説明

微細技術に適した三次元物体を製造する方法および装置

【課題】微細技術分野の製品に適している三次元物体を製造する方法及び装置の提供。
【解決手段】三次元物体3は、連続して固化可能な液体または粉末の製造用材料3aを1層ごとに電磁放射7aで固化することによって製造され、前記電磁放射7aは、第1のパルス電磁放射と、第1のパルス電磁放射よりも周波数が高い第2のパルス電磁放射または連続電磁放射とを用いる。更に好ましくは、第1のパルス電磁放射を前記製造用材料3aの層の第1の領域に照射し、第2のパルス電磁放射または連続電磁放射を前記製造用材料の前記層の第2の領域に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は三次元物体を製造する方法および装置に関する。製造された物体は特に微細技術分野の製品に適している。
【背景技術】
【0002】
EP0758952Bは三次元物体を製造する公知の方法および装置を記載しており、この方法によれば、該物体は固化可能な液体や粉末を電磁放射により反応させて1層ずつ連続して固化することにより製造される。ここで、電磁放射は好ましくはパルスレーザ放射である。DE10028063A1およびDE10065960A1は同様に、電磁放射がパルスレーザ放射である装置を開示している。
【0003】
DE10258934A1は部材をレーザビームを用いて部分的に接続して保持する方法および装置を記載している。パルスレーザ放射が供給され、放射圧が粉末層の圧縮およびさらなる加熱に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 0758952B1
【特許文献2】DE 10028063A1
【特許文献3】DE 10065960A1
【特許文献4】DE 10258934A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、これらの方法は微細構造の製造に適している。しかしながら、公知の方法により製造可能な部材、特に金属部材は、空隙が残るため、微細技術分野における、ある種の部品には適していない。
【0006】
そこで、本発明の目的は微細技術の分野で利用され得る三次元物体を製造する方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的は、請求項1記載の特徴を有する三次元物体を製造する方法および請求項15記載の特徴を有する三次元物体を製造する装置によって解決される。さらなる利点と改良は従属項の構成に記載されている。
【0008】
本発明に係る方法および装置は三次元物体をマイクロメーターレベルの精度で形成するマイクロレーザ焼結(micro-LS)に好適にかつ有利に使用され得る。
【0009】
このような方法および装置によって、高密度の三次元構造を製造することができ、これにより、三次元構造の機械特性も改善され得る。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点は実施形態の記載および添付した図面から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1またはその他の実施形態に係る三次元物体を製造する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、レーザ焼結装置は上方が開放されたフレーム1および、フレーム1内に垂直方向に移動可能に設けられた台座2を有している。台座2は製造される三次元物体3を移動させるものであり、内部の製造空間を規定している。台座2は、台座2を垂直方向に移動させ、固化される三次元物体3の層を作業面4上に配置するための昇降機構12に接続されている。
【0013】
さらに、粉末状の製造用材料3aの層を供給するための被覆部5が設けられている。製造用材料3aとしては、レーザ焼結可能なあらゆる粉末または複数の粉末の組み合わせ、例えばポリアミドおよび/またはポリスチレンのようなポリマー、金属、セラミクス、化合物、および、PAEK(ポリアリルエーテルケトン)のような耐熱性樹脂を用いることができる。金属含有粉末材料としては、あらゆる金属およびそれらの合金、あるいは金属化合物または非金属化合物との混合物が使用される。最初に、製造用材料3aが貯蔵部6からフレーム1に供給される。その後、被覆部5が、粉末状の製造材料3aが既に固化された層の上を所定の高さだけ覆うように、作業面4の所定の高さを移動する。装置はさらにレーザビーム7aを生成するレーザ7を有しており、屈折装置8によって作業面のあらゆる点に収束される。これにより、レーザビーム7aは粉末状の製造材料3aを、製造される三次元物体の断面に対応する位置で選択的に固化できる。レーザとしては、製造材料に対応するレーザ焼結またはレーザ溶解にそれぞれ適したあらゆる単体または複数のレーザを用いることができ、例えばCOレーザ、固体レーザ、および他のレーザが挙げられる。
【0014】
符号10はフレーム1、台座2、昇降機構12、および被覆部5が設けられた製造チャンバを示している。符号9はレーザビーム7aが入射される製造チャンバ10の開口部を示し、製造チャンバ10内には好ましくは保護ガスが導入される。さらに、制御部11が設けられる。この制御部を介して製造工程を進めるために装置が制御される。
【0015】
レーザ焼結装置は、好ましい形態によれば、マイクロレーザ焼結装置であり得る。マイクロレーザ焼結は、非常に微細な粉末が使用され、非常に薄い層が形成されることを特徴としている。マイクロレーザ焼結を用いることにより、精度は10〜20μm以下に達する。上記粉末としては、粒径が約1nm〜約100nmのものが用いられる。粒径はDIN ISO 13320-1に基づくレーザ反射法により測定される。供給される粉末層の厚さは約1μm〜約100μmである。一般的に、マイクロレーザ焼結のためには、粒径と層の厚さは表面力が重力よりも大きくなるようにする。ビーム径は約1μm〜20μmのものが用いられ得る。レーザは、好ましくはファイバーレーザまたはYAGレーザである。微細技術分野への適用に適したあらゆる材料の粉末が用いられ得る。好ましい態様においては、金属粉末が用いられる。
【0016】
装置の動作の際には、第1の工程で台座2が昇降機構12によって、その上端が、作業面4から1層分の厚さだけ下がった位置まで移動する。次に、製造用材料3aの最初の層が貯蔵部6および被覆部5を介して台座2に供給され、製造用材料3aが水平または平坦化される。その後、制御部11が屈折装置8を制御して、屈折したレーザビーム7aが、固化させる製造用物体の層の位置に選択的に照射されるようにする。これにより、製造用材料のこれらの部分が三次元物体が製造されるように固化または焼結される。
【0017】
次の工程では、台座2は昇降機構12によって1層分の厚さ分(製造用材料3aが次に焼結される1層分の厚さ)だけ下降される。貯蔵部6と被覆部5によって、製造用物体の次の層が供給され、平坦化され、レーザビーム7aによって選択的に固化される。これらの工程は所望の三次元物体が製造されるまで続けられる。
【0018】
本発明の実施形態に係る方法および装置によって、レーザ7は制御部11によって2つの異なる動作モードで制御される。第1の動作モードは、レーザ7の第1のパルス放射7aを第1の周波数で行うものである。第2の動作モードは、第1のパルス放射よりも周波数の高い放射または連続放射である第2の放射を行うモードである。第1のパルス放射の周波数は、例えば60kHz〜450kHzであり、好ましくは、60kHz〜300kHzである。第2のパルス放射の周波数は例えば、200kHz〜450kHzである。
【0019】
パルス放射7aはパルス励起またはレーザ7自身(Qスイッチまたはモード同期)によっても生成されることができる。パルスレーザ放射ビーム7aはCWレーザ(Continuous Wave laser)のように連続して照射されず、パルス状に照射される。即ち、時間幅で規定されたパルスである。
【0020】
好ましくは、レーザ7はパルス放射7aと連続放射7aの両方を照射可能に用いられる。パルス放射7aのために、「励起光」を短周期でスイッチをON/OFすることにより、CWレーザがパルス状に動作される。二酸化炭素レーザはこのように動作され得る。また、1kHz以上に励起され得る。他の実施形態では、パルスの生成はCWレーザと例えばチョッパのような簡易な変調器の組み合わせで行われる。
【0021】
被覆部5によって製造材料3aの層が平坦化されると、製造用材料3aへの放射が以下の2つの工程で行われる。最初に、第1のパルス放射7aが製造材料の層の第1の領域に照射され、続いて第2のパルス放射または連続放射7aが製造材料の層の第2の領域に照射される。
【0022】
好ましくは、第1および第2の領域は少なくとも一部が重なっている。上記領域は全体が重なっていてもよく、1層または全層の一部領域であってもよい。より好ましくは、第1のパルス放射7aの製造用材料への照射と、前記第2のパルスまたは連続放射の間に、前記第1のパルス放射が前記製造用材料3aを固化する間、時間間隔が与えられる。
【0023】
第1のパルス放射と第2のパルス放射または連続放射の組み合わせは相乗作用を有する。まず、第1のパルス放射7aは製造用材料3a中の粉末の表面張力の開放を引き起こし、さらに粉末粒を結合させる。また、第2のパルスまたは連続放射7aはさらに既に第1のパルス放射7aが照射された製造用材料3a中の空孔焼結構造の圧縮を引き起こす。このようにして、第2の放射で溶解ビーズの形成が抑制される。
【0024】
代替的な実施形態としては、時間毎に交互に層の第1の領域が第1のパルス波に照射され、次に層の第1の領域と重ならない第2の領域に第2の連続放射が照射されてもよい。そのため、第1の領域と第2の領域は複数あってもよい。
【0025】
パルス状または連続に照射され、部分的または完全に重なり、あるいは重ならない第1の領域と第2の領域で層を分割することによって、層へのエネルギーまたは熱の入力が、層内の応力が減少するように有利に制御、調整することができる。
【0026】
上記した本発明の実施形態の方法とそれに対応する装置はマイクロレーザ焼結(micro-LS)に有利に適用でき、マイクロメートル単位の精度を有する三次元物体の製造ができる。
【0027】
本発明の範囲は上記した実施形態に限定されず、添付した請求項に定義された範囲に該当する限り、他の均等物や改良も含まれる。
【0028】
本発明はレーザ焼結法だけでなく、光造形法やレーザ溶解法にも適用できる。
また、電磁放射としてレーザ放射を用いる代わりに、例えば電子放射のような粒子放射を用いることもできる。
さらに、1つのレーザの変わりに2以上のレーザ源を用いても良い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体3を製造する方法であって、前記三次元物体3は連続して固化可能な液体または粉末の製造用材料3aを1層ごとに電磁放射7aで固化することによって製造され、前記電磁放射7aは、第1のパルス電磁放射と、第1のパルス電磁放射よりも周波数が高い第2のパルス電磁放射または連続電磁放射とが用いられる、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、以下の工程を有する方法。
第1のパルス電磁放射を前記製造用材料3aの層の第1の領域に照射する。
第2のパルス電磁放射または連続電磁放射を前記製造用材料の前記層の第2の領域に照射する。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1のパルス電磁放射はパルスレーザ放射である方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、前記第2のパルス電磁放射または連続電磁放射はパルスまたは連続レーザ放射である方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の領域と前記第2の領域は少なくとも部分的に重なっている、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1のパルス電磁放射の周波数は約60〜約300kHzである、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法であって、前記第2のパルス電磁放射の周波数は、約200〜約450kHzである、方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、第1のパルス電磁放射の製造用材料への照射と、前記第2のパルス電磁放射または連続電磁放射の間に、前記第1のパルス電磁放射が前記製造用材料3aを固化する間、時間間隔を設けることを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1のパルス電磁放射と第2のパルス電磁放射または連続電磁放射が行われる層が部分的および/または時間的に異なることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1のパルス電磁放射に照射された層の領域は、次に、さらに前記第2のパルス電磁放射または連続電磁放射により照射されることを特徴とする、方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法を用いたレーザ焼結またはレーザ溶解方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、粒径が約1nm〜約100nmの粉末が用いられることを特徴とする、方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法であって、前記粉末が供給される前記層の厚さは、約1μm〜約100μmであることを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法であって、前記ビーム径は1μm〜約20μmであることを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法を用いて三次元物体を製造する装置。
【請求項16】
請求項15記載の装置であって、第1のパルス電磁放射と第2のパルス電磁放射または連続電磁放射の両方を照射可能な1つのレーザ7を有する、装置。
【請求項17】
請求項15記載の装置であって、パルス電磁放射を照射する第1のレーザと、パルス電磁放射または連続電磁放射を照射する第2のレーザとを有する、装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−173420(P2011−173420A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−37063(P2011−37063)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(503267906)イーオーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イレクトロ オプティカル システムズ (50)
【Fターム(参考)】