微細粒子、ならびにそれを含有する偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シートおよび偽造防止媒体
【課題】本発明は、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、上記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする微細粒子を提供することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】本発明は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、上記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする微細粒子を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細粒子による偽造防止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の偽造を防止するための偽造防止技術には、その用途から2つの側面が求められる。まず、一見するだけでは、その物品に偽造防止技術が付されていることを認識することができないこと、また、物品を使用する需要者が物品の安全性等の観点から正規品であることを確認する場合等に、容易に認証が行えることである。
【0003】
現在、多用されている偽造防止技術として、目視で真贋判定可能な透かし技術やホログラム等が挙げられる。これらの技術では、目視で確認できることから容易に認証が行えるという利点を有するが、さらなる偽造防止効果の向上への要求から新たな偽造防止技術の開発が望まれている。
【0004】
そこで、ルーペ等の簡易的な拡大器具を使用して観察することにより真贋判定を行う偽造防止技術が注目されている(特許文献1、特許文献2)。これらの技術では、目視で確認できる偽造防止技術と比べて、より高い偽造防止効果を発揮することができる。また、真贋判定に特殊な装置等を必要とせず簡易的に識別可能であるという利点を有する。
【0005】
このような認証をする際に拡大器具を必要とする偽造防止技術として、タガント粒子(追跡用添加物)と呼ばれる微細粒子を用いた技術が提案されている。タガント粒子を用いた偽造防止媒体では、個体によってタガント粒子の位置が異なるため、タガント粒子自体の確認が難しく、複製も困難となる。そのため、優れた偽造防止効果を発揮することが可能となり、また、個体の識別も可能となる。
【0006】
タガント粒子には、拡大して観察することにより識別可能な情報を有するものが知られており、例えば、文字、記号、標章等や特殊な形状を有するものや、特殊な色彩情報を有するものが挙げられる(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、より高いセキュリティー性を必要とする物品に対する偽造防止機能としては、不十分な場合があるといった問題があった。例えば、金属からなる微細粒子や色彩を有する微細粒子を用いる場合には、それらの微細粒子が有する色彩と、物品が有する色彩との色差により微細粒子が容易に発見されてしまう。
【0008】
また、色彩を有する微細粒子をインクに混ぜ合わせてインキ化すると、微細粒子に含まれる染料等の影響により本来のインクの色味が変化してしまうといった課題があった。また、紙やカード等の印刷媒体表面に、インキ化した微細粒子を印刷した場合、微細粒子と印刷媒体との色味が異なり、微細粒子の位置が容易に発見されてしまうという課題もあった。
【0009】
このように、容易に微細粒子を発見されてしまうと、模倣・複製される可能性が高まるため、一見するだけでは発見することができない微細粒子が求められている。
【0010】
さらに、媒体表面にインキ化した微細粒子を印刷した場合、微細粒子は任意の方向を向いているため、一部に識別情報が表示されている微細粒子を用いた場合、微細粒子において識別情報が表示されている部分が観察者側を向くとは限らず、表示した識別情報が認識出来なくなるといった課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−230228号公報
【特許文献2】特開2009−193069号公報
【特許文献3】特開2001−288698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、上記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする微細粒子を提供する。
【0014】
本発明によれば、微細粒子が透明性を有することにより、物品に含まれる微細粒子を認識することが困難であり、秘匿性に優れた微細粒子とすることができる。
さらに、透明性を有する上記微細粒子をインクに含有させて用いる際に、本来のインクの色味に影響を与えることがない。また、透明性を有する上記微細粒子を印刷媒体に固定・固着させて用いる際には、印刷媒体に表示されている模様や色彩等に上記微細粒子が同化して一体となるため、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子とすることができる。さらには、上記微細粒子が透明性を有していることにより、一部に識別情報を有する微細粒子を用いた際に、微細粒子において識別情報を有する部分が観察者側を向いていなくても、識別情報を認識することができる。
また、識別情報が拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいた識別が可能であることにより、容易に真贋判定を行うことができる。
【0015】
本発明は、上記微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インクを提供する。上記偽造防止用インクが透明性を有する微細粒子を含有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用インクを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性を有するため、インクの本来の色味を変えることがない。
【0016】
本発明は、上記微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用トナーを提供する。上記偽造防止用トナーが透明性を有する微細粒子を含有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用トナーを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性を有するため、トナーの本来の色味を変えることがない。
【0017】
本発明は、上記微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シートを提供する。これにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用シートを作製することが可能となる。
【0018】
本発明は、基底部と、上記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備える識別部とを有し、上記基底部および上記識別部が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする偽造防止用シートを提供する。これにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用シートを作製することが可能となる。
【0019】
本発明においては、上記微細粒子、または上記偽造防止用シートを有することを特徴とする偽造防止媒体を提供する。これにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を付与することが可能であり、また、容易に真贋判定することが可能な偽造防止媒体を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の微細粒子の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の微細粒子の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の微細粒子の他の例を示す模式図である。
【図4】本発明の微細粒子の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の偽造防止用シートの検査方法の一例を示す模式図である。
【図12】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略図である。
【図13】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略図である。
【図14】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略斜視図である。
【図15】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略斜視図である。
【図16】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図17】本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の微細粒子、偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シートおよび偽造防止媒体について詳細に説明する。
【0023】
I.微細粒子
本発明の微細粒子は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、上記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする。
【0024】
このような本発明の微細粒子は、透明性を有することにより、物品に含まれる微細粒子を認識することが困難であり、秘匿性に優れた微細粒子とすることができる。
さらに、上記微細粒子が透明性を有するため、インクに含有させて用いる際に、本来のインクの色味に影響を与えることがない。また、透明性を有する上記微細粒子を印刷媒体に固定・固着させて用いる際には、印刷媒体に表示されている模様や色彩等が上記微細粒子によって隠れてしまうことがないため、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子とすることができる。
さらには、上記微細粒子が透明性を有していることにより、一部に識別情報を有する微細粒子を用いた際に、微細粒子において識別情報を有する部分が観察者側を向いていなくても、識別情報を認識することができる。
また、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいた識別が可能であることにより、容易に真贋判定を行うことができる。
以下、本発明の微細粒子における各構成について説明する。
【0025】
A.透明性
本発明の微細粒子は透明性を有するものである。
本発明における透明性としては、本発明の微細粒子が所望の機能を発揮できる程度の透明性を有していれば特に限定されるものではなく、具体的には、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。なかでも、30%以上であることが好ましく、特に、50%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7150に準拠して測定した値である。
【0026】
B.材料
本発明の微細粒子は、樹脂製の材料を含むものである。以下、本発明の微細粒子に用いられる材料について説明する。
【0027】
1.樹脂製の材料
樹脂製の材料としては、上述した透明性を有する微細粒子を作製できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクレート樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂等の光硬化性樹脂材料、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂材料、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂材料、感光性樹脂材料を挙げることができる。また、感光性樹脂材料としては、ポジ型感光性樹脂およびネガ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。上述した材料の中でも、光硬化性樹脂材料、感光性樹脂材料が好ましく、特に光硬化性樹脂材料が好ましい。光硬化性樹脂材料を用いることにより、形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子を、高精細に形成することが可能となるからである。
【0028】
本発明の微細粒子の屈折率は、上記微細粒子を構成する材料の種類および配合量等によって異なるものであり、本発明においては、微細粒子が所望の偽造防止機能を実現できる程度であれば特に限定されるものではない。なお、本発明の微細粒子の屈折率は、上記微細粒子の用途等に応じて適宜調整されるものである。
【0029】
例えば、本発明の微細粒子を透明樹脂中に分散させた微細粒子含有層を形成した場合、微細粒子と透明樹脂との屈折率が同じであると、微細粒子が有する識別情報を視認することができなくはなるが、微細粒子の樹脂製の材料と透明樹脂の屈折率の差は小さい方が、微細粒子が有する形状に基づいて識別可能な識別情報は認識されにくくなる。そのため、秘匿性を高めたい場合には、微細粒子の樹脂製の材料と透明樹脂との屈折率の差は小さい方が好ましい。具体的には、微細粒子の樹脂製の材料と透明樹脂との屈折率の差が0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
【0030】
2.機能性材料
本発明に用いられる樹脂製の材料は、機能性材料を含有することが好ましい。微細粒子に簡便に形態以外の識別情報を付与できるため、真贋判定を容易に行うことができるからである。
機能性材料としては、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料等が挙げられる。中でも、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料等が好適に用いられる。簡易器具を用いて識別が可能であり、また発光、光の反射および吸収による識別が可能であることから、真贋判定が容易となるからである。
さらに、本発明の微細粒子を、例えば透明樹脂中に分散させた微細粒子含有層を形成した場合、微細粒子は樹脂製の材料を含むので、微細粒子と透明樹脂との屈折率の差が小さいと、微細粒子と透明樹脂の界面が見えにくくなり、微細粒子の識別情報を認識することが困難となってしまう場合がある。このような場合においても、上記微細粒子が機能性材料を含有することにより、識別情報を認識することが可能となる。
以下、各機能性材料について説明する。
【0031】
(a)紫外線発光材料
紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種類以上で用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0032】
このような紫外線発光材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0033】
微細粒子中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0034】
(b)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0035】
このような赤外線発光材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0036】
微細粒子中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0037】
(c)赤外線反射材料
赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0038】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0039】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0040】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0041】
このような赤外線反射材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0042】
微細粒子中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0043】
(d)赤外線吸収材料
赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0044】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0045】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂材料や感光性樹脂材料を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0046】
このような赤外線吸収材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0047】
微細粒子中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過し、上述した透明性を有する微細粒子とすることができるからである。
【0048】
(e)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズの微細粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0049】
量子ドット材料は、単独の半導体化合物からなるものであっても、2種類以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0050】
量子ドット材料のコアとなる材料として、具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0051】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。中でも、作製の容易性、可視領域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0052】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0053】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0054】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0055】
また、量子ドットの形状としては特に限定されるものではなく、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0056】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0057】
微細粒子中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0058】
(f)磁性材料
磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0059】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明の微細粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有する微細粒子と、磁性材料を含有しない微細粒子とに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有する微細粒子では共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しない微細粒子では共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することにより微細粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0060】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す微粒子を例示することができる。
【0061】
このような磁性材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有した際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0062】
微細粒子中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではないが、具体的には、1質量%〜30質量%程度であることが好ましく、特に5質量%〜20質量%程度であることが好ましい。磁性材料の含有量が上記範囲内より少ない場合、識別が困難となる可能性があり、上記範囲内より多い場合、微細粒子表面へ立体形状を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0063】
(g)その他
本発明に用いられる樹脂製の材料には、上述した機能性材料以外にも、用途に応じてその他の機能性材料が含有されてもよい。
【0064】
C.識別情報
次に、本発明における識別情報について説明する。本発明の識別情報は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能なものである。
本発明において、「拡大することにより観察することが可能である」とは、目視では観察することが困難であり、拡大手段を用いて拡大した場合に観察することができることを指す。また、本発明において「形状に基づいて識別することが可能な識別情報」とは、固有の形状を有する情報を指すものであり、例えば色彩等の無形の情報のみからなる情報を含まないものとする。
【0065】
このような識別情報の種類としては、形状に基づいて識別可能なものであればよく、微細粒子の外形形状および微細粒子表面に形成される凹凸形状を挙げることができる。
以下、各識別情報についてそれぞれ説明する。
【0066】
1.外形形状
本発明の微細粒子における外形形状としては、拡大して観察することで識別することが可能であれば特に限定されるものではない。本発明の微細粒子における外形形状は、平面立体形状であってもよく、曲面立体形状であっても良い。
以下、それぞれの形状に分けて説明する。
【0067】
(a)平面立体形状
平面立体形状は、表面および裏面が平面で構成される形状、または、平面のみで構成される形状を指す。
【0068】
図1(a)、(b)、(c)、(d)は本発明の微細粒子の平面立体形状の一例を示した概略斜視図である。
図1(a)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6が平面であり、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(円柱)を有している。また、図1(b)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6が平面であり、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(四角柱)を有している。
図1(c)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6が平面であり、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(D・N・Pの立体形状)を有している。
図1(d)に示す微細粒子1は、平面のみで構成され、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(四角錐)を有している。
【0069】
このように、本発明において平面立体形状2とは、図1(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、表面5および裏面6が平面である形状、および平面のみで構成される形状を含む。
平面立体形状としては、上記のような形状であれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜決定される。例えば、図1に示すような柱体や錐体、また、図示はしないが截頭錐体等が挙げられる。
【0070】
このような平面立体形状を有する微細粒子を平面視した際の形状としては、例えば、円、多角形等の幾何学形状や、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の形状を挙げることができる。具体的に、図1(a)では円、図1(b)および図1(d)では多角形、さらに図1(c)では文字となっている。
【0071】
(b)曲面立体形状
曲面立体形状は、表面および裏面のいずれかが曲面を有する形状を指す。
【0072】
図2(a)、(b)は本発明の微細粒子の一例を示す模式図であり、図2(a)は上面図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。図2(a)、(b)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6を有し、表面5が曲面を有し、拡大して観察することで識別することが可能な曲面立体形状3(ティーポットの立体形状)を有している。
図2(c)、(d)は本発明の微細粒子の他の例を示す模式図である。図2(c)は斜視図、図2(d)は側面図である。図2(c)、(d)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6を有し、表面5が曲面を有し、拡大して観察することで識別することが可能な曲面立体形状3(D・N・Pの立体形状)を有している。
【0073】
このように、本発明において曲面立体形状3とは、図2(b)、(d)に示すように、表面5および裏面6のいずれか(図2においては表面5)が曲面を有する形状を指す。表面5が曲面を有する場合、通常、裏面6は平面である。
曲面立体形状としては、上記のような形状であれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜決定される。
【0074】
このような曲面立体形状3を有する微細粒子1を平面視した際の形状としては、例えば、円、多角形等の幾何学形状や、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の形状とすることができる。具体的に、図2(a)、(b)ではティーポット(道具)、図2(c)、(d)では文字となっている。
【0075】
(c)大きさ
外形形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。外形形状が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、外形形状の大きさは、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。なお、外形形状の大きさが50μm以下である場合、簡易拡大器具による真贋判断は困難となるが、顕微鏡等の高度な拡大器具を用いることで識別可能であり、外形形状が小さくなれば、製造が困難となり偽造防止効果も高くなる。したがって、外形形状の大きさの下限は、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、本発明の微細粒子の用途に応じて適宜選択される。
【0076】
(d)光拡散特性
本発明の微細粒子がなす曲面立体形状は、光拡散特性を測定することにより確認することができる。平面立体形状は、法線方向が一つであるのに対して、曲面立体形状は法線方向が位置によって異なる。そのため、平面立体形状と曲面立体形状とでは反射光の明暗が異なる。また、平面立体形状と曲面立体形状とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
【0077】
曲面立体形状であることは破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
破壊式の検査方法は、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等により微細粒子を切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する手法が挙げられる。
非破壊式の検査方法は、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する手法が挙げられる。接触式の形状測定は、例えば針を微細粒子に接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定器を用いる手法が挙げられる。非接触式の形状測定は、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型等の等光干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いる手法が挙げられる。
【0078】
上記外形形状における光拡散特性としては、所望の偽造防止効果を得ることができれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜調整される。以下、2つの用途に分けて説明する。
【0079】
本発明の微細粒子を、樹脂製の媒体表面に用いる場合には、識別情報として平面立体形状を有する微細粒子であることが好ましい。樹脂製の媒体表面と平面立体形状を有する微細粒子の表面(平面)とは表面粗さが類似しているので、光拡散特性が類似し、光の反射・拡散範囲がほぼ等しくなるため、上記微細粒子自体の確認が難しくなる。そのため、優れた偽造防止効果を得ることができる。
【0080】
一方、本発明の微細粒子を、紙製の媒体表面に用いる場合には、識別情報として曲面立体形状を有する微細粒子であることが好ましい。紙は表面粗さが大きいが、微細粒子が曲面立体形状を有する場合には、光の反射・拡散範囲が広くなるので、紙の光拡散特性に近づけることができ、上記微細粒子自体の確認を難しくすることができる。そのため、優れた偽造防止効果を得ることができる。
【0081】
2.凹凸形状
本発明の微細粒子における凹凸形状は、微細粒子表面に形成され、凹部および凸部の少なくともいずれか一方を有するものである。
【0082】
図3(a)、(b)は本発明の微細粒子の他の例を示す模式図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のB−B線断面図である。図3(a)、(b)に示す微細粒子1は、表面5に拡大して観察することで識別することが可能な凹部4(星)を有し、さらに平面立体形状2を有している。
また、図4(a)、(b)は本発明の微細粒子の他の例を示す模式図であり、図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のC−C線断面図である。図4(a)、(b)に示す微細粒子1は、表面5に拡大して観察することで識別することが可能な凹部4(TEAの文字)を有し、さらに曲面立体形状3(ティーポットの立体形状)を有している。
【0083】
なお、本発明の凹凸形状を有する微細粒子をインキ化して、媒体表面に印刷した場合、微細粒子は任意の方向を向くことになるが、微細粒子は透明性を有するので、微細粒子において凹凸形状が形成されている部分が観察者側を向いていなくても、表示した凹凸形状による識別情報を認識することができる。
以下、凹凸形状について説明する。
【0084】
(a)形状
本発明の微細粒子における凹凸形状としては、微細粒子表面に形成することができ、拡大して観察することで識別することが可能であれば特に限定されるものではない。
【0085】
例えば、凹凸形状は図3(a)、(b)および図4(a)、(b)のように柱体状であってもよく、図示はしないが錐体状であってもよい。
凹凸形状の平面視上の形状としては、三角形、四角形等の多角形、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、数字、符号、標章等の記号等を挙げることができる。
凹凸形状としては、図3(a)、(b)および図4(a)、(b)に示すような凹部4であってもよく、また、図示はしないが凸部であってもよい。なお、凹部は貫通していてもよい。
凹凸形状において、凹部の下底面および凸部の上底面は平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0086】
(b)大きさ
このような凹凸形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には、上述した外形形状の大きさと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
上記凹凸形状を構成する凸部の高さ、または凹部の深さとしては、上述した凹凸形状に基づいて識別することが可能であれば特に限定されるものではないが、秘匿性に優れた微細粒子を得るという観点から、凸部の高さおよび凹部の深さは、より小さい方が好ましい。
具体的には、凸部の高さおよび凹部の深さは、外形形状の大きさに応じて異なるものであり、外形形状の大きさに対して1/10以下であることが好ましく、中でも1/30以下であることが好ましい。
上記凸部の高さ、または上記凹部の深さが上記範囲であれば、凹凸形状を認識しにくい、秘匿性に優れた微細粒子とすることができる。一方、上記微細粒子の凸部の高さ、または凹部の深さが上記範囲よりも極端に小さい場合には、凸部または凹部による所望の識別情報を上記微細粒子へ付与することが困難となり、また、上記微細粒子の凸部の高さ、または凹部の深さが上記範囲よりも極端に大きい場合には、微細粒子を物品の表面に用いた際に、上記微細粒子自体を容易に発見でき、識別情報としての凹凸形状を認識し易くなるため、偽造や複製等をされるおそれがあるからである。
【0088】
(c)光拡散特性
凹凸形状は、凸部であるのか凹部であるのかによって反射光の明暗が異なる。また、凹凸形状において、凹部の下底面および凸部の上底面が平面である場合と曲面である場合とでは光の入射角度を変化させた時の反射光の明暗の変化も異なる。
上記凹凸形状における光拡散特性としては、所望の偽造防止効果を得ることができれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜調整される。
【0089】
上記光拡散特性の測定方法としては、上述した外形形状の光拡散特性と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
D.微細粒子
本発明の微細粒子の粒径は、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。微細粒子の粒径が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止媒体に用いた際に微細粒子の位置が特定されてしまうため、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、微細粒子の粒径は、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。なお、微細粒子の粒径が50μm以下である場合、簡易拡大器具による真贋判断は困難となるが、顕微鏡等の高度な拡大器具を用いることで識別可能であり、微細粒子の粒径が小さくなれば、製造が困難となり偽造防止効果も高くなる。したがって、微細粒子の粒径の大きさの下限は、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、本発明の微細粒子の用途に応じて適宜選択される。
【0091】
なお、粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0092】
本発明の微細粒子の厚みとしては、一見するだけでは微細粒子を発見することが困難な偽造防止効果を付与することができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、秘匿性に優れた微細粒子を得るという観点から、より薄いことが好ましい。具体的には、0.1μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上記の微粒子の厚みは、微粒子の裏面に略垂直な断面における微粒子の厚みをいう。例えば図4(b)に示すような微粒子の厚みHをいう。
ここで、「略垂直な断面」とは、略垂直な断面と微粒子の裏面とのなす角度が90度±10度の範囲内にあるものを示す。
【0093】
また本発明においては、微細粒子の粒径(L)および微細粒子の厚み(H)が、L/50<H<L/10を満たすことがさらに好ましい。粒径に対し厚みが薄すぎる場合には、微細粒子が壊れ易くなり、一方、粒径に対し厚みが厚すぎる場合には微細粒子の識別情報を有する表裏面ではなく、識別情報を有さない微細粒子の側面(厚み部)が偽造防止用媒体の表面、すなわち観察者側を向いてしまい、識別が困難となる可能性があるからである。
なお、上記の微細粒子の粒径(L)は、微細粒子の表面側からの平面視における微細粒子の粒径をいう。例えば図4(a)に示すように、微細粒子1が長径L1および短径L2を有する場合には、微細粒子の長径L1を微細粒子の粒径とする。また、上記の微細粒子の厚み(H)は、上述したように、微細粒子の裏面に略垂直な断面における微細粒子の厚みをいう。例えば図4(b)に示すような微細粒子の厚みHをいう。
微細粒子の粒径(L)および厚み(H)は、上述の破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0094】
E.用途
本発明の微細粒子は、偽造防止用途に好適であり、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0095】
II.偽造防止用インク
本発明における偽造防止用インクは、上記微細粒子を含有することを特徴とするものである。上記偽造防止用インクが透明性を有する微細粒子を有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用インクを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性を有するため、インクの本来の色味を変えることがない。
以下、本発明の偽造防止用インクにおける各構成について説明する。
【0096】
A.微細粒子
本発明に用いられる微細粒子としては、上記「I.微細粒子」の項に詳しく記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0097】
微細粒子としては、1種類の微細粒子を用いてもよく、2種以上の微細粒子を用いてもよい。例えば、同一の外形形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、異なる外形形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。また、同一の外形形状を有し、同一の凹凸形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、同一の外形形状を有し、異なる凹凸形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。2種類以上の微細粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微細粒子を組み合わせて使用することができる。
【0098】
偽造防止用インク中の微細粒子の含有量としては、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に用いた場合に、微細粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、0.01質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0099】
B.透明樹脂成分
本発明の偽造防止用インクは、通常、透明樹脂成分中に上述の微細粒子が分散されたものである。
【0100】
本発明に用いられる透明樹脂成分の光透過性としては、本発明の偽造防止用インクを用いて微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を形成した際に、微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂成分を所定の厚みで成膜したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0101】
透明樹脂成分としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分等の硬化性樹脂成分が好ましく、特に光硬化性樹脂成分が好ましい。光硬化性樹脂成分を用いることにより、耐熱性の低い支持体にも本発明の偽造防止用インクを適用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、本発明の偽造防止用インクを用いて微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を形成する場合には、生産効率を向上させることができるからである。
【0102】
C.機能性材料
本発明の偽造防止用インクは、上記の微細粒子および透明樹脂成分の他に、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料を含有していてもよい。
【0103】
例えば、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微細粒子が紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有しない場合には、発光の有無により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微細粒子も紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合には、発光の波長により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0104】
偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微細粒子が赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有しない場合には、赤外線の吸収または反射の有無により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微細粒子も赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合には、吸収または反射する赤外線の波長により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0105】
偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微細粒子が量子ドット材料を含有しない場合には、発光の有無により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微細粒子も量子ドット材料を含有する場合には、発光の波長により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0106】
なお、機能性材料については、上記「I.微細粒子」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
偽造防止用インク中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0108】
偽造防止用インク中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0109】
偽造防止用インク中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0110】
偽造防止用インク中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0111】
偽造防止用インク中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0112】
D.溶媒
本発明の偽造防止用インクは、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、上記の微細粒子および透明樹脂成分が分散するものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用インクの塗布方法等に応じて適宜選択される。また、溶媒は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
例えばグラビア印刷用インキとして用いる場合、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。オフセット印刷用インキやシルクスクリーン印刷用インキとして用いる場合は、高沸点の石油系溶剤(炭素数が15以上(C15以上)の炭化水素類)が挙げられる。
【0113】
本発明の偽造防止用インクの固形分濃度は、偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用可能であれば特に限定されるものではなく、20質量%〜85質量%程度とすることができる。
【0114】
III.偽造防止用トナー
本発明における偽造防止用トナーは、上記微細粒子を含有することを特徴とするものである。上記偽造防止用トナーが透明性を有する微細粒子を有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用トナーを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性有するため、トナーの本来の色味を変えることがない。
【0115】
本発明の偽造防止用トナーは、上記微細粒子を含有するものであればよく、乾式トナーおよび湿式トナーのいずれであってもよく、その組成としては一般的な組成とすることができる。本発明の偽造防止用トナーは、例えば、主樹脂、副樹脂、着色剤、荷電制御剤、流動性制御剤等を含有することができる。
主樹脂としては、光透過性を有し、上記の微細粒子が分散するものであれば特に限定されるものではない。主樹脂の光透過性としては、上述の偽造防止用インクにおける透明樹脂成分の光透過性と同様とすることができる。主樹脂にはスチレン−アクリル系、ポリエステル系が主として使用される。副樹脂にはポリプロピレン、ポリエチレン、WAX類が使用される。主樹脂や副樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤にはカーボン、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等が使用される。荷電制御剤はプラス系、マイナス系があり、金属を含有したものや、樹脂系、四級アンモニウム塩等が挙げられる。流動制御剤はシリカ等が使用される。
【0116】
なお、微細粒子については、上述の偽造防止用インクにおける微細粒子と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0117】
本発明の偽造防止用トナーは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料をさらに含有していてもよい。機能性材料としては、上述の偽造防止用インクにおける機能性材料と同様とすることができる。
【0118】
IV.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、2つの態様を有する。
以下、各態様について説明する。
【0119】
A.第1態様
本態様における偽造防止用シートは、上記微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を有するものである。
【0120】
本態様の偽造防止用シートについて図面を参照しながら説明する。
図5は本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。図5に示す偽造防止用シート10は、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12からなるものである。
【0121】
本態様においては、上述した微細粒子を含有する微細粒子含有層を有することから、本態様の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、上記微細粒子が識別情報として曲面立体形状や表面に凹凸形状を有する場合、曲面立体形状の曲面や凹凸形状が観察者側を向いていなくても、微細粒子が透明性を有していることにより、曲面立体形状の曲面や凹凸形状を認識することができる。
【0122】
図6は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図6に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12とが順に積層されている。
【0123】
図7は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図7に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12とを有し、微細粒子含有層12側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0124】
図8は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図8に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12と、微細粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0125】
図9は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図9に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、ホログラム層17と、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12とが順に積層されている。
【0126】
図10は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図10に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12と、微細粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側にホログラム層17と粘着層14と剥離層13とが順に積層されている。
【0127】
このように、本態様の偽造防止用シートは、微細粒子含有層以外に他の構成を有していてもよい。
以下、本態様の偽造防止用シートにおける各構成について説明する。
【0128】
1.微細粒子含有層
本態様における微細粒子含有層は、上述の微細粒子が透明樹脂中に分散されたものである。
なお、微細粒子については、上記「I.微細粒子」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0129】
微細粒子としては、1種類の微細粒子を用いてもよく、2種以上の微細粒子を用いてもよい。例えば、同一の外形形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、異なる外形形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。また、同一の外形形状を有し、同一の凹凸形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、同一の外形形状を有し、異なる凹凸形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。2種類以上の微細粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微細粒子を組み合わせて使用することができる。
【0130】
本態様に用いられる透明樹脂の光透過性としては、微細粒子含有層中の微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂からなる層を微細粒子含有層と同じ厚みで形成したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0131】
透明樹脂としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂好ましく、特に光硬化性樹脂が好ましい。例えば図7、図8および図10に示すように、基材15上に微細粒子含有層12が形成されている場合には、光硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性の低い基材も使用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、偽造防止用シートの生産効率を向上させることができるからである。
透明樹脂は、上記「II.偽造防止用インク」の項に記載した透明樹脂成分を固化させたものとすることができる。
【0132】
微粒子含有層中の微細粒子の含有量としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微細粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではないが、微細粒子含有層1cm2当たりに少なくとも1個以上の微細粒子が含有されていることが好ましい。
【0133】
また、微細粒子含有層が基材上に形成されている場合には、微細粒子含有層は基材上に一面に形成されていてもよくパターン状に形成されていてもよい。微細粒子含有層のパターン形状が所定の意味を表す形状である場合には、微細粒子を隠し情報として利用することができ、偽造防止効果を高めることができる。
【0134】
微細粒子含有層の膜厚としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微細粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、本態様の偽造防止用シートの層構成や微粒子含有層に含まれる透明樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば図7、図8および図10に示すように、基材15上に微細粒子含有層12が形成されている場合には、微細粒子含有層12の膜厚は比較的薄くともよい。一方、図5に例示するように、微細粒子含有層12が単独で形成されている場合には、自己支持性の観点から、微細粒子含有層の膜厚は比較的厚いことが好ましい。また、微細粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、割れを抑制する観点から、微細粒子含有層の膜厚は比較的薄いことが好ましい。
具体的に、微細粒子含有層の膜厚は、0.1μm〜500μm程度とすることができ、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0135】
微細粒子含有層の形成方法としては、例えば、上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。例えば図7、図8および図10に示すように、基材15上に微細粒子含有層12が形成されている場合には、基材15上に偽造防止用インクを塗布し、固化させることで、微細粒子含有層12を形成することができる。
また、図5に例示するように、微細粒子含有層12が単独で形成されている場合には、基板上に偽造防止用インクを塗布し、固化させた後、基板から微細粒子含有層12を剥離することで、微細粒子含有層12を単独で得ることができる。この際に用いられる基板としては、光透過性を有していても有さなくてもよく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0136】
偽造防止用インクの塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。
また、偽造防止用インクの固化方法としては、透明樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化性樹脂の場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。熱可塑性樹脂の場合には、冷却する方法が用いられる。
【0137】
2.基材
本態様においては、図7、図8および図10に例示するように、微細粒子含有層12が基材15上に形成されていてもよい。本態様の偽造防止用シートの強度を高めることができ、また容易に取り扱うことができるからである。中でも、微細粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、微細粒子含有層の割れを抑制する観点から、微細粒子含有層は比較的薄いことが好ましいので、基材上に微細粒子含有層が形成されていることが好ましい。また、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材15が微細粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合には、基材により微細粒子含有層を保護することもできる。図8に例示する層構成の場合には、不透明基材を使用することもできる。
【0138】
本態様に用いられる基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、基材の形成位置により適宜選択される。本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材15が微細粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合や、図10に例示するように、基材15がホログラム層17よりも表面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有することが好ましい。
一方、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8に例示するように、基材15が微細粒子含有層12よりも裏面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0139】
基材が光透過性を有する場合、その光透過性としては、微細粒子含有層中の微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0140】
また、基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本態様の偽造防止用シートを種々の形状の偽造防止媒体に適用することが可能となるからである。
【0141】
このような基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0142】
また、基材の表面は、微細粒子含有層との密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、微細粒子含有層および基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、基材製造時に処理されるものと、製造後の基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0143】
基材の厚みは、本発明の偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0144】
3.粘着層
本態様においては、図6〜図10に例示するように、微細粒子含有層12上に粘着層14が積層されていてもよい。粘着層を介して、本態様の偽造防止用シートを貼付する
ことができるからである。
【0145】
粘着層は、基材上に微細粒子含有層が形成されている場合、基材側に積層されていてもよく、微細粒子含有層側に積層されていてもよい。微細粒子含有層上に後述のハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層とは反対側の面に粘着層が配置される。また、微細粒子含有層とホログラム層とが積層されている場合には、ホログラム層側に粘着層が配置される。
【0146】
粘着層の材料としては、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑系、熱硬化系、光硬化系、エラストマー系のいずれも用いることができ、偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択される。偽造防止用シートを転写箔として使用する場合には、ヒートシール性を有する粘着層が用いられる。
【0147】
粘着層の膜厚は、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
粘着層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0148】
4.剥離層
本態様においては、図6〜図10に例示するように、微細粒子含有層12上に粘着層14と剥離層13とが順に積層されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本態様の偽造防止用シートの取り扱いが容易になるからである。
本態様の偽造防止用シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0149】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0150】
5.ハードコート層
本態様においては、図8および図10に例示するように、微細粒子含有層12上にハードコート層16が形成されていてもよい。ハードコート層により微細粒子含有層を保護することができるからである。
ハードコート層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8および図10に例示するように、ハードコート層16が微細粒子含有層12よりも表面側となるように配置される。
【0151】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、微細粒子含有層中の微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0152】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、微細粒子含有層を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0153】
ハードコート層の膜厚は、微細粒子含有層を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0154】
6.ホログラム層
本態様においては、図9および図10に例示するように、微細粒子含有層12上にホログラム層17が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0155】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0156】
ホログラム層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9および図10に例示するように、ホログラム層17が微細粒子含有層12よりも裏面側になるように配置される。これにより、微細粒子含有層をホログラム層の保護層として利用することができる。
【0157】
7.偽造防止用シート
本態様の偽造防止用シートは、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0158】
また、本態様の偽造防止用シートの形状としては、特に限定されるものではなく、矩形、多角形、円形、楕円形、その他、任意の形状とすることができる。本発明の偽造防止用シートの形状が所定の意味を表す形状である場合には、微細粒子を隠し情報として利用することができる。
【0159】
本態様の偽造防止用シートの検査方法としては、図11に例示するように、偽造防止用シート10にLED照明21で光を照射し、カメラ(ラインセンサ)22により画像を取得する方法を挙げることができる。図11においては、偽造防止用シート10に対してカメラ22と反対側にLED照明21を配置して、透過光を観察しているが、図示はしないが、偽造防止用シートに対してカメラと同じ側にLED照明を配置して、反射光を観察してもよい。
偽造防止用シートの検査装置では、微細粒子の位置をマッピングし、データベースに保存し、照合が可能である。
検査において、微細粒子含有層に微細粒子が含有されていない領域があった場合には、レーザーマーキング装置を使用し、微細粒子が含有されていない領域にマーキングを行い、偽造防止用シートを所定の形状とする際に排除してもよい。
【0160】
本態様における微細粒子含有層では、図5に示すように、微細粒子1を透明樹脂11中に分散させている。このようにして偽造防止を図る場合、微細粒子が透明樹脂中に分散されていることにより、一見するだけでは微細粒子を発見することができないといった偽造防止効果を付与することができるが、一方、透明樹脂中に分散された微細粒子を、形状に基づいて識別することが困難となる場合がある。このような場合には、透明樹脂の屈折率と異なる屈折率の樹脂製の材料を微細粒子に用いることで、秘匿性を保ちつつ、微細粒子を形状に基づいて識別することが可能となる。
【0161】
B.第2態様
本態様における偽造防止用シートは、基底部と、上記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備える識別部とを有し、上記基底部および上記識別部が透明性を有し、樹脂製の材料を含むものである。
本態様によれば、一定の面積を有する基底部上に形成される識別部の数および位置を予め規定することが可能である。そのため、識別情報をより高度に制御することで識別情報の確認が容易な偽造防止用シートとすることができ、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することが可能となる。
【0162】
本態様の偽造防止用シートについて図を用いて説明する。図12(a)、(b)は、本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略図であり、図12(a)は斜視図であり、図12(b)は、図12(a)のD−D線断面図である。図12に例示するように、本態様の偽造防止用シート10は、基底部31と、基底部31の表面に形成され、識別情報として平面立体形状2(四角柱)を有する凸部32aを複数備える識別部32とを有する。
図13(a)、(b)は、本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略図であり、図13(a)は斜視図であり、図13(b)は、図13(a)のE−E線断面図である。図13に例示するように、本態様の偽造防止用シート10は、基底部31と、基底部31の表面に形成され、識別情報として平面立体形状2(四角柱状)を有する凹部32bを複数備える識別部32とを有する。
【0163】
本態様における、識別部を構成する凸部または凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別可能な識別情報を有しており、上述した微細粒子と同様の識別情報を有することができるため、本態様の偽造防止用シートは、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することができる。
【0164】
1.識別部
本態様の識別部は、基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備えるものである。また、識別部は透明性を有し、樹脂製の材料を含むものである。
以下、識別部における各構成について説明する。
【0165】
(a)透明性
本態様における識別部の透明性としては、「I.微細粒子 A.透明性」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0166】
(b)識別情報
本態様における識別情報としては、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0167】
上記識別情報の種類としては、形状に基づいて識別可能なものであればよく、凸部または凹部の外形形状、凸部または凹部の表面に形成される凹凸形状を挙げることができる。
なお、外形形状および凹凸形状については、上記「I.微細粒子 C.識別情報」の項に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0168】
識別情報を有する凸部または凹部は、1種類であってもよく2種類以上であってもよく、偽造防止用シートの用途等に応じて適宜選択されるものである。
具体的に、図14においては、識別部32が平面立体形状2(四角柱)を有する凸部32aと平面立体形状2(円柱)を有する凸部32aの2種類の凸部32aを備えている。
さらに、図15においては、識別部32が平面立体形状2(四角柱)を有する凸部32aおよび平面立体形状2(四角柱)を有する凹部32bの2種類を備えている。
【0169】
(c)凸部または凹部
識別部は識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備えるものである。識別部は図12に示すように凸部32aを有していてもよく、図13に示すように凹部32bを有していてもよく、図15に示すように凸部32aおよび凹部32bを有していてもよい。
【0170】
凸部または凹部の大きさとしては、凸部または凹部が有する上記識別情報を拡大することによって観察することが可能な大きさであれば特に限定されるものではない。具体的には、凸部または凹部の大きさは、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。凸部または凹部が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、凸部または凹部の大きさは、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。また、凸部または凹部が小さすぎると、凸部または凹部が所望の識別情報を有することが困難となったり、簡易拡大器具での観察が難しく、より高度な拡大器具を用いる必要があり、真贋判定が複雑化したりする可能性があるからである。
【0171】
凸部の高さまたは凹部の深さとしては、凸部または凹部を基底部表面に形成可能であり、凸部または凹部が上記識別情報を有することが可能であり、一見するだけでは識別部を発見することが困難な偽造防止効果を付与することができる凸部の高さまたは凹部の深さであれば特に限定されるものではない。凸部の高さおよび凹部の深さは、凸部および凹部の大きさによって適宜調整されるものであるが、中でも、秘匿性に優れた偽造防止用シートを得るという観点から、より小さいことが好ましい。具体的には、凸部および凹部の大きさに対して1/10以下であることが好ましく、中でも1/30以下であることが好ましい。
【0172】
一方、凸部または凹部の形成しやすさを考慮すると、凸部または凹部の大きさ(u)、凸部の高さ(x)または凹部の深さ(y)が、それぞれx/u≧1/100またはy/u≧1/100を満たすことが好ましく、なかでもx/u≧1/30またはy/u≧1/30、さらにx/u≧1/20またはy/u≧1/20、特にx/u≧1/10またはy/u≧1/10であることが好ましい。
【0173】
なお、凸部の高さは、図12(b)、図16(a)、(c)に例示するように、偽造防止用シート10の凸部32aが形成されていない部分の表面から凸部32aの頂部までの距離xを指す。
また、凹部の深さは、図13(b)、図16(b)、(d)に例示するように、偽造防止用シート10の凹部32bが形成されていない部分の表面から凹部32bの底部までの距離yを指す。
凸部の高さ(x)または凹部の深さ(y)は、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
なお、上記凸部または凹部の大きさ(u)は、凸部または凹部の平面視における最大距離とする。例えば平面視における形状が図4(a)に示す形状である場合は、距離L1を指す。
上記凸部または凹部の大きさ(u)は、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
【0174】
本態様において、凸部または凹部は1個あってもよく、複数個あってもよい。
識別部が有する凸部または凹部の個数としては、1個以上であれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートが用いられる偽造防止媒体の用途により適宜選択されるものであるが、中でも10個〜1,000,000,000個の範囲内であることが好ましく、特に100個〜1,000,000個の範囲内であることがより好ましい。
識別部が有する凸部または凹部の個数が上記範囲に満たない場合、凸部または凹部の位置の特定や、凸部または凹部が有する識別情報自体の認識を行うことが困難となる可能性がある。なお、凸部または凹部の個数については、本態様の偽造防止用シートの用途により適宜選択することができる。
【0175】
識別部における凸部または凹部の配置としては、識別情報としての凸部または凹部を認識可能な配置であれば特に限定されるものではなく、規則性を有するように配置されていても良く、ランダムに配置されていても良い。
【0176】
(d)材料
本態様における識別部に用いられる樹脂製の材料としては、「I.微細粒子 B.材料」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0177】
(e)その他
本態様における識別部としては、識別部の各凸部または凹部が有する識別情報を簡易器具で拡大することによって観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートの一部の表面上に形成されているものであっても良く、偽造防止用シートの全面に形成されているものであっても良い。
【0178】
本態様の識別部の形成方法としては、基底部表面に所望の識別部を形成することができる製造方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に、上記識別部の識別情報と嵌合する形状を有する転写部を形成して原版を作製し、樹脂層を形成する。続いて、樹脂層表面と原版の転写部とを密着させることにより、樹脂層表面に識別部の識別情報を賦型する。識別情報が賦型された樹脂層を固化し、硬化した樹脂層から原版を剥離して識別部を形成する方法等が挙げられる。
【0179】
2.基底部
本態様における基底部は、その表面に上述した識別部を有するものである。
また、基底部は、透明性を有し、樹脂製の材料を含むものである。
【0180】
本態様における基底部の厚みとしては、基底部の表面に上述した識別部を形成することができ、また、本態様の偽造防止用シートを所望の偽造防止媒体に用いることができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。基底部の厚みが厚すぎると、偽造防止用シートの加工が困難となる可能性や、使用する偽造防止媒体の規格に沿わない可能性がある。
なお、本態様における基底部の厚みとしては、図12(b)、図13(b)に例示するように、偽造防止用シート10の識別部32が形成されていない部分の厚みzを示すものである。
【0181】
本態様における基底部の透明性および樹脂製の材料としては、「I.微細粒子」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0182】
基底部の表面に識別部が形成されていればよく、例えば、基底部と識別部とが一体で形成されていてもよく、基底部と識別部とが別体で形成されていてもよいが、中でも、基底部と識別部とが一体で形成されていることがより好ましい。本態様の偽造防止用シートを簡便な方法で作製することが可能となるからである。
【0183】
3.その他
本態様の偽造防止用シートは、上述した識別部と基底部とを有するものであれば特に限定されるものではなく、第1態様に示した微細粒子含有層以外の構成と同様の構成を適宜選択して用いることができる。
【0184】
本態様の偽造防止用シートを物品の表面に固定・固着させて偽造防止を図る場合には、形状に基づいた識別が可能となる。
本態様の偽造防止用シートを樹脂製の媒体表面に用いる際、上記識別部および基底部と樹脂製の媒体との屈折率の差が小さい場合には、本態様の偽造防止用シートが容易に発見されず、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を実現することができる。
【0185】
本態様の偽造防止用シートは、第1態様における偽造防止用シートと同様に、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0186】
C.用途
本発明の偽造防止用シートは、そのままラベルとして使用したり、転写箔として使用したりすることが可能である。また、偽造防止用シートは、ホログラム層を有する場合には、ホログラムラベルやホログラム転写箔として使用することもできる。さらに、偽造防止用シートは、偽造防止媒体へのラミネートフィルムとして使用することもできる。
偽造防止用シート自体は光透過性を有するものとすることができるので、様々な偽造防止媒体に適用することができる。
【0187】
さらに、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用する際には、偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着してもよく、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートを埋め込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込んでもよい。偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着する場合には、偽造防止用シートをそのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。転写方法としては、熱転写法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体については、後述の「V.偽造防止媒体」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0188】
V.偽造防止媒体
本発明における偽造防止媒体は、上記微細粒子、または上記偽造防止用シートを有するものである。
【0189】
図17(a)、(b)は本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図であり、図17(a)は上面図、図17(b)は図17(a)のF−F線断面図である。図17(a)、(b)に示す偽造防止媒体40においては、支持体41上に、上述した微細粒子1が透明樹脂11中に分散された微細粒子含有層12が形成されている。
【0190】
図18(a)〜(c)は本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図であり、図18(a)は上面図、図18(b)は図18(a)のG−G線断面図、図18(c)は偽造防止媒体の積層構造を示す斜視図である。図18(a)〜(c)に示す偽造防止媒体40おいては、支持体41上に第1樹脂層42と上述した微細粒子1が透明樹脂11中に分散された微細粒子含有層12からなる偽造防止用シート10と第2樹脂層43とが積層されており、偽造防止媒体40の内部に偽造防止用シート10が埋め込まれている。偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートが埋め込まれている場合には、偽造防止用シートが剥がされて悪用されるのを防ぐことができる。
【0191】
本発明の偽造防止媒体においては、透明性を有する上記微細粒子、または透明性を有する基底部および識別部を有する偽造防止用シートを有することにより、物品に含まれる微細粒子または識別部を認識することが困難となり、高い偽造防止機能を付与することが可能であり、また、容易に真贋判定することが可能な偽造防止媒体を作製することが可能となる。
【0192】
以下、本発明の偽造防止媒体における各構成について説明する。
なお、微細粒子については、上記「I.微細粒子」の項に記載したものと同様とすることができ、透明性を有する基底部および識別部を有する偽造防止用シートについては、上記「IV.偽造防止用シート B.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0193】
微細粒子を用いる場合において、支持体上に微細粒子を固定・固着させる方法としては、支持体上に上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法や、支持体上に上述した偽造防止用トナーを転写する方法、支持体上に上述した偽造防止用シートを貼付もしくは埋め込む方法を用いることができる。
【0194】
支持体上に偽造防止用シートを貼付する方法としては、そのまま貼っても良く、転写しても良い。さらに、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止用シートを偽造防止媒体の構成層間に埋め込んでも良い。
ここで、偽造防止用シートを埋め込む方法としては、例えば、偽造防止媒体の支持体上に所望の構成層を積層し、各層間を接着層、粘着層、熱圧着等によって接着する方法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体内に積層される偽造防止用シートは、一部に設けられていても良く、全体に設けられていても良い。また、偽造防止媒体中のその他の構成層としては、偽造防止媒体の種類に応じて、適宜選択されるものである。
【0195】
本発明に用いられる支持体としては、本発明の偽造防止媒体の用途に応じて適宜選択されるものである。支持体は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。支持体の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0196】
また、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層とが積層されている場合、第1樹脂層は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、支持体と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第2樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0197】
本発明の偽造防止媒体の用途としては、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等を挙げることができる。
【0198】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0199】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0200】
[実施例1]
(犠牲層および微細粒子形成層の形成)
ガラス基板上に水溶性高分子膜(PVA)を塗布し、微細粒子材料(非水溶性材料:レジスト材料)を塗布した。
【0201】
(露光現像)
その後、フォトリソグラフィーにより露光現象処理を行い、水溶性高分子膜に所望のパターン形状だけが残るようにした。
【0202】
(微粒子回収工程)
パターン形成後、水溶性高分子膜を溶解させることで粒子を基材から分離させ、回収を行った。
【0203】
[実施例2]
(犠牲層および微細粒子形成層の形成)
PET基板上に水溶性高分子膜(ゼラチン)を塗布し、微細粒子材料(非水溶性材料:印刷インク)を塗布した。この際、直接パターンを印刷した。
【0204】
(微粒子回収工程)
パターン形成後、水溶性高分子膜を溶解させることで粒子を基材から分離させ、回収を行った。
【符号の説明】
【0205】
1 … 微細粒子
2 … 平面立体形状
3 … 曲面立体形状
4 … 凹部
5 … 表面
6 … 裏面
10 … 偽造防止用シート
11 … 透明樹脂
12 … 微細粒子含有層
31 … 基底部
32 … 識別部
40 … 偽造防止媒体
H … 厚み
L1,L2 … 粒径
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細粒子による偽造防止技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の偽造を防止するための偽造防止技術には、その用途から2つの側面が求められる。まず、一見するだけでは、その物品に偽造防止技術が付されていることを認識することができないこと、また、物品を使用する需要者が物品の安全性等の観点から正規品であることを確認する場合等に、容易に認証が行えることである。
【0003】
現在、多用されている偽造防止技術として、目視で真贋判定可能な透かし技術やホログラム等が挙げられる。これらの技術では、目視で確認できることから容易に認証が行えるという利点を有するが、さらなる偽造防止効果の向上への要求から新たな偽造防止技術の開発が望まれている。
【0004】
そこで、ルーペ等の簡易的な拡大器具を使用して観察することにより真贋判定を行う偽造防止技術が注目されている(特許文献1、特許文献2)。これらの技術では、目視で確認できる偽造防止技術と比べて、より高い偽造防止効果を発揮することができる。また、真贋判定に特殊な装置等を必要とせず簡易的に識別可能であるという利点を有する。
【0005】
このような認証をする際に拡大器具を必要とする偽造防止技術として、タガント粒子(追跡用添加物)と呼ばれる微細粒子を用いた技術が提案されている。タガント粒子を用いた偽造防止媒体では、個体によってタガント粒子の位置が異なるため、タガント粒子自体の確認が難しく、複製も困難となる。そのため、優れた偽造防止効果を発揮することが可能となり、また、個体の識別も可能となる。
【0006】
タガント粒子には、拡大して観察することにより識別可能な情報を有するものが知られており、例えば、文字、記号、標章等や特殊な形状を有するものや、特殊な色彩情報を有するものが挙げられる(特許文献3)。
【0007】
しかしながら、より高いセキュリティー性を必要とする物品に対する偽造防止機能としては、不十分な場合があるといった問題があった。例えば、金属からなる微細粒子や色彩を有する微細粒子を用いる場合には、それらの微細粒子が有する色彩と、物品が有する色彩との色差により微細粒子が容易に発見されてしまう。
【0008】
また、色彩を有する微細粒子をインクに混ぜ合わせてインキ化すると、微細粒子に含まれる染料等の影響により本来のインクの色味が変化してしまうといった課題があった。また、紙やカード等の印刷媒体表面に、インキ化した微細粒子を印刷した場合、微細粒子と印刷媒体との色味が異なり、微細粒子の位置が容易に発見されてしまうという課題もあった。
【0009】
このように、容易に微細粒子を発見されてしまうと、模倣・複製される可能性が高まるため、一見するだけでは発見することができない微細粒子が求められている。
【0010】
さらに、媒体表面にインキ化した微細粒子を印刷した場合、微細粒子は任意の方向を向いているため、一部に識別情報が表示されている微細粒子を用いた場合、微細粒子において識別情報が表示されている部分が観察者側を向くとは限らず、表示した識別情報が認識出来なくなるといった課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−230228号公報
【特許文献2】特開2009−193069号公報
【特許文献3】特開2001−288698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、上記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする微細粒子を提供する。
【0014】
本発明によれば、微細粒子が透明性を有することにより、物品に含まれる微細粒子を認識することが困難であり、秘匿性に優れた微細粒子とすることができる。
さらに、透明性を有する上記微細粒子をインクに含有させて用いる際に、本来のインクの色味に影響を与えることがない。また、透明性を有する上記微細粒子を印刷媒体に固定・固着させて用いる際には、印刷媒体に表示されている模様や色彩等に上記微細粒子が同化して一体となるため、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子とすることができる。さらには、上記微細粒子が透明性を有していることにより、一部に識別情報を有する微細粒子を用いた際に、微細粒子において識別情報を有する部分が観察者側を向いていなくても、識別情報を認識することができる。
また、識別情報が拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいた識別が可能であることにより、容易に真贋判定を行うことができる。
【0015】
本発明は、上記微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インクを提供する。上記偽造防止用インクが透明性を有する微細粒子を含有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用インクを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性を有するため、インクの本来の色味を変えることがない。
【0016】
本発明は、上記微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用トナーを提供する。上記偽造防止用トナーが透明性を有する微細粒子を含有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用トナーを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性を有するため、トナーの本来の色味を変えることがない。
【0017】
本発明は、上記微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シートを提供する。これにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用シートを作製することが可能となる。
【0018】
本発明は、基底部と、上記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備える識別部とを有し、上記基底部および上記識別部が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする偽造防止用シートを提供する。これにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用シートを作製することが可能となる。
【0019】
本発明においては、上記微細粒子、または上記偽造防止用シートを有することを特徴とする偽造防止媒体を提供する。これにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を付与することが可能であり、また、容易に真贋判定することが可能な偽造防止媒体を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の微細粒子の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の微細粒子の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の微細粒子の他の例を示す模式図である。
【図4】本発明の微細粒子の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の偽造防止用シートの検査方法の一例を示す模式図である。
【図12】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略図である。
【図13】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略図である。
【図14】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略斜視図である。
【図15】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略斜視図である。
【図16】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図17】本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の微細粒子、偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シートおよび偽造防止媒体について詳細に説明する。
【0023】
I.微細粒子
本発明の微細粒子は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、上記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする。
【0024】
このような本発明の微細粒子は、透明性を有することにより、物品に含まれる微細粒子を認識することが困難であり、秘匿性に優れた微細粒子とすることができる。
さらに、上記微細粒子が透明性を有するため、インクに含有させて用いる際に、本来のインクの色味に影響を与えることがない。また、透明性を有する上記微細粒子を印刷媒体に固定・固着させて用いる際には、印刷媒体に表示されている模様や色彩等が上記微細粒子によって隠れてしまうことがないため、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する微細粒子とすることができる。
さらには、上記微細粒子が透明性を有していることにより、一部に識別情報を有する微細粒子を用いた際に、微細粒子において識別情報を有する部分が観察者側を向いていなくても、識別情報を認識することができる。
また、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいた識別が可能であることにより、容易に真贋判定を行うことができる。
以下、本発明の微細粒子における各構成について説明する。
【0025】
A.透明性
本発明の微細粒子は透明性を有するものである。
本発明における透明性としては、本発明の微細粒子が所望の機能を発揮できる程度の透明性を有していれば特に限定されるものではなく、具体的には、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。なかでも、30%以上であることが好ましく、特に、50%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7150に準拠して測定した値である。
【0026】
B.材料
本発明の微細粒子は、樹脂製の材料を含むものである。以下、本発明の微細粒子に用いられる材料について説明する。
【0027】
1.樹脂製の材料
樹脂製の材料としては、上述した透明性を有する微細粒子を作製できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクレート樹脂、ポリアミック酸樹脂、ポリイミド樹脂等の光硬化性樹脂材料、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂、エポキシ変性不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂材料、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂材料、感光性樹脂材料を挙げることができる。また、感光性樹脂材料としては、ポジ型感光性樹脂およびネガ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。上述した材料の中でも、光硬化性樹脂材料、感光性樹脂材料が好ましく、特に光硬化性樹脂材料が好ましい。光硬化性樹脂材料を用いることにより、形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子を、高精細に形成することが可能となるからである。
【0028】
本発明の微細粒子の屈折率は、上記微細粒子を構成する材料の種類および配合量等によって異なるものであり、本発明においては、微細粒子が所望の偽造防止機能を実現できる程度であれば特に限定されるものではない。なお、本発明の微細粒子の屈折率は、上記微細粒子の用途等に応じて適宜調整されるものである。
【0029】
例えば、本発明の微細粒子を透明樹脂中に分散させた微細粒子含有層を形成した場合、微細粒子と透明樹脂との屈折率が同じであると、微細粒子が有する識別情報を視認することができなくはなるが、微細粒子の樹脂製の材料と透明樹脂の屈折率の差は小さい方が、微細粒子が有する形状に基づいて識別可能な識別情報は認識されにくくなる。そのため、秘匿性を高めたい場合には、微細粒子の樹脂製の材料と透明樹脂との屈折率の差は小さい方が好ましい。具体的には、微細粒子の樹脂製の材料と透明樹脂との屈折率の差が0〜0.1の範囲内であることが好ましい。
【0030】
2.機能性材料
本発明に用いられる樹脂製の材料は、機能性材料を含有することが好ましい。微細粒子に簡便に形態以外の識別情報を付与できるため、真贋判定を容易に行うことができるからである。
機能性材料としては、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料等が挙げられる。中でも、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料等が好適に用いられる。簡易器具を用いて識別が可能であり、また発光、光の反射および吸収による識別が可能であることから、真贋判定が容易となるからである。
さらに、本発明の微細粒子を、例えば透明樹脂中に分散させた微細粒子含有層を形成した場合、微細粒子は樹脂製の材料を含むので、微細粒子と透明樹脂との屈折率の差が小さいと、微細粒子と透明樹脂の界面が見えにくくなり、微細粒子の識別情報を認識することが困難となってしまう場合がある。このような場合においても、上記微細粒子が機能性材料を含有することにより、識別情報を認識することが可能となる。
以下、各機能性材料について説明する。
【0031】
(a)紫外線発光材料
紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種類以上で用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0032】
このような紫外線発光材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0033】
微細粒子中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0034】
(b)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0035】
このような赤外線発光材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0036】
微細粒子中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0037】
(c)赤外線反射材料
赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0038】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0039】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0040】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0041】
このような赤外線反射材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0042】
微細粒子中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0043】
(d)赤外線吸収材料
赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0044】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0045】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂材料や感光性樹脂材料を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0046】
このような赤外線吸収材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有させた際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0047】
微細粒子中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過し、上述した透明性を有する微細粒子とすることができるからである。
【0048】
(e)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズの微細粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0049】
量子ドット材料は、単独の半導体化合物からなるものであっても、2種類以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0050】
量子ドット材料のコアとなる材料として、具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0051】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。中でも、作製の容易性、可視領域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0052】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0053】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0054】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0055】
また、量子ドットの形状としては特に限定されるものではなく、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0056】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0057】
微細粒子中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではなく、具体的には、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0058】
(f)磁性材料
磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0059】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明の微細粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有する微細粒子と、磁性材料を含有しない微細粒子とに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有する微細粒子では共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しない微細粒子では共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することにより微細粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0060】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す微粒子を例示することができる。
【0061】
このような磁性材料の粒径としては、500nm以下であることが好ましく、中でも100nm以下であることが好ましい。上記範囲内であれば、本発明の微細粒子に含有した際に、上記微細粒子が有する透明性を維持することができるからである。
【0062】
微細粒子中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であり、かつ本発明の微細粒子が上述した透明性を有する程度であれば特に限定されるものではないが、具体的には、1質量%〜30質量%程度であることが好ましく、特に5質量%〜20質量%程度であることが好ましい。磁性材料の含有量が上記範囲内より少ない場合、識別が困難となる可能性があり、上記範囲内より多い場合、微細粒子表面へ立体形状を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0063】
(g)その他
本発明に用いられる樹脂製の材料には、上述した機能性材料以外にも、用途に応じてその他の機能性材料が含有されてもよい。
【0064】
C.識別情報
次に、本発明における識別情報について説明する。本発明の識別情報は、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能なものである。
本発明において、「拡大することにより観察することが可能である」とは、目視では観察することが困難であり、拡大手段を用いて拡大した場合に観察することができることを指す。また、本発明において「形状に基づいて識別することが可能な識別情報」とは、固有の形状を有する情報を指すものであり、例えば色彩等の無形の情報のみからなる情報を含まないものとする。
【0065】
このような識別情報の種類としては、形状に基づいて識別可能なものであればよく、微細粒子の外形形状および微細粒子表面に形成される凹凸形状を挙げることができる。
以下、各識別情報についてそれぞれ説明する。
【0066】
1.外形形状
本発明の微細粒子における外形形状としては、拡大して観察することで識別することが可能であれば特に限定されるものではない。本発明の微細粒子における外形形状は、平面立体形状であってもよく、曲面立体形状であっても良い。
以下、それぞれの形状に分けて説明する。
【0067】
(a)平面立体形状
平面立体形状は、表面および裏面が平面で構成される形状、または、平面のみで構成される形状を指す。
【0068】
図1(a)、(b)、(c)、(d)は本発明の微細粒子の平面立体形状の一例を示した概略斜視図である。
図1(a)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6が平面であり、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(円柱)を有している。また、図1(b)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6が平面であり、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(四角柱)を有している。
図1(c)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6が平面であり、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(D・N・Pの立体形状)を有している。
図1(d)に示す微細粒子1は、平面のみで構成され、拡大して観察することで識別することが可能な平面立体形状2(四角錐)を有している。
【0069】
このように、本発明において平面立体形状2とは、図1(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、表面5および裏面6が平面である形状、および平面のみで構成される形状を含む。
平面立体形状としては、上記のような形状であれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜決定される。例えば、図1に示すような柱体や錐体、また、図示はしないが截頭錐体等が挙げられる。
【0070】
このような平面立体形状を有する微細粒子を平面視した際の形状としては、例えば、円、多角形等の幾何学形状や、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の形状を挙げることができる。具体的に、図1(a)では円、図1(b)および図1(d)では多角形、さらに図1(c)では文字となっている。
【0071】
(b)曲面立体形状
曲面立体形状は、表面および裏面のいずれかが曲面を有する形状を指す。
【0072】
図2(a)、(b)は本発明の微細粒子の一例を示す模式図であり、図2(a)は上面図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面図である。図2(a)、(b)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6を有し、表面5が曲面を有し、拡大して観察することで識別することが可能な曲面立体形状3(ティーポットの立体形状)を有している。
図2(c)、(d)は本発明の微細粒子の他の例を示す模式図である。図2(c)は斜視図、図2(d)は側面図である。図2(c)、(d)に示す微細粒子1は、表面5および裏面6を有し、表面5が曲面を有し、拡大して観察することで識別することが可能な曲面立体形状3(D・N・Pの立体形状)を有している。
【0073】
このように、本発明において曲面立体形状3とは、図2(b)、(d)に示すように、表面5および裏面6のいずれか(図2においては表面5)が曲面を有する形状を指す。表面5が曲面を有する場合、通常、裏面6は平面である。
曲面立体形状としては、上記のような形状であれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜決定される。
【0074】
このような曲面立体形状3を有する微細粒子1を平面視した際の形状としては、例えば、円、多角形等の幾何学形状や、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、符号、標章等の記号等の任意の形状とすることができる。具体的に、図2(a)、(b)ではティーポット(道具)、図2(c)、(d)では文字となっている。
【0075】
(c)大きさ
外形形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。外形形状が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、外形形状の大きさは、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。なお、外形形状の大きさが50μm以下である場合、簡易拡大器具による真贋判断は困難となるが、顕微鏡等の高度な拡大器具を用いることで識別可能であり、外形形状が小さくなれば、製造が困難となり偽造防止効果も高くなる。したがって、外形形状の大きさの下限は、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、本発明の微細粒子の用途に応じて適宜選択される。
【0076】
(d)光拡散特性
本発明の微細粒子がなす曲面立体形状は、光拡散特性を測定することにより確認することができる。平面立体形状は、法線方向が一つであるのに対して、曲面立体形状は法線方向が位置によって異なる。そのため、平面立体形状と曲面立体形状とでは反射光の明暗が異なる。また、平面立体形状と曲面立体形状とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
【0077】
曲面立体形状であることは破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
破壊式の検査方法は、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等により微細粒子を切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する手法が挙げられる。
非破壊式の検査方法は、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する手法が挙げられる。接触式の形状測定は、例えば針を微細粒子に接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定器を用いる手法が挙げられる。非接触式の形状測定は、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型等の等光干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いる手法が挙げられる。
【0078】
上記外形形状における光拡散特性としては、所望の偽造防止効果を得ることができれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜調整される。以下、2つの用途に分けて説明する。
【0079】
本発明の微細粒子を、樹脂製の媒体表面に用いる場合には、識別情報として平面立体形状を有する微細粒子であることが好ましい。樹脂製の媒体表面と平面立体形状を有する微細粒子の表面(平面)とは表面粗さが類似しているので、光拡散特性が類似し、光の反射・拡散範囲がほぼ等しくなるため、上記微細粒子自体の確認が難しくなる。そのため、優れた偽造防止効果を得ることができる。
【0080】
一方、本発明の微細粒子を、紙製の媒体表面に用いる場合には、識別情報として曲面立体形状を有する微細粒子であることが好ましい。紙は表面粗さが大きいが、微細粒子が曲面立体形状を有する場合には、光の反射・拡散範囲が広くなるので、紙の光拡散特性に近づけることができ、上記微細粒子自体の確認を難しくすることができる。そのため、優れた偽造防止効果を得ることができる。
【0081】
2.凹凸形状
本発明の微細粒子における凹凸形状は、微細粒子表面に形成され、凹部および凸部の少なくともいずれか一方を有するものである。
【0082】
図3(a)、(b)は本発明の微細粒子の他の例を示す模式図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のB−B線断面図である。図3(a)、(b)に示す微細粒子1は、表面5に拡大して観察することで識別することが可能な凹部4(星)を有し、さらに平面立体形状2を有している。
また、図4(a)、(b)は本発明の微細粒子の他の例を示す模式図であり、図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のC−C線断面図である。図4(a)、(b)に示す微細粒子1は、表面5に拡大して観察することで識別することが可能な凹部4(TEAの文字)を有し、さらに曲面立体形状3(ティーポットの立体形状)を有している。
【0083】
なお、本発明の凹凸形状を有する微細粒子をインキ化して、媒体表面に印刷した場合、微細粒子は任意の方向を向くことになるが、微細粒子は透明性を有するので、微細粒子において凹凸形状が形成されている部分が観察者側を向いていなくても、表示した凹凸形状による識別情報を認識することができる。
以下、凹凸形状について説明する。
【0084】
(a)形状
本発明の微細粒子における凹凸形状としては、微細粒子表面に形成することができ、拡大して観察することで識別することが可能であれば特に限定されるものではない。
【0085】
例えば、凹凸形状は図3(a)、(b)および図4(a)、(b)のように柱体状であってもよく、図示はしないが錐体状であってもよい。
凹凸形状の平面視上の形状としては、三角形、四角形等の多角形、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、数字、符号、標章等の記号等を挙げることができる。
凹凸形状としては、図3(a)、(b)および図4(a)、(b)に示すような凹部4であってもよく、また、図示はしないが凸部であってもよい。なお、凹部は貫通していてもよい。
凹凸形状において、凹部の下底面および凸部の上底面は平面であってもよく、曲面であってもよい。
【0086】
(b)大きさ
このような凹凸形状の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には、上述した外形形状の大きさと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
上記凹凸形状を構成する凸部の高さ、または凹部の深さとしては、上述した凹凸形状に基づいて識別することが可能であれば特に限定されるものではないが、秘匿性に優れた微細粒子を得るという観点から、凸部の高さおよび凹部の深さは、より小さい方が好ましい。
具体的には、凸部の高さおよび凹部の深さは、外形形状の大きさに応じて異なるものであり、外形形状の大きさに対して1/10以下であることが好ましく、中でも1/30以下であることが好ましい。
上記凸部の高さ、または上記凹部の深さが上記範囲であれば、凹凸形状を認識しにくい、秘匿性に優れた微細粒子とすることができる。一方、上記微細粒子の凸部の高さ、または凹部の深さが上記範囲よりも極端に小さい場合には、凸部または凹部による所望の識別情報を上記微細粒子へ付与することが困難となり、また、上記微細粒子の凸部の高さ、または凹部の深さが上記範囲よりも極端に大きい場合には、微細粒子を物品の表面に用いた際に、上記微細粒子自体を容易に発見でき、識別情報としての凹凸形状を認識し易くなるため、偽造や複製等をされるおそれがあるからである。
【0088】
(c)光拡散特性
凹凸形状は、凸部であるのか凹部であるのかによって反射光の明暗が異なる。また、凹凸形状において、凹部の下底面および凸部の上底面が平面である場合と曲面である場合とでは光の入射角度を変化させた時の反射光の明暗の変化も異なる。
上記凹凸形状における光拡散特性としては、所望の偽造防止効果を得ることができれば特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜調整される。
【0089】
上記光拡散特性の測定方法としては、上述した外形形状の光拡散特性と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
D.微細粒子
本発明の微細粒子の粒径は、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。微細粒子の粒径が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止媒体に用いた際に微細粒子の位置が特定されてしまうため、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、微細粒子の粒径は、ルーペ等の簡易拡大鏡を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大鏡等の簡易器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。なお、微細粒子の粒径が50μm以下である場合、簡易拡大器具による真贋判断は困難となるが、顕微鏡等の高度な拡大器具を用いることで識別可能であり、微細粒子の粒径が小さくなれば、製造が困難となり偽造防止効果も高くなる。したがって、微細粒子の粒径の大きさの下限は、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、本発明の微細粒子の用途に応じて適宜選択される。
【0091】
なお、粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0092】
本発明の微細粒子の厚みとしては、一見するだけでは微細粒子を発見することが困難な偽造防止効果を付与することができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、秘匿性に優れた微細粒子を得るという観点から、より薄いことが好ましい。具体的には、0.1μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜3μmの範囲内であることがより好ましい。
なお、上記の微粒子の厚みは、微粒子の裏面に略垂直な断面における微粒子の厚みをいう。例えば図4(b)に示すような微粒子の厚みHをいう。
ここで、「略垂直な断面」とは、略垂直な断面と微粒子の裏面とのなす角度が90度±10度の範囲内にあるものを示す。
【0093】
また本発明においては、微細粒子の粒径(L)および微細粒子の厚み(H)が、L/50<H<L/10を満たすことがさらに好ましい。粒径に対し厚みが薄すぎる場合には、微細粒子が壊れ易くなり、一方、粒径に対し厚みが厚すぎる場合には微細粒子の識別情報を有する表裏面ではなく、識別情報を有さない微細粒子の側面(厚み部)が偽造防止用媒体の表面、すなわち観察者側を向いてしまい、識別が困難となる可能性があるからである。
なお、上記の微細粒子の粒径(L)は、微細粒子の表面側からの平面視における微細粒子の粒径をいう。例えば図4(a)に示すように、微細粒子1が長径L1および短径L2を有する場合には、微細粒子の長径L1を微細粒子の粒径とする。また、上記の微細粒子の厚み(H)は、上述したように、微細粒子の裏面に略垂直な断面における微細粒子の厚みをいう。例えば図4(b)に示すような微細粒子の厚みHをいう。
微細粒子の粒径(L)および厚み(H)は、上述の破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0094】
E.用途
本発明の微細粒子は、偽造防止用途に好適であり、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0095】
II.偽造防止用インク
本発明における偽造防止用インクは、上記微細粒子を含有することを特徴とするものである。上記偽造防止用インクが透明性を有する微細粒子を有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用インクを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性を有するため、インクの本来の色味を変えることがない。
以下、本発明の偽造防止用インクにおける各構成について説明する。
【0096】
A.微細粒子
本発明に用いられる微細粒子としては、上記「I.微細粒子」の項に詳しく記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0097】
微細粒子としては、1種類の微細粒子を用いてもよく、2種以上の微細粒子を用いてもよい。例えば、同一の外形形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、異なる外形形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。また、同一の外形形状を有し、同一の凹凸形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、同一の外形形状を有し、異なる凹凸形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。2種類以上の微細粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微細粒子を組み合わせて使用することができる。
【0098】
偽造防止用インク中の微細粒子の含有量としては、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に用いた場合に、微細粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、0.01質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0099】
B.透明樹脂成分
本発明の偽造防止用インクは、通常、透明樹脂成分中に上述の微細粒子が分散されたものである。
【0100】
本発明に用いられる透明樹脂成分の光透過性としては、本発明の偽造防止用インクを用いて微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を形成した際に、微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂成分を所定の厚みで成膜したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0101】
透明樹脂成分としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分等の硬化性樹脂成分が好ましく、特に光硬化性樹脂成分が好ましい。光硬化性樹脂成分を用いることにより、耐熱性の低い支持体にも本発明の偽造防止用インクを適用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、本発明の偽造防止用インクを用いて微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を形成する場合には、生産効率を向上させることができるからである。
【0102】
C.機能性材料
本発明の偽造防止用インクは、上記の微細粒子および透明樹脂成分の他に、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料を含有していてもよい。
【0103】
例えば、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微細粒子が紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有しない場合には、発光の有無により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、微細粒子も紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合には、発光の波長により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0104】
偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微細粒子が赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有しない場合には、赤外線の吸収または反射の有無により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、微細粒子も赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合には、吸収または反射する赤外線の波長により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0105】
偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微細粒子が量子ドット材料を含有しない場合には、発光の有無により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。また、偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、微細粒子も量子ドット材料を含有する場合には、発光の波長により、微細粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0106】
なお、機能性材料については、上記「I.微細粒子」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0107】
偽造防止用インク中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0108】
偽造防止用インク中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0109】
偽造防止用インク中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0110】
偽造防止用インク中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0111】
偽造防止用インク中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0112】
D.溶媒
本発明の偽造防止用インクは、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、上記の微細粒子および透明樹脂成分が分散するものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用インクの塗布方法等に応じて適宜選択される。また、溶媒は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
例えばグラビア印刷用インキとして用いる場合、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。オフセット印刷用インキやシルクスクリーン印刷用インキとして用いる場合は、高沸点の石油系溶剤(炭素数が15以上(C15以上)の炭化水素類)が挙げられる。
【0113】
本発明の偽造防止用インクの固形分濃度は、偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用可能であれば特に限定されるものではなく、20質量%〜85質量%程度とすることができる。
【0114】
III.偽造防止用トナー
本発明における偽造防止用トナーは、上記微細粒子を含有することを特徴とするものである。上記偽造防止用トナーが透明性を有する微細粒子を有することにより、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を有する偽造防止用トナーを作製することが可能となる。また、上記微細粒子が透明性有するため、トナーの本来の色味を変えることがない。
【0115】
本発明の偽造防止用トナーは、上記微細粒子を含有するものであればよく、乾式トナーおよび湿式トナーのいずれであってもよく、その組成としては一般的な組成とすることができる。本発明の偽造防止用トナーは、例えば、主樹脂、副樹脂、着色剤、荷電制御剤、流動性制御剤等を含有することができる。
主樹脂としては、光透過性を有し、上記の微細粒子が分散するものであれば特に限定されるものではない。主樹脂の光透過性としては、上述の偽造防止用インクにおける透明樹脂成分の光透過性と同様とすることができる。主樹脂にはスチレン−アクリル系、ポリエステル系が主として使用される。副樹脂にはポリプロピレン、ポリエチレン、WAX類が使用される。主樹脂や副樹脂は1種単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
着色剤にはカーボン、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等が使用される。荷電制御剤はプラス系、マイナス系があり、金属を含有したものや、樹脂系、四級アンモニウム塩等が挙げられる。流動制御剤はシリカ等が使用される。
【0116】
なお、微細粒子については、上述の偽造防止用インクにおける微細粒子と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0117】
本発明の偽造防止用トナーは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料をさらに含有していてもよい。機能性材料としては、上述の偽造防止用インクにおける機能性材料と同様とすることができる。
【0118】
IV.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、2つの態様を有する。
以下、各態様について説明する。
【0119】
A.第1態様
本態様における偽造防止用シートは、上記微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を有するものである。
【0120】
本態様の偽造防止用シートについて図面を参照しながら説明する。
図5は本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。図5に示す偽造防止用シート10は、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12からなるものである。
【0121】
本態様においては、上述した微細粒子を含有する微細粒子含有層を有することから、本態様の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、上記微細粒子が識別情報として曲面立体形状や表面に凹凸形状を有する場合、曲面立体形状の曲面や凹凸形状が観察者側を向いていなくても、微細粒子が透明性を有していることにより、曲面立体形状の曲面や凹凸形状を認識することができる。
【0122】
図6は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図6に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12とが順に積層されている。
【0123】
図7は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図7に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12とを有し、微細粒子含有層12側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0124】
図8は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図8に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12と、微細粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0125】
図9は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図9に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、ホログラム層17と、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12とが順に積層されている。
【0126】
図10は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図10に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定の微細粒子1が分散された微細粒子含有層12と、微細粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側にホログラム層17と粘着層14と剥離層13とが順に積層されている。
【0127】
このように、本態様の偽造防止用シートは、微細粒子含有層以外に他の構成を有していてもよい。
以下、本態様の偽造防止用シートにおける各構成について説明する。
【0128】
1.微細粒子含有層
本態様における微細粒子含有層は、上述の微細粒子が透明樹脂中に分散されたものである。
なお、微細粒子については、上記「I.微細粒子」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0129】
微細粒子としては、1種類の微細粒子を用いてもよく、2種以上の微細粒子を用いてもよい。例えば、同一の外形形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、異なる外形形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。また、同一の外形形状を有し、同一の凹凸形状を有する1種類の微細粒子を用いてもよく、同一の外形形状を有し、異なる凹凸形状を有する2種類以上の微細粒子を用いてもよい。2種類以上の微細粒子を用いる場合には、所定の意味を表現するように微細粒子を組み合わせて使用することができる。
【0130】
本態様に用いられる透明樹脂の光透過性としては、微細粒子含有層中の微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂からなる層を微細粒子含有層と同じ厚みで形成したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0131】
透明樹脂としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂好ましく、特に光硬化性樹脂が好ましい。例えば図7、図8および図10に示すように、基材15上に微細粒子含有層12が形成されている場合には、光硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性の低い基材も使用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、偽造防止用シートの生産効率を向上させることができるからである。
透明樹脂は、上記「II.偽造防止用インク」の項に記載した透明樹脂成分を固化させたものとすることができる。
【0132】
微粒子含有層中の微細粒子の含有量としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微細粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではないが、微細粒子含有層1cm2当たりに少なくとも1個以上の微細粒子が含有されていることが好ましい。
【0133】
また、微細粒子含有層が基材上に形成されている場合には、微細粒子含有層は基材上に一面に形成されていてもよくパターン状に形成されていてもよい。微細粒子含有層のパターン形状が所定の意味を表す形状である場合には、微細粒子を隠し情報として利用することができ、偽造防止効果を高めることができる。
【0134】
微細粒子含有層の膜厚としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、微細粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、本態様の偽造防止用シートの層構成や微粒子含有層に含まれる透明樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば図7、図8および図10に示すように、基材15上に微細粒子含有層12が形成されている場合には、微細粒子含有層12の膜厚は比較的薄くともよい。一方、図5に例示するように、微細粒子含有層12が単独で形成されている場合には、自己支持性の観点から、微細粒子含有層の膜厚は比較的厚いことが好ましい。また、微細粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、割れを抑制する観点から、微細粒子含有層の膜厚は比較的薄いことが好ましい。
具体的に、微細粒子含有層の膜厚は、0.1μm〜500μm程度とすることができ、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0135】
微細粒子含有層の形成方法としては、例えば、上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。例えば図7、図8および図10に示すように、基材15上に微細粒子含有層12が形成されている場合には、基材15上に偽造防止用インクを塗布し、固化させることで、微細粒子含有層12を形成することができる。
また、図5に例示するように、微細粒子含有層12が単独で形成されている場合には、基板上に偽造防止用インクを塗布し、固化させた後、基板から微細粒子含有層12を剥離することで、微細粒子含有層12を単独で得ることができる。この際に用いられる基板としては、光透過性を有していても有さなくてもよく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0136】
偽造防止用インクの塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。
また、偽造防止用インクの固化方法としては、透明樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化性樹脂の場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。熱可塑性樹脂の場合には、冷却する方法が用いられる。
【0137】
2.基材
本態様においては、図7、図8および図10に例示するように、微細粒子含有層12が基材15上に形成されていてもよい。本態様の偽造防止用シートの強度を高めることができ、また容易に取り扱うことができるからである。中でも、微細粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、微細粒子含有層の割れを抑制する観点から、微細粒子含有層は比較的薄いことが好ましいので、基材上に微細粒子含有層が形成されていることが好ましい。また、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材15が微細粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合には、基材により微細粒子含有層を保護することもできる。図8に例示する層構成の場合には、不透明基材を使用することもできる。
【0138】
本態様に用いられる基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、基材の形成位置により適宜選択される。本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図7に例示するように、基材15が微細粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合や、図10に例示するように、基材15がホログラム層17よりも表面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有することが好ましい。
一方、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8に例示するように、基材15が微細粒子含有層12よりも裏面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0139】
基材が光透過性を有する場合、その光透過性としては、微細粒子含有層中の微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0140】
また、基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本態様の偽造防止用シートを種々の形状の偽造防止媒体に適用することが可能となるからである。
【0141】
このような基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0142】
また、基材の表面は、微細粒子含有層との密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、微細粒子含有層および基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、基材製造時に処理されるものと、製造後の基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0143】
基材の厚みは、本発明の偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0144】
3.粘着層
本態様においては、図6〜図10に例示するように、微細粒子含有層12上に粘着層14が積層されていてもよい。粘着層を介して、本態様の偽造防止用シートを貼付する
ことができるからである。
【0145】
粘着層は、基材上に微細粒子含有層が形成されている場合、基材側に積層されていてもよく、微細粒子含有層側に積層されていてもよい。微細粒子含有層上に後述のハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層とは反対側の面に粘着層が配置される。また、微細粒子含有層とホログラム層とが積層されている場合には、ホログラム層側に粘着層が配置される。
【0146】
粘着層の材料としては、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑系、熱硬化系、光硬化系、エラストマー系のいずれも用いることができ、偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択される。偽造防止用シートを転写箔として使用する場合には、ヒートシール性を有する粘着層が用いられる。
【0147】
粘着層の膜厚は、粘着層を介して本発明の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
粘着層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0148】
4.剥離層
本態様においては、図6〜図10に例示するように、微細粒子含有層12上に粘着層14と剥離層13とが順に積層されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本態様の偽造防止用シートの取り扱いが容易になるからである。
本態様の偽造防止用シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0149】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0150】
5.ハードコート層
本態様においては、図8および図10に例示するように、微細粒子含有層12上にハードコート層16が形成されていてもよい。ハードコート層により微細粒子含有層を保護することができるからである。
ハードコート層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図8および図10に例示するように、ハードコート層16が微細粒子含有層12よりも表面側となるように配置される。
【0151】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、微細粒子含有層中の微細粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0152】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、微細粒子含有層を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0153】
ハードコート層の膜厚は、微細粒子含有層を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0154】
6.ホログラム層
本態様においては、図9および図10に例示するように、微細粒子含有層12上にホログラム層17が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0155】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0156】
ホログラム層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9および図10に例示するように、ホログラム層17が微細粒子含有層12よりも裏面側になるように配置される。これにより、微細粒子含有層をホログラム層の保護層として利用することができる。
【0157】
7.偽造防止用シート
本態様の偽造防止用シートは、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0158】
また、本態様の偽造防止用シートの形状としては、特に限定されるものではなく、矩形、多角形、円形、楕円形、その他、任意の形状とすることができる。本発明の偽造防止用シートの形状が所定の意味を表す形状である場合には、微細粒子を隠し情報として利用することができる。
【0159】
本態様の偽造防止用シートの検査方法としては、図11に例示するように、偽造防止用シート10にLED照明21で光を照射し、カメラ(ラインセンサ)22により画像を取得する方法を挙げることができる。図11においては、偽造防止用シート10に対してカメラ22と反対側にLED照明21を配置して、透過光を観察しているが、図示はしないが、偽造防止用シートに対してカメラと同じ側にLED照明を配置して、反射光を観察してもよい。
偽造防止用シートの検査装置では、微細粒子の位置をマッピングし、データベースに保存し、照合が可能である。
検査において、微細粒子含有層に微細粒子が含有されていない領域があった場合には、レーザーマーキング装置を使用し、微細粒子が含有されていない領域にマーキングを行い、偽造防止用シートを所定の形状とする際に排除してもよい。
【0160】
本態様における微細粒子含有層では、図5に示すように、微細粒子1を透明樹脂11中に分散させている。このようにして偽造防止を図る場合、微細粒子が透明樹脂中に分散されていることにより、一見するだけでは微細粒子を発見することができないといった偽造防止効果を付与することができるが、一方、透明樹脂中に分散された微細粒子を、形状に基づいて識別することが困難となる場合がある。このような場合には、透明樹脂の屈折率と異なる屈折率の樹脂製の材料を微細粒子に用いることで、秘匿性を保ちつつ、微細粒子を形状に基づいて識別することが可能となる。
【0161】
B.第2態様
本態様における偽造防止用シートは、基底部と、上記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備える識別部とを有し、上記基底部および上記識別部が透明性を有し、樹脂製の材料を含むものである。
本態様によれば、一定の面積を有する基底部上に形成される識別部の数および位置を予め規定することが可能である。そのため、識別情報をより高度に制御することで識別情報の確認が容易な偽造防止用シートとすることができ、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することが可能となる。
【0162】
本態様の偽造防止用シートについて図を用いて説明する。図12(a)、(b)は、本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略図であり、図12(a)は斜視図であり、図12(b)は、図12(a)のD−D線断面図である。図12に例示するように、本態様の偽造防止用シート10は、基底部31と、基底部31の表面に形成され、識別情報として平面立体形状2(四角柱)を有する凸部32aを複数備える識別部32とを有する。
図13(a)、(b)は、本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略図であり、図13(a)は斜視図であり、図13(b)は、図13(a)のE−E線断面図である。図13に例示するように、本態様の偽造防止用シート10は、基底部31と、基底部31の表面に形成され、識別情報として平面立体形状2(四角柱状)を有する凹部32bを複数備える識別部32とを有する。
【0163】
本態様における、識別部を構成する凸部または凹部は、拡大することにより観察可能であり、かつ形状に基づいて識別可能な識別情報を有しており、上述した微細粒子と同様の識別情報を有することができるため、本態様の偽造防止用シートは、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することができる。
【0164】
1.識別部
本態様の識別部は、基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備えるものである。また、識別部は透明性を有し、樹脂製の材料を含むものである。
以下、識別部における各構成について説明する。
【0165】
(a)透明性
本態様における識別部の透明性としては、「I.微細粒子 A.透明性」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0166】
(b)識別情報
本態様における識別情報としては、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0167】
上記識別情報の種類としては、形状に基づいて識別可能なものであればよく、凸部または凹部の外形形状、凸部または凹部の表面に形成される凹凸形状を挙げることができる。
なお、外形形状および凹凸形状については、上記「I.微細粒子 C.識別情報」の項に記載した内容と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0168】
識別情報を有する凸部または凹部は、1種類であってもよく2種類以上であってもよく、偽造防止用シートの用途等に応じて適宜選択されるものである。
具体的に、図14においては、識別部32が平面立体形状2(四角柱)を有する凸部32aと平面立体形状2(円柱)を有する凸部32aの2種類の凸部32aを備えている。
さらに、図15においては、識別部32が平面立体形状2(四角柱)を有する凸部32aおよび平面立体形状2(四角柱)を有する凹部32bの2種類を備えている。
【0169】
(c)凸部または凹部
識別部は識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備えるものである。識別部は図12に示すように凸部32aを有していてもよく、図13に示すように凹部32bを有していてもよく、図15に示すように凸部32aおよび凹部32bを有していてもよい。
【0170】
凸部または凹部の大きさとしては、凸部または凹部が有する上記識別情報を拡大することによって観察することが可能な大きさであれば特に限定されるものではない。具体的には、凸部または凹部の大きさは、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。凸部または凹部が大きすぎると、目視で観察可能となり、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、凸部または凹部の大きさは、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。簡易拡大器具での観察が可能であれば、容易に真贋判定することができるからである。また、凸部または凹部が小さすぎると、凸部または凹部が所望の識別情報を有することが困難となったり、簡易拡大器具での観察が難しく、より高度な拡大器具を用いる必要があり、真贋判定が複雑化したりする可能性があるからである。
【0171】
凸部の高さまたは凹部の深さとしては、凸部または凹部を基底部表面に形成可能であり、凸部または凹部が上記識別情報を有することが可能であり、一見するだけでは識別部を発見することが困難な偽造防止効果を付与することができる凸部の高さまたは凹部の深さであれば特に限定されるものではない。凸部の高さおよび凹部の深さは、凸部および凹部の大きさによって適宜調整されるものであるが、中でも、秘匿性に優れた偽造防止用シートを得るという観点から、より小さいことが好ましい。具体的には、凸部および凹部の大きさに対して1/10以下であることが好ましく、中でも1/30以下であることが好ましい。
【0172】
一方、凸部または凹部の形成しやすさを考慮すると、凸部または凹部の大きさ(u)、凸部の高さ(x)または凹部の深さ(y)が、それぞれx/u≧1/100またはy/u≧1/100を満たすことが好ましく、なかでもx/u≧1/30またはy/u≧1/30、さらにx/u≧1/20またはy/u≧1/20、特にx/u≧1/10またはy/u≧1/10であることが好ましい。
【0173】
なお、凸部の高さは、図12(b)、図16(a)、(c)に例示するように、偽造防止用シート10の凸部32aが形成されていない部分の表面から凸部32aの頂部までの距離xを指す。
また、凹部の深さは、図13(b)、図16(b)、(d)に例示するように、偽造防止用シート10の凹部32bが形成されていない部分の表面から凹部32bの底部までの距離yを指す。
凸部の高さ(x)または凹部の深さ(y)は、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
なお、上記凸部または凹部の大きさ(u)は、凸部または凹部の平面視における最大距離とする。例えば平面視における形状が図4(a)に示す形状である場合は、距離L1を指す。
上記凸部または凹部の大きさ(u)は、上述した破壊式または非破壊式の検査方法にて測定することができる。
【0174】
本態様において、凸部または凹部は1個あってもよく、複数個あってもよい。
識別部が有する凸部または凹部の個数としては、1個以上であれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートが用いられる偽造防止媒体の用途により適宜選択されるものであるが、中でも10個〜1,000,000,000個の範囲内であることが好ましく、特に100個〜1,000,000個の範囲内であることがより好ましい。
識別部が有する凸部または凹部の個数が上記範囲に満たない場合、凸部または凹部の位置の特定や、凸部または凹部が有する識別情報自体の認識を行うことが困難となる可能性がある。なお、凸部または凹部の個数については、本態様の偽造防止用シートの用途により適宜選択することができる。
【0175】
識別部における凸部または凹部の配置としては、識別情報としての凸部または凹部を認識可能な配置であれば特に限定されるものではなく、規則性を有するように配置されていても良く、ランダムに配置されていても良い。
【0176】
(d)材料
本態様における識別部に用いられる樹脂製の材料としては、「I.微細粒子 B.材料」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0177】
(e)その他
本態様における識別部としては、識別部の各凸部または凹部が有する識別情報を簡易器具で拡大することによって観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートの一部の表面上に形成されているものであっても良く、偽造防止用シートの全面に形成されているものであっても良い。
【0178】
本態様の識別部の形成方法としては、基底部表面に所望の識別部を形成することができる製造方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に、上記識別部の識別情報と嵌合する形状を有する転写部を形成して原版を作製し、樹脂層を形成する。続いて、樹脂層表面と原版の転写部とを密着させることにより、樹脂層表面に識別部の識別情報を賦型する。識別情報が賦型された樹脂層を固化し、硬化した樹脂層から原版を剥離して識別部を形成する方法等が挙げられる。
【0179】
2.基底部
本態様における基底部は、その表面に上述した識別部を有するものである。
また、基底部は、透明性を有し、樹脂製の材料を含むものである。
【0180】
本態様における基底部の厚みとしては、基底部の表面に上述した識別部を形成することができ、また、本態様の偽造防止用シートを所望の偽造防止媒体に用いることができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。基底部の厚みが厚すぎると、偽造防止用シートの加工が困難となる可能性や、使用する偽造防止媒体の規格に沿わない可能性がある。
なお、本態様における基底部の厚みとしては、図12(b)、図13(b)に例示するように、偽造防止用シート10の識別部32が形成されていない部分の厚みzを示すものである。
【0181】
本態様における基底部の透明性および樹脂製の材料としては、「I.微細粒子」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0182】
基底部の表面に識別部が形成されていればよく、例えば、基底部と識別部とが一体で形成されていてもよく、基底部と識別部とが別体で形成されていてもよいが、中でも、基底部と識別部とが一体で形成されていることがより好ましい。本態様の偽造防止用シートを簡便な方法で作製することが可能となるからである。
【0183】
3.その他
本態様の偽造防止用シートは、上述した識別部と基底部とを有するものであれば特に限定されるものではなく、第1態様に示した微細粒子含有層以外の構成と同様の構成を適宜選択して用いることができる。
【0184】
本態様の偽造防止用シートを物品の表面に固定・固着させて偽造防止を図る場合には、形状に基づいた識別が可能となる。
本態様の偽造防止用シートを樹脂製の媒体表面に用いる際、上記識別部および基底部と樹脂製の媒体との屈折率の差が小さい場合には、本態様の偽造防止用シートが容易に発見されず、秘匿性に優れる高い偽造防止機能を実現することができる。
【0185】
本態様の偽造防止用シートは、第1態様における偽造防止用シートと同様に、枚葉であってもよく長尺であってもよい。
【0186】
C.用途
本発明の偽造防止用シートは、そのままラベルとして使用したり、転写箔として使用したりすることが可能である。また、偽造防止用シートは、ホログラム層を有する場合には、ホログラムラベルやホログラム転写箔として使用することもできる。さらに、偽造防止用シートは、偽造防止媒体へのラミネートフィルムとして使用することもできる。
偽造防止用シート自体は光透過性を有するものとすることができるので、様々な偽造防止媒体に適用することができる。
【0187】
さらに、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用する際には、偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着してもよく、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートを埋め込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込んでもよい。偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着する場合には、偽造防止用シートをそのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。転写方法としては、熱転写法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体については、後述の「V.偽造防止媒体」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0188】
V.偽造防止媒体
本発明における偽造防止媒体は、上記微細粒子、または上記偽造防止用シートを有するものである。
【0189】
図17(a)、(b)は本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図であり、図17(a)は上面図、図17(b)は図17(a)のF−F線断面図である。図17(a)、(b)に示す偽造防止媒体40においては、支持体41上に、上述した微細粒子1が透明樹脂11中に分散された微細粒子含有層12が形成されている。
【0190】
図18(a)〜(c)は本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図であり、図18(a)は上面図、図18(b)は図18(a)のG−G線断面図、図18(c)は偽造防止媒体の積層構造を示す斜視図である。図18(a)〜(c)に示す偽造防止媒体40おいては、支持体41上に第1樹脂層42と上述した微細粒子1が透明樹脂11中に分散された微細粒子含有層12からなる偽造防止用シート10と第2樹脂層43とが積層されており、偽造防止媒体40の内部に偽造防止用シート10が埋め込まれている。偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートが埋め込まれている場合には、偽造防止用シートが剥がされて悪用されるのを防ぐことができる。
【0191】
本発明の偽造防止媒体においては、透明性を有する上記微細粒子、または透明性を有する基底部および識別部を有する偽造防止用シートを有することにより、物品に含まれる微細粒子または識別部を認識することが困難となり、高い偽造防止機能を付与することが可能であり、また、容易に真贋判定することが可能な偽造防止媒体を作製することが可能となる。
【0192】
以下、本発明の偽造防止媒体における各構成について説明する。
なお、微細粒子については、上記「I.微細粒子」の項に記載したものと同様とすることができ、透明性を有する基底部および識別部を有する偽造防止用シートについては、上記「IV.偽造防止用シート B.第2態様」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0193】
微細粒子を用いる場合において、支持体上に微細粒子を固定・固着させる方法としては、支持体上に上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法や、支持体上に上述した偽造防止用トナーを転写する方法、支持体上に上述した偽造防止用シートを貼付もしくは埋め込む方法を用いることができる。
【0194】
支持体上に偽造防止用シートを貼付する方法としては、そのまま貼っても良く、転写しても良い。さらに、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止用シートを偽造防止媒体の構成層間に埋め込んでも良い。
ここで、偽造防止用シートを埋め込む方法としては、例えば、偽造防止媒体の支持体上に所望の構成層を積層し、各層間を接着層、粘着層、熱圧着等によって接着する方法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体内に積層される偽造防止用シートは、一部に設けられていても良く、全体に設けられていても良い。また、偽造防止媒体中のその他の構成層としては、偽造防止媒体の種類に応じて、適宜選択されるものである。
【0195】
本発明に用いられる支持体としては、本発明の偽造防止媒体の用途に応じて適宜選択されるものである。支持体は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。支持体の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0196】
また、支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層とが積層されている場合、第1樹脂層は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。中でも、支持体と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材の光透過性と同様とすることができる。第2樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0197】
本発明の偽造防止媒体の用途としては、例えば、金券、ギフトカード、クレジットカード、IDカード、パスポート、運転免許証、ブランド品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等を挙げることができる。
【0198】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0199】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0200】
[実施例1]
(犠牲層および微細粒子形成層の形成)
ガラス基板上に水溶性高分子膜(PVA)を塗布し、微細粒子材料(非水溶性材料:レジスト材料)を塗布した。
【0201】
(露光現像)
その後、フォトリソグラフィーにより露光現象処理を行い、水溶性高分子膜に所望のパターン形状だけが残るようにした。
【0202】
(微粒子回収工程)
パターン形成後、水溶性高分子膜を溶解させることで粒子を基材から分離させ、回収を行った。
【0203】
[実施例2]
(犠牲層および微細粒子形成層の形成)
PET基板上に水溶性高分子膜(ゼラチン)を塗布し、微細粒子材料(非水溶性材料:印刷インク)を塗布した。この際、直接パターンを印刷した。
【0204】
(微粒子回収工程)
パターン形成後、水溶性高分子膜を溶解させることで粒子を基材から分離させ、回収を行った。
【符号の説明】
【0205】
1 … 微細粒子
2 … 平面立体形状
3 … 曲面立体形状
4 … 凹部
5 … 表面
6 … 裏面
10 … 偽造防止用シート
11 … 透明樹脂
12 … 微細粒子含有層
31 … 基底部
32 … 識別部
40 … 偽造防止媒体
H … 厚み
L1,L2 … 粒径
【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、
前記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする微細粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項3】
請求項1に記載の微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用トナー。
【請求項4】
請求項1に記載の微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項5】
基底部と、
前記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備える識別部とを有し、
前記基底部および前記識別部が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項6】
請求項1に記載の微細粒子または請求項5に記載の偽造防止用シートを有することを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項1】
拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する微細粒子であって、
前記微細粒子が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする微細粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項3】
請求項1に記載の微細粒子を含有することを特徴とする偽造防止用トナー。
【請求項4】
請求項1に記載の微細粒子が透明樹脂中に分散された微細粒子含有層を有することを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項5】
基底部と、
前記基底部の表面に形成され、拡大することにより観察することが可能であり、かつ形状に基づいて識別することが可能な識別情報を有する凸部または凹部の少なくとも一方を備える識別部とを有し、
前記基底部および前記識別部が透明性を有し、樹脂製の材料を含むことを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項6】
請求項1に記載の微細粒子または請求項5に記載の偽造防止用シートを有することを特徴とする偽造防止媒体。
【図1】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図4】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図4】
【公開番号】特開2012−236369(P2012−236369A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107556(P2011−107556)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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