説明

微細植物繊維含有紙シート

【課題】 繊維幅20nm以上1000nm以下の微細植物繊維が紙シート全質量に対して1%以上50%以下の少ない配合量にもかかわらず、高密度、引張強さに優れる高強度の紙シートを得る。
【解決手段】 坪量20g/m以上900g/m以下の紙シートにおいて、該紙シートは全質量の1%以上50%以下が繊維幅20nm以上1000nm以下の微細植物繊維であり、かつ紙シートの密度が1.0g/cm超1.5g/cm未満である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微細植物繊維を含有し、高密度、引張強さに優れた紙シートに関する。
【背景技術】
【0002】
植物由来資源の積極的利用は時代の要求であるが、グリーン・サスティナブル・マテリアルである植物繊維は多くの可能性を秘めているものの、性能が満たされていない場合が多い。利用を期待されている自動車・住宅・家電部材などの大きな市場への展開はまだ十分に進んでいない。一方、紙シートは古くからあるグリーン・サスティナブル・マテリアルの有効な活用例であるが、長い歴史の中では軽量化、強度向上は進んでいるものの、その向上の度合いは決して大きくなく、高強度が必要とする他用途への展開も不十分である。市場では、より高強度の植物繊維を主成分とする紙製品が強く求められている。
【0003】
従来から、紙の強度を向上するための方法はいくつか提案されている。例えば、変性デンプン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリアミドーエピクロルヒドリン樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂等が紙力増強剤としてパルプ繊維に添加し、紙の強度向上を図っている。この方法は紙の強度向上効果が不十分で、特に高強度用途では更なる強度向上が必要である。
【0004】
また、パルプを抄紙する際に、パルプを叩解してパルプ繊維間結合を強めることは、製紙技術の誕生以来行なわれている。叩解によってパルプ繊維に現われる現象は種々あるが、中でも繊維間結合に重要な影響を与える因子として繊維のフィブリル化が挙げられる(非特許文献1)。フィブリル化はパルプ繊維に部分的に生ずる微細繊維(ミクロフィブリル)が繊維表面積の増大と繊維間の結合ネットワークの形成に寄与し、パルプ繊維間結合を強めるものと考えられている。このため、紙力増強を行う方法として、パルプ繊維の全体又は大部分を微細繊維とした微細繊維化パルプをつくり、抄紙前のパルプスラリーに添加して紙力を増強する方法(特許文献1、特許文献2、特許文献3)が提案されている。紙の強度向上に一定の効果が見られるが、十分とは言えず、特に高強度用途にはさらなる改善が必要である。
【0005】
紙の強度向上手段として、例えばカレンダーなどを使用して機械的に紙を圧縮する方法が挙げられる。通常のパルプ繊維はこの処理の際に破壊されやすく、紙の密度は上がるが、紙の強度はかえって低下する問題があった。
【0006】
近年、木材等の植物繊維をナノメートルのレベルまで細くする研究が進み、強い繊維間強度発現による強化材料や構造材料として用途開発が期待されている。特許文献4には、植物繊維をナノメートルのレベルまで細くしたセルロースミクロフィブリルによる高強度材料の記載があるが、セルロースミクロフィブリルの含有量が高いため、抄紙時の濾水性が悪く、工業的に製造することが困難である。高強度の紙シートによる複合材料の強度アップが期待され、工業的に生産可能な高強度紙シートが強く求められる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.P.Casey :Pulp and Paper 3rd Edition,Vol.II,p938〜939(1980)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−197400号公報
【特許文献2】特開2007−231438号公報
【特許文献3】特開2002−194691号公報
【特許文献4】特開2003−201695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、繊維幅が20nm以上1000nm以下の微細植物繊維を紙シート全質量に対して1%以上50%以下の少ない配合量で、高強度の紙シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の発明を含有する。
(1) 坪量20g/m以上900g/m以下の紙シートにおいて、該紙シートは全質量の1%以上50%以下が繊維幅20nm以上1000nm以下の微細植物繊維であり、かつ密度が1.0g/cm超1.5g/cm未満であることを特徴とする紙シート
(2) 引張強さの縦横比は1.0以上10.0以下である(1)記載の紙シート
(3) 引張強さの縦横の相乗平均は80MPa以上である(2)記載の紙シート
【発明の効果】
【0011】
本発明の紙シートは微細植物繊維の含有量が少ないにも拘らず、高強度を有する。微細植物繊維の配合率が少ないため、抄紙時の濾水性がよく、工業的に生産可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の紙シートは微細植物繊維と一般紙用パルプを含有する。
(一般紙用パルプ)
一般紙用パルプの種類は特に限定するものではないが、たとえば、針葉樹、広葉樹をクラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法などで蒸解した化学パルプ、レファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化した機械パルプ、薬品による前処理の後、機械力によってパルプ化したセミケミカルパルプなどの木材由来のパルプ、或いは古紙パルプなどを例示でき、それぞれ未晒(漂白前)もしくは晒(漂白後)の状態で使用することができる。また、非木材パルプとしては、例えば綿、マニラ麻、亜麻、藁、竹、パガス、ケナフなどを木材パルプと同様の方法でパルプ化した繊維が挙げられる。木材由来のパルプや古紙パルプを含有する紙シートは一般的に強度が弱く、強度アップも困難である。本発明は特に木材パルプ、古紙パルプを含有する紙シートの強度アップに有効である。
【0013】
(微細植物繊維)
微細植物繊維は上記植物のパルプを公知公用の方法で微細化して得ることが可能である。たとえば、植物繊維含有材料をグラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナーなどの機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を細くする方法などが挙げられる。また、TEMPO酸化、オゾン処理、酵素処理などの化学処理を施してから微細化する方法もある。勿論、木材を微粉砕後、脱リグニンなどの処理を行って得ることも可能である。一般的に、上記の方法で0.01〜20%程度の微細植物繊維懸濁液が得られる。
【0014】
(紙シート)
本発明の紙シートには繊維幅20nm以上1000nm以下の微細植物繊維をシートの全質量に対して1%以上50%以下を含有する。好ましくは50nm以上500nm以下の微細植物繊維をシート全質量に対して1%以上50%以下含有する。繊維幅が1000nmを超えると繊維間の空隙を埋めるには繊維が大きすぎ、繊維間の水素結合を補強する効果が小さい。20nm未満の繊維幅を得るには粉砕分散工程の繰り返しや、化学処理時に多量の化学処理剤が必要とするなどあまり経済的ではない。また、繊維幅20nm未満の場合は、抄紙時にワイヤーから脱落しやすく、紙抄造時の歩留まりが著しく低下する恐れがある。本発明の微細植物繊維幅は走査型または透過型電子顕微鏡で観察した際に測定したものである。微細植物繊維は幅に分布があるため、2000〜100000倍の間に、顕微鏡の倍率を変え、測定回数を増やして測定し、繊維幅を特定する。
【0015】
微細植物繊維の長さは特に限定するものではないが、叩解時のフィブリル化と同時に生じる他の現象として、パルプ繊維の切断という短繊維化現象が発生し、紙力強度の低下を引き起こすことも考えられるため、長さは幅の10倍以上が好ましく、50倍以上がさらに好ましく、100倍以上が最も好ましい。例えば、繊維長の長い針葉樹パルプを選ぶことが有効である。繊維の長さも繊維幅と同様に走査または透過型電子顕微鏡で、視野に入るように倍率を変えて観察し、測定する。
【0016】
本発明において、微細植物繊維は、一般紙に使用するパルプの繊維間結合をより強固にする目的で添加される。その添加量は紙シートの全質量の1%以上50%以下が好ましく、5%以上40%以下がより好ましく、10%以上30%以下が最も好ましい。添加方法は特に限定しないが、たとえば、一般紙用パルプスラリー中に微細植物繊維懸濁液を添加し、均一に分散するように、攪拌などの分散処理を行う。該微細植物繊維懸濁液の分散媒は水、有機溶媒、或いはその混合体のいずれも可能であるが、水の方が好ましい。
微細植物繊維の添加量が1%未満では繊維間の水素結合を補強するのには不十分である。添加量が多くなると、微細植物繊維を含有するパルプスラリーの粘度が上昇し、抄紙可能にするには微細植物繊維を含有するパルプスラリーの濃度を下げる必要が生じる。添加量が50%を超えると、微細植物繊維を含有するパルプスラリーの濃度を大きく下げる必要があり、また抄紙時の濾水性が著しく低下し、工業生産が困難である。
【0017】
発明者らは繊維幅が20nm以上1000nm以下の微細植物繊維をシート全質量の1%以上50%以下の少量配合で高強度紙シートを得るために、鋭意検討を重ねた。その結果、紙シートの密度を上げることで微細植物繊維が強固にパルプの繊維間を補強することが可能となり、微細植物繊維の配合量が少なくても、強度の高いシートを得ることが可能であることが分かった。また、紙シートの引張強さの縦横比も大きくするができ、セルロース本来の繊維軸方向の強度を引き出せることが分かった。微細植物繊維の配合量が少ないために、抄紙時の濾水性がよく、工業的に生産が可能である。
【0018】
上記一般紙用パルプと微細植物繊維以外に、本発明の紙シートは他の紙と同様に填料、サイズ剤、紙力増強剤、歩留まり向上剤などの化学添加剤を微細植物繊維含有パルプスラリーに適宜添加する。
【0019】
微細植物繊維を配合したパルプスラリーは、通常の抄紙で用いられる長網式、円網式、傾斜式等の連続抄紙機のほか、これらを組み合わせた多層抄き合わせ抄紙機、さらに手抄き等公知の抄紙方法で抄紙されシート化が可能である。
【0020】
本発明の紙シートは密度が1.0g/cm超1.5g/cm未満である。通常のパルプのみで構成される紙のシート密度は水、インクなどの浸透性を良くしたり通気性を良くしたりするために0.4〜0.9g/cmで作製されている。本発明者らは種々検討の結果、紙シートの密度が1.0g/cmを超えると、パルプの絡み合いと、微細植物繊維とパルプの繊維間の水素結合数が急激に増大した結果か、シートの引張強度が増大することを見出した。1.5g/cm以上の密度は植物繊維の結晶密度から困難である。
【0021】
紙シートの密度を挙げる方法は特に限定するものではないが、シートを抄紙する際に、プレス(ウェットプレス、ドライプレス)圧を高めることで、別工程なしで密度を上げることが可能で、効果的である。特に微細植物繊維を配合したパルプスラリーをワイヤー上で脱水して湿紙状態でプレスすること(所謂ウェットプレス)で小さい圧力で効率的に密度を上げることが可能である。プレス後、湿紙状態のシートはヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、スルードライヤー、オーブン等の一般的な乾燥設備により乾燥される。その後、マシンカレンダーまたはスーパーカレンダーによりさらに密度を向上させることができる。ウェットプレスは繊維間の水素結合をより強固にした為か、紙シートの強度が発現しやすい。本発明はウェットプレス圧を各種調整した結果、線圧0.4〜5MPaの条件では密度1.0g/cm超1.5g/cm未満の紙シートが得られ、高強度を有する。一般の紙は上記の密度にすると、パルプ繊維の破壊が起こり、強度低下も起こり得るが、本発明の紙シートは密度が高ければ高いほど強度が発現する。これは微細植物繊維を使用した結果、パルプ繊維を破壊することなく密度を向上させることができると推測される。これはパルプ繊維がプレスされて紙層を形成していく段階で、微細植物繊維によりパルプ繊維が形成した空隙が埋められることで、パルプ繊維と微細植物繊維が水素結合するためと思われる。湿紙状態であれば微細植物繊維がパルプ繊維間の空隙の間を自由に動くことが可能となり、水素結合が形成されやすいため、ウェットプレスが好ましいと考えられる。湿紙状態での水分は特に規定されないが、20%以上が好適である。高強度と生産性から紙シートの密度が1.05g/cm超1.3g/cm未満の範囲が好ましい。本発明の密度はJIS P8118:1998に準じて測定したものである。
【0022】
本発明の紙シートの坪量は20g/m以上900g/m以下である。30g/m以上500g/m以下が好ましく、40g/m以上350g/m以下が最も好ましい。坪量が20g/m未満ではシート剛度が小さいためハンドリング性が悪く、また厚さが薄いためシートとしての引張破断強度が小さく、加工の際に紙切れを起こしやすい。一方、900g/mを超えると抄紙の際に濾水時間がかかるため、生産性の面で不適切である。本発明の坪量はJIS P8124:1998に準じて測定したものである。
【0023】
このようにして得られた紙シートは包装材、ダンボールなどの種々の紙製品は勿論、湿式、乾式不織布、おむつなどに用いることが可能である。また該紙シートの強度特性を生かして熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の強化材あるいは補強材として用いることができる。具体的には、自動車、住宅・家電などの構造部材やタイヤのワイヤーカーカスなどに使用することができるが特に限定されるものではない。樹脂と複合化する際にシートの密度が大きい方がシート中の空隙が少ないために、樹脂と混合後にシート中にボイドが生じないため、欠陥の少ない強化樹脂を得ることができる。また密度の低いシート材料と比較して本発明で得られるシートはシート内部の空隙が少ないために樹脂との界面の面積が小さく、疎水性の樹脂を強化する際、親水性であるシートと樹脂の界面を補強する相溶化材の配合量が少なく出来る。
【0024】
上記紙シートの引張強さは縦横比が1.0以上10.0以下の範囲が好ましく、2.0以上5.0以下がより好ましい。縦方向に強い紙シートが得られ、セルロースが本来持っているI型結晶の軸方向の強度を最大限に発揮することが可能となる。このような紙シートで熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を補強して得られる複合材料は織物状に成形することにより、引張強さの縦横比の無い紙シートを用いた場合よりも更に引張強さの特性に優れる。
【0025】
さらに、本発明の紙シートの縦横引張強さの相乗平均は80MPa以上が好ましい。このような紙シートを熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の強化材あるいは補強材として用いる場合、引張強さの特性に優れる。80MPa以上200MPa以下は最も好ましい範囲である。80MPa未満では紙シートとしての強度が不十分である。200MPa超を得るには、微細植物繊維の含有だけでは難しく、紙力増強剤などの添加が必要となり、コスト上昇などのデメリットが生じる虞がある。本発明の引張強さは、スパン30mm、伸張速度5mm/min、試験片の幅は5mmにした以外は、JIS P 8113:2006に準じて測定した。
【実施例】
【0026】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、例中の部、及び%は特に断らない限り、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0027】
微細植物繊維の調製
針葉樹晒クラフトパルプ(王子製紙社製、水分50%、JIS P8121に準じて測定されるカナダ標準濾水度(CSF)550ml)を濃度1%になるように水を加えてディスインテグレーターで離解して、パルプ懸濁液を得た。このパルプ懸濁液を長径250mmのグラインダー部を有する増幸産業社製のマスコロイダーで解繊処理を行った。下記処理時間で得られた解繊液の上澄みを取り、真空乾燥し、オートファインコータ(JFC−1600、JEOL)を用いて試料表面をスパッタリング電流(10mA, スパッタリング時間:90秒)にてPtコーティングした後、電解放射走査顕微鏡(JSM−6700,JEOL)で観察を行った。視野内の微細セルロース繊維100本について、顕微鏡の倍率を変えながら、繊維幅を測定した。
微細植物繊維1(処理時間:30分):繊維幅が60〜700nmの範囲であった。
微細植物繊維2(処理時間:2時間):繊維幅が30〜300nmの範囲であった。
繊維長はいずれも繊維幅の50倍以上であった。
【0028】
実施例1
上記針葉樹晒クラフトパルプを濃度2.0%になるように水を加えて濃度調製し、ダブルディスクリファイナーで、CSFが120mlになるまで叩解した。長さ荷重平均繊維長が1.33mmであった。この叩解したNBKPは以下においてNBKP1と称す。NBKP1をスリーワンモーターにて全量が十分混合されるように攪拌しながら、NBKP1の75部に対し、上記微細植物繊維1を25部添加し、濃度が0.2%になるように原料を調製した。このようにして調製した原料を、焼結サイズが30〜50μmのブフナーロート型ガラスフィルター(アドバンテック株式会社製KG−90)上にPTFEメンブレン(アドバンテック(株)製)を載せた濾過瓶上に流延し、アスピレーターで吸引しながら濾過を行った。このようにして得られた湿紙のシートを、金属ロールとゴムロールの隙間を通すことによりプレスを行う卓上マングルプレス機(型式DH−350H、大栄科学精器製)で、ゲージ圧1MPaにて2回プレスした。1回目のプレス前の湿紙の水分は91.0%であり、2回目のプレス前の水分は70.4%であった。なお、マングルプレス機を通した方向を試料の縦方向とした。プレス後のシートを70℃のシリンダードライヤーで0.2MPaに加圧しながら乾燥した。この際、試料の縦方向がシリンダードライヤーの流れ方向となるように合わせた。その後、ロール温度105℃、プレス圧1MPaに設定したスーパーカレンダーにシリンダードライヤーと同様、試料の縦方向とスーパーカレンダーの流れ方向を合わせてサンプルを通してカレンダー処理を行った。以上の手順を経て得られた紙シートの坪量は100g/mであった。
【0029】
実施例2
微細植物繊維1を微細植物繊維2に変更した以外は実施例1と同様に本発明の紙シートを得た。
【0030】
実施例3
NBKP1の50部に対し微細植物繊維2を50部添加し、濃度は実施例2と同様に0.2%になるように原料を調製した。原料の粘度上昇はあったが、濾過するには問題がなかった。その他は実施例2と同様に本発明の紙シートを得た。
【0031】
実施例4
NBKP1の98部に対し微細植物繊維2を2部添加した以外は実施例2と同様に本発明の紙シートを得た。
【0032】
実施例5
実施例2と同様に本発明の紙シートを得た。ただし、紙シートの坪量は350g/mであった。
【0033】
実施例6
実施例2と同様に本発明の紙シートを得た。ただし、紙シートの坪量は40g/mであった。
【0034】
実施例7
実施例2において、湿紙のシートをゲージ圧0.45MPaにて2回プレスした。1回目のプレス前の湿紙の水分は91.0%であり、2回目のプレス前の水分は78.0%であった。その他は実施例2と同様にして本発明の紙シートを得た。
【0035】
実施例8
実施例2において、湿紙のシートをゲージ圧3.85MPaにて3回プレスした。1回目のプレス前の湿紙の水分は91.0%であり、2回目のプレス前の水分は45.0%であり、3回目のプレス前の水分は21.5%であった。その他は実施例2と同様にして本発明の紙シートを得た。
【0036】
実施例9
実施例2において吸引濾過でシートを作製せずに配向性抄紙機(熊谷理機工業(株)製)を用いてシートを作製した以外は実施例2と同様にシートを作製した。この際、所定の大きさに切断したメンブレンフィルターを濾材として用いた。得られたシートの坪量は105g/mであった。
【0037】
実施例10
麻パルプを濃度2.0%になるように濃度調製し、ダブルディスクリファイナーでCSFが600mlになるまで叩解した、長さ荷重平均繊維長が3.6mmであった。この叩解した麻パルプスラリーをスリーワンモーターにて全量が十分混合されるように攪拌しながら、麻パルプ75部に対し、微細植物繊維2を25部添加し、濃度が0.2%になるように原料を調製した。このようにして調製した原料を、配向性抄紙機にて湿紙のシートを作製した。この際、所定の大きさに切断したメンブレンフィルターを濾材として用いた。このようにして得られた湿紙のシートに実施例1と同様に2回プレスを行った。1回目のプレス前の湿紙の水分は85.0%であり、2回目のプレス前の水分は65.2%であった。プレス後のサンプルを実施例1と同様にシリンダードライヤーにて乾燥後、カレンダー処理を行った。以上の手順を経て得られたシートの坪量は40g/mであった。
【0038】
比較例1
実施例2において微細植物繊維を添加せずにシートを作製した。シートの坪量は100g/mであった。
【0039】
比較例2
NBKP1の99.5部に対し、微細植物繊維2を0.5部添加した以外は実施例2と同様にして紙シートを得た。
【0040】
比較例3
実施例2において、NBKP1の40部に対し、微細植物繊維2を60部添加し、濃度が0.2%になるように原料を調製した。原料粘度が高かく、濾過しにくい(濾過するには長時間を要する)ため、実施例2の原料粘度と同じになるように濃度を0.07%になるように薄めた。その他は実施例2と同様にして紙シートを得た。
【0041】
比較例4
実施例2おいて、湿紙のシートをゲージ圧0.35MPaにて2回プレスした。1回目のプレス前の湿紙の水分は91.0%であり、2回目のプレス前の水分は82.5%であった。その他は実施例2と同様にして本発明の紙シートを得た。
【0042】
比較例5
実施例2においてプレス処理及びカレンダー処理を行わずに紙シートを得た。
【0043】
比較例6
実施例9において微細植物繊維を添加せずに紙シートを得た。
【0044】
比較例7
実施例10において微細植物繊維を添加せずにシートを得た。
【0045】
[評価方法]
(微細植物繊維含有量)
本発明はパルプスラリー原料中に微細植物繊維を含有するため、該パルプスラリーを濾過して紙シートにする際に、微細植物繊維が濾材表面に留まらず、濾液に落ちることがある。微細植物繊維含有量は下記のように算出した。
微細植物繊維含有量=(原料に配合した微細植物繊維質量−濾液中の微細植物繊維質量)/紙シートの全質量×100
【0046】
(微細植物繊維の歩留まり)
微細植物繊維の歩留まり=(原料に配合した微細植物繊維質量−濾液中の微細植物繊維質量)/原料に配合した微細植物繊維質量×100
濾液中に微細植物繊維が少ないほど歩留まりが良く、抄紙時の濾水性が良好である。
【0047】
(シートの引張強さ)
作製したシートから幅5mm、長さ70mmの試験片を切り出し、伸張速度5mm/分、スパン30mmで、JIS P 8113:2006に準じて測定した。引張強さはMPa単位で表1に記した。
【0048】
(引張強さの縦横比)
上記紙シートの縦と横の引張強さから引張強さの縦横比を算出し、表1に示した。
【0049】
(引張強さの縦横の相乗平均)
上記紙シートの縦と横の引張強さから引張強さの縦横の相乗平均を算出し、表1に示した。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように実施例1〜10はいずれも微細植物繊維の含有量が少ないにもかかわらず、引張強さが大きく、高強度を有する。また、微細植物繊維の歩留まりも良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坪量20g/m以上900g/m以下の紙シートにおいて、該紙シートは全質量の1%以上50%以下が繊維幅20nm以上1000nm以下の微細植物繊維であり、かつ密度が1.0g/cm超1.5g/cm未満であることを特徴とする紙シート
【請求項2】
引張強さの縦横比は1.0以上10.0以下である請求項1記載の紙シート
【請求項3】
引張強さの縦横の相乗平均は80MPa以上である請求項2記載の紙シート