説明

微細気泡生成ノズル

【課題】気泡径を均一に小さく、数密度を増加させるように調整し、白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることができる微細気泡生成ノズルを提供すること。
【解決手段】太径部を前後に挟んだ減圧部を直列に複数備え、気体溶解水を入口端の太径部より出口端の太径部へと流して、減圧部で気泡を発生させる気体発生装置の微細気泡生成ノズル1であって、上流側の減圧部111から太径部102に至る間の圧力損失が下流側の減圧部112から太径部103に至る間の圧力損失より大きくなるように気体溶解水の流路の形状を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細気泡生成ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
直径が0.1〜100μm程度の微細気泡は、比表面積が大きく、内部圧力が高く、吸着性があるなどの特徴を有することから、浄化作用、生理活性、抗力低減などの様々な効果が期待され、その応用に向けて検討が進められている。
【0003】
例えば、浴槽内の湯水中に上記微細気泡を、微細気泡発生装置により発生させて白濁させ、牛乳風呂のような趣を与えるとともに、肌の保湿効果などの温泉に匹敵する入浴の効能を得ることがこれまでに行われている。
【0004】
従来の微細気泡発生装置の構成例を図4に示す。この構成例では、ポンプPの上流に気体溶解部2が設けられ、気体溶解部2と吸水部3が水流路31で配管されている。
【0005】
また、気体溶解部2と吸気部4とが空気流路41で配管されており、ポンプPの運転により吸水部3から取り込まれた水と、吸気部4から取り込まれた空気は気体溶解部2内で混合されて、水に気体が溶解した気体溶解水が生成される。
【0006】
気体溶解水は気体溶解部2から気体溶解水路21の配管を通してポンプPに送られ、ポンプPの吐出側に接続された気体溶解水路22に送出される。
【0007】
ポンプPの吐出側から送出された気体溶解水は、気体溶解水路22の配管を通して微細気泡生成ノズル1に導入され、微細気泡生成ノズル1内で液体のキャビテーションを利用して微細気泡を生成させ、微細気泡が生成した気体溶解水は微細気泡生成ノズル1から送出される。
【0008】
このような微細気泡発生装置に関し、微細気泡の気泡粒径の細分化及び気泡発生効率の向上を目的とした微細気泡発生装置が特許文献1に記載されている。
【0009】
特許文献1に記載された微細気泡発生装置は、旋回部材を設けたベンチュリ管を複数直列に備え、液体の流れを旋回流とさせて流速を上げながらベンチュリ管を通過させることにより、気泡粒径の細分化及び気泡発生効率の向上を実現するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−240592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
微細気泡発生装置においては、気泡径を均一に、また数密度を増加するように調整し、気体溶解水の白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることが望まれているが、特許文献1に記載された微細気泡発生装置では、同型の旋回部材を設けたベンチュリ管を単に複数繋ぎ合せた構成であり、気泡径を均一に小さく、数密度を増加させるように調整したり、気体溶解水の白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることまでは考慮されていない。
【0012】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、気泡径を均一に小さく、数密度を増加させるように調整し、白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることができる微細気泡生成ノズルを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の特徴を有している。
【0014】
即ち、本発明の微細気泡生成ノズルは、太径部を前後に挟んだ減圧部を直列に複数備え、気体溶解水を入口端の太径部より出口端の太径部へと流して、減圧部で気泡を発生させる気体発生装置の微細気泡生成ノズルであって、上流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失が下流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失より大きくなるように気体溶解水の流路の形状を形成したことを特徴とする。
【0015】
この微細気泡生成ノズルにおいて、減圧部の形状を下流ほど太径に形成することが好ましい。
【0016】
また、前記微細気泡生成ノズルにおいて、減圧部から太径部に至る間の傾斜角を下流ほど小さく形成することが好ましい。
【0017】
さらに、前記微細気泡生成ノズルにおいて、太径部から減圧部へ流入する流入部の角度を下流ほど大きく形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失が下流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失より大きくなるように気体溶解水の水流路の形状を形成することにより、気泡径を略均一に小さく、数密度を増加させるように調整し、白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態の微細気泡生成ノズルを示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態の微細気泡生成ノズルを示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態の微細気泡生成ノズルを示す概略断面図である。
【図4】従来の微細気泡発生装置を例示した構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の微細気泡生成ノズルは、太径部を前後に挟んだ減圧部を直列に複数備えた構成であり、上流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失が下流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失より大きくなるように気体溶解水の流路の形状を形成したものである。
【0021】
本発明の微細気泡生成ノズルに気体溶解水を流すと、太径部に挟まれた該太径部よりも径の小さい減圧部によって水流速度が増加し、減圧部にキャビテーションが発生する。このように発生する気泡の状態は、減圧部のキャビテーションの状態によって決定する。
【0022】
具体的には、前記キャビテーションにおいて、気泡キャビテーションの状態では気泡径が最も小さく、シートキャビテーションの状態では気泡径は大きいが数密度が高い。
【0023】
減圧部の水流速度を増加させると、気泡キャビテーションが発生し、更に水流速度を増加させると気泡キャビテーションからシートキャビテーションへ遷移する。
【0024】
本発明の微細気泡生成ノズルでは、太径部の間に減圧部を設けたものを複数直列に備えた構成とし、この減圧部及び、減圧部と減圧部の間の太径部の圧力を所望の圧力となるように設計することにより、複数個ある減圧部それぞれを略同じキャビテーションの状態とすることを特徴としている。
【0025】
即ち、上流側の減圧部の圧力損失を下流側の圧力損失より大きくなるような条件で減圧部及び太径部の流路を設計して、全てのキャビテーションの発生部の水流状態を一定にすることにより、数密度を増加させるとともに略均一な直径の気泡を生成させ、白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることが可能となる。
【0026】
以下に、本発明の微細気泡生成ノズルの実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の微細気泡生成ノズルの第1の実施形態を示した概略断面図である。
【0027】
第1の実施形態の微細気泡生成ノズル1では、太径部101と太径部102の間に減圧部111を設け、太径部102と太径部103の間に減圧部112を設け、さらに太径部103と太径部104の間に減圧部113を設け、減圧部111、112、113を3個設けた構成となっている。
【0028】
第1図に示す微細気泡生成ノズル1の構成では、左側から右側に向けて矢印5の方向に気体溶解水を流水させる。
【0029】
そして、減圧部111の流路の径は減圧部112の径よりも細く、減圧部112の流路の径は減圧部113の径よりも細くなっており、減圧部111〜113の流路形状は下流ほど太径に形成されている。
【0030】
このような構成とすることにより、圧力損失を簡易に調整することができ、水流速度を略一定に設定することができる。
【0031】
このような構成の本発明の微細気泡生成ノズル1において、気泡径を小さくしながら大量の気泡を生成させるためには、全ての減圧部111〜113を気泡キャビテーションの状態とするような設計とすればよい。
【0032】
そのためには、下記式(1)〜(4)を満足する減圧部及び太径部を直列に構成することで実現可能となる。
【0033】
なお、図1中のP、Aは減圧部111の流入部の圧力及び断面積、P、Aは太径部102の圧力及び断面積、P、Aは減圧部112の流入部の圧力及び断面積、P、Aは太径部103の圧力及び断面積、P、Aは減圧部113の流入部の圧力及び断面積、P、Aは太径部104の圧力及び断面積を表す。
【0034】
【数1】

【0035】
【数2】

【0036】
【数3】

【0037】
【数4】

【0038】
【数5】

【0039】
次に、図2を用いて本発明の微細気泡生成ノズルの第2の実施形態を説明する。
【0040】
第2の実施形態の微細気泡生成ノズル1では、太径部101と太径部102の間に減圧部111を設け、太径部102と太径部103の間に減圧部112を設け、太径部103と太径部104の間に減圧部113を設けた構成であり、さらに減圧部111から太径部102、減圧部112から太径部103、減圧部113から太径部104に至るそれぞれの内壁が連続した傾斜角を有する構成となっている。
【0041】
また、減圧部111から太径部102に至る傾斜角をθ、減圧部112から太径部103に至る傾斜角をθ、減圧部113から太径部104に至る傾斜角をθとした場合、θ>θ>θの条件となるように下流ほど傾斜角を小さくした構成となっている。
【0042】
この構成では、傾斜角が小さくなるほど圧力損失は小さくなる。
【0043】
なお、この構成の設計においても、上記式(1)〜(4)を満足する設計とすることにより、本願発明の効果を発現することが可能となる。
【0044】
この構成によれば、圧力損失を傾斜角によって調整することができるため、微細気泡生成ノズルを小型に設計することができる。
【0045】
次に、図3を用いて本発明の微細気泡生成ノズルの第3の実施形態を説明する。
【0046】
第3の実施形態の微細気泡生成ノズル1では、太径部101と太径部102の間に減圧部111を設け、太径部102と太径部103の間に減圧部112を設け、太径部103と太径部104の間に減圧部113を設け、さらに太径部101から減圧部111、太径部102から減圧部112、太径部103から減圧部113に流入する流入部(境界部)を、突起面121、直角面122、傾斜面123として、下流ほど角度を大きく形成した構成としている。
【0047】
この構成において流入部の水流速度V、V、Vを、V=V=Vとなるように設計すればよい。
【0048】
またこの構成の設計においても、上記式(1)〜(4)を満足する設計とすることにより、本願発明の効果を発現することが可能となる。
【0049】
この構成のように、減圧部111〜113の流入部の形状を下流ほど角度を大きくすることにより、減圧部111〜113の水流速度を調整することが可能となり、また、減圧部と太径部の内径を変更する必要がないため、微細気泡生成ノズルを小型に設計することができる。
【0050】
上記に説明した第1〜第3の実施形態の微細気泡生成ノズルとすることにより、気泡径を略均一に小さく、数密度を増加させるように調整することが可能となり、白濁性能を低下させずに溶存気体濃度を向上させることができる微細気泡生成ノズルとすることができる。
【0051】
なお、第1〜第3の実施形態の説明では、減圧部を3個の実施形態で説明したが、減圧部は2個以上であれば制限なく設計することが可能である。
【0052】
また、第1〜第3の実施形態のそれぞれの構成を組み合わせて設計することも可能である。
【0053】
本発明の微細気泡生成ノズルでは、上記で説明した効果に加え、気体溶解水の水流路の分岐をなくし、一穴の減圧部を直列に備えたので、気体溶解水中の異物の引っかかりを防止し、メンテナンス頻度を軽減する効果も有する。
【符号の説明】
【0054】
1 微細気泡生成ノズル
5 気体溶解水流水方向
101〜104 太径部
111〜113 減圧部
121 突起面
122 直角面
123 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太径部を前後に挟んだ減圧部を直列に複数備え、気体溶解水を入口端の太径部より出口端の太径部へと流して、減圧部で気泡を発生させる気体発生装置の微細気泡生成ノズルであって、上流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失が下流側の減圧部から太径部に至る間の圧力損失より大きくなるように気体溶解水の流路の形状を形成したことを特徴とする微細気泡生成ノズル。
【請求項2】
減圧部の形状を下流ほど内径を太く形成することを特徴とする請求項1に記載の微細気泡生成ノズル。
【請求項3】
減圧部から太径部に至る間の傾斜角を下流ほど小さく形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の微細気泡生成ノズル。
【請求項4】
太径部から減圧部へ流入する流入部の角度を下流ほど大きく形成することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の微細気泡生成ノズル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−86076(P2013−86076A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232031(P2011−232031)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】