説明

微細気泡供給装置の気液分離器

【課題】微細気泡供給装置の気液分離器において、気液分離能力を低下させることなく小型化を図る。
【解決手段】微細気泡供給装置の気液分離器は、下部に気体溶解器からの溶解液を導入する導入口(14)と溶解液を導出する導出口(15)とが形成される一方、上部に排気弁(18)が取り付けられた圧力容器(11)と、圧力容器(11)内に設けられ、圧力容器(11)の底面から該圧力容器(11)内の上部に亘って形成され、圧力容器(11)内を導入口(14)側の導入空間(S1)と導出口(15)側の導出空間(S2)とに仕切る仕切部材(17)とを備えている。仕切部材(17)は、圧力容器(11)の側壁(11b)と平行な筒状体によって構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽等に微細気泡を含んだ液体を供給する微細気泡供給装置の気液分離器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、浴槽等に微細な気泡を含んだ水を供給する微細気泡供給装置(所謂、マイクロバブル供給装置)が用いられている。該微細気泡供給装置は、入口と出口とがそれぞれ浴槽に接続された循環流路を備え、浴槽から循環流路に引き込んだ水に空気を導入して加圧し、空気を水に溶解させた後、減圧し微細気泡を発生させ、該微細気泡を含む水を浴槽内に返送するものである。
【0003】
ところで、上記微細気泡供給装置では、例えば、空気が過剰に混入されていた等の事情により、加圧しても空気の一部が水に溶解できず、気泡として残存してしまう場合がある。このような気泡が微細気泡と共に浴槽内に返送されると、入浴者が不快に感じるという問題があった。
【0004】
そこで、従来より、上記微細気泡供給装置に気液分離器を設け、気体溶解器において溶解しきれなかった余剰の気体(気泡)を除去していた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
上記気液分離器としては、通常、下部に溶解液の導入口及び導出口が形成され、上部に排気弁が取り付けられた圧力容器と、圧力容器の底面から上方に向かって延び、圧力容器内を導入口側の導入空間と導出口側の導出空間とに仕切る仕切板とを備えたものが用いられている(例えば、特許文献2参照)。導入空間に導入された溶解液は仕切板に沿って上方へと流動し、仕切板を超えて導出空間へと流入し、仕切板に沿って下方へと流動した後、導出口から導出される。一方、溶解液中の気泡は溶解液に流されて又は浮力によって上昇し、圧力容器内の上部の気体層に到達し、溶解液から分離される。このようにして気液が分離される。
【特許文献1】特開2000−185278号公報
【特許文献2】特開平1−111430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、溶解液中の気泡の多くは、溶解液が仕切板を乗り越える際に溶解液から分離される。ところが、仕切板を乗り越える溶解液の嵩(乗り上げ高さ)が高い場合には、溶解液の下層にある気泡が液面まで到達し難くなるため、気泡が溶解液から分離されないまま導出空間に流入して導出口から導出されてしまう可能性が高くなる。特に、比較的径の小さな気泡は浮力も小さいため、導出口から導出されてしまう可能性は高い。
【0007】
そこで、十分な気液分離能力を確保するためには、仕切板の上端面と圧力容器の内壁面とによって形成され、導入空間と導出空間とを連通する連通路の幅(水平方向長さ)を長く形成することにより、仕切板を乗り越える溶解液の嵩を低減することが考えられる。しかしながら、上記気液分離器では、仕切板は扁平な板状体によって形成されているため、上記連通路の幅を長く形成するためには、仕切板の幅を長く形成すると共に大型の圧力容器を用いなければならず、気液分離器の小型化が図れないという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、微細気泡供給装置の気液分離器において、気液分離能力を低下させることなく小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、気体溶解器(6)で気体が液体に加圧溶解された溶解液から気泡を分離して微細気泡発生器(7)に供給する微細気泡供給装置の気液分離器であって、下部に前記気体溶解器(6)からの溶解液を導入する導入口(14)と溶解液を導出する導出口(15)とが形成される一方、上部に排気弁(18)が取り付けられた圧力容器(11)と、前記圧力容器(11)内に設けられ、上記圧力容器(11)の底面から該圧力容器(11)内の上部に亘って形成され、前記圧力容器(11)内を前記導入口(14)側の導入空間(S1)と前記導出口(15)側の導出空間(S2)とに仕切る仕切部材(17)とを備え、前記仕切部材(17)は、前記圧力容器(11)の側壁(11b)と平行な筒状体によって構成されている。
【0010】
本発明では、仕切部材(17)は圧力容器(11)の側壁と平行な筒状体によって構成されている。そのため、小型の圧力容器を用いた場合であっても、仕切部材(17)の上端面(17a)と圧力容器(11)の内壁面とによって形成され、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを連通する連通路の幅(水平方向の長さ)が比較的長く形成される。その結果、小型の圧力容器を用いた場合であっても、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際の溶解液の嵩(乗り上げ高さ)が比較的低くなり、溶解液と圧力容器(11)内の気体層との気液接触効率が向上し、溶解液中に含まれる気泡が該溶解液から分離され易くなる。特に、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際に、溶解液と共に流されやすい下層(仕切部材(17)の上端面(17a)付近)にある気泡が液面まで到達し易くなり、気泡が溶解液から分離され易くなる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記導入空間(S1)は前記仕切部材(17)の内側に形成される一方、前記導出空間(S2)は前記仕切部材(17)の外側に形成されている。
【0012】
ところで、導入空間(S1)を仕切部材(17)の外側、導出空間(S2)を仕切部材(17)の内側に配置した場合、導入空間(S1)において圧力容器(11)の内壁面によって溶解液の拡径方向(圧力容器の内側から外側方向)への流動が阻害されてしまう。そのために、溶解液が該内壁面側で滞留し、導入空間(S1)に流速の遅い死水域が形成されてしまう。一方で、該死水域が形成されてしまうために、導入空間(S1)の仕切部材(17)側では溶解液の流速が増大し、導入空間(S1)の溶解液の流速分布が不均一になってしまう。
【0013】
しかしながら、第2の発明では、導入空間(S1)は仕切部材(17)の内側、導出空間(S2)は仕切部材(17)の外側に形成されているため、導入空間(S1)において溶解液の拡径方向への流動が阻害されることがない。そのため、導入空間(S1)において流速が速い領域が形成されず、導入空間(S1)での溶解液の流速分布が均一になる。
【0014】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記仕切部材(17)は、前記導出空間(S2)の底面積が前記導入空間(S1)の底面積よりも大きくなるように配置されている。
【0015】
第3の発明では、圧力容器(11)内に形成される溶解液の流路の断面積は、導入空間(S1)側よりも導出空間(S2)側の方が大きくなる。これにより、導入空間(S1)から導出空間(S2)に流入した溶解液は導出空間(S2)において減速し、溶解液中に含まれる気泡が溶解液に流され難くなる。その結果、比較的径が小さく浮力の小さな気泡であっても溶解液に流され難くなり、精度良く気液分離が行われることとなる。
【0016】
第4の発明は、第1の発明において、前記導入口(14)は、前記仕切部材(17)の下端部に向かって開口するように形成されている。
【0017】
第4の発明では、導入口(14)から導入された溶解液は、仕切部材(17)の下端部に向かって側方に吹き出されて側方に流動した後、上方に向かって流動する。これにより、溶解液の導入時の流速が抑えられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、仕切部材(17)を圧力容器(11)の側壁と平行な筒状体によって構成することにより、小型の圧力容器を用いた場合であっても、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを連通する連通路の幅(水平方向の長さ)を比較的長く形成することができる。これにより、小型の圧力容器を用いた場合であっても、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際の溶解液の嵩(乗り上げ高さ)を比較的低くして、溶解液と圧力容器(11)内の気体層との気液接触効率を向上させることができる。その結果、溶解液中に含まれる気泡が該溶解液から分離され易くなる。特に、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際に、溶解液と共に流されやすい下層(仕切部材(17)の上端面(17a)付近)にある気泡が液面まで到達し易くなり、気液分離能力が格段に向上する。従って、本発明によれば、仕切部材(17)を圧力容器(11)の側壁と平行な筒状体によって形成することで、圧力容器(11)を大型化することなく気液分離能力を向上させることができる。言い換えると、圧力容器(11)として、従来の圧力容器よりも小型のものを用いた場合であっても、十分な気液分離能力を確保することができ、気液分離能力を低下させることなく気液分離器の小型化を図ることができる。
【0019】
ところで、導入空間(S1)を仕切部材(17)の外側、導出空間(S2)を仕切部材(17)の内側に配置した場合、導入空間(S1)の圧力容器(11)の内壁面側に流速の遅い死水域が形成される一方、該死水域の存在により、仕切部材(17)側では溶解液の流速が増大する。そのため、導入空間(S1)の溶解液の流速分布は不均一になってしまう。
【0020】
しかしながら、第2の発明によれば、導入空間(S1)を仕切部材(17)の内側、導出空間(S2)を仕切部材(17)の外側に形成することで、導入空間(S1)において溶解液が拡径方向に流動可能なように構成することができる。よって、導入空間(S1)での死水域の発生を抑制すると共に、死水域の発生に伴って流速が速い領域が形成されることを抑制することができる。従って、導出空間(S2)において流速の速い領域が形成されることを抑制することができ、溶解液中に含まれる気泡が流速の速い溶解液に流されて導出口(15)から導出される可能性を低減することができる。よって、気液分離能力を向上させることができる。
【0021】
また、第3の発明によれば、仕切部材(17)を導入空間(S1)の底面積よりも導出空間(S2)の底面積が大きくなるように形成することで、溶解液の流れを導出空間(S2)において減速させることができる。溶解液は導出空間(S2)において気泡の上昇方向と逆方向に流動するため、導出空間(S2)での溶解液の流速を減じることによって気泡の上昇を促進することができる。従って、気液分離をより精度よく行うことができ、気泡が溶解液の流れにのって溶解液と共に導出口(15)から流出してしまうことをより抑制することができる。これにより、圧力容器(11)として内容積の小さな容器を用いた場合であってもこのように仕切部材(17)の配置によって圧力容器(11)内を有効利用することで高い気液分離能力を得ることができる。従って、気液分離能力を低下させることなく気液分離器の小型化を図ることができる。
【0022】
また、第4の発明によれば、導入口(14)は、仕切部材(17)の下端部に向かって開口するように形成されている。そのため、導入口(14)から導入された溶解液は、まず仕切部材(17)の下端部に向かって側方に吹き出されて側方に流動した後、上方に向かって流動する。これにより、溶解液の導入時の流速を抑えることができる。従って、溶解液中に含まれる気泡が溶解液から分離されることなく導出口(15)から排出されてしまうことをより確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る気液分離器(10)は、浴槽(2)に微細な気泡を含んだ水を供給する微細気泡供給装置(1)に設けられている。
【0024】
−微細気泡供給装置の全体構成−
図1に示すように、本実施形態の微細気泡供給装置(1)は、入口と出口とがそれぞれ浴槽(2)に接続された循環流路(3)を備えている。この循環流路(3)には、空気導入器(4)とポンプ機構(5)と気体溶解器(6)と上記気液分離器(10)と微細気泡発生器(7)とが接続されている。
【0025】
上記空気導入器(4)は、循環流路(3)内へ気泡源となる空気を外部から導入するものである。この空気導入器(4)は、その内部の水流によって発生する負圧を利用して空気を吸入する。つまり、空気導入器(4)では、その内部を通過する水流により負圧が生じ、この負圧によって外部の空気が空気導入管(4a)を介して循環流路(3)に導入される。
【0026】
上記ポンプ機構(5)は、浴槽(2)の水を循環流路(3)内で循環させるためのものである。このポンプ機構(5)は、空気導入器(4)側から吸い込んだ水を気体溶解器(6)側へ吐出する。
【0027】
上記気体溶解器(6)は、筒状の容器(6a)内において、水に対する空気の溶解を促進させるためのものである。この容器(6a)内には、空気と水との接触時間や接触面積を稼ぐための例えば充填材等が設けられている。
【0028】
上記気液分離器(10)は、気体溶解器(6)において溶解しきれなかった余剰の気体(気泡)を循環流路(3)内から除去するためのものである。気液分離器(10)は筒状の圧力容器(11)を備え、該圧力容器(11)内において気液を分離し、気体は循環流路(3)外部へ排気して液体のみを微細気泡発生器(7)に向けて流出させる。該気液分離器(10)の詳細については後述する。
【0029】
上記微細気泡発生器(7)は、空気が溶解した水(溶解液)を減圧して微細な気泡を発生させるためのものである。上記微細気泡発生器(7)は、内部に溶解液を流通させる流路が形成された流路形成部材(7a)を備え、該流路形成部材(7a)の中途部には、流路断面積を縮小する絞り部が形成されている。微細気泡発生器(7)は、浴槽(2)内に臨むように浴槽(2)の側壁面に取り付けられている。
【0030】
循環流路(3)には、その入口と空気導入器(4)との間に流量計(9)が設けられている。流量計(9)は、循環流路(3)を循環する水の流量を計測する流量計測手段を構成している。また、循環流路(3)には、流量計(9)と吸入口(12)との間に流量調節バルブ(8)が設けられている。流量調節バルブ(8)は、その開度に応じて循環流路(3)の流量を調節する流量調節手段を構成している。
【0031】
−気液分離器の構成−
図2に示す気液分離器(10)は、圧力容器(11)と、圧力容器(11)に接続された排気弁(18)とを備えている。
【0032】
上記圧力容器(11)は、円盤状に形成された底部(11a)と、底部(11a)の外周縁から上方に向かって延びる筒形状の胴部(11b)と、胴部(11b)の上面開口を閉塞する蓋体(11c)とを備えている。
【0033】
上記底部(11a)は、その中心部に開口が形成されている。該開口には気体溶解器(6)(図1参照)からの溶解液を内部に導く導入部材(13)が設けられている。導入部材(13)は、圧力容器(11)外部側に設けられた筒状の第1導入部材(13a)と第1導入部材(13a)に連続し、底部(11a)の開口に挿入された第2導入部材(13b)とから構成されている。第1導入部材(13a)の内部には導入路が形成されている。一方、第2導入部材(13b)は、上端が閉塞された円筒形状に形成され、下端は第1導入部材(13a)内の導入路に向かって開口している。また、第2導入部材(13b)の側面には、溶解液を気液分離器(10)内に導入する複数の導入口(14)が形成されている。導入口(14)は、側方に向かって開口している。
【0034】
上記胴部(11b)は、円筒状の筒部と筒部の上端から径方向外側に向かって延びるフランジ部とから構成されている。筒部の下端部には、溶解液を外部へ導出するための導出口(15)が形成されている。また、胴部(11b)の下端部には、圧力容器(11)の外部側に上記導出口(15)を取り囲むように設けられた円筒形状の導出部材(16)が設けられている。導出部材(16)の内部には導出路が形成されている。
【0035】
上記蓋体(11c)は円盤状に形成され、胴部(11b)のフランジ部に固定されている。蓋体(11c)には開口が形成されている。該開口には排気弁(18)が挿入され、排気弁(18)は蓋体(11c)に固定されている。図2では外形のみを示しているが、排気弁(18)は、流入口と排気口とが形成された弁箱と、弁箱内に設けられ、排気口を開閉する弁体と、排気口が閉じるように弁体を付勢するバネとを有している。そして、圧力容器(11)内の気体の圧力が所定の圧力以上となると、該圧力がバネの付勢力に勝って弁体が排気口が開く方向に移動することにより、圧力容器(11)内の気体が排気される。
【0036】
また、蓋体(11c)の内部側には、蓋体(11c)の上記開口を取り囲むように円筒形状の排気筒(11d)が取り付けられている。なお、排気筒(11d)は、排気弁(18)の流入口に向かって延びており、圧力容器(11)内の気体を排気弁(18)の流入口に導く。
【0037】
圧力容器(11)内には、圧力容器(11)内を導入口(14)側の導入空間(S1)と導出口(15)側の導出空間(S2)とに仕切る仕切部材(17)が設けられている。仕切部材(17)は、圧力容器(11)の側壁を形成する胴部(11b)の筒部と平行な筒状体によって構成されている。本実施形態では、仕切部材(17)は円筒形状に形成され、圧力容器(11)の胴部(11b)の筒部と同心状に配置されている。そして、上記導入空間(S1)は仕切部材(17)の内側に形成される一方、導出空間(S2)は仕切部材(17)の外側に形成されている。
【0038】
仕切部材(17)は、圧力容器(11)の底部(11a)から該圧力容器(11)内の上部に亘って形成され、その上端面(17a)が蓋体(11c)に取り付けられた排気筒(11d)の下端部よりも下方に位置する高さに形成されている。このように仕切部材(17)が配置されることにより、導入空間(S1)と導出空間(S2)とは、その上部で連通する一方、下部は仕切部材(17)によって溶解液も気体も流通しないように遮断される。
【0039】
なお、本実施形態では、上記導入部材(13)は、仕切部材(17)の内側に形成された導入空間(S1)の下端部且つ平面視において中心部に配置されている。そして、上記複数の導入口(14)は、仕切部材(17)の下端部に向かって開口している。
【0040】
−微細気泡供給装置の運転動作−
この微細気泡供給装置(1)では、ポンプ機構(5)を起動させると、浴槽(2)の水が循環流路(3)内に吸い込まれ、入口から出口へ向かって流通する。
【0041】
なお、ポンプ機構(5)は、循環流路(3)の流量が例えば10〜15リットル/分になるように調節される。この状態では、気体溶解器(6)の容器(6a)内が、0.3MPa程度に加圧される。また、運転中は、循環流路(3)に設けられた流量調節バルブ(8)の開度が、流量計(9)によって計測された循環流路(3)の流量に基づいて調節される。
【0042】
図1に示す循環流路(3)の入口から流入した浴槽(2)の水は、空気導入器(4)に流入する。空気導入器(4)では、空気導入管(4a)から吸い込まれた空気が水に混入される。水に混入される空気は、比較的小さな気泡になる。気泡を含む水は、空気導入器(4)から流出し、ポンプ機構(5)を経て気体溶解器(6)に流入する。気体溶解器(6)では、水に対する空気の溶解が促進される。空気を溶解した水(溶解液)は、気体溶解器(6)を流出して気液分離器(10)に流入する。
【0043】
気液分離器(10)の圧力容器(11)内では、導入された溶解液が導入口(14)から導出口(15)に向かって流通する間に、気液が分離され、溶解せずに溶解液に混入していた気体は圧力容器(11)内の上部に一時的に貯留された後に排気弁(18)から排出され、溶解液は導出口(15)から導出される。
【0044】
気液分離器(10)において混入されていた気泡が除去された溶解液は、微細気泡発生器(7)内に流入する。そして、微細気泡発生器(7)に流入した溶解液は、微細気泡発生器(7)内を流れ、絞り部を通過する際に減圧される。その結果、水中に溶解した空気が析出し、水中で微細気泡が発生する。そして、該微細気泡は、これを含む水と共に微細気泡発生器(7)から浴槽(2)内へ勢いよく噴射される。
【0045】
−気液分離器における気液分離動作−
まず、導入口(14)から気液分離器(10)内に溶解液が導入される。なお、導入口(14)は、導入空間(S1)の中心部に設けられた導入部材(13)に形成され、円筒状の仕切部材(17)の下端部に向かって開口している。そのため、導入口(14)から導入空間(S1)に導入された溶解液は、すぐに上方に向かって流動するのではなく、まず仕切部材(17)の下端部に向かって側方に吹き出される。その後、溶解液は仕切部材(17)に沿って上方に導かれ、仕切部材(17)の上端面(17a)まで到達すると、仕切部材(17)を乗り越えて導出空間(S2)に流入する。
【0046】
なお、本実施形態とは異なり、導入空間(S1)を仕切部材(17)の外側、導出空間(S2)を仕切部材(17)の内側に配置した場合、導入空間(S1)において圧力容器(11)の内壁面によって溶解液の拡径方向(圧力容器の内側から外側方向)への流動が阻害される。そのため、溶解液が該内壁面側で滞留し、導入空間(S1)に流速の遅い死水域が形成される。そして、該死水域が形成されるために、導入空間(S1)の仕切部材(17)側では溶解液の流速が増大し、導入空間(S1)の溶解液の流速分布が不均一になる。しかしながら、本実施形態では、導入空間(S1)は仕切部材(17)の内側に形成され、導出空間(S2)は仕切部材(17)の外側に形成されているため、死水域は発生せず、導入空間(S1)に流速の速い領域が形成されることもない。よって、導入空間(S1)での溶解液の流速分布が均一になると共に、導出空間(S2)に流入する溶解液の流速分布も均一になる。
【0047】
そして、導出空間(S2)に流入した溶解液は、仕切部材(17)に沿って下方に向かって流れ、導出口(15)から微細気泡発生器(7)に向かって導出される。
【0048】
一方、溶解液中に含まれる気泡は、浮力を受けて溶解液中を上昇する。なお、導入空間(S1)では、溶解液の流動方向と気泡の上昇方向は一致するが、導出空間(S2)では溶解液の流動方向と気泡の上昇方向とは逆向きとなる。導入空間(S1)において溶解液と共に上昇し、又は導出空間(S2)において溶解液に逆流して上昇した気泡は、やがて圧力容器(11)内の上部の気体層に至る。なお、溶解液に含まれる気泡の多くは、溶解液が仕切部材(17)の上端面(17a)においてその流れが折り返される際に、気体層と接触することによって溶解液から離れて気体層に至る。このようにして気液が分離される。
【0049】
なお、本実施形態では、仕切部材(17)は、圧力容器(11)の側壁(胴部(11b)の筒部)に平行な筒状体によって形成されている。そのため、仕切部材(17)は、扁平な板状体によって形成した場合に比べ、水平方向長さが長く形成される。これにより、仕切部材(17)の上端面(17a)と圧力容器(11)の内壁面とによって形成され、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを連通する連通路の幅は、仕切部材が扁平な板状体によって形成される場合に比べて長く形成される。よって、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際の溶解液の嵩(乗り上げ高さ)は、仕切部材が扁平な板状体によって形成された場合に比べて低くなる。その結果、溶解液の嵩が高い場合に比べ、溶解液と圧力容器(11)内の気体層との気液接触効率がよくなり、溶解液中に含まれる気泡が該溶解液から分離され易くなる。具体的には、溶解液の乗り上げ高さが低くなることで、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際に、溶解液と共に流されやすい下層(仕切部材(17)の上端面(17a)付近)にある気泡が液面まで到達し易くなり、気泡が溶解液から分離され易くなる。
【0050】
−実施形態1の効果−
本実施形態によれば、仕切部材(17)を胴部(11b)の筒部と平行な筒状体によって構成することにより、小型の圧力容器を用いた場合であっても、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを連通する連通路の幅を比較的長く形成することができる。これにより、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際の溶解液の嵩を比較的低くして、溶解液と圧力容器(11)内の気体層との気液接触効率を向上させることができる。その結果、溶解液中に含まれる気泡が該溶解液から分離され易くなる。特に、溶解液が仕切部材(17)を乗り越える際に、溶解液と共に流されやすい下層(仕切部材(17)の上端面(17a)付近)にある気泡が液面まで到達し易くなり、気液分離能力が格段に向上する。従って、本実施形態によれば、仕切部材(17)を圧力容器(11)の側壁と平行な筒状体によって形成することで、圧力容器(11)を大型化することなく気液分離能力を向上させることができる。言い換えると、圧力容器(11)として、従来の圧力容器よりも小型のものを用いた場合であっても、十分な気液分離能力を確保することができ、気液分離能力を低下させることなく気液分離器の小型化を図ることができる。
【0051】
本実施形態によれば、導入空間(S1)を仕切部材(17)の内側、導出空間(S2)を仕切部材(17)の外側に形成することで、導入空間(S1)において溶解液が拡径方向に流動可能なように構成することができる。そのため、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを逆に配置した場合のように、導入空間(S1)に死水域が発生することを抑制することができる。また、死水域の発生に伴って導入空間(S1)に流速が速い領域が形成されることも抑制することができる。従って、導出空間(S2)において流速の速い領域が形成されることを抑制することができ、溶解液中に含まれる気泡が流速の速い溶解液に流されて導出口(15)から導出されてしまう可能性を低減することができる。よって、気液分離能力を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、仕切部材(17)の内側に導入空間(S1)を形成する一方、仕切部材(17)の外側に導出空間(S2)を形成することにより、溶解液が平面視において拡径方向に流動するように形成することができる。そのため、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを逆に配置した場合のように、溶解液の流れが導出空間(S2)の中心部で折り重なってその勢いが増大されることがなく、導入空間(S1)と導出空間(S2)とを逆に配置した場合に比べて、導出空間(S2)内での溶解液の流速を減じることができる。従って、溶解液中に含まれる気泡が溶解液に流されて導出口(15)から導出されてしまう可能性をより低減することができ、気液分離能力を向上させることができる。
【0053】
さらに、本実施形態によれば、導入口(14)は、仕切部材(17)の下端部に向かって開口するように形成されている。そのため、導入口(14)から導入された溶解液は、まず仕切部材(17)の下端部に向かって側方に吹き出されて側方に流動した後、上方に向かって流動する。これにより、溶解液の導入時の流速を抑えることができる。従って、本気液分離器(10)によれば、溶解液中に含まれる気泡が溶解液から分離されることなく導出口(15)から排出されてしまうことをより確実に抑制することができる。
【0054】
−実施形態1の変形例−
変形例に係る気液分離器(10)は、図3に示すように、仕切部材(17)を、導出空間(S2)の底面積が導入空間(S1)の底面積よりも大きくなるように配置したものである。
【0055】
仕切部材(17)をこのように配置することにより、圧力容器(11)内に形成される流路の断面積は、導入空間(S1)側よりも導出空間(S2)側の方が大きくなる。そのため、溶解液の流れを導出空間(S2)において減速させることができる。なお、導出空間(S2)では溶解液は気泡の上昇方向とは逆方向に流動するため、導出空間(S2)での溶解液の流速を減じることによって気泡の上昇を促進することができる。従って、気液分離をより精度よく行うことができ、気泡が溶解液の流れにのって溶解液と共に導出口(15)から流出してしまうことをより抑制することができる。これにより、圧力容器(11)として内容積の小さな容器を用いた場合であってもこのように仕切部材(17)の配置によって圧力容器(11)内を有効利用することで高い気液分離能力を得ることができる。従って、気液分離能力を低下させることなく気液分離器の小型化を図ることができる。
【0056】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0057】
上記実施形態では、仕切部材(17)は円筒形状に形成されていたが、仕切部材(17)は筒状であればいかなる形状であってもよい。例えば、断面が楕円形状の筒状体であってもよく、断面が多角形状の筒状体であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、導入口(14)は、導入空間(S1)内において側方に向かって開口していたが、下方に向かって開口するように導入部材(13)を形成してもよい。このように形成することによっても導入時の溶解液の流速を減じることができ、気液分離能力を向上させることができる。
【0059】
さらに、上記実施形態では、導出口(15)は、導出空間(S2)内において側方に向かって開口していたが、下方に向かって開口するように導出部材(16)を形成してもよい。このように形成すれば、溶解液中の気泡がより導出口(15)から導出され難くなり、気液分離能力を向上させることができる。
【0060】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、浴槽等に微細気泡を含んだ液体を供給する微細気泡供給装置の気液分離器について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施形態に係る微細気泡供給装置の概略構成図である。
【図2】実施形態に係る気液分離器の縦断面図である。
【図3】変形例に係る気液分離器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 微細気泡供給装置
6 気体溶解器
7 微細気泡発生器
10 気液分離器
11 圧力容器
11b 胴部(側壁)
14 導入口
15 導出口
17 仕切部材
17a 上端面
18 排気弁
S1 導入空間
S2 導出空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体溶解器(6)で気体が液体に加圧溶解された溶解液から気泡を分離して微細気泡発生器(7)に供給する微細気泡供給装置の気液分離器であって、
下部に前記気体溶解器(6)からの溶解液を導入する導入口(14)と溶解液を導出する導出口(15)とが形成される一方、上部に排気弁(18)が取り付けられた圧力容器(11)と、
前記圧力容器(11)内に設けられ、上記圧力容器(11)の底面から該圧力容器(11)内の上部に亘って形成され、前記圧力容器(11)内を前記導入口(14)側の導入空間(S1)と前記導出口(15)側の導出空間(S2)とに仕切る仕切部材(17)とを備え、
前記仕切部材(17)は、前記圧力容器(11)の側壁(11b)と平行な筒状体によって構成されている
ことを特徴とする微細気泡供給装置の気液分離器。
【請求項2】
請求項1において、
前記導入空間(S1)は前記仕切部材(17)の内側に形成される一方、前記導出空間(S2)は前記仕切部材(17)の外側に形成されている
ことを特徴とする微細気泡供給装置の気液分離器。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記仕切部材(17)は、前記導出空間(S2)の底面積が前記導入空間(S1)の底面積よりも大きくなるように配置されている
ことを特徴とする微細気泡供給装置の気液分離器。
【請求項4】
請求項1において、
前記導入口(14)は、前記仕切部材(17)の下端部に向かって開口するように形成されている
ことを特徴とする微細気泡供給装置の気液分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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