文献6)。
【0006】
色素を搭載するゼオライトは、特許文献1(ベルン大学)に記載されている。この特許は、L型ゼオライト結晶中の内部チャネルの中に色素を搭載させることを教示している。チャネルへの導入は、閉鎖分子、特にいわゆるストップコック部分によって終結又は阻止される。この特許文献の教示により、発光光学装置、光学センサー装置、光発光装置及び光子エネルギー捕獲装置の構築が注目された。
【0007】
L型ゼオライト結晶のチャネル口を閉鎖分子によって塞ぐこと又は閉じることができるのは公知である。そのような閉鎖分子を化学的に改変して、例えば、アミノ基(非特許文献7参照)又はカルボキシレート基(非特許文献8)を搭載させることができる。この工程で、例えば、親水性のアンカー基及びスペーサを含むストップコック分子、すなわち頭部基及び尾部を有する分子は、好ましくは部分的にL型ゼオライト結晶のチャネルに入り込んでいる。メトキシシランのようなアンカー基およびスペーサがチャネルに入り込み、アンカーがL型ゼオライト結晶に付着できるようになる。大きな頭部基(例えば、カルバミン酸フルオレニルメチル基)は、チャネルの大きさで強制的に定まるサイズ制限によってチャネル口の外部に残る。標識の反応性によって、結晶への付着は、可逆又は不可逆のいずれにもなり得る。その後、頭部基は化学的に取り外され、最終的に、例えば、チャネルの末端にアミノ官能基がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1335879号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Dahm et al., Journal of Biochemistry 111:279-290, 2004
【非特許文献2】Breck in Zeolite Molecular Sieves, 752, Wiley, New York, 1974
【非特許文献3】Baerlocher et al., in Atlas of Zeolite Framework Types, 19, Elsevier, Amsterdam, 5th edition, 2001
【非特許文献4】Calzaferri et al., Angew Chem Int Ed 42:3732, 2003
【非特許文献5】Ruiz et al., Monatshefte Fur Chemie 136:77, 2005
【非特許文献6】Megelski and Calzaferri, Adv Funct Mater 11:277, 2001
【非特許文献7】Huber et al., Angew Chem Int Ed 43:6738, 2004
【非特許文献8】H. Li, Z. Popovic, L. De Cola, G. Calzaferri, Micr Mes Mat, 95:112, 2006
【発明の概要】
【0010】
ゼオライトに関する仕事の多くは、今日まで(ベルン大学の特許で報告されているように)フォトニック応用でゼオライト結晶を使用することであった。しかしながら、本願発明者らは、ゼオライトをインビボ(in vivo)及びインビトロの両診断用の診断分析で使用することを見出した。本発明者らは、親和結合剤を、例えば、ストップコック部分を介してコンジュゲートに付着させることができることを見出した。親和結合剤を含む前記コンジュゲートは、適当な条件下で他の生物学的部分又は化学的部分と結合するであろう。チャネル内に搭載された又はゼオライト外部の色素により、生物学的部分又は化学的部分に結合したコンジュゲートの簡便な検出が可能となる。
【0011】
一態様において、本発明は、色素標識されたゼオライト、ストップコック部分及びそれらに共有結合している親和結合剤を含むコンジュゲートに関する。
【0012】
また、本発明のコンジュゲートを製造する方法であって、ゼオライトを色素で標識するステップ、色素標識されたゼオライトのチャネルをストップコック分子によって閉じるステップ、親和結合剤を添加するステップ、及び適当なカップリング化学反応を使用して、ストップコック分子を有する色素標識されたゼオライトと親和結合剤との間で共有結合を形成するステップを含む前記方法も開示している。
【0013】
また、様々な診断方法における本発明のコンジュゲートの使用も示す。
【0014】
本発明は、さらに、画像化可能な色素を搭載した標識化ゼオライトに関する。ここで、画像化可能な色素がX線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)(単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は他の関連する技術を含む)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択される。
【0015】
また、本発明では、カルボキシエステル基を担持するように改変された色素標識化ゼオライトも記載している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)L型ゼオライト結晶の走査電子顕微鏡(SEM)画像、並びに(円内)複数の厳密に平行したチャネルが各結晶内に含まれていることを示す結晶の略図及び単一チャネルの長軸断面の略図を示す。(b)本発明のビフェニルテルピリジンで官能基化されたL型ゼオライト結晶内の単一チャネルの断面図を示す。略図上部に示された光学顕微鏡画像は、不規則な単一物又は不規則で大きな集合体のように見える結晶による弱い発光を示している。(c)2つの分離したL型ゼオライト結晶内の単一チャネルの断面図を示す。各結晶は、ZnCl2の添加後にビフェニルテルピリジンで官能基化されている。ビフェニルテルピリジン基は、亜鉛イオンをキレートし、それによってチャネルが本発明のアレイに整列するように前記結晶を結合する。略図上部に示された光学顕微鏡画像は、青い領域で非常に強い発光及び線状ゼオライトアレイ構造を示している。(d)0.71nmの開口部及び六方対照形を有するチャネルのフレームワークの略図を示す。(e)色素分子を含むチャネルの側面図の略図を示す。二重矢印は、色素の電子遷移モーメントの方向を示している。
【図2】(a)ビフェニルテルピリジン(bitpy)分子、(b)Zn2+金属イオンをキレートしている2つのbitpy分子(Zn(bitpy)22+ 2(PF6)、及び(c)ジクロロメタンを平衡化した空気中で測定したbitpy(実線:λex=295nm)、及びZn(bitpy)22+ 2(PF6)-(破線:λex=341nm)の発光スペクトルを示す。
【図3】(a)ピロニン色素を搭載したL型ゼオライト結晶を有するBV2細胞の共焦点顕微鏡画像、及び(b)図3aに記載のBV2細胞の拡大画像を示す。
【図4】L型ゼオライト結晶の全表面のアミノ官能基化を示す。
【図5】Atto 425官能基化L型ゼオライト結晶(長さ1μm)の蛍光顕微鏡画像を示す。アミノ基反応性色素Atto 425を、それ自体をL型ゼオライト結晶に取り付けられた遊離のアミノ基に取り付けた。Atto 425 NHS(NHS = N-ヒロドキシスクシンイミド)は、0.90の高い蛍光量子収量を有する市販の標識である。色素構造中に含まれる活性エステル基がL型ゼオライト結晶の表面上のアミノ基と自然発生的に反応し得る。
【図6】(a)DOTA NHS(丸で図示)及びトリ-t-ブチルDOTA NHS(星印で図示)、(b)図4で示した連結剤を有するL型ゼオライト結晶、及び(c)L型ゼオライト結晶上で連結剤に取り付けられたアミノ反応性DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-l,4,7,10-四酢酸)をベースとするリガンド(DOTA NHS又はトリ-t-ブチルDOTA NHS)を示す。
【図7】(a)図6cで示したL型ゼオライト結晶上の連結剤に取り付けられたアミノ反応性DOTAベースリガンド(丸印)、DOTA NHS又はトリ-t-ブチルDOTA NHS(脱保護後)、及び(b)Eu3+イオンで錯体化されたL型ゼオライト結晶の表面上のDOTA官能基(影付円で図示)を示す。
【図8】図7bで示したようなEu3+イオンで錯体化されたL型ゼオライト結晶(1μm長)上のDOTA官能基の蛍光顕微鏡画像を示す。
【図9】(a)チャネル内に封入されたレーザー色素(目的物画像化用の任意の好適な陽イオン又は分子とすることができる)、すなわち、488nmの励起を有し、510nmで検出されるピロニン、及び(b)表面上の赤色発光体(任意の造影剤であり得る)、すなわち、635nmの励起を有し、650nm周辺で検出されるATTO 610を示すL型ゼオライト結晶の二官能基化を示す。
【図10】(a)L型ゼオライト単体、(b)アミノ基を有するL型ゼオライト及び(c)カルボキシエステル基を有するL型ゼオライトのFTIRスペクトルを示す。測定は、全て平均30nmの長さの結晶で行った。挿入図は、それぞれスペクトル(b)及び(c)の最も関連性のある特徴を示す部分の5倍拡大図を含む。両挿入図に見られる無標識のシャープなバンドが、1,500cm-1の位置に当たる。
【図11】(a)L型ゼオライト単体及び(b)カルボキシエステル末端化(terminated)L型ゼオライトのラマンスペクトルを示す。いずれも30nmの平均結晶長を有する。
【図12】TRHで標識した2つのL型ゼオライト結晶の蛍光顕微鏡画像を示す。結晶は、平均5,000nmの長さをもつ。薄い白線が結晶のアウトラインを示すために追加されている。
【図13】左図:メタノールに懸濁した30nmのPy-L型ゼオライト結晶及びTRH-L型ゼオライト結晶の励起(点線)及び発光(実線)スペクトルを示す。右図:メタノールに懸濁し、460nmで励起した30nmサイズのTRH, Py-L型ゼオライトの励起(実線)及び発光(点線)を示す。励起スペクトルは660nmで検出した。
【図14】左図:Ox1-L型ゼオライト(実線)及びカルボキシエステル基を担持するように官能基化されたOx1-L型ゼオライト材(点線)の吸収スペクトルを示す。右図:カルボキシエステル基を担持するように官能基化したOx1-L型ゼオライト結晶の励起(点線)及び発光(実線)スペクトルを示す。励起スペクトルは690nmで観察し、蛍光スペクトルは590nmで励起した。
【図15】Ln-DOTAで官能基化したL型ゼオライト結晶の合成を示す。第1ステップで、リンカー(APES)をL型ゼオライト結晶の表面に第1官能基を介して結合する。第2ステップで、キレート剤(DOTA)がリンカーの第2官能基に結合する。最後のステップで、ランタニドイオンがL型ゼオライト結晶の表面上にキレートされる。
【図16】反応原理を示す。(1)チャネル口に位置するアミノ基をメチル-3-イソチオシアネートプロピオネートと反応させる。(2)末端のカルボキシエステル基を、その後、対応する反応性色素と結合させる。
【図17】色素標識化L型ゼオライト材の調製で使用される色素及びその略語を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ゼオライト結晶の化学修飾は、結晶を細胞又はウイルス表面のような生体部分上の標的構造に又は細胞内に備えられた細胞構造と関連する標的と結合するように方向付けることができる。ゼオライト結晶が細胞、ウイルス又は目的の細胞構造と特異的に関連する標的に結合するように改変された場合、コンジュゲートを使用して選択的に生物学的部分を撮像することができる。
【0018】
本発明の第一の態様において、色素標識された微細孔結晶(例えば、ゼオライト結晶等)で、ストップコック部分及びそれらに共有結合する親和結合剤を含むコンジュゲートが提供される。
【0019】
本発明のコンジュゲート中のL型ゼオライト結晶は、親和結合剤の結合によって修飾されている。さらに、限定はしないが、明瞭化の目的で、親和結合剤は以下のいずれか、すなわち、抗原、タンパク質、抗体、ビオチン又はビオチン類似体及びアビジン又はストレプトアビジン、糖及びレクチン、酵素、ポリペプチド、アミノ基、核酸又は核酸類似体及び相補的核酸、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、ポリサッカライド、金属イオン封鎖剤、受容体アゴニスト、受容体アンタゴニスト、又はそれらの組合せを含むことができる。例えば、親和結合剤は特異的な結合対の一方のパートナーとすることができる。この場合、前記結合対の他のパートナーが細胞表面上の若しくは細胞内構造の標的と関連する、又は細胞表面上の若しくは細胞内構造の標的となる。親和結合剤は、親和結合対のパートナー若しくはメンバー、又は当業者に呼ばれているような特異的結合対のパートナー若しくはメンバーであることが好ましい。
【0020】
親和結合剤は、その標的に対して(例えば、抗体のような特異的結合対の一方のメンバーが、その抗原のような特異的結合対の他のメンバーに対して)少なくとも107l/molの親和性を有する。親和結合剤は、お互いに好ましくは108l/mol、さらに好ましくは109 l/molの親和性を有する。
【0021】
好ましい親和結合剤は、抗体である。用語「抗体」とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体及び前記抗体の断片、並びに抗体の結合ドメインを含む遺伝学的構築物をいう。親和結合剤の上記基準を保持するあらゆる抗体断片を使用することができる。抗体は、当該技術分野の方法で作製される。例えば、Tijssen, P., Practice and theory of enzyme immunoassays 11 (1990) ブック全体(特にpages 43-78), Elsevier, Amsterdamに記載の方法が挙げられる。
【0022】
親和結合剤は、直接的に及び共有結合によりゼオライトに結合することができる。また、リンカー基を介して又はストップコック分子を介して共有結合により結合することもできる。
【0023】
ストップコック分子を介した結合により、L型ゼオライト結晶への十分に制御可能な親和結合剤の結合が可能になる。それ故、好ましい態様は、親和結合剤と共役した色素標識化ゼオライトに関する。ここで、前記親和結合剤は、ストップコック分子と結合している。
【0024】
親和結合剤は、抗原及び抗体、ビオチン又はビオチン類似体及びアビジン又はストレプトアビジン、糖及びレクチン、核酸又は核酸類似体及び相補的核酸、並びに受容体及びリガンドからなる群より選択されることが好ましい。本発明のコンジュゲートは、抗原又は抗体を親和結合剤として含むことも好ましい。
【0025】
本発明の一態様において、色素は、ゼオライト結晶の一以上のチャネル内に配置される。結晶チャネル内への色素の挿入は、イオン交換によって(特に、画像化剤が陽イオンである場合に)又は包接結晶によって、あるいはCalzaferriら, Chem. Eur. J. 2000, 6, 3456に記載されたような二重又は単一アンプル法を使用する気相方法によって達成することができる。
【0026】
ゼオライト結晶は、一端又は両端を化学的に、好ましくはチャネル開口部に近接して修飾することができる。欧州特許第1335879号の封鎖分子をゼオライト結晶を修飾するのに及びゼオライト結晶内に色素を固定するのに使用することが好ましい。封鎖分子は、色素をゼオライト結晶内に固定するのに都合のよい手段を提供するストップコック部分であることが好ましい。あるいは又はさらに、前記修飾は、L型ゼオライト結晶の細胞、細胞構造又はウイルスへの結合を標的化する手段を提供することができる。
【0027】
封鎖分子は、チャネルの開口部にごく接近して結晶の一方又は両方の末端に結合することが好ましい。適切な封鎖分子は、一度結晶に結合したら、少なくとも部分的に、物理的に結晶チャネル内からの色素の離脱を抑制する、あらゆる分子である。封鎖分子は、限定はしないが、好ましくはアミノ基、カルボキシレート基、糖類、生物受容体群、金属イオンキレート類、又はチオール基である。
【0028】
実質的に結晶のチャネルから色素の全離脱がストップコック部分によって抑制されることが好ましい。ストップコック分子又はストップコック部分は、欧州特許第1 335 879号に詳細に記載されており、本文献は参照によってその開示内容を本明細書に明示するものとする。簡単に言えば、ストップコック分子は、頭部及び尾部を有する分子である。頭部は、チャネル幅よりも大きな側方延長部を有しており、また尾部は、結晶ユニットの大きさよりも長軸方向に伸びた構造を有する。尾部は、スペーサー及び親水性アンカー基(欧州特許第1 335 879号では標識と呼ばれている)を含むことができる。メトキシシランのようなアンカー基及びスペーサーを含む尾部は、少なくとも部分的にL型ゼオライト結晶のチャネルに入ることができる。頭部基はチャネル外部にとどまる。あらゆる大きな頭部基、例えば、チャネルの大きさによってサイズ制限を強いられるためにチャネル口の外部にとどまるフルオレニルメチルカルバメート基等を使用することができる。
【0029】
通常、色素は、ストップコック部分で修飾される前にゼオライト結晶のチャネル内に導入するのが都合がよい。キレート基のようなチャネル口の近くに位置するストップコック部分は、チャネルから色素が離脱するのを阻止する上で役立ち得る。一態様において、本発明は、上述のようなコンジュゲートを製造する方法を開示する。本方法は、ゼオライトを色素で標識するステップ、色素標識化されたゼオライトのチャネルを封鎖分子によって閉じるステップ、親和結合剤を添加するステップ、及び適当なカップリング化学反応を使用して、ストップコック分子を含む色素標識されたゼオライトと親和結合剤との間で共有結合を形成するステップを含む。
【0030】
また、ある好ましい態様において、親和結合剤は、封鎖分子として直接機能することができる。このような色素標識化ゼオライト及び親和結合剤間の共役は、ストップコック部分を必要としない。
【0031】
本発明の一態様で、金属イオンキレート基は、ゼオライト結晶を通るチャネル口を少なくとも部分的に塞ぐように、ゼオライト結晶の一端末に取り付けられる。前記金属イオンキレート基は、ストップコック部分の頭部に相当することが好ましい。
【0032】
一例としては、金属イオンキレート基は、テルピリジン誘導体である。テルピリジン誘導体は、ビフェニルテルピリジン(又は、「bitpy」と呼ぶ)とすることができる。
【0033】
ビフェニルテルピリジンは、350nm周辺(発光量子収量:Φ=0.2)で、光学顕微鏡下で発光を示す(図1b及び図2)ので、アミノ基を介して結晶に連結されたビフェニルテルピリジンによって修飾したL型ゼオライト結晶を作製し、蛍光顕微鏡で特徴付けした。
【0034】
結晶の端部に向けられたゼオライトの第1修飾に代えて又はそれに加えて、結晶の外表面を以下に記載の方法で化学的に修飾してもよい。
【0035】
L型ゼオライト結晶の化学的修飾は、チャネル口の数に対する結晶に結合されるべき部分(例えば、ストップコック部分又は親和結合剤)の割合を制御することによってチャネル口に優先的に方向付けることができる。1:1又はそれ以下の比率がチャネル口に前記部分を結合させる上で好ましいことが判明した。チャネル口よりも部分を多く含む場合、結晶表面を上回る通常以上の結合を生じてしまう。まず、適当なストップコック分子をチャネル口を塞ぐために及び親和結合剤との結合に使用できる第1の基を提供するために用いることによって、付加的な選択が利用できるようになり、目的の第2基をゼオライト結晶の側壁に取り付けることができる。目的の第2基は、当業者が必要とするあらゆる部分とすることができ、好ましくは、ゼオライトコンジュゲートの可溶化を促進するものである。前記目的の第2基は、ポリペプチド、糖及びポリエチレングリコールからなる群より選択されるのが好ましい。このように本発明の好適なコンジュゲートは、親和結合剤並びに目的の第2基の両方を含む。
【0036】
L型ゼオライト結晶の1mg中のチャネル口の平均数は、以下の式で算出することができる:
ne=Xz/lz×5.21×10-7mol
Xz=サンプル重量(mg)
Lz=L型ゼオライト結晶の平均長(nm)
【0037】
L型ゼオライト結晶は、自然状態ではチャネル内部が負に帯電している。好ましくは、チャネルの負電荷を減少又は失わせる脱アルミン酸化のような修飾は本発明の結晶に適用されない。
【0038】
結晶の一以上のチャネル内部に色素を配置することに加えて、一以上の画像化剤を微細孔結晶の外部表面に付けることができる。化学リンカーを使用して、微細孔結晶表面に画像化剤を結合させてもよい。
【0039】
L型ゼオライト結晶の標識に用いられる色素は、当業者の必要に応じて選択され得る。あらゆる検出可能な標識を本発明の色素とみなし、使用することができる。ゼオライトを標識するのに用いられる色素は、発光化合物、蛍光化合物、感光プレートで視覚化できる放射性化合物、X線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)(単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は他の関連する技術を含む)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択されることが好ましい。いくつかの好ましい態様で、前記色素は、発光化合物、蛍光化合物及び放射性化合物からなる群より選択される。
【0040】
多くの場合、好ましい色素は蛍光色素である。好ましくは、発光又は蛍光色素は、L型ゼオライト結晶のチャネル内に侵入できるものを選択することであろう。本発明で使用され、微細孔結晶に配置される色素を図17で示す。
【0041】
他の好ましい態様において、L型ゼオライト結晶の標識で使用される色素は、MRI、CT又はPETによって視覚化することができる色素である。
【0042】
好ましい態様において、本発明は、診断方法における本発明のコンジュゲートの使用に関する。当業者であれば理解できるように、診断方法は標識及び検出方法によって異なる。好ましい使用分野は、例えば、インビトロ診断方法又はインビボ撮像応用である。
【0043】
好ましい一態様において、本発明は、分析物をインビトロ法によって測定する方法を開示する。本方法は、分析物を含む疑いのある又は含むことがわかっているサンプルを提供するステップ、前記サンプルと本発明のコンジュゲートとを分析物コンジュゲート複合体の形成に適切な条件下で接触させるステップ、形成された複合体を測定し、それによって分析物の測定値を得るステップを含む。分析物−コンジュゲート複合体の形成に適当な条件は、特に限定はしない。当業者であれば、特に創作的努力をせずとも容易に前記適当なインキュベーション条件を同定することができるからである。当業者であれば理解できるように、前記分析物−コンジュゲート複合体の量を測定するための多数の方法が存在する。詳細に関しては、関連する教科書(例えば、Christopoulos, T.K. (eds.), Immunoassay, Academic Press, Boston (1996)参照)に全て記載されている。
【0044】
さらに好ましい態様において、本発明は、インビボ画像化の方法を開示する。本方法は、細胞又はウイルスを含む疑いのある又は含むことがわかっているサンプルを提供するステップ、コンジュゲート複合体と細胞又はウイルスとを結合させるのに適切な条件下で前記サンプルを本発明のコンジュゲートと接触させるステップ、及びサンプルを画像化し、それによって、細胞又はウイルスに結合したコンジュゲートを検出するステップを含む。
【0045】
微細孔結晶の表面に結合した一以上の画像化剤を含み、微細孔結晶のチャネル内に保持される色素を有するコンジュゲートを構築できることもわかった。例えば、蛍光又は有色色素は、L型ゼオライト結晶のチャネル内に保持され、磁気造影剤は、L型ゼオライト結晶の外表面上に被覆される。このような構造は、例えば、それぞれ光学的にかつ磁気的に、二重の可視化ができるという利点がある。
【0046】
上記リンカーは、好ましくは、それらの各末端に第1官能基及び第2官能基を持つ。第1官能基は、微細孔結晶に結合する(例えば、微細孔結晶中のシラノール基に結合する)ことができ、また第2官能基は、必要部分(例えば、ストップコック部分、親和結合剤又は画像化剤)に結合することができる。例えば、リンカー基は、有機シラン、好ましくは一般式RnSiX(4-n)(式中、Xは、必要部分(例えば、アルコキシ基又はアミノ基)に結合することのできる官能基であり、またRは、非加水分解性部分である)で表すことができる。例えば、リンカー基は、アミノシラン((3-アミノプロピル)トリエトキシシラン等)及びDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-l,4,7,10-四酢酸)を含み得る。アミノシランは、自身のエトキシシラン基を介して結晶に、及びNHSによるDOTAの活性化後に自身のアミノ基を介してDOTAに、結合することができる。このようなリンカーは、ガドリニウム及びユーロピウムのような画像化剤をキレートすることができる。
【0047】
本発明の一態様で、コンジュゲートは、生体細胞のような細胞に取り込まれ得る。微細孔結晶は、それ故、細胞質中に配置される。コンジュゲートの取り込みは、ファゴサイトーシスを介して起こり得る。細胞へのコンジュゲートの取り込みを最適にするためには、コンジュゲートの微細孔結晶が直径100nm以下であるのが好ましいことがわかった。したがって、微細孔結晶は、お互いに結合したり又は凝集塊を形成したりせず、分離結晶として提供することが好ましい。細胞へコンジュゲートの取り込みにより、インビボ測定技術での微細孔結晶の使用が可能になる。
【0048】
また、可溶化及び細胞内へのゼオライトの特異的な取り込みは、L型ゼオライト結晶の表面及び/又はチャネル口の選択的官能化によって達成することができる。
【0049】
あるいは、又は細胞による取り込みに加えて、コンジュゲートを細胞又はウイルスの表面に結合してもよい。
【0050】
本発明のさらなる態様において、細胞、ウイルス又は細胞構造を画像化する方法を提供する。本方法は、コンジュゲートが物理的に細胞、ウイルス又は細胞内の細胞構造と関連するように、細胞又はウイルスを、微細孔結晶及び色素、並びに任意で一以上の画像化剤を含むコンジュゲートと共にインキュベートするステップを含む。コンジュゲートは、本発明の第一の態様で説明したコンジュゲートのいずれか一つ又はそれらの組合せであることが好ましい。
【0051】
前記方法は、コンジュゲートと細胞、ウイルス又は細胞内の細胞構造とを物理的に関連させた後に、さらに色素及び任意で他の画像化剤を視覚化するステップを含む。視覚化ステップの特性は、使用した画像化剤の種類に影響される。例えば、画像化剤が色素である場合には視覚化ステップは光学的に行われ、画像化剤がガドリニウムである場合には視覚化ステップは磁気共鳴画像法(MRI)又は機能的磁気共鳴画像法を使用して行われる。
【0052】
生物学的部分は、本発明のコンジュゲートと共に懸濁液中でインキュベートすることができる。細胞及びウイルスは、生理学的に許容可能なバッファー(例えば、PBS)に懸濁されることが好ましい。コンジュゲート及び生物学的部分を共にインキュベートして、コンジュゲートの生物学的部分への結合を可能にするのが好ましい。インキュベーションは、1〜20分(好ましくは、約5分)とすることができ、かつ細胞又はウイルスにとって生理学的に許容可能な温度(例えば、約37℃)で行われるのが好ましい。コンジュゲートと生物学的部分とのインキュベーションに先立ち、コンジュゲートを水中で超音波処理して、コンジュゲートの凝集を減少させてもよい。
【0053】
一般に微細孔結晶の取り込みの間及びその直後、又は細胞若しくはウイルスの表面に微細孔結晶を結合する間及びその直後、細胞は生きており、またウイルスは生存可能である。適当な細胞は、真核生物細胞、特に動物細胞(哺乳動物細胞等)、植物細胞及び昆虫細胞を包含する。
【0054】
微細孔結晶のチャネルに封入された色素からその外表面に共有結合した受容体への、また、その後さらに絶縁被膜を通して半導体へと進む無放射性励起エネルギー移動は、S. Huber及びG. Calzaferriによって実証された(S. Huber and G. Calzaferri Chem. Phys. Chem. 5 (2004) 239)。色素を搭載した微細孔結晶をその周辺に結合するための一般的方法は、ストップコック分子の添加を含む。多段階ステップ反応原理を用いて、チャネル口にのみに配置される遊離アミノ基で官能基化したゼオライト結晶を上記のように合成することができる。この結果物を、あらゆるアミノ基反応性物質が原則、結合することのできる前駆体として使用することができる。
【0055】
アミノ官能基化に加えてカルボキシエステル官能基化を使用することで、微細孔結晶に取り付けることのできる化合物又は生物学的部分の範囲を拡げることができる。このような物質を合成するためのその後の方法を図16に図示する。好ましい態様において、本発明は、カルボキシエステル官能基化されたL型ゼオライトに関連する。また、前記カルボキシエステル官能基化L型ゼオライトは、色素で標識されるのが好ましい。カルボキシエステル官能基化L型ゼオライトの標識に使用される色素は、光吸収化合物、蛍光化合物、発光化合物、感光プレートで視覚化できる放射性化合物、X線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像法(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)(単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は他の関連する技術を含む)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択されるのが好ましい。
【0056】
一態様で、カルボキシエステル官能基化されたL型ゼオライトの合成は、2つのステップで行われる。第1ステップでは、(1)アミノ修飾されたL型ゼオライト結晶がS. Huber and G. Calzaferri Angew. Chem. Int. Ed. 43 (2004) 6738に記載の方法によって調製される。第2ステップでは、(2)各チャネル口に付けられた遊離のアミノ基が、T. Phuong, T. Khac-Minh, N. Thi Van Hag, Thi Ngoc Phuong Bioorg. Med. Chem. Lett. 14 (2004) 653に記載の反応に準じてメチル-3-イソチオシアネートプロピオネート由来のチオ尿素基と共に反応する。カルボキシエステル基を含む適当なシランを用いて、カルボキシエステル官能基化したゼオライト結晶を提供するワンステップ法も可能である。
【0057】
本発明者らは、L型ゼオライト結晶が画像化剤と会合し得ること、及びインビボ及びインビトロ画像化目的のような細胞又はウイルスの画像化に、及びインビトロ診断用標識として使用できることも明らかにした。したがって、好ましい態様において、本発明は、画像化色素を搭載する標識化ゼオライトに関する。ここで、画像化色素は、X線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)(単光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)又は他の関連する技術を含む)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択される。また、好ましくは、MRI、CT又はPETによって視覚化することができる色素で標識されたL型ゼオライトである。
【0058】
本発明のゼオライトは、分子画像化用に使用することができる。分子画像は、分子を、又は所定の疾患の「サイン」であり、かつ疾患の早期診断及び治療の効率的なモニタリングを可能にする、細胞レベルで生じる分子の事象を、視覚化することを目的とする。利用可能な画像モダリティーの中でも解剖学的な解像度をその画像中に実現できるお陰で、多くの注目が磁気共鳴画像法(MRI)に注がれた。しかし、MRIは、比較的感度の低いモダリティーであり、異なる解剖領域間で自然に生じる造影に影響を及ぼすには多量の陽子緩和剤を必要とする。現在利用できる市販の造影剤で、MR画像に50%の造影促進を得るためには、約50μMの局所濃度、すなわち、細胞当たり多数の、例えば、約109のガドリニウムセンターに達する必要がある(例えば、Aime et al, S. Magnetic Resonance Imaging 16(4): 394-406 (2002)を参照されたい)。
【0059】
MR分子撮像応用の開発は、標的部位における多数の画像化レポーターユニットの送達を可能にするさらなるツールを必要とする。例えば、Lanzaらは、105のGd(III)複合体を搭載した官能基化ミクロ乳化粒子を使用することにで、インテグリン受容体(この過剰発現は腫瘍内皮を特徴付ける)の視覚化を報告している (Lanza et al., Magnetic Resonance in Medicine 53(3): 621-627 (2005))。
【0060】
さらに、病的細胞を画像化レポーターのペイロードで適切に標的とすることができる担体が活発に探索されている。現在、リポソーム(例えば、Mulder WJM, Strijkers GJ, Griffioen AW, van Bloois L, Molema G, Storm G, Koning GA, Nicolay K, Bioconjugate Chemistry 15 (4): 799-806, 2004、及びMulder WJM, Douma K, Koning GA, Van Zandvoort MA, Lutgens E, Daemen MJ, Nicolay K, Strijkers GJ, Magnetic Resonance in Medicine 55 (5): 1170-1174, 2006を参照)及びミセル(例えば、Accardo A, Tesauro D, Roscigno P, Gianolio E, Paduano L, D'Errico G, Pedone C, Morelli G, Physicochemical properties of mixed micellar aggregates containing CCK peptides and Gd complexes designed as tumor specific contrast agents in MRI, Journal of the American Chemical Society 126 (10): 3097-3107, 2004を参照)のようなリン脂質ベースのシステムに多くの注目が向けられている。リン脂質は、細胞膜の主要な構成成分であるので、これらの文献のシステムは、細胞に容易に取り込まれる。リン脂質ベースのシステムでは実現できない応用に対処するために剛体粒子を設計するのは興味深いことである。さらに、前記粒子は、それ自身で付加的な画像プローブの担体として働き、MRI造影剤によって描かれる高空間分解能にさらなる生理学的情報を付与することができる。
【0061】
上記のように、画像化に関与する成分(例えば、Gd-イオン又は任意の誘導体)は、微細胞結晶のチャネルの内部に取り込むことができ、あるいは、微細孔結晶の表面で表面基となる。前記成分は、赤色発光成分Eu-DOTA (1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)又はMRI造影剤Gd-DOTA部分のいずれかを組み込む。Ln-DOTAキレートは、その高い安定性及びそれ故の低毒性から選択されている。DOTAがランタニドイオンを配位結合しているという事実が、MRI造影剤としてこのシステムの使用を可能にしている。Gd(III)は、遊離イオン形態では毒性があるので、DOTA {DTPA}のような非常に高い結合定数を与える適当なリガンドでキレートされなければならない。Gd(III)の毒性は、その後は無視できる。また、金属イオンを変化させる合成上の容易さもまた、これらのシステムを非常に多目的な物質にして、ランタニドの豊富な物理的特性の全てを活用できるようにする。Ln-DOTAが結合する無機骨格は、L型ゼオライト結晶である。
【0062】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の理解を目的として提供されるものであり、本発明の真の範囲は本願添付の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神から逸脱することなく、記載する手順において改変が可能であることを理解されたい。
【0063】
さらに、本発明を以下の非限定的実施例を参照して説明する。
【実施例1】
【0064】
ゼオライトの修飾
本実施例で使用した円筒形L型ゼオライト結晶は、平均長2.2μm及び平均直径1.2μmであった。
【0065】
テルピリジンリガンド末端化L型ゼオライト結晶
アミノ末端化L型ゼオライト結晶を(Huber et al., Angew Chem Int Ed 43: 6738, 2004に従って)L型ゼオライト結晶をn-ヘキサンに懸濁し、チャネル口の量を以下のように算出することによって調製した。L型ゼオライトチャネル口の数:ne=(Xz/lz)×5.21×10-7(ne:チャネル口の数(mol)、Xz:ゼオライトの質量(mg)、Iz:ゼオライトの平均長(nm))。9-フルオレニルメチルカルバメートN-ヒドロキシスクシンイミジルエステルを、(3-アミノプロピル)メトキシジメチルシランと共に反応させ、反応産物をチャネル口の量と等しくなるようにしてL型ゼオライト懸濁液に添加した。懸濁液を超音波処理し(20分間)、3時間還流下で加熱した後、遠心した。修飾されたL型ゼオライト結晶を20%(容量/容量)のピペリジンを含有する乾燥DMF(N,N'-ジメチルホルムアミド)に懸濁した。1時間撹拌し、メタノールで洗浄後、図1に示すようなアミノ末端化L型ゼオライト結晶を得た。約40mgのアミノ末端化L型ゼオライト結晶を2mlの乾燥DMFに懸濁し、10mlのトリエタノールアミンと混合した。懸濁液を密封ガラス管内で65℃に加熱した。活性型テルピリジンリガンド (TpyPh2COOSu)(上記式で算出した100倍過剰量)を1mlの乾燥DMFに懸濁し、溶液の半分を加温した懸濁液に加えた。15分間の撹拌後、残りを加え、溶液をさらに2時間撹拌した。遠心分離を行い、DMFから及びメタノールから、テルピリジンリガンド末端化L型ゼオライトを得て、オーブン内で60℃にて12時間乾燥させた。その結果を図1bに示す。
【実施例2】
【0066】
30nmのL型ゼオライト結晶の修飾
実施例1で説明したチャネル口の官能基化の前に、30nmのL型ゼオライト結晶を以下のように前処理した。
【0067】
25.6mgのL型ゼオライト結晶を2.8mlの0.1M KNO3水溶液に懸濁した。懸濁液を10分間超音波処理し、60℃で2時間撹拌した後、遠心をして、上清を除いた。再蒸留水で2回洗浄ステップを行った後、L型ゼオライト結晶を65℃で一晩乾燥した。クエン酸バッファーで処理し、22%湿度雰囲気下で平衡化した後、L型ゼオライト結晶の重量を測定した。チャネル口数を実施例1に挙げた式に従って算出した。L型ゼオライト結晶を、実施例1に記載のように修飾した。
【実施例3】
【0068】
Zn2+を有するL型ゼオライト集合体
実施例1で説明したように調製した約10mgのリガンド末端化L型ゼオライト結晶を1mlのメタノールに懸濁し、60℃に暖めた。メタノールを溶媒とするZnCl2標準溶液の算出量(2 eqのL型ゼオライトチャネル口:1eqのZnCl2は、実施例1のように算出した)を撹拌した懸濁液中にゆっくりと加えた。反応混合物を1分間超音波処理し、1日半撹拌した。
【0069】
遠心分離を行い、メタノールから集合L型ゼオライト結晶を得て、さらに60℃にてオーブン内で2時間乾燥させた。その結果を図1cに示す。
【実施例4】
【0070】
インビボ画像化用L型ゼオライト結晶
L型ゼオライト結晶にピロニン色素をCalzaferriら(Angew Chem Int Ed 42:3732-3758, 2003)によるイオン交換法を介して搭載した。色素溶液をL型ゼオライト結晶に加え、混合液を撹拌して、L型ゼオライト結晶のチャネル内に色素分子を取り込ませた。懸濁液を遠心後、上清を捨てた。そして、L型ゼオライトを洗浄して、残った組み込まれていない色素分子を除去した。さらに遠心ステップを経た後、上清を捨てて、色素を搭載したL型ゼオライト結晶を得た。
【0071】
1mgのL型ゼオライト結晶を1mlの再蒸留水と混合し、30分間超音波処理した。2μlの超音波処理したL型ゼオライト溶液を200μlのBV2細胞懸濁液(PBSバッファー中に250000個の細胞を含む)に加えた。
【0072】
懸濁液をPBSバッファーで400μlに希釈した。その懸濁液を37℃で5分間インキュベートした。インキュベーション後、懸濁液の10μl分割量をスライドガラス上に置き、顕微鏡で確認した(図3参照)。
【実施例5】
【0073】
1μmのL型ゼオライト結晶表面のアミノ官能基化
40mgのL型ゼオライト結晶(1mm)を乾燥トルエン(4ml)に懸濁し、30μlの(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APES)を加えた。その懸濁液を超音波処理(30秒間)し、105℃で4時間撹拌した。
【0074】
室温に冷却した後、サンプルを遠心して、上清を除いた。サンプルをトルエンで2回洗浄し、L型ゼオライト結晶の表面をアミノ官能基化した。
【実施例6】
【0075】
30nmのL型ゼオライト結晶表面のアミノ官能基化
実施例5に記載のように、40mgのL型ゼオライト結晶(30nm)を乾燥トルエン(4ml)に懸濁し、30μlの(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APES)を加えた。懸濁液を超音波処理(30秒)し、105℃で4時間撹拌した。
【0076】
室温に冷却した後、溶媒を蒸発で除き、その後、サンプルをEt2Oを用いて遠心チューブに移し、遠心した(4000rpmで30分間)。上清を除去し、サンプルをメタノールで1回洗浄し、75℃で一晩乾燥させた。それによって、L型ゼオライト結晶の表面をアミノ官能基化した。
【実施例7】
【0077】
DOTA-NHSの1μmのアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶への取り付け
実施例5で説明した4mgのアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶及び6mg (0.0072mmol)のDOTA-NHSを1mlの乾燥DMFに懸濁し、16μlのDIPEA(ジイソプロピルエチルアミン)を添加した。一晩撹拌した後、溶媒を蒸発除去し、DOTA修飾されたL型ゼオライト結晶を約2mlのH2Oに懸濁した。
【実施例8】
【0078】
DOTA-NHSの30nmのアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶への取り付け
実施例6で説明したように30mgのアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶及び94mg(0.113mmol)のDOTA-NHSを1mlの乾燥DMFに懸濁し、150μlのDIPEAを添加した。一晩撹拌した後、L型ゼオライト結晶を完全に可溶化し、その後、5ml Et2Oの添加によって沈殿させた。遠心後、DOTA修飾されたL型ゼオライト結晶をEt2Oで2回洗浄し、一晩乾燥した。
【実施例9】
【0079】
トリ-t-ブチルDOTA-NHSの1μmのアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶への取り付け
DMSOを溶媒とする2ml(最大0.013mmol)のDOTA活性化エステル溶液(トリ-t-ブチルDOTA-NHS)を実施例5の記載の4mgのアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶に加えた。16μlのDIPEAを添加し、一晩撹拌した後、溶媒を除去した。トリ-t-ブチルDOTA修飾L型ゼオライト結晶を水で1回洗浄した後、一晩乾燥させた。
【実施例10】
【0080】
トリ-t-ブチルDOTA修飾したL型ゼオライト結晶の脱保護
実施例9に由来する乾燥させたトリ-t-ブチルDOTA修飾したL型ゼオライト結晶を5mlのCH2Cl2に懸濁し、5mlのTFAを滴下で添加した。懸濁液を室温で一晩撹拌した。減圧下で溶媒を除いた後、DCM(2×10ml)、MeOH(2×10ml)、そしてエーテル(2×10ml)を連続的に添加及び蒸発することによって酸を除去し、DOTA修飾したL型ゼオライト結晶を得た。
【実施例11】
【0081】
Eu(III)イオンのDOTA修飾したL型ゼオライト結晶との錯体形成
5.2mgのEuCl3・H2O (0.014mmol)を実施例7及び10に記載したようなDOTA修飾したL型ゼオライト結晶に加えて、H2Oに再懸濁した。3滴の1N NaOHを添加し、懸濁液を一晩撹拌した。遠心後、上清を除き、Eu修飾されたL型ゼオライト結晶をEtOHで10回、洗浄液が増感剤の添加後に発光分光法でユーロピウムシグナルを示さなくなるまで洗浄した。
【実施例12】
【0082】
ガドリニウムイオンのDOTA修飾したL型ゼオライト結晶との錯体形成
DOTA修飾したL型ゼオライト結晶の錯体形成は、実施例11のように行った。EuCl3・H2Oの代わりに54.9mgのGdCl3・6H2O(0.148mmol)を添加した。洗浄後、Gd修飾L型ゼオライト結晶を75℃で数日間乾燥させた。
【実施例13】
【0083】
L型ゼオライトの二官能基化
上記方法に続いて、L型ゼオライトを蛍光色素ピロニンで満たし、Eu(III)イオンと錯体形成したDOTAリガンド(上記参照)で表面を官能基化した。その結果得られた二官能系をエタノールで洗浄し、乾燥させた。共焦点顕微鏡での解析で、図9a及びbで示したように、ピロニン及びEu錯体の両方による二重発光が明らかになる。
【実施例14】
【0084】
L型ゼオライトのカルボキシエステル官能基化
(材料及び反応)
L型ゼオライト材は、A. Zabala Ruiz, D. Bruhwiler, T. Ban, G. Calzaferri, Monatshefte fur Chemie 136 (2005) 77に記載のように合成した。H.Mas, A.k Khatyr, G.Calzaferri, Micropor. Mesopor. Mater 65 (2203), 233に記載の方法に従って、Pyを合成し、精製した。Oxl及びTRHは、Molecular Probes/Invitrogen社から入手し、さらに精製することなしに使用した。色素を搭載したL型ゼオライトサンプルは、以前にA. Devaux, Z. Popovic, O. Bossart, L. De Cola, A. Kunzmann, G. Calzaferri, Micropor. Mespor. Mater. 90 (2006) 69、G. Calzaferri, S. Huber, H. Maas, C. Minkowski, Angew. Chem. Int. Ed. 42 (2003) 3732及びC. Minkowski, G. Calzaferri, Angew. Chem. Int. Ed. 44 (2005) 5325に既に記載されたイオン交換工程に従って調製した。アミノ基で修飾されたL型ゼオライト結晶は、まずゼオライトをpH5のクエン酸バッファー内で1時間処理した後、S. Huber, G. Calzaferri, Angew. Chem. Int. Ed. 43 (2004) 239で公開された方法に従って調製した。L型ゼオライトのチャネル口へのカルボキシエステル末端基の付加は、T. Phoung, T. Khac-Minh, N. Thi Van Ha, H. Thi Ngoc Phuong, Bioorg. Med. Chem. Lett. 14 (2004) 653に記載の反応を用いて、アミノ基修飾した材料をメチル-3-イソチオシアネートプロピオネートと反応させることによって行った。テキサスレッド・ヒドラジド(TRH)のカルボキシエステル官能基化L型ゼオライトへのカップリングは、以下のように行った。10mgの前駆物質を2mlのメタノールに懸濁し、懸濁液を10分間超音波処理した。1mlのメタノールに溶解したテキサスレッド・ヒドラジド(チャネル口の数に対して3〜4モル当量)を滴下でL型ゼオライト懸濁液に加え、懸濁液を330Kで4時間撹拌した。反応産物を数回メタノールで洗浄した後、353Kで一晩乾燥させた。
【0085】
(物理学的測定)
FTIRスペクトルをPerkinElmer社FTIR spectrum OneでKBr diskとして、分解能4cm-1で記録した。FT-ラマンスペクトルをBOMEM DA8のラマンアクセサリーで測定した。このスペクトロメーターに、液体窒素冷却したInGaAs検出器及び石英ビームスプリッターを備えた。連続波、ダイオード励起されたNd3+;YAGレーザー(Coherent社;Compass 10642500MN)を励起ビームとして用いた。レイリー散乱を0°位で、2つのホログラフィック・スーパーノッチフィルター(Kaiser Optical Systems HSPF-I064.0-1.0)によって除いた。全ラマンスペクトルを16cm-1の分解能で測定した。Duran(登録商標)ガラスキャピラリーをサンプルホルダーとして供給した。蛍光スペクトルをPerkin-Elmer社蛍光分光光度計LS50Bで、及び吸収スペクトルをPerkin-Elmer社UV/Vis/NIR器Lambda 900で測定した。蛍光顕微鏡画像は、Olympus社のBX60顕微鏡で記録した。
【0086】
(結果)
合成法は、平均長30nm及び5000nmのL型ゼオライト結晶で行った。2つの極端な長さの選択により、前記方法が結晶サイズとは無関係であること及び異なる技術で材料の特性解析が可能であることが実証される。第1の、かつ簡単な検査は、官能基化した材料の赤外線及びラマンスペクトルを測定することである。これは、置換基の濃度が表面の増大によって体積比に対してより高くなるため、30nm結晶で行った。
【0087】
対応するFTIRスペクトルを図10(a)〜(b)に示す。全スペクトル中、広くて強いバンドと約1640cm-1に中心を持つピークは、サンプル中の水の存在によるものである。図10(b)の1570cm-1におけるバンドは、アミノ基のN-H結合角のひずみに起因するものと思われる。このバンドは、図10(c)では消えて、反応の成功を示すより低い周波数(1546cm-1)の新たなバンドと置き換わっている。さらに、1720 cm-1においてエステル基から生じるC=O伸縮振動の存在を容易に認めることができる。図10(b)及び10(c)のスペクトルは、-CHz-及び-CH3-基に起因する2980cm-1〜2830cm-1の範囲の吸収帯を示している。本吸収帯の詳細な比較及びそれらのアサインメントを表1に記載する。
【0088】
図11は、カルボキシエステル末端化L型ゼオライト結晶及びL型ゼオライト結晶単体のラマンスペクトルを示している。それぞれのケースにおける結晶の平均長は、30nmであった。強度の低いスペクトルは、L型ゼオライトが非常に弱いラマン散乱体であるという事実に起因するだけでなく、(チャネル口にのみ存在する)置換基の濃度が低いことにもよる。L型ゼオライト単体のラマンスペクトルは、500cm-1に一つの明瞭なバンドのみを含む。本バンドは、0-T-0(T=Si又はAl)曲げ振動によるものと思われる。修飾したサンプルのスペクトルは、いくつかの付加的なバンドを示す。732cm-1のバンドは、第二級脂肪族アミンのN-H振動によるものである。一方、790cm-1のピークは、Si-C伸縮様式に起因するものと思われる。約1001cm-1の弱いバンドは、C=S伸縮振動から生じる。最後の1310cm-1と1452cm-1の2つのピークは、-CHz-のねじり運動及びSi-CH3の非対称伸縮様式によるものであった。
【0089】
振動スペクトルは、反応が成功したことを示している。取り付けられた官能基の空間分布の情報を入手するために、より大きな結晶を、光学顕微鏡を用いてL型ゼオライト結晶表面のエステル基を蛍光色素で標識した後に調べた。この研究では、5000nm長の結晶をカルボキシ反応性色素TRHで標識した。カップリング反応は、T.Phuong, T.Khac-Minh, N. Thi Van Ha, H. Thi Ngoc Phuong, Bioorg. Med. Chem. Lett 14 (2204) 653に記載の方法と同様の方法で行った。図12において得られた蛍光顕微鏡画像は、色素、すなわちカルボキシ基が結晶のチャネル口に好ましく搭載されていることを示している。この解釈は、全表面に渡って修飾をされた結晶の光学顕微鏡画像によって裏付けられる。このような画像は、S. Huber and G. Calzaferri, Angew.Chem.Int.Ed 43 (2004) 6738の図3に報告されている。
【0090】
カルボキシエステル反応性色素がL型ゼオライト表面に固定されているか否かを検証するための独立した方法は、エネルギー移動実験を行うことである。Py及びTRHは、Pyの蛍光スペクトルとTRHの吸収スペクトルの間で都合の好いスペクトル重複があるため、適切な供与体と受容体となる。他の有利な点としては、受容体TRHの蛍光最大値(612nm)が、Pyのもの(510nm)とは十分に離れていることである。搭載した30nmサイズのL型ゼオライトをPyを用いて約10%の搭載レベルで搭載した。その後、Pyを搭載したL型ゼオライトを、TRHで修飾した。メタノールに懸濁した、Py又はTRHのみを搭載した30nm長のL型ゼオライト結晶の励起及び蛍光スペクトルを図13の左図に示す。上記と同条件で測定した、TRHで修飾されたチャネル口を有するPy-L型ゼオライト材の同様のスペクトルは、図13の右図に示した。本サンプルの発光スペクトルは、Pyのみが光を吸収する460nmでサンプルを励起することによって記録をした。発光スペクトルは、2つのバンドから成る。第1の約510nmの発光バンドは、Pyによるものと考えられるが、第2の612nmにおける発光バンドはTRHに相当する。TRHは、460nmで直接励起されないので、第2の発光バンドは、PyからTRHへの有効なエネルギー移動に起因するものである。660nmで検出されたこの混合物の励起スペクトルは、各分離色素の励起カーブの重ね合わせにぴたりと一致する。このような挙動は、共鳴エネルギー移動のときに予想されるものである。
【0091】
これらの実験を行う一方で、L型ゼオライトのチャネル端部におけるカルボキシエステル基による修飾がトルエン中で結晶のより良い分散可能性をもたらすことが観察された。この性状をさらに調べるため、30nmサイズのL型ゼオライトサンプルにOxlを搭載し、続いてチャネル口をカルボキシエステル基で修飾した。トルエンに懸濁した調製物質の吸収、発光及び励起スペクトルを図14に示す。カルボキシエステル官能基化Oxl-L型ゼオライトサンプル及び非置換Oxl-L型ゼオライトサンプルの吸収スペクトル(図14の左図に図示)は、Oxlに属する十分に分離されたバンドを示している。カルボキシエステル末端化物質の500nm〜350nmの範囲のベースラインが非修飾サンプルのそれと比較してはるかに低いことが判明したことも興味深い。既に述べたように、表面修飾は、それらの凝集を抑制することによってL型ゼオライト結晶の分散能を改善する。得られたより小さな粒子サイズは、レイリー散乱強度を減少させる。処理したゼオライト材の改善された分散能は、光学顕微鏡下で懸濁液の液滴を調べることによっても観察することができる。他の表面処理したL型ゼオライトナノ粒子の同等の観察がA.Devaux, Z. Popovic, O.Bossart, L. De Cola, A. Kunzmann, G.Calzaferri, Micropor. Mesopor. Mater. 90 (2006) 69中に発表された。カルボキシエステル末端化Oxl-L型ゼオライトの蛍光スペクトル(図14、右図参照)におけるバンド形状は良質で、予期された波長を生じている。したがって、本研究において使用された官能基化方法は、L型ゼオライトチャネル内に挿入された色素に有害な影響を与えないことを証明している。
【実施例15】
【0092】
MRI適用用プローブとしてのL型ゼオライト結晶
(合成)
リガンドDOTA NHSは、Macrocyclics社(USA)より入手し、そのまま使用した。他の全試薬は、Sigma-Aldrich社より入手し、そのまま使用した。1μm及び30nmの純粋なL型ゼオライト結晶をMegelski, Calzaferri, Adv. Funct. Matter (2001) 277及びZabala Ruiz, Bruhwiler, Ban Calaferri, Monatshefte fur Chemie, 136 (2005), 77に記載のように合成し、特徴づけをした。カリウム交換型を全実験で使用した。
【0093】
(1μm L型ゼオライトのアミノ官能基化)
1μmのL型ゼオライト結晶40mgを乾燥トルエン(4mL)に懸濁し、30μLの(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APES)を加えた。懸濁液を30秒間超音波処理し、105℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、サンプルを遠心し、上清をピペットで除いた。サンプルを2回、トルエンで洗浄した。
【0094】
(30nm L型ゼオライトのアミノ官能基化)
30nmのL型ゼオライト結晶40mgを乾燥トルエン(2mL)に懸濁し、30μLの(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APES)を加えた。懸濁液を30秒間超音波処理し、105℃で4時間撹拌した。室温まで冷却した後、Et2O(6mL)を加え、サンプルを4000rpmで30分間遠心した。上清をピペットで除いた後、サンプルをメタノールで1回洗浄し、それからオーブンで75℃にて一晩乾燥させた。
(1μm L型ゼオライトの全表面上に取り付けられたNH2基とAtto-NHSとの反応)
1mgのL型ゼオライト結晶及び0.5mg(0.01mmol)のAtto-NHSを2mlの乾燥 DCMに懸濁した。懸濁液を一晩室温で撹拌した。遠心後、Atto発光が洗浄液中に見られなくなるまでサンプルをDCMとMeOH(5×3mL)で洗浄した。
【0095】
(30nm L型ゼオライトの全表面上に取り付けられたNH2基とAtto-NHSとの反応)
1mgのL型ゼオライト結晶及び0.5mg(0.01mmol)のAtto-NHSを2mlの乾燥 DCMに懸濁した。懸濁液を一晩室温で撹拌した。遠心後、Atto発光が洗浄液中に見られなくなるまでサンプルをDCMとMeOH(6×3mL)で洗浄した。
【0096】
(1μm L型ゼオライト表面上のNH2基とDOTA-NHSとの反応)
4mgのL型ゼオライト結晶及び6mg(0.0072mmol)のDOTA-NHSを1mlの乾燥 DMFに懸濁し、16μLのDIPEAを添加した。懸濁液を一晩撹拌した後、サンプルを丸底フラスコに移し、溶媒をロータリーエバポレーターで除いた。その後、溶媒としてH2O(約2mL)を用いてサンプルを遠心管中に戻した。
【0097】
(30nmのL型ゼオライト表面上のNH2基とDOTA-NHSとの反応)
30mgのL型ゼオライト結晶及び94mg(0.113mmol)のDOTA-NHSを1mlの乾燥 DMFに懸濁し、150μLのDIPEAを添加した。懸濁液を一晩撹拌した後、結晶を可溶化した。5mLのEt2Oを添加した後、サンプルを沈殿させて遠心した。サンプルをEt2Oで2回洗浄し、オーブン中で一晩乾燥させた。
【0098】
(Eu(III)イオンとL型ゼオライト結晶におけるDOTAとの錯体形成)
H2O中のDOTA官能基化したL型ゼオライトサンプルに5.2mgのEuCl3・6H2O(0.014mmol)を加えた。1NのNaOHを3滴添加した後、混合液を一晩撹拌した。遠心及び上清の除去後、サンプルをEtOHで10回、洗浄液が増感剤添加後に発光分光法でユーロピウムシグナルを示さなくなるまで洗浄した。
【0099】
(Gd(III)イオンとL型ゼオライト結晶におけるDOTAとの錯体形成)
DOTA官能基化したL型ゼオライトサンプルを2mlのH2Oに懸濁し、54.9mgのGdCl3・6H2O(0.148mmol)を加えた。1NのNaOHを数滴添加した後、混合液を一晩撹拌した。遠心及び上清の除去後、サンプルをEtOHで洗浄した。その後、サンプルを、EtOHで洗浄し、オーブン中で75℃にて乾燥させた。生じた過剰な錯体形成していないGd(III)イオンは、水によるGd-DOTA-L型ゼオライト系の24時間の透析で除いた。
【0100】
(結果)
定常状態の発光スペクトルは、Xeアークランプ、Hamamatsu R928光電子増倍管及び二重励起・発光モノクロメーターを備えたSpex Fluorolog 1681で記録した。発光スペクトルを標準補正カーブにより線源強度及び検出器応答に対して補正した。発光を直角に検出した。約1μmの長さを有するL型ゼオライト結晶の蛍光顕微鏡画像を撮影した。蛍光顕微鏡検査は、高圧水銀ランプ及び適当なフィルターを備えたOlympus BX 41顕微鏡を用いて行った。走査電子顕微鏡検査は、LEO 1530 VPを用いて行った。
【0101】
水プロトンの縦緩和率は、Stelar Spinmaster (Stelar, Mede, Pavia, Italy)分光計を用いて20MHzで稼動させて標準反転回転法により測定した。温度は、銅コンスタンタン熱電対(不確実性0.1℃)を備えたStelar社 VTC-91 air-flow heaterで制御した。プロトン1/T1 NMRDプロファイルを、Stelar社 磁界循環弛緩測定器(field-cycling relaxometer)で磁場強度0.00024〜0.47T(0.01〜20MHzのプロトンラーモア周波数に相当する)の連続量(continuum)以上となるように測定した。弛緩測定器は、1/T1±1%の絶対的不確実性をもつ完全コンピュータ制御下で稼動させた。0.47T(20MHz)〜1.7T(70MHz)のデータ点を可変フィールドで動作するStelar社のSpinmaster分光計で回収した。弛緩特性(relaxometric characterization)に関するGd-DOTA-L型ゼオライト溶液のGd(III)濃度を所定量のサンプル溶液を120℃で一晩37%のHClを添加し、石化して、観察された酸性溶液緩和率(R1obs)の測定量から測定した。ここで、酸性条件(13.5 mM-1 s-1)におけるGd(III)アクアイオンの緩和能(r1p)は、公知である。本方法で、正確なGd(III)濃度を算出することが可能となった(本方法は標準ICP溶液を用いて調整し、精度を1%に決定した)。
【0102】
発光性又は常磁性イオンと強固に結合することのできるキレートリガンドを用いて、公知の充填L型ゼオライト全表面を官能基化する二重プローブを設計した。本発明の一態様で、約1μmの長さを持つ空のL型ゼオライト結晶を用いた。これらのより大きなシステムは、30nmの長さのものと同様の構造的及び化学的性質を有するが、言うまでもなく異なる技術で特徴付けすることも容易である。
【0103】
反応の第1ステップは、ゼオライトの全表面をその後にキレートシステムで反応することのできる官能基で官能基化することを含む。3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APES)は、ゼオライト表面上の遊離状態のSi-OH基と反応して、図15に描いた簡易手順に従って前記表面の良好な被覆をもたらすことが知られている。
【実施例16】
【0104】
インビトロ用診断応用用の標識としてのL型ゼオライト結晶
(カチオン性色素を用いたL型ゼオライトの色素搭載)
L型ゼオライト材をE.g. S. Megelski, G. Calzaferri Adv. Funct. Mater. 2001, 11, 277.bに記載のように合成し、特徴づけする。
【0105】
カチオン性色素の搭載については、カリウム交換型結晶を用いる。色素として、レーザーグレードオキサジン1をさらに精製することなく使用する。Ox1をL型ゼオライトチャネル内にトルエンからイオン交換によって挿入する。通常、L型ゼオライト(20mg)をトルエン(5ml)に懸濁する。その懸濁液を十分に攪拌すると同時に、トルエン(100ml)に懸濁した所望量のOx1を加える。混合液を80℃まで数分間加熱する。ゼオライトの外表面上に吸収されたあらゆる色素を除くため、その後、結晶をFluka社のGenapol X-080希釈液で洗浄する。通常、Genapol X-080水溶液(1:500;5ml)を添加し、得られた懸濁液を10mm超音波処理する。その後、上清が透明になるまで遠心し、それを廃棄することができる。
【実施例17】
【0106】
中性色素を用いたL型ゼオライトの色素搭載
L型ゼオライト材は、E.g. S. Megelski, G. Calzaferri Adv. Funct. Mater. 2001, 11, 277.bに記載のように合成し、特徴付けする。
【0107】
中性色素での搭載に関して、色素は、Calzaferri et al, Chem. Eur. J. 2000, 6, 3456に記載の二重又は単純アンプル法を用いた気相法に従って挿入することができる。本方法は、例えば、スクアラインのような内塩色素に使用することもできる。
【実施例18】
【0108】
吸着及びクロスリンクを介したタンパク質の搭載
10mgのオキサジン1を円盤状のL型ゼオライト(77nm×400nm)内に搭載し、最終容量1mlのMESバッファー中で2mgの重合ジゴキシン抗体と共に15分間インキュベートする。クロスリンク用に、0.1mlの0.1%のEDC溶液を加え、再度2時間インキュベートする。30分間の付加的なインキュベートに続いて反応をグリシンの添加により停止させる。30分間の遠心及び再懸濁の後、ブロッキングステップを1mlの2% BSAの添加によって行った。数回の洗浄ステップ及び遠心による各洗浄ステップ後の分離の後に、ゼオライト-抗体コンジュゲートを、アジ化ナトリウムを保存剤として添加して保存する。動的光散乱実験は、ポリスチレン粒子を用いて行うアナログ法とよく一致する40nmの増加を示す。
【実施例19】
【0109】
ゼオライト表面の全表面修飾/官能基化
手順は、Huber, Calzaferri ChemPhysChem 2004, 5, 239に記載された方法に従う。色素を搭載し、洗浄したゼオライトを100℃で一晩乾燥させる。オキサジン-L型ゼオライト(10mg)を5μlのアミノエチルプロピル-トリエトキシシラン(APTES)を含む5mlの乾燥トルエンに懸濁し、120℃で2時間還流して、外表面に共有結合によって付けられたアミノ基を有するOx1 L型ゼオライト結晶を製造する。結晶をトルエンで2回洗浄した後、100℃で3時間再乾燥させて、5mlのクエン酸バッファーに懸濁する。メチル-3-イソチオシアネートプロピオネートを添加し、ウォーターバスで50〜60℃にて15分間加熱し、室温に14時間放置する。遠心及び再懸濁後、エステル基をKOH溶液で処理することにより切断し、再度遠心して、さらなる修飾のためにpH8のバッファーに再懸濁する。
【0110】
(抗体カップリング)
a)カルボン酸で修飾した10mgのディスク形状 Ox1 L型ゼオライトを、0.1mlの0.1% EDC溶液の添加及び20分間の回転ミキサーを用いた処理によって前活性化する。最終容量1mlのMESバッファーに2mgの重合ジゴキシン抗体を添加した後、混合液を1時間インキュベートする。
【0111】
付加的なクロスリンクステップは、実施例18で説明したように、グリシンを用いる付加的な停止反応及びBSAを用いたブロッキング反応と共に行うことができる。
【0112】
b)カルボン酸基を導入する2ステップ法を用いる代わりに、ワンステップ合成法を5-(クロロ-ジメチルシリル)ペンタン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(Prochimia Surfaces)を用いて、上記のような前活性化ステップなしに生体分子に直接カップリングして行うことができる。
【実施例20】
【0113】
抗体及びPEG/連続的二官能基化を用いたゼオライトの修飾
それぞれ10mgの色素を搭載した円筒形状の又は円盤形状のL型ゼオライトの連続二官能基化は、S. Huber, G. Calzaferri, Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 6738-6742及び上記の方法に従って合成したFMOC-APMESを用いるチャネル口の修飾によって達成される。壁面修飾は、(3-トリエトキシシリルプロピル)-t-ブチルカルバメート(ABCR Product List AB126796)を用いて、実施例18に記載の条件下で行われる。t-BOC保護基は、標準条件(TFA、トリクロロメタン)を用いることによって選択的に切断することができる。親水性PEG-NHSエステルは、市販のもの(例えば、Sunbright(登録商標)ME050HS;NOF Corporation)を利用でき、それを、アミノ修飾したゼオライトとリン酸バッファー(pH8.0)を用いて反応させる。FMOC保護基は、ゼオライト結晶を0.2mlのピペリジンを含む1mlの乾燥DMFに添加することにより切断される。遠心及び洗浄後(S. Huber, G. Calzaferri, Angew. Chem. Int. Ed. 2004, 43, 6738-6742参照)、アミノ基をさらにジオキサンに溶解した大過剰のビス-N-ヒドロキシスクシンイミドスベレートで処理して、1時間反応させることによって修飾した。別の遠心及び洗浄ステップの後、生体分子での誘導体化は、前記実施例19b)に記載のように行う。
【実施例21】
【0114】
APTESを用いた全外表面の修飾
5〜10mgのL型ゼオライト結晶をPTFE管内にて3mlのトルエンに懸濁し、1mgの結晶あたり約1μLの大過剰の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン (APTES)を加えた。この懸濁液を5分間超音波処理して、110℃で約3時間撹拌した。冷却後、懸濁液を、トルエンを用いてガラス遠心管に移し、遠心した。その後、サンプルをトルエン、エタノール及びメタノールで洗浄し、オーブンで70℃にて乾燥させた。
【実施例22】
【0115】
APMSを用いたチャネル口の修飾
オーブンで乾燥したゼオライト結晶を使用する前に、そのゼオライト結晶を上記飽和KNO3水溶液に22%の相対湿度雰囲気下で一晩放置し、再水和した。サンプルを通常10〜20mg測り、チャネル口の数を算出した。
【0116】
PPCOチューブ内の1mLの乾燥DCMに10μLの(3-アミノプロピル)ジメチル-メトキシシラン(APMS、0.059mmol)を加えた。前記溶液に、1mLの乾燥DCMに溶解した30mgのFMOC-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(FMOC-NHS、0.089mmol、1.5eq.)を滴下で添加し、反応混合液を室温で1.5時間撹拌して、APMS-FMOCを生じさせた。それから、L型ゼオライトサンプル中にチャネル口が存在するので10μLの新しい溶液が同数の反応性APMSストップコックを含むように反応混合液を希釈した。この希釈液量をPTFEチューブ中の2mLの乾燥n-へキサンに懸濁したL型ゼオライトに加えた。混合液を20分間超音波処理して、チャネル口におけるFMOC-APMSストップコックの吸収を可能にし、また70℃で3時間還流した。懸濁液を、ガラス遠心管中に付加的なn-へキサンを用いて移した。それを遠心して、上清をピペットで除いた。FMOC-APMS-L型ゼオライトサンプルを10%のピペリジンを含む2mLの乾燥 DMFに懸濁した。脱保護を室温で1時間撹拌を行った後に完了させ、その結果NH2-L型ゼオライトを得た。修飾したL型ゼオライトサンプルをアセトニトリル及びMeOHで洗浄して残ったピペリジンを除去し、オーブン中で70℃にて乾燥させた。
【実施例23】
【0117】
基底部をアミノ官能基化したL型ゼオライト結晶とAtto-NHSとの反応
実施例22由来の3〜5mgの末端修飾したH2N-L型ゼオライトを1.5mLの乾燥アセトニトリルに懸濁し、1滴のトリエタノールアミンを加えた。そして懸濁液を超音波処理後、70℃に加熱した。過剰量のAtto425-NHSエステル又はAtto610-NHSエステルを、1mLの乾燥アセトニトリルに溶解し、その溶液をゆっくりと前記懸濁液に加えた後、混合液をさらに1.5時間70℃で撹拌した。冷却後、懸濁液を遠心し、Atto-L型ゼオライトをメタノールで6回又は上清が弱い蛍光のみを示すようになるまで、洗浄した。
【実施例24】
【0118】
二官能基化された表面特異的結晶
二官能基化された結晶を、実施例23に従ってAtto色素を用いてチャネル口で修飾されたサンプルから合成した。これらの二官能基化結晶を、温和な温度にてオーブン内で乾燥させ、それから全外表面を実施例21で説明したようにAPTESで修飾した。その後、実施例23のように(MeCN中での70℃、2時間の反応)、Atto-NHSエステルで固定されたNH2基全体にわたる反応によってL型ゼオライト結晶の全表面に色付けをした。
【実施例25】
【0119】
二官能基化された混合結晶
実施例21由来の3〜5mgの十分に修飾したH2N-L型ゼオライトを1.5mLの乾燥アセトニトリルに懸濁し、1滴のトリエタノールアミンを加えた。そして懸濁液を超音波処理後、70℃に加熱した。過剰量のAtto425-NHSエステル及びAtto610-NHSエステルを等モル量で、1mLの乾燥アセトニトリルに溶解し、その溶液をゆっくりと前記懸濁液に加え、混合液をさらに1.5時間70℃で撹拌した。冷却後、懸濁液を遠心し、混合Atto-L型ゼオライトをメタノールで6回又は上清が弱い蛍光のみを示すようになるまで、洗浄した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素標識されたゼオライト、ストップコック部分及びそれらに共有結合している親和結合剤を含むコンジュゲート。
【請求項2】
親和結合剤がストップコック分子に結合している、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記親和結合剤が抗原及び抗体、ビオチン又はビオチン類似体及びアビジン又はストレプトアビジン、糖及びレクチン、核酸又は核酸類似体及び相補的核酸並びに受容体及びリガンドからなる群より選択される、請求項1又は2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記親和結合剤が抗原又は抗体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
ゼオライトを標識するために用いられる色素が、発光化合物、蛍光化合物、光吸収化合物、感光プレートで視覚化できる放射性化合物、X線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記色素が発光化合物、蛍光化合物及び放射性化合物からなる群より選択される、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記色素がMRI、CT又はPETによって視覚化できる色素である、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
請求項1に記載のコンジュゲートを製造する方法であって、
a)ゼオライトを色素で標識するステップ、
b)色素標識されたゼオライトのチャネルをストップコック分子によって閉鎖するステップ、
c)親和結合剤を添加するステップ、及び、
d)適当なカップリング化学反応を用いて、ストップコック分子を有する色素標識されたゼオライトと親和結合剤との間で共有結合を形成するステップ、
を含む、前記方法。
【請求項9】
診断方法における請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項10】
インビトロ方法で分析物を測定する方法であって、
a)分析物を含む疑いのある又は含むことがわかっているサンプルを提供するステップ、
b)前記サンプルと請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンジュゲートを分析物コンジュゲート複合体の形成に適切な条件下で接触させるステップ、
c)ステップb)で形成された複合体を測定し、それによって分析物の測定値を得るステップ、
を含む、前記方法。
【請求項11】
画像化できる色素で標識化されたゼオライトであって、該画像化できる色素がX線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択される、前記標識化されたゼオライト。
【請求項12】
前記色素がMRI、CT又はSPECTによって視覚化することができる色素である、請求項11に記載の標識化されたゼオライト。
【請求項13】
ゼオライトがL型ゼオライトである、請求項11又は12に記載の標識化されたゼオライト。
【請求項14】
カルボキシエステル官能基化されたL型ゼオライト。
【請求項15】
前記L型ゼオライトが色素で標識されている、請求項14に記載のカルボキシエステル官能基化されたL型ゼオライト。
【請求項16】
請求項15に記載のカルボキシエステル官能基化され、且つ色素標識されたL型ゼオライトであって、ゼオライトを標識するのに用いられた色素が蛍光化合物、発光化合物、感光プレートで視覚化できる放射性化合物、X線を用いて視覚化できる金属化合物、磁気共鳴画像(MRI)を用いて視覚化できる化合物、X線コンピュータ断層画像法(CT)、超音波又は陽電子放出断層撮影法(PET)によって画像化することのできる同位元素からなる群より選択される、前記L型ゼオライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−506176(P2010−506176A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531724(P2009−531724)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005811
【国際公開番号】WO2008/052603
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【出願人】(509093082)
【Fターム(参考)】