説明

微細流体精子の抽出と授精の一体型装置

【課題】
【解決手段】微細流体精子の抽出と卵母細胞の受精を行う一体型装置であって、これにより活発な精子サンプルを用いて繊細な手技を最小限にして試験管内で受精させることができる。精子の選別は、より活発な精子が精液と媒質液の層流間の界面を横切って移動する公知のソートチャネルを用いて行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2003年6月6日に出願された米国仮出願番号60/476,664号の利益を主張するものである。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、精子の運動性によって精子をソート(選別)し、ソートした精子を卵母細胞に授精させる一体型の微細流体装置、これに用いる方法、さらに卵母細胞の微細流体授精方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
従来の試験管内授精技術は、活発でないな精子、奇形の精子、細胞の残骸等から活発な精子を分離する工程を含むが、これにより精子がダメージを受ける場合があった。それでも、人工的な選別はしばしば必要である。卵母細胞に精子を授精させる場合はさらに、壊れやすい卵母細胞にダメージを与えうる多数の工程を含む。例えば、細胞質内への精子注入を行う場合、特に精子の生存率が低い場合、微細操作技術を用いて卵子に1つの精子を注入する場合などである。ところが卵母細胞の5−7%はこのプロセスで溶解してしまう。この観点からセンターウェル培養皿での人工授精が望ましいが、精子の濃度が低いと受精率が相当低下してしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人間の人工授精は、婚姻した夫婦に不妊の問題がある場合によく用いられる。しかし、人工授精は動物類においても、子の性別をコントロールしたり他の理由で用いられる。この処理は上述のように複雑で、顕微鏡による操作工程を伴うため、一般に非常に高価となる。
【0005】
独立型で、廉価で、精子の選別と卵母細胞の授精の両方が可能で、操作工程が少なく、これによりコストが低減され授精効率を増加させた、人口授精のための装置が望まれていた。さらに、従来の培養方法より精子濃度が低い場合にも効果的な授精方法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
運動性に基づき精子をソートし、ソートした精子と卵母細胞を授精させる一体型装置であって、精子用と媒質液用の最低2つの重力駆動ポンプと、より活発な精子が精液および媒質液の層流間の境界を越えて移動する共通ソートチャネルとを備える。この媒質液は、より活発な精子を取り込み、捕獲した卵母細胞を”チップ上で”受精させ、あるいは微細流体装置を用いて捕獲した卵母細胞を授精させる
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一体型装置は”チップ上で”精子をソートするものであり、これは精液など精子を含有する流体と、精子が生存しうる媒質液との層流の境界を越えて移動する精子の運動能力を利用する。この原理が図2に示されており、媒質液と精液の流れが共通ソートチャネルにて合流し、より活発な精子が2つの流れの境界を越えて移動する。2つの流れはその後分離される。この結果、媒質液に活発な精子が取り込まれる。このプロセスは、並列または直列あるいはこの両方で繰り返し行われ、効率のよい精子の選別が行われる。このような選別法が、Schuster他による"Isolation of Motile Sperm From Semen Samples Using Microfluidecs", REPROD. BIOMED. ONLINE 7, 75-81に記載されている。
【0008】
効率的な選別を可能とするには、層流が必須となる。マイクロ流体装置では、小さなチャネルにごく少量の流体で一定の流量とする必要があるが、これが従来の注射器やポンプ等では困難であった。流量や流圧の変動により障害が生じ、流れに乱れが生じてしまう。この乱れにより、精子を選別するソートチャネルが破壊され混流作用が生じる。定量で、少ない流量とするため、本発明の装置は定量ヘッド(constant head)を備える重力駆動水平ポンプ(gravity driven horizontal pump)を用いる。この定量ヘッドにより、際だって安定した流量を得ることができる。重力駆動ポンプについては、本発明の装置による精子ソート部とともに後に詳述する。
【0009】
本発明の一体型装置の残りの構成要素は、授精チャンバである。蓄えられた精子はソートチャネルから直接、あるいは後続のソート精子リザーバ内の第1層から、授精チャンバに入る。チャンバ内には最初に1またはこれ以上の卵母細胞が導入され、これらは適切なバリヤにより、流体および精子は通過可能であるが卵母細胞がチャンバを出ないよう守られている。授精チャンバはそれ自体単独で、あるいは層流を用いた精子選別法あるいは従来の選別法で分離された精子とともに用いることができる。驚くべきことに、精子濃度が低い場合、センターウェル式、培養チューブ式、またはオイル下での微細ドロップといった従来の培養技術より微細流体授精の方が効果的である。
【0010】
上述した精子の選別および卵母細胞の授精の各局面で加わる力は非常に微小であるため、授精の失敗や、精子、卵母細胞、および受精卵のダメージは最小限となる。この装置には様々な材料を用いることができる。しかしながら、生物学的に不活性であり扱いが容易であるキャスタブル(castable)シリコンを好適に用いることができる。以下に、この装置について構成要素ごとに詳細に説明する。
【0011】
重力駆動微細流体ポンプシステムは、水平配置された液体供給リザーバと、ポンプ流体が流れるマイクロチャネルを介して連結され水平配置された出口リザーバとを備える。液体供給リザーバは実質的に水平であり、動作に必要な量の液体を運搬するのに十分なサイズを有する。「実質的に水平」とは、供給リザーバ内の液体により生じる静水圧が比較的一定である水平あるいはほぼ水平の位置をいう。水平リザーバは、絶対的な水平位置から外れて、静水圧を作為的に発生させ時間を変化させるポンプシステムを作成してもよい。通常、水平から10°以下の傾きであり、好ましくは5°以下が適切である。例えば1−3°といったごく僅かな傾きを供給出口に向けて設けると、排出される液体とリザーバの壁との間の表面張力による反対作用が生じる。一般に所定時間必要となる液量を確保すべく、供給リザーバの容量は液体が流れる微細チャネルの容量より一般に大きいことが望ましい。例えば、1000−3000nL/時の流量レートでは、リザーバの容量は数mLとなる。重力駆動ポンプは実質的に定量”ヘッド”に液体を供給する。
【0012】
リザーバは直線的な中空セクションを構成してもよいし、スペースの節約のためU字型または水平スパイラルに曲げられていてもよい。好ましい構成が図5に示されており、これについては後に詳述する。この空胴セクションの内側断面は任意の形状であってよい。好適には内部断面は半円形状であるが、内部の液体が外部に漏れないよう十分な表面張力を有する形状であれば長円形、四角形、三角形、八角形(多面体)または他の断面形状であってもよい。液体は、ほぼ空の場合でも表面張力によりリザーバの高さ全体に亘る。この断面形状はリザーバの長さに沿って変化し、リザーバ内の液量により定められるタイミングで場所ごとに異なる静水圧がかかるようにしてもよい。このマイクロ流体装置に別の供給リザーバを連結して、より長い時間液体を供給してもよい。例えば、ガラス管のリザーバに標準的な微細流体コネクタを設け、例えばポリジメチルシロキサンのエストラマー(PDMS)やポリスルホン等の適切な管を介してマイクロ流体装置と接続できるようにしてもよい。このような装置では、供給リザーバとマイクロチャネルとの少なくとも一部の高さは異なっており、これにより供給リザーバを水平配置した場合に、リザーバとマイクロチャネル出口の間に重力による静水圧状態が生じる。マイクロチャネルは水平、傾斜、垂直のいずれでもよいが、水平が好ましい。
【0013】
液体供給リザーバの”直径”または断面寸法は、液体とリザーバ壁との間の表面張力が、与えられたリザーバ内径においてリザーバ内の液体を保持するのに十分であればよく、ただしこの内径は表面張力により流れが妨げられない程度に小さくてはならない。この表面張力と内部寸法の関係は、リザーバの内部断面形状、リザーバの内壁の材質、液体の性状など様々な要素により変化する。特定のリザーバが適当か否かは、そのリザーバに液体を満たしこれに連結したマイクロチャネルに液体を送り込む間に液体を安定的に保持するかを観察することにより容易に評価することができる。
【0014】
例えば、断面形状が正方形または矩形のリザーバは、内部断面における角の壁と液体との相互作用が増大し、非円形の断面により容量に比して液面が高くなるため、断面が円形の場合よりも大きな”直径”を期待できる。水様の流体には、親水性の内壁は、親水性の低い(または、疎水性の高い)壁面より流体−壁面間の相互作用が低くなる。最後に、流体自体の性質が重要である。流体内に表面張力が低下する化合物があると、これに応じて最大”直径”が変化する。
【0015】
例えば、BSA(ウシ血清アルブミン)を1.0重量%含む流体では、内径(”I.D.”と称す)が5−6mmのリザーバは表面張力により流体を保持できず、これに対し2.5mmのリザーバは高い表面張力を示す。しかしながら、名目上の直径が3.5mmから4.0mmの間のリザーバは、このような適用例に非常に適していることが分かる。様々な内部”直径”/形状の適切さは、第1に、リザーバを水平にしたときに流体がリザーバ内に保持されるかをみて、流体が自ら流れ出ないかを確認し;第2に、リザーバの壁と流体の相互作用がそれほど高くなく、リザーバと与えられたマイクロチャネルとの所望の流量が得られないか確認する、ことにより容易に検証することができる。マイクロ流体装置のチャネルは、供給リザーバとマイクロチャネル間の(重力場に対する)高さの差から生じる静水圧により流体が流れる。
【0016】
装置のソートチャネルの端部は出口につながっている。この出口は、出口に滴が形成されることにより圧力が変動するのを防ぐため、好ましくは出口流体リザーバに流路で連結されている。この出口リザーバはマイクロチャネルが連結する簡単な容器、または供給リザーバと同じ寸法、材料、形状の出口リザーバを用いることができるが、高さが低く及び/又は垂直配置されている。この状況において、毛管引力がほぼ打ち消され、重力による静水圧が液体に加わる唯一の駆動力となる。
【0017】
供給リザーバと出口リザーバが同じ形状構成の場合、形状誘導と材質誘導(すなわち親水性/疎水性)の性質は完全に相殺され、これにより流れの安定度が増す。このようにすれば、最初に装置に流体を満たすと、供給リザーバと出口との間に僅かな圧力差が生じ、同様の出口リザーバを用いなくとも、内部寸法が小さすぎるリザーバから流れが生じる。
【0018】
本発明の一体型装置は、少なくとも2つの流体供給リザーバを備えており、1つはソートされる前の精子用であり、1つはより活発な精子を取り込む媒質液用である。さらに、この一体型装置は、異なる養分、発育因子などの異なる成分の流れ、または単一のリザーバのみでは不可能な流量を供給するため、さらなるリザーバを備えてもよい。流体供給リザーバの長さは簡単に伸ばすことができるが、断面が大きすぎると流体がリザーバの高さ全体に亘りづらくなるため、その断面は大きくしない。これらの工夫は出口リザーバには施す必要がないが、これらはともに同じ基準で構成される方が望ましい。
【0019】
例えば様々な流体のリザーバから出入りする装置通路には、バルブが設けられていてもよい。複数の媒質リザーバが設けられる場合にはバルブ制御が特に重要となる。バルブ制御は、チップ内に設けられ公知の手段で駆動される動作マイクロバルブや、チップ外において装置の弾性性質を利用して各流路を”絞る”構成としてもよい。硬い装置では内部バルブに頼る必要があり、例えば電磁場を利用した内部駆動または外部駆動による。当業者であれば適切なバルブを適用可能であろう。あるリザーバから次の授精へのバルブを制御して、試験管内システムの栄養成分を変化させて実験してもよい。
【0020】
重力ポンプ装置のリザーバとマイクロチャネルを図5に示す。この装置では、供給リザーバはマイクロチャネルより十分大きく構成され、これにより一定期間流れが生じる。図5では、供給リザーバ68は出口リザーバ69より面積も高さも大きく構成されている。流体が蓄えられると、2つのリザーバの高さの差により、2つのリザーバの液面高さが等しくなるまでマイクロチャネル70に流れが生じる。
【0021】
装置全体は、ガラス、金属、またはシリカなど他の基質を微細加工して得ることができるが、好ましくは熱可塑性または熱硬化性のポリマーで”マスター”を用いてキャストする。キャストしたポリジメチルシリコンエストラマーを好適に用いることができる。この製造法の詳細は後述する。精子リザーバと媒質リザーバは、各リザーバに接続され流体を供給する微細管を設けて、あるいは装置表面に設けられピペットの先端や注射針などを受けて装置に流体を供給するよう構成された簡単な供給流路に接続されていてもよい。同様に、活発な精子が減少した流体用リザーバと選別精子用リザーバは、流体供給が不要であり、通常は流れを妨げるエアロックが形成されないよう少なくとも屈曲されることが必要である。好ましくは装置に流体を満たし、卵母細胞と精子サンプルをそれぞれの場所に注入し、流れを生じさせるポンプ動作を開始するだけでよい。
【0022】
図1は、本発明にかかる精子選別部の理解を容易にするための図であり、本図はこの機能を実現する比較的簡単な装置の実施例であり、図2に活発でない分子から活発な分子をソートする方法を示す。
【0023】
図1は、装置の平面図であり、上から見た状態を示す図である。この装置1の実施例は運動分子ソート液流入路2(または、運動分子供給リザーバが流入路として作用する)と、媒質液流入路3(または媒質リザーバ)と、活発な分子が減少したソート液流出路(またはリザーバ)4と、活発な分子が増加した流出路(またはリザーバ)5とを備える。流入路2、3と流出路4、5の間にはソートチャネル6が設けられている。ソートチャネル6と各流入路および流出路とは、ソート液流入チャネル7、媒質流入チャネル8、運動分子減少ソート液流出チャネル9、運動分子増大媒質流出チャネル10とで接続されている。ソート液流路チャネルの幅は試料の分子が効果的にブロックされることなく通過するのに十分な広さであり、これは双方の流出路についても同様である。一般に、流入および流出する流れはソートチャネルより小さい断面となる。相対的な断面は様々な流れにおける流量や流量レートに依存する。線形の流量レートはほぼ同じであることが好ましいが、相対的な流量レートはソート液と媒質液の混合が生じる場合にのみ制限される。媒質やソート液の粘度など様々な要素により、分子の運動性と、選別すべき分子とは異なるサイズの分子や小片が出現または消滅し、ソートチャネルの各セクションにおいて媒質液の量はソート液の量より少なくても、ほぼ等しくても、多くてもよい。
【0024】
適用例では、供給された精子がソート液流入路2から導入され、運動分子減少ソート液流出路9側への流れが生じ、最初にチャネル7、次にソートチャネル6を通り、その次に流出チャネル9へと流れる。選別しようとする精子に影響を及ぼさない(破壊しない)媒質供給流が媒質流入路3に導入され、チャネル8からチャネル6を通り運動分子増加媒質流出路5への流れが生じる。チャネル7と8の合流点では、交わらず、好ましくは層流となり、ソート液と媒質液が平行してソートチャネル内を流れる。非活発(またはあまり活発でない)分子はソート液に残り、活発な分子はランダムに泳ぎ回り媒質液側に入る。このランダム移動の結果として、ソート液には活発な精子が減少し、逆に媒質液はだんだん豊富になる。
【0025】
本発明について、さらに図2a、2b、2cを参照して広範に説明し、これらの図は図1の装置のソートチャネルにて非活発な精子や他の非活発な分子から活発な精子を分離する状態を図示したものである。図2aは、ソート液11と媒質液12との合流点のソートチャネル6を示す。ソート液11は、活発な精子13と、非活発な精子14を含んでおり、これには”丸い細胞”15として示す他の非活発な分子が含まれる。平面でみた媒質液のサイズは、当然その量も、ソート液より十分に大きい。精子(および同様に他の活発な分子)が短期の間に流体全体に実質的にランダムに分配されると仮定すると、より多くの量の媒質を用いると活発な精子13をより多く含むことができる。
【0026】
図2bは、2つの流れにて活発な精子のランダム移動が始まり、所望程度のランダム化が得られるまで連続する状態を示す図である。このランダム度合いは、媒質の量に対する活発な精子の濃度が、ソート液の量に対する濃度以上であることが好ましい。ここでソート液と媒質液は異なる流れとして維持されており、それぞれが層流をなしており、これらは共通の界面または境界16をもつ。純粋なランダム化による媒質液における活発な分子の濃度を命令の量を越えて大きくするには、媒質液において活発な精子の運動量が増すよう、例えばソート液よりも粘度の低い媒質液を選択したり、活発な精子の運動量を非活発あるいは運動性の低い精子よりも増大させる添加剤を含めることがある。
【0027】
図2cでは、活発な精子に富んだ媒質液が、運動分子増大チャネル10に分けられ採取され、一方で運動分子が減少したソート液はチャネル9を出口4へと流れる。
【0028】
活発な分子が減少したソート液を活発な分子が増大した媒質液と分ける分岐点は、この地点で2つの流れの混合が防げるものであれば様々な構成とすることができる。分岐点17は、例えばこの地点ではソート液入路とほぼ同じチャネル構成(すなわち、高さと幅)とすることができる。媒質液の非活発な精子による汚染を最小限とするには、分岐点17はまた、媒質液のごく一部がさらに活発な分子が減少したソート液出路9に向けて構成されてもよい。この場合、活発な精子がわずかに少なくなるが、結果として非活発な精子が活発な精子に富んだ媒質液に入る可能性が少なくなる。
【0029】
ソート液の性質はさほど重要ではない。このソート液は精液といった生物学的に導出されたものであり、(活発な精子が減少したまたは活発な精子が増加した)所望の流出路において洗浄され、希釈され、添加剤が加えられ、着色または蛍光着色され、粘度調節され、緩衝剤が加えられてもよい。
【0030】
媒質液は、ソート液の選択または変形に適用するものと同じ感覚で選ぶことができる。幾つかのケースでは、媒質液は水であり、しかしながら生物学システムでは、一般に生理的塩類溶液、緩衝食塩水、栄養汁など生物学的活動を維持あるいは拡大する流体を用いる。人間の精子の場合、好適な媒質は人間の気管の液にバッファされたHEPESである。
【0031】
媒質液およびソート液の性質は、可能であれば、浸透効果による界面における混合を防止すべく選択されてもよい。このケースは、例えば、媒質液とソート液で共通する液体(例えば水)の溶融成分、例えば塩、酸、塩基(bases)、緩衝剤(buffers)溶融無機成分などがほぼ同じ量の場合である。これらの液体はまた、可能であれば、界面における核酸による混合を防止すべく選択されてもよい。ただし、この観点において拡散が完全に失われるのは望ましくない帰結である。
【0032】
液量の相対関係は、所望の媒質側の活発な分子の混合度合いにより選択することができる。高度に混合していると、媒質量はソート液の量に対して多くなる。ただし、特に連続するソートが行われる場合には、適当な多くない量の媒質を用いることができる。ソート液に対する媒質液は1:100から100:1であり、好ましくは1:10から10:1の範囲である。いくつかの例では、ソート液にたいする媒質液の量は1:1から3:1である。媒質液の量は最も好ましくはソート液より多い。
【0033】
ソート液と媒質液の直線流量はほぼ同じであり、すなわち1.5:1から1:1.5の範囲内である。この媒質の直線流量がソート液のより大きい場合、これによって媒質液の横切る量を活発な分子の編入の同じ度合いに用いることができる。流れは好ましくは同時発生であるが、ただし界面における混合がソート液と媒質液の減少/増加度合いを容易にするものを越えて悪化しない限り同時発生でなくてもよい。
【0034】
ソート液と媒質液の界面は好ましくはほぼ非混合界面である。ここで”非混合”は2液間での過剰な乱れによる混合がないことをいう。例えば、最も好ましいのは平行で、同時発生で、層流が、実質的に”安定”した界面が得られ、この反対が波があり、流れており、渦がある場合である。荒い流れは通常流れの一部または全部を混合させ、活発な分子の減少/増加が有効でなくなるか完全に不可能となる。活発な分子の理論上最良の分離は、静的に見える界面が現れたときか、拡散および浸透効果により”線型”となったときに得られる。しかしながら、本発明の目的からすれば界面の乱れはない方がよい。所望の分離度合いが得られなくなったら乱れが過度であり、装置の複合ステージでも同様である。レイノルズ数で表される乱れは、いかなる場合でも2000以下であり、より好ましくは100以下であり、さらに好ましくは10以下であり、最も好ましくは1以下である。ここに図示したような高機能の装置はレイノルズ数が約0.1を示す。
【0035】
界面の性質、すなわち乱れの度合いは、分離度合いにより評価することができる。ただし、この乱れは他の多くの方法でも評価することができる。例えば、後述するPDMS装置では、光学的に透明な装置とすると、界面における色の変化により界面自体を顕微鏡で観察可能である。従来の光学技術では、屈折率の異なる媒質間の界面を簡単に観察することができる。ソート液と媒質液の混合度合いはタグ添加物(taggant)、例えば放射性の溶性合成物または活発でない細胞、可視または蛍光の染料などを一方の液にのみ導入することにより観察できる。最初にタグ添加物を含まない流れの、出口流でのタグの出現は、乱れの一種、拡散または浸透による界面の混合の証拠となる。後者の2つの効果によるある程度の混合が望ましいが、ただし最小限であることが望ましい。タグ付けしていない流れにタグ添加物が50%混ざっている場合、実質的に完全に混合されたことになる。タグ付けしていない流れへのタグ添加物の混合は20%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは1%以下が望ましい。レイノルド数が適当に低い限り、乱れの度合いは満足すべきものとなる。上記の条件を満たす流れを”実質的に乱れのない流れ”と称す。同じ向きに流すと逆向きに流すより乱れは少なくなり、界面における混合もしかりである。
【0036】
上述のように流量を乱れが少なくなる条件とすると、このレート自信は幅広く変化する。選別装置の壁はまた、流れに対して静的であるため乱れの原因となる。この壁による効果は、細いチャネルが設けられている場合、特にソート液または媒質液の細い部分に壁が接するときに最も重要となる。対象となる装置が相当小さく、チャネルも相当小さいため、10cm/sの線形流量レート、好ましくは10mm/s以下が望ましい。線形流量レートの下限は、ソート流から媒質流へのブラウン運動による活発でない細胞の混合により定まる。例えば、流量レートがゼロであれば、流体の成分ベースが同一であれば(例えば緩衝食塩水)、媒質相への活発でない分子の分配は最終的にこれらの濃度が同一となったときに完了する。流量レートが高い場合、活発でない分子のブラウン再分配が低くなる。流量レートの上限は、流れの界面に乱れが生じた場合であり、これでは混合度合いが高くなってしまう。
【0037】
与えられた流れの相対的な液量、相対的な流量、絶対的な流量は、例えばソート流と媒質流について、それぞれのレートと量を変化させ、それぞれの濃度や減少量を決定するなどして、当業者であれば簡単な計算および/または分析により、定まった方法で決定することができる。
【0038】
装置の構成は変更してもよい。例えばソートチャネルの長さは、活発な分子が2つの相間でランダム化する速度や流速の要素となる。例えば、与えられた流速において、限られた運動量の活発な分子には長いソートチャネルが必要となり、与えられたソートチャネル長さでは、活発な分子には流れが遅い方がよい。界面の範囲はまた装置の構成に影響する。例えば、平らな四角形のソートチャネルにおいて、一方の流体が大きな面積のチャネル表面に平行に接しており他方の流体が隣接している場合はランダム化が早くなり、したがって小さな面積のチャネル表面に平行に接している場合よりも流体ソートチャネルの長さを短くする必要がある。後者の場合、前者に比べて界面範囲が小さくなる。ほとんどの場合、ソートチャネルは非所に短く、大体2−5cm以下であり、そしてほとんどの装置では、100μmから1cmである。静止の選別には、例えば、ソートチャネル長さを5000μm(5mm)とすると公的である。本件装置では、ソートチャネルは短い方が望ましい。
【0039】
ソートチャネルの断面形状はそれほど重要ではない。正方形、四角形、楕円形、円形、台形、または他の断面形状であってよい。製造を用意にすべく、正方形、四角形、三角形、台形、半円、半楕円形といったアンダーカットのない形が適している。これらの形状は、例えば、ニートキャスティング(neat casting)または成分キャスティング(solution casting)法で製造する場合に好適である。ステレオリソグラフィー技術(SLA)により、より複雑な形を簡単に製造できるようになった。アンダーカットしたチャネルを施した複雑な形はキャスティング技術を用いて、装置を連続する層ごおtに形成し接着などで結合させるキャスティングにより得ることができる。しかしながら、チャネル幅は、媒質液とソート液がともに一体化する幅とする。人間の精子の選別では、例えば、実施的に四角形のチャネルで高さが50μmで幅が500μmが適している。参考までに、人間の精子は頭部直径が2.5μmで長さが5μm、全体の長さが60μmである。
【0040】
断面の範囲と供給チャネル、出口チャネルの寸法は一般にソートチャネルより小さい。ソート液流入チャネルの最低寸法はソート液内の分子のサイズによる。好適には、ソート液チャネルは、内包する細胞サイズの3〜10倍のサイズにする。媒質液流出チャネルのサイズについても同様であり、ただし媒質液流入口はこの限りではない。こうてきには、ソート液流入/流出チャネルは比較可能なサイズであり、いくつかの例では、上述したように、流出チャネルは流入チャネルより大きいことが望ましく、これにより媒質液の部分がソート液に合流する。精子の選別では、四角いソート液流入チャネルは高さ50μm、幅100μm、長さ5000μmが適している。
【0041】
様々な流入/流出チャネルの長さは重要ではない。少なくとも流入チャネルは、ソート液チャネルと媒質液チャネルとが合流する前の段階で層流が形成されるようにある程度の長さであることが好ましい。通常、粘性のある流体は粘性のない流体のチャネルほど長い距離を必要としない。いくつかのケースでは、流入チャネルは完全に省略され、すなわちソート液流入口(またはリザーバ)および/ばたは媒質液流入口(またはリザーバ)がソートチャネルに直接供給する。多くの場合は、しかしながら、選別装置の製造を容易にすべく、流入チャネルが設けられている。口述する精子の選別装置にあh、例えば、長さが3mmの流入チャネルが適している。
【0042】
ソート液と媒質液の合流点18(図1)は、流れがスムースに合流し過度な混合が生じないよう構成されていることが好ましい。通常、このため、合流点は比較的鋭角に構成される。ソート液流入チャネルとソートチャネル、媒質液流入チャネルとソートチャネルの角度は同じでも違ってもよく、すなわち装置は対称である必要はない。これはソート液と媒質液とが分離する、または互いにそれる分岐点17にも同様である。しかしながら、ソート液流入チャネル、ソートチャネル、ソート液流出チャネルはほぼ直線として、ソート液内の活発でない分子の乱れをできるだけ少なくすることが望ましい。
【0043】
装置を構成する材料は様々な適切なものを用いることができ、また装置の製造も様々な方法をとることができる。例えば、装置はガラス、シリカ、シリコン、金属のエッチングにより化学的な微細加工によってもよいし、ポリマー等の溶剤エッチングによってもよい。装置は独自に周知のステレオリソグラフィー技術により製造してもよい。この装置は、例えばシリコンラバー、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロロイド、ポリビニリデンクロロイド、ポリアミド、ポリエステルなどの射出形成または型枠ポリマーによることができる。
【0044】
この装置の成型には、ネガティブの”マスタ”を作成し、キャスタブルな材料をマスタにキャストすることが好ましい。好適なキャスト材料は、エポキシ樹脂、硬化性ポリウレタンエストラマー、ポリマー溶剤すなわちアクリレートポリマーをメチレン黒路IDOまたは他の溶剤に溶融させたポリマーであり、好ましくは硬化性ポリオルガノシロキサン、コスト面で最も好ましいのは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などのメチルグループを伴うポィオルガノシロキサンである。硬化性PDMSポリマーはよく知られており様々なところから入手可能であり、過酸化養生システムも同様である。これらのPDMSポリマーは、架橋剤を形成する反応群の割合が低く、および/または、養生時に鎖結合を生じる。1パート(RTV−1)と2パート(RTV−2)のシステムが利用可能である。生物学上の細胞生存率が不可欠である場合は更なる養生システムを用いる。
【0045】
多くの場合、透明な装置であることが望ましい。このような装置はガラスまたは透明ポリマーで製造することができる。PDMSポリマーは透明な装置に適している。わずかにエラストマーを含むポリマーを用いると、型から取り外してチャネルをアンダーカットで形成できる利点があり、これは一般に硬い材料を用いると不可能である。微細流体装置の製造法は、シリコンポリマーをキャスティングする方法が良く知られている。D.C. Duffy et al., "Rapid Prototyping of Microfluidic Systems in Poly(dimethylsiloxane)", ANALYTICAL CHEMISTRY 70, 4974-4984(1998)を参照されたい。また、J.R. Anderson et al., ANALYTICAL CHEMISTRY 72, 3158-64 (2000); およびM.A Unger et al., SCIENCE 288, 113-16,(2000); J.C. McDonald, et al., "Oly(dimethilsiloxane) as a material for fabricating microfluidic devices", ACCOUNTS OF CHEMICAL RESEARCH, 35491-99を参照されたい。ポリメチルメタクリレートの装置については、L. Martynova, et al, "Fabrication of Plastic Microfluidic Channels by Imprinting Mehtods", ANALYTICAL CHEMISTRY 69, 4783-4789を参照されたい。
【0046】
装置のチャネルとリザーバの壁の詳細は、装置の応用例と使用する流体の目的に応じて選択される。さらに、これらの壁は、その表面が生物学的に融和性または対生物作用の被覆を有し、または化学機能をもつ。精子の分別では、チャネルをウシ血清アルブミン(BSA)でコートすると、チャネル内で液体がよく流れ、細胞がチャネル壁に非特異的に吸着するのが防止される。
【0047】
卵母細胞受精チャンバとソート精子リザーバは、両方の機能を有する1つのリザーバであってよい。あるいは、別に受精チャンバを設けてもよい。後者の場合、受精チャンバとソート生成リザーバは、精子含有液を受精チャンバに導くフローチャネルで接続されていることが望ましい。この流れにはバルブが設けられてもよく、媒質リザーバと精子リザーバと同様に重力ポンプで駆動され、または別に例えば吸い込みなど圧力や吸引力の補助を得て、供給が開始(維持)される。
【0048】
受精チャンバのサイズは導入される卵母細胞の数と個々のサイズによって決められる。このチャンバは1以上の卵母細胞をチャンバへ導入する手段を備える。このチャンバは卵母細胞を調整すべく幅が細くなるよう構成されてもよく、必要に応じて、卵母細胞の中心に堆積した細胞を除去または送る。卵母細胞の微細操作技術は周知である。Beebe et al., "Microfluidic Technology for Assisted Reproduction", THERIOGENOLOGY, 57, 125-135 (2002)を参照されたい。例えば、チャンバは装置外側でピペット片を受けるよう構成された漏斗型開口に接続され、受精チャンバと接続し卵母細胞が通るのに十分大きい直径を有する”卵母細胞ダクト”を備えてもよい。
【0049】
受精チャンバは静的であるのに対し、新たな精子ソース、栄養媒質などを供給するために、また細胞の代謝物を除去するために、チャンバを通って流体が流れるのを確立するのが好ましい。したがって、この卵母細胞チャンバは一般に、流体や精子が流れる穴または通路を備えるバリアで会って卵母細胞がバリアを越えて移動するのを防ぐバリアを備える。このバリアは原則として受精チャンバにおいて流体と精子を通過させる小さな出口またはチャネルを備える壁である。しかしながら、さらなる穴またはチャネルを設けて、代謝副産物および/または細胞毒素が蓄積されるのを好適に防ぐようにしてもよい。微細流体装置は非常に小さく、したがって肉眼で見える装置用に意図されたバリア構造は微細装置の製造に用いることができない場合がある。
【0050】
よくできたバリア構造46の一例が図4に示されている。多くの微細流体相違と同様に、このバリアの設計はキャストされたポリマーの複合レイヤによるものであり、これらが最終的に装置に組み込まれる。図4では、下側レイヤ60はチャンバ内に導入される典型的な卵母細胞62の高さ、好ましくは多少高めで厚さ63のブロック壁61を設けて構成される。上側レイヤ64は、厚さ63より長い複数の平行な溝またはチャネル65を設けて構成され、チャネルが直接ブロック壁に被さるように第2のレイヤが第1のレイヤに被せられた場合、ブロック壁を越える複数の通路が作成される。これらのチャネルは、受精チャンバの幅全体に横向きに延在してもよい。このような装置によれば、卵母細胞にバリアとして作用する一方で、実質的に妨げのない流れを得ることができる。
【0051】
1またはそれ以上の卵母細胞を受けるよう構成された微細チャネルを備える微細流体受精装置であって、チャネルとともに説明したバリアを備える。漏斗型または他の形の開口が設けられ、卵母細胞をチャネルへ注入またはピペット移動させ、連続する液体の流れにより卵母細胞がチャネルをバリア部分まで移動する。このバリアと微細チャネルは互いに組合わさり受精チャンバを構成する。精子含有液は好ましくはチャンバ内へと流れる。後述する肥沃化により、液体の流れは栄養含有液に変わる。様々な液体が交互にガラス管システムで検証される。
【0052】
図3は、精子の選別と受精の一体型装置30の実施例を示す図である。本図は装置の通路を示し、この装置は好適にはキャストシリコンエストラマーの複数のレイヤを組み立ててることができる。ソートチャネル31は精子受けリザーバ32から精子の供給を受け、このリザーバはPDMS装置の外側に延びる通路33を備え、漏斗型の開口34を備えピペットチップや他の派生装置をより好適に受ける。リザーバ32の高さと幅は流体が外からチャネル31へ流れ、液面レベルは落ちることなく、その代わり流体の”プラグ”が水平に移動する。精子含有液、すなわち精液が通路33を通りリザーバに導入される。
【0053】
ソート媒質液が、漏斗型の開口37が端部に設けられたソート媒質リザーバ35に通路36を介して導入される。ソート媒質リザーバから、流体は媒質チャネル38を介してソートチャネル31に流れる。精液とソート媒質液の合流点において、ソートチャネル31は広がり層流をなし、この幅広の部分39が分離点40の連続流41まで続き、精子減少リザーバへ流れ、好ましくは外部への出口またはベント43を備える。ソート媒質は、現在は活発な精子で肥沃し、ソート精子チャネル44を介して卵母細胞チャンバ45へ流れる。卵母細胞チャンバ45はチャネル44と同じ寸法であり、あるいは、図に示すように少し大きい。卵母細胞受精チャンバの前後には、媒質液と精子を通すが卵母細胞を通さないバリア46が設けられる。このバリアは図4に示すのと同様である。チャンバ45から、流体は、出口またはベント49を備えるソート精子リザーバ48に連続的に流れる。
【0054】
チャンバ45へ1またはこれ以上の卵母細胞を配置するには、端部に漏斗型開口部51を有する卵母細胞ダクト50を用いる。ダクト50の内部直径は卵母細胞がダクトを通ってチャンバ45に通過しうる大きさとする。ダクト50の一部52はチャンバ45に入る前に水平となり、バルブ53によるバルブ制御が可能となっている。バルブ53は内部的な自律開始バルブ(internal actively initiated valve)であり、あるいは電磁的または圧電性駆動の触覚センサを有するプログラム可能なディスプレイに見られるような外部バルブである。卵母細胞のダクトをバルブ制御して後続の卵母細胞を止めると、卵母細胞ダクトの高さは装置を通る流れに影響しない。後続の授精により、卵母細胞は装置を分解して、あるいはバルブ53を開けて卵母細胞ダクト50から卵母細胞を回収するkとにより除去される。
【0055】
図3の装置は”通過型”人工授精器であり、選別された精子がソート精子リザーバへ進む途中で卵母細胞のそばを通る。バルブ制御された卵母細胞のダクトは直接ソート精子リザーバ48に接続され、チャネルよりも授精チャンバまたは窪みを形成している。出口は簡単な”ピン”バリア47で卵子がチャンバから出ないようにしている。他の装置が図7に示されており、これは卵母細胞と精子の接触に高い柔軟性が可能である。図7において図3と同じ要素は同じ符号が付されている。しかしながら、図7では、選別された精子は直接ソート精子リザーバへ流れる。精子はリザーバ48から精子チャネル55で卵母細胞チャンバ45へ導かれ、ここに卵母細胞がバリアグレート46により留められている。卵母細胞は卵母細胞ダクト50からチャンバ45に配置される。
【0056】
精子チャネル55はソート精子リザーバ48および卵母細胞チャンバ45の間で、例えば”ブライユ(braille)”アクチュエータバルブ56でバルブ制御される。さらに、精子チャネル55においてソート精子リザーバから離れた部分に、アクティブまたはパッシブバルブを配置してもよく、このケースでは、3つ以上の一連のブレイユアクチュエータ56でチャネルを外側から連続したリズムパターンで押圧し、蠕動ポンプのような動作が得られる。バルブ56が開けられポンプ57が動作した場合、選別された精子を含む媒質液がソート精子リザーバ48から卵母細胞授精チャンバ45側に押し出され、ここから収容リザーバ58に入る。
【0057】
人間あるいは人間以外の胎芽の微細流体培養環境において、動的な培養システムは流れが静的な培養システムと比較して多数の利点を有している。第1に、媒質が胎芽に徐々に移動することにより、胎芽の発育に有害なアンモニアや酸素遊離基といった代謝副産物が除去される。さらに、胎芽を含む独立した卵割球(細胞)が壊死(apoptotic death)する場合があるが、下垂細胞死の因子を破砕し除去する因子が残った卵割球に有害となる。動的培養システムはこのような因子を除去する。第2に、人間の胎芽培養工程は2−3の連続した媒質を突然変異させて3−6日培養するが、これは胎芽に浸透性のストレスをかける場合がある。動的培養システムは徐々に媒質を交換する利点がある。第3に、卵管内で、上皮細胞の睫毛が連続的に”波打ち”、着床前の胎芽が常に動く。この動きが動的な媒質流により得られ、細胞の中心(poles-of-cell)の分裂や胎芽の発達能力を促進するのに有利となる。第4に、媒質を動的に胎芽に流すと胎芽の副産物の”サンプリング”が可能となり、着床と妊娠の確立においてどの胎芽に最も変化が見られるかが分かる。最後に、胎芽をグループで培養すると、より発育した胎芽(”ヘルパー”)が発達の悪い胎芽(”ラガー”)を発育させる成分を出すと見られ、単独で培養するより優れている。逆に、発達の悪い胎芽は発育のよい胎芽に悪影響を及ぼす。動的媒質流を用いる培養装置はこの不利な相互作用なく容易にヘルパー胎芽の影響をラガー胎芽に与えることができる。胎芽の発育における流体の影響はS. Nonaka et al., "Determination of Left-Right Patterning of the Mouse Embryo by Artificial Nodal Flow", NATURE, 418, pp. 96-99, July, 2002を参照できる。
【0058】
驚くべき事に、上述した微細流体装置の特徴は、精子濃度が低いときに授精面で従来方法より効果的である。例えば、B6C3F1マウスの卵母細胞で、推奨精子濃度は1×個/mLである。この濃度を微細流体装置で用いると、受精率は相当低くなり、標準の中心注入装置による約37%と反対で12%(受精卵の%)しかない。精子が0.5×10個/mLでの受精率は微細流動装置ではさらに悪く8%であり、これに対する中心注入IVFは36%である。
【0059】
しかしながら、精子濃度が0.5×10個/mL以下となると、顕著な驚くべき変化が生じた。精子が0.15×10個/mLでは、微細流体チャンバは18%の成功率を示し、これに対する中央注入IVFでは12%であった。精子が0.08×10個/mLから0.02×10個/mLの場合、微細流体IVFの効率はさらに2倍となった。この結果を図6に示す。したがって、本発明は、本発明の装置を用いることによる精子濃度が低い場合の受精率を増加する方法にも関する。この改良は、精子濃度と媒質、温度が同じ場合の、微細流動装置の平均受精率と中央注入技術の受精率を比較することにより評価可能である。この改良は、単一種類の精子と卵母細胞を用いることにより評価可能であり、異なる種類の結果を用いる場合は平均化する。クレームの発明を評価するために、例えば人間、ウシ属など、適切なデータ収集が困難あるいは費用面で与えられた種類についての統計的データが得られない場合、マウスの種類、特にB6C3F1変異体で進歩を確認する。
【0060】
上記に本発明の一般的な説明をし、さらなる理解のために特定の実施例を以下に説明するが、これは例示に過ぎず、記載事項は限定事項ではない。
【実施例1】
【0061】
微細流体精子選別装置をダウコーニング社のSYLGARD84硬化性シリコン樹脂を用いて作成し、前に引用したD.C.Duffyらに開示されたソフトリソグラフィー技術を用いる。硬化性PDMSは所望のリザーバとチャネル構成が突起として設けられたマスターの上からキャストする。キャストされたPDMS選別装置はプラズマ酸化され、キャスティングの開口チャネル側がシールされガラスカバースライドとなる。各チャネルとリザーバは1%ウシ血清アルブミンのシグマからV分割され、Invitrogen Corporation社の燐酸塩バッファ食塩水(PBS)で溶融する。装置全体はカバースライドを除いて6mmの厚みを有し、米国の1ペニー硬化より少し大きい程度である。装置の斜視図を図1に示す。
【0062】
図1では、PDMSキャスティングが透明であり、リザーバとチャネルのみが示されている。ガラスカバースライドまたは他の基板を装置の底面に接着してもよい。各チャネルは断面四角形であり、チャネルの高さは50μmであり、これに対しリザーバはほぼ半円形状である。流入リザーバ2,3は高さ約3mmであり、これに対し流出リザーバの高さは約2mmである。流入/流出チャネル7、8、9、10の長さは約5000μmである。精子流入チャネル7と活発な精子が減少した流出チャネル9の幅は約100μmであり、これに対し媒質流入チャネル8と流出チャネル10の幅は約300μmである。ソートチャネル6の幅は約500μmであり、長さは約5000μmである。
【0063】
精液サンプルは観察委員会(institution Review Board)の認可を受け、生殖不能の評価がされたものを用いる。洗浄したサンプルを用いて選別テストを行う。リストのオーダーでは、60μLの処理済み媒質を媒質流入リザーバに加え、50μLの洗浄済み精液サンプルをサンプル流入リザーバに加え、2μLの媒質を各流出リザーバに入れる。精子選別の収量はこれらの希釈要素を加味して計算される。活発な精子の数はマクラーカウントチャンバ(Sefi-Medical Instruments社、イスラエル、ハイフィ)により算出される。膜に包まれた精子を視覚化すべく、通常は活発でない精子に関し、3μLのpropidium iodide(Molecular Probes社、www.probes.com、処理媒質に60mM溶解)を選別前の精子サンプルに加える。テキサスレッドフィルタセット(577nm励起、620nm放出)を用いて着色した細胞から赤い蛍光色を見る。逆さまにした顕微鏡(NIKON TE 300、www.nikon-usa.com)とCCDカメラ(Hamamatsu ORCA-100、www.hamamatsu.com)を用いて画像を取得し映像を記録する。
【0064】
この選別装置は、活発でない精子が当初の流れに沿って流れて1つの流出口から出て、活発な精子が当初の流れから分かれて別の出口から出る選別システムを用いている。この選別メカニズムは、高速で拡散する微細な分子が比較的遅く拡散する分子や細片と異なる出口から出る”Hフィルタ”に用いられている”フィルタリング”機構に共通する。2つの装置の異なる点は、本発明の選別装置では細胞の活発な動きを利用するのに対し、Hフィルタでは細胞の受動的な拡散を利用する点である。この種の選別は、小さいチャネルで、複数の層流が互いに平行に、両者の界面に混合による乱れなく流れることにより実現する。選別装置内における典型的な精子サンプル流と媒質のレイノルド数は0.1のオーダーである。活発で二亜人間の精子は、長さが約60μmであり、大きさが同じオーダーの活発でない細片はゆっくり拡散し(D=1.5×1013m2/秒;10μm拡散するのに690秒)、当初の流れに留まる。これと反対に、活発な人間の精子は20℃で毎秒20μm以上の早さで泳ぐ。この早い運動性が、活発な精子を1秒で500μmのチャネル幅をランダムに移動させ、これは活発でない精子には不可能である。分離チャネルの終端に設けた分岐により、当初の流れから活発な精子のみが収集される。
【0065】
上述した選別装置は、例えば流入/流出ポートと、液体リザーバと、ポンプと、電源と、ソートチャネルなど、精子の選別に必要なすべての機能を簡単なチップデザインの上に具え、実際に製造し使用することができる。本実施例のデザインの特徴は、4つの水平配置された液体リザーバにあり、これらはサンプルの流入/流出ポートおよび液体ポンプシステムとして機能する。これらリザーバの構成、形状、サイズは重力や表面張力と釣り合うよう設計されており、リザーバ内の液量に拘わらず長い期間に亘り安定した流量レートを発生するポンプシステムを実現する。これは、流入リザーバ内の液量の減少につれて流量レートが時間とともに減少する従来の重力駆動ポンプシステムと対照的である。リザーバの直径は表面張力により水平配置されたリザーバから溢れ出ないよう十分小さく選択されるが、十分な量のサンプル(10から100μL)を保持できるような大きさで選択され、サンプルの導入と回収が便利なものである。この力のバランスにより、内部の液体をこぼさずにリザーバの水平配置が可能となる。リザーバの水平配置は、流入/流出リザーバにおける液面の高さの差(流入/流出リザーバの天井の高さが1.0mm異なる)はリザーバ内の液体の量に拘わらず、リザーバ内の液量が変化しても、一定の静水圧を保持する。
【0066】
上述した受動的に駆動するポンプシステムは、リザーバ内の液量が減少すると圧力が減少する従来の重力駆動ポンプの問題を解消すべく水平配置リザーバを用いる点でユニークである。さらに、このポンプの構造は、他の機械的または非機械的ポンプシステムに比べて非常に簡単で、容易に製造することができ、ポンプを小さくして一体型装置とすることができる。最後に、重力と表面張力を駆動力として用いると、電池のような電源が不要となり、選別装置の全体サイズを小さくすることができる。重力と、表面張力と、チャネルの抵抗を考慮することにより、この選別装置は精子の安定した流れを、メインソートチャネルに滞留時間が約20秒となるよう設計されている。より具体的には、この装置は、液体リザーバの流れの抵抗が微細流動チャネルの抵抗の10倍以上となり、これを無視することができる。これにより、チャネルの抵抗は、2.8×1012kg/(秒/m)と計算され、これはほぼシステム全体の抵抗である。所望の20秒の滞留時間を得るには0.008μL/秒のバルクフローレートが必要であり、合計の抵抗が2.8×1012kg/(秒/m)で、液体を流すのに必要となる正味の圧力降下は23N/mである。この所望の圧力降下を得るべく、リザーバの直径を、毛細管引力が13N/mとなるようにし(流入リザーバの直径3.0mm、流出リザーバの直径2.0mm)、この選別装置における静水圧による微細流動チャネルの圧力降下を(高さの差1.0mm)9.8N/mとなるようにしている。毛細管引力の計算には、接触角度は0°と仮定し(PDMSでコートされたBSAに水が接触する角度は非常に小さい)、洗浄された精液の表面張力を0.040N/mと仮定し(タンパク質等の不純物があるため水より小さくした)、洗浄された精液の粘度を水と同じとした。観察された流量レートは、1%に希釈したBSA懸濁液で0.008μL/秒であり、計算値とほぼ一致した。実際の精子サンプルは粘着性が高く流量レートが低い場合がある。精子サンプルの流量レートが低いと生産性が僅かに低くなるが、出口で回収されたソート精子の純度に純度に影響はない。
【0067】
選別装置の精子選別効率は3つの方法で評価することができる:(i)チャネルでの活発な精子の動きを位相差顕微鏡で追跡する、(ii)propidium iodide(PI)で着色された細胞の動きを蛍光分光顕微鏡で追跡する、(iii)Makler Counting Chamber、グリッドベースの精子計算装置を用いて、流入/流出リザーバで活発な精子と活発でない精子の数を算定する(図8)。この精子追跡試験により、活発な精子が当初の流れからどのようにして泳ぎ出るかが分かる。PIは、死んだ細胞など膜に損傷のある細胞を着色し、これにより活発でない精子がハイライトされ視覚的に赤い蛍光色となり、これに対し活発な精子は非着色で残る。図8の棒グラフは選別の前後における活発な精子の割合を比較したものである。陰影のないバーは当初の精子サンプルを示し、ソリッドなバーは活発な精子を取り込んだ媒質液を示す。選別後の活発な精子の濃度は、選別前の活発な精子に比べてほぼ100%増えている。(39%、42%、43%)の部分は、活発な精子の流出リザーバにおける活発な精子の数を精子サンプル流入リザーバにおける活発な精子の和人比較した割合を示しており、遠心分離した精子のペレットからすくい上げるといった直接スイムアップ法といった従来の選別方法と比較した精子の回収率が(0.8%から50%まで)以上であることを示す。また、妊娠の成功に関する他の重要な特性である精子の形態を、装置による選別後に観察することができる(厳格精子形態学:選別前は9.5±1.1%標準が選別後は22.4±3.3%標準となった)。クルーガーの厳格精子形態学は、精子が特定の基準を満たし(頭部の幅と長さ、尾の長さ、精子の頭部に所定の割合でアクロソームが形成されているか)、異常がないか(すなわち、頭部が細長かったり、丸かったり、尾が縮れていたりしないか)の条件または基準である。
【実施例2】
【0068】
図3に示すように、漏斗型の卵母細胞ダクトが精子ソートリザーバへ延びるチャネルに接続されている実施例1と類似の装置が示されている。精子の選別の前に、マウス堆積塊(a mouse cumulus mass)(卵母細胞20−30個)がピペットで導入されている。マウスの精子は精子リザーバおよび、媒質液リザーバ(選別液)へ流れる媒質液に導入される。1本の層流が流れ出し、より活発な精子が層流の界面を越えて移動し、精子を取り込んだ媒質液が、受精チャンバの機能も有する選別精子リザーバ回収ウェル(容量30−40μL)へ導入される。その後24時間の潜伏時間で、回収ウェル(受精チャンバ)内で受精が成功する。
【実施例3】
【0069】
レイヤ技術により、PDMSから微細流体チャネル/受精装置を作成する。単一の微細チャネルに2つの大きいリザーバを接続し、一方には漏斗型の卵母細胞ダクトが取り付けられており、これはまた液体流入口としても機能する。この微細チャネルは幅が500μmで深さが180μm、長さが約2cmである。その長さの80%を過ぎたところに、チャネルは図4で説明したバリアグレートを具えている。バリアグレートの平行する溝は、別に設けられたPDMS層でありその後チャネルを含む層に接着される。
【実施例4】
【0070】
B6C3F1のマウスから取得した卵母細胞を、実施例3の装置にピペットで導入し、卵母細胞がバリアグレートへ移動するよう緩衝媒質を加え、そこでブロックさせる。この微細チャネルに精子を取り込んだ媒質を流すことにより受精する。精液の濃度を変化させ、同種の卵母細胞、媒質、精子を用いた中央注入方法との受精率の比較を行う。この結果を図6に示す。
【0071】
本発明の実施例を図示し説明したが、これらの実施例が本発明の態様のすべてではない。むしろ、明細書中の語句は限定ではなく説明の語句であり、本発明の目的および範囲を逸脱することなく、様々な変更を施すことが可能であると理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の一態様における精子分類部を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一態様による精子分類の原理を示す図である。
【図3】図3は、本発明の一態様における装置の実施例を示す図である。
【図4】図4は、受精チャンバ内での卵母細胞の捕獲に用いるバリヤの実施例を示す図である。
【図5】図5は、簡単な重力駆動水平ポンプを示す図である。
【図6】図6は、精子濃度が低い場合におけるマイクロ流体受精の驚くべき効率を示す図である。
【図7】図7は、本発明のさらなる実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細流体精子の分離と授精の一体型装置であって:
a)少なくとも2つの重力ポンプ液体リザーバを具え、当該リザーバの1つは精子収容リザーバであり、リザーバの別の1つはソート媒質液のリザーバであり、
b)少なくとも1つのソートチャネルを具え、当該ソートチャネルはソート側とリジェクト側に分かれており、前記ソートチャネルのリジェクト側の精子収容リザーバに接続された上流部分を具え、前記ソートチャネルのソート側に1以上のソート媒質リザーバを具え、
c)前記ソートチャネルの前記リジェクト側のソートチャネルの下流側に接続されたリジェクト精子収容リザーバと、
d)前記ソートチャネルのソート側のソートチャネルの下流部分に接続された精子ソートリザーバと、
e)1以上の卵母細胞を選別した精子の流れに入れるよう形成された卵母細胞授精チャンバであって、当該チャンバがチャンバ内に配置された卵母細胞が出るのを防止しつつ前記チャンバに液体が流れるのを許容するよう構成された少なくとも1以上のバリアを具え、
前記卵母細胞の授精チャンバと前記ソート精子リザーバが一体的に1つのチャンバをなし、前記精子収容リザーバ内の精子を含む液体と前記第2のリザーバのソート媒質液が前記ソートチャネルにて平行に重力で導かれた層流をなすが間に界面を有する別の流れを示し、活発な精子が前記界面を越えて移動し、前記ソートチャネルまたは前記ソート精子リザーバから最後に前記ソート媒質液により前記卵母細胞授精チャンバに運ばれることを特徴とする装置。
【請求項2】
シリコンエラストマーで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記卵母細胞授精チャンバに接続された卵母細胞ダクトを具えることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ソート精子リザーバと前記卵母細胞授精チャンバが1つのチャンバであり、卵母細胞ダクトに接続していることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記バリアが、複数のバリア流チャネルを形成してなる3次元バリアグレートを具え、前記バリア流チャネルが、卵母細胞の通過が前記バリア流チャネルにより阻止されるよう卵母細胞の直径より小さく、精子がバリアを通過できるよう精子のサイズより大きいことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
卵母細胞の操作を最小限に抑えつつ選別した活発な精子で卵母細胞を授精させる人工授精方法において、
a)請求項1の装置を用意するステップと、
b)前記卵母細胞の授精チャンバに1以上の卵母細胞を導入するステップと、
c)精子を含む第1の流体を、当該精子を含む第1の流体よりも高い確立で活発な精子を含む第2の流体へとソートすべく導入するステップと、
d)ソートした媒質液を前記ソート媒質液リザーバへと導入するステップと、
e)前記精子を含む第1の液体とソート媒質液とを前記ソートチャネルに流すステップと、
f)前記ソートチャネルから前記精子を含む第2の流体を分離するステップと、
g)前記精子を含む第2の流体を前記卵母細胞に接触させるステップと含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記卵母細胞の授精チャンバは卵母細胞ダクトに接続されており、前記方法がさらに前記卵母細胞を前記卵母細胞ダクトを介して前記卵母細胞授精チャンバに導入するステップと、精子に接触した卵母細胞を前記卵母細胞授精チャンバから前記卵母細胞ダクトを介して取り出すステップとを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精子に接触した卵母細胞が受精卵であることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記卵母細胞を前記卵母細胞授精チャンバに導入または取り出すステップはピペットを用いて行うことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記卵母細胞の授精チャンバは、前記チャンバ内にある複数の卵母細胞が流れの方向に対して直列配置されるよう構成されていることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記精子を含む第2の流体の精子により1以上の卵母細胞が授精し、少なくとも前記重力ポンプ液体リザーバの1つに栄養媒質液が導入され、前記授精した卵母細胞に栄養媒質液を供給することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
精子濃度が低い場合の受精率を向上する方法において、
微細流体チャネルに1以上の卵母細胞を導入するステップを具え、前記チャネルに、液体と精子が通過可能であって卵母細胞が入るには小さすぎる複数の開口を具えるバリアが設けられており;
液体を導入し前記卵母細胞を前記チャネルを通って前記バリアに移動させるステップと;
前記チャネルに濃度の低い精子を含む液体を導入し、当該精子を含む液体を前記卵母細胞へと流すステップとを具え、
前記精子濃度における受精率が中央注入式(center-well)授精より高いことを特徴とする方法。
【請求項13】
前記精子濃度が、精子が0.5×10個/mL以下であることを特徴とする請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−527028(P2006−527028A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515214(P2006−515214)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/017829
【国際公開番号】WO2004/108011
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(501279741)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン (22)