説明

微細相分離構造体及びその製造方法

【課題】ブロックコポリマーの自己組織化と、溶液中における相分離を利用し、秩序だった微細構造を有する構造体(規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体)を直接的かつ簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体は、水系溶媒中で、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合する、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加することにより得られるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックコポリマーを用いて得られる規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、ブロックコポリマーの自己組織化を利用し、溶液中において相分離させて得られる微細構造体(微細構造を有する構造体)の形態を制御する研究が盛んに行われている。
従来、そのような相分離による微細構造体の作製方法としては、例えば、100℃以上の温度で数時間の加熱によりアニーリングを行い相分離させる方法(非特許文献1)や、有機溶剤を含む貧溶媒−良溶媒系を用いて相分離させる方法(非特許文献2)などが知られている。また、従来法において用いられるブロックコポリマーは、少なくとも疎水性のブロック部分を有するものであり、全体として水溶性ではなかったため、水溶液中で直接作製することは困難であった。また、例えば、1ステップで数分以内に作製するといった簡便な作製も困難であり、さらにチャネル構造(連通構造)を保有したまま微粒子化することも困難であった。また、有機−無機ハイブリッド材料を用いた場合は、鋳型として充填された脂質などの両親媒性分子を取り除いて水性のチャネルとする例が知られているものの(非特許文献3)、構造体作製の時点から親水性物質を含むチャネルを有する微細構造体は知られていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S.-C. Chen, et al. Macromolecules 2010, vol. 43, p. 1083.
【非特許文献2】T. Higuchi, et al. Soft Matter, 2008, vol. 4, p. 1302.
【非特許文献3】C. Hom, et al. Small, 2010, vol. 6, p. 1185.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況下において、ブロックコポリマーの自己組織化と、溶液中における相分離を利用し、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体(秩序だった微細構造を有する構造体)、特に、規則的な共連続様のチャネル構造を有する構造体を、直接的かつ簡便に製造する方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記状況を考慮してなされたもので、以下に示す、微細相分離構造体及びその製造方法等を提供するものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0006】
(1)水系溶媒中で、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合する、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加することにより得られる、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体。
【0007】
上記(1)の微細相分離構造体は、例えば、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でない、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でないものが挙げられる。
【0008】
上記(1)の微細相分離構造体は、例えば、水系溶媒中に塩化合物を添加する際に、該水系溶媒中における塩化合物の濃度が0.1〜1000mMであるようにして得られるものが挙げられる。ここで、塩化合物としては、例えば、アルカリハライド、アルカリ土類金属のハロゲン化物塩、及び遷移金属のハロゲン化物塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0009】
上記(1)の微細相分離構造体は、例えば、水系溶媒中における、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じである、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じであるようにして得られるものが挙げられる。
【0010】
上記(1)の微細相分離構造体において、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーは、例えば、下記一般式(I)及び/又は(II)で示されるものが挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
〔一般式(I)及び(II)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(I)及び(II)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0013】
また、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、例えば、下記一般式(VII)及び/又は(VIII)で示されるものが挙げられる。
【0014】
【化2】

【0015】
〔一般式(VII)及び(VIII)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(VII)及び(VIII)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0016】
上記(1)の微細相分離構造体において、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーは、例えば、下記一般式(III) 及び/又は(IV)で示されるものが挙げられる。
【0017】
【化3】

【0018】
〔一般式(III)及び(IV)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(III)及び(IV)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0019】
また、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、例えば、下記一般式(V)及び/又は(VI)で示されるものが挙げられる。
【0020】
【化4】

【0021】
〔一般式(V)及び(VI)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(V)及び(VI)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0022】
上記(1)の微細相分離構造体は、例えば、塊状、微粒子状又はフィルム状のものであってもよく、微粒子状の場合、その平均粒径は、例えば10 nm〜100μmである。
上記(1)の微細相分離構造体は、例えば、規則的な共連続様のチャネル構造を有するものが挙げられる。
【0023】
(2)水系溶媒中で、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合する、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加することを特徴とする、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体の製造方法。
【0024】
上記(2)の製造方法においては、例えば、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でない、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でないようにすることができる。
【0025】
上記(2)の製造方法においては、例えば、水系溶媒中に添加する塩化合物について、当該水系溶媒中における塩化合物の濃度が0.1〜1000mMであるようにすることができる。ここで、塩化合物としては、例えば、アルカリハライド、アルカリ土類金属のハロゲン化物塩、及び遷移金属のハロゲン化物塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0026】
上記(2)の製造方法においては、例えば、水系溶媒中における、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じである、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じであるようにすることができる。
【0027】
上記(2)の製造方法において、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーは、例えば、下記一般式(I)及び/又は(II)で示されるものを用いることができる。
【0028】
【化5】

【0029】
〔一般式(I)及び(II)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(I)及び(II)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0030】
また、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、例えば、下記一般式(VII)及び/又は(VIII)で示されるものを用いることができる。
【0031】
【化6】

【0032】
〔一般式(VII)及び(VIII)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(VII)及び(VIII)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0033】
上記(2)の製造方法において、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーは、例えば、下記一般式(III) 及び/又は(IV)で示されるものを用いることができる。
【0034】
【化7】

【0035】
〔一般式(III)及び(IV)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(III)及び(IV)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【0036】
また、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、例えば、下記一般式(V)及び/又は(VI)で示されるものを用いることができる。
【0037】
【化8】

【0038】
〔一般式(V)及び(VI)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(V)及び(VI)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体(秩序だった微細構造を有する構造体)、特に、規則的な共連続様のチャネル構造を有する構造体を、ブロックコポリマーの自己組織化と、水系溶媒中における相分離を利用して、直接的かつ簡便に製造する方法を提供することができる。当該製造方法により得られる微細相分離構造体は、例えば、DDS用の薬物担体などに代表される生体材料のほか、ナノフィルター材料(特に薄膜状の多孔体とした場合)、電極コーティング材料、セパレータ等への利用が可能であり、また微粒子状とする場合には異方性チャネルを持つ微粒子としての応用が考えられ、電子ペーパーやメタマテリアルの新素材としての用途も期待できる点で、付加価値が高く、極めて有用性に優れたものである。
【0040】
さらに、本発明によれば、水系溶媒中及び室温下という環境負荷の低い温和な条件下において、簡便な手法により、微細相分離構造体を製造可能であるため、得られた微細相分離構造体は、上述した生体材料等としての応用のみならず、環境調和型の高機能材料として極めて高い実用性及び将来性等を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の微細相分離構造体の一実施例(10mM NaCl添加)を示す図である。図中、真ん中・下の図は、得られた微細相分離構造体の構造を示す概略図であり、左側の図は、当該概略図の構造の水平方向の断面に相当する断面(断面1)のTEM像であり、右側の図は、当該概略図の構造の垂直方向の断面に相当する断面(断面2)のTEM像である。
【図2】本発明の微細相分離構造体の一実施例(50mM NaCl添加)を示す図であり、得られた微細相分離構造体の断面のTEM像である。
【図3】本発明の比較例としての構造体の一例(0mM NaCl)を示す図である。
【図4】本発明の微細相分離構造体の一実施例(10mM NaCl添加、遠心操作後架橋)を示す図であり、得られた微細相分離構造体の断面のTEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。なお、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
【0043】

1.本発明の概要
本発明は、水系溶媒中(例えば生理条件に近いバッファー溶液中)において、直接的かつ簡便に、ブロックコポリマーの自己組織化を利用した、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体(秩序だった微細構造を有する構造体)を製造する方法等に関する。当該微細相分離構造体は、相分離構造として、例えば、親水性セグメント(親水性ブロック部分)由来のチャネル構造(シリンダー状などのいわゆる連通構造)が、六方最密充填などの規則性の高い共連続様の構造として存在し、かつ一方向に配向している様な構造を有するものが挙げられ(例えば図1参照)、全体としては塊状又は微粒子状等の構造体として得られるものである。
【0044】
本発明の微細相分離構造体は、例えば、PEGセグメントを有する荷電性ポリマー(カチオン性及びアニオン性ポリマー)の水溶液と、PEGセグメントを有さない荷電性ポリマー(カチオン性又はアニオン性ポリマー)の水溶液とを混合し、当該混合後又は当該混合時に水溶液中に塩化合物を適当な濃度で添加することで製造することができ、当該製造工程は、室温下で且つ短時間(例えば1ステップかつ数分間)で行うことができる。当該製造時には、静電相互作用によるポリイオンコンプレックス(PIC)形成(静電結合による分子集合体形成)が駆動力となり、また、分子集合構造の制御(ポリイオンコンプレックスの構造制御)を行うことができる。特に、製造条件として、混合する両ポリマー(カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマー)の荷電比が実質的に同じでないようにし、かつ、当該混合後又は当該混合時に水溶液中に塩化合物を適当な濃度で添加することで、得られる構造体を、秩序だった微細構造を有する構造体(規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体)となるように制御することができる。
本発明において、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体とは、具体的には、規則的な共連続様の微細なチャネル構造を有する構造体ということができる。
【0045】

2.微細相分離構造体及びその製造方法
本発明に係る規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体の製造方法は、前述した通り、水系溶媒中で、(i) 非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加するか、又は、(ii) 非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加することを特徴とする製造方法である。
【0046】
なお、本発明は、当該製造方法により得られる規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体、並びに、当該微細相分離構造体を製造するための(i) 非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの使用、又は(ii) 非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの使用も包含するものである。
【0047】
上記各ブロックコポリマー中の非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントに関して、「非荷電」とは、当該セグメントが全体として中性であることを意味する。例えばセグメントが正及び負の電荷を有さない場合が挙げられる。また、セグメントが正又は負の荷電を分子内に有する場合であっても、局所的な実効電荷密度が高くなく、静電結合に基づく自己組織化による構造体の形成を妨げない程度にセグメント全体の荷電が中和されている場合も、「非荷電」に該当する。また、「親水性」とは、水系溶媒に対して溶解性を示すことを意味する。
【0048】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとしては、限定はされないが、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、ポリ(2−イソプロピル−2−オキサゾリン)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)及びポリ(2−メタクロイルオキシエチルホスホリルコリン)からなる群より選ばれる水溶性ポリマーに由来するものが好ましく挙げられ、中でも、PEGに由来するものがより好ましい。当該非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントは親水性であることから、本発明の微細相分離構造体に生体適合性を付与することもできる。なお、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントは、本発明の微細相分離構造体においては、前述したチャネル構造(連通構造)部分に存在することになるため、例えば、当該セグメントにイオン導電性を示し得るポリマー鎖セグメントを用いた場合は、本発明の微細相分離構造体は導電性材料としての応用も可能である。さらに、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントをブロックコポリマーから分離できるような構造にしてある場合(特にカチオン性又はアニオン性ポリマー鎖セグメントとのリンカー部分が分解又は開裂可能なように設計してある場合)は、例えば、本発明の微細相分離構造体が得られた後に、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントを分離する(構造体全体から間引く)ことにより、チャネル構造内を空隙にした微細相分離構造体を得ることができる。このような構造体は、物質透過性を有する機能性材料や、多孔質材料として種々の用途に利用することができる。
【0049】
なお、本発明においては、上述したカチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマー、及びアニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントも含むブロックコポリマーであってもよいし、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントを含まないポリマー(ホモポリマー等)であってもよく、特に限定はされない。
上述した非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーにおいて、アニオン性のポリマー鎖セグメントとしては、側鎖にアニオン性基を有するポリマーに由来するものであればよく、限定はされないが、例えば、側鎖にアニオン性基を有するポリペプチドに由来するものが好ましく挙げられる。また、上述した非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーにおいて、カチオン性のポリマー鎖セグメントとしては、側鎖にカチオン性基を有するポリマーに由来するものであればよく、限定はされないが、例えば、側鎖にカチオン性基を有するポリペプチドに由来するものが好ましく挙げられる。
【0050】
より具体的に、本発明の製造方法において用いる、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーとしては、例えば、下記一般式(I)及び/又は(II)で示されるものが好ましく挙げられる。
【0051】
【化9】

【0052】
ここで、一般式(I)及び(II)の構造式中、繰り返し単位数(重合度)が「m」のセグメントがPEG由来の非荷電性親水性ポリマー鎖セグメント(以下、PEGセグメント)であり、繰り返し単位数が「n−y」の部分と「y」の部分とを合わせたセグメントがポリアニオン由来のアニオン性ポリマー鎖セグメント(以下、ポリアニオンセグメント)である。 一般式(I)及び(II)中、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表す。直鎖もしくは分枝のC1-12としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、デシル、ウンデシル等を挙げることができる。また置換された場合の置換基としては、アセタール化ホルミル基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-7アシルアミド基、同一もしくは異なるトリ−C1-6アルキルシロキシ基、シロキシ基又はシリルアミノ基を挙げることができる。ここで、アセタール化とは、ホルミルのカルボニルと、例えば、炭素数1〜6個のアルカノールの2分子又は炭素原子数2〜6個の分岐していてもよいアルキレンジオールとの反応によるアセタール部の形成を意味し、当該カルボニル基の保護方法でもある。例えば、置換基がアセタール化ホルミル基であるときは、酸性の温和な条件下で加水分解して他の置換基であるホルミル基(−CHO:又はアルデヒド基)に転化できる。
【0053】
一般式(I)及び(II)中、L及びLは、連結基を表す。具体的には、Lは−(CH−NH−(ここで、bは1〜5の整数である)であることが好ましく、Lは−(CH−CO−(ここで、cは1〜5の整数である)であることが好ましい。
一般式(I)及び(II)中、R2a、R2b、R2c及びR2dは、それぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表す。R2a及びR2bのいずれもがメチレン基の場合はポリ(アスパラギン酸誘導体)に相当し、エチレン基の場合はポリ(グルタミン酸誘導体)に相当し、また、R2c及びR2dのいずれもがメチレン基の場合はポリ(アスパラギン酸誘導体)に相当し、エチレン基の場合はポリ(グルタミン酸誘導体)に相当する。これらの一般式中、R2a及びR2b(R2b及びR2a)がメチレン基及びエチレン基の両者を表す場合、及びR2c及びR2d(R2d及びR2c)がメチレン基及びエチレン基の両者を表す場合、アスパラギン酸誘導体およびグルタミン酸誘導体の反復単位は、それぞれブロックを形成して存在するか、あるいはランダムに存在できる。
【0054】
一般式(I)及び(II)中、Rは、水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表す。具体的には、Rは、アセチル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましい。
一般式(I)及び(II)中、Rは水酸基、オキシベンジル基、−NH−(CH−X基又は開始剤残基を表す。ここで、aは1〜5の整数であり、Xは、一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の1種類又は2種類以上を含むアミン化合物残基、又は、アミンでない化合物残基であることが好ましい。さらには場合により、Rが−NH−R(ここで、Rは未置換又は置換された直鎖又は分枝のC1-20アルキル基を表す)であることが好ましい。
【0055】
一般式(I)及び(II)中、mは5〜2,000の整数であり、5〜270の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜100の整数である。また、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、n及びyは、5〜300の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜100の整数である。但し、yはnより大きくないものとする。
一般式(I)及び(II)における各繰り返し単位は、記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。特に、ポリアニオンセグメント中における各繰り返し単位についてのみ、上記の通りランダムな順で存在し得ることが好ましい。
【0056】
一般式(I)及び(II)で示されるブロックコポリマーの分子量(Mw)は、限定はされないが、3,000〜30,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜20,000である。また、個々のセグメントについては、PEGセグメントの分子量(Mw)は、500〜15,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜5,000であり、ポリアニオンセグメントの分子量(Mw)は、全体で500〜50,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜20,000である。
【0057】
一般式(I)及び(II)で示されるブロックコポリマーの製造方法は、限定はされないが、例えば、R1aO−又はR1bO−とPEG鎖のブロック部分とを含むセグメント(PEGセグメント)を予め合成しておき、このPEGセグメントの片末端(R1aO−又はR1bO−と反対の末端)に、所定のモノマーを順に重合し、その後必要に応じて側鎖をアニオン性基を含むように置換又は変換する方法、あるいは、上記PEGセグメントと、アニオン性基を含む側鎖を有するブロック部分とを予め合成しておき、これらを互いに連結する方法などが挙げられる。当該製法における各種反応の方法及び条件は、常法を考慮し適宜選択又は設定することができる。上記PEGセグメントは、例えば、WO 96/32434号公報、WO 96/33233号公報及びWO 97/06202号公報等に記載のブロック共重合体のPEGセグメント部分の製法を用いて調製することができる。
【0058】
一般式(I)及び(II)で示されるブロックコポリマーの、より具体的な製造方法としては、例えば、末端にアミノ基を有するPEGセグメント誘導体を用いて、そのアミノ末端に、β-ベンジル-L-アスパルテート(BLA)及びNε-Z-L-リシン等の保護アミノ酸のN-カルボン酸無水物(NCA)を重合させてブロックコポリマーを合成し、その後、各セグメントの側鎖が前述したアニオン性基を有する側鎖となるように置換又は変換する方法が好ましく挙げられる。
【0059】
本発明において、一般式(I)及び(II)で示されるブロックコポリマーの具体例としては、例えば、下記式で示されるブロックコポリマー(PEG-P(Asp))等が好ましく挙げられる。
【0060】
【化10】

【0061】
PEG-P(Asp)としては、PEGセグメントの分子量(MW):2,000,ポリアニオンセグメントを示すP(Asp)のユニット数(m):70又は75であるものが特に好ましい。なお、上記式中、x及びyはそれぞれ上記ユニット数(m)に対する各繰り返し単位の存在割合を示す(例えば、50%の場合は0.50)。
【0062】
また、本発明の製造方法において用いる、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーとしては、例えば、下記一般式(III)及び/又は(IV)で示されるものが好ましく挙げられる。
【0063】
【化11】

【0064】
ここで、一般式(III)及び(IV)の構造式中、繰り返し単位数(重合度)が「m」のセグメントがPEG由来の非荷電性親水性ポリマー鎖セグメント(PEGセグメント)であり、繰り返し単位数が「n−y−z」の部分と「y」の部分と「z」の部分とを合わせたセグメントがポリカチオン由来のカチオン性ポリマー鎖セグメント(以下、ポリカチオンセグメント)である。
【0065】
一般式(III)及び(IV)中、R1a及びR1bは、それぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表す。直鎖もしくは分枝のC1-12としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、デシル、ウンデシル等を挙げることができる。また置換された場合の置換基としては、アセタール化ホルミル基、シアノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ基、C1-6アルコキシカルボニル基、C2-7アシルアミド基、同一もしくは異なるトリ−C1-6アルキルシロキシ基、シロキシ基又はシリルアミノ基を挙げることができる。ここで、アセタール化とは、ホルミルのカルボニルと、例えば、炭素数1〜6個のアルカノールの2分子又は炭素原子数2〜6個の分岐していてもよいアルキレンジオールとの反応によるアセタール部の形成を意味し、当該カルボニル基の保護方法でもある。例えば、置換基がアセタール化ホルミル基であるときは、酸性の温和な条件下で加水分解して他の置換基であるホルミル基(−CHO:又はアルデヒド基)に転化できる。
【0066】
一般式(III)及び(IV)中、L及びLは、連結基を表す。具体的には、Lは−(CH−NH−(ここで、bは1〜5の整数である)であることが好ましく、Lは−(CH−CO−(ここで、cは1〜5の整数である)であることが好ましい。
一般式(III)及び(IV)中、R2a、R2b、R2c及びR2dは、それぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表す。R2a及びR2bのいずれもがメチレン基の場合はポリ(アスパラギン酸誘導体)に相当し、エチレン基の場合はポリ(グルタミン酸誘導体)に相当し、また、R2c及びR2dのいずれもがメチレン基の場合はポリ(アスパラギン酸誘導体)に相当し、エチレン基の場合はポリ(グルタミン酸誘導体)に相当する。これらの一般式中、R2a及びR2b(R2b及びR2a)がメチレン基及びエチレン基の両者を表す場合、及びR2c及びR2d(R2d及びR2c)がメチレン基及びエチレン基の両者を表す場合、アスパラギン酸誘導体およびグルタミン酸誘導体の反復単位は、それぞれブロックを形成して存在するか、あるいはランダムに存在できる。
【0067】
一般式(III)及び(IV)中、Rは、水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表す。具体的には、Rは、アセチル基、アクリロイル基又はメタクリロイル基であることが好ましい。
一般式(III)及び(IV)中、Rは水酸基、オキシベンジル基、−NH−(CH−X基又は開始剤残基を表す。ここで、aは1〜5の整数であり、Xは、一級、二級、三級アミン、四級アンモニウム塩又はグアニジノ基の内の1種類又は2種類以上を含むアミン化合物残基、又は、アミンでない化合物残基であることが好ましい。さらには場合により、Rが−NH−R(ここで、Rは未置換又は置換された直鎖又は分枝のC1-20アルキル基を表す)であることが好ましい。
【0068】
一般式(III)及び(IV)中、R5a、R5b、R5c及びR5dは、それぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、−NH−(CH−X基を表す。ここで、aは1〜5の整数であり、Xは、一級、二級、三級アミン、四級アンモニウム塩又はグアニジノ基の内の1種類又は2種類以上を含むアミン化合物残基、又は、アミンでない化合物残基であることが好ましい。
5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NH(但しeは0〜5の整数)である)であるものが、少なくとも2つ以上存在することが好ましく、上記総数の50%以上存在することがより好ましく、上記総数の85%以上存在することがさらに好ましい。
また、R5a、R5b、R5c及びR5dのすべて又は一部が、−NH−(CH−X基(ここで、aは2であり、Xは(NH(CH−NH(但しeは1)である)ことが好ましい。
【0069】
さらに、R並びにR5a、R5b、R5c及びR5dの例示として上記した−NH−(CH−X基において、Xが下記の各式で表される基から選ばれるものである場合が特に好ましい。
【0070】
【化12】

【0071】
ここで、上記の各式中、Xは、水素原子又はC1-6アルキル基もしくはアミノC1-6アルキル基を表し、R7a、R7b及びR7cは、それぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、d1、d2及びd3は、それぞれ独立して1〜5の整数を表し、e1、e2及びe3は、それぞれ独立して1〜5の整数を表し、fは、0〜15の整数を表し、gは0〜15の整数を表し、R8a及びR8bは、それぞれ独立して水素原子又は保護基を表す。ここで、当該保護基は、通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基及びトリフルオロアセチル基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。
一般式(III)及び(IV)中、R6a及びR6bは、それぞれ独立して水素原子、-C(=NH)NH2、又は保護基であり、ここで保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基、及びトリフルオロアセチル基からなる群より選ばれる基であることが好ましい。また、一般式(III)及び(IV)中、tは2〜6の整数であることが好ましく、より好ましくは3又は4である。
【0072】
一般式(III)及び(IV)中、mは5〜2,000の整数であり、5〜270の整数であることが好ましく、より好ましくは10〜100の整数である。また、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数である。nは、5〜300の整数であることが好ましく、より好ましくは0又は10〜100の整数である。y及びzは、0又は5〜300の整数であることが好ましく、より好ましくは0又は10〜100の整数である。但し、yとzとの合計(y+z)は、nより大きくないものとする。
一般式(III)及び(IV)における各繰り返し単位は、記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。特に、ポリカチオンセグメント中における各繰り返し単位についてのみ、上記の通りランダムな順で存在し得ることが好ましい。
【0073】
一般式(III)及び(IV)で示されるブロックコポリマーの分子量(Mw)は、限定はされないが、3,000〜40,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜25,000である。また、個々のセグメントについては、PEGセグメントの分子量(Mw)は、500〜15,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜5,000であり、ポリカチオンセグメントの分子量(Mw)は、全体で500〜50,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜30,000である。
【0074】
一般式(III)及び(IV)で示されるブロックコポリマーの製造方法は、限定はされないが、例えば、R1aO−又はR1bO−とPEG鎖のブロック部分とを含むセグメント(PEGセグメント)を予め合成しておき、このPEGセグメントの片末端(R1aO−又はR1bO−と反対の末端)に、所定のモノマーを順に重合し、その後必要に応じて側鎖をカチオン性基を含むように置換又は変換する方法、あるいは、上記PEGセグメントと、カチオン性基を含む側鎖を有するブロック部分とを予め合成しておき、これらを互いに連結する方法などが挙げられる。当該製法における各種反応の方法及び条件は、常法を考慮し適宜選択又は設定することができる。上記PEGセグメントは、例えば、WO 96/32434号公報、WO 96/33233号公報及びWO 97/06202号公報等に記載のブロック共重合体のPEGセグメント部分の製法を用いて調製することができる。
【0075】
一般式(III)及び(IV)で示されるブロックコポリマーの、より具体的な製造方法としては、例えば、末端にアミノ基を有するPEGセグメント誘導体を用いて、そのアミノ末端に、β-ベンジル-L-アスパルテート(BLA)及びNε-Z-L-リシン等の保護アミノ酸のN-カルボン酸無水物(NCA)を重合させてブロックコポリマーを合成し、その後、各セグメントの側鎖が前述したカチオン性基を有する側鎖となるように、ジエチレントリアミン(DET)等で置換又は変換する方法が好ましく挙げられる。
【0076】
本発明において、一般式(III)及び(IV)で示されるブロックコポリマーの具体例としては、例えば、下記式で示されるブロックコポリマー(PEG-P(Asp-AP))等が好ましく挙げられる。
【0077】
【化13】

【0078】
PEG-P(Asp-AP)としては、PEGセグメントの分子量(MW):2,000,ポリカチオンセグメントを示すP(Asp-AP)のユニット数(m):70又は75であるものが特に好ましい。なお、上記式中、x及びyはそれぞれ上記ユニット数(m)に対する各繰り返し単位の存在割合を示す(例えば、50%の場合は0.50)。
【0079】
また、本発明の製造方法において用いる、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとしては、例えば、下記一般式(V)及び/又は(VI)で示されるものが好ましく挙げられる。なお、一般式(V)及び(VI)に関する説明については、前述した一般式(I)及び(II)に関する説明(但しPEGセグメントに関する説明は除く)が、適宜同様に適用できる。
【0080】
【化14】

【0081】
なお、当該アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、ホモポリマーであってもブロックコポリマーであってもよく、限定はされない。例えば、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントを含むブロックコポリマーであってもよく、具体的には、前述した一般式(I)及び(II)に示されるブロックコポリマー等であってもよい。
【0082】
本発明において、一般式(V)及び(VI)で示されるポリマーの具体例としては、例えば、下記式で示されるブロックコポリマー(Homo-P(Asp))等が好ましく挙げられる。
【0083】
【化15】

【0084】
Homo-P(Asp)としては、ポリアニオンセグメントを示すP(Asp)のユニット数(m):70又は82であるものが特に好ましい。なお、上記式中、x及びyはそれぞれ上記ユニット数(m)に対する各繰り返し単位の存在割合を示す(例えば、50%の場合は0.50)。
【0085】
また、本発明の製造方法において用いる、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとしては、例えば、下記一般式(VII)及び/又は(VIII)で示されるものが好ましく挙げられる。なお、一般式(VII)及び(VIII)に関する説明については、前述した一般式(III)及び(IV)に関する説明が、適宜同様に適用できる。
【0086】
【化16】

【0087】
なお、当該カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーは、ホモポリマーであってもブロックコポリマーであってもよく、限定はされない。例えば、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントを含むブロックコポリマーであってもよく、具体的には、前述した一般式(III)及び(IV)に示されるブロックコポリマー等であってもよい。
本発明において、一般式(VII)及び(VIII)で示されるポリマーの具体例としては、例えば、下記式で示されるブロックコポリマー(Homo-P(Asp-AP))等が好ましく挙げられる。
【0088】
【化17】

【0089】
Homo-P(Asp-AP)としては、ポリカチオンセグメントを示すP(Asp-AP)のユニット数(m):70又は82であるものが特に好ましい。なお、上記式中、x及びyはそれぞれ上記ユニット数(m)に対する各繰り返し単位の存在割合を示す(例えば、50%の場合は0.50)。
【0090】
本発明の製造方法において、水系溶媒中で混合する上記各ポリマーは、それぞれ予め水溶液状態にしたものを用いることが好ましい。
本発明の製造方法に用いられる水系溶媒としては、限定はされず、例えば生理条件下で用いられるバッファー溶液等が好ましく、具体的には、HEPES(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、Tris、リン酸塩等を含むバッファー溶液が好ましい。
また上記水系溶媒のpHは、限定はされないが、例えば5.5〜9.5が好ましく、より好ましくは6.5〜8.5である。
【0091】
本発明の製造方法においては、水系溶媒中で混合する、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマー(a1)と、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマー(a2)との総電荷比(すなわち「(a2の総電荷)/(a1の総電荷)」の値)が1でないことが重要である。当該総電荷比(a2/a1)は、好ましく、例えば0.7〜1.2(ただし1は除く)であり、より好ましくは0.9〜1.1(ただし1は除く)である。また、本発明の製造方法においては、水系溶媒中で混合する、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマー(b1)と、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマー(b2)との総電荷比(すなわち「(b2の総電荷)/(b1の総電荷)」の値)が1でないことが重要である。当該総電荷比(b2/b1)は、好ましく、例えば0.7〜1.2(ただし1は除く)であり、より好ましくは0.9〜1.1(ただし1は除く)である。総電荷比が上記範囲内となるように混合することで、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造を容易に得ることができる。
【0092】
本発明の製造方法においては、上述のように各ポリマーの総電荷比を制御するとともに、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じとなるようにすることが好ましい。また、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じとなるようにすることが好ましい。
【0093】
さらに本発明の製造方法においては、上述のように各ポリマーの総電荷比等を制御して各ポリマーを水系溶媒中で混合するとともに、当該混合後又は当該混合時に水系溶媒中に塩化合物を添加することが重要である。具体的には、水系溶媒中における塩化合物の濃度が0.1〜1000mMとなるように、塩化合物を添加することが好ましく、より好ましくは1〜300mM、さらに好ましくは5〜100mMである。塩化合物の濃度を上記範囲内となるように水系溶媒中に添加することで、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造を容易に得ることができる。
【0094】
ここで、水系溶媒中に添加する塩化合物としては、特に限定はされないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び臭化ナトリウム等のアルカリハライド、塩化マグネシウム等のアルカリ土類金属のハロゲン化物塩、並びに、塩化マンガン、塩化鉄及び塩化銅等の遷移金属のハロゲン化物塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく挙げられ、中でもアルカリハライドがより好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。
【0095】
本発明の製造方法においては、水系溶媒中で混合する上述した各ポリマーの濃度は、限定はされないが、いずれも、0.1〜100 mg/mLであることが好ましく、より好ましくは0.5〜10 mg/mLである。
【0096】
本発明の製造方法において、上述した各ポリマー(これらは、予め溶液状態で取り扱うことが好ましい。)の水系溶媒への添加方法は、限定はされず、それぞれ、一括添加であってもよいし、逐次添加であってもよい。また、添加後の混合時間及び混合速度についても、特に限定はされないが、例えば、混合時間:1分〜10分(好ましくは2〜8分、より好ましくは2〜3分)、混合速度:500〜5,000 rpmであることが好ましい。さらに、本発明の製造方法の温度条件については、特に制限はされず、室温下(例えば、20〜30℃程度、好ましくは25℃程度)で行うことができる。
【0097】
本発明の製造方法により得られた微細相分離構造体の単離及び精製は、常法により、水系溶媒中から回収することができる。典型的な方法としては、遠心分離、限外濾過法、ダイアフィルトレーション、透析方法等が挙げられる。
また本発明の製造方法においては、得られた微細相分離構造体を架橋することもできる。架橋剤としては、公知の各種水溶性縮合剤(例えば、1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide (EDC)、グルタルアルデヒド)等を用いることができる。
【0098】
本発明の製造方法により得られる微細相分離構造体は、その形状は微粒子状であってもよいし塊状であってもフィルム上であってもよく、限定はされない。また、外部に対して閉鎖系である構造体には限定はされず、外部に対して開放系である構造体も含まれていてもよい(特に微粒子状の場合)。微粒子状の場合、動的光散乱測定法(DLS)又はレーザー回折法による平均粒径が、例えば、1nm〜100μmであることが好ましく、より好ましくは10nm〜30μmである。また、当該微細相分離構造体における各チャネル構造(シリンダー状などのいわゆる連通構造)については、その内径サイズは、限定はされないが、例えば、1〜100nm程度であることが好ましく、より好ましくは5〜50nm、さらに好ましくは10〜20nmである。
【0099】
本発明の製造方法により得られる微細相分離構造体は、上述したその特徴的な構造を応用できる各種用途において、当該用途に用い得る組成物の構成要素として用いることができる。また、本発明においては、これら各種組成物を含むキットについても提供され得る。本発明の微細相分離構造体は、具体的には、例えば、DDS用の薬物担体などに代表される生体材料のほか、ナノフィルター材料(特に薄膜状の多孔体とした場合)、電極コーティング材料、セパレータ等への利用が可能であり、また微粒子状とする場合には異方性チャネルを持つ微粒子としての応用が考えられ、電子ペーパーやメタマテリアルの新素材としての利用も可能である。
本発明の微細相分離構造体は、水系溶媒中及び室温下という環境負荷の低い温和な条件下において、簡便な手法(1ステップかつ数分間)により得られるものであるため、環境調和型の高機能材料として実用性及び将来性等に優れたものである。
【0100】

以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0101】
1.各ポリマー及びその合成方法
下記の手順により、ポリエチレングリコール(PEG)部分とポリアスパラギン酸部分を含むブロックコポリマー(PEG-P(Asp))、及び、アスパラギン酸側鎖に1級アミノ基を導入したホモポリアスパルタミド(Homo-P(Asp-AP))を合成した。
ここで、PEG-P(Asp)をポリアニオンとして、Homo-P(Asp-AP)をポリカチオンとして利用した。
【0102】
・PEG-PBLA (PEG-poly(β-benzyl-L-aspartate))の重合・合成
MeO-PEG-NH2を0.1846g量りとり、ベンゼンとジクロロメタン(DCM)の混合溶媒に溶かし、凍結乾燥した。一晩乾燥した後、DCM 3mLに溶かした。一方、モノマーであるBLA-NCAをAr雰囲気下で2g量りとり、DCM 27mLとN,N-ジメチルホルムアミド(DMF) 3mLの混合溶媒に溶かした。NCAを溶かしたらすぐに、NCA溶液をPEG溶液に入れ、35℃で2日間反応させた。赤外線吸収スペクトル(IR)によりNCA由来のピークの消失を確認し、反応が終了したとみなした。次に、反応溶液をヘキサン 600 mLおよび酢酸エチル 400mLの混合溶液中に滴下し、再沈殿を行った。再沈殿した溶液を吸引濾過し、得られた白色の固体を減圧乾燥およびベンゼン凍結乾燥して回収した。
【0103】
・Homo-PBLA (poly(β-benzyl-L-aspartate))の重合・合成
開始剤のみ異なる以外は、上記PEG-PBLAとほぼ同じプロトコルで行った。n-ブチルアミン 0.1mLをDMF 0.9mLに分散させたものから、0.095mLをとりNCA溶液に加えて反応させた。
【0104】
・PEG-P(Asp)の合成
PEG-PBLAを100mg量りとり、アセトニトリル 3 mLに分散させた。0.5N NaOHaqを6mL滴下し、1時間反応させた後、水で1日×3回透析し、凍結乾燥して回収した。
【0105】
【化18】

【0106】
得られたPEG-P(Asp)は、1H NMR、サイズ排除クロマトグラフィーにより同定を行い、PIC(ポリイオンコンプレックス)としての微細相分離構造体の調製用ポリアニオン(重合度75)として用いた。以下の実験においては、これをPEG-P(Asp)(2-75)と表記した。
【0107】
・Homo-P(Asp-AP)の合成
Homo-PBLAを100mg量りとり、ベンゼン凍結乾燥した。NMP 5mLに溶かし、35℃で一晩撹拌して完全に溶解させた。一方、DAP 2.9mL(PBLA側鎖に対して50等量)をNMP 2.9mLに分散させておいた。両溶液を4℃まで下げた後、DAP溶液にPBLA溶液を滴下して、1時間反応させた。その後10℃以下に保ちながら20wt%の酢酸水溶液を14.5mL(DAPに対して2等量)加えて中和した。その後0.01 N HClaqで2時間×4回、水で1日×2回透析し、凍結乾燥して回収した。
【0108】
【化19】

【0109】
得られたHomo-P(Asp-AP)は、1H NMR、サイズ排除クロマトグラフィーにより同定を行い、PICとしての微細相分離構造体の調製用ポリカチオン(重合度82)として用いた。以下の実験では、これをHomo-P(Asp-AP)(82)と表記した。
【0110】
・その他の材料
1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide (EDC):DOJINDO製を用いた。
【0111】
2.PICとしての微細相分離構造体の調製
NaClを含まない10mM リン酸緩衝液(pH 7.4)に、ポリマー濃度が1mg/mLとなるようにPEG-P(Asp)(2-75)およびHomo-P(Asp-AP)(82)を溶解させた。これを、「総カチオン数/総アニオン数 = 1.05」となるようにするため、PEG-P(Asp)溶液4.0mL、Homo-P(Asp)溶液6.0mLを混合し、2分間撹拌を続けPIC溶液を調製した。この際、目視で白濁していることを確認し、PICが微粒子状に調製されていることを確認した。次に、最終濃度が0, 10, 50mMとなるようにNaClを含むリン酸緩衝液(それぞれ0, 20, 100mM NaCl含有)をそれぞれ10mL加え、25℃で12時間静置した。
【0112】
3.遠心操作によるPICの回収とその構造の固定
調製したPICに対し、使用したPEG-P(Asp)中のポリアスパラギン酸の側鎖のカルボン酸総数に対して10倍等量のEDC(10 mg/mLリン酸バッファー溶液5.6 mL)を加え、12時間静置してPICの固定を行った。これを、高速冷却遠心機(トミー精工社製 MX-300)を用いて3,000rpmで5分間遠心分離の操作を施し、遠沈管の底に沈め、上澄みを捨て同量の純水を補充する操作を3回繰り返し、洗浄と溶媒置換を行った。
次に、上記の操作の順序を変え、3,000rpmで5分間遠心分離操作を施した後にEDCを加え、12時間静置してPICの固定を行った。その後同様の手法で洗浄を施し、溶媒の置換を行った。
【0113】
4.透過型電子顕微鏡(TEM)による微粒子状のPICの内部構造観察
構造固定後のPICを純水中に回収した後に遠沈し、2%オスミウム酸水溶液を加えて固定及び染色を2時間行った後、アルコール上昇系列で脱水を行った。そしてEPON812樹脂に包埋し、熱硬化させた後、ミクロトームで厚さ50〜100nmほどの切片を切り出した。最後に酢酸ウラニウムおよび鉛染色液で染色を行い、TEMにより観察した。その結果、NaCl濃度が10mM及び50mMの時、得られた微粒子状のPICが内部に規則的な共連続様のチャネル構造を示すことが明らかとなった(図1、図2)。特に、10mM NaClとした場合には、微粒子内部に直径10〜20nm程度のシリンダー状のチャネル構造(連通構造)が六方最密充填したような共連続様の規則的な構造を有することが示された(図1中の白色部分;黒色部分はPIC由来の構造が染色された部分と考えられることから、この白色部分はPEGセグメント由来の部分と考えられる)。一方、NaCl濃度が0mMの場合には、ポリマーが密に詰まった秩序性の低い内部構造となっていることが明らかとなった(図3)。また、遠心操作後に架橋しても微細構造には影響がなく、同一構造(規則的な共連続様のチャネル構造)を持つ塊状の構造体として得られることが示された(図4)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水系溶媒中で、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合する、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加することにより得られる、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体。
【請求項2】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でない、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でないことを特徴とする、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
水系溶媒中における塩化合物の濃度が0.1〜1000mMである、請求項1又は2記載の構造体。
【請求項4】
塩化合物が、アルカリハライド、アルカリ土類金属のハロゲン化物塩、及び遷移金属のハロゲン化物塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
水系溶媒中における、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じである、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項6】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーが、下記一般式(I)及び/又は(II)で示されるものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造体。
【化20】

〔一般式(I)及び(II)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(I)及び(II)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項7】
カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーが、下記一般式(VII)及び/又は(VIII)で示されるものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構造体。
【化21】

〔一般式(VII)及び(VIII)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(VII)及び(VIII)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項8】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーが、下記一般式(III) 及び/又は(IV)で示されるものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構造体。
【化22】

〔一般式(III)及び(IV)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(III)及び(IV)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項9】
アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーが、下記一般式(V)及び/又は(VI)で示されるものである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の構造体。
【化23】

〔一般式(V)及び(VI)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(V)及び(VI)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項10】
微細相分離構造体が塊状、微粒子状又はフィルム状のものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項11】
前記微粒子は平均粒径が10 nm〜100μmである、請求項10記載の構造体。
【請求項12】
規則的な共連続様のチャネル構造を有するものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項13】
水系溶媒中で、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合する、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとを混合し、当該混合後又は当該混合時に前記溶媒中に塩化合物を添加することを特徴とする、規則的なパターン構造を有する微細相分離構造体の製造方法。
【請求項14】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でない、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーと、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーとの総電荷比が1でないことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
水系溶媒中における塩化合物の濃度が0.1〜1000mMである、請求項13又は14記載の方法。
【請求項16】
塩化合物が、アルカリハライド、アルカリ土類金属のハロゲン化物塩、及び遷移金属のハロゲン化物塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項13〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水系溶媒中における、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じである、又は、非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーの総イオン濃度と、アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーの総イオン濃度とが実質的に同じであることを特徴とする、請求項13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとアニオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーが、下記一般式(I)及び/又は(II)で示されるものである、請求項13〜17のいずれか1項に記載の方法。
【化24】

〔一般式(I)及び(II)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(I)及び(II)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項19】
カチオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーが、下記一般式(VII)及び/又は(VIII)で示されるものである、請求項13〜18のいずれか1項に記載の方法。
【化25】

〔一般式(VII)及び(VIII)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(VII)及び(VIII)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項20】
非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントとカチオン性のポリマー鎖セグメントとを含むブロックコポリマーが、下記一般式(III) 及び/又は(IV)で示されるものである、請求項13〜19のいずれか1項に記載の方法。
【化26】

〔一般式(III)及び(IV)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R5a、R5b、R5c及びR5dはそれぞれ独立して水酸基、オキシベンジル基、又はNH−(CH−X基を表し(ここで、aは1〜5の整数であり、Xはそれぞれ独立して一級、二級、三級アミン又は四級アンモニウム塩の内の一種類又は二種類以上を含むアミン化合物残基であるか、あるいはアミンでない化合物残基である)、R5aとR5bとの総数及びR5cとR5dとの総数のうち、−NH−(CH−X基(ここで、Xは(NH(CH−NHであり、eは1〜5の整数である)が少なくとも2つ以上存在し、R6a及びR6bはそれぞれ独立して水素原子又は保護基(ここで、保護基は通常アミノ基の保護基として用いられているZ基、Boc基、アセチル基又はトリフルオロアセチル基である)であり、tは2〜6の整数であり、mは5〜20,000の整数であり、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、zは0〜5,000の整数であり、y+zはnより大きくないものとし、また、一般式(III)及び(IV)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕
【請求項21】
アニオン性のポリマー鎖セグメントを含むポリマーが、下記一般式(V)及び/又は(VI)で示されるものである、請求項13〜20のいずれか1項に記載の方法。
【化27】

〔一般式(V)及び(VI)中、R1a及びR1bはそれぞれ独立して水素原子又は未置換もしくは置換された直鎖もしくは分枝のC1-12アルキル基を表し、L及びLは連結基を表し、R2a及びR2bはそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R及びRは水素原子、保護基、疎水性基又は重合性基を表し、nは2〜5,000の整数であり、yは0〜5,000の整数であり、yはnより大きくないものとし、また、一般式(V)及び(VI)における各繰り返し単位は記載の便宜上特定した順で示しているが、各繰り返し単位はランダムな順で存在することができる。〕

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57012(P2013−57012A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196335(P2011−196335)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 公益社団法人日本化学会「第63回コロイドおよび界面化学討論会講演要旨集」(2011年8月22日発行;該当ページ:350ページ(講演番号:P050))
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】