説明

微細振動特徴量算出装置、微細振動特徴量算出方法及びプログラム

【課題】微細振動の測定環境に関わらず、被測定物に発生している微細振動に関する特徴量を正確に算出すること。
【解決手段】本発明に係る微細振動特徴量算出装置は、微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、放射波の周波数と反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから出力された当該ビート信号を取得するビート信号取得部と、取得したビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換部と、周波数領域の信号へと変換されたビート信号を利用して、微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細振動特徴量算出装置、微細振動特徴量算出方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ドップラーセンサからの出力を用いて心拍数を検出するシステムに関する技術開発が進められている。ドップラーセンサは、検知対象に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、検知対象による放射波の反射波を検知し、放射波の周波数と反射波の周波数との差分を出力信号として出力する。従って、このようなドップラーセンサを用いることで、被験者に接触することなく、当該被験者の心拍数を検出することが可能となる。このようなドップラーセンサを用いた心拍数検出技術としては、例えば、以下の特許文献1及び特許文献2に開示されている技術がある。
【0003】
特許文献1に開示されている技術は、人体表面に非接触で電波を放射し、人体表面からの反射波を受信する電波式のドップラーセンサと、人体表面に近接して配置され、人体内の血流の変化に対応した振幅成分出力を出力する低周波センサという2種類のセンサを利用することで人自体の動きと心拍の動きの分離を行い、心拍数の検出を行うものである。
【0004】
特許文献2に開示されている技術は、車の運転席シートにドップラーセンサを埋め込み、ドップラーセンサの出力からドライバーの心拍数を推定する技術である。また、ドライバーの心拍位置を特定したうえで心拍位置の間隔であるRRIを算出し、ドライバーの集中力低下などの検知を行うものである。かかる技術では、ドップラーセンサの出力の時系列データから心拍が存在しそうな位置を過去の位置から予測し、予測結果から主に振幅に関する情報を用いて心拍位置の特定を行っている。また、ドップラーセンサの出力にバンドパスフィルタを適用し、心拍と関連の強い部分のみを抽出して、処理を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006− 55504号公報
【特許文献2】特開2010−142456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法では、一方のセンサを人体に近接して配置しなければならないため、心拍を測定する環境に制約が多くなるという問題があった。また、上記特許文献2に記載の方法では、ドップラーセンサの出力信号そのもの、又は、心拍に関連のありそうな周波数成分の振幅に基づいて心拍位置を特定するため、人体に非常に近接していないと検出が困難となるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、微細振動の測定環境に関わらず、被測定物に発生している微細振動に関する特徴量を正確に算出することが可能な、微細振動特徴量算出装置、微細振動特徴量算出方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、前記放射波の周波数と前記反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから出力された当該ビート信号を取得するビート信号取得部と、取得した前記ビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換部と、周波数領域の信号へと変換された前記ビート信号を利用して、前記微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出部と、を備える微細振動特徴量算出装置が提供される。
【0009】
前記微細振動特徴量算出装置は、算出されたビート信号特徴量を利用して、前記微細振動の時間的な位置、前記微細振動の間隔及び前記微細振動の振動数の少なくとも何れかを含む微細振動特徴量を算出する微細振動特徴量算出部を更に備えることが好ましい。
【0010】
前記ビート信号特徴量算出部は、前記周波数領域の信号へと変換されたビート信号のうち、所定の周波数範囲の前記ビート信号を利用して、前記ビート信号特徴量を算出することが好ましい。
【0011】
前記振動速度は、前記周波数領域の信号へと変換されたビート信号に含まれる周波数成分において、各周波数をドップラー効果による周波数変化とみなした速度に変換し、当該速度を各周波数のパワーを重みとみなす加重平均として、所定の周波数範囲で算出した値であってもよい。
【0012】
前記振動速度は、前記周波数領域の信号へと変換されたビート信号に含まれる周波数成分において、各周波数を、各周波数のパワーを重みとみなす加重平均として、所定の周波数範囲で算出した値であってもよい。
【0013】
前記ビート信号特徴量算出部は、前記振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量として、前記振動速度の時間に関する2階微分を算出し、前記振動速度の時間変化から前記微細振動を強調してもよい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、前記放射波の周波数と前記反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから出力された当該ビート信号を取得するビート信号取得ステップと、取得した前記ビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換ステップと、周波数領域の信号へと変換された前記ビート信号を利用して、前記微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出ステップと、を含む微細振動特徴量算出方法が提供される。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の更に別の観点によれば、微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、前記放射波の周波数と前記反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから信号を取得することが可能なコンピュータに、前記ドップラーセンサから出力された前記ビート信号を取得するビート信号取得機能と、取得した前記ビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換機能と、周波数領域の信号へと変換された前記ビート信号を利用して、前記微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出機能と、を実現させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を算出して利用することにより、微細振動の測定環境に関わらず、被測定物に発生している微細振動に関する特徴量を正確に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微細振動検出装置の構成の一例を示した説明図である。
【図2】同実施形態に係る微細振動特徴量算出装置の構成を示したブロック図である。
【図3】同実施形態に係るビート信号特徴量算出部の構成を示したブロック図である。
【図4】同実施形態に係る微細振動特徴量の算出処理を説明するための説明図である。
【図5】微細振動の基準波形の一例を示したグラフ図である。
【図6】微細振動の基準波形の一例を示したグラフ図である。
【図7】同実施形態に係る微細振動特徴量算出方法の流れを示した流れ図である。
【図8】同実施形態に係る微細振動特徴量算出装置の変形例について示した説明図である。
【図9】同実施形態に係る微細振動特徴量算出装置の変形例について示した説明図である。
【図10】本発明の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
<着目する微細振動について>
本発明の実施形態では、被検査体である物体に生じている微細振動を検出する装置(より詳細には、被検査体である物体に生じている微細振動に関する特徴量を算出する装置)について説明を行うものとする。ここで、本実施形態において着目する微細振動は、着目している物体が動くことにより物体に瞬間的に生じる、物体自体の動きよりも細かく変化する振動である。この際に、物体の動きとは、必ずしも物体の位置の移動を伴う動きとは限らず、物体全体としての位置は変化していないものの、物体の内部に存在するものが物体内でその位置を変化させることにより、結果として物体に生じる動きをも含むものである。
【0020】
従って、例えば、着目する物体が人体である場合、本実施形態において着目する微細振動は、人体の位置の移動に伴って生じる振動とは限らず、人体の内部に存在する血流の動きや、心臓・肺・各種筋肉等の振動(換言すれば、心拍や脈拍、呼吸、しゃっくり、痙攣による振動)等を含む。
【0021】
また、本実施形態で着目する物体として、家や倉庫等といった建築物に格納される物品や、建築物自体の壁や床を考えることも可能である。建築物の床の場合には、人が床を歩いたり、床に物体(例えば、倉庫等に格納されている物品)が落下したりすることで床に生じる瞬間的な振動を、微細振動として考えることができる。
【0022】
また、本実施形態で着目する物体及び微細振動が上記の具体例に限定されるわけではなく、これら以外の物体及び微細振動に対しても、以下で説明する装置及び方法が適用可能である。
【0023】
以下で行う説明では、被検査体として人体を考え、人体に生じる心拍に関する微細振動を検出する場合を例に挙げるものとする。
【0024】
<微細振動検出装置について>
まず、図1を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る微細振動検出装置の構成について、簡単に説明する。図1は、本実施形態に係る微細振動検出装置10の構成を示した説明図である。
【0025】
本実施形態に係る微細振動検出装置10は、図1に例示したように、ドップラーセンサ100と、微細振動特徴量算出装置200と、を主に備える。
【0026】
ドップラーセンサ100は、物体S(本実施形態では、人体)に対して、所定の周波数を有する放射波Txを放射し、かかる放射波Txが物体Sによって反射された反射波Rxを検出する装置である。
【0027】
ここで、物体Sに動きが生じている場合、反射波Rxの周波数は、かかる動きに起因するドップラー効果のために、放射波Txの周波数からシフトが生じることとなり、その結果、放射波Txと反射波Rxとは周波数の違いによって互いに干渉しあうこととなる。ドップラーセンサ100は、このようにして生じた、放射波Txと反射波Rxとの干渉波を検出し、放射波Txの周波数と反射波Rxの周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を、検出結果として出力する。以上の説明から明らかなように、ビート信号に対応する周波数は、放射波Txが動いている物体Sで反射することにより生じるドップラー効果によるドップラーシフト量に等しい値であり、かかるビート信号は、干渉波の強度の時間変化を示した時間領域の信号である。
【0028】
なお、ドップラーセンサ100が放射する放射波Txは、動いている物体Sにより反射することでドップラー効果が生じる波であれば、任意の周波数帯の波(例えば、光、音波、超音波、マイクロ波等)を利用することが可能である。また、放射波Txとしてマイクロ波を利用する場合には、例えば、10.5GHzや24GHz等の利用可能な周波数帯に属するマイクロ波を利用することが好ましい。
【0029】
以上のような原理に基づいて動作するドップラーセンサ100は、物体Sと非接触の状態で、物体Sの遠隔から測定を行うことが可能である。
【0030】
本実施形態に係る微細振動検出装置10では、ドップラーセンサ100から出力されたビート信号は、微細振動特徴量算出装置200に出力される。
【0031】
微細振動特徴量算出装置200は、ドップラーセンサ100から出力されたビート信号を利用して、被検査体である物体に生じている微細振動を特徴づける微細振動特徴量を算出する装置である。このような微細振動特徴量として、例えば、微細振動が生じている時間的位置、微細振動の間隔、微細振動の周波数等を挙げることが可能である。
【0032】
<微細振動特徴量算出装置の構成について>
続いて、図2を参照しながら、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200の構成について、詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200の構成を示したブロック図である。
【0033】
本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200は、図2に例示したように、ビート信号取得部201と、周波数変換部203と、ビート信号特徴量算出部205と、微細振動特徴量算出部207と、を主に備える。また、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200は、図2に例示したように、微細振動特徴量出力部209と、表示制御部211と、記憶部213と、を更に備えていてもよい。
【0034】
ビート信号取得部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、通信装置等により実現される。ビート信号取得部201は、ドップラーセンサ100から出力されるビート信号を取得して、後述する周波数変換部203へと出力する。また、ビート信号取得部201は、取得したビート信号を、当該ビート信号を取得した日時等に関する時刻情報と関連付けて、後述する記憶部213に履歴情報として格納してもよい。
【0035】
周波数変換部203は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。周波数変換部203は、ビート信号取得部201から出力されたビート信号(時間領域の信号)を、周波数領域の信号へと変換する。時間領域で表されている信号を周波数領域の信号へと変換する手法としては、フーリエ変換、ウェーブレット(Wavelet)変換、アダマール変換、マッチング追跡(Matching Pursuit)法など各種の方法が存在する。本実施形態に係る周波数変換部203は、これらの手法を適宜利用して、時間領域の信号であるビート信号を、周波数領域の信号へと変換すればよい。
【0036】
なお、以下の説明では、周波数変換部203がフーリエ変換(より詳細には、離散フーリエ変換:DFT)を用いてビート信号を周波数領域の信号へと変換する場合を例にとって、具体的に説明を行うものとする。
【0037】
ここで、本実施形態に係る周波数変換部203は、ビート信号取得部201が取得したアナログ信号であるビート信号を、200Hzでサンプリングするものとする。なお、周波数変換部203が利用するサンプリング周波数(本例では200Hz)は、特に限定されるものではなく、着目する微細振動の種別等に応じて適宜設定すればよい。
【0038】
周波数変換部203が周波数変換処理を実施する時刻をtと表すこととし、周波数変換部203は、ビート信号データのT秒分の区間に対して、離散フーリエ変換を実施するものとする。200Hzでサンプリングしたビート信号データの1秒分の区間に対して離散フーリエ変換を行う場合、パラメータT=1の場合に対応し、かかる場合におけるサンプリング間隔Δtは0.005秒となる。また、かかる区間に対応するデータに含まれるサンプルの個数をNとすると、本例の場合、N=200となる。かかる場合、本実施形態に係る周波数変換部203は、かかる200個のストリームデータに対応する複素数列X=(x0,t,x1,t,・・・,xj,t,・・・,xN−1,t)(j=0〜N−1)に対して、離散フーリエ変換を行うこととなる。
【0039】
なお、複素数列Xの各要素xj,tは、実数部にストリームデータのサンプル値が入力されており、虚数部が0である複素数である。
【0040】
周波数変換部203は、かかる複素数列Xに対して離散フーリエ変換を行うことにより、複素数列F=(f0,t,f1,t,・・・,fj,t,・・・,fN−1,t)(j=0〜N−1)を生成する。ここで、離散フーリエ変換により生成される複素数列Fに含まれるN個の要素それぞれは、固有の周波数に対応する周波数成分であり、各成分fj,tは、以下の式101で表される値である。ここで、下記式101において、iは虚数単位であり、パラメータj=0,・・・,N−1である。
【0041】
【数1】

・・・(式101)
【0042】
ここで、上記式101で表される各成分のうち、f0,tは直流成分に対応し、fj,tは、上記条件下では、j(Hz)の周波数を持つ周波数成分に対応する。
【0043】
本実施形態に係る周波数変換部203は、このようにして生成された複素数列Fを、後述するビート信号特徴量算出部205に出力する。
【0044】
ここで、標本化定理により、サンプリング周波数f×1/2で与えられるナイキスト周波数を超える周波数成分(上記例では、100Hzを超える成分)については冗長となるため、周波数変換部203は、ナイキスト周波数を超える成分については、出力しなくともよい。
【0045】
また、周波数変換部203は、上記複素数列Fに加えて、(2|fj,t|/N)で与えられる各周波数成分の振幅や、|fj,tで与えられるパワースペクトルを、後述するビート信号特徴量算出部205に出力してもよい。
【0046】
なお、マイクロ波帯域の周波数を有する放射波を放射するドップラーセンサを用いた場合、放射波の到達範囲内に蛍光灯などの放電管が存在すると、電源周波数(例えば、50Hzや60Hz等)に応じた雑音成分がビート信号に混入する場合がある。そのため、このような場合には、バンドパスフィルタ等を利用して電源周波数に対応する周波数成分を取り除くなどの雑音分離処理を行ってもよい。
【0047】
また、周波数変換部203は、算出した各種数値を、当該数値を算出した日時等の時刻情報と関連付けて、履歴情報として後述する記憶部213に格納してもよい。
【0048】
ビート信号特徴量算出部205は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。ビート信号特徴量算出部205は、周波数変換部203から出力された、周波数領域に変換されたビート信号を利用して、ビート信号を特徴づける特徴量であるビート信号特徴量を算出する。
【0049】
以下では、図3を参照しながら、本実施形態に係るビート信号特徴量算出部205の構成について、更に詳細に説明する。図3は、本実施形態に係るビート信号特徴量算出部205の構成を示したブロック図である。
【0050】
図3に例示したように、ビート信号特徴量算出部205は、振動速度算出部221と、2階微分算出部223と、相関係数算出部225と、を更に備える。
【0051】
振動速度算出部221は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。振動速度算出部221は、周波数変換部203から出力された、周波数領域に変換されたビート信号(すなわち、上記複素数列F)を利用して、かかるビート信号を特徴づける特徴量である、微細振動の振動速度を算出する。
【0052】
以下、振動速度算出部221が実施する振動速度の算出処理について、具体的に説明する。
【0053】
ドップラーセンサ100から放射される周波数S(Hz)の放射波が、微細振動を伴う物体により反射した場合の周波数のシフト量(ドップラーシフト量)をd(Hz)と表すこととする。ここで、物体の速度をv(m/s)と表すこととし、光速をc(m/s)と表すこととすると、ドップラー効果の関係式を利用して、以下の式102で表される関係が成立する。
【0054】
【数2】

・・・(式102)
【0055】
また、離散フーリエ変換により算出された複素数列Fに対応する速度数列VをV=(v,v,・・・,v,・・・,vN−1)(j=0〜N−1)と表すこととすると、各周波数成分の速度vは、以下の式103で表される値であるとみなすことができる。ここで、以下の式103において、j=0〜N−1の整数であり、微細振動の各周波数は、j/T(Hz)である。
【0056】
【数3】

・・・(式103)
【0057】
ドップラー効果の性質により、周波数と速度は変換可能な線形の関係にあるため、周波数成分に対する演算は、速度成分に対する各種演算に変換可能といえる。これを根拠とすることで、周波数成分に対する各種演算に、通常は速度に適用する演算(例えばジャークの算出)を導入することが可能となる。
【0058】
本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200では、離散フーリエ変換により得られる各周波数のパワー(|fj,t)を、その周波数に対応する速度で動く物体の量と仮定する。その結果、着目している物体Sの平均的な動きの速さは、(v・|fj,t)で表される値の総和(パラメータjについての総和)を周波数のパワー(|fj,t)の総和(パラメータjについての総和)で割ったものとして定義することができる。
【0059】
ここで、着目している物体の微細振動である生体の心拍を、人の筋肉運動によるいわゆる身体の動きよりも細かく変化する動きであると考える。人間で一番大きな血管である大動脈を流れる血流の速度は、約0〜1.2(m/s)の範囲を心拍に応じて上下するように変化しており、血管が分岐して末梢血管となるに従って、動脈では最大0.4〜1.2(m/s)の速度となり、小動脈ではそれよりも小さい速度となるといわれている。ここで、1.2(m/s)の速度に対応したドップラーシフト量dは、放射波の周波数Sが24GHz(マイクロ波)である場合、192Hzとなる。従って、人体全体で考えると、0〜200Hz弱までの広い範囲で、心拍に起因した動きによるドップラーシフトを観測しうることがわかる。また人体の血流を伴う部分の面積は、末端になるに従い大きくなるため、低速なほど反射面積が大きいといえる。そのため、ドップラーシフトが小さいほど、周波数パワーは大きくなる傾向となる。
【0060】
すなわち、心拍が1拍鼓動する都度、0〜200Hz弱までの広い範囲にわたる周波数成分のパワーが、それぞれ心拍の拍動に同期して瞬間的に上下することになり、また200Hzよりも周波数が低くなるにしたがって、周波数パワーは高くなる傾向となる。
【0061】
ただし、ドップラー効果による周波数シフトは、着目している波(例えば、マイクロ波)の到来方向成分によって決まる量である一方、波の到来方向が物体の動きの方向とは異なる場合が多く、ドップラーセンサにより観測されるドップラーシフトは、上記範囲よりも低下することが多い。また、同様の理由により、ドップラーセンサを人の正面に向けた場合には、心臓や体表面の拍動によるドップラーシフト量が支配的になる場合もある。体内の拍動による動きは様々な方向を向いており、ドップラーの到来方向とは一致していない成分も多い。そのため観測される周波数は、実際の動きの速度に応じた周波数よりも、平均的に低くなる。そのため、0〜200Hz弱まで均等にドップラーシフトが発生するのではなく、より低い周波数成分が、より多く拍動の影響を受けることとなる。
【0062】
また、ドップラーセンサにより観測されるドップラーシフトは、風や外来振動に起因する構造物の微細な長周期振動などといった、いわゆる環境雑音が重畳したものとなっている。このような環境雑音は、通常、10Hz未満の低周波域に観測されることが多いため、本実施形態に係る振動速度算出部221は、微細振動の振動速度を算出する際に、環境雑音の多い低周波域を除いた、j=L〜Hの範囲の高周波域を利用して、時刻tにおける物体の微細振動の周波数パワー平均をとった速度である振動速度(すなわち、本実施形態では、人体の心拍の拍動に応じた速度変化を有する振動速度)vVIB,tを、以下の式104に基づいて算出する。ここで、周波数パワー平均とは、周波数パワーを重みとみなす加重平均である。例えば上記サンプリング条件下の場合、振動速度算出部221は、環境雑音が多く含まれる10Hz未満の周波数帯域を除外する。同様に、周波数が低いほど周波数成分の心拍に対する影響が高いため、例えば100Hzまでの領域である、10Hz以上100Hz以下の領域を用いて、時刻tにおける振動速度vVIB,tを算出することができる。なお、上記例では200Hzでサンプリングを行うため、100Hzより高い周波数の成分は含まれていない。より高い周波数の成分を取得する場合は、サンプリング周波数を高めた上で、パラメータHを高い値に設定しても良い。
【0063】
【数4】

・・・(式104)
【0064】
このように、本実施形態に係る振動速度算出部221では、ドップラーセンサを用いて遠隔で物体を観測した場合にドップラーセンサからの出力(ビート信号)に重畳しやすい低域に観測される環境雑音を、ビート信号を周波数領域に変換したうえで該当する低周波領域を処理から除外して、周波数パワー平均を算出する。これにより、ドップラーセンサを用いて遠隔で物体を観測する場合に、微細振動の測定環境に関わらず、様々なノイズの影響を除外して処理を行うことが可能となる。また、既知の周波数の環境ノイズ(50Hzや60Hzなどの電源ノイズなど)が混入する場合は、該当する周波数(50Hzや60Hzなどの電源ノイズなどの場合は、それぞれ50Hzや60Hzや、その前後の周波数の成分)のパワーを0として計算するなどして、除外しても良い。
【0065】
このようにして得られる振動速度vVIB,tは、心拍が拍動する都度、拍動時の動きに連動して瞬間的に上下に変化する時系列変化成分を有する。
【0066】
また、上記式103から明らかなように、ドップラー効果のため、微細振動の速度v(m/s)と、微細振動の周波数j/T(Hz)とは線形関係にある。従って、振動速度算出部221は、微細振動の速度に代わる量として、微細振動の速度vを微細振動の周波数j/Tで置き換えた、平均パワー周波数を振動速度とみなして算出してもよい。
【0067】
振動速度算出部221は、このようにして算出した微細振動の振動速度を、後述する2階微分算出部223に出力する。また、振動速度算出部221は、算出した振動速度の値を、かかる値を算出した日時等に関する時刻情報と関連付けて、記憶部213に履歴情報として格納することが好ましい。
【0068】
2階微分算出部223は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。2階微分算出部223は、振動速度算出部221が算出した微細振動の振動速度を利用して、微細振動の振動速度の時間に関する2階微分を算出する。この振動速度の時間に関する2階微分は、以下で説明するように、振動速度の時間に関する急峻な変化分を表す指標値となるものである。なお急峻な変化分を表す指標値として、振動速度の時間に関する2階微分を算出し、基準波形との相互相関係数を算出したものとしても良いし、振動速度の時間に関する微分である加速度を算出し、より急峻な基準波形との相互相関係数を算出し、振動速度の時間変化から微細振動を強調してもよい。
【0069】
本実施形態で着目する心拍は、1秒間あたり1〜2回の頻度で発生する、時間的間隔の非常に短い拍動に対応する区間と、時間的間隔の長い無拍動区間とが交互に現れる現象とモデル化することができる。振動速度算出部221が算出した微細振動の振動速度は、時間的間隔の非常に短い拍動時に、拍動の動きに連動して瞬間的に上下する拍動成分を持ち、それ以外の無拍動区間では、小さな値をとり変化も少ないものとなる。また、人体で発生する心拍以外の微細振動(脈拍、しゃっくり、痙攣等)についても、同様のモデル化を行うことができる。従って、観測されるビート信号は、上述の広い範囲に分布する周波数成分に、長期的な0.1〜1Hz程度の拍動・無拍動を基本とした変調が施されたものとなる。このような周期的な振動について解析を行うために、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200では、振動速度vVIB,tの時間に関する2階微分であるジャーク(jerk、単位:m/s)を利用して拍動区間の強調を行う。すなわち、拍動区間は、振動速度が時間的に急激に上下する区間であるので、時間方向におけるジャークは、拍動区間のみ瞬間的に大きく上下するように変化し、無拍動区間では小さな値で小さな変化しか取らない傾向の性質を示す。
【0070】
2階微分算出部223は、振動速度算出部221から出力された振動速度を複数の時刻分蓄積しておき、時刻tにおけるジャークpを、以下の式105に基づいて算出する。
【0071】
【数5】

・・・(式105)
【0072】
また、2階微分算出部223は、振動速度算出部221から平均パワー周波数を振動速度として出力された場合にも、式105と同様にして、平均パワー周波数の時刻に関する2階微分を算出することが可能である。
【0073】
以上のようにして算出される2階微分(例えば、振動速度の2階微分であるジャーク)は、例えば心拍を例にとると、図4(a)に例示したように、心拍拍動時に対応する部分が拍動の時間変化に伴って1個の山と谷とを有するパルス波形のように変化し、正負にピークを有するパルス波形となることが多く、またそれ以外のところでは小さな値で変化量の少ない波形となることが多い。
【0074】
本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200では、微細振動に関する情報を含むビート信号を周波数領域に変換し、環境雑音等の影響を受けやすい周波数領域以外の領域について以上のような時間に関する2階微分を算出することで、微細振動に帰属されるパルス波形を容易に分離することが可能となる。その結果、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200は、ドップラーセンサを用いて測定対象を遠隔から観測しているにもかかわらず、正確に微細振動に関する特徴量を算出することが可能となる。
【0075】
2階微分算出部223は、このようにして算出した、振動速度の時間に関する2階微分に関する値を、後述する相関係数算出部225に出力する。また、2階微分算出部223は、算出した振動速度の時間に関する2階微分に関する値を、かかる値を算出した日時等に関する時刻情報と関連付けて、記憶部213に履歴情報として格納することが好ましい。
【0076】
相関係数算出部225は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。相関係数算出部225は、2階微分算出部223により算出された振動速度の時間に関する2階微分と、着目している微細振動に関する基準波形とに基づいて、2階微分と基準波形との相互相関係数を算出する。この相互相関係数は、時刻tにおける微細振動の存在度合いを示す値として利用される。
【0077】
図4(a)に例示したように、振動速度の時間に関する2階微分は、心拍に対応する部分が正負にピークを持つパルス形状となる。従って、着目している微細振動(本実施形態では、心拍)に関する2階微分の基準波形と、算出した2階微分との相関係数(より詳細には、相互相関係数)を算出することで、心拍等の着目している微細振動が発生した時間的位置を容易に同定することが可能となる。
【0078】
ここで、相互相関係数の算出に利用する基準波形は、着目する2階微分の波形等に応じて、各種の窓関数を利用して定義することが可能であり、特に限定されるわけではない。本実施形態に係る相関係数算出部225は、窓関数としてガウス窓を利用したパルス波wを以下の式106のように定義し、微細振動に関する基準波形として利用する。
【0079】
【数6】

・・・(式106)
【0080】
なお、上記式106において、パラメータh及びパラメータδは、ガウス窓を利用したパルス波を特徴づけるパラメータであり、基準波形の区間長と変化の鋭さを規定するためのパラメータである。また、上記式106において、パラメータkは、0〜h−1の整数である。
【0081】
一般的に、心拍と同期して観測可能である心電図のうち、最も特徴的なパルス波を示すQ波−R波−S波の一連の時系列において、これらのパルス波の時間幅であるQRS幅は、0.06〜0.10秒程度といわれている。このパルス波は心筋を駆動させるための電気信号であり、かかる電気信号に応じて心筋が駆動されて、血流が生じることとなる。従って、心筋の動きと血流の変化は、QRS幅の長さよりも更に長い時間的間隔を有することとなる。他方、本実施形態では、心筋の動きや血液が血管中を流れることで生じた微細振動をドップラーセンサで検知するものであるため、上記QRS幅の長さは、図4(a)に示したようなジャークのパルス幅よりも短くなることが多い。
【0082】
しかしながら、検出すべき微細振動(例えば心拍)のジャークは、加速度の増減傾向が急激に変化する区間であるため、微細振動が生じている時間的位置を特定するために必要な演算区間としては、その全ての時間間隔ではなく、値の変化が激しい区間のみに着目すれば十分である。
【0083】
そこで、図4(a)に示したように、心拍の拍動時間がt(秒)であるとすると、相互相関係数の算出に利用する基準波形も同区間の拍動時間と同じような値となるように、上記式106に示した基準波形のパラメータの値を調整する。具体的には、本実施形態に係る相関係数算出部225では、着目している微細振動の振動時間(本実施形態では、心拍の拍動時間)t(秒)と同様の長さとなるように、パラメータhの大きさを決定し、変化の鋭さを示すパラメータδを調整する。
【0084】
例えば図5には、心拍のジャークを検出するための基準波形として、h=50(上記サンプリング条件下で0.25秒に相当)、δ=5とした場合のガウス窓を示した。このようなガウス窓のうち、値が大きく変化する区間は、中央付近の約半分程度の区間である。このような基準波形を利用することで、ジャークの相互相関係数を容易に算出することが可能となる。
【0085】
具体的には、相関係数算出部225は、下記式107及び式108に基づいて、振動速度の時間に関する2階微分と基準波形との相互相関係数(時刻tにおける相互相関係数)rを算出する。かかる処理により、例えば図4(b)に示したような相互相関係数が算出されることとなる。
【0086】
【数7】

・・・(式107)

・・・(式108)
【0087】
また、以上の説明では、振動速度の時間に関する2階微分であるジャークを例にとって具体的に説明を行ったが、振動速度に平均パワー周波数を用いた場合であっても、同様に処理を行うことが可能である。
【0088】
更に、心拍のような人体の動きに伴う微細振動のみならず、物体の落下衝撃による床の微細振動についても、同様の基準波形を利用することで処理を行うことが可能である。物体の落下衝撃による床の微細振動を考慮する場合、落下した物体の大きさや重量によって、上記式106に示したガウス窓のパラメータを変更することが求められるが、物体の重量が比較的軽いものである場合、h=80、δ=5とした図6に示したようなガウス窓を利用することで、同様の処理を実施することが可能である。
【0089】
相関係数算出部225は、以上説明したような処理により相互相関係数を算出すると、算出した相互相関係数を、微細振動特徴量算出部207に出力する。また、相関係数算出部225は、算出したこれらの値を、これらの値を算出した日時等に関する時刻情報と関連付けて、記憶部213に履歴情報として格納してもよい。
【0090】
以上、図3〜図6を参照しながら、本実施形態に係るビート信号特徴量算出部205の構成について、詳細に説明した。
以下では、再び図2に戻って、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200が備える微細振動特徴量算出部207について、詳細に説明する。
【0091】
微細振動特徴量算出部207は、例えば、CPU、ROM、RAM等により実現される。微細振動特徴量算出部207は、ビート信号特徴量算出部205が算出した、微細振動の振動速度、振動速度の時間に関する2階微分、2階微分に関する相互相関係数等を含むビート信号特徴量を利用して、着目している物体に発生している微細振動を特徴づける特徴量である微細振動特徴量を算出する。微細振動特徴量算出部207が算出する微細振動特徴量としては、例えば、微細振動の時間的な位置、微細振動の間隔、微細振動の振動数等を挙げることができる。
【0092】
以下、微細振動特徴量算出部207が実施する微細振動特徴量の算出処理について、より詳細に説明する。
【0093】
ビート信号特徴量算出部205により算出されるビート信号特徴量の一つである相互相関係数rは、上述したように、2つのデータ間(本実施形態では、算出された2階微分及び基準波形)の類似度を示す統計学的指標であり、−1から1までの実数値をとる。相互相関係数rが1に近い値を示す場合には、2つのデータは類似していることを示し、相互相関係数が0に近い値を示す場合には、2つのデータは類似していないことを示す。また、相互相関係数rが−1に近い値を示す場合には、2つのデータの符号が反転しているような場合を示す。
【0094】
そこで、微細振動特徴量算出部207は、算出された相互相関係数rを所定の閾値THと比較して、所定の閾値THを超えるピーク値を与える時間的位置を、微細振動が発生した時間的位置であると特定する。例えば図4(b)に示したような相互相関係数rの時系列が算出された場合、微細振動特徴量算出部207は、時刻t1及び時刻t2で微細振動が発生したと特定する。
【0095】
ここで、上記閾値THの値については、着目している微細振動の種別等に応じて適宜設定すればよく、例えば、0.5〜0.7程度の値に設定すればよい。
【0096】
また、微細振動特徴量算出部207は、隣り合うピーク位置の間隔(図4(b)の例では、t2−t1で表される時間的間隔)を、微細振動の間隔と特定する。更に、微細振動特徴量算出部207は、微細振動の間隔の逆数を算出することで、微細振動の振動数(微細振動として心拍に着目している場合には、心拍数となる。)を特定することができる。
【0097】
ここで、微細振動特徴量算出部207は、上記微細振動特徴量の一部のみを算出してもよいし、上記微細振動特徴量の全てを算出してもよい。
【0098】
なお、微細振動特徴量算出部207は、閾値との比較に基づいて相互相関係数のピーク位置を検出する以外にも、相互相関係数の算出に利用した基準波形の区間長(例えば、図6に示した基準波形では、0.25秒)の大きさに応じて、所定の時間間隔(例えば、図6に示した例では、0.3秒程度)で相互相関係数のピークを探索し、検出されたピーク位置を微細振動が発生したタイミングとしてもよい。
【0099】
また、特に心拍のように非常に短い時間間隔では大きく変動しないような微細振動に着目している場合、数秒間の時間的区間について算出した2階微分の自己相関係数を算出し、自己相関係数のピーク位置を拍動位置と特定するなどの、時間的に平均化を行って算出精度を向上させてもよい。また、ノイズ等に起因する異常値を排除した後に以上説明したような処理を実施することで、算出精度を更に向上させることも可能である。
【0100】
微細振動特徴量算出部207は、以上のようにして算出した各種の微細振動特徴量を、後述する微細振動特徴量出力部209に出力する。また、微細振動特徴量算出部207は、算出した微細振動特徴量を、これらの値を算出した日時等の時刻情報と関連付けて、後述する記憶部213等に履歴情報として格納してもよい。
【0101】
微細振動特徴量出力部209は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。微細振動特徴量出力部209は、微細振動特徴量算出部207により算出された微細振動特徴量を各種の形式で外部に出力する。例えば、微細振動特徴量出力部209は、算出された微細振動特徴量を、後述する表示制御部211を介して、微細振動特徴量算出装置200に設けられたディスプレイ等の出力装置や、微細振動特徴量算出装置200が通信可能な外部の装置に設けられたディスプレイ等に出力することが可能である。また、微細振動特徴量出力部209は、算出された微細振動特徴量を、微細振動特徴量算出装置200に直接接続された各種の装置や、インターネット等の各種ネットワークを介して接続された各種の装置に対して、データとして出力することも可能である。また、微細振動特徴量出力部209は、算出された微細振動特徴量をプリンタ等の出力装置で印刷して、印刷物として出力することも可能である。
【0102】
表示制御部211は、例えば、CPU、ROM、RAM、出力装置、通信装置等により実現される。表示制御部211は、微細振動特徴量算出装置200により算出された各種の結果を、ディスプレイ等の出力装置に表示する際の表示制御を行う。また、表示制御部211は、微細振動特徴量算出装置200の外部に設けられた各種装置に設けられた出力装置に各種結果を表示する際の表示制御を行うこともできる。
【0103】
記憶部213は、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200が備えるストレージ装置の一例である。記憶部213には、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200が算出した各種結果や、微細振動特徴量算出装置200が何らかの処理を行う際に保存する必要が生じた様々なパラメータや処理の途中経過等、または、各種のデータベースやプログラム等が、適宜格納されている。この記憶部213は、微細振動特徴量算出装置200が備える各種の処理部が、自由に読み書きを行うことが可能である。
【0104】
以上、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200の機能の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材や回路を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。また、各構成要素の機能を、CPU等が全て行ってもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用する構成を変更することが可能である。
【0105】
なお、上述のような本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを作製し、パーソナルコンピュータ等に実装することが可能である。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体も提供することができる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリなどである。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信してもよい。
【0106】
<微細振動特徴量算出方法について>
続いて、図7を参照しながら、本実施形態に係る微細振動特徴量算出方法の流れの一例について説明する。図7は、本実施形態に係る微細振動特徴量算出方法の流れの一例を示した流れ図である。
【0107】
まず、微細振動特徴量算出装置200のビート信号取得部201は、ドップラーセンサ100から出力されたビート信号を取得して(ステップS101)、周波数変換部203へと出力する。
【0108】
続いて、微細振動算出装置200の周波数変換部203は、ビート信号取得部201から出力されたビート信号に対して、時間−周波数変換を実行することが可能な各種の方法を適用し、時間領域の信号であるビート信号を、周波数領域の信号へと変換する(ステップS103)。その後、周波数変換部203は、変換後のビート信号を、ビート信号特徴量算出部205に出力する。
【0109】
次に、ビート信号特徴量算出部205の振動速度算出部221は、周波数領域に変換されたビート信号を利用して、微細振動の振動速度を算出し(ステップS105)、2階微分算出部223へと出力する。
【0110】
2階微分算出部223は、算出された微細振動の振動速度を利用して、振動速度の時間に関する2階微分(すなわち、ジャーク)を算出する(ステップS107)。その後、2階微分算出部223は、算出した振動速度の時間に関する2階微分を、相関係数算出部225に出力する。
【0111】
相関係数算出部225は、算出された振動速度の時間に関する2階微分と、所定の窓関数を用いて規定された基準波形とを利用して、これら2つのデータ間の相互相関係数を算出する(ステップS109)。その後、相関係数算出部225は、算出した相互相関係数を、微細振動特徴量算出部207に出力する。
【0112】
微細振動特徴量算出部207は、相関係数算出部225から出力された相互相関係数を利用して、微細振動の時間的な位置、微細振動の間隔、微細振動の振動数等を含む微細振動特徴量を算出する(ステップS111)。その後、微細振動特徴量算出部207は、算出した微細振動特徴量を、微細振動特徴量出力部209に出力する。
【0113】
その後、微細振動特徴量出力部209は、算出された各種の微細振動特徴量を、各種形式に則して出力する(ステップS113)。これにより、本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200で算出された微細振動特徴量が、ユーザに利用可能なかたちでユーザに提供されることとなる。
【0114】
<変形例について>
以下では、以上説明した本実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200の各種変形例について、簡単に説明する。
【0115】
[第1変形例]
上記説明では、本実施形態に係るビート信号特徴量算出部205が、振動速度算出部221、2階微分算出部223及び相関係数算出部225の3つの処理部を主に備える場合について説明した。しかしながら、図8に示したように、本変形例に係るビート信号特徴量算出部205が、振動速度算出部221及び2階微分算出部223のみを備え、相関係数算出部225を有していない場合であっても、微細振動特徴量算出部207は、各種の微細振動特徴量を算出可能である。
【0116】
かかる場合、本変形例に係る2階微分算出部223は、算出した振動速度の時間に関する2階微分を、微細振動特徴量算出部207に出力する。
【0117】
その後、本変形例に係る微細振動特徴量算出部207は、図4(a)に示したような2階微分の時系列データに着目し、図4(a)に示したようなパルス波形のピーク間隔や、正負のピーク間間隔の変動や、パルス波形の立ち上がりの変動等に着目することで、着目している微細振動が発生した時間的位置を特定することが可能である。
【0118】
[第2変形例]
上記説明では、ビート信号を利用して実施される各種のデータ処理が、微細振動特徴量算出装置200内で実施される場合について説明した。しかしながら、以上説明したような微細振動特徴量算出装置200の各機能が、ドップラーセンサ100と同一の装置内に実装されていてもよい。また、ドップラーセンサ100のみが測定対象の存在する空間内に配置されており、微細振動特徴量算出装置200の各機能が遠隔のサーバ等に実現されていてもよい。更に、以上説明したような微細振動特徴量算出装置200の一部の機能がドップラーセンサ100と同一の装置内に実装されていてもよい。
【0119】
図9は、以上説明したような微細振動特徴量算出装置の一部の機能がドップラーセンサに実装されており、インターネット等のネットワーク3を介して接続された微細振動特徴量算出サーバにより、微細振動特徴量の算出処理が実施される場合の例を示したものである。
【0120】
かかる場合のドップラーセンサは、ビート信号の測定を行う測定部101と、測定部101が測定したビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換部103と、周波数領域に変換されたビート信号を利用して、振動速度を算出する振動速度算出部105と、振動速度算出部105が算出した振動速度に関するデータを出力するデータ出力部107と、ストレージ装置の一例である記憶部109と、を主に備える。
【0121】
ここで、周波数変換部103及び振動速度算出部105は、第1の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200が備える周波数変換部203及び振動速度算出部221と同様の機能を有し、同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
【0122】
また、データ出力部107は、振動速度算出部105から随時出力される微細振動の振動速度を参照して、振動速度の変化量が所定の閾値を超えた場合に、ネットワーク3を介して、微細振動特徴量算出サーバにデータを出力する。
【0123】
本変形例に係る微細振動特徴量算出サーバのデータ取得部251は、ネットワーク3を介してドップラーセンサから出力された振動速度に関するデータを取得して、2階微分算出部223へと出力する。
【0124】
微細振動特徴量算出サーバが備える2階微分算出部223、相関係数算出部225、微細振動特徴量算出部207、微細振動特徴量出力部209、表示制御部211及び記憶部213は、第1の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200が備える各処理部と同様の構成を有し、同様の効果を奏するものであるため、詳細な説明は省略する。
【0125】
ドップラーセンサと微細振動特徴量算出サーバとがネットワーク3を介して接続されている場合に、ドップラーセンサにおいて所定の閾値条件を満たした場合に振動速度に関するデータを出力するようにすることで、データ通信のための通信量を削減することが可能となり、限られた通信帯域を有効に利用することが可能となる。
【0126】
以上、図8及び図9を参照しながら、本発明の第1の実施形態に係る変形例について、簡単に説明した。
【0127】
(ハードウェア構成について)
次に、図10を参照しながら、本発明の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200のハードウェア構成について、詳細に説明する。図10は、本発明の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置200のハードウェア構成を説明するためのブロック図である。
【0128】
微細振動特徴量算出装置200は、主に、CPU901と、ROM903と、RAM905と、を備える。また、微細振動特徴量算出装置200は、更に、バス907と、入力装置909と、出力装置911と、ストレージ装置913と、ドライブ915と、接続ポート917と、通信装置919とを備える。
【0129】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、ROM903、RAM905、ストレージ装置913、またはリムーバブル記録媒体921に記録された各種プログラムに従って、微細振動特徴量算出装置200内の動作全般またはその一部を制御する。ROM903は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM905は、CPU901が使用するプログラムや、プログラムの実行において適宜変化するパラメータ等を一次記憶する。これらはCPUバス等の内部バスにより構成されるバス907により相互に接続されている。
【0130】
バス907は、ブリッジを介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バスに接続されている。
【0131】
入力装置909は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびレバーなどユーザが操作する操作手段である。また、入力装置909は、例えば、赤外線やその他の電波を利用したリモートコントロール手段(いわゆる、リモコン)であってもよいし、微細振動特徴量算出装置200の操作に対応したPDA等の外部接続機器923であってもよい。さらに、入力装置909は、例えば、上記の操作手段を用いてユーザにより入力された情報に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路などから構成されている。微細振動特徴量算出装置200のユーザは、この入力装置909を操作することにより、微細振動特徴量算出装置200に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0132】
出力装置911は、取得した情報をユーザに対して視覚的または聴覚的に通知することが可能な装置で構成される。このような装置として、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置、プラズマディスプレイ装置、ELディスプレイ装置およびランプなどの表示装置や、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置や、プリンタ装置、携帯電話、ファクシミリなどがある。出力装置911は、例えば、微細振動特徴量算出装置200が行った各種処理により得られた結果を出力する。具体的には、表示装置は、微細振動特徴量算出装置200が行った各種処理により得られた結果を、テキストまたはイメージで表示する。他方、音声出力装置は、再生された音声データや音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して出力する。
【0133】
ストレージ装置913は、微細振動特徴量算出装置200の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置913は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)等の磁気記憶部デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス、または光磁気記憶デバイス等により構成される。このストレージ装置913は、CPU901が実行するプログラムや各種データ、および外部から取得した各種のデータなどを格納する。
【0134】
各種のドライブ915は、記録媒体用リーダライタであり、微細振動特徴量算出装置200に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録されている情報を読み出して、RAM905に出力する。また、ドライブ915は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体921に記録を書き込むことも可能である。リムーバブル記録媒体921は、例えば、CDメディア、DVDメディア、Blu−rayメディア等である。また、リムーバブル記録媒体921は、コンパクトフラッシュ(登録商標)(CompactFlash:CF)、フラッシュメモリ、または、SDメモリカード(Secure Digital memory card)等であってもよい。また、リムーバブル記録媒体921は、例えば、非接触型ICチップを搭載したICカード(Integrated Circuit card)または電子機器等であってもよい。
【0135】
接続ポート917は、機器を微細振動特徴量算出装置200に直接接続するためのポートである。接続ポート917の一例として、USB(Universal Serial Bus)ポート、IEEE1394ポート、SCSI(Small Computer System Interface)ポート、RS−232Cポート等がある。この接続ポート917に外部接続機器923を接続することで、微細振動特徴量算出装置200は、外部接続機器923から直接各種のデータを取得したり、外部接続機器923に各種のデータを提供したりする。
【0136】
通信装置919は、例えば、通信網925に接続するための通信デバイス等で構成された通信インターフェースである。通信装置919は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)、またはWUSB(Wireless USB)用の通信カード等である。また、通信装置919は、光通信用のルータ、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)用のルータ、または、各種通信用のモデム等であってもよい。この通信装置919は、例えば、インターネットや他の通信機器との間で、例えばTCP/IP等の所定のプロトコルに則して信号等を送受信することができる。また、通信装置919に接続される通信網925は、有線または無線によって接続されたネットワーク等により構成され、例えば、インターネット、家庭内LAN、赤外線通信、ラジオ波通信または衛星通信等であってもよい。
【0137】
以上、本発明の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置の機能を実現可能なハードウェア構成の一例を示した。上記の各構成要素は、汎用的な部材を用いて構成されていてもよいし、各構成要素の機能に特化したハードウェアにより構成されていてもよい。従って、本実施形態を実施する時々の技術レベルに応じて、適宜、利用するハードウェア構成を変更することが可能である。
【0138】
(まとめ)
以上説明したように、本発明の実施形態に係る微細振動特徴量算出装置及び微細振動特徴量算出方法によれば、ドップラー効果によりドップラーセンサの出力周波数と被測定物の速度が変換可能な線形の関係にあることに着目し、微細振動をドップラー周波数の変化、すなわち振動速度の変化と捉え、微細振動の振動速度の時間に関する2階微分を算出し急峻な変化を抽出することにより、微細振動の測定環境に関わらず、被測定物に発生している微細振動に関する特徴量を正確に算出することが可能となる。
【0139】
また、微細振動として人間の心拍に着目する場合、本発明の実施形態に係る微細振動検出装置をオフィスデスク等に設置することによって、デスクワーク中の心拍変動を非接触で測定することが可能となる。また、病院待合室等に設置することで、診察待ちの患者の心拍変動から、優先的に診察するべき患者を特定することが可能となり、特に大規模災害時のトリアージに有用となる。
【0140】
また、ドップラーセンサを椅子やベッド等に装着することで、接触状態で測定を行うことが可能となり、人が着席・就寝した際の心拍を更に正確に測定することが可能となる。
【0141】
また、本発明の実施形態に係る微細振動検出装置、並びに、微細振動特徴量算出装置及び微細振動特徴量算出方法は、人間の生命活動に伴う微細振動のみならず、様々な物体に生じる瞬間的な振動を、非接触で解析することが可能である。
【0142】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0143】
10 微細振動検出装置
100 ドップラーセンサ
101 測定部
103 周波数変換部
105 振動速度算出部
107 データ出力部
109 記憶部
200 微細振動特徴量算出装置
201 ビート信号取得部
203 周波数変換部
205 ビート信号特徴量算出部
207 微細振動特徴量算出部
209 微細振動特徴量出力部
211 表示制御部
213 記憶部
221 振動速度算出部
223 2階微分算出部
225 相関係数算出部
251 データ取得部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、前記放射波の周波数と前記反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから出力された当該ビート信号を取得するビート信号取得部と、
取得した前記ビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換部と、
周波数領域の信号へと変換された前記ビート信号を利用して、前記微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出部と、
を備えることを特徴とする、微細振動特徴量算出装置。
【請求項2】
算出された前記ビート信号特徴量を利用して、前記微細振動の時間的な位置、前記微細振動の間隔及び前記微細振動の振動数の少なくとも何れかを含む微細振動特徴量を算出する微細振動特徴量算出部を更に備える
ことを特徴とする、請求項1に記載の微細振動特徴量算出装置。
【請求項3】
前記ビート信号特徴量算出部は、前記周波数領域の信号へと変換されたビート信号のうち、所定の周波数範囲の前記ビート信号を利用して、前記ビート信号特徴量を算出する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の微細振動特徴量算出装置。
【請求項4】
前記振動速度は、前記周波数領域の信号へと変換されたビート信号に含まれる周波数成分において、各周波数をドップラー効果による周波数変化とみなした速度に変換し、当該速度を各周波数のパワーを重みとみなす加重平均として、所定の周波数範囲で算出した値である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の微細振動特徴量算出装置。
【請求項5】
前記振動速度は、前記周波数領域の信号へと変換されたビート信号に含まれる周波数成分において、各周波数を、各周波数のパワーを重みとみなす加重平均として、所定の周波数範囲で算出した値である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の微細振動特徴量算出装置。
【請求項6】
前記ビート信号特徴量算出部は、前記振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量として、前記振動速度の時間に関する2階微分を算出し、前記振動速度の時間変化から前記微細振動を強調する
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の微細振動特徴量算出装置。
【請求項7】
微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、前記放射波の周波数と前記反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから出力された当該ビート信号を取得するビート信号取得ステップと、
取得した前記ビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換ステップと、
周波数領域の信号へと変換された前記ビート信号を利用して、前記微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出ステップと、
を含むことを特徴とする、微細振動特徴量算出方法。
【請求項8】
微細振動を伴う物体に対して、所定の周波数を有する放射波を放射するとともに、当該放射波の前記物体による反射波を検出し、前記放射波の周波数と前記反射波の周波数との差分に相当する周波数を有するビート信号を出力するドップラーセンサから信号を取得することが可能なコンピュータに、
前記ドップラーセンサから出力された前記ビート信号を取得するビート信号取得機能と、
取得した前記ビート信号を周波数領域の信号へと変換する周波数変換機能と、
周波数領域の信号へと変換された前記ビート信号を利用して、前記微細振動の振動速度の時間に関する急峻な変化を表すビート信号特徴量を算出するビート信号特徴量算出機能と、
を実現させるためのプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−211847(P2012−211847A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77999(P2011−77999)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度総務省「ユビキタス・プラットフォーム技術の研究開発(ユビキタスサービスプラットフォーム技術の研究開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】