説明

微細有機顔料の製造方法、微細有機顔料及び微細有機顔料着色組成物

【課題】本発明の課題は、従来よりも短時間で処理が可能で、単位エネルギー当りの生産性が良く、非常に微細な有機顔料を製造する方法を提供することである。更には、前記の製造方法により製造された微細な有機顔料、および、微細な有機顔料を用いた微細有機顔料着色組成物を提供することである。
【解決手段】微細有機顔料の製造法において、アルカリ性物質の共存下において微細化工程を行うことを特徴とする微細化有機顔料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細有機顔料の製造方法及び該製法により得られる微細有機顔料並びに該顔料を含む着色組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機顔料には、アゾ顔料のように合成時に適切な反応条件を選択することにより微細で整粒された顔料粒子を得ることができるものもあるが、銅フタロシアニングリーン顔料のように合成時に生成する極めて微細な粒子が凝集した粗製顔料を、後工程で粒子(結晶)成長、整粒させることによって顔料化するもの、銅フタロシアニンブルー顔料のように合成時に生成する粗大で不揃いな粒子を後工程で微細化、整粒させることにより顔料化を行うものもあることが知られている。
【0003】
粗大な粗製顔料粒子を顔料化する方法として、現在広く用いられている方法には、ソルベントソルトミリング法、乾式粉砕法等がある。
【0004】
特にソルベントソルトミリング法は、粗大な粗製顔料粒子を、塩化ナトリウムや硫酸ナトリウム等の無機塩類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘性の高い水溶性有機溶剤の存在下で、ニーダー等により機械的に摩砕して顔料化する方法である。ソルベントソルトミリング法は、微細化、整粒させるのに有効な方法であるが、より微細な顔料を得るためには、長時間混練することが必要であり、電力消費量が大きく、単位エネルギー当たりの生産性が悪いという問題点がある。
【0005】
このような摩砕による結晶粒子の微細化と有機溶剤による結晶成長が同時に進行するため、摩砕剤の種類、添加量及び機械的剪断力の制御、有機溶剤種類、温度による結晶成長制御等のバランスを取ることで微細化及び整粒化の制御が行われている。例えば粒子を微細化させるには結晶成長を抑えつつ混練する必要があるため低温での混練が効果的である。一般的にニーダー等の大型混練機械ではその発熱量も大きく、低温での混練は困難である。
【0006】
ソルベントソルトミリング法で用いられる摩砕助剤の粒子径については、特許文献1および2には好ましい粒子径範囲が開示されている。しかし、ソルベントソルトミリング法において、極限まで微細な顔料を得ることができるかと云う観点については検討されていなかった。特許文献3には摩砕助剤の物性面から、より効率よく微細化するための方法が開示されているが、さらに、より効率よく微細化度の高い顔料を得る方法が求められていた。
【0007】
微細化度の高い顔料の使用用途としては、例えば、液晶カラーディスプレイ、ビデオカメラ等のカラーフィルタや、電子写真複写機のカラートナーが挙げられるが、これらに対して有機顔料の使用が増加し、要求品位も年々上がってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2004−502855号公報
【特許文献2】特開2002−121420号公報
【特許文献3】特開2007−238852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる状況に鑑みなされたものであって、従来よりも短時間で、単位エネルギー当りの生産性良く、非常に微細な有機顔料を製造する方法を提供することを目的とする。更には、前記の製造方法により製造された微細な有機顔料、および、微細な有機顔料を用いた微細有機顔料着色組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、微細有機顔料の製造方法において、アルカリ性物質の共存下で微細化することを特徴とする微細有機顔料の製造方法に関する。
【0011】
また、本発明は、微細有機顔料の製造方法が、粗製有機顔料と摩砕助剤と水溶性有機溶剤との混合物を混練するソルベントソルトミリング法である上記微細有機顔料の製造方法に関する。
【0012】
また、本発明は、粗製有機顔料がキノフタロン系顔料または/およびジケトピロロピロール系顔料であることを特徴とする上記微細有機顔料の製造方法に関する。
【0013】
また、本発明は、上記製造方法により得られることを特徴とする微細有機顔料に関する。
【0014】
また、本発明は、上記微細有機顔料、及び顔料担体を含むことを特徴とする微細有機顔料着色組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、非水系溶剤を含むことを特徴とする上記微細有機顔料着色組成物に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の微細有機顔料の製造方法では、粗製有機顔料と摩砕助剤と水溶性有機溶剤との混合物を混練する際に、アルカリ性物質を添加することによって、粗製有機顔料の結晶表面に作用し、粗製有機顔料と水溶性有機溶剤との親和性を向上させる。親和性の向上により、顔料を効率的に摩砕させることができ、微細化を促進することができる。このため、従来よりも短時間で、単位エネルギー当りの生産性良く、微細で均一な粒子経に整粒された顔料を製造することができる。
【0017】
また、本発明のアルカリ性物質の添加による微細有機顔料の製造方法では、従来の高価な色素誘導体の添加によるものに比べ、非常に安価に、微細で均一な粒子経に整粒された顔料を製造することができる。
【0018】
更に、本発明の微細有機顔料の製造方法において添加するアルカリ性物質は、ろ過、水洗することによって顔料と分離することができ、例えば一般の色素誘導体のように顔料の色相や明度に影響を与えない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の微細有機顔料の製造方法は、粗製有機顔料、アルカリ性物質、摩砕助剤、及び水溶性有機溶剤を含む混合物をニーダー等で機械的に混練した後、水中に投入し撹拌してスラリー状とし、次いでこのスラリーを濾過、水洗、乾燥して製造される。
【0020】
本発明の微細有機顔料の製造方法により得られる有機顔料は、粗製有機顔料がキノフタロン系、ジケトピロロピロール系顔料から選ばれる顔料である。特に好ましくはキノフタロン系顔料である。
【0021】
キノフタロン系顔料は、下記一般式(I)で表される構造の黄色の顔料であり、優れた耐光性、耐熱性を有している。キノフタロン系顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで示すと、C.I.Pigment Yellow 138等が挙げられる。
【0022】
一般式(I)
【化1】

[式中、Xは塩素原子、または、臭素原子を表す。]
【0023】
ジケトピロロピロール系顔料は、下記一般式(II)で表される構造の赤〜橙色の顔料であり、優れた耐光性、耐熱性を有している。ジケトピロロピロール系顔料の具体例をカラーインデックスナンバーで示すと、C.I.Pigment RED 254、255、264、272、あるいは、C.I.Pigment Orange 71、73、81等が挙げられる。
【0024】
一般式(II)
【化2】




[式中、XおよびYはそれぞれ独立に、−CN、−C(CH33、−CH3、−Cl、−C65、または、−Hを表す。]
【0025】
本発明の方法で製造される微細有機顔料の平均一次粒子径は、ソルトミリングの条件や、有機顔料の種類によって異なるが、適切に条件を設定することで、0.01〜0.5μm程度の範囲で、任意の粒子径に制御することができる。
【0026】
本発明の微細有機顔料の製造方法において、粗製有機顔料と摩砕助剤と水溶性有機溶剤との混合物を混練する際には、有機顔料の結晶成長や結晶転位を防止する目的で、色素誘導体を添加してもよい。添加する色素誘導体としては、微粉砕する粗製有機顔料と同一の構造を母体とする色素誘導体が好ましいが、母体が異なる構造の色素誘導体であっても良い。色素誘導体の置換基としては、水酸基、カルボキシル基、カルバモイル基、スルホン酸基、スルホン酸アミド基、フタルイミドメチル基等が挙げられる。また有機色素には、一般に色素とは呼ばれていないナフタレン系、アントラキノン系等の淡黄色の芳香族多環化合物も含まれる。特に、塩基性基を有する色素誘導体は、顔料の分散効果が大きいため、好適に用いられる。これらは単独または2種類以上を混合して用いることができる。
【0027】
混練時に用いられる摩砕助剤としては、水溶性無機塩が望ましく硬度の高さを利用してソルトミリング時に顔料を破砕し、顔料の一次粒子を微細化する。水に溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、食塩(塩化ナトリウム)、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたはこれらの混合物等を挙げることができ、価格面から塩化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0028】
本発明で使用する水溶性無機塩の粒子径は、特に限定されるものではないが、体積基準のメディアン粒子径(D50)が1〜50μm、95%粒子径(D95)が80μm以下の水溶性無機塩が望ましい。更に、特に微細な有機顔料が所望の場合は、摩砕助剤として使用される水溶性無機塩も微細であることが必要であり、体積基準のメディアン粒子径(D50)が1〜10μm、95%粒子径(D95)は20μm以下の水溶性無機塩が好適に用いられる。また、水溶性無機塩の粒子径は、乾式仕様のレーザー回折式粒度分布測定機を用いて求めることが可能である。
【0029】
水溶性無機塩の品質としては、水分含有量も重要である。工業用並塩では通常1.0重量%以上の水分が含まれており、水分含有量が1.0重量%以上の食塩を乾燥せずにそのまま粉砕すると、粉砕された水溶性無機塩の付着性が強く、放置するとすぐに固まってしまうことが多い。水溶性無機塩の水分含有量が0.5重量%以下まで乾燥することが好ましく、より好ましくは0.3重量%以下まで乾燥する。特に好ましくは、水溶性無機塩を高温で焼結して、水分含有量を0.2重量%以下にする。
【0030】
水溶性無機塩の使用量は、粗製有機顔料の種類によって異なるが、粗製有機顔料100重量部に対し、水溶性無機塩100〜3000重量部であることが好ましく、より好ましくは水溶性無機塩500〜1500重量部である。粗製有機顔料に対する水溶性無機塩の比率が大きいほど微細化効果が大きいが、1回の顔料処理量が少なくなり高コストの要因となる。
【0031】
本発明で使用する水溶性有機溶剤は、粗製有機顔料及び水溶性無機塩の混合物を湿潤させ適度な固さのドウにすることで摩砕効果を増大させ、顔料の微細化を促進させるためのものであれば特に制限はないが、水溶性有機溶剤が好ましい。また特に好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の粘性の高い水溶性有機溶剤である。
【0032】
水溶性有機溶剤の使用量は、粗製有機顔料の種類、水溶性無機塩の量によって異なるが、粗製有機顔料100重量部に対して、一般的に10〜500重量部であり、好ましくは100〜250重量部である。
【0033】
水溶性有機溶剤としては、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液体ポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、低分子量ポリプロピレングリコール、アニリン、ピリジン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。また必要に応じてこれらの水溶性有機溶剤を2種類以上混合して使用してもよい。
【0034】
本発明で使用するアルカリ性物質としては例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、塩基性酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、炭酸水素塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩、アンモニアもしくはアミン類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物としては例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等を挙げることができる。
【0036】
塩基性酸化物としては例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム等を挙げることができる。
【0037】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩としては例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等を挙げることができる。
【0038】
炭酸水素塩としては例えば、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等を挙げることができる。
【0039】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属のリン酸塩としては例えば、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三ルビジウム、リン酸三カルシウム等を挙げることができる。
【0040】
アミン類としては例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、N,N−エチルイソプロピルアミン、N,N−エチルプロピルアミン、N,N−メチルブチルアミン、N,N−メチルイソブチルアミン、N,N−ブチルエチルアミン、N,N−tert−ブチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジプロピルアミン、N,N−sec−ブチルプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、N,N−イソブチル−sec−ブチルアミン、ジアミルアミン、ジイソアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルへキシル)アミン、ジオクチルアミン、N,N−メチルオクタデシルアミン、ジデシルアミン、ジアリルアミン、N,N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N,N−メチルヘキシルアミン、ジオレイルアミン、ジステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノメチルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノアミルアミン、N,N−ジメチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノヘキシルアミン、N,N−ジエチルアミノブチルアミン、N,N−ジエチルアミノペンチルアミン、N,N−ジプロピルアミノブチルアミン、N,N−ジブチルアミノプロピルアミン、N,N−ジブチルアミノエチルアミン、N,N−ジブチルアミノブチルアミン、N,N−ジイソブチルアミノペンチルアミン、N,N−メチルーラウリルアミノプロピルアミン、N,N−エチルーヘキシルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノエチルアミン、N,N−ジオレイルアミノエチルアミン、N,N−ジステアリルアミノブチルアミン、ピペリジン、2−ピペコリン、3−ピペコリン、4−ピペコリン、2,4−ルペチジ ン、2,6−ルペチジン、3,5−ルペチジン、3−ピペリジンメタノール、ピペコリン酸、イソニペコチン酸、イソニペコチン酸メチル、イソニペコチン酸エチル、2−ピペリジンエタノール、ピロリジン、3−ヒドロキシピロリジン、N−アミノエチルピペリジン、N−アミノエチル−4−ピペコリン、N−アミノエ チルモルホリン、N−アミノプロピルピペリジン、N−アミノプロピル−2−ピペコリン、N−アミノプロピル−4−ピペコリン、N−アミノプロピルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−ブチルピペラジン、N−メチルホモピペラジン、1−シクロペンチルピペラジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、又は1−シクロペンチルピペラジン等を挙げることができる。
【0041】
その中でもアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、塩基性酸化物は特に好ましい。必要に応じてこれらのアルカリ性-物質を2種類以上混合して使用しても良い。
【0042】
本発明におけるアルカリ性物質の添加方法については、適量の水に溶解させて添加することが好ましいが、特に限定されるものではなく、そのまま添加しても良く、また水溶性有機溶剤に溶解、若しくは分散して添加しても良い。
【0043】
また本発明で使用するアルカリ性物質の添加量は、特に限定されるものではないが、好ましくは粗製有機顔料100重量部に対して、0.05〜5重量部であり、特に好ましくは0.1〜2.5重量部である。5重量部を超えた場合には、粗製有機顔料を変質させることがあり、所望の色相や明度の有機顔料が得られない。また、0.05より低い場合には、所望の有機顔料の微細化促進効果が得られない。
【0044】
混練混合物を機械的に混練する装置としては、ニーダー、プラネタリーミキサー、トリミックス(井上製作所社製)、2本ロール、3本ロール、多軸ロール、エクストルーダー、KRCニーダー(栗本鐵工所社製)、ミラクルKCK(浅田鉄工社製)等が挙げられるが、特に限定されるものではなく、混練物に効率よく機械的剪断力が与えられるものであれば、バッチ式および連続式に関わらず使用できる。
【0045】
混練混合物を機械的に混練するときの温度は、特に限定されるものではないが、20〜70℃で処理することが好ましく、30〜60℃で処理することがより好ましい。70℃を超えた場合には、粗製顔料粒子を砕いて微細化する速度と比較して顔料粒子の結晶成長速度が大きくなるため微細化速度が低下し、到達する微細化度が低下する。また、20℃より低い場合には混練時に発生する熱エネルギーの除去が困難となり、与える機械エネルギーを低減する、混練混合物の処理量を低減する、もしくは混練混合物の粘度を低減する等の所作、もしくはこれらの所作の組み合わせが必要となり、生産性が低下する。
【0046】
混練後の微細有機顔料は、常法により処理される。すなわち、混練組成物を水または鉱酸水溶液で処理し、濾過、水洗し顔料を単離して得られる。微細有機顔料は、このまま湿潤状態で使用することも、乾燥・粉砕により粉末状態で使用することも可能である。必要に応じて色素誘導体、分散剤、界面活性剤もしくはその他の添加剤等を混練時に加えても良い。
【0047】
本発明の製造方法は、ソルベントソルトミリング法に限定されるものではない。その他、ドライソルトミリング法、乾式粉砕法等が挙げられる。
【0048】
乾式粉砕法は、ビーズ等の粉砕メディアを内蔵した粉砕機を使用して、実質的に液状物質を介在させないで粗製有機顔料を粉砕するものである。粉砕は、粉砕メディア同士の衝突による粉砕力や破壊力を利用して行われる。乾式粉砕装置としては、乾式のアトライター、ボールミル、振動ミル等の公知の方法を用いることが出来る。
【0049】
次に、このようにして得られた微細有機顔料、顔料担体、非水系溶剤を含有する本発明の着色組成物について説明する。
【0050】
本発明の着色組成物に含まれる顔料担体は、微細有機顔料を分散させるものであり、バインダー樹脂、その前駆体またはそれらの混合物により構成される。バインダー樹脂は、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂である。バインダー樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、および活性エネルギー線硬化性樹脂が含まれ、その前駆体には、活性エネルギー線照射により硬化してバインダー樹脂を生成するモノマーもしくはオリゴマーが含まれ、これらを単独で、または2種以上混合して用いることができる。
【0051】
顔料担体は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、30〜700重量部、好ましくは60〜450重量部の量で用いることができる。また、バインダー樹脂とその前駆体との混合物を顔料担体として用いる場合には、バインダー樹脂は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、20〜400重量部、好ましくは50〜250重量部の量で用いることができる。また、バインダー樹脂の前駆体は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部の量で用いることができる。
【0052】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ブチラール樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0053】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の反応性の置換基を有する高分子に、イソシアネート基、アルデヒド基、エポキシ基等の反応性の置換基を有する(メタ)アクリル化合物やケイヒ酸を反応させて、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の光架橋性基を導入した樹脂が用いられる。また、スチレン−無水マレイン酸共重合物やα−オレフィン−無水マレイン酸共重合物等の酸無水物を含む線状高分子をヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物によりハーフエステル化したものも用いられる。
【0054】
バインダー樹脂の前駆体であるモノマー、オリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられ、これらを単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。
【0055】
本発明の着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化するときには、光重合開始剤等が添加される。
【0056】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、2,4−トリクロロメチル(4’−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤等が用いられる。光重合開始剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは10〜150重量部の量で用いることができる。
【0057】
上記光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル−9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4’−ジエチルイソフタロフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。増感剤は、顔料着色組成物中の光重合開始剤100重量部に対して、0.1〜60重量部の量で用いることができる。
【0058】
本発明の顔料着色組成物は、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジストの形態で調整することができる。着色レジストは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または活性エネルギー線硬化性樹脂とモノマーを含む顔料担体中に顔料を分散させたものであり、1種または2種以上の上記微細有機顔料を、必要に応じて光重合開始剤と共に、顔料担体中に、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等の各種分散手段を用いて製造することができる。また、本発明の着色組成物は、数種類の上記微細有機顔料を別々に顔料担体に分散したものを混合して製造することもできる。
【0059】
微細有機顔料を顔料担体中に分散する際には、適宜、樹脂型顔料分散剤、界面活性剤、色素誘導体等の分散助剤を用いることができる。分散助剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、分散助剤を用いて顔料を顔料担体中に分散してなる着色組成物を用いて着色膜を作製した場合には、透明性に優れる。分散助剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.1〜40重量部、好ましくは0.1〜30重量部の量で用いることができる。
【0060】
なかでも、色素誘導体は、微細有機顔料の凝集を防ぎ、有機顔料が微細に分散した状態を維持する働きに優れ、これらの誘導体を含有する着色組成物を用いることにより、高コントラスト比で色純度の高い着色膜を製造することができるため、分散助剤として好ましい。
【0061】
本発明の着色組成物において添加する樹脂型顔料分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。樹脂型顔料分散剤として具体的には、ポリウレタン、ポリアクリレートなどのポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩などの油性分散剤、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂や水溶性高分子化合物、ポリエステル系、変性ポリアクリレート系、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が用いられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0062】
本発明の着色組成物において添加する界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0063】
本発明の着色組成物には、顔料を充分に顔料担体中に分散させ、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布して着色膜を形成することを容易にするために非水系溶剤を含有させることができる。
【0064】
非水系溶剤としては、例えば1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3−メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、N−メチルピロリドン、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、二塩基酸エステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。溶剤は、顔料分散体および着色組成物中の顔料100重量部に対して、800〜4000重量部、好ましくは1000〜2500重量部の量で用いることができる。
【0065】
また、本発明の着色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。貯蔵安定剤としては、例えばベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸、シュウ酸などの有機酸およびそのメチルエーテル、t−ブチルピロカテコール、トリエチルホスフィン、トリフェニルフォスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色組成物中の顔料100重量部に対して、0.1〜10重量部の量で用いることができる。
【0066】
本発明の着色組成物は、グラビアオフセット用印刷インキ、水無しオフセット印刷インキ、シルクスクリーン印刷用インキ、溶剤現像型あるいはアルカリ現像型着色レジストの形態で調製することができる。着色レジストは、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂または感光性樹脂と、モノマーと、光重合開始剤と、有機溶剤とを含有する組成物中に色素を分散させたものである。
【0067】
微細有機顔料は、着色組成物の全固形分量を基準(100重量%)として5〜70重量%の割合で含有されることが好ましく、20〜50重量%の割合であることがより好ましい。
【0068】
また、本発明の着色組成物には、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0069】
本発明の着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、さらに好ましくは0.5μm以上の粗大粒子および混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0070】
本発明においては、粗製有機顔料と摩砕助剤と水溶性有機溶剤との混合物を混練する工程の前または工程中に、必要に応じて樹脂、界面活性剤等を添加してもよい。使用する樹脂としては、特に制限はないが、ロジン、ロジン誘導体、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ゴム誘導体、タンパク誘導体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、スチレン樹脂、スチレン−マレイン酸共重合樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアマイド樹脂、ポリイミド樹脂、アルキッド樹脂、ゴム系樹脂、セルロース類、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、および上記樹脂のオリゴマー、モノマー類を挙げることができる。
【0071】
本発明の方法により製造された微細有機顔料は、微細化され、かつ均一な粒子形状に整粒されているため、微細な粒子状態を保持したまま均一に水系または非水系ビヒクル中に分散させて顔料分散体とすると、安定した粘度特性を有する良好な分散体となる。該分散体をインクジェットインキとして用いると、優れた飛翔安定性と記録物の鮮明性、各種耐性を実現することができる。
【0072】
また、該分散体を用いてカラーフィルタを作成すると、高い明度、鮮明性、透過率のカラーフィルタとなる。
【0073】
得られる微細有機顔料の平均一次粒子径は、30nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以下である。また、平均一次粒子径は5nm以上であることが好ましい。顔料の平均一次粒子径が上限値より大きい場合には、着色膜の透明性等が低下する。また、下限値より小さい場合は、顔料分散が難しくなり、着色組成物としての安定性を保ち、流動性を確保することが困難になる。また、一次粒子径の算出方法としては、例として以下のものが挙げられる。透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した微細有機顔料の像を画像処理することなどにより、粒子個々の投影面積を求め、その投影面積に相当する円の直径を算出する。個々に算出された粒子の円の直径の総和を個数で除した値を、平均一次粒子径として使用することが可能である。
【実施例】
【0074】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」および「%」は、「重量部」および「重量%」をそれぞれ表す。
【0075】
[アクリル樹脂溶液の調整]
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブル4つ口フラスコに、シクロヘキサノン700部を添加し、80℃に加熱した。反応容器内を窒素置換した後、滴下管より、N−ブチルメタクリレート133部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート46部、メタクリル酸43部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成株式会社製「アロニックスM110」)74部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル4部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に、3時間反応を継続し、重量平均分子量26000のアクリル樹脂の溶液を得た。室温まで冷却した後、2部の樹脂溶液を取り出し、180℃で20分加熱乾燥して不揮発分を測定した。樹脂溶液の不揮発分が20重量%になるようにシクロヘキサノンを添加してアクリル樹脂溶液を得た。
【0076】
[実施例1]
下記組成の混練物を3000容量部のニーダーに投入して、回転数63rpm、処理温度60℃で6時間混練した。(アルカリ性物質として水酸化ナトリウム水溶液を用いた。)
パリオトールイエローK0961HD(BASF社製) 147部
ベンズイミダロン系色素誘導体(構造は式(III)に示す) 3部 水酸化ナトリウム水溶液 3部 塩化ナトリウム 1500部
ジエチレングリコール 330部
ここで得られた混練物を70℃水10000部に取り出し、1時間保温撹拌後、濾過、水洗、乾燥、粉砕し、微細キノフタロン顔料を得た。
【0077】
ついで、得られた微細キノフタロン顔料を含む下記組成の混合物を均一に撹拌した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミルで13.5時間分散した後、1μmのフィルタで濾過し、黄色顔料分散体を作製した。
キノフタロン顔料 16.9部
キノフタロン系色素誘導体(構造は式(IV)に示す) 3.0部
メトキシプロピルアセテート 124.0部
シクロヘキサノン 7.6部
アクリル樹脂溶液 38.1部
【0078】
式(III)
【化3】



【0079】
式(IV)
【化4】



【0080】
さらに、得られた黄色顔料分散体を含む下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過し、黄色着色組成物を作製した。
黄色顔料分散体 45.0部
アクリル樹脂溶液 5.0 部
上記黄色着色組成物をガラス板上に塗布、乾燥し、着色膜を作製した。
【0081】
[実施例2]
下記組成の混練物を3000容量部のニーダーに投入して、回転数63rpm、処理温度60℃で4時間混練した。(アルカリ性物質として水酸化ナトリウム水溶液を用いた。)
パリオトールイエローK0961HD(BASF社製) 147部
ベンズイミダロン系色素誘導体 3部 水酸化ナトリウム水溶液 6部 塩化ナトリウム 1500部
ジエチレングリコール 330部
ここで得られた混練物を実施例1と同様に処理することにより微細キノフタロン顔料を得た。ついで、得られた微細キノフタロン顔料を実施例1と同様の組成で、同様にして攪拌、分散、混合、濾過、塗布し、黄色着色組成物の着色膜を作製した。
【0082】
[実施例3]
下記組成の混練物を3000容量部のニーダーに投入して、回転数63rpm、処理温度60℃で8時間混練した。(アルカリ性物質として酸化マグネシウムを用いた。)
パリオトールイエローK0961HD(BASF社製) 147部
ベンズイミダロン系色素誘導体 3部 酸化マグネシウム 0.2 部
塩化ナトリウム 1500部
ジエチレングリコール 330部
ここで得られた混練物を実施例1と同様に処理することにより微細キノフタロン顔料を得た。ついで、得られた微細キノフタロン顔料を実施例1と同様の組成で、同様にして攪拌、分散、混合、濾過、塗布し、黄色着色組成物の着色膜を作製した。
【0083】
[実施例4]
下記組成の混練物を3000容量部のニーダーに投入して、回転数45rpm、処理温度60℃で5時間混練した。(アルカリ性物質として水酸化ナトリウム水溶液を用いた。)
IRGAFOR RED B−CF(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)135部
ジケトピロロピロール系色素誘導体(構造は式(V)で示す) 15部 水酸化ナトリウム水溶液 1部 塩化ナトリウム 1500部
ジエチレングリコール 240部
ここで得られた混練物を70℃水10000部に取り出し、1時間保温撹拌後、濾過、水洗、乾燥、粉砕し、微細ジケトピロロピロール顔料を得た。
【0084】
ついで、得られた微細ジケトピロロピロール顔料を含む下記組成の混合物を均一に撹拌した後、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミルで10時間分散した後、1μmのフィルタで濾過し、赤色顔料分散体を作製した。
ジケトピロロピロール顔料 17.4部
ジケトピロロピロール系色素誘導体 2.4部
メトキシプロピルアセテート 66.1部
シクロヘキサノン 17.2部
アクリル樹脂溶液 53.9部
【0085】
式(V)
【化5】



【0086】
さらに、得られた赤色顔料分散体を含む下記組成の混合物を均一になるように撹拌混合した後、1μmのフィルタで濾過し、赤色着色組成物を作製した。
赤色顔料分散体 45.3部
アクリル樹脂溶液 18.1部
メトキシプロピルアセテート 28.9部
上記赤色着色組成物をガラス板上に塗布、乾燥し、着色膜を作製した。
【0087】
[比較例1]
下記組成の混練物を3000容量部のニーダーに投入して、回転数63rpm、処理温度60℃で10時間混練した。
パリオトールイエローK0961HD(BASF社製) 147部
ベンズイミダロン系色素誘導体 3部 塩化ナトリウム 1500部
ジエチレングリコール 330部
ここで得られた混練物を実施例1と同様に処理することにより微細キノフタロン顔料を得た。ついで、得られた微細キノフタロン顔料を実施例1と同様の組成で、同様にして攪拌、分散、混合、濾過、塗布し、黄色着色組成物の着色膜を作製した。
【0088】
[比較例2]
下記組成の混練物を3000容量部のニーダーに投入して、回転数45rpm、処理温度60℃で6時間混練した。
IRGAFOR RED B−CF(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)135部
ジケトピロロピロール色素誘導体 15部 塩化ナトリウム 1500部 ジエチレングリコール 240部
ここで得られた混練物を実施例4と同様に処理することにより微細ジケトピロロピロール顔料を得た。ついで、得られた微細ジケトピロロピロール顔料を実施例4と同様の組成で、同様にして攪拌、分散、混合、濾過、塗布し、赤色着色組成物の着色膜を作製した。
【0089】
[評価法]
得られた微細キノフタロン顔料および微細ジケトピロロピロール顔料について、下記条件でX線回折スペクトル測定を実施した。
装置:Rigaku Ultima2001
X線源:CuKα
電圧:40kV
電流:40mA
測定範囲:3.0°から35.0°
ステップ角:0.02°
【0090】
<半価幅>
この測定結果より、下記条件でデータ処理を行い、ピーク半価幅を求めた。ここで、半価幅とは、ある2θのピークにおいて、そのX線回折強度の1/2強度となる強度位置でのピーク幅で定義されるブラッグ角値である。
【0091】
半価幅は以下のように求めた。まず2θ=xのX線回折強度はx±0.2の移動平均とし、データを平滑化した。対象とするピーク値付近において、強度が最大となる位置をピーク位置とし、次にピーク位置前後からひいた直線をベースラインとしてバックグラウウンド除去を行い、正味の値より半価幅(△2θ)を求めた。
【0092】
なおキノフタロン顔料では2θ=27.8±0.5°にあるピークについて、2θ=27.0と2θ=29.3を結ぶ直線をベースラインとしてバックグラウウンド除去を行い、ジケトピロロピロール顔料では2θ=28.2±0.5°にあるピークについて、2θ=23.4と2θ=34.8を結ぶ直線をベースラインとしてバックグラウウンド除去を行った。
【0093】
ここで求めた半価幅(△2θ)は、結晶の大きさに対応するものであり、結晶が小さいほど半価幅は大きい値となる。
【0094】
<コントラスト比>
得られた着色組成物を用いて、下記の方法で着色膜を作成した。すなわち、100mm×100mm、1.1mm厚のガラス基板上に、スピンコーターを用いて、着色膜の色度(x)が、キノフタロン顔料では0.415、ジケトピロロピロール顔料では0.640となるような回転数で、得られた着色組成物を塗布した。次に、キノフタロン顔料では140℃で5分、ジケトピロロピロール顔料では85℃で10分、230℃で60分乾燥させた。そして、着色膜の明度(Y)およびコントラスト比(CR比)を測定した。明度(Y)は、分光光度計(日立製作所製「U-3500」)で測定した。また、コントラスト比(CR比)は、コントラストテスター(壺坂電機製「CT-1BF」)で測定した。
【0095】
有機顔料の混練時間と上記例の方法により測定した半価幅、コントラスト比及び明度を表1に示す。
【0096】
表1
【表1】

【0097】
表1に示すように、実施例1〜3の顔料は何れも比較例1と比較して、短時間の混練で同等の半価幅、コントラスト比を得ることが出来ている。実施例4の顔料は比較例2と比較して、短時間の混練で同等の半価幅、コントラスト比を得ることが出来ている。実施例のようにそれぞれ本特許記載のアルカリ性物質を添加して顔料を作製することにより、従来よりも短時間で、単位エネルギー当りの生産性良く、非常に微細な有機顔料を製造する方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細有機顔料の製造方法において、アルカリ性物質の共存下で微細化することを特徴とする微細有機顔料の製造方法。
【請求項2】
微細有機顔料の製造方法が、粗製有機顔料と摩砕助剤と水溶性有機溶剤との混合物を混練するソルベントソルトミリング法である請求項1記載の微細有機顔料の製造方法。
【請求項3】
粗製有機顔料がキノフタロン系顔料または/およびジケトピロロピロール系顔料であることを特徴とする請求項1または2記載の微細有機顔料の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の製造方法により得られることを特徴とする微細有機顔料。
【請求項5】
請求項4記載の微細有機顔料、及び顔料担体を含むことを特徴とする微細有機顔料着色組成物。
【請求項6】
更に、非水系溶剤を含むことを特徴とする請求項5記載の微細有機顔料着色組成物。

【公開番号】特開2012−25920(P2012−25920A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168752(P2010−168752)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】